ポケモン小説wiki
二人の間 の変更点


人×ポケの官能描写有
ぼちぼち書いていく予定
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 肌寒い季節、冬の季節がやってきてから早一月。雪が積もるほどではないにしろ、外を出歩きたくはなくなってきたこの時期に、仕事を終えて帰路についていた俺は一人溜め息をついた。本当なら今日のこの日はここ最近仲良くなり始めていた会社の同僚である女性と食事の約束をしていたのだ。そうであったはずなのに、なぜ今俺がこうして自宅に向かって歩いているかと言えば、言わなくても大方予想はつくだろう。
「まさかのドタキャンとは…。ついてないなぁ全く…」
 そう、先ほどその女性から連絡があり、今日の食事は無しになってしまった。何でも急な仕事が入ってしまい、向かえなくなってしまったそうで、俺はとりあえずそれを承諾してまた今度という約束だけは何とか取り付けておいた。気のせいか、相手方の反応が素っ気ない感じだったのは気にしない方がいいのだろうか。どうにも俺は女性に対してあまりよく好かれない傾向がある。最初まではいいのに、段々と相手方から鬱陶しがられるというか、なんかそんな感じだ。
 まぁ、過ぎてしまったことをくよくよ落ち込んでいるのは勿体ないうえに、俺が心配しているのはそこではなく、これからのことだ。今日は食事をしてから帰ると言ってきてしまった以上、こんなに早く帰るとまた彼女に心配されるのではないだろうか。彼女とは言ってもあれは俺が一緒に住んでいるポケモンのことなのだけれど。今まで何度かこういうことがあってきたからこそ、もう心配はされていないかもしれないが、彼女の性格からしてそれはないとまた断言できてしまう。適当にそこらで時間を潰してから帰るというのも考えたが、正直どこかで時間を潰すよりも家で温まってゴロゴロしていたいと考えてしまっているあたり、俺の考えはどこか矛盾してしまっている。家に帰れば彼女に心配をかけ、そこいらで時間を潰すのは正直面倒くさく思っている。うん、限りなく矛盾している。
 それに最初に帰路についていると言ってしまった時点で、俺はもう家に向かっているのがバレバレなのだ。誰が何と言おうと、こんなくそ寒い外にいられるか、俺は自分の家に帰らせてもらう。
「……でもこの食事代にとっといたお金、どうしよう」
 別にとっといてもいいのだが、何かに使ってしまいたい衝動に駆られる。散財癖とかではないが、とりあえずなんだかこのお金があるのが恨めしく思えて仕方がなかった。だから俺は家に帰る途中のコンビニで、彼女へ何か買っていってあげようと寄ってしまうのだった。
 そして適当に買い物を済ませた後、5分もせずに俺は借りているマンション(自宅)へとたどり着くのだった。冷たくなっている鍵を取り出して鍵穴に差し込んでドアを開ける。すると、玄関には既に彼女がその場で立っていた。
「お帰りなさい、ご主人」
「…あはは、ただいまコジョンド」
 俺の同居人でもある彼女は今呼んだ通り、コジョンドというポケモンだ。二足で歩き、人であれば抜群のスタイルを持ち合わせたポケモンで、白と薄紫の二色の色の毛に覆われている。顔からはしなやかな髭(でいいのだろうか)が生えており、風も吹いていないのにひらひらと浮いている。どうやらあの髭、彼女の心情に合わせて様々な動きをするのが最近分かってきた。そして彼女は俺の目を見て首を少し傾げ、俺に言った。
「ご主人がこの時間に帰ってきたということは…今回も?」
「うん、多分そうかな。今回もダメだったよ」
「階段の足音を聞いてもしやと思って来てみましたが、嫌な予感は的中してしまうものですね」
「何気に足音だけで俺を判断してる辺り、凄いよねコジョンド。ま、いいけど」
