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伝説鳥の夏休み の変更点


writer is [[双牙連刃]]

 過ぎ行く夏休みを惜しんで、こんな作品はどうかな~って思って書いてみました。
クオリティ? いつも通り低いですよ? 期待はしないで下さい……。
では、どうぞ~。

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 人知れぬ洞窟の中……そこは、異様な熱気と光景が広がっていた。
それぞれが炎、氷、電気を体現する色をした三羽のポケモン。それが、この洞窟の中に勢揃いしていたのである……。

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「あっちぃ~……なぁ、フリーザ~、こごえるかぜでも使ってくれよ~」
「いつから馬鹿になったんですかあなたは? 私とあなたはともかく、そんな事したらサンダーが可哀そうでしょうが。それに暑いのはあなたの所為でしょう? 自重して下さいその炎みたいな羽とか色」
「んだとぉ!? それは俺の存在に対する冒涜か!? 泣くぞ!? ここでワンワン泣きだすぞ!?」

 あぅぅ、また始まっちゃったよこの二人の喧嘩……。確かに暑いからイライラするのは分かるけどさ? 怒ったらその分余計に暑くなるから止めてほしいよ~。
フリーザーのツッコミは相変わらず切れに切れまくってるし、ファイヤーはガラ悪いくせにすぐ泣くしさ……。そもそも僕を話題に組み込まないでほしいんだけどなぁ……。
あ、こんにちは。僕はサンダー。電撃ポケモンです。よろしくね♪
僕達は今何してるかと言いますと、季節は夏、人間もポケモンも夏休みなる物を満喫してるって聞いたから僕達も夏を楽しもうじゃないかって話になって、で、どうせだから何処か行こうって事になったの。
そう……なったの。なったんだけどなぁ……。

「暑苦しいんだから動かないで下さいよ。余計に暑くなるでしょう。氷付けにしますよ?」
「いちいち言う事が怖いんだよ! この冷血ビューティーが!」
「……丁度絶対零度を久々に使いたいと思ってたところなんですよ。よかったー、こんな所に 良 い 標 的 があって……」
「う、うぎゃぁぁぁぁん! いやぁ! た、助けてー!」

 このボケ鳥どもが……ツッコミが居ないと止まる気すらないの? なんなの馬鹿なの死ぬの?
このまま放置してたら僕にも被害が出そうだからそろそろ止めますか……。めんどくさい……。

「あーなんか僕放電したくなってきちゃったなー。しちゃおうかなー放電」
「うっ!」
「ひぇ!?」

 僕の一言で二人の動きが止まる。僕達のヒエラルキーは、僕>フリーザー>ファイヤーって感じかな。もちろん僕がバランサー。
本来僕はフリーザーの氷系の技に弱いんだけどね、全員が持ってる飛行タイプ……それの弱点を有していてなおかつこの中で一番素早い僕が一番になる事が出来たんだよ。
それはもう険しい道だったよ……なんてったってフリーザーやファイヤーが一番強くなったら止め役が居なくなるからね。それはもうブレーキの壊れてるトロッコに飛び込むようなものだからね……。

「されたくなかったらちゃーんと話し合いする事。いいね?」
「わ、分かった! 分かりましたから放電は止めて下さい!」
「うぅぅ……フリーザーもサンダーも怖い……もうやだ……」
「ごめんごめんファイヤー。フリーザーもそんなに怯えないでよ。ちゃんと話し合いしてくれればもう言わないから。ね?」
「本当か? 本当に本当か?」
「本当本当。じゃ、何処行くか決めようか」
「う、うん!」
「は、はい……」

 泣いてるファイヤーの涙をそっと羽で拭いてあげる。ちょっと機嫌良くなったかな? フリーザーは替わりに震え上がっちゃったけどね。
も~、これじゃ子供をあやす親みたいじゃないか。僕……この中じゃ一番年下な筈なんだけどな……ま、いっか。

「じゃ、もう多数決で良いよね? 山か海か、好きな方に挙手してね。まず、山が良い人~」

 はい、シーン……ってか現在進行形で山には居るからね。この選択肢は必要無かったか。

「じゃあ海って事で良いよね」
「おっしゃ~! 海だ海~!」
「どうせなら涼しい方が良いですからね」
「じゃあ準備して~。持ち物なんかは各自に任せるからね」

 こうして僕達は解散し、各自準備をしてまた合流する事になった。二人が変な物持ってこない事を祈っておこうか……。

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「えっと……オレンの実人数分と各種状態異常回復の実……後は何要るかなぁ?」

