[[桜花]] 1・因果津による死 朝起きて大学に行って、勉強して面接希望等をして家に帰る…そんな退屈な日常‐大学四年生の黒原 海斗は、大学の卒業を間近にして、日常に退屈を感じていた。 海斗は勉強でもスポーツでも、特に苦労せずに何でも出来て、人生につまらなさを感じていた。 「何か面白い事ないかな…こう刺激のある事とか…」 自分のつまらない日常に、少々嫌気を感じていた海斗 (もっとこう…面白い事でもないかな…) そう考えながら、ヘッドフォンで音楽を聴きながら歩いていた。だから気づかなかった。背後から暴走車が迫っている事に…。 ドン!!! 大きな音と共に、海斗の体は跳ね飛ばされ、そして地面に叩きつけられた。全身に痛みを感じながら海斗の意識は無くなった。 ※ ※ 「…めよ…目覚めよ…」 「…?」 何者かの声がして、海斗の意識は覚醒していく。意識を取り戻した海斗が見た景色は、真っ白な空間であった。 「目覚めたか…」 声がした方を振り向くと、其処には二本の柱の様な物があった。 「上だ…」 声は上からしたので、海斗は上を見上げてみた。其処には… 「ア…アルセ…ウス?」 其処に居たのは、ポケットモンスターに出てくる、創造ポケモンのアルセウスであった。架空の存在であるアルセウスが目の前に居る事に、海斗は動揺した。 「何でアルセウスが…夢…?」 「残念ながら夢ではない…其方は其方の世界の事故で死んだのだ」 「僕が…死んだ」 やや冷静に今の自分の状況を理解しようとした。 「だがそれは我の世界の因果津によるものだったのだ」 「じゃあつまり早い話が、僕が死んだのは事故によるものではなく、そちらの世界が原因って事ですか?」 「そういう事になる…其処でだ…」 アルセウスは顔を海斗に近づけて、言葉を続けた。 「其方を私の世界のポケモンとして、生き返らせようと思う」 「ポケモンとして? 何で人間じゃないんですか?」 「其方は日常に退屈していたのであろう? ならばポケモンとして生きてみるのはどうだ? もし嫌ならば、人間としても構わないし、このまま死後の世界に送る事も出来るが…どうだ?」 「……」 アルセウスに尋ねられて、海斗は少し考える。 (これって俗に言う、異世界転生だよな…なら特典とかもあるのか…?) そう思い海斗は、尋ねてみる事にした。 「ポケモンとして生き返ったら、何か特典はあるんですか?」 「良い質問だ。種族は此方で選ばせてもらうが、其方のステータスを格段に上げておく。最後に便利なアイテムを二つ渡そう」 アルセウスに条件を提示され、海斗は考える。 「(種族はアルセウスの自動選択か…変なのだったらやだな…けどまあ人間に転生するよりマシかな…)分かりました。ポケモンに転生します」 「あい分かった。では次に便利なアイテムだが…」 「じゃあ…一つはマップやら様々な機能が付いたゴーグル。もう一つは様々な物が入るアイテムボックス。その二つをお願いします」 ラノベとかにありそうなアイテムを要求する海斗。 「分かった。其方が転生した際に、一緒に送ろう…ではそろそろ転生の時間だ。其方に幸あれ」 アルセウスの言葉と共に、海斗の視界は真っ白に包まれた。 2・転生ブラッキー 「んっ…」 草の香りを感じて、海斗の意識は覚醒していく。 「転生…したのか…」 目を開けて立ち上がると、目線が低い事に気づいた。 「そうか…僕ポケモンに転生したんだっけ…なんのポケモンだ…?」 そう呟くと海斗は、自分の手もとい前足を見た。それは青い輪の模様がある黒い前足だった。どうやらブラッキーの様だが… 「アレ? ブラッキーって金の輪の模様じゃなかったっけ…! 色違いか…」 どうやら海斗は只のブラッキーではなく、色違いのブラッキーに転生した様だ。 「そういえば、転生前にアルセウスに注文したアイテムは…!」 海斗は後ろ脚に何かが当たる感触がし、其方を見てみると、其処には首から掛けられる程のポーチが草の上に転がっていた。 「これがアイテムボックスか?」 海斗はポーチを前足で取り、ボタンを外して中身を見た。しかし中は黒い空間があるだけで、中身は全く見えなかった。 「何だ此れ? どうなってるんだ?」 海斗は前足をポーチの中に入れてみた。