 俺は少ししょんぼりしている彼女の頭を軽く撫でてから、靴を脱いで家の中へと上がる。コジョンドは俺の荷物を持ってくれて後ろから小さな足音でついてきた。それから普段着に着替えるために彼女が用意してくれた物に着替え、その間に彼女は俺の仕事着をクローゼットに仕舞ってくれた。人間のような手でないのに、実に器用にハンガーにかけたり、洗濯物を畳んでくれたりする彼女の姿にはいつも驚かされる。それからリビングであるいつもの部屋で俺は彼女と一緒にソファに座る。彼女自身は普段は床に丁寧に座っているのだが、俺が誘うと恥ずかしそうにしながらも俺の隣に座ってくれるのだ。
「あ、そうだ。コジョンドにお土産あるよ」
「お土産、ですか? さっきのコンビニの袋の中身の事でしょうか?」
「そうそう。食事代が浮いちゃったからね。それだったらコジョンドに何か買っていってあげたいなって」
「ありがとうございます、ご主人。でも、よろしいのですか? 大事なお小遣いですのに…」
「いいのいいの。俺が働いたお金でコジョンドが喜んでくれるなら、使っても損はないよ。むしろお釣りがくるかもね」
 彼女は俺がそういうと、更に恥ずかしそうに両手を頬に当てて俺から顔を逸らす。この反応が可愛くて仕方ないんだよな、コジョンドは。あまりからかい過ぎると腕のひらひらで叩かれそうだから適度にやる程度に抑えるけどね。
「そ、それで何を買ってきてくださったんですか?」
「あぁ、この前買って来たら美味しそうに食べてるのを見たからまた買ってきたんだよ」
 そう言って袋から取り出したのは熱々のおでんである。俺にとっては普通のお夜食みたいなものなのだが、彼女にとっては違うらしく、目を輝かせていた。
「わぁ…!! おでんじゃないですかぁっ!! いいんですか、こんなに買ってもらって!?」
「勿論。コジョンドの特に好きなものも沢山買ってきたから召し上がれ」
 彼女がおでんで一番好きなのは「はんぺん」のようで、汁が染み渡ったふわふわの食感が堪らなく好きなんだそうだ。分からないこともないが、俺は一番は玉子なんだよね。セ〇ンイレブンのおでんには本当に毎年お世話になってるよ。
 そして召し上がれと言ってから、彼女は既に二つめのはんぺんに手を出していた。器用に竹串で刺しては少しずつ口に頬張っている。その顔は本当に幸せそうに食べていて、見ているこちらもほっこりとした気持ちになる。
「美味しいです!! ご主人!!」
「そっか。なら良かったよ」
「ご主人も一緒に食べましょうよ、ほら」
 そう言って彼女は竹串で刺した玉子を綺麗に半分にし、その半分を俺に差し出してくる。少し気恥ずかしい感じがしながらも、俺は彼女からの玉子を口に含んだ。俺が一番好きなのも把握して差し出してくれるあたり、彼女は俺のことをよく理解してくれているなぁと実感させられた。それからも俺とコジョンドは互いにおでんを分け合いながら、食べさせあった。食事に行けなかったのは残念だけど、これはこれで俺の幸せな一つの時間だった。
「ふー、もうお腹一杯ですね」
「そうだな。あれだけあったおでんがもう空だ。コジョンドがよく食べたからかな?」
「え、えぇっ!? ち、違いますよっ!! ご主人だって沢山食べてたじゃないですか!!」
「そうかなぁ?」
「そうですよ!!」
 そう言って彼女は膨れっ面になってしまい、俺はそれを見て彼女の頭を撫でて笑って言った。
「ごめんごめん、冗談だよ」
「もう…ご主人の意地悪」
 膨れっ面になりながらも俺のことをじーっと見つめる彼女の瞳。それを視線を逸らさずに見つめ返せば、いつの間にか俺と彼女は笑いあっていた。こんな風に彼女と笑いあっていると、嫌なことなんか忘れられる。彼女とのひと時がそれを埋めてくれる。そんな気がした。
「はぁ、さて食うものも食べたし、寝ようかな」
「あっ…。待ってくださいご主人」
「ん? どうかしたコジョンド?」
 俺がソファから立ち上がり伸びをしていると、彼女から呼びかけられ、それに応えるように顔を振り向かせる。すると彼女は足をもじもじさせながら、恥ずかしそうに言った。
