ポケモン小説wiki
仮 の変更点


題名未定の長めの作品
プロローグぽいの

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現在時刻……夜明直後、曙
本日の予定……学校で考査……中止。街で遊ぶ……うん、決定
見張り……無し
これぞ、好機

まだ朝日も完全に地平線の上に顔を出してはいない、つまりまだ大体のポケモンの目では何も見えない程暗い個室の中を、早々に目を覚まし寝ていたベッドから降りるサンダース。何も見えていない筈なのに、物の散乱した室内を慣れた足取りでいっさい何物にもぶつからずに、なんと閉まっていた窓まで開けてしまった。まさに、サイレント。
「ここまではいつも行けるんだよね……」
大胆、かつ慎重に事を進めるサンダース。震える足を、少しずつ外の地面につけて、四本ともついたところで深い深呼吸。昇り切ってしまった朝日はステルスな行動をするには邪魔なことこの上ない。
ご丁寧に一晩中一睡もせずに立っていたと思われる若い番兵は、夜が明けてほっとしたのか、屋敷の壁にもたれかかって即座に深い深い眠りへと堕ちる。起こさぬように抜き足差し足で通り過ぎるサンダースの目は真剣そのもの。そんなに考査が嫌いか。
交代の隙をついたり、明後日の方向を向いた隙に持ち前のすばやさでやり過ごしてしまうサンダースの顔の緊張がほぐれた。裏門である。
それでも油断はしない。まだサンダースには障害が残っている。厄介な、同い年のお付きの者。何であんな風に育ってしまったのかは本人のみぞ知る、らしい。
「火の用心!」
煌々と燃えていた篝火が、声と共に消し炭になる。と同時に、消えたばかりの篝火の煙が、不意に揺れた。何かが降ってきた、そう表現するのが相応しいのだろうか。
「今日こそは逃がしませぬぞ!」
「げっ、ギーフ」
「これ以上学校はサボらせませぬぞ。そもそも貴方は……」
「ああ、五月蠅い五月蠅い……」
呼ばれて振り返ったサンダースの前に立ちはだかるのはシャワーズ一匹。お小言は日常茶飯事のようだ。
「残念ながら、行動パターンは把握しておりますゆえ」
「攻撃パターンは知らないでしょ?」
サンダースは前足で地面を蹴っ飛ばした。が、舞い上がった砂はあっけなくシャワーズのはいたみずでっぽうに飲み込まれ、無意味に。
「すなかけは無駄です」
「残念、でんじは!」
水をはいたあとの、僅かばかりの硬直の間に、もう次の攻撃を発するサンダース。ワザと当たるか当たらないかの向きに放つのは技術なのだろうか。
「うあっ」
避けられる攻撃は避けてしまう、悲しい習性に敗れたシャワーズは、サンダースの逃げ道をあけてしまう。
「ほら、とどめ」
「ぎゃあああああ……」
今度はまず避けるのは無理な至近距離からでんじはを撃ち込み、相性の悪いシャワーズは苦しそうに悶えながらその場に崩れ落ちた。サンダースは全身の力を抜いて、こうそくいどうの予備動作に入る。
「ざーんねーんでーした♪」
「あべべ……チェニミ様が……チェニミ様が逃げるぞうぼえぉぁ……」
声を聞きつけて駆けつけた、大層な兜を被ったカメックスでは、こうそくいどうを始めたサンダースを止められるはずもなく――次の瞬間には、既に二匹だけが取り残されていた。
「くそー……だから一階にチェニミ様のお部屋はやめておいた方がと申し上げたのに……」
「ギーフ殿、どういたしましょう」
「草の根を分けてでも捜すに決まっておるでしょうが! 第一、チェニミ様が逃げた先、何があったと思っておられる」
「……賊か!」
「そのとーり! で御座いますぞ番兵長殿……こうしちゃおられぬ……寝ている番兵を叩きおこせ! 全員だ、全員! 第二級非常事態である!」
「何もわざわざ裏から出て行かなくたってよいのにな!」
「過ぎた事を愚痴っても仕方がありませぬぞ!」

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「はー……一仕事のあとの風は気持ちいいなっと」
草原に出て、大きくのびをするサンダース。一仕事とは物もいいようである。ばきばきと首の辺りがなった。
遙か先に山々が見えるのを除いて、自分の他には何もない一面草原を風が吹き抜ける。しかしそれは確かにむわっとした気持ちの悪い風ではないのだが、どこかのんきに気持ちよくうけられるような風ではなかった。
「んー……サボって正解だったな~」
とうとう横になって新緑のカーペットをごろごろ転がり始めた。

