この話は、[[新世代・闇を浄化する者達1]]からのリンクです。 本編を読んでから拝読することをお勧めします。by[[メタル狩り]] &color(red){※注意!残酷(グロテスク)に感じ取られる模写が一部あります。}; &color(red){気分を害されると思われる方は、読まれるのを控えてください。}; 残酷模写部分には、薄い色をかけています。それなりの度胸がある人は、 ちょこちょこ反転してご覧ください。 #contents ---- ***''&size(18){1.};'' [#je33f959] (バシッ! ドスッ! バシッ!) 「ふんっ! ふんっ!! ふんっ!!!」 ここは、アルスの家から少し離れた場所にあったもう一軒の家。 家の中にある狭い個室の中、一人の雄のリオルが、 ひたすら木偶人形に「はっけい」を打ち込んでいた。 「はぁ……はぁ……。あと300発くらいほど……っ!」 「……ちょっとレンー? 練習に励むのはいいけど、一応もう夜なんだから、 あまり五月蝿くしちゃ駄目よー?」 その個室に少し離れた居間から声がしてきた。 彼の母親のルカリオである。 「……あっ。分かりましたー。お父さんまだですかーっ? 早く練習相手してくださいよぉーっ。」 「ふぅ……。ちょっと貴方。レンが急かしてるわよ。 早く行ってあげた方がいいんじゃいの?」 「ちょっと待てって……。お前の練習道具を&ruby(こしら){拵};えてるんだから、 少しくらい遅くなってもいいだろぉーっ?」 ゴーリキーはかも不満そうに、レンと呼ばれたリオルにそう言った。 「……それはそうですけどー……。俺だって早くお父さんに 練習相手して欲しいんですよぉーっ。実践の方が&ruby(はる){遥};かに 効率がいいんですからぁ。だからできるだけ急いでくださいよぉーっ。」 「わかったわかった! ふぅ……。今晩は新月のせいで いつもより暗かったから木材集めに手間取ったんだがな……。」 ゴーリキーは周りの雑木林から度々木々(木材)を採ってきては、 愛息のレンのために、様々な練習道具を創っていた。 ちなみに今も、新しい木偶人形を作製中だ。 (お父さんが毎日手伝ってさえくれれば、本当は道具なんて あまり必要ないんですけど……。) レンは心の中でそう呟いた。 彼の父のゴーリキーは、レンが日々鍛錬に熱中していることを 快く見ていた。だから、少しはレンの手伝いをしてやろうと思い、 彼の練習相手を務めたこともあった。まぁ毎日となるとキツいが。 そんな訳で、彼のためにお手製の練習道具を与えていた。 ……しかし当の本人は、どちらかといえば父が手伝ってくれる方が 断然良かった。効率的にもよく、何より実の父親が 自分の練習を手伝ってくれることが、レンにとって どんな練習よりも楽しかった。 ***''&size(18){2.};'' [#x5af0775] ……ちなみに、彼(レン)がこうにまで鍛錬を続けている理由は、 彼の親友、アルスに負けないためである。 彼はアルスより一つ年上だった。……たかが一つ年の差で、 戦闘能力にも差が出るわけではないが、 彼としては年下のアルスに負けていることが、 半分は屈辱に感じていた、しかしもう半分は……。 (まぁアルになら負けてもいいですかね。 自分より強い親友がいるというのも、中々いいですし♪) という、ライバル心から彼を認めてもいた。 しかし屈辱に感じている部分としては、彼としても 納得がいかなかった。彼には負けず嫌いな一面もあるらしい。 彼やアルスがもっと幼かった子供時代。 アルスがまだピチューだった頃だ。 あの頃からアルスは、戦闘センスを開花させていた。 普通はピチューは覚えないはずの「10まんボルト」を 使ってきたのである。それとも電撃パワーが強くて、 「でんきショック」がそう見えたのかもしれないが、 威力のほうは「10まんボルト」そのものだった。 レンにとってはこれが一番驚いた出来事だった。 しかしレンにもある程度の戦闘センスはあった。 多分アルスには劣るところもあったかもしれないが……。 アルスがピチューの頃には、身体能力の差のおかげで、 辛うじて何度かレンも勝ち星を得たことがあった。 ちなみにこれは子供時代に彼らの間でブーム(?)だった、 「バトルごっこ」による結果である。ごっこ、なだけに、 本格的なバトルではない。まぁ怪我とかしたくないからであろう。 …だが今は状況が変わった。 アルスはいつしかピカチュウに進化していた。 それからだ、レンがとうとうアルスに勝てなくなったのは……。 進化のおかげで、身体能力の差は埋まってしまい、 勝てていた要因がなくなってしまった。 彼には悪いが、最近のバトルごっこの結果は、 17連敗中である。これを見ると、 どれだけアルスが強いのかもお分かりかと思われる。 ……という訳で、彼はいつしか、アルスを目標として 日々、鍛錬を続けていた……。 ***''&size(18){3.};'' [#ma8a64d8] 「おっし終わったぞ! ……ちょっと疲れちまったな。 