「きょ、今日はその…なさらないんですか? 私の…膝枕……」
「うぇっ…!? いや、それは…その…」
 彼女から今放たれた一言。「膝枕」とは、まんまであるが、彼女の膝を用いた枕である。実は俺が女性関係でいざこざがあった度に、彼女から慰められていたのだが、ある日ヤケ酒で酔っぱらって帰ってきたときに彼女の介抱兼膝枕をしてもらったことがあるのだ。彼女のふさふさな体毛に包まれた膝枕はもう最上級の高品質で低反発な枕なんかとは比べ物にならないくらい、寝心地が良いのである。それに加え、鼻腔をくすぐるような彼女のお日様の香りも相まって非常に落ち着けるのも魅力の一つなのである。
 ただ、彼女がこれをやってくれるのは俺が女性関係で落ち込んでいるとき限定だったりする。それ以外では頼んでも恥ずかしそうにして、あまり良しとしてくれないことが何度かあった。それなのに、今日は珍しく彼女からのお誘いが来て、正直まだ動揺を隠しきれない。そういえば、忘れかけてたけど、今日俺遠まわしに振られたようなものだものな。それを見て彼女は誘ってくれたのかな。
「あ、そ、その…コジョンドが嫌じゃなければ、お願いしてもいい、かな…?」
「はい、どうぞ。ご主人…」
 そう言って彼女は床にぺたんと正座に近い座り方をする。彼女の太ももと太ももが濃縮される最高の座り方だ。俺はごくりと生唾を呑んだ後、彼女の太ももに頭を乗せて横になる。その瞬間、鼻の中を一気に彼女の香りが埋め尽くした。加えてふさふさでもふもふな彼女の体毛がやんわりと俺の頭を包んでくれた。彼女が小さく呼吸をする度に上下する感覚が揺り籠を連想させ、より一層安心感を醸し出してくれる。
「今日は…特別ですよ? ご主人」
「ありがとう、コジョンド」
「いいえ、お礼を言うのは私の方です。おでん、美味しかったです」
 そう言って彼女は俺の額に手を乗せて撫でてくれる。まるで赤子をあやす母親のような手つきで。しかし、赤子扱いされていたとしても、まったく嫌ではなく、むしろ彼女の包容力にもっと溺れてしまいたくなってしまっていた。顔を上げれば、彼女がこちらを慈しむような目で見てくれているから、さらに俺は安心しきってしまった。
 だが、その安心感を他所に少し気になったのは顔を上げるとそこそこ膨らんでいる彼女の胸であった。体毛で普段はあまり気にしていなかったが、こうして下から見上げる形になるとその大きさがはっきりと分かってしまう。いつの間にか成長していた彼女の体に、変に意識をしてしまった俺は少し股座が疼くのを感じる。
「? どうかしましたか、ご主人」
 俺の様子に気づいたのか、彼女は俺に聞いてくる。彼女はどうやら俺が彼女自身の体を変な目で見ていることに気づいていないようだ。好都合ではあるのだが、変な罪悪感が生まれてしまい、俺は彼女から視線を逸らしてしまう。
「な、何でもないよ。そ、それよりありがとう。もう大丈夫だよ」
「あっ……そうですか…」
 これ以上続けていると、変な気持ちが増幅されていくだけだと思い、俺は名残惜しくも彼女の膝枕から離れる。彼女も何か残念そうな顔をしていたが、俺は気にせずに風呂場へと向かうことにする。
「お、お風呂って沸いてるかな?」
「は、はい。ご主人が入ると思って先程、お湯を張っておきました」
 何と用意周到なことだろう。でも都合がいい。有難く今は入ることにしよう。本当はそのまま眠ってもよかったのだけれど、どうにも体が変に火照ってしまっている。お風呂にでも入ってスッキリしてしまえば、またいつも通りになるはずだ。お風呂でさらに火照ってしまうような気がしなくもないが。
「じゃあ、ごめん。先にお風呂入らせてもらうね」
「えぇ。ゆっくり浸かってきてくださいね?」
「ありがとう、コジョンド」
 そう言葉を交わして俺はさっさとリビングを後にして風呂場へと向かったのだった。