 森を飛び回りながら必要そうな物を探してます。ピックアップした物は揃えたし、後は余計になるからどうしようか検討中。
本当なら食べ物何かも用意していった方が良いんだけどね。いかんせん首に鞄を掛けてるだけだから重い物は持てないんだよね。

「サンダー様~! お出掛けですか~!?」

 おや、下から声が……あ、この森に住んでるカクレオンさんか。手振ってくれてる。ちょっと嬉しい。
この辺りの森はたまに僕が様子を見に来てるんだ。たまに酷い人間がポケモンの乱獲しに来てるんだよね~。だからちょ~っとばかしお仕置きを……ね♪
いや~、人間達も身悶えて喜んでくれるから殺りが……ん、んん、やりがいがあるんだよね~。
さて、呼ばれたからには降りようか。何かあったかな?

「こんにちはカクレオンさん。今から海へ行ってくるんですよ~。あ、もしかして何かありました?」
「いえいえ! サンダー様がお守り下さる様になってからはかなり平和ですぞ~! そうですか~海ですか~」

 へぇ~そうなんだ。平和に貢献出来たなら良かった良かった♪

「そうだ! 海へ行くなら面白い物を入荷してるんだった! ちょっと待ってくださいね!」
「? 面白い物?」

 広げてあった絨毯の上に載ってる物から何かを探してるみたい。こんな所で物売ってて儲かってるのかなぁ?
何か掴んで……こっちに持ってきた。大きい物じゃ無いっぽい。

「ささ、これを持って行って下さい!」
「これは……タネ?」
「はい! すいみんぐのタネと呼ばれてるもので、水タイプ以外のポケモンでも水の中を泳げるようになるとか……」
「……これ、鳥ポケモンでもいけるんですか?」
「多分……いけると思いますが……」

 な、なんか曖昧だな……。それに売り物を貰う訳にはいかないし……。

「いや、タダで貰う訳にはいきませんし、多分行っても泳ぐ事は無いと思うので……」
「そう言わずに貰ってくださいよ~。正直、この辺りにこんなの使うポケモンも、必要な場所もありませんし!」

 ……なら何故入荷したし? まぁいいか。そういう事なら貰っておこうかな。ファイヤー辺りにあげてじっけ……おほん、楽しんでもらおうか。

「それならお言葉に甘えて、頂いていきますね。ありがとうございます」
「はいー! もし何か必要になったら私にお申し付け下さい! 何でも仕入れてみせますよー!」
「は、はぁ……覚えておきます。では」

 売れない物まで仕入れるくらいだからね……。今度きいろグミ十個ぐらい頼んでみようかな?
さて、寄り道しちゃったし、そろそろ集合場所へ行くとしようかな。


 その頃……


「ん~、何を持っていけば良いのやら……」

 困りましたね……。持ち物は各自に任せると言われましたが、別に必要な物があるとは思えません。どうせ泳げる訳ではありませんし。
大方ファイヤーがはしゃいで何か起こして大変な事になるだけでしょうし……。お仕置き用に何かファイヤーの嫌う物でも持って行きましょうか。
えっと、彼はおくびょうで寂しがりですから……弱点はすっぱい味ですね。何か丁度良い木の実は無いですかね?
飛び回っていると……おや? あれは……。何か木の実が生ってますね。行ってみましょうか。

「ふむ、イアの実……でしたかね? これは確か……」

 前に食べた時にすっぱかった覚えがありますね。で、体力も回復したような……ふふふふふ……お仕置き用にはうってつけではありませんか!
二、三個採って……これでよし。
後はどうしましょうか……別に必要な物は思いつきませんね。現地でどうとでもなるでしょう。
あ、ついでにサンダーに日頃のお返しを……うふふふふふ……。
ふふふふふふ……それなりに楽しくなりそうですね。確かサンダーは……。


 さらにその頃……


「う~ん……どうするかな……」

 とりあえず見渡す限り持って行きたい物ばかりなんだが。困ったな……。
まず、フリーザー対策のかえんだま。これは持って行きたいし、個人的にも持ってると落ち着く。
で、せんせいのツメ。何事も素早く動ける方が得ってのはサンダーを見てて分かったからな。これもほしい。
あと、これも……んで、これだって……。あー! 決めらんねー!

