&size(25){ライトオレンジ}; 作者:[[カナヘビ]] &color(violet){※官能的な表現があります}; 1 「ふわぁ……」 マルノームのようなあくびをしつつ、右手のフライパンを忙しく動かす。 ニキビのでき始めた頬を掻きつつ、菜箸で半固体の玉子を整え、慣れた手つき丸めていく。未だ垢抜けないその顔にはやや幼さが残り、少なくとも成人はしていないようだった。できあがった玉子焼きを崩れないようタッパーへ。野菜炒めやヴルストなど大量に入った中に無理やりねじ込み、種類は少ないが量多めの弁当ができあがる。 その隣には、見ようによっては毒々しくも見える、ピンク色の気を発するカレー。モモン、マゴ、シュカ、カシブなどの木の実と特選リンゴの切り身をのせた、マホイップのように甘ったるいカレーが皿に山盛りになっていた。 「よし!」 やや汗ばんだ短髪をかき上げ、調理器具を洗いにかかる。しかし、男ながら汚れを落とすだけの雑な洗いに落ち着き、時間がかかることなく終わった。 次に洗面所へ。ヒト1人とは思えないほど清潔に保たれた洗面台の棚から大きめの白いフェイスタオルを取り出し、水で濡らした。満遍なく濡らした後、細めの腕からは想像しづらいような力で固く絞られ、たきのぼりで上れそうな勢いで水が出された。 もう1つ、今度はバスタオルを取り出す。洗面台からはみ出るほど大きいものの、シャワーモードにて全体を濡らし、これまた絞る。常人なら決して絞り切れない太さにもかかわらず、水はまたも滝のごとく流れ出たのだった。 小さなアパートの一室。絞ったバスタオルを広げて玄関に広げて敷いた。キッチンと居間には部屋2つが隣接されていて、その部屋のうちの1つに近づき、ノックする。 「ガーネット!」 返事をまたずノブを引いた。 朝方からテーブルの前に座り込み、机の上の参考書とにらめっこしているサイドン。目を細めつつ、扱いにくそうな短い腕を小刻みに動かし、左腕はページをめくり、右腕は器用に3本の爪で鉛筆を持って懸命にノートに書きこんでいる。 「おはよう、ガーネット」 「おはよう、トレーナーさん」 トレーナーは爽やかに挨拶するが、ガーネットはそこまででもない。決して暗くはないが、ややそっけない。興味がないとまでは言わないまでも、どこかつっけんどんだった。 トレーナーは微笑みつつ、絞りあげられたタオルを広げた。座ったままのガーネットの横で膝立ちになり、ガーネットの顔を拭く。 「うん……」 目と口をしっかり閉じ、トレーナーに拭かれるがままになる。ヒト的に言えば洗顔などをしたいところだが、タイプ的な事情を含めて厳しい。そもそもサイドンは洗顔などあまり気にしない無頓着な種族ではあるが、これはガーネットからの希望でもあった。しかし苦手なものは苦手。しかめっ面になりつつも、黙って拭かれている。 「よし、綺麗になったな」 トレーナーは頷く。室内ではあるもののそれでも分かる程度に、薄橙色の肌はジュラルドンのように艶がでていた。拭いたタオルは雑に巻き、ズボンのポケットに無造作に突っ込んだ。 「朝飯と、それから昼も作った。昼もテーブルの上に置いておくからな。じゃあ、先に行ってくる」 「ええ、行ってらっしゃいトレーナーさん」 勉強の真っ最中らしいサイドンは、無関心とまではいわないが、そこまで食いつくことなく言った。 苦笑しつつ、トレーナーは静かに戸を閉める。そのまま自分の部屋に入り、瞬く間に寝間着を脱ぐ。夏にもかかわらず薄い長そでのシャツ、ぶかぶかにしか見えない長ズボン、頭にはタオルを巻き付け、巨大なスポーツバッグを担ぐ。 「行ってくるなー!!」 早朝5時。快活な声と同時に玄関からでていく。後には、ひたすらに勉強を続けるサイドンが残された。 接しそうなほど顔をノートに近づけ、目をしかめながら1文字ずつ書いていく。その手は繊細に動いているものの、書かれている文字はアーボが這ったようにいびつで読みづらい。そんな文字が、ノート全体を這いまわっていた。 文字と格闘すること2時間。息をついて鉛筆を置き、ノートを閉じる。重い体をゆっくり立たせ、やっと自身の部屋から出ていく。 テーブルの上には、タッパーに入れられた弁当と、桃色の気が漂う毒々しいカレーと、大きなタオルが置かれている。鼻腔をくすぐる甘ったるい香りに、勉強で引きつっていた顔が緩んだ。 「おいしそう……」 匂いに引っ張られ、目を輝かせながら、ひと思いに皿を持ち上げてカレーを流し込んだ。かなりの量があったはずだが、それを意に介することもなく、一口で平らげてしまった。 「ごちそうさまでした」 満面の笑顔で満足げに言う。そのまま台所へ行き、水の溜められたバケツに入れたのだった。 「さてと」 ガーネットは再び自室へと戻った。やや斜に構えながら左足を突き出すようにしてかがみ、勉強用具を掴みにくそうに拾っては、自身と同じ薄橙色の手提げ袋へ入れていく。大きめの丸い缶に鉛筆やペン等の筆記用具を詰め込んで袋に入れ、下敷き、参考書、教科書等を入れる。最後に簡素なカード入れを用意し、部屋を後にした。テーブルの上の弁当も入れたところで、玄関に向かうのだった。 「行ってきます」 取っ手を握って外に出て、カード入れをかざすと、機械音と共に施錠される。音を確認し、階段に向かうのだった。 ◇ タマゴから生まれてすぐに引き取られた、と言ってもよかった。