 危ない危ない。あのまま続けていたらどうなってしまっていたことか。コジョンドを異性として認識してはいるが、あんな風に邪な気持ちを抱いて彼女と接することはいけないことだ。ましてや彼女が俺を心配して善意でやってくれていたことに対する冒涜とも言える。
 邪念を振り払うように風呂場で衣服を脱いだ後、顔をぶんぶんと横に振る。やはりそうは思っても一度見てしまった彼女の体(主に胸の辺り)を忘れることはできそうになかった。本当に物理的に頭を冷やした方がいいかもしれない。風呂場に入ってまずやったことが冷水を頭から被ることだった。このくそ寒い真冬の日に。
「つっめてぇ~~ッ!!」
 風呂場どころか、下手したら部屋中に響き渡ったかもしれない俺の叫び。冷水ではなく、少し温めのお湯あたりにすればよかったと反省したが時すでに遅し。
「ご主人!? 凄い声がしましたけど、どうかなさったんですか!?」
 案の定、俺を心配してやってきたコジョンド。入ってくることはなかったが、扉越しに彼女の姿を目視することができた。まさかあんな理由で冷水を被りましたなんて言えるはずもないので、俺は適当に理由をこじつけた。
「だ、大丈夫っ!! シャワーでいきなり冷たい水が出て驚いただけだから!!」
「それならいいんですけど…。頭から被ってしまったのならしっかり頭も温めてくださいね?」
「あ、あぁ…。ありがとう、そうさせてもらうよ」
 そう言葉を交わすと彼女が離れていくのが分かった。とりあえずセーフ。
 言われた通り、今度は温かいシャワーで頭を温めながら髪を洗う。適当にシャンプーやらリンスやらで頭を洗い終わった後は一日で溜まった体の汚れを洗い流す。それから彼女が張ってくれたお湯に浸かるのだった。足の先からじんわりと体全体にまで熱が伝わっていくのを感じ、思わず息を吐いてしまう。お風呂に入ったのは正解だったかもしれない。この後、体を冷まさないうちに寝てしまえばぬくぬくとした状態で快眠間違いなしだろう。
「はぁ~~…。生き返るなぁ…」
 自分で言うのもなんだが、おっさんくさい。だけど、実際生き返る心地がしたんだから仕方がないのだ。
 お湯で顔を軽く洗ってから天井を見上げると、今日一日の出来事が走馬灯のように目の前を流れてゆく。いつものように仕事をこなして、本当だったら今日は食事に行ってるはずで、だけどそれができなくてコジョンドと一緒にいつものようにご飯を食べて、特別に膝枕をしてもらってそれで……
「うっ…忘れようとしてるのにどうしてさっきから思い出しちゃうかな…」
 急に顔が茹蛸のように真っ赤になるのを感じながら湯船に顔半分を沈めてぶくぶくと泡を吐く。ダメだ、どうしても最終的にあそこにたどり着くような思考回路に陥ってしまっている。思春期なんて当に過ぎてるくせして、何を初心な反応をしているのかと自分を卑下したくなる。多分女性に振られたのも相まって尚更彼女、コジョンドのことを特別に異性としていつも以上に認識してしまっているのかもしれない。これはいけないことだ。ポケモンである彼女に対してこんな気持ちを抱くなんて、あってはならないことだっていうのに。
 いや、でもここ最近は昔の風習を見習ってなのか、ポケモンと付き合い、挙句の果てには結婚してしまう人も少なくないと聞く。数日前にニュースでやっているのも見たような覚えがあるし。
 だけど、俺が彼女と付き合うだなんてありえない。こんなダメダメな男に彼女のような清楚で凛々しくも感じられる彼女と付き合うなんておこがましいことだとは思わないだろうか。彼女にはもっと立派なお見合い相手でも見つけて恋愛してもらう方がよっぽど幸せなはずなのだ。いつまでも彼女の世話になっているようではこの先俺はコジョンドに依存し続ける生活を送ってしまう。そうならないように俺自身も早く身を固めようと努力しているのだが、何分実らないのである。まぁ、実らない理由には大概俺自身の問題が多々あるのだが、たまには例外もある訳で、だけどそれは話さなくてもいいか。彼女に心配をかけ続ける日々。こんな悲しい話が現実問題として俺に毎日のように突き刺さっているのだ。
