二章始動、遅くなってすみませんOnz。by[[春風]] ---- 「一週間たつと、消えるって…?」 「ああそうさ、存在すらなくなるんだよ」 女性の声は、笑い声で答えた。 「そろそろ、そっちに行っていいかな?」 声は、高らかに笑いながら、少しずつ小さくなって、かき消えた。 そして同時に、私たちの前に、少し虹のようなものがかかり、一人の見たことのないポケモンが現れた。 人間のような体格をしているが、身長は小さく、二本の尻尾と桃色の髪をしていた。 「…あなたは…なんて言うポケモン?」 「ポケモンとは失礼だな、俺は大神より生み出された神、エムリットだ」 「…神様っ?」 いきなり自分のことを神と主張する少女(…多分、見た目では)が、本当に神様なのか私にはわからない。 …でも、今まで起きたことや、私たちのことが見えるから、嘘を言っているとは思えなかった。 「…教えて、塔から出た霊が、消えてしまうわけを」 サニィが強い口調で少女に聞く、おそらくサニィも、少女が神だと思っているだろう。 「ははっ、威勢がいいな、…よし、教えてやろう」 エムリットが、塔を指差して、口を開く。 「神はたくさんいてね、それぞれ領域を持っている、たとえばここは、死をつかさどる神、ギラティナの領域だ。」 …ギラティナ、その神の名前には聞きおぼえがあった。 たしか、御主人様から聞いた、昔話に出てきたような…。 「でも何で、ギラティナじゃなくて、あなたが出てきたの?」 サニィが再び口を開く。 「さあな、まあ、おまえらが出られたのは、まぐれじゃなくて、仕込まれたんだけどな」 「仕込まれた?」 「ああ、神とは気まぐれなもんでね、あいつはここから死者を出してみようって思ったんだろう、そして、塔の上だけの結界を解いた、そんで誰かが引っ掛かるのを待ってたんじゃないか?」 …神様って、こんなに適当だったの? 怒りが込み上げてきた、いくら神様だって、こんなこと許せない!! 「あんた、命をもてあそんで楽しい!? 私たちがこんなに苦しんでいるのに…」 「レイン…。」 私は怒鳴っていた、自分でも怒っているわけがわからなかった、でも、許せない!! 「…いいわけないじゃんか、バーカ」 エムリットがうつむいたようにいい返した。 予想外の反応に、私は我に返った。 「…あの、えっと、ごめんなさい!!」 私は神様を侮辱したことに怖くなり、思わず謝った。 「…別にいい、それよりも、お前らは俺がここに来たことを勘違いしている。 「えっ?」 私とサニィは同時に驚いた、いったい、エムリットの考えていることって…。 「いや、ただ力を貸してやろうと思ってさ」 「…力って?」 「ああそうさ、俺も暇なものでな、なにか面白いものを探していたんだ、たとえば…。」 そういうと、エムリットは私の顔をのぞきみた。 「お前の未練、面白い、種族を超えた感情、とでも言っておくか」 そういうと、いきなりエムリットはあたしの頭に手を置いた。 「俺は感情の女神だ、こういう面白い感情を見逃すはずないだろう、そうだな…」 エムリットは私の頭から手を離し、怪しげな笑みを浮かべた。 「いいか、お前らは一週間で存在ごと消える、それがいやなら、一週間で未練を断つことだ、…難しいか? 難しいだろう、けれど断ち切ってもらわなきゃ面白くない、そこでだ…」 「そこで…?」 サニィが真面目な顔で聞き返す。 「お前らが未練を断ち切れ易くするために、俺がお前らの思い出がある場所にお前らを飛ばしてやるよ、昔のことを見れば、断ち切れ易くなるだろ?」 「…わからないよ、そんなこと」 「つべこべ言うな、…とりあえず、そっちのエーフィの思い出の場所に飛ばしてやるよ、いいな?」 「…うん」 私とサニィは同時にうなずいた、彼女の自信ありげな態度を見るていると、少し成仏できそうな気がしてきた。 「じゃあいくぞ、少し驚くかもしれないからな」 エムリットは突然、腕をこちらにかざした。 すると、私たちの目の前の空間がゆがみ、周りの景色がぼやけてきた。 …このまま私たちはサニィの「思い出の場所」に飛ばされるのかな? でもその前にエムリットに聞いておきたいことがある、なぜ彼女が私たちに肩入れするのか。 「ねえ、なんでエムリットは私たちを助けてくれるの?」 私は、たまっていた疑問をエムリットに投げかけた。 「…わかってないなあ、遊びだよ」 …え? 「教えてやる、人間もポケモンも、生も死も、神にとってはただの「玩具」なんだよ。」 