レンの相手ができるかどうか……。」 ゴーリキーは新しい木偶人形を創り終えたところだった。 「お疲れ様♪ 本当に貴方ったらレンに甘いんだから……。」 ルカリオはゴーリキーにそう言った。 彼女としては、レンが鍛錬に夢中になっていることは、 あまり気にしてはいなかった。 むしろレンをひたすら手伝ってやっている、 ゴーリキーの溺愛(?)ぶりに半ば呆れつつある。 「……っ!!?? もうこんな時間かよっ!」 ゴーリキーがそう叫んだのは、時計に目をやった時であった。 時刻、既に夜の「12時」過ぎ。 「あら、いつの間にこんな時間。レン~ッ? もう遅いんだから、 練習やめて早く寝なさーいっ!」 ゴーリキーの後にルカリオはレンに向かってそう叫んだ。 ところで、夜はあまり五月蝿くしちゃいけないのでは なかったんですかい? そこのルカリオさん……。 「えーっ! まだお父さんに手伝ってもらってませんのに……。」 レンはどうやら、はっけいの打ち込みに夢中になっていたらしく、 彼も今の時間に気づかなかったようだ。 「明日手伝ってもらえばいいでしょぉ? 今日は諦めなさーいっ。」 「……ホッ」 心なしかゴーリキーが安堵している。 きっと彼も疲れていたらしい。さすがに疲れていると、 愛息のためといっても辛いのだろう。練習相手とか……。 「はぁ……。しょうがないです。今日はここで止めときますか。」 そういってレンは打ち込んでいた、 固定されていた木偶人形を外し、個室の隅に置いといた。 そして自分の部屋へと戻っていった……。 「お母さん。おやすみなさい……。」 レンはちょっとふくれっ面でそう言った。 「おやすみ……。明日頑張りなさい。」 ルカリオはそういって居間の方へと戻っていった。 ***''&size(18){4.&color(red){(グロ模写あり)};};'' [#s5c9be12] &color(blue){(レン視点)}; 新月が歪みかけ始めていた夜中。 外の木々の辺りでは、ホーホーの鳴き声や、 何人か夜行性ポケモン達の活動音が聞こえてくる。 夜行性ポケモン達が悪気なしでも五月蝿くされると、 昼行性の俺達は眠れないので、たまったもんじゃありません。 今日は五月蝿くもなかったのだが、 …何故か目が覚めてしまいました。 「…喉が渇いてますね。」 夜中に目が覚めたのでまだ眠気がありましたが、 喉も渇いていた。まずは何か飲みたいです……。 という訳で俺は自分の部屋から出て、 居間の方へと向かいました……。 ――数分後。 「(ゴクッ…ゴクッ…)ふぅ。やっぱり喉が渇いてると、 飲み物が美味しいです……。」 俺は暗い居間でそんな独り言を呟いてました。 ちょっと虚しい気もしますが、別にいいです。 牛乳が冷たくて美味しい……。 「……あれ?」 俺は部屋に戻る時、何かの異変を感じました。 「(ドタッ!)……ッ!!! ……ッ!!! (バタンッ!)」 何やら騒々しいです。何の音でしょうか……? といっても家には両親しかいませんし……。 「お母さん達何やってんでしょうか……。 夜は五月蝿くしちゃいけないんですよ……、っ?」 その時、俺の鼻に変な臭いが届きました。 なんでしょうこの臭い……? 何か鉄の臭い……。 「あれ……これって……&color(red){血の臭い};だったような…」 ……って何で突然血の臭いが するんでしょうか。おかしいです……。 けどこの臭いは嗅ぎ覚えがあります。練習で怪我する事も あったんでよく鼻が覚えてる臭いです……。 臭いがする先は……どうやらお母さんの部屋のようです。 ……なんでお母さんの部屋から? 「お母さん……っ。 こんな夜中に五月蝿くしてどうしたんで……っ!!!???」 俺に残っていた眠気は、一気にどこかへ消しとんでしまいました。 ……これはちょっと……洒落にならないです……。 ―――――お母さんが&color(lavender){ズタズタに引き裂かれ、体を血色に染めて倒れていた。}; そしてその側では、お父さんが……何かのポケモンと戦っていた……。 「あれって……ゲンガー……?」 多分、今俺の顔は青ざめていると思います。 お母さんの惨態を見てしまったせいで、 平常心が保てなくなっていそうで…。 「……っ!? レン! なんで起きてくるんだっ!!!」 お父さんが僕に気づいたらしく此方に振り向き様に叫んだ。 「隙ありいいいいぃぃぃぃっ!!!!」 &color(red){(ザクッ…!)}; 「………っ!!!!」 ***''&size(18){5.&color(red){(グロ模写あり)};};'' [#bdfc5774] ''(……俺は何を見ているんでしょうか……。'' '' きっと悪い夢ですね……。こんな酷い夢を見てしまうなんて……。'' '' 怖くて仕方がないです……。早く目を覚まして……。)'' レンの目の前で、ゴーリキーが血潮の上に倒れこむ。 &color(lavender){その胸に、真っ赤に染まった風穴を開けて……。}; 「ふぅ……。まさか夫婦そろって「みやぶる」を使えるとは 危なかったな……。