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ロールプレイングラブゲーム 序章【神の悪戯 の変更点


神様、そんなものがいるなら俺はその神を恨む。 
苦手なことを押し付けたり、学歴とか性格とかに惑わされた切ない世界を。 
そんな理不尽な世界で生きている俺達に手も加えようとせず、じっと見ている。それが許せなかった。 
一日が終わる度にそう思うばかりだった。 



しかしある日のことだ、俺が布団に入ってしばらくたった時のこと。 
俺は眠っていたのかいないのか、頭の中に入り込んでくる声に応答していた。 




『不満か?この世が?』 



「そりゃ、もっと気持ちいい世界がいいさ、不満といえば嘘になるけどな。」 



『そうだな、お前は十分に充実した生活を送っているし、一般人から見れば羨ましいくらいだろう。』 



「うん、俺もそう思うさ、俺はこの何の変哲も無い日常に満足している、けど、一部の人間は満足していないかもしれないだろ。」 



『――お前は凄いな、真に神に向いているのはお前なのかもしれない。しかし、弱いものと強いもの併せ持った、こんな世界があってもいいんじゃないか?』 



「ああ、でも俺は気に入らない。」 



『お前のような人間は初めてだ、お前はやはり神霊としてこの世を動かすべき者だ。』 



「え?何を言ってるんだ?俺はただ、人間として一部の思考を伝えただけであって!まず、ここは何なんだあんたはいったい?」 



『相手が誰かわからず話していたのでは無いだろう。我は、この世の神。いや神の一つ。愛の神だ。』 



「愛?何故そんな大そうなものが俺に――」 



『お前がそれに相応しいからだ、ただお前には足りないものがある。』 



「足りないもの?何を言っているかさっぱり――」 



『ならば、ついて来い、我が導こう―― 
















目を覚ますとそこは俺のベッドの上だった。 
「ん、なんかもの凄い夢を見たような……。」 
俺の名前は“日比野 悠(ひびの ゆう)”何の変哲も無い十五歳、高校一年の人間である。 
ただ人と違うのは、心の奥深くに、この世界が嫌い……いや、変えなければならないという思念を持っているということ。 
どこかの殺人ノート漫画とは違い、もちろん本気になどしない、それに俺はそんな頭も良くない、どちらかというと馬鹿な部類に入ると思っている。 
日光で輝く窓の反射を 
「悠!!起きてるの!?」 
一階から高い声が響いた。いつもこの一声で起きることができる、おれと違いしっかり者の母だ。 
ゆっくりと階段を降り、洗面台で顔を洗い、食卓へ向かう。 
ダイニングでは、すでに母と弟がまったりと朝食をとっていた。 
「おはよう悠、疲れてるんじゃない?目にクマができてるわよ。」 
俺は母の呼びかけに無言で頷く。 
「兄ちゃん兄ちゃん!ポケモン何処まで行った?」 
おもむろに席を立ち、俺の横で叫ぶ弟。かなりうるさい。 
「あ、あぁ……二つ目のバッジ手に入れたとこだっけな。」 
俺は昨夜の記憶を掘り起こし、呆れ顔で応えた。 
俺は弟の推薦により興味もない新しいポケモン……つまりはポケットモンスターダイヤモンドをプレイしていた。 
正直俺の中のポケモンは赤緑の時代でストップしていた。それなのに、俺の幼馴染の女やら、二つ下の弟から薦められてやることになってしまった。 
まずゲームをしない俺が自ら始められたのも、部活の練習の息抜きになるかもしれない……こう考えたからだ。 
「何よそれ、勉強ならともかくゲームでクマができたなら自業自得ね。」 
母が怒り気味に席を外す。それを全く気にも留めず弟は質問責めにしてくる。 
こんなどこにでもあるような日常。しかし、今日この日、ある大事件が起きようとは思ってもみなかった。 




その日の放課後、俺は部活に参加していた。 
「いいなお前は一年でベンチ入りなんて……俺なんて俺なんてさぁ!!」 
休憩時間、友達の“菅野 正弘(かんの まさひろ)”が後ろから絡んできた。正直うぜぇ。 
自分で言うのも難だが、俺はこの桜陽高校野球部、期待の一年レギュラーだ。 
「まさ、お前は中学からだろ、なら、しょうが無いって練習あるのみだ。」 
「バカ、お前みたいに上手くいくかよ、俺は才能無いんだぞ。」 
そんなこと言われても……困る。人を俺のことを天性の才能とか何とかいってるけど、それが俺は気に入らなかった。 
「あっ、悠、また来てるぞ……うらやましいねぇ…野球漫画の主人公は。」 
正弘が指差す先に、見覚えがありまくる女が立っていた。 
「誰が、漫画の主人公だよ、俺漫画とか読まねぇからわかんないっての!」 
俺はニヤニヤする正弘にそう言い放ち、見物女の元へ向かった。 
その格好はただの女子生徒、だが俺にとっては特別な女性であった。 
「悠ちゃんもやっと野球星人っぽくなったね~、レギュラーおめでと。」 
「なんだよ、あかね、今頃それは無いだろ、中学時代から散々いいやがってぇ!!」 
「あら、気に障ったかしら。スポーツバカには丁度いい称号じゃない、野球の星からやってきた~じゃないの?」 
ムカつくが、これがこいつの真骨頂、もう慣れっこだ。 
「ともかく、今日は先に帰れよ、お前がいると他の部員や先輩から変な目で見られるんだから。」 
「は~い、サクラ書店で“メトロ”の新刊立ち読みして帰りま~!」 
彼女の名は“榎原 あかね(えのはら あかね)”このオタク女には呆れる、これでも俺が一番仲のいい人間であり、好意はあまり無いが唯一話ができる女性であった。 
手を振りながらさっていく、あかね。その顔は、夕日で赤らんで見えた。 
「また立ち読みで店員に追い払われるなよ!」 
何気ないやりとりだったが、これが、俺達の最後……いや、この姿での最期の会話となった。 