トレーナーはガーネットに多くを明かさないが、年を経てくると大体察してくるものである。 サイホーンという種族は基本的に『バカ』として知られるポケモンである。ガーネットもその例に漏れず、当初は何も考えずトレーナーと接していた。その名残の穴や傷が部屋のあちこちに残っており、家具で隠して大家をごまかしているのだった。 サイドンに進化し、2足歩行になって少しばかり頭が働くようになった頃。生傷や部屋の破損が絶えない現状にやっと気づき、この頃になってようやく彼女は『バカ』という言葉を知ることとなった。初めて気づき、知った言葉。それは間違いなく、悪い意味のものだった。 自身がバカと呼ばれること、なによりトレーナーが自分を養っていること。それらの重さに気づいたガーネットは、サイドンとしては通常ありえない決断をしたのだった。 それはすなわち、勉強すること。多くの知識や技量を取り入れ、学業を修めようということだった。 当初は反対しかなかった。それも当然で、サイドンなどは力仕事がメインのポケモン。学業よりはそちらのほうが分かりやすく、成果が出やすかった。トレーナーすら最初は受け入れがたくしているほどであった。 しかし、いしあたまな彼女は聞く耳をもたず。やや無理を言って勉強に関する本などを買ってもらい、以降は猛勉強に励んだ。 ところが。彼女がどれだけ努力しても、頭脳は遅々としてついてこなかった。もともと『バカ』に草が生えた程度の脳みそしかなかった彼女は、文字の書き取りや四則演算もままならなかった。 それでも彼女は努力し続けた。決して器用ではない手ではシャーペンが扱えないため鉛筆を持ち、1文字書くことにすら集中し、容量不足の脳みそはキョダイマックスダストダスのように溢れんばかりになりながらもばかぢからで詰め込むことを意識した。それによりオーバーヒートしてしまい、トレーナーに起こされたのも1度や2度ではない。脳みそをヒートスタンプされるような苦行を続けるあまり、得意のいわなだれをゆきなだれに変えてまで頭を冷やしたいと思ったことさえあった。無論実際にはやっていないが。 そして彼女の努力は無駄にはならなかった。いしあたまがすてみに変わりそうな猛勉強の末、見事ガーネットは奨学金制度の水準に達し、試験に合格。ヒトとポケモンが共学である大学のなかでも一流と言われる場所に、首席に届かないまでもトップクラスの成績で合格したのだった。 しかしながら、ガーネットの頭はあくまでサイドン。あふれ出てくる知識は抑えることが困難で、ヤブクロンのごとく頼りないカバーがやっとのところ。知識の流出を抑えつつ新規の知識を蓄え、日夜勉学に励んでいるのだった。朝も早く起きて勉強を始め、昼間はもちろん勉強、夜も健康を損なわない程度に勉強している。 ガーネットがほぼ毎日外にでるようになったことで、トレーナーの日常も変わった。普通の食事だったものを弁当に変えて毎朝作り、勉強に夢中になっているガーネットを呼びに行く。時間の都合上、どうしてもガーネットが出るのが後になるため、サイドンでは扱いにくい鍵を取り払ってカードキーシステムを導入したのだった。いくらかかったなどとガーネットには決して言わなかったが、これにより大家から大目玉を食らったことだけは、遠くから聞こえた怒号で察したのだった。 そこまでのことをしてくれるトレーナーはというと、初めて勉強すると言ったとき以来一切何も言わない。それどころか、嫌な顔1つせず積極的にガーネットを助け、支えている。献身的な彼を裏切ってはいけないと、ガーネットは勉学に励むのだった。 2 「ただい……あっ」 仕事終わりのトレーナーが帰ると、玄関のタオルで足を拭いたと思しき跡のすぐ前で、ガーネットが倒れていた。 「ガーネット!」 靴を脱ぎ散らかして近づく。荒い息で顔がクリムガンのように染まっていた。 「トレーナーさん……」 「大丈夫か?頭が爆発するなんて、ずいぶん久しぶりじゃないか」 ガーネットの腕を持ち上げ、肩を貸す。120キロの体重をもろともせず支え、ゆっくりと歩を進めるのだった。 「ごめんなさい……。前に勉強した数学が頭から漏れてしまってて……。授業で、前の分と一緒に詰め込もうとしたら、なってしまったの」 「いいさ、別に。ほら、もうちょっと楽にして。今は何も考えず……ね?」 「だめよ。ほかの時ならいざしらず、今は本当にダメ……。考えてないと、何もなくなってしまうわ……」 横方向から首の根元を触ってみると、とても熱い。どうやら本当に熱を出してしまったらしく、意識も歩行もちどりあしだった。 「まずいな……」 ふらつく彼女をなんとか部屋に運び、横に寝かせる。撫でつつ布団をかぶせ、即座に洗面所へ。タオルを2枚取り出し、少し湿り気を残して絞る。小走りで部屋に戻ると、1枚は額にかぶせ、もう1枚はサダイジャのように角に巻き付けた。 「横になってるといい。あ、参考書は読んだらだめだぞ」 言いつけて、そっとその場を離れた。 ガーネットのことを頭の隅に置きつつ、料理を始める。見ている限りではガーネットは横たわったままであるものの、息も絶え絶えにうなされていた。 そこまで凝らずレトルト麺を使っての調理で済ませ、急いでガーネットのもとへ。 すっかり落ち込んでため息までついている。持て余した指は、鉛筆を握りたそうに開閉していた。 「食べられるか?」 「食べたくない」 「無理やり口に押し込む。むせるぞ?」 