予期せず、光が遮られ、視界が暗くなった。こちらが動いて影に入った訳ではない。何物かが後ろに立っているのだ。
「よう。どこの嬢ちゃんが朝っぱらからこんな物騒なところで遊んでるのかナー?」
声を掛けられ、跳び上がらんばかりに驚いたサンダースの後ろには身体の鎧が傷だらけの、見るからに悪さの漂うボスゴドラ。
「ど……どこから……いえ、いつから後ろに……」
「こまかいこたぁ良いんだよ……企業秘密ってところかね」
サンダースでは、天地がひっくり返るか、若しくはめざめたパワーが運良くボスゴドラに有効なパワーでないと敵うはずがない。後ずさりして、加速の体勢に入った。
「おっと、逃げんじゃないよお嬢ちゃん……いいとこの出身だろ? え? 血筋はいいんだろ?」
すっかり逆立った体毛を、物ともせずに掴み上げるボスゴドラ。サンダースは地面から引き離されて、宙ぶらりんの状態。それでも渾身の10まんボルトを放つが、案の定効果無し。お仕置きだと言わんばかりに、掴む力が強くなった。
「痛っ……」
「おっと、悪い悪い。でも、下っ端が勝手なことすると粛正されっからな……親分に差し出すか」
のっしのっしと、山の方へと歩き出す。サンダースにはなんの覚悟も出来ていない。サボるんじゃなかった、これからどうなるんだろうと不毛なことを考えるしか出来なかった。
「諦めな。ひひひ……ぬぅぉあっ」
突然、ボスゴドラが背中から倒れ込んだ。
見れば、足下にはくさむすびの跡が。
「こっちだ」
解放されたサンダースは、呼ばれた方に距離をとる。呼ばれた先には、一匹のリーフィア。わざわざ出てくるなんて、馬鹿な奴なのか、それとも本気で勝てると思っているのか。
「全く、品性の欠片も感じられない口説き方をするお方だ」
「ほほう、俺を誰だと思ってやがる」
「知らないね。……場所的に、今流行の三流山賊か」
「残念だな。あんなのと一緒にするんじゃねー。ウチの親分はすげえ方でだな」
「知らん。どこの馬の骨集団だか」
「言わせておけば、いちいちいちいち癇に障るヤローだ!」
向かってくるボスゴドラをもう一度くさむすびで、今度は前に転ばせる。
「逃げて」
サンダースは走り出した。こうなればもうボスゴドラには追いつけない。怒り心頭のボスゴドラは一度大きく吠えると、リーフィアに怒りの矛先をぶつけた。



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「む、あれは」
二十匹以上のとんでもない大勢を組織した番兵ズの前に、猛スピードで迫り来るサンダースが一匹。
「……チェニミ様だ!」
特に素早くシャワーズは一声叫ぶとそちらへと走る。そのほかの者も後に続く。
「ご無事ですか」
声には心配の色が色濃くにじみ出ていた。サンダースはほっと息をつくとそのばに倒れ込んだ。
「チェニミ様!」
「私は大丈夫だから……向こうで、喧嘩が……」
「我らはそれを引き分けにゆくぞ」
彼らが離れてのち、シャワーズが残りの者に屋敷へ戻るよう下知した。サンダースの呼吸が整うまで待ってから戻ると言って。
「ギーフ……」
「大丈夫ですか? お怪我は? 屋敷では皆さん心配して待っておられます。ささ、はやく戻りましょう。朝食が冷めてしまいます」
「…………うん……」
「喧嘩など何処にもありませんでした」
「そんなことは……」
「さっさと切り上げて街へ戻ったのでしょう。……我らも戻りましょう、チェニミ様」
「うん」
返事はしても、サンダースはしばらくの間リーフィアを残してきた方を、ずっと眺めていた。

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「……今回は一匹だったから良かった」
リーフィアは、サンダースの走る方向から迫り来る番兵ズと鉢合わせないように逃げながら戦っていたらしい。そして、完全に意識を失ったボスゴドラを尻目に街へ歩いていくのだった。


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作者・・・内緒
詳細・・・不明



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IP:218.122.77.5 TIME:"2012-03-14 (水) 02:10:05" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E4%BB%AE" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64; rv:10.0.2) Gecko/20100101 Firefox/10.0.2"

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