「何とかして全部持ってくのは……やっぱ無理だよなー」

 せめて大事なもんだけ……あ、これ……。

「サンダーにやろうと思ってた……」

 綺麗な音がする奴。確か……スズ、だったかな? こういうの好きか分からんかったからそのままにしてたんだよなぁ……。
ついでになっちまうけど……喜んでくれるかな? ……渡してみようかな……。

「おし、決めた!」

 かえんだまと……スズ! この二つで行こう!
サンダー……笑ってくれるかな? へへへ……。

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「お待たせ~。僕が一番遅くなっちゃったみたいだね」
「いえ、私もそれほど変わらずに来ました。ファイヤーはもっと前に来てたみたいですがね」
「いや~楽しみでな。揃ったんだから早く行こうぜ~!」

 ここに居てもすること無いしね。さっさと移動しますか。

「オッケー。じゃあ、海に向けてしゅっぱ~つ」
「イエーイ! 俺が一番だぜ!」
「落ち着きがありませんね……冷凍ビームで打ち落としますよ?」
「ひぇぇっ!? こ、怖えぇって……」
「も~、出発して数秒で喧嘩しないでよ……」

 僕の胸中には心配しか渦巻いてないんですけど……本当に大丈夫かな? せめて無事に海までは行きたいんですけど……。



 僕の予想と反して行きは割とスムーズに進んでこれたよ。何故かフリーザーがたまにこっち向いてニヤニヤしてるのが気味悪いんだけど……。
あ、またやってる。……本当に気持ち悪いな。打ち落としてやろうか。電気ショックを忘れずに覚えてんだからね?
なんかファイヤーもいつもより大人しい……っていうか僕の方チラ見してくるさ……何? 数の暴力に出るんなら僕はリーサルウェポンを使う事も辞さないよ?
とか何とか思ってたら海が見えてきました。おっきいよ~! テンション上がるよ~!

「海だよ~! 涼しそうだよね!」
「ふむ、風に湿り気が出てきましたね。潮風ですか……」
「お~……なんか近付いてくると怖くなってくるな……」
「ファイヤーは炎タイプだからね。でも大丈夫大丈夫。何も入るとは言ってないからね」

 各々に思う事はあるけれど、まずは一番近い砂浜に着地~。しなきゃ良かったと思ったのは一瞬後でした……。
わ~い一般のポケモンさんがいっぱいだ~。これ僕ら目立つ。寧ろ目を惹かないほうがおかしいよね。

『わ~! ファイヤー様達だ~!』
「え、ちょっ、のぉぉぉぉ!?」

 集団暴行……ならぬ集団ハグの刑に処されておりますよ。あっつい! 死ぬ! マジでこの密着は暑くて死んじゃう!
な、なんでこんなに僕達大人気!? 僕以外の二人はそんなに外を出歩いてないって言ってたのに!?

「ちょっと待って~! 皆さん落ち着いて~!」

 な、なんとか離れてくれた……。うぅ、視線が痛い。珍しいのは分かるけど、そんな好奇の視線を送らないで……。
はっ、そういえばフリーザー達は!? 

「はっはっは、いやぁ皆さん、お元気ですか~」

 ……なんで? なんでちょっと手馴れた感じなのフリーザー? 寧ろ自分から抱きついて行ってるよ……。へ、変態?
で、ファイヤーは?

「うあ! ちょっと! へ、変なところ触るなって! ちょっ、アッー!」

 ……楽しんでるみたいだから放置の方向で。もみくちゃにされれば寂しくないでしょう。
ん? 集団の中から一匹……人間の着る法被って奴かな? それを着たポケモンが居る。あ、こっち来た。
「いや~珍しいお客様ですな! 私、あそこの海の家の主人でフローゼルと申します! お休みになられる際はぜひご利用下さい! さぁさぁ皆! サンダー様達も困ってらっしゃる! はい散って散って!」

 お~、フローゼルさんの一言で囲まれてる状態から開放された。すごーい。

「助かりました。ありがとうございます」
「いえいえ。私、この海岸の監視員も兼ねてるんでね。何かありましたらおっしゃってください。何か出来るかもしれませんし」
「そうさせてもらいます」
「へいっ! では、私はこれで!」