麺を箸ですくって口に押し込む。ガーネットはブルーのような仏頂面ではあったが、特に拒むこともなくもごもごと食べる。健康的には起きていればいいものの、気力がないのかトレーナーに与えられるがままになっていた。 「気持ちはわかるが、体調を崩したんじゃ何も意味がない。詰め込まないと忘れてしまうのかもしれないが、もう少し気持ちにゆとりを持ったほうがいいぞ」 「そんなの」 言葉は麺で封じられる。そのまま黙々と時間が過ぎ、汁だけを残してガーネットは完食したのだった。トレーナーはそのまま容器を握りつぶし、ゴミ箱へと投げつけた。 「ごちそうさまでした」 「落ち込んでるときは食べるのが1番だ。やけ食いなんてものがあるくらい、食べるっていうのは心を満たすものさ」 「満たされないわ。もう、何を忘れたのかも分からない」 普段ならば机と向かい合っている時間。勉学に励めない悲しみで、ガーネットの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。 今まで努力した分は報われてきた。だが、どれだけ努力しようとも、容量不足には勝てず流れ出してしまう。特に、今まで積み上げてきて実績を残したことさえ無に帰すなど、トレーナーには想像もつかなかった。 「バカって言われるのが嫌だったわ」 ガーネットは呟く。 「他のサイドンはそうは感じないかもしれないわ。でも、私はその意味を知ってしまった。だから勉強してるの。学校入って、成績も上のほうになって、サイドンなのにすごいって言われて、嬉しかった。本来は頭がいいエスパータイプの子に勉強を教えてあげたこともあった。でも」 流れる涙は、次第に大粒に。 「なんで、こんなにバカなの?覚えても覚えても、脳みそに定着しない。書いても書いても、ろくに覚えられることがない。私だって力仕事ができないわけじゃないわ。サイドンだもの。それでも勉強したい。だって、勉強って楽しいもの。でも、勉強のほうからは嫌われてる。こんなに、やって……」 トレーナーはとても見ていられなかった。しかし、どうすることもできない。ひたすら、角の根元を撫で続けることでしか慰められなかった。 「サイドンって、勉強しちゃダメなの?」 トレーナーは答えられない。首を横に振りながら、ただ聞くことしかできなかった。 ◇ 「せめて彼氏でもいれば違うんじゃないかと思いまして……」 後日、預かり屋へと足を運んだトレーナーは、店主に事の顛末を話していた。 預かり屋では、厳選の際に受け取られなかったタマゴが多くあり、それらを野生に返すため、あるいは新しくトレーナーを探すために預かっているのだった。 そして、預かり屋の本分はやはり繁殖の補助。タネと言えば失礼にはなるが、そういって差し支えない専用のポケモン達も所属しているのだった。 大学では勉強ばかりで、ガーネットからは色恋沙汰は全く聞かない。お節介であることは百も承知だったが、泣いてまで努力しているガーネットが見ていられず、あまりに不憫だったため、連れてきたのだった。。 しかし当然というべきか、ほぼ無理やり連れてきたガーネットは無関心。鉛筆などは持ってこれなかったため、部屋の隅っこで参考書の虫になっていた。 話を聞いた店主は快く頷き、やや厚めの冊子を手渡す。載っているのは雄ポケモン。種族名、性格、習得技、個体値などが詳細に書かれていた。 「なるほど……これは……」 めくりつつ、怪獣グループのページへ。立派、ふとましい、筋骨隆々といった言葉がふさわしい様々なポケモンが掲載されている。その中の1つのページに目をつけ、店主に言いつけた。適当に選んだというわけでもなく、どちらかと言えばよさげな雄を選んだといったようなもの。店主が用意しにいった直後に、ちょっとでもガーネットに相談すればよかったかと少しばかり後悔した。 「ガーネット」 トレーナーは声をかける。関心無さげなガーネットは、細めた目だけを向けた。 「大きなお世話かもしれないが……、たまには、心を休めてほしいって思ってね。勉強ばかり……っていうと言葉が悪いかもしれないが、たまには休むのも重要だと思う。寝ても覚めても勉強じゃあ、心が持たない。異性と他愛もなく話して、気分転換しないか?」 「異性って、毎日トレーナーさんと話してるわ」 「いや、そうじゃないだろう。ガーネットと同じタマゴグループ、恋愛対象になるような異性のことだ。勉強のことを忘れろとは言わないが、勉強抜きに女の子らしく話してもいいと思うんだ。な?」 トレーナーが言い聞かせるも、ガーネットはトレーナーと参考書を交互に見ながら渋い表情をしている。 「頼むよ、ガーネット」 トレーナーは頭を下げる。 「正直、見てられないんだ。本当は勉強の役に立つことをしたいけど、僕は勉強を教えることなんてできない。ガーネットのほうが勉強できるから、いざとなったら教えてもらいたいくらいだ。できることといえば、なんとか心の安らぎを探すことなんだ。本当に、頼む。せめて1日でもいい。こんなところに連れてきたが、何も子供を作ってくれって言ってるわけじゃないんだ。勉強以外のこと、してみないか?」 トレーナーは懇願する。 嫌そうな顔をしつつも、小さく息をついて参考書を閉じる。あちこちに目が揺れてだいぶ迷っているかのよう。勉強がしたいという気持ちと、トレーナーの懇願を受けたいという気持ちが、交互に頭によぎる。