次の瞬間、私は意識を失った。 ---- 次に目が覚めると、そこは夜の集落だった。 あたりは異常なほど暗く、周りには物音一つしない。 「…レイン、ここ…」 ひゃっ!! 突然声をかけられて振り向くと、後ろにサニィが幽霊のような表情で、…もう死んでるけれど、突っ立っていた。 「なに? サニィ」 「…ここ、私の住んでた町だよ」 …ここが、サニィの住んでいた町、なんだかぼんやりしていて幻のようだった。 突然のことで少し動揺している自分をなんとか抑えながら、あたりを見回してみると、上手く言えないけれど、この集落の奇妙なところがたくさん見つかった。 たとえば、普通なら屋根に穴があいたら直すはずだが、この集落ではどこも直していない、ほかにも戸が外れていたり、草木がぼうぼうと生えている家もある、私は人間の町で暮らしていたので、風習などはわからないが、それらを差し引いてもこの町は、おかしい。 「ねぇサニィ、この集落では者が壊れていても直さないの?」 私はサニィに質問した、ただ、初めて見るポケモンの家に疑問を持っただけで、悪気はなかった。 だけど、サニィは少しこちらを見ると、ふうっとため息をつき、悲しそうに下を向いた。 「…ここは今、みんな殺されちゃって誰も住んでいないの、わからなかったの? レイン」 そういうと、サニィはその場で泣き崩れてしまった。 「…ごめん、私、てっきり殺されたのはサニィ達だけだと思って…、まさか、村中が殺されているとは、思わなかったんだ…」 私は深く頭を下げた、悪気はなかったけれど、私は彼女をかなり傷つけてしまったようだ。 「…いいの、もう終わったことだし、今は成仏すること…、よね」 サニィは立ち上がると、いつものように私に笑いかけようとした、だけど、彼女の目からは涙が流れ、全く止まる気配も見せなかった。 「うぅ…、何でだろう、涙が止まらないよぉ…」 そして、せっかく立ち上がったサニィは、またもや泣き崩れてしまった、いつもは母親のように全く弱みを見せなかった彼女が、初めて私に見せた弱いところだった。 「…死にたくなかったよぉ…、もっともっと、皆と一緒にいたかったよぉ…」 大声を上げて泣きじゃくるサニィに、私はどうする事も出来ずに、ただ見ているしかなかった。 「…えぐっ、ぐすん……」 暫くすると落ち着いてきたのか、サニィはようやく涙を拭いて立ちあがった。 「…だめだよね、レインだって辛いのに、私がこんなになってちゃ、だめだよね…」 「…………」 私は何も言えなかった、私たち二人、いや、タワーオブヘブンの中にいたたくさんの霊たちが苦しまなければいけない理由を、考えてしまったからだ。 よくよく考えれば、彼らの大部分は生前豊かだったり、幸せだったりしたわけじゃない、ほとんど皆ずっと苦しかったり、辛かったりした思い出しか持っていないだろう、塔全体からただよう気配のようなもののように、生きている間、幸せだったと言える思い出なんか持っていない、私はあそこには少しの時間しかいなかったけど、よくわかる。 それなのに、死んだ後もどうしてこんなに苦しまなければいけないのだろう、せめて死後の世界ぐらいは、辛いことなんて忘れて楽になりたい。 『…人間もポケモンも、神にとっては玩具なんだよ』 ついさっきエムリットに言われた言葉が、私の頭の中に響きだした。 もしエムリットが言っていたことが正しいのなら、自分たちが生きている意味なんて無いのだろう、いや、もしかしたら御主人様との出会いや生活も、神様にとっては遊びで、彼らの楽しみで引き離されたり、壊されたりしても、文句は言えないというのだろうか。 「……そんなの、嫌だよぉ……」 気づいた時には、私の瞳からも涙があふれ、頬を伝って地面に落ちる、地面に落ちると言っても濡れているわけではなく、涙が蒸発するように消えてしまい、何も残らない。 …それが悲しくて、私はなおも涙をこぼし続けた。 「……うあぁぁぁ…こんなの、嫌だよぉ………」 私は大声を上げながら、涙を流し、しゃくりあげる。 「…レイン…、ごめんね……」 そう言いながら、サニィは私の後ろに立って、背中を前足で優しくさすってくれた。 「ごめんね、私がしっかりしなければならないのに泣いちゃって…、不安だったでしょう?」 サニィの優しい声を聞きながら、私は思い切り泣き続けた、それも長い時間、十年も二十年も泣いているかと錯覚するほどに。 …それくらい、私の悲しみは大きかった。 ---- 「…はい、一日目しゅうりょーう!!」 不意に後ろから大声をかけられて、私は思わず涙が止まった。 「…誰?」 振り向いてみると、そこにはせせら笑いを浮かべて立っているエムリットの姿があった。 「あとタイムリミットまで六日だよぉ、お前らがそんなにめそめそしてちゃあ、面白くないよ」 「…面白いって、あんた本気!!」 突然、サニィが大声を上げる。 「あんた、こんなに小さい女の子を泣かして、それでも神様? そんなの、絶対間違ってるよ!!」 かなりの剣幕で叫ぶサニィに、エムリットは一瞬驚いたような表情を見せるが、すぐに元のニヤニヤした顔に戻った。 「…言っただろう? お前らは玩具だって、それ以上の何物でもない」 「……なっ!?」 サニィを一言で黙らせると、エムリットはそばにあった廃屋に腰を下ろすと、自信気な表情で私達を見降ろした。 「ここで泣かれても面白くないし…、少しヒントをやろう、この近くにある人間の町に行け、そこには、エーフィの方の大出の品がある、行ってみれば?」 ……サニィは顔を下に向けたっきり、一言も話さなかった。 「ま、行くのが怖いなら、ここでずっと泣きわめいて六日間無駄にすれば?」 エムリットはニヤけながら廃屋から降り、サニィに近づいて、彼女の頭を鷲掴みにする、幽霊はこの世界のだれにも触れられないみたいだったけれど、どうやら神様は例外見たいだ。 「もっと楽しませてくれると思ったけど、そうでもないみたいだな、とんだ欠陥品が」 冷たい言葉を吐きつけると、エムリットはサニィを地面にたたきつけた。 「…まあせいぜい、面白おかしく六日間楽しみな」 そう言うったあと、エムリットの姿は徐々にぼやけて、消えてしまった。 「……サニィ」 私は地面に呆然としたような表情で倒れているサニィに駆け寄り、彼女の前足を握る。 「…レイン……」 サニィは立ち上がると、先ほどまでエムリットがいた場所を見つめ、それから私の顔を見る。 「ありがとう、レイン、心配してくれて……」 そう言うと、サニィは私を思い切り抱きしめた、彼女の腕の力は強く、魂だけの存在とは思えない暖かさがあった 幽霊は冷たいイメージがあったけれど、嘘だったんだ。 「レイン、あいつの言うとおりにするのは悔しいけれど、人間の街に行こう、未練を断って成仏すれば、あいつを見返すことができる……」 よほど悔しかったのか、私の肩を抱くサニィの腕が、震えた。 「…うん、サニィの言うとおりだね、私、サニィが成仏するためなら、何でもするよ。」 私がそう言うと、サニィの腕の力が、一段と強くなった。 「…何言ってるの、私の為よりも自分のことを考えて、あなたも成仏して……。」 そういうと、サニィは私の肩から腕を放す。 「じゃあ、行こう、ちゃんと二人で成仏しよう、ね」 ……サニィのその言葉が、少しだけ私の支えになった。 ---- そのあと、私とサニィは山の中の集落を後にして、街へと続く山道を降りて行った。 「…レイン、神様のこと、生きている時はどう思っていた?」 今まで無言で歩いて歩いていたサニィが、突然口を開く。 「……え? それって…」 「神様が、どんな存在だと思っていたか? てこと。」 サニィは真面目な顔で、再び私に尋ねる、どうやら自分の考えていた神様のイメージとエムリットは、全然違うイメージだったみたいだったようだ。 ……でもそれは、私にも言えることだった。 「…私、もっと神様は優しい人だと思っていた、レインもそうでしょ!?」 「うん……」 私も、心からそう思う、神様はあんなに残酷じゃなくて、もっと、優しく慈悲深い存在だと思っていた。 「そうだよね、レインもそう思うよね、……本当はこの世界は、残酷に作られているのかな?」 サニィは不安げな声を上げる、その声を聞くと、悲しさが余計膨れ上がってきた。 「…ねぇ、それより、エムリットが言っていた人間の町って、どんなところなの?」 少しでも辛い気持を取り除こうと、私は放しの話題を町に変えてみた。 「ああ、私は行ったことないけれど、聞いたことならあるよ、なんか、野生のポケモンには危険なところらしいよ、確か人間たちはその町のことを……スカイシティ!! スカイシティって呼んでるみたい、通称、青空の町ってとこかな」 サニィは少しだけ元気な声を上げる。やっぱり、話の内容という物は重要だ、多分これから数回程度しか気にすることもないと思うけれど……。 