 良かったーフローゼルさんみたいな方が居て。誰も居ない浜とかに移動しなきゃいけないかと思ったよ。このままここに居て大丈夫そうだね。

「ふぅ……さて、と二人とも~大丈夫?」
「ん~もう少しスキンシップをとってても良かったんですがね~」

 フリーザー何故ほっこリしてるん? そういえばフリーザーの抱きついてたのってなんか牝が多かったような……。気のせい、気のせいって事にしておこう。

「は、はふぅ……」

 ファイヤーもう昇天しかけてるよ……。別にいいけど。

「まぁ……これから遊ぶんだしね。それじゃ各自自由って事で良いよね? じゃ、かいさ~ん。何かあったら僕のところに来てね。なるべく分かりやすいところに居るから」
「心配要りませんよ私は。別に騒いだりしませんから」
「わ、分かった……そんじゃ……」

 フリーザーとファイヤーがそれぞれ海へと向かっていく。僕は……適当に、砂浜の散歩でもしようか。

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「いやぁ、お嬢さんも綺麗ですね……どうですか? 少しお話でも」
「えっ!? えっと、あの……」

 おやまぁ初々しい反応ですね。可愛らしいではないですか。
輝く太陽の下、綺麗なポケモン達を見るのはなかなか……ふふふふふ……。まぁ、私の美しさにひけをとらないと言ったところでしょうか。
それにしても……私達の影響というのは大きいようですね。海岸中のポケモンの視線が自然と集まってきてしまうのですよね。
お、あのミロカロスもなかなか、良いですね~。むふふふふ……。




 ひゃ~、つめて~! でも気持ちが良いぜ~! やっぱり海に来てるんならちょっとは水に触れねぇとな!
てな訳で海に特攻したんだが、周りの奴がビックリしてるぜ。そりゃ、炎タイプだから? 水に入るのは変かもしれんが……暑いんだよ! 俺だって涼しくなる権利はある!

「あ、あの……ファイヤー様? 水に触れても大丈夫なんですか?」

 お? なんか聞かれちまった。そりゃあね、別に体が炎で出来てる訳じゃないから大丈夫だが?

「あぁ、平気だぜ」
「そうなんですか……てっきり水に触れると消えちゃうんじゃないかなって……」
「いや、消えねぇよ!? 試しに水掛けてみてもいいぜ!」
「ほ、本当ですか!? では!」

 ……周りの奴が一斉に構えたんだが? うそぉん。




 皆、それぞれに楽しんでるみたいだね。良かった良かった。

「わ~……すご~い! たか~い!」
「どぉ? 気に入った?」
「うん! サンダーさんありがとう!」

 あ、僕? 今ね、遊覧飛行のボランティア中。空中からなら全体が見えるし、何より楽しんでもらえるしね♪
今乗せてるのはニャルマーとエネコ。兄弟らしいです。僕の上でご機嫌そう……良かった。
でも、飛んでばかりいると疲れちゃうし、そろそろ降りようか。

「じゃあ、そろそろ下に戻るよ~。ちゃんと掴まっててね」
「は~い」

 すい~っと降りて……着地。うん、我ながら完璧!

「楽しかった~。バイバ~イ!」
「は~い、気をつけて遊んでね~」

 さて、来てからずっと飛んでたから疲れちゃった。休憩休憩。因みに散歩は開始一分もしないで止めました。する意味を感じなかったよ……。

「いや~見てましたよ。すいませんね、お休みにいらしてるのに……」
「あ、フローゼルさん。いいんですよ。遊覧飛行は僕が勝手にやった事だし、皆楽しそうでしたからね」
「しかし……それではサンダー様が楽しめないのでは?」
「いいえ、僕、誰かが笑ってるの見るの好きですから♪」
「そうですか? 他のお二方は十分にお楽しみのようだから良いんですが……」

 本当にねぇ……フリーザーは片っ端から他のポケモンに話し掛けまくってるし、ファイヤーは海で水掛けバトルに興じてるみたいだし。
ま、楽しみ方はそれぞれだよね……。
にしても、解けこめてるみたいで良かった。こうしてみてると、伝説のポケモンとか、そうじゃないポケモンだとか、楽しんでる時は関係ないんだね。
ほら、今もファイヤーが水攻めを受けて……って、はいぃぃぃぃl!?
ファイヤー軽くピンチじゃない!? ……自業自得であると言えなくもないけど。

「はぁ……楽しみ過ぎてファイヤーが大変な事になってるんで助けてきますよ」
「あ、本当だ。私も行っときますか……」
「じゃあ、一緒に行きましょうか?」
「ですな」

 って訳で、フローゼルさんとファイヤー救出に向かおう。……飛ぶのたるいから歩いて。

 う~わ~。近付いていったらファイヤーが集団放火……じゃなくて、集団放水の餌食にあってるのがよく分かる~。い、生きてるかな?