 今回のことは早く忘れて、新しい恋を探すとしますかね。次の相手がいつ見つかるかが問題なわけだけど。
「っと。考え事してたら結構長風呂になっちゃってたな。そろそろあがるか」
 程よくよりかは少し温まりすぎな体を湯船から出し、風呂場を後にしようと扉を開けた。が、これが問題となってしまった。俺は一糸纏わぬ裸の状態で勢いよく扉を開けたのだが、その先にはコジョンドの姿があったのだ。両手に持っているのは俺の着替えのようであった。そういえば、着替えを持たずに風呂に入ってしまったんだっけか。それを察して持ってきてくれたんだろう。
 それはいいのだが、一番の大問題がこの有様。裸の男と、それを凝視させられてしまっている彼女の姿。
「あ…あ、あぁ…っ。あ…」
「ご主人、あ、あの…あの…っ!!」
 変な声しか発せられない間抜けな主人と、必死に平静を保とうとしている彼女の姿。まさに滑稽である。
 しかも彼女の視線はやはり自身にはついていない俺の股座にある愚息を凝視してしまっている。しかも自然現象で半ば勃ってしまっているこの状態を。彼女の目がぐるぐると回っているようにも見え、尚且つ顔は毛の上からでも分かるぐらい真っ赤に染めている。
「私…っ。ご主人の着替えを置いておこうと思っただけで、べ、別にそんなつもりじゃ…っ!!」
「分かってる…分かってるからもう何も言わないでくれ…。俺、今すっげぇ恥ずかしいから…」
「本当にごめんなさい!! 私今すぐいなくなりますから!!」
 そう言って慌てて奥の部屋へと向かおうとする彼女。しかし、その足取りはなかなかにおぼつかない様子で、案の定俯せにこけそうになってしまう。
「危ないっ」
「ひゃぁっ!?」
 俺自身も慌ててしまっていたせいか、彼女の腕を掴んだはいいものの、濡れている足元のせいか、勢いよく滑り二人そろってコケてしまうのだった。下の階の人に何ていわれるか分かったもんじゃないな。
 で、こけた後はどこかのラノベよろしく、彼女を下にして俺が覆いかぶさるような形でいた。すんでの所で俺は彼女の腰に手を回して、代わりに膝を犠牲にしたおかげか彼女が体を強く打ち付けるようなことはなかった。コケはしたが俺の膝一つ犠牲になるくらいなら安いものだ。元はと言えば俺の不注意なわけだし。
「っ。コジョンド、大丈夫か?」
「は、はははいっ…。大丈夫なんですけど…っ。ご主人、私のお尻に何かくっついてます…っ」
「え?」
 そういえばこの態勢。端から見れば完全にb…
 ってことは先ほどから愚息に伝わるこのほのかな温かさは彼女の…
「わわわ!! ごめん!!」
「い、いいですからっ!! まずは離れてくださいっ!!」
「うん…。あの、本当にさっきから何ていったらいいのか…ごめんなさい」
 ゆっくりと彼女との密着しているところを離し、土下座を決める。仕事以外では使うことはないと思っていた決め手がこんなところで使うことになるなんて思いもしなかった。地面に頭を擦り付けるようにしていると頭上から彼女の声がした。
「私も悪かったところはあるんですから、ご主人一人のせいには致しませんよ。確かにビックリしましたけど…でも、あの……私は別にその、気にしてませんから…」
「…許してくれるのか?」
 恐る恐る顔を上げると、そこには彼女の頬を染めて恥ずかしそうにしている顔があり、怒っているような雰囲気は感じられなかった。だけど俺はもう一度真面目に謝ることにした。
「本当にごめん」
「もう何度も謝らなくていいですってば…。あの…ご主人?」
「もう何度も謝らなくていいですってば…。あの、ご主人?」
「ん?」
「そろそろ服を着ていただけませんか? その、目のやり場に色々と困ってしまいます…」
