writer is [[双牙連刃]] まさかの消されるという由々しき事態に晒されてしまったので再投下! ---- ううん、 ん? ここは何処だろう? フロスト姉ぇの部屋じゃないのは間違いない。 真っ暗だよ……でも、自分の姿は見えてる。どうなってるんだろう? そもそも地面に脚が触れてる感じがしない。うーん? とりあえず脚を動かして前に進んでみよう。あ、足場は無いけど動かした分だけちゃんと進める。不思議なところだなぁ。 そもそも僕、フロスト姉ぇの部屋で寝てた筈なのになんでこんな所に居るんだろう? 『何者じゃ?』 「え?」 急に目の前に光の珠が現れた。薄い桃色の光、明るいけど眩しいほどじゃないかな。 『ん? お主……実体でここに来た訳では無いようじゃな?』 「えっと、寝てた筈なのに、気がついたらここに居たんだ」 『ふむ、意識だけが偶然に入り込んだようじゃのぉ。しかし、空間の揺らぎを抜けられるとは、驚きじゃ』 って、意識だけってどういう事? 空間の揺らぎって? 『まぁ、わしを狙ってきた者では無いようじゃな』 目の前の光の珠が形を変えていく。んと、龍みたいな姿になった。ポケモン、なのかな? おっきいなぁ、僕、手の上に乗せられちゃったよ。なんていうポケモンさんかなぁ? 『お主、名は?』 「僕? イーブイのリィです。んと、始めまして」 『ほほう、可愛らしいのぉ。わしは「 」じゃ』 ん? 名前のところが聞き取れなかった。どうしたんだろ? あ、だんだん周りが白くなっていく。これは? 『どうやら、お主の体が目覚めようとしているようじゃな。無事に戻れるようで何よりじゃ』 「結局僕はどうなったの? ここは?」 『不思議かもしれんが、もうお主がここに来る事もあるまい。忘れてしまうのが一番じゃな』 ちょっと待って。せめて、名前だけでも―― ---- そこに広がってたのは、いつもの天井だった。そこに前脚を伸ばしながら、僕は目を覚ました。 今のは……夢? でも、はっきりと覚えてる。夢の中で僕は誰かと話をして、そして別れた。薄桃色をした、大きなポケモンと。 あんなポケモン見た事無い。でも、僕は確かに話をした。嫌な感じはしなくて、優しげに笑ってた。 時間は……5時? 凄く早く起きちゃったな? まだ隣のフロスト姉ぇは寝てる……どうしよっか? なんとか布団は、抜けれるな。 そっと部屋の扉を開いて、廊下に出た。そっとって言っても、跳びついたんだけどね。この時間にうろうろする事は無いから、凄く静かに感じるな。 他の皆もまだ寝てるだろうし、行けるのはリビングくらいかな。でもライトが寝てるし、煩くしないようにしなきゃ。 よい、しょっと。……絶対進化するなら、扉を静かに開け閉め出来るものになろう。まぁ、イーブイ以外なら割と全部どうにかなりそうかな。体はどれでも大きくなるみたいだし。 でも進化しちゃうとライトに乗るのがちょっと不便になるか……普通にフロスト姉ぇとか乗せてるから大丈夫そうだけどね。 あ、ソファーのところにライトが居る。そっか、いつもこうやって寝てるんだね。ライトが寝てるところは始めて見たよ。 「ん? 誰だ?」 「わ、ごめん、起こしちゃった?」 「って、リィか? あれ、俺ってばそんなに長い事……あら? まだ5時ちょい過ぎじゃねぇか。随分早起きだな?」 「ん、ちょっと不思議な夢見た所為で起きちゃったんだ。えと、いい?」 「遠慮なんかすんなよ。ほれ」 ライトが平らに伏せてくれたから、その上に飛び乗った。うーん、やっぱりふかふかでベッドよりずっと寝易いなぁ。 でも、ライトって力持ちだよね。僕とソウ兄ぃが一緒に乗っても平気だし、レオ兄ぃ乗せたまま普通に歩いたりしてたし。サンダースって力はそんなに無いって教えてもらったんだけどな? まぁいいや、ライトだし。 「なんか失礼な事考えなかったか? リィ」 「何のこと?」 「いや、俺の気のせいならそれでいいわ」 ……ライトは本当に凄い。どうして分かったんだろ? 本当はサンダースじゃなくてエーフィだったとか……無いか。 「そういや、夢がどうとか言ってたよな? 怖い夢でも見たのか?」 