「お~い。ファイヤー大丈夫~?」
「こら~。何があったんだ?」

 フローゼルさんゆるいな~。技で攻撃されてるんじゃなくて、ただ単に水掛けられてるってだけだからそれほど心配する事も無いけどさ。
あ、水撃止んだ。中央に居たファイヤーは……もちろんビタビタに濡れてるよね。うわ、空を見上げたまま動かない……。

「お~い。ファイヤー……ちょ、もしも~し」
 
 目の前で羽をヒラヒラさせてみた。反応無いなぁ。鼓動してる? ちょっと胸に耳当ててみようか?

「ていっ! サンダー隙ありっ!」
「へぁ!? わぷっ!」

 不覚! ファイヤーの羽に包まれたと思ったらそのまま海に倒れこみやがったよ! 冷た! 
うわぁぁぁ! 羽毛に水が! 海水が染み込んでくるぅぅぅ!

「なはははは! どうさ! 涼しいかサンダー!」
「涼しいかって……確かに涼しくはなったけどさ……」

 ビッショビショなんですけど。僕、濡れる気は無かったんだけどなぁ……。

「あっちゃー……大丈夫ですか? サンダー様?」
「大丈夫ですけど……いきなり僕を海に引きずり込むとはね。どういうつもりさファイヤー」

 心配してくれたフローゼルさんに返事をしつつファイヤーに質問。返答次第では僕のイナズマオーケストラ(一匹だけど)がファイヤーを貫くよ♪

「いやー水掛け合うだけだったんだけどさ? 結構楽しいし、どうせならいっぱい居た方が楽しいだろうと思ってよ!」
「……誘うんならいきなり海にダイブさせないで口で言ってよ……。ちょっと飲んじゃったじゃない……」
「え? あ、あぅぅ……サンダーごめん……」

 口の中がしょっぱいよ~。でも、楽しませようと誘ってくれたんなら、そんなに責めないでおこうか。ファイヤーしょげちゃってるし。
むすっとしたふりしながら……不意打ちだ!

「それっ!」
「わっ! ぷぁっ!?」
「あははは! ファイヤー変な顔! ビックリした?」
「ビックリした……怒って……ないのか?」
「別に? 涼しいのは確かだしね」

 羽で水をチャプチャプ飛ばしてみせる。こうやって水に浸かる事なんか滅多に無いし、たまには思い切り濡れてみるのも良いかもね。

「って訳で。皆さん、僕も参加して良いですかね? ファイヤーが迷惑掛けたついでに」
『良いですよー!』
「あれ? 良いんですかサンダー様? 止めに来たんじゃ……」
「まぁ、こうなっちゃいましたからね。そうだ。フローゼルさんもちょっと遊んでいきませんか? 多い方が楽しそうらしいですから、ね」

 ファイヤーにウインクなんかしてみたり。あれ、恥ずかしかったかな? 顔赤くなっちゃった。……元々か。
そういう事なら! って言って結局フローゼルさんも参加~。それどころか、周りに居たポケモンさん達も集まってきちゃってどんどん数が増えていくよ。
今まさに、『伝説ポケモンも参加! 大水掛け祭り!』が開催されそうになっています……。
そうだ。すっかり忘れてたけど、ファイヤーにアレあげてみようか……。

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今回はここまで。まだまだ続くのです。
 ……ね た ま し い……
何故私抜きであの二羽は盛り上がっているんでしょう! それもあんなに沢山のポケモン達に囲まれて!
そもそもファイヤーは炎タイプなのに率先して海の中に入ったと思えばサンダーまで巻き込んでのあの大騒ぎ! 伝説のポケモンである自覚が足りませんね!
サンダーはサンダーで、止めに行ったのかと思ったら一緒になって遊びだすとは! ……どうせなら私も誘ってくれれば良いのに!
……はぁ……。私の方はさっきまでそれなりに多くのポケモンと話をしたりしてたのに、今はすっかりポツーン状態ですよ……。みーんなサンダー達の方に行ってしまいました……。
お? サンダーが何かをファイヤーに渡してますね? あ、ファイヤー喜んでます……。かー! 二人だけでどんどん楽しそうにしているじゃありませんか! 妬ましい……あぁ、妬ましい!
ふふふふふ……ついに……ついにこの木の実達を使う時が来たようですね!
問題はいかに警戒心を解かせてこれを摂取させるかですね……う~む……。



 フゥ……ついつい私も遊んじまった……。海の家もほったらかしで。
ファイヤー様もサンダー様もよくスタミナ持つな。あれからずっと他のポケモン達の相手やら何やらを続けてますわ。
それにしてもサンダー様、珍しい物をお持ちだったな……初めて見たぞすいみんぐのタネなんて。それをファイヤー様に渡してしまうんだから、サンダー様も太っ腹だよな~。
さて、海の家も放置しとく訳にはいかんから戻ってきたが、特に荒らされてたりはしなかったか。

「もしもし、フローゼルさん」
「ん? あぁ、フリーザー様でしたか。何か御用ですか?」

 ビックリした~。この方こんな所に居たのか……。休んでた様子でも無かったし、どうしたかな?