「…あっ、見えてきたよ、多分あれがスカイシティだよ!!」 大声を上げて、サニィは前方を指差す。その方向を見ると大きな人間の街が、茂みの向こうに見えた。 「……あそこに、サニィの思い出があるんだね…」 朝日を浴びて、きらきらと輝いているように見える町が、なんだか私たちにとって大きな希望になるように、私には見えた。 「…ねぇレイン、私なんだか元気が出てきたよ」 私が黙って町を見ていると、サニィが話しかけてきた。 「この町に私の思い出があるでしょう。それが何か分からないけど、それを見つけられれば、これから何をするべきかわかるような気がするの、そう考えていたら、何だか明るい気持ちになってきちゃった」 さっきまでずっと泣いていたはずのサニィは、もう笑顔になっている。光り輝いている町を見て、気分のきりかえができたのだろう。 「うん、逆に考えるのがいいよね、サニィ」 私はサニィの方を向いて、笑顔を作ってみる。するとサニィは前足で私の目の下を優しく拭いた。 「涙の跡があるよ、レイン。無理して笑顔になっているみたいだよ」 サニィは優しくそう言うと、町のほうに向きなおって、そっとほほ笑んだ。 「さ、そろそろ行こうか、あまりここにいると、また一日過ぎちゃうよ」 続く ---- それから私達は山道を降りて、先ほど見た町の中に入って行った。 町の中ではまだ朝早いのに、沢山の人たちが忙しそうに歩きまわっている。いつも見慣れた光景だったけれど、一度死んでみると、その動きが何だか懐かしく思えた。 けれど、当然誰も死んでいる私達に気がつかない。みんながみんな私とサニィの体をすり抜けて歩いていく。人にぶつかるのは嫌だけれど、こうしてみると幽霊の体が恨めしく思う。 「きゃっ、あれ何!?」 サニィがいきなり驚きの声をあげる。驚いて彼女の目線の先を見ると、一台の車が走って行った。 「ねぇあれってポケモン? でもそれにしては変な形をしていたような……」 サニィは首をかしげて、通り過ぎた物の事を考えている。おそらくサニィは車を知らないらしい。 「あれは車っていう道具だよ。人間はよくあれに乗って、どこか遠くに行くことがあるの」 車に付いてサニィに説明してみるも、サニィは私が何を言っているのかがわからなそうだった。 おそらくサニィはずっと野生で暮らしていたからか、まったく人間の町のことを知らないらしい、そんな彼女は町の至る物を不思議がり、興味深そうに見つめていた。 「……ところでサニィ、サニィはここにあるっていう、思い出について何か心当たりはある?」 サニィが全く町のことを知らないので、私は本当に思い出があるのか不安になって、サニィに聞いてみた。 「ううん、ここには全く来たことがないからわからないよ」 サニィの答えは、予想通り分からなようだった。 「ねえ、もしかしたら私達、エムリットに乗せられているんじゃないの? もしかしたらここには、サニィの思い出なんて無いのかもしれないんじゃない?」 私はエムリットがでたらめを言っているのだと思っていた。彼女が楽しむために、私たちに嘘をついているのではないかと疑っていた。 「……んぅぅ、どうかなぁ。確かに怪しいよね、でもほかに手がかりもないし……とりあえずこの町を回ってみようよ」 サニィはそういうと、近くに建っていた大きなビルを指差す。 「ねえ、レイン。とりあえずあの中見てみようよ」 第二章終わり ---- どうも、春風です。 二章を書きました、見ていただけると幸いです。 では、苦情とか苦情とか苦情とか感想とかありましたら、コメントお願いします。 #pcomment(二度と会えぬ人へ2 コメント,10,); IP:114.167.199.13 TIME:"2012-02-13 (月) 17:46:50" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?guid=ON" USER_AGENT:"Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/4.0; YTB730; GTB6.5; SLCC2; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 3.0.30729; Media Center PC 6.0; .NET4.0C)"