キツい練習も終わり、その帰り道のこと、俺は夕闇を背に商店街を歩いていた。 
もう六時を過ぎたというのに日が覗いているのは夏に近づいている証拠だろうか、赤い光に長い影が不気味に感じた。 
普段は賑やかなこの通りもなぜか今日は人通りが少ない。俺は、なんとなく本屋に立ち寄った。 
「ん?これって……。」 
店の入り口に見覚えがある携帯電話が落ちていた。 
「あかねのか……ったくしょうがないな。」 
拾い上げカバンにしまう。まだ帰ったばかりなら追い付くと考え、俺は店を出た。 
丁度そこに、あかねがキョロキョロしながら戻ってくるのが見えた。 
「お~い、あかね!!」 
俺が大声で呼んだその時だった。 



キュキュキュ!!キィィ!! 



トラックがあかね目掛けて突っ込んで来た、居眠り運転だろうか、当の本人は気づいていない。 
「あかね!!!」 
俺はとっさに目を瞑った。 




ガシャン!!ガラガラ……。 




そんな馬鹿な……目を開いた俺は、信じられない光景に茫然自失した、あかねが事故に巻き込まれて……。 
声にならない叫びが頭の中に響いた。 
俺は忘れようと必死に走った、走って走って気づいた時には自宅のベットの上だった。十五年の記憶と共に俺は……死ぬように眠った。 





「神!なんでだ!!俺の、俺の親友を……幼馴染を返せ!!」 



『何を怒っている、目の前にあるものが全て現実とは限らないだろう。』 



「何が現実とは限らないだ!目の前で、俺の目の前で、あかりはトラックにはねられて――」 



『現実は目で見て初めてわかるものだ、お前は見たのか、自分の目で、彼女が死を迎えるのを。』 



「どういう意味だ、誰が見たって助からな――― 




――私は翔ける、紅蓮の空を~♪♪♪♪♪ 




俺は目覚めた、相変わらずベット上だった、あかりの携帯電話が鳴っている。 
サブディスプレイには“母”という一文字が表示されている。 
母からの電話があるということはまだあかりが事故にあったと知らない訳だ、俺は飛び起き時間を確認しようとした。 
午後23時だった。やがて子無き母からの発信が……おそらく有名なアニソンの着歌が……止まった。 



俺は夢の断片を拾い上げ、事実を確認を取ろうとテレビをつける。丁度事故のニュースが流されていた。 
死亡したのはトラック運転手一人。衝突した理髪店の従業員、歩行者などには被害無し……これは一体? 
あかりは死んでいないのか、しかしあれはどう考えても助からない距離で、現にあかねは消えている。 
だが、事故で死んだのはトラック運転手のみとはっきりニュースキャスターも言い張り、大きく新聞記事にとりあげるものではなかった。 




翌朝、俺はあかねの母に携帯電話を渡しにいった。話によると行方不明という形になっているらしく、俺にも何回も知らないかと尋ねてきた。 
眼の下にはクマができ、生気が感じられない、おそらく我が子を徹夜で捜したのだろう。 
俺は複雑な気分のまま学校に登校するしかなかった。 
「おい、ユウ、元気無いな、どうしたんだよ。明日から高体だぜ。」 
昼休み、落ち込んでいる俺に心配したのか正弘が慰めるように話しかけてくれた。 
「あぁ、ちょっと辛い事があったからな、今日は野球休む。」 
「え!?お前がいないと俺が大変だよ、先輩に扱かれるって~!」 
「ごめんな、今はそっとしといてくれないか……。」 
目の前で理解できない現象がおき、俺はこの世全てが信用できなくなっていた。 
俺は風に当たろうと屋上にあがった。空は果てしなく青く吸い込まれそうな感じだった。 
野良猫が数匹、日なたぼっこしている、俺はゆっくりと柵にもたれかかった。 
「よいしょ――て、うわぁぁ!!」 




この瞬間俺は飛んだ。 




壊れかけていた柵が破れ、宙に投げ出されたのだ。 
もがくが何もできやしない、落下する体、それも頭からだ。 
「これが神が選んだ道か……。」 
俺はゆっくりと目を閉じた。 



序章【神の悪戯】END

IP:133.242.146.153 TIME:"2013-01-30 (水) 14:45:08" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%96%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%20%E5%BA%8F%E7%AB%A0%E3%80%90%E7%A5%9E%E3%81%AE%E6%82%AA%E6%88%AF" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0; YTB730)"

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