「怖くはなかったんだけど、見た事無いポケモンが出てきたんだ」 「見た事無いポケモンが? ふむ……」 「どうかしたの?」 「難しい話をする気はねぇんだがな、夢ってのは基本的に自分が経験した事あったり見た事あるものしか見れねぇんだ。だから、完全に見た事無い物は出てきようが無い筈なんだけどな?」 「でも、全然知らないポケモンだったよ? それに、お話もしたし」 よく考えると、夢にしてはおかしなところがいっぱいあるな。そもそも夢だって自覚出来なかったし。 結局分からなかったけど、なんて名前のポケモンさんだったのかな? せめて、ヒントか何かあればいいんだけど。 そうだ、姿だけなら覚えてる。もしかしたらライトが知らないかな? 「ねぇライト、大きくてちょっとピンク色のドラゴンポケモンって知らない?」 「むぅ? それがリィの見たポケモンなのか? ……ちょっと知ってるのには居なさそうだな」 「そっか……」 「そんなに気になるなら、後で他の奴にも聞いてみるか?」 「うーん、そうしてみる。でも、夢をこんなに気にするって変に思われないかな?」 「思われねぇって。リィが知りたいって思ってるなら、この家の奴なら力になってくれるさ」 そう、だよね。よし、こうなったらせめて名前だけでも調べよう。頑張ればきっと見つかるよね。 でも、どうして名前が聞こえなかったんだろ? 僕が目を覚ましそうだったから? でも、他の言葉はちゃんと聞こえたしなぁ。 あまり気にしても仕方ないか。今日はあのポケモンさんについてどんどん調べよう。って言っても、皆に話を聞くくらいしか出来ないけどね。 「ライトおはよー。あれ? リィちゃん?」 「お早うレン姉ぇ」 「よぉ、お早うさん」 そっか、レン姉ぇはこの時間からご飯の支度とか始めてるんだ。凄いなぁ、いつもは寝てるから知らなかったよ。 あれ、足音がもう一つ? 「むぅ……」 「レオ兄ぃ?」 「おー、今日は起きてきたか」 「昨日すっぽかした分はやらね……ぐぅ」 レオ兄ぃ、立ったまま寝てるよ。そう言えば、三日前くらいに言ってたっけ。これからは朝からレン姉ぇの手伝いするって。 でもまだ慣れてないんだね。そうだ、折角起きてるんだし、僕もレオ兄ぃの手伝いしよう。 ライトから降りてレオ兄ぃの所まで行く。どの辺にしようかな? とりあえずお腹……おぉ、ライトに劣らずふかふかだ。 「レオ兄ぃ起きて。僕、レオ兄ぃが作ってくれる卵焼き食べたいな」 「ん……ん! リィか!? よし、卵焼きだな!」 「わーお……」 「レオ君、すっかり料理のリクエストがあるとしゃっきりするようになっちゃったねぇ」 レオ兄ぃ、料理作るのが楽しくなったみたいで、どんどんレン姉ぇに教わってるんだって。もう数種類の料理なら、レン姉ぇが手伝わなくても作れるんだってさ。 その中で一番得意なのが卵焼き。これだけはもう、レン姉ぇが作るより美味しいってレン姉ぇが言ってた。僕はどっちの卵焼きも好きだけどね。 鼻歌歌いながらキッチンに入っちゃった。楽しそうだなー。僕も手伝えたらよかったのに。 「なんだかこの時間も賑やかになってきたね」 「そうだなぁ。まぁ、悪い事じゃねぇけどな」 ……なんかライトもレン姉ぇもちょっと残念そうにしてる気がする。うーん、この時間に何かあったのかな? 朝のこの時間にも色々あるんだな、僕もこれからなるべく早起きするのもいいかも。 レン姉ぇもご飯作りに行っちゃったし、ライトと話でもしながら時間潰そう。皆は7時くらいまで来ないしね。 卵焼きを食べながら、皆の反応を見てるんだけど……。 「ピンク色のドラゴンポケモンかぁ……」 「なんだか可愛い感じがするけど、どうなのかなぁ?」 「可愛いっていうより、凄く強そうだったよ。あと、羽が生えてたかな」 「実物を見てないからイメージし難いッスね……」 皆僕の話をちゃんと聞いてくれた。でも、やっぱり僕の見た様子だけじゃ分からないみたい。 んー、せめて名前がちゃんと聞けてればなぁ。そこが本当に残念。 「っと、時間か。そろそろ学校行かないとな」 「あ、思い出したー。僕それっぽいの見た事あるかもー」 「何? プラス?」 「うんー、前にハヤト兄ちゃんと図書館行ったことあるよねー?」 