未だに2つのことを同時に考えることなどできないが、最終的にはトレーナーから注がれる視線屈し、参考書を差し出すのだった。 「全くもう……。トレーナーさんからそこまで言われるなんて、初めて。断れないじゃない。勉強したいのにもう……。今回だけね」 言いつつも、参考書を握る手は名残惜しそうだった。 トレーナーが参考書を受け取るタイミングで店主が戻り、軽く説明を受けた。 あくまでもポケモンの異性同士。事を間違えれば行為に至ってしまう可能性は大いにある。相手のポケモンにも、交尾の意思はないことを伝えてはいるらしいが、その説明はかなり歯切れが悪かった。 「大丈夫よ。きちんと性知識も備えてるわ」 ガーネットの渋々の承諾のもと、ボールに戻されて預けられる。店の奥に去る店主を見送るトレーナーは、ほっと胸をなでおろしていた。 3 預かり屋は2種類に分けられる。1つは、完全に子作りに特化した場所。施設や自然も最低限で、敷地も目を疑うほど狭い。人目にはつくが、ポケモンの排卵と孵化効率の高い預かり屋。 そしてもう1つは今回の預かり屋。広大な敷地と多種多様な環境に配慮し、ポケモンの自然な交流や繁殖を目的とした場所。膨大な土地と資金が発生するものの、効率重視でなければ選ばれやすいため、非常に人気である。 そんな、環境に特化した預かり屋において、ガーネットが出されたのは荒れ地のような場所。空は晴れ渡っていて空気は乾燥しており、踏みしめる固い地面は明らかにアパートより安定感がある。当然だが、周囲にも他のポケモン達がいて、朗らかに談話していたり、交尾にいそしんでいたりした。 目の前には大きな岩。小山ほどありそうな大きさの岩に、明らかに入り口であろう穴が空いていた。 この中にいる、と店主から言われ、ガーネットは歩く。しきりに手持無沙汰そうに指を開閉しつつ、薄暗い洞窟の中に入っていった。 「君がガーネットか?」 そこまで奥に行かずして住処にたどり着いたようだった。ガーネットより少し背丈のある、眼光鋭めのバンギラス。彼自身表情は堅くなく物腰も柔らかそうではあったが、体からあふれ出る緊張感にガーネットは目をしかめた。 「初めまして。ガーネットよ」 ガーネットが礼儀正しく頭を下げた、虚を突かれたのかバンギラスの目はまんまるいしのようだった。 「まさかとは思ったが、店主の言ってたことは本当だったのか。君みたいな話し方をするサイドンなんて、初めてだ」 そこまでいうと、バンギラスは思い出したように言葉を切った。 「すまない、名前がまだだったな。俺はメシス。今日は君の相手をさせてもらう。よろしく頼むよ」 メシスと名乗ったバンギラスは手を差し出し、ガーネットはそれに応じる。握手しつつ、メシスはまじまじとガーネットを見ていたのだった。 「いや、本当に初めてだ。サイホーン系統とは何体も出会ってきたけれど、君みたいなサイドンにはあったことがない。まるで、エスパータイプを相手にしてるみたいだ」 「あ、ありがとう」 突然の言葉。バカであることを極度に気にするガーネットにとって、エスパータイプのようという言葉は至高のものだった。しかも、学校に行ってる時を含めて1度として言われたことがない。あまりに急で、嬉しい言葉だった。 「今日はタマゴ作りじゃないって聞いてる。って、そんなことは初めてなんだが……。君と他愛もない話をしてほしいってことだったかな。だが……」 言いながらメシスは横腹を掻く。その顔は決して面倒そうではなかったが、考え込むように目をしかめていた。 「たとえばじゃあ、君の好きなものはなんだ?」 「私が好きなのは……やっぱり勉強かしら」 言うなり、ガーネットは大いに語りだしてしまう。現代社会や高次関数、物理や哲学、古代アンノーン文字や第2外国語など。同期のポケモンはおろか、ヒトですらよほど秀才でなければついていけない話をしているのであった。それを聞くメシスはと言えば。 「そうか。なるほど。へえ。そうなのか!すごいな。それで?うんうん」 無論勉強などしていないメシスは、話の内容はバチュルの体毛ほど程も理解できていない。それでも聞き上手であったため、棒読みになることもないような相槌を打っていた。 本来勉強の話など、バンギラスに限らず大概において興味などないものである。しかし、ガーネットの楽しそうで嬉しそうな熱弁を聞くうち、勉強のこと、何よりガーネット自身のことに興味を持ち始めていた。サイドンであるがゆえの苦悩エピソードなどもあったが、このサイドンの生活は充実していると感じたのだった。 「あ、ごめんなさい長々と」 気が付けば両者は地べたに腰を下ろして話していた。緊張感はどこへやら、話の最中に差し出された木の実もいくつか齧られていた。 「いいんだ。俺は君の話し相手になるってことだし、それを抜きにしても君の話は面白い。こんなにぎゅっとつまった勉強の話、初めてだ」 「そ、そんなに密度が濃かったかしら……」 大きな身体が小さく見えるほど縮こまるガーネット。メシスは小さく笑みを浮かべ、ガーネトの肩に手を置いた。 「さっきも言ったけど、君は今まで出会ったサイドンとは違うように見える。目の前にあることをきちんと考え、それを頭の中で整理してる。サイホーンの系統は前に突進するしかできないって思ってたけど、大きくイメージが変わったよ。ガーネットはバカなんかじゃない。