「誰も居ないから困ってましたよ。ここ、木の実でジュース何かは作っていただけたりしませんか? この木の実なんですが……」

 これは……イアの実とマゴの実? それなりに珍しい実だが……どっちも効能が若干危険なんだが……。

「あの、フリーザー様。一応聞いておきますが、すっぱい味と甘い味はお嫌いではありませんよな?」
「? 嫌いではありませんが、どうしました?」

 ……この方、この木の実の効能知らないのか? ……適当に見つけた美味しそうな木の実をジュースにしようと思っただけかね?

「いえ、それなら良いんです。ジュースですね。ミックスジュースで良いんですかい?」
「いえ、別々のジュースにして下さい」
「はぁ、分かりました」

 どっちも複数個あるみたいだし……ん、どっちも別のジュースには出来るな。
さて、それなら仕事するとしますか。



 いや~予想以上に楽しんじゃったな~。まさかあのタネで本当に泳げるようになるとは思わなかったけど。
見て見て~。ファイヤーが水泳をしている貴重映像が公開されてるよ~。(映像じゃなくて生放送状態だけど)
炎タイプでも鳥でも普通に使えるって凄いなあのタネ……。やっぱりタダで貰うのにはもったいない効果だよね……。今度カクレオンさんにはお礼の粗品でも持っていこう。
それにしても、今体を乾かしてるところなんだけどね……海水だからベタベタしてきたの。真水浴びないと駄目だなこれ。

「お楽しみのようでしたねサンダー?」
「あれ、フリーザー? どうしたの?」
「お疲れでしょうから飲み物でもいかがかと思いましてね。どうですか?」

 ……怪しい。フリーザーが誰かに気を使うことが。唯我独尊を体現したような性格してるのに。

「そのジュース……味は?」
「ん!? あ、味ですか!? もちろん甘くなんか無いですよ!? はははははっ!」

 隠し事が出来ない奴で良かった。僕が甘いの好きじゃないのに甘い飲み物持ってくるとはね……そんなに感電したいのかな~? それならそうと言ってくれればいつでも喜んでしてあげるのに♪

「フリーザー」
「ほ!? な、なんですか!?」
「天誅ぅぅぅぅ!」
「へぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 天より轟け我が雷よ! ってな訳で消し炭が一つ誕生しましたとさ♪ めでたしめでたし!
……でもなぁ、天誅した後だけど喉が渇いてるのは合ってるんだよね。これ、味さえ我慢すれば飲めるかな……。



 いや~遊んだ遊んだ! 泳ぐのってあんなに楽しかったのか! 海の中も綺麗だったし満足満足♪
……ん? なんだなんだ? 何か砂浜に黒い物が……。

「う、うぅ……」
「おわっ!? ふ、フリーザー? 何やってんだよこんなとこで?」
「さ、サンダー……怖、い……うげっふぅ……」
「フリーザー!? おい、どうしたんだよ!? サンダーがどうしたって!?」

 怖いって言ったよな? サンダーが怖いのか? まぁいつも怖がってはいたけど……でも今日はずっとサンダー機嫌良かったしな?
あれ、ところでそのサンダーは? 恐らくフリーザーをこうしたのはサンダーだろうから近くに居ると思うんだが……。
……はっ! 後ろ!?

「ふぁいやぁ~……あたまがくりゃくりゃすりゅ~」
「へぁ!? どうしたんだサンダー!? 大丈夫か!?」

 千鳥足でこっちに近付いてきてた~! な、なんでこんな事になってんだ?

「めがまわりゅよ~。ふぇぇ~」
「目!? 何があったんだよ!? 誰か見てた奴いないか!」
「サンダー様ならこれ飲んだ後に変になってたよ」

 おぉ、通りすがりのポケモンナイス! これは? ジュースみたいだな。これを飲んでおかしくなったか……。
ちょっと舐めてみるか? でも、俺までおかしくなったら大変だし……。あ、そうだ! さっきのフローゼルならなんか知ってるかも! 行ってみるか!