「あー、前に一回行ったっけな」 「その時に、そんな絵が書いてある本あったと思うよー」 本? んー、図鑑みたいな物かな? でも、思わぬヒントだね。図書館は確か、本がいっぱいあって自由に読んで良いところだっけ。 でも僕は字、読めないし、誰かと一緒に行かなきゃならないなぁ。むぅー。 「そういう事なら図書館へ……」 「ご主人は学校でしょ? 図書館へは後で行ってこようね、リィちゃん」 「いいの? レン姉ぇ」 「私は行けないかもしれないけど、レオ君もライトも居るしね」 「のぉぉ、折角リィの助けになれるチャンスがぁぁ」 「今日は僕もハヤト兄ちゃんと一緒に行くから、リィ頑張ってねー」 「うん。ありがとうプラス兄ぃ」 人間さん、そんな事考えてたんだね。最近は怖くなくなったし、今度一緒に遊んでもらおうかな。 今日人間さんと一緒に行くのは、リーフ姉ぇとソウ兄ぃ、それにプラス兄ぃか。……あれ、フロスト姉ぇが居ない。どうしたんだろ? 「う~、寝過ごしたわ……朝ごはん、まだある?」 「あ、フロスト姉ぇお早う」 「お早う。もぉ、リィも起きたのならあたしの事も起こしてくれればよかったのに」 「えっと、5時とかに起こしてよかった?」 「早起きしてたのね……それなら仕方ないわ。5時に起こされても二度寝してただろうし」 なるほど、今まで寝てたんだ。じゃあ今日はフロスト姉ぇにも手伝ってもらえそうだね。 「よし、それなら俺は行ってくるか。リィ、どんなポケモンか分かったら、俺にも教えてくれよ」 「うん。行ってらっしゃい」 「……やべぇ、テンション上がってキターーーーー!」 うわ、走っていっちゃった。喜んでくれたなら、まぁいいか。 あ、皆が人間さんの事見て飽きれてる。そんな風に見たらちょっと可哀想かも……そうでもないか。 ご飯はフロスト姉ぇが食べれば終わり。皆でお出掛けするなんて初めてだし、うわぁ楽しみだなぁ。 「ところで、ハヤトが言ってたポケモンがどうのってどういう事?」 「あ、えっとね」 そうか、フロスト姉ぇにはまだ話してなかった。食べてる間に事情を話しちゃおう。 おぉ、フロスト姉ぇも真剣に聞いてくれてる。皆優しいなぁ……最初からこの家のポケモンになれてたら、僕も嫌な思いしなくて済んだんだろうな。 でも、それだとライトに会えなかったか。そう考えると、今が一番良いのかもね。 「なるほどね、そういう事ならあたしも協力するわ。それに、ちょっと心当たりがあたしにもあるし」 「え? そうなの?」 「まぁ、結構前の話になるから、あやふやになってたりはするんだけどね? お目当ての本を探すのになら、力になれると思うわ」 「ならば図書館へ向かうのは、ライトとフロストだな。俺はレンの手伝いが終わったら合流しよう」 「なら、私もそうしようかな」 「あ~、俺、別行動でいいか? ちょいと違うアプローチを思いついたんだ」 ライト? 別のアプローチ……ってなんだろ? 「ま、野良だからこその情報網っつうのもあるってこった。そっちで解決出来ればそれで構わないしな」 「むぅ? まぁ、そういうなら別行動でもいいだろ」 「それなら、図書館組もそんなに要らないだろうし、あんた残ってレンと行動しなさいよ」 「え!?」 「んな!?」 あ、フロスト姉ぇニヤニヤしてる。ライトもレン姉ぇも落ち着きなくなってるし、僕とレオ兄ぃは状況が良く分かってないよ。 お互いに顔を見合って……なんか照れてるみたいだね。うーん、ライトって照れるんだね。これも初めて見たよ。 「じゃ、そろそろ行こうかしらね~。レオ、あんたも行くわよ」 「ん? いやだから俺はレンを手伝ってから……」 「つべこべ言わずに行くの。はい、リィも行くわよ」 「え? あ、うん。じゃあ、行ってきまーす」 「あ、ちょっ」 「あぅ、フロストちゃん~」 なんか強引にフロスト姉ぇに連れられたけど、良かったのかな? とにかく、今日はフロスト姉ぇとレオ兄ぃと一緒だね。あのポケモンさんの事、上手く調べられるといいな。 「勢いで来てしまったが、どういう事だ?」 「あんたも鈍いわねぇ、それじゃ牝の子好きになった時に苦労するわよ?」 