君みたいに勉強をするようなサイドンも、すごく魅力的だと思う」 「あ、ありがとう……」 ガーネットはメシスと目を合わせられず俯いていた。サイドンの自分にかけられる言葉と言えば、大抵は嘲笑や同情だった。いくら勉強しても周囲の目はそこまで明るくなく、知識が定着しないこともあってくろいきりのなかを進んでいるかのような錯覚さえ覚えていた。トレーナーは当然理解を示してはくれているものの、いつも気苦労ばかりかけ、苦笑しながら協力してくれているようなものだった。ガーネットにとっては、こういった形で正面から褒められるのは初めてだったのだ。 「本当に、ありがとう……え?」 「あっ」 最初、薄暗さもあってよく見えていなかった。メシスが後ずさりする中、目を凝らし、集中する。 「いや、その……」 メシスの歯切れが悪い。それもそのはず、ガーネットの視線の先、つまり股間には、あまりにも大きなモノが立派に反り立っていたのだった。薄暗い中でも分かる鮮やかなピンクは、鼓動のたびに妖しく揺れていたのだった。 「わ、悪い。その、体が、勝手に」 「今日は交尾じゃないって言ってたはずだけど?」 ガーネットは大きく溜息をつく。しかしながら、初めて見るそれはあまりに珍しく、目をそらせずに凝視してしまっているのだった。 「まあ、男性って大抵こんなものってどこかに書いてあったわ。別に意識しなくても、こういう風になることがあるって。分かってるからって、見てて不愉快じゃないわけはないんだけど」 「だ、だよな」 メシスはそそくさと後ろを向く。気まずそうなその背中からは、紫がかった内肌が見えていた。 「あなたも収まりがつかないでしょうし、私これでおいとまするわね」 「ご、ごめんな」 メシスは背中で答えながら、腕の運動と共にうめき声を上げ始める。ガーネットは溜息をつきつつ、背を向けたのだった。 「ありがとう。楽しかったわ」 4 ガーネットの頭は今までになく快々活々かつ鮮々明々だった。 知識の流出を恐れていたがそれも軽微で済み、今進めている勉強もギガドレインのごとく吸収されていく。勉強をし始めて以来の最高効率であり、ガーネット自身も驚くほどにシャーペンが進んでいた。 漏れ出しそうになっていた脳の容量の悩みはどこへやら、散々知識を詰め込むことに苦労していたのが嘘であるかのようだった。 しかし一方で。勉強を進めながらも、どうしても頭から離れないことがあった。進めては記憶の片隅に浮かび、勢いよく首を振っては仕切りなおす。勉強効率は大幅に向上したものの、気になることがあっては集中もままならなかった。そもそも、サイドンである彼女は2つ以上のことを考えることが苦手であり、勉強しつつその正反対のことも同時に考えることというのは、彼女の生きてきた中で初めてのことであった。手を動かしながらも戸惑い、溜息をつく。頭は透き通っているのに、透き通りすぎて余計なことを考えてしまう。昔の彼女からすれば贅沢な悩み。気が付けば、部屋に置いている複数を辞書や図解などを持ち出して内容を書き出しているのだった。 「ガーネット、ただいまー」 仕事から帰宅してトレーナーの声。普段なら軽く返すものの、集中しすぎている彼女は、のろいをかけるように釘付けで勉強を続けていた。 「ガーネット?」 返事がないことを不審に思ったトレーナーは、提げた紙袋を鳴らしながらガーネットの部屋に入る。一心不乱に文字を書き続ける彼女はまだ気づいていない。訝しげに近づいて肩に触れた時、書いてあったものが見えると同時に、ガーネットはようやく気付いた。 「きゃっ!」 思わず横を向き、肩ごしのトレーナーの顔に角が当たりかけてしまう。トレーナーはまじまじとノートに書かれてあるものを見、ガーネットは茫然自失としていた。 「こ、これは……」 男性器。陰茎。ペニス。精子。自慰。勃起。射精。性行為。 そういった言葉と、その説明。多くの時点を参照した故に、説明書きのように事細かに書かれていたのだった。 ガーネットは今にもだいばくはつしてしまいそうに、顔はおろか首元まで赤くなっていた。一心腐乱かつ無意識に書いたものは、後から見返してみればあまりにも恥ずかしかった。 そして。それを見たトレーナーの反応など予想できるはずもない。 「ぷっ、ははは!」 トレーナーは大いに噴き出して笑った。くすぐられてすら出せないような甲高い笑いは、耳まで赤くなったガーネットを包みこむ。シャーペンを落とした指は小刻みに震え、足の指すらばらばらに動いていた。 「いやー、びっくりした。こういうのって男だけだって思ってたけど、ガーネットもそうなんだな」 「え?」 トレーナーは笑いを残しつつ、ガーネットが書いたノートを持ち上げた。 「僕もね、中学か高校時代。思春期の時期にこういうことをしたんだ。さすがに書き留めてはないけどね。こう……その、女性のシモのほうの言葉をね。色んな辞典で調べて、あるいはインターネットで言葉を調べて。可能なら画像まで探して。そういうエロな言葉をかき集めた時期があったんだ。懐かしいなあ……」 首を振りながらしみじみと言うトレーナー。 「別に恥ずかしがることじゃない。僕らヒトだって性に興味あるし、君たちポケモンに性に興味があるのは当然なことさ。それをこういう形で見たのは驚いたけどね」 トレーナーはノートを置く。ガーネットは細かく瞬きしながらトレーナーに目を向けた。 「ええと。その」 トレーナーに理解されたとはいえ、やはり恥ずかしいようだ。 