 そう言われて顔を真っ赤にし、20分ほどかけて俺はいつものように着替えと後片付けを済ませたのだった。
 火照った体も程よく冷めてきた時に、今度はコジョンドがお風呂に入ることになった。
「じゃあお風呂入ってきますね」
「お、おう。どうぞごゆっくり…」
「は、はい。じゃあ行ってきますね」
 先ほどのこともあってか微妙に言葉がたどたどしくなってて少し壁を感じる。そりゃあ、あんなものをいきなりお尻に擦り付けられたら誰だって気まずくはなるよな。自分がコジョンドの立場であったとしても間違いなく今みたいになるのは容易に想像できる。どうにもやるせなくなって部屋のソファでゴロリと寝転がりながら天井を仰いだ。
「……でも、柔らかかったな」
 誰もいない部屋でそうつぶやいていた。少しの間とはいえ一瞬でもコジョンドとあんな風になったのに、俺自身まったく嫌という感情が湧かなかった。それどころか興奮を覚えた自分がいることに驚いている。もし、あのはずみでコジョンドの中に侵入してしまっていたとしたら、なんて考えさえ思いつくほどに先ほどのことは鮮明に俺の記憶の中に刻み込まれていたのである。
 彼女と一緒に過ごすようになってから随分と経つが、こんな気持ちは生まれて初めてだった。彼女が進化する前でも後でもこんな感情を持つのは今まで記憶にない。今さらではあるが先ほどの彼女とのことを一瞬でも忘れようとするが、それも瞬く間に彼女の雌らしく成長した体つきのことと一緒に思い出されてしまい、また顔に熱を帯びてしまう。
 彼女の俺の掌でちょうど包めそうな程よい胸の形、引き締まったお腹周りとそれに反するように強調される彼女の大きめのお尻、そして魅惑の太もも、などなど一つでも思い出すと相乗するようにどんどんと彼女のことを思い浮かべてしまう。しかもいやらしい方向に。
「はぁ、いったいどうしちゃったんだ俺の脳内は…。これじゃまるで俺がコジョンドのこと……」
 彼女のこと……。俺はどう思ってるんだ。彼女とはずっと前から一緒にいる大切なパートナーで。俺が頑張っていれば唯一傍で褒めてくれて、俺が落ち込んでるときは傍で慰めてくれて、俺が買ってきたものをいつも満面の笑みで喜んでくれて、俺の失敗も寛容に受け止めてくれて、いつも支えてくれるのは紛れもなく彼女だった。
 今日だって俺が落ち込んでいるのを見て、いつもはしたがらない膝枕も特別にしてくれた。思い返せば今までの生活の中で彼女の存在なくして俺はやっていけなかったのではないだろうか。
「これって、やっぱりそういうことなのかなぁ……。だとしたら俺、見境なさすぎじゃね?」
 人間に好意をもって、駄目だったら今度はポケモンである彼女に対してそういう気持ちをもってしまうなんて男としてどうなのだろうと本気で自分に嫌悪してしまう。そもそもそれは彼女が、コジョンドが俺に対して少しでもそういう素振りを見せてたりしてなきゃ成り立たないだろうし。
 やめだやめだ。こんな感情捨てなきゃ駄目だ。さっきの事故のせいでそういうことばかり一時的に考えてるだけに過ぎない。そう言い聞かせないとやってけなさそうだった。
 それから少しだけ目を閉じた後、彼女が風呂を出た音がして再び目を開ける。
「そうだ、コジョンドにお詫びの気持ちも兼ねて久しぶりにブラッシングしてあげよう」
 思い立ったがすぐに行動に移すことにした俺は、今いる部屋から彼女にそうしてあげると大きめの声で言う。間違っても湯上りの彼女の姿を見ることはしようとはしなかった。彼女曰く毛が全部濡れたままのだらしない恰好は見られたくないと以前に言われていたのも覚えてるが故の配慮だ。