「僕もあんまり良く分かってないんだけど」 「リィはもうちょっとしてからね、これが分かるようになるのは」 レオ兄ぃと一緒に首を傾げながら、先を歩くフロスト姉ぇについていく。ん~、やっぱり考えても分からないや。 しばらく歩いた先に、周りの建物より少し大きな建物が見えてきた。多分あれだよね? 「リィ、あそこが図書館よ」 「アキヨ図書館、来るのは何時ぶりだったか」 「基本的にハヤトは、読んでマンガばかりだから仕方ないわよ。さ、入りましょ」 図書館の扉の取っ手を少しだけ凍らせて、フロスト姉ぇが押し開けてくれた。 フロスト姉ぇは、空気に混ざってる水を集めて氷を作ったり、その氷を操ったり出来るんだって。凄いよね。 でも、普通のグレイシアは後の力は使えないんだ。なんか、エーフィになりたいと思いながら進化したから出来るようになったのかもって言ってた。そんな事あるのかな? 確かに、触れないで物を操るのはエスパーの力だよね。フロスト姉ぇのは氷に限定されるけど、やっぱり凄い力だよ。 うわぁ、本棚と本がいっぱいだ。中も静かだし、落ち着いて本が探せそうだね。 「さて、目的の本の事なんだけど、昔話や神話の本を当たるのが良いと思うの」 「しんわ? えっと、神様のお話ってこと?」 「そう、場所はシンオウ地方という場所の物よ。そこには確か、二匹の、神とまで呼ばれるポケモンの話があった筈だわ」 神様……へぇ、凄いポケモンが居るんだね。それが、フロスト姉ぇの心当たりなんだ。 「そうか、前の家族旅行で行ったのがシンオウ地方だったな」 「えぇ、あたしがグレイシアになった場所だからね、余計に覚えてたのよ」 「じゃあ、シンオウってところのそういう話を探すんだね。頑張る」 「見つけたらあたしかレオを呼んでね。読むついでに読み方も教えてあげるわ」 「そうだな。手解き出来る限りは教えるか」 やった、字が読めるようになれば本も自分で読めるもんね。頑張って教えてもらおう。 そうそう、読めないって言っても知ってる文字もちゃんとあるよ。えっと、カタカナとひらがなだけど。それを見て探すしかないよね。 でも……本棚に書いてあるの漢字ばっかり。これは、僕にはちょっと辛いかも。 それにしても、ここ、人間さんばっかり。ポケモンだけで居るのって僕達だけじゃないかな? あれ? そうでもないみたい。椅子に座って本を読んでるポケモンさんが居る。緑色の服を着てるみたいなポケモンさんだ。 あ、気付かれた。んと、挨拶した方がいいかな。 「こ、こんにちは」 「はいこんにちは。あなた、一匹でここに来たの?」 「ううん、人間さんは居ないけど、一匹じゃないよ」 「となると、あのグレイシアの子やバクフーンの子と一緒に来たのね。さっき見掛けたわ」 「うん、そう。あ、イーブイのリィです、始めまして」 「あらありがとう。私はここの管理人のパートナーで、ドレディアのマール。よろしくね」 ドレディアっていうポケモンさんなんだね。頭のオレンジ色の花、綺麗だな。 マールさんはどんな本読んでるんだろ? ちょっと見てみようかな。 「あら、この本に興味あるの? これはね、私が元々居た地方に伝わってる伝説の物語なの」 「伝説? それって、シンオウってところ?」 「いいえ、イッシュっていうの。あなたは、シンオウの神話を調べに来たのかしら?」 「うん。でも、その本の伝説ってどんな話なの?」 「ふふ、興味ある? じゃあ少しお話してあげましょうか」 教えてもらったのは、イッシュってところに人が暮らしだした頃のお話。 一つの大きな国っていうのを作ろうとした王子様二人と、その王子様に力を貸した一匹の龍、それが力を合わせて国を作った。 でも、二人の王子様は別々の夢を見るようになる。二人が争うようになって、一匹の龍は二匹の竜に分かれて、それぞれの王子様に力を貸した。 竜は激しく戦った。でも、その決着はつかないで、どっちの竜も力尽きて眠ってしまった。王子様はそれを反省して、また二人で力を合わせるようになりました、か。 「……なんだか、悲しいお話だね」 「そうね……二人の王子が争わなければ、二匹の竜は争わずに済んだ。やるせない話ね」 「それもそうだけど、どうして龍は二人の王子様を止めなかったのかな? 