「あ、預かり屋から帰ってからね。すごく勉強が頭に入るようになったの。でも……。そこで話したバンギラスのことが気になってしまって。勉強は頭に入るんだけど、頭のどこかにずっと、バンギラスがいるの」 「うんうん」 トレーナーは耳を傾ける。先日預かり屋からガーネットを引き取ったとき、彼も特に話を聞こうとはしなかった。ガーネットの明るい表情をみて、それでよしとしていたのだった。初めて聞く内容に、トレーナーは興味津々で耳を傾けていた。 「それでね。彼と話してる時に、その。大きいのが見えてしまって。彼っていうか。それがどうしても焼き付いてしまって。気が付けば、調べてしまってたの」 トレーナーが理解を示したとはいえやはり恥ずかしいことには変わりなく。薄橙色の目元を赤くしながら打ち明けていた。トレーナーも真剣に聞いてはいるが、内容が内容だけに多少笑いながら聞いていたのだった。 「このまま勉強を続けたいけど、やっぱりバンギラスとそれのことが気になってしまって。頭には入るけど、やっぱり気になって気になって」 「なるほどな、分かるよ。僕も似たような時期あったからさ」 「それで……その……」 ガーネットは俯き加減に切り出す。 「もう1度、預かり屋にいってみたい」 トレーナーは微笑みながら聞いている。1度預かり屋に行き、性的なことは何もなく帰ってきた。そして帰ってきてそう日が経たずして、男性器のことに興味を示している。次に預かり屋に行ったとき何が起こるか?トレーナーはもちろん、ガーネットでも理解はできていた。 「君からそういうのか。もうそんな年頃なんだな」 トレーナーは小さく言った。 おもむろに、床に置いた紙袋に手を伸ばした。中を漁ると、丸みを帯びた長方形の容器を出す。容器を開けると、中からはいびつな物体が出てきたのだった。 「な、何これ?」 ガーネットの問いには答えず、トレーナーはその物体をガーネットの顔にかけたのだった。 極端にカーブした真ん丸なリム、両目のそれから伸びたブリッジは角の後ろの最短距離をつないでいる。ツル以降は存在せず、ブリッジの中間あたりに存在する1対のパッドが、絶妙な吸着力と安定性でずれ落ちないようにつけられていた。 「よく目を細めてたからな。目が見えにくいんじゃないかと思って、特注した眼鏡だ。どうだ?」 ガーネットは激しく瞬きする。良過ぎる視界に目が引っ張られそうになり、安定せずブレてしまう。なんとか視界を中心に固定しようとするが、少しばかり頭が痛い。慣れてくると、以前とは比べ物にならない視界が広がっていた。 「す、すごい。良く見える」 ガーネットはしきりに顔を動かして辺りを見回した。いつも見ている自身の部屋、字を書いているノート、そしてトレーナーの顔。今までぼやけていたものが、驚くほど鮮明に見える。しかし、少しばかり鮮明過ぎるような気もしていて、多少のめまいを覚えてふらついてしまう。 「あ、見え過ぎたか?やっぱり直接店に行かないと度は会わないか……」 トレーナーは頭を掻く。 「眼鏡はまた度を合わせに行こう。でもまあそれまでの間でもよくは見えるだろうし、勉強もはかどるだろう。何よりまあその、相手のこともよくみえるだろうし」 トレーナーはやや口ごもる。ガーネットの肩に手を置き、若干頬を緩ませ、優しく側頭を撫でた。 「タマゴのこととか、勉強のこととか、他にも考えることはたくさんある。でも、そんなことはガーネットは気にしなくていい。ガーネットが不自由しないために僕が働いてるわけだしな」 ガーネットは目を合わせた。学費はともかく、それ以外の面では金銭的に負担をかけていた。ポケモンとしては当然かもしれないが、気にしつつガーネットは生活を送っていた。その上での、自身の少し無茶な要望。それでもトレーナーは優しく承諾してくれた。ガーネットは、トレーナーの深い優しさに感謝するしかなかった。 「ありがとう、トレーナーさん」 トレーナーは小さく頷いた。 5 以前よりはるかに鮮明に見えた。荒れ地は地味な色合いだが、輪郭まではっきり見えると茶色すら鮮やかに見える。この間見たばかりの岩が目の前にあるものの、一歩が踏み出せないでいた。 「ガーネット?」 岩の洞穴から聞き覚えのある声が聞こえた。暗がりからでてきたのは、目をぱちくりと開いたバンギラス。紫の濃い腹と濃いめの緑の体のその姿は、ガーネットの目を大きく開かせた。 「い、色違い?」 「それはこっちの台詞だ。薄暗くてよく見えなかったけど、ガーネットも色違いだったんだな。薄橙色のサイドンなんて、初めて見たよ。それと」 メシスはもの珍しそうにガーネットの体を見ていた。体もそうだが、何よりガーネットの顔を一層まじまじと見ていたのだった。あまりに視線が突き刺さり、ガーネットは俯いてしまう。 「それは……なんだ?いや、聞いたことはあるが……なんだったかな」 「眼鏡よ」 答えながら赤らんでしまう。ずれているわけでもないのにフレームに触れ、心を落ち着かせようとする。 「ああなるほど、眼鏡か。こだわりじゃない、物をよく見るやつだな。それだったら、色々とよく見えるわけだ」 メシスは頭の上からつま先まで見ながらガーネットに近づく。その右手がゆっくり肩に置かれ、思わずガーネットは息が詰まってしまう。 「一応確認するんだが……。今日はその、いつもの事と聞いてる。前みたいに話をするんじゃなくてってことだ。君もそのつもりでいいんだな?」 