 そして俺が提案したことに彼女は実に嬉しそうに返事をしてくれた。少しだけ毛の水分を拭ってからそちらに行きますと彼女から言われ、俺はブラッシング用の道具とドライヤーを用意しておいた。するとほどなくして彼女はやってきたのだが、その体に俺は目を奪われてしまった。湯上りの影響もあるだろうが、彼女の毛先から何からがしっとりと濡れているせいか部屋の光と反射してとても綺麗に見えたのだ。いつもはそんなに意識していなかったのに今日ばかりは彼女のその姿に見とれてしまっていたのはやはり今日一日の彼女との触れ合いのせいだとしか思わずにはいられなかった。
「あの、ご主人? どうかなさいしましたか…?」
「へぇあ!? あ、いや、何でもないよ!! ちょっとぼーとしてただけだから気にしないで!!」
「そうですか? じゃあその、お願いしてもいいですか?」
 ごくりと唾を呑みこんでから一回頷くと彼女はニッコリと笑顔を向けてからよろしくおねがいしますと俺に背を向けて座り込む。俺は右手にドライヤー、左手にブラシを持って彼女のブラッシングを始める。適度に乾かした後はブラシで毛並みを揃えてあげるのだ。毛の先端からゆっくりと何度かに分けてこそげるように毛をすいていく。彼女の毛は短くもなくかといって凄く長くもない毛の長さなので実にやりやすい(どちらかといえば長毛種っぽいけど)
「久しぶりだからちょっと下手かもしれないけど、何か変なところとかあったら遠慮なく言ってくれな」
「はい、えへへ。ご主人のブラッシング、本当に久しぶりですよね…」
「最近は仕事も忙しくてコジョンドにあまりそういうことしてやれてなかったよなぁって思ってさ。嫌じゃなかった?」
「私がご主人のやってくれることを嫌がる訳ないじゃないですか。ご主人はいつも私のこと大切にしてくださってるんですから」
「ははは、そっかそっか。俺がコジョンドを大切にしてることは伝わってるかぁ」
 ちょっとした親バカみたいな気分だけど、そういうのも悪くない。彼女をタマゴから、コジョフーの時から育ててきた自分としては彼女の親という自覚は少なからずある訳だしな。
「ただ、ご主人は私の事ばかり大切にしてちゃダメですよ?」
「ん? それは何で?」
「いつかご主人にも奥さんや子供ができる日が来るはずなんですから。そうしたら私のことは三番でも四番でもいいので、ちゃんとご主人の家族を大切にしてくださいね」
 そう彼女に言われてズキッと心が痛くなった気がした。彼女にはあまり言ってほしくなかったのか、それとも…
「……コジョンドも俺の大切な家族だからな。順番なんて決めずに平等に大切にしなきゃって俺は思うよ」
「ふふ、ご主人らしいですね。でもそう言ってくださるだけで私は凄く嬉しいですよ!!」
「俺は本気だよ、コジョンド。たとえそういう相手が俺にできたとして俺はその人もコジョンドもずっと大切にしていく」
 少しだけブラッシングの手を止めると彼女はきょとんとした表情でこちらを見る。
 俺はふと彼女の思いを知りたくて、問う。
「ご主人?」
「なぁ、コジョンド? 俺のことどう思う?」
「え? それは私のご主人はとても誠実な人で、誰にでも優しくて、でもちょっと女心に関しては疎くて、いざって時にはヘタレてしまうところとかありますけど、凄く人間的にはよく出来てる人なんじゃないかと……」
「うん、分かった。コジョンドが俺を普段どんな目で見てるのかはよく理解できたわ、うん。少し悲しくなったわ」
 ってそうじゃない。俺が聞きたいのはそういうことじゃなくて
「あのさ、コジョンドはもし俺みたいな奴からその、告白とかされたらどう思う?」
「うぇっ!? え、あ、その、私がもしもご主人に、こ、こここここくひゃ…告白されたりゃですか!?」
「落ち着いて、噛み過ぎてよく分かんないから」
 彼女は頬に両手を置いてあたふたしている。結構うぶな反応するんだなコジョンドって。
「そ、その……私は今まで男性というものをご主人とご主人のお父さんぐらいとしか話したことがないのでよくわかりませんが……。もしご主人みたいな異性の相手が現れたら、好きになる、と思いましゅ!!」