一緒に頑張ったんなら、王子様達を止められたんじゃないかな?」 「確かにそうね……争いの愚かさを教えているだけの物語かと思ってたけど、そう考えると、まだ分かっていない事があるように思えるわ。何度も読んだお話にも、見方を変えると違った考え方があるわね」 あ、面白くてつい話しに聞き入っちゃった。本を探しにきたのにね。 「楽しかったけど、探し物の続きしなきゃ。マールさん、どうもありがとう」 「私も改めて話すと楽しかったわ。シンオウの神話を探しているのよね? よかったら、案内してあげる」 「いいの?」 「物事の考え方は一定じゃない、それを教えてくれたお礼よ」 やった、この図書館に詳しいポケモンさんが手伝ってくれるならすぐに見つかりそうだよ。助かるなぁ。 ゆっくりと歩き出したマールさんに続いて、本棚の間を進んでいく。さっきのお話みたいな本、まだあるのかな? 読んでみたいなぁ。 マールさんが本棚の前で止まった。そして、少し高いところにある本を取ってくれた。僕じゃちょっと届かなかったかも。 「時と空間を統べる者……うん、これね」 「時と空間? 統べる?」 「少し難しい本だから、また私が教えてあげましょうか?」 「ん~、一緒に来た皆に教えてもらう約束なんだ」 「あら……じゃあ、私もご一緒させてもらえない? 要約するのは得意なの」 さっきの話も楽しかったし、もちろん手伝って貰えるならそうしよう。 じゃあ、レオ兄ぃ達を集めて、シンオウの神話って言うのを教えてもらおうか。 ---- 「えーっと、神々のおわすは天を突く槍の柱なり、かな?」 「そう当たり! リィちゃん凄いわ、こんなに早く字を覚えていくなんて」 「まったくね。賢い子だとは思ってたけど、ここまでだとは思わなかったわ」 「ソウ辺りに見習わせたい勤勉さだ。うかうかしてたら、俺も抜かれかねないな」 うん、教えてもらいながらかなり読めるようになった。基本の形を覚えれば、結構応用で読めるね。 この本によると、シンオウってところには時間と空間を守ってるポケモンさんがそれぞれ居るんだって。 二匹の神様は、普段はこの世界とは違う場所に居てこの世界を見守ってて、何かあった時に、自分が居るところとこの世界を繋いで現れるんだって。 これが分かったのは良いんだけど……。 「でも、この本だと大事なものが載ってないわねぇ……」 「あらそうだったの?」 「うん、神様達の名前と、その姿が分かる本って無いかな?」 「それなら……レオ君、少し手伝ってくれる?」 「任されよう」 本棚の高いところに行くための梯子をレオ兄ぃが押してきて、それにマールさんが登っていく。マールさん、この図書館の中の本に本当に詳しいな。 「あったわ。受け取って」 「おっと、これは……絵本か?」 「まずは、っと、これで姿は分かる筈よ」 「シンオウを作った神様達?」 「えぇ。シンオウは、神々が作り出した土地だっていう説もあるの。だから、神への謁見がなされたと言われる場所があると言われているわね」 さっきの槍の柱っていうのの事か。あれ、実際にある場所なんだ。 レオ兄ぃが受け取った本を捲っていく。……あ! 「これ! これだよ! 夢に見たポケモンさん!」 「当たりだったか。ふむ、空間の神のほうだな」 「確かにピンク色のドラゴンポケモンね」 「夢に見た? それは、どういう事なのかしら?」 なるべく分かりやすいようにマールさんに事情を説明した。僕が夢で話したのは、空間の神様だったのか……。 マールさんが何か考え込んでる。どうしたんだろ? 「……今の話を聞いて思ったのは、ドリームワールドの存在ね」 「ドリームワールド? それは一体?」 「イッシュで研究されているものなのだけど、特定の条件化でポケモンのみが見る特殊な夢の事なの」 なんでも、眠ってるポケモン達の意識が集まる不思議な場所があるんだって。そんなの本当にあるのかな? でも、イッシュってところでは、機械を使ってポケモンにその夢を見せられるみたい。それで、人間さん達はそのポケモンの夢を見る事で、ドリームワールドの事を知ったんだって。 って事は、僕もそこに繋がったって事? 