詰まった息を吐きながらガーネットは見上げた。至近距離にいるメシスの顔は、前よりはよく見えるものの若干目がブレてしまう。 「あなたのあれを見てから、私の頭からあれが離れないのよ。勉強は捗るけど、気が付けばあれのことばっかり。気になって、気になってしょうがないのよ。だから……」 ガーネットは言葉を続けられない。やはりまっすぐ見られず、目をそらしてしまう。メシスは薄く笑いながら頷き、肩から手を降ろした。 「入ろうか」 メシスは多くを聞かず、背を向けて洞穴に戻る。 ついていくガーネットの足取りは重かった。自分で決めたことであり、トレーナーにお願いしてまで連れてきてもらった場所。決して嫌ではない。だが、これから始まることは、世間的にはいかがわしさが強調されがちな行為。知識的にはそういったことは一部の事とは知りつつ、そしてそれをこれから自分が経験するであろうと考えると、メシスから放たれるものとは関係なく緊張せざるを得なかった。 「難しそうな顔をしてるな」 ガーネットは我に返った。真昼間ではあるがやはり洞穴の中は薄暗い。しかし薄暗さの中でも、メシスが柔らかく笑っているのが分かった。 「がっちがちに緊張してるな。体の表面と違って心だけでもリラックスしないと、本番の時痛くなる。でも、今の君には愛撫みたいのは逆効果だな。さて……」 メシスは考えるが、ガーネットは生唾を飲まざるを得なかった。この薄暗さにも関わらず、既に自分の視界に入り、存在を主張しているそれ。体格に見合った径の桃色のそれは、外の薄明かりにすら煌めく艶めかしい先走りが滾々と竿を伝っていた。指先までが伸びきり、呼吸のたびに緊張を飲み下していた。 「おっと、気が付かないうちにもう……。ほんとに楽しみみたいだな。本当なら今からでも襲いかかりたいところだが、今日の交尾は君のためでもある。きちんと順序だてていくよ」 平静をよそおうメシスだが、言葉と共に紡がれる息は明らかに荒かった。 「後ろを向いて、四つん這いになってくれるか?」 メシスが頼む。痙攣寸前まで筋肉が伸び切ったガーネットだったが、引きつった口をわずかにあけて頷く。メタグロスのようにカクカクと脚を動かし、メシスに背を向けた 久しく四つ足にならなかったためか、バランスを取りづらい。両腕を伸ばし、体重をかけ過ぎない程度に重心を移動し、手を付けた。その結果、当然股間などの後姿をメシスに見せつける形となる。 「うーん、いい。安心してくれ。すぐに入れたりはしない」 ガーネットの後姿を堪能しつつ、うんうんと頷く。 すぐに入れない。緊張しながらも、ガーネットは安堵した。否、彼女は安堵したと思った。最初から順序だててやってくれると言われ、安心していると思い込んでいた。しかし、心の奥底にかかっていたわずかな靄がきりばらいされ、気づく。自分自身が、思っていた以上に交尾を待ち望んでいることに。順序などどうでもいいと、交尾そのものへの興味に後ろ足が震えあがっていた。 「さて」 四つん這いになったにもかかわらず、ぴっしりと上に伸びきった尻尾。スマートホーンもびっくりのその切っ先は、一切のたわみもない。メシスは両手で尻尾を鷲掴みし、自身の性器をガーネットの股間へと押し込んだ。 「ひっ!」 入ってはいない。自身の性器に密着する形でメシスのそれが被さり、あからさまに体に押し付けられていた。 「気分を高めようか」 メシスの手は柔らかく、優しく尻尾を包み込む。両手で揉んだかと思えば、互い違いに行き来させ、ほぐす。一方の手は尻尾の根元に、他方の手は尻尾の先端に、猛々しい剛腕からは想像しづらい繊細な指の動き。指を小刻みに動かし、くすぐるように撫でては、また大胆に尻尾に沿って大きく撫ぜる。 同時に、彼は腰も動かす。ガーネットの腹に露骨に当てられたそれは熱く脈打ち滾り、上下する。とろめく先走りはガーネットの腹と性器をあますところなく濡らし、その欲情を痛く刺激した。 「はぁっ、はぁっ」 思わずガーネットの呼吸も荒くなる。あでやかに弄られる尻尾からは、決して経験するはずのない電撃が発生している。それはメシスの指をもってして尻尾の根元に伝わり、その刺激は素股を通して全身に拡散した。 「うそ……まだ……」 本番ではない。しかし後ろ足の震えが止まらない。尻尾と素股から発せられる逃れようのない快感が、ガーネットの頭を支配していた。 「なかなかいいな……」 粘りたゆれる先走りの他に、明らかに滑りをよくする液体の存在。擦れば擦るほど密着部のひくつきは小刻みになり、求める液体を惜しまない。 気が付けばスマートホーンはどこへやら、尻尾はすっかりしぼりとられ、情けなくメシスの指に預けられていた。だらしない尻尾を両手でしっかり持ち、おもむろに舐めた。 「ひゃっ!」 突然の刺激に声を上げてしまう。先ほどまでの電撃が一気に放電され、四肢の先まで余すところなく伝わった。 メシスは続けて舐めた。いやらしい舌音こそださないものの、静かに、大胆に、大ぶりに。屈みにくくはあるが、尻尾の根元から先端まで、明らかに唾液をのさばりつけながら舐める。 腰の動きも止めはしない。こちらは意識しなくとも、既に両者の潤滑液が混ざりあい、弾ける。もはや熱くみなぎる2体を止めることは、誰にもできない。 「ふわあっ、ああっ」 ガーネットは声が止められない。経験したかどうかなど最早関係がない。