 また噛んだ。けど、そこはどうでもよくて。彼女は俺みたいな男でも好きになったりしてくれるらしい。その言葉がなんだかすごく嬉しくて少し照れくさかった。
「そ、そっか…。じゃあコジョンドは俺みたいな奴が好き、だったりするのかな…」
「え、えぇ。ご主人みたいな方と一緒になれたら私、凄く幸せになれると思います……」
「………」
「………ご主人?」
「んあ!? あ、ごめん。変なこと聞いてさ。ブラッシング続けるから…」
「は、はい……」
 それから俺と彼女は特に会話をすることなく互いに口を紡いだままゆっくりとブラッシングの時間を過ごした。流石に前の方は自重しといたけど、背中だけ見たらかなり綺麗な感じにできたと思う。
「うん、終わりかな。コジョンド、もう立ってもいいよ」
「……」
 彼女からの返事がない。変に思って彼女の顔を見ると、彼女はどうやらブラッシングの最中に寝てしまったらしい。
 かすかに寝息が聞こえるので、彼女にとって気持ちよく出来ていたことの証かな。これは誇っていいぞ、俺。
「やれやれ、仕方のない家族だなぁ。よっこらせ…」
 彼女を起こさないように静かにおんぶしてあげる。35kgもある彼女だが、人間と比べたら大した重さじゃない。それに部屋の布団まで運ぶぐらいだったらそこまで力のない俺でも運ぶことぐらいできる。
 彼女の体温とちょっとした膨らみを背中に感じながら部屋の布団に彼女を寝かせてあげる。コジョンドとは同じ部屋で布団を並べて寝ているのである。彼女はボールの中でもいいと言ってるのだが、俺の我儘で一緒に布団で並んで寝てもらっているのだ。
 静かな寝息を立ててる彼女に布団をかけてあげてから彼女の寝顔をのぞく。いつも見てるからってわけじゃないけどやっぱりコジョンドって結構可愛い、よな。たしかポケモンの雄とかからも結構見られてたりするのを実は知っている。それぐらいには彼女は人気だったりするのだろう。パートナーである俺も少し鼻が高い。
「………」
 しばらく彼女の寝顔を堪能したあと、彼女の頬に手を置いて俺は彼女に呟く。
「今日はありがとな。あと、色々とごめん。明日から俺また頑張るからな、コジョンドのために…」
 そう想いを告げてから俺は軽く彼女の唇にそっと自分の唇を自然と重ねてしまっていた。
 ただ、なんとなくだけどそうしたかった。多分この想いは間違っていないんだと思う。
「…ッ!!」
 だけど途端に恥ずかしくなった俺はすぐに自分の布団に潜って目を閉じた。心臓の鼓動が五月蝿いくらい響く中、俺は体が火照ったまま眠れぬ夜を過ごしたのだった…
 
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官能描写が入るといったな。あれは嘘だ
多分次回には入る、と思いたい


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多分次あたりの更新で官能描写が入るかも

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よろしければ、アドバイスやその他諸々のコメントをどうぞ

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IP:153.135.55.182 TIME:"2015-07-05 (日) 03:09:20" REFERER:"http://pokestory.dip.jp/main/index.php?guid=ON" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.3; WOW64; Trident/7.0; rv:11.0) like Gecko"

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