「ただ、リィちゃんの話と食い違ってるのは、何も無かったというところね」 「と言うと?」 「ドリームワールドは、言わば複数の夢の集合体。そこに繋がったポケモンは自分の場所のようなものを作ると聞いたわ」 「でも僕は、真っ暗なところに居たよ?」 「そこなのよね……まだ研究が始まったばかりの分野だし、まったく違うものって可能性もあるわ。でも、ヒントにはならないかしら」 「あたし達だけじゃ分からなかった事だから大助かりよ」 「力になれれば重畳よ。脱線しちゃったけど、空間の神の名前だったわよね。それなら別の本に……あら?」 マールさんが本を取りにいって首を傾げてる。もしかして、無かったのかな? 「ごめんなさい、貸し出し中みたいだわ。困ったわね、私も名前は知らないし……」 「とすると、ここで手詰まりか」 「そうねぇ……でも、マールと知り合えたお陰で予想以上の事まで調べられたから、あとはもう一班に期待しましょ」 「そうだね。マールさん、本当にありがとう」 「いいのよ。私も楽しませてもらえたし、こんなに友達も増えたしね」 笑いかけてくれたマールさんに、僕達も笑って見せた。うん、もう友達だね。 また今度遊びに来るのを約束して、僕達は図書館から出た。お出掛けするのも楽しくていいね。 あとは肝心の名前かぁ。空間の神様、か。どうして僕は、夢の中で神様にあったんだろう? 夢の中の世界、あそこはそれだったのかな? ……もう一度、会えないかなぁ。 「イッシュか……カントーよりも随分先進的な地方みたいだな」 「そうねぇ。機会があれば、行ってみたいわね」 「うん。皆で行けるといいね」 そういえば……もう人間さんを見ても怖いと思わなくなったな。レオ兄ぃも居るしフロスト姉ぇも居る。皆が居れば、もう怖くない。 今度はリーフ姉ぇとか人間さんともお出掛けしたいな。もっともっと、色んな事を知りたいよ。 のんびり並んで歩きながら、僕達は家を目指した。時間的に、そろそろお昼かな? 戻ってきてみると、ライト達はもう帰ってきてるみたいだった。でも、この声って……。 「ただいまー」 「お、帰ってきたか」 「あ、リィだ!」 「リィちゃーん」 「お邪魔させてもらってるよ」 「ジルさん! それに、グリにウェス?」 なんでジルさん達がここに? ライトが連れてきたのかな? 「ライト、何事だ?」 「あぁ、こいつ等、俺とリィの知り合いでな。もしかしたら野良仲間で知ってる奴が居ないか聞きにいった訳よ」 「本当だよレオ兄ぃ。僕の友達なの」 「ふむ……まぁ、そういう事ならいいか」 「暴れる気は無いから安心をし。ただ、食べ物にはありつかせてもらうけどね」 わぁ、皆でご飯食べれるんだ。楽しそうだね。 「で、結果はどうだったのよ?」 「あぁ、ジル」 「ピンク色のドラゴンポケモンだったね。噂なら聞いた事があるよ」 「時間と空間の神様だね。僕、あの話好きなんだ」 ウェスが嬉しそうに言ってる。ならもしかして、その名前も? でもそれは後になりそうかな……グリが凄く遊びたそうなんだけど。僕もグリ達が居るなら、ちょっと遊びたいかな。 とうとうライトに飛び乗って遊べーって言い出しちゃった。行くしかないね、ご飯までの軽い運動にしようか。 ……テーブルに載ったお皿もほとんどが空になった。グリ、凄い勢いで食べるから驚いたよ。 「う~、もう入らない」 「あんたは……ご馳走になれるからって少しは加減しなさい」 「だって美味しかったんだもん~」 「あはは、お口にあってよかったよ。味付け一緒でよかったか、ちょっと心配だったんだ」 今日のお昼は、いつも通りのレン姉ぇのご飯。どれもとっても美味しかった。レン姉ぇは上手だね。 グリは仰向けに寝転がってお腹擦ってます。多分二人前くらい食べてるから当然かな。 「さて、そろそろ本題に入ろうかね」 「おぉそうだった。飯食いながらあらかた聞いたが、あとは名前が分からねぇんだったな」 「そうね。空間の神の名前、知ってるのかしら?」 「ウェス、あんた覚えてたね」 「うん! えっと、時間の神様の名前がディアルガ。で、空間の神様の名前は……」 ……なんかドキドキしてきた。やっと、探してた答えが分かるんだね。 聞けなかった、夢のポケモンさんの名前。