すると何かを掴んだ。掴んだ物を引っ張り出すと、それはゴーグルであった。 「此れはアルセウスに注文したゴーグルか?」 海斗は早速それを頭に装着してみた。 「…見た所、普通のゴーグルだよな…説明書みたいなのは、無いのか?」 そう言って再度、ポーチの中を探る海斗、すると紙の様な物に触れた。海斗はその紙を引っ張り出してみる。それは手紙であった。 『この手紙を読んでいるという事は、既にポーチの存在がアイテムボックスである事に気づいているという事であるな。ポーチの中には其方の生前の持ち物の他に、マップ等のあらゆる機能が付いたゴーグルを入れておいた。使いたい機能を頭に思い浮かべれば、ゴーグルの機能が自動的に頭に入ってくる。あとは其方の使い方次第だ。では頑張ってくれ』 そう手紙にはつづられていた。 「成程、じゃあとりあえず浮かべてみるか」 海斗はゴーグルの機能を浮かべてみた。すると沢山の機能の中に、マップ機能があるのに気づいた。 海斗はその機能を作動させた。するとゴーグルのレンズ、即ち視点上に地図が表示された。 「…どうやら近くに街があるみたいだな。とりあえず、其処に行ってみるか」 海斗は首からポーチを下げると、ゴーグルの地図を頼りに街へと向かって走り出した。 3・ソレイユ 街に辿り着くと、其処では多くの人間がポケモンと共に行動していた。その内殆どの人が海斗を見ていた。 「やっぱり色違いだから、僕は目立つのか…そういえば考えてみれば、僕はこの世界での目的も何もなかったな…どうしよっか…」 そうブツブツ言いながら、道を歩いている時であった。 「あの…」 「!」 後ろから鈴を転がす様な声を掛けられて、若干ビックリしながらも振り向くと其処には… 「エ…エーフィ…」 其処に居たのは、自分即ちブラッキーと対をなすポケモン、太陽ポケモンのエーフィであった。薄紫色の毛並みに二股の尻尾、額には赤い宝珠を嵌めているポケモン。視力が悪いのか眼鏡を掛けていた。どうやら雌の様である。 「何か?」 海斗が尋ねた。 「あ、いやその…色違いのブラッキーって珍しいな…って思って声を掛けたんだ…」 そうエーフィは言った。 「…ナンパ?」 からかう様な笑みを浮かべながら、海斗は言った。するとエーフィは顔を赤くして反論した。 「ち、違うよ! ただ珍しいな~って思っただけだから…あっ、私はソレイユ。貴方の名前は?」 「僕は…」 海斗と言おうとする寸前、海斗は考えた。 『待てよ。黒原 海斗って名前は、あくまで人間だった時の名前だし、僕が新しく決めても良いかもしれない…でも何にするか…月だからムーン…シンプル過ぎる…ルナ…雌っぽい…月は夜に出る…ナイト…いや…ルナイト! これだ!』 「どうしたの?」 ソレイユが尋ねてくる。 「ああ、ゴメン。僕の名前はルナイト…月の夜って意味さ」 海斗‐ルナイト‐はそう言った。 「ルナイトか…カッコいい名前だね」 「……」 今この場で考えた名前なのに、褒められるとは思わなかったルナイトは、少し照れた様子を見せた。 「実はルナイト…頼みがあるんだけど、良いかな?」 「頼み?…まぁ僕はトレーナーも居ないし、別に構わないよ」 「えっ!? ルナイトって野生のポケモンなの?」 「ああまあ…そんな感じだ…それで頼みって何?」 「実は…」 不意にソレイユがルナイトの耳元へ口を寄せてきた。それに対してルナイトは少しドキドキした。 「実は私…此処の所野生のポケモンにストーカーされてるの…だから家まで一緒に行ってほしいんだ」 「…僕は構わないけど…良いのか? 野生の僕を家に何か連れ込んで」 「うん。ルナイトって良いポケモンみたいだし、信用出来るかなって思って」 「…分かった。じゃあ案内してくれるか?」 「うん。こっちだよ」 そう言うとソレイユは走り出し、その後をルナイトが追った…それをつけているポケモンが居る事を知らずに…。 3・ソレイユの家 「デカい家だな…」 ソレイユに案内されてきた家を見て、ルナイトが呟いた。 「私のトレーナーの実家、とっても大金持ちだから、この家も大きいんだ」 苦笑いしながらソレイユは言った。 ソレイユは家のロックを解除して、ルナイトを招き入れた。 