尻尾と股間から連続的に攻められ、吐く息すらも快感の虜だった。 不意に、全ての動きが止まった。 「もう、限界だ。挿れるぞ」 一瞬、何を言われたのかを理解できなかった。しかし言葉を飲み込む。 思えば、彼に会い、勉強していた時からそうだった。気が付けば彼の性器の事ばかりを考え、発情さながらにがむしゃらに調べた。自分が理解できない異性の体を知ろうとした。そして今、自分が言葉から追い求めたそれが、交尾という行為をもって入り込もうとしている。緊張しざるを得ないが、メシスの愛撫のおかげで筋肉の引きつりは直っていた。 既に地面は液体の溜まりができていた。そこに落ちる愛液は、メシスの愛撫によって濡らされたガーネットによるもの。その純真に、濡れそぼりいきりたった男性器があてがわれる。 「うっ」 絞り垂れるほど濡れたとはいえ、純潔は頑なだった。先端をくわえこみつつ、何者をも通したことがないその道は、メシスの細やかな腰の動きで徐々にほぐされ、開通していく。 「ふうっ」 「大丈夫か?もう少し、もう少しだ」 入るにつれ明らかに太くなっていく根元。バンギラスの体格がサイドンと同程度とはいえ、メシス自身のそれは明らかに大きかった。しかしながら大きくサイズ差があるということもなく、ついにその全体を包み込んだ。 「くうっ。やっぱり初めての子はきついな……。理性を抑えるのが大変だ」 メシスは動かさない。中で脈動するそれは今か今かと快感を待ち、ひとりでに動き出しそうだった。股間に大きな異物感を感じつつ、ガーネットは大きく呼吸した。 「動かすぞ?」 「……ええ」 ガーネットの承諾と共にメシスのそれは徐々に入り口に戻った。そして、またもや尻尾を両手で掴む。 「え?」 ガーネットの理解が追い付く前に、メシスの腰が勢いよく打ち付けられた。 「んっ!」 同時に、先ほどと同じように尻尾が揉まれていた。 いたわられながらも、快感を求めて打ち付けられる。既に溜まっていた液体の溜まりは水音と共に容量を増やし、しかしそれは絶えず増え続けていた。 「ひゃん!」 明らかに尻尾のせいだった。今再び尻尾から来る刺激が体を伝い、意識を集中せざるを得ない股間周辺に集まってしまう。その痺れは膣を、子宮を、それを通してメシスの性器をも刺激し、敏感かつ鋭敏にしていた。メシスの性器が膣を擦るたびに周辺の筋肉が弛緩し、子宮を突くたびに頭ごと内臓が跳ね上がっていた。 「へえあっ、ふぁああ!!」 理性を抑えることができず、口からはとめどなく涎がたれ、ずれ落ちることのない眼鏡には揮発した汗が付きまとっていた。 「これが……交尾さ……! 腰を振り続けるメシスには余裕がない。尻尾を揉んでいた手は最早持つだけになり、体を支えている。膣をぶちまわす肉棒の快感に腰が砕けそうになるが、かろうじて体を支えていた。 「ぐうっ!」 限界が近かった。 「ああ、あはあっ!はあはあ」 ガーネットが喘ぐたびに強く締め付けられ、外へでることを拒む。愛液との潤滑で膣を押し通り、流れ落ちた。 腰を打ち付け、膣に押し付け、腕の握力と共に締まるや、ひと思いに奥に突き立てた。 「くっ!」 精を放ち、体中の力が抜けた。未だに体を震わせるガーネットは、荒く短く呼吸していた。 「ふうう……」 深く長い呼吸と共に、メシスは雄を引き抜いた。それと共にあふれ出る明らかな白濁は、粘着的に地面を汚した。 「はあっ……はあっ……」 去っていった刺激と共に、小さく呼吸する。震えのあまり後ろ足で立つことができず、這ったままメシスのほうを向いた。 曇った眼鏡と靄で見えにくくはなっているが、少し離れたところでメシスは立ったまま肩で息をしていた。しかし、ガーネットの視線は真っ先に股間にくぎ付けになった。明らかに萎れ、力なく垂れさがっているものの、白濁を垂らしひくつくそれは、今となっては魅力的にしか見えなかった。 「ねえ、メシス」 ガーネットは荒い息のまま呼びかけた。メシスは答えず、目だけを向けた。 「物足りないの。まだ……まだ、できない?」 頼みというよりはむしろ懇願だった。まだ快感が足りない、刺激が足りない。まだ交尾をしたい。それは理性などではない、純然たる本能からなるものだった。 メシスは見下ろした。まともに眼鏡越しに見れず、フレームから少しずれた目が上目遣いにメシスを見ている。経験豊富なメシスであってさえ経験したことのないときめきは、精を放ったばかりのメシスの性欲を再び燃やすのには充分すぎた。 「全く、なんて可愛いんだよ。いいさ、もう1回やろう」 メシスの答えに、ガーネットは嬉しそうに頷いた。 6 本能の赴くままに頼んだものの、若干の羞恥心が出てくる。気が付けば洞穴はいかがわしい香りが充満し、精を放たれたばかりの股間はうずき続けていた。 「だが……男っていうのは1回出すとすごくきつくてな。勃たせるのには時間がかかる……」 メシスは言うと、ガーネットに近づく。四つん這いのままの彼女の眼前に、むせかえるような臭気を放つ肉棒をちらつかせた。 「うわあ……」 至近距離で見るそれは、ガーネットには刺激が強すぎた。サイホーンだった頃にトレーナーのものを見たことがある気がするが、それもあまりに遠い昔の記憶。消えかけた記憶と目の前の実物は、比べるのもばかばかしい。 「ヒトの間で、これを舐めるっていうことをやってるんだ。俺もたまにやってもらっててさ。舐めてもらえないか?」 「え?」 突拍子もなかった