かくとうタイプだからって油断してたぜ。」 ゲンガーはその闇の爪を灯した自分の手に付いている&color(red){真っ赤な液体};を一舐めして笑った。 「雌のルカリオとは珍しかったな……。ダークライ様はよくコイツを 英雄の血筋を継ぐ者だって見破れたなぁ。まぁ俺にとっちゃ 関係ないがな。俺は命令に従うだけだし……。」 ゲンガーはそこまで言い、ドアの前で身震いすらできなくなるほどに 恐怖で凍り付いているレンの方へ目をやった。 「お前はココん家の子供だよな? ダークライ様から子供の事とかは 聞いていないが、殺しといた方がいいかな……? ……そうだな、口封じにもなるからそれがいいな。」 「……っ!」 レンはそういわれて、ようやく我に返った。 このままじゃ彼まで&color(red){殺};――――………。 「うわあああああああああ!!!!!」 レンは気がついたら、ゲンガーに立ち向かっていた。 ゲンガーの懐に入り、得意の「はっけい」を打ち込む。しかし……。 「おっと……。俺はゴーストタイプだぜ? 「みやぶる」使わなきゃ 攻撃が当たんないのは知らなかったのかなぁ?」 ゲンガーはレンの目の前に、手の平をかざした。 「……ぐぅ!?」 その途端、レンの体が痺れるかのように動かなくなった。 「かなしばりの味はどうかな? 初めて体験するだろ……。」 レンが初めて味わうかなしばりの感覚。 アルスとのバトルごっこで麻痺させられたことは幾つかあった。 だが、それとは別物の痺れが彼を襲っていた。 「まぁそう力むなよ……。すぐ楽にしてやるから……ん?」 ゲンガーはレンの後ろに視線を変えた。 ……レンの後ろに、一つの光が浮かんでいた……。 ***''&size(18){6.};'' [#j100bca3] ―――――……。 レンは気がつけば、ルカリオの部屋で倒れていた。 部屋には誰一人いなかった。 家の他の部屋にも……誰一人いなかった……。 「あれ……。なんで俺、こんなとこで寝てたんでしょうか……?」 レンは不自然そうに家のあちこちを見回った。 誰一人いない家の中は静まりかえっていた。 「昨日のは夢……じゃないですよね……?」 レンは昨日の惨劇を思い出していた。彼の顔がまた青ざめていく。 「―――レン。キコエルカ……?」 「っ!? 誰ですかっ!?」 突然名前を呼ばれて、レンは身構えた。 家の中に無機質な声が響いていた。 「レン……。ワタシノモトニ……キテクレ……。」 「……? え……っと……。」 いきなりだったので驚いたが、どうやら呼ばれているらしい。 その声をする方に向かった……。 「……この木偶人形が喋ってる……ことはないですよね……?」 声を辿った先には、レンが練習道具で使っていた木偶人形があった。 『……お前に語っているのは木偶人形ではない。この私だ。』 ……木偶人形から一つの光が浮かび上がり、一匹のルカリオが出てきた。 「……貴方は……誰ですか?」 レンは木偶人形から出てきたルカリオに聞いた。 『お前と、お前の母親の先祖だった者だ。そして、お前が昨晩、 危険な状況から助け出したのも私だ……。お前はあのゲンガーに 殺されかけていたのだぞ。覚えてはいないのか?』 ルカリオは答えるのと同時に質問を返した。 「……若干覚えています。 ゲンガーに捕まった後の記憶がないですけど……。」 きっと気絶でもしたのだろう。 レンはあの後の出来事を覚えていなかった……。 ***''&size(18){7.};'' [#ha5b0de1] 『お前が意識を失くす前にゲンガーが言っていたことは覚えているか? ……かつて私は、この世界が闇で支配されそうになっていたとき、 私を含め、7人の英雄と共にダークライに立ち向かったのだ。』 「闇で支配……ダークライ?」 レンは首をかしげた。 イマイチ理解できていないところがあったからだ。 『英雄の仲間であったピカチュウの子孫も、お前と同じ事件に 巻き込まれているはずだ……。「アルス」というらしいが、 名前に間違いはないか?』 「……はい、アルは俺の親ゆ……友達です。」 レンは「親友」と言いかけたが、それは止めといた。 相手が自分の事をどう思っているかまでは分からないからだろう。 ……アルスは普通に「親友」と認めていると思うが。 『そうか。それならいい……。 ''あいつ、ピカチュウ……の子孫……、アルスの事を頼む……。'' 彼の家に、既に向かっているはずだ。あいつから全てを……聞……』 「えっ、ご先祖様……?」 ……レンのご先祖、ルカリオの霊魂は、 光の塵となり、消え去ってしまった……。 「アルにも同じ出来事が……? とにかく、アルのとこに 行きましょう……。」 レンは家を飛び出し、アルスの家へと向かった。 ―――……。 彼の家の窓から声が聞こえてくる。 窓をのぞいてみると、アルスが古びた本から出てきている 一つの光……アルスに似たピカチュウと何かを話していた。 レンは黙って、彼らの話に耳を傾けていた―――……。 ---- 感想などは、本編の方でお願いします♪m(_ _)m