「待ってろよサンダー……すぐに直してやるからな!」

 うぉぉぉ! ……なんだっけ? そうだそうだ。海の家までダッシュだーーーーーー!

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「おい! フローゼルは居るか~!」
「うわぁ! ファイヤー様!? どうされました!?」

 居たー! まぁ、ここの店主なんだから居るわなそりゃ。
そんな事よりサンダーの事聞かねぇと!

「サンダーがおかしくなっちまったんだ! 俺じゃ直し方が分かんねぇ!」
「サンダー様が!? いったいどうして!?」
「なんか変なもん飲んだみてぇなんだ! とにかくちょっと来てくれ!」
「わ、分かりました! ……変な物飲んだ? ま、まさか……」

 ? フローゼルが一瞬固まったような……そんなの今はいい! とにかくサンダーのとこへ戻るぞ! うぉぉぉぉぉ!



 う~わ~! くりゃくりゃがにゃおりゃにゃいよ~! めがまわりゅ~……。
ふぁいや~もどっかいっちゃうし~、どうしゅればいいにょ~……ふぇぇぇ~。

「サンダー無事かー!」

 ふぁいや~のこえがしゅりゅ~! ら、らすかっら~!

「ふぁいや~! うぇぇぇ~」
「サンダー!? うわっ! いきなり抱きつくなって!」
「ばかぁ~! いひないひとりにひないれよ~!」
「駄目だ、もうまともに呂律も回ってないぜ……どうだ、直せるかフローゼル」
「これは……混乱してますね。やっぱり……」
「やっぱり? なんか知ってんのか?」
「はい……一先ずはサンダー様を治してからお話します。キーの実があればそれほど難しくないんですけど……」
「き~のみありゅよ~? ぼぉくのかばんのにゃか~……ふぁいや~ふかふか~」
「ぬぁぁ! フローゼル早く! 早くサンダーを直してくれ!」
「サンダー様の鞄……落ちてるこれかな? お! 本当に入ってる! ファイヤー様これを!」
「サンキュ! こら、大人しくしろってサンダー! こ、の!」

 んぐ!? う、あぁ……。
……よし僕復活! とんでもない事になる前でよかった……。もう二度とフリーザーから渡された物は口にしないでおこう……。

「どうだサンダー? 元に戻ったか?」
「はぁ……ごめんファイヤー。迷惑掛けちゃったね」
「その分だとお戻りのようですな。良かった……」
「フローゼルさんもごめんなさい……」
「いえ、私もこの騒ぎの一端に関係してるようなんで……」

 ……え? なんでフローゼルさんが?

「サンダー様が飲んだのってこれですよな? 私なんですよ。これ作ったの……」

 フローゼルさんが転がってた僕が飲んだジュースの容器を拾い上げて片付けてくれてた。なるほど、『作った』のはフローゼルさんだったか……。

「なにぃ!? じゃあ、あんたがサンダーを!?」
「あぁ、ファイヤー違うよ。悪いのはフローゼルさんじゃない。ぜ~んぶ悪いのはフローゼルさんにこのジュースを作らせた奴だから」
「いえ、私もマゴの実なんてジュースにしなけりゃよかったんですよ。でもまさか自分で飲むんじゃなくて、最初からサンダー様達に渡すのが目的だったとは……」
「んなこたぁいいんだよ! で、誰なんだそいつは!?」

 静かにフローゼルさんが指し示すのは……僕はもう知ってるから良いけどね。
さて、まさかマゴの実を僕に仕掛けるとはね……。フリーザーがこんなに命知らずだとは思わなかったよ。
さぁ、 ど う し て く れ よ う か ?



 う、ぐぁぁ……やっと痺れが取れましたよ……まさか飲ませる前に雷が降ってくるとは思いませんでした……。

「ふりぃぃぃぃざぁぁぁぁぁぁぁ……」

 ……嫌な予感しかしません。えっとこれは、振り向いたらそれが死亡フラグと呼ばれる物になるのではないでしょうか?