分かったからってどうって事は無いんだろうけど、僕は、凄く知りたいって思ってる。 「パルキアって言うんだよ」 「パルキア……」 ――わしは「パルキア」じゃ 足りなかったものが埋まるように、あの時の声が聞こえてきた。 ? なに、これ? 目の前が、白くなってく。朝、僕が夢から覚めた時みたいだ。 皆が僕の事を呼んでる声がする。でも、どんどん遠ざかっていく……。 気がついたら、僕はあそこに居た。夢で見た、あの真っ暗な場所だ。 『……なるほど、偶然ではなかったようじゃな』 「あ、夢で見た光……」 『まさかこのような事が起こるとは思わなんだ。可能性の化身イーブイ、驚きじゃな』 光は姿を変えて、あの龍の姿に変わる。空間の神様、パルキアへ。 また僕は手の上に乗せられて、パルキアさんの顔の前まで運ばれた。怖い感じはしないから、きっと大丈夫。 『きざはしとして目覚めかけていた力が、わしの名を知った事で完全に目を覚ましたようじゃの』 「力って?」 『空間へと干渉する力……わしと同じ力じゃよ』 僕に、パルキアさんと同じ力が? でも、そんな事今まで出来た事無いけどな? 『過去、わしはそなた等の世界で大きな戦をした。わし自身も傷付き、血を流した。お主の中には、そうして散ったわしの力の一部が眠っておったようじゃのぉ』 「えっと、じゃあ、返したほうがいいのかな?」 パルキアさんは首を横に振る。返さなくていいってこと? どうして? 『もうその力は、お主の血に刻まれし物。お主の一部となっておる。それを取り上げる事は出来んよ』 「血に刻まれてる? どういう事?」 『難しく考える事は無い。ただ、自分にはそういう力があるという事だけは覚えておくのじゃぞ』 「うーん?」 そう言われても、僕にはどうしようもないしなぁ。 『といっても、扱いきれぬ力は危険じゃな。目覚めてしまった以上、お主はその力を扱う術を磨かねばならないじゃろう。少し、力を貸してやろう』 僕の目の前に、パルキアさんと同じ光が集まっていく。小さくなったそれは、一つのペンダントになった。 ピカッと光って消えたと思ったら、それは僕の首に巻かれてた。わぁ、綺麗だなぁ。 『名は、なんとしようかのぉ? 「空の欠片」、とでも呼ぼうかの?』 「空の、欠片?」 『お主が、内に眠る可能性を使いたいと願うならば、それに祈りを捧げよ。わしが僅かながら導こう。それと、少々おまけもしておいたからの。それは後のお楽しみじゃ』 と言いますか、なんでこんなに親切にしてくれるんだろ? 聞いても怒られないかな? 「あの、聞いてもいいですか?」 『む? なんじゃ?』 「なんで僕に親切にしてくれるの? 今日の朝会ったばかりだし、僕のほうから出来ることって無いよ?」 『……わしの気まぐれじゃよ。リィ、と言ったの。ここをどう見る?」 「えっと、真っ暗」 『そうじゃろう? ここは……わしの夢の中なのじゃ。長き時を過ごす中で、わしは夢の見方を忘れてしまったのじゃ。じゃから、不思議な来訪者が、嬉しかったのじゃよ』 パルキアさんの、夢。真っ暗な夢なんて……なんだか、悲しい。 あ、また目の前が白くなっていく。そっか、こうなると帰るって事なんだ。 「あ、えっと、もう時間無いみたいだから、一個だけ!」 『どうしたんじゃ?』 「……また来るから、今度はもっとお話したいです!」 目の前が真っ白になる直前、パルキアさんはニッコリ笑って口を動かしてた。 聞こえなかったけど、多分「わしもじゃよ」って言ってた気がする……。 ---- 「お、おいリィ? 大丈夫か?」 景色がリビングに戻った。皆が、僕の事心配そうに見てる。 でもちょっと先に首のところを……無い。やっぱり、夢は夢って事? 空の欠片は、夢の中に置いてきちゃったのかな? とにかく、今の事を皆に話してみよう。 「えっと、変かもしれないけど……今、朝見た夢の続き、みたいのが見えた」 「それって、パルキアと話したって奴か?」 「う、うん」 あぅ、流石に皆戸惑ってる。僕自身もそうだけど。だって、今のが現実だって思えないんだもん。 僕の中に、空間の力があるって言われても、特に変わった様子は無いけどなぁ? ……ん? なんか、頭の上からパチパチ言う音が……。 