「どうぞ、ルナイト」 「お邪魔します…」 家の大きさに戸惑いながらも、家へと入るルナイト。そのままソレイユに案内されたのは、広いリビングであった。しかし其処には誰も居なかった。 「そういえばソレイユ。さっきトレーナーがどうとか言ってたけど、そのトレーナーは何処にいるんだ?」 「今は学校に行っているよ。高校生なんだ私のトレーナー…あっ、今お菓子持ってくるね」 そう言うとソレイユは、何処かへと歩いて行った。恐らく台所だろうとルナイトは思った。 暇だったので辺りを見回していると、棚の上にある写真に目が留まった。其処にはソレイユの他にソレイユのトレーナーらしき女性と、シャワーズ・ブースター・サンダース・リーフィア・グレイシア・ニンフィアが写っていた。その写真にはブラッキーとイーブイだけが居なかったが、それ以外のブイズは全て揃っていた。 「…何か嫌な予感がするな。僕を捕まえようとするかもしれない…そういえば、僕はどんな技を覚えているんだ…これで分かるかな?」 そう言いながらルナイトは、額に掛けておいたゴーグルを下げてみた。そして自身の技を思い浮かべると、サイコキネシス・居合切り・シャドーボール・電光石火の四つが表示された。 「近距離・中距離用の技ばかりか…サイキネがあるから、格闘タイプとも戦えるな…」 「ん? ゴーグルなんか掛けてどうしたの?」 其処にESPで木の実の入った籠を運んでくる、ソレイユが戻ってきた。 「ルナイトはどんな味が好き? 辛いの? 渋いの?」 「僕は…」 その時、自分は何味が好きなんだと考え、自分の性格を調べる為に、再びゴーグルを使った。その結果・『気紛れ』と表示された。 「(気紛れかよ…捻くれてる様な性格だな僕は…)…僕は気紛れな性格だから、何でも平気だよ」 そう自分の中で嘆きながら告げるのであった。 「へぇ~意外だね。ブラッキーだから『慎重』とか『腕白』だと思ったけど…私は『冷静』だから渋いのが好みなんだ」 そう言ってソレイユは、ルナイトに適当な木の実を渡し、ソレイユは渋めの味の木の実を取った。 木の実を食べている間、特に会話が無かった為、ルナイトは部屋の中を見回して何か会話の種を探した。すると先程の写真が目に入った。 「あの写真の人間とブイズ達は、君の家族?」 「えっ? ああアレね。そうだよ。あの女の人は私のトレーナーなんだ」 「ふ~ん…ねえソレイユ。一応聞きたいんだけど、あの写真、イーブイとブラッキーだけが、ブイズで写ってないじゃないか。もしかして君のトレーナーはブラッキーを探しているとか?」 「ギクッ…ま、まさか…そんな事ないよ…」 (分かりやす! 目が泳いでいるよソレイユ…) 心の中でソレイユにツッコミを入れるルナイト。 「まあ僕には関係ない事だね。僕は流離のポケモンだし、誰かのポケモンになる気もないし」 「えっ!? いやでも…うちは普通のブイズ家族だよ…」 (普通のブイズ家族って何だ!?) 再びツッコミを入れるルナイト (これ完全に俺を捕まえようとしているよな…何とかして逃げないと…) ルナイトはこの場から逃げ出す算段を考えた。 4・逃亡と戦闘 ルナイトは木の実を食べながら、どう逃げるか考えていた。 (いきなり逃げ出すのも、ソレイユに失礼だしな…かと言って、捕まえる気のソレイユがそう簡単に逃がしてくれると思わないし…) いくら考えても逃げ出す手段は見つからなかった。 「ルナイト? 何か考えているの?」 「えっ? いや別に木の実が美味しいなと思って、ボッーとしてただけだよ」 まさか逃げ出す事を考えているとは、悟らせない為にルナイトは誤魔化した。 「木の実、もう無くなったちゃったね。また新しいの取ってくるよ」 そう言うとソレイユは、木の実の入っていた籠を咥えると、台所の方へと行った。 (チャンス! 逃げ出すなら今だ!) ルナイトは急いで言葉から逃げようとした。しかし何も言わずに逃げるのは悪いと思い、近くにあったメモにペンで置手紙を書いた。 「ごめんねソレイユ…僕は誰かのポケモンになる気はないんだ…」 そう言うとルナイトは、開いている窓から素早い身のこなしで外へと出て行った。 まだ続きます。改良中です #comment()