「大丈夫。振り向かなくてもおめぇの運命は決まってる。しかも俺にもとんでもないもんを飲ませようとしてたみたいだしな」

 ファイヤーにはいつからエスパーの能力が付加されたんでしょうか? 心の声を読まれるとは思いませんでした。

「フリーザー様……やっぱり他人の事をおとしめようとしちゃあいけやせんぜ。人を呪わば穴二つ。聞いた事ありやせんか?」

 そんな言葉を聞いた事もあった気がします。私の場合、穴なんてレベルの物で済みそうにないですけど。

「謝っても許す気は無いけど、せめて遺言くらいは聞いてあげるよ。何か言い残す事はある? 無い? 無いよね? 実はそれも聞く気無いし」

 サンダー、それは無慈悲にも程があるんじゃないですか? 遺言も聞かないなんて……。
皆さん、出来れば私の事を忘れないで下さい。例えこの物語の中で一番目立たなかった存在だとしても覚えていてほしいんです。
あぁ、もう時間は残されていないようです……。背中の方からバチバチっって音と溶けてしまいそうな程の熱気が伝わってきます。
それでは皆さん……サヨウナラ……。

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「まぁ、色々あったけどさ。楽しかったよね」
「あぁ! 初めて海にも入ったし、他のポケモンとも仲良くなれたし!」
「満足頂けたみたいですね。ここの管理人としても嬉しいですわ」
「あ、フローゼルさん。ソフトクリームご馳走様です」
「これも初めて食ったけど美味いな!」
「そいつはどうも! 迷惑料には足りないくらいですがね」
「迷惑なんて。フローゼルさんには助けてもらってばかりでしたよ」

 真っ赤な夕日を見ながらフローゼルさんの海の家で夕涼み中。海で見る夕日は綺麗だね~。
そろそろ海に来てたポケモンさん達もそれぞれの家に帰っていくみたいだね。あ、皆僕達に手、振ってくれてる。嬉しいなぁ。
今日は楽しかったなぁ……。また、皆と遊びに来たいな……。

「なぁ、サンダー。また、さ。どっか一緒に遊びに行きたいよな。皆で」
「……ふふ、あははは」
「な、なんで笑うんだよ」
「いや、そうしたいなと思っただけ」

 おんなじ事考えてるとは思わなかったけどね。うん、また、ね……。

「その時は私もお供させてもらいましょうか! な~んて」
「良いですね。誘いに来ちゃおうかな」
「おぉ! フローゼルも一緒だ!」
「あれれ、冗談で言ったんですがね? でも、そう言って頂けると嬉しいですな」

 静かになりつつある砂浜に僕達の笑い声が広がっていく。
波の音に混ざって、僕達がここに来た思い出として、ずっと残ってくれないかな……。なんてね。
夏ももう、終わりに近付いていくね……。でも、寂しくなんかないよ。


 また来年……夏はまた、来るんだからさ!


「さてと。そろそろ僕達も帰ろうか」
「そうだな。あ、ちょっと待ってくれよサンダー」
「ん? どうかした?」
「いや、すいみんぐのタネ貰っただろ? だ、だからこれさ、お返しに貰ってくれねぇか?」
「え? これ……」
「貝殻の鈴じゃないですかい! 海で渡すならもってこいのもんじゃないですか!」
「へ? そうなのか?」

 ……チリーン……

「綺麗な音……ファイヤーありがとう! 大切にするね!」
「お、おぅ!」

 こうして、僕達の夏休みは終わった。いつもよりもずっと楽しくて、忘れられない思い出を残して……。


あ、因みにこれは後日談なんだけどね……。
僕とファイヤーがボッコボコにして木に吊るしたフリーザーは、なんちゃって観光名所としてしばらくあの砂浜を活気付かせたみたいだよ。
フローゼルさんの海の家の収入に貢献したんだから、良かった良かった♪

 じゃ、そういうことで! 皆、バイバーイ!






「こんな終わり方でいいのか?」
「いいんじゃない?」
「よくないですよ! 死ぬかと思ったじゃないですか!」
「あ、フリーザー帰ってきたんだ。ふーん」
「ふーんて! サンダー冷たくないですか!?」
「冷たいのは君でしょ?」
「そうですけど! くっ、もういいですよ! すねてやるー! うわーん!」
「……フリーザーは放置の方向で。じゃ、今度こそ本当に!」
「「バイバーイ!」」

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「伝説鳥の夏休み」いかがだったでしょうか。なんとか夏休みが終わる前に仕上がりました……危ない危ない。
皆さんもサンダー達のように夏は楽しめたでしょうか? 楽しめなくても大丈夫! また来年があるさ!(作者自身に言い聞かせてます)
ではではこの辺で。今度は次回作か、幻影シリーズか光シリーズが出来たらお会いしましょう。さようなら~。

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