「むぅ? リィ、ライト、下がれ!」 「おわ!? なんだなんだ!?」 「これって……」 パチパチ言ってたところが一瞬強く光ったと思ったら、見覚えのあるネックレスが、そこに浮かんでた。 「な、何? なんなの?」 「これ、空の欠片だ。さっきの夢の中で、僕がパルキアさんに貰ったの」 「う、嘘だろ? 流石に」 「でも、実際出てきてるしねぇ……リィ、パルキアと話したこと、言ってごらん」 「いやでも、僕も嘘かなーって思ってることなんだけど、いい?」 それでもいいってジルさんが言うから、とにかくさっきの事を話してみた。 皆目が開きっぱなしだよ。でも信じられない事が起こってるんだから当然か。 なんか僕がパルキアさんと話してる間、僕は目を開いたまま動かなくなってたみたい。それは、皆心配になる訳だよ。 「信じがたいな……」 「でも、この子が嘘を言ってる事は無いようだね。この子はパルキアの夢の中に入って、これを貰ってきた」 「ってー事は、リィの中には本当にパルキアと同じ力があるってのか?」 「試してみれば分かるんじゃないかしら? これを使えば、リィにも力が使えるんでしょ?」 フロスト姉ぇが空の欠片に前脚を伸ばして、取った。と思ったら、空の欠片は光に戻って、何時の間にか僕の首に掛かってた。 「…………」 「もう、何が起こっても不思議じゃないね」 「あ、あはははは……」 さて、それじゃあ力を使ってみようって事になったから、ウェスにパルキアの事を詳しく聞いてみた。 へぇ、パルキアさんにしか使えない技なんてあるんだ。亜空切断か、名前はカッコいいね。 「えーっと、どうやればいいんだろ?」 「まぁ、思うようにやってみろよ。出来なくて元々くらいなんだし」 ライトが言う通りだね。んと、空の欠片に祈りを捧げよ、だっけ。前脚で持って、パルキアさんを呼ぶ感じでいいかな? パルキアさん、僕に力を貸して……。 ――わしの力ではなく、自分の可能性を信じるんじゃよ。思うままに、振るうんじゃ !? 振るえって? あ、前脚に光が集まってる。これを振ればいいのかな? 「な、なんかマジで出来そうだな」 「り、リィ、窓の外にやりなさい。出来れば、芝に向かって」 「うん、分かった」 振るえだから、こう? 軽く前脚を振ってみた。 うわ、光が前脚の軌跡に沿って飛んでった。そしてめっちゃ地面抉ってる。危ないなぁ。 「おぉー……」 「これはもう、信じるしかなさそうだねぇ」 「すごーいリィちゃん! 神様と同じ技が使えるようになったって事だよね!」 「そう、みたいだね」 皆それぞれにあっけに取られてるけど、ウェスだけは目が輝いてる。正直、僕は自分の力に結構引いてる。 「これ、ご主人になんて言おうか……」 「しばらくは、言わないほうが良いかもな……」 「う、うむ……」 それに、皆には言ってないけど、空の欠片にはまだ何かあるって言ってたよね。うーん……。 可能性を信じろ、か。……危ないし、亜空切断は滅多な事では使わないようにしよう。後は何が出来るのかな? よし、折角だし色々試してみよっと。 ---- まさかでしたね、消されるとは思っていませんでした。 作品自体は復元できますが、こういった後書き等は出来ないのでかなり困ります。どうにかしてページ保護とか出来ないものですかね……。 前話へは[[こちら>燻ぶる炎に新たな輝きを]] 前話へは[[こちら>燻ぶる炎に新たな輝きを]] 次話へは[[こちら>不思議な薬の恐怖]] コメント欄、復元できる限りやろうと思います! と思ったら普通にできた! #pcomment IP:219.115.200.118 TIME:"2012-06-06 (水) 21:37:35" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E5%83%95%E3%81%AE%E3%80%81%E5%8F%AF%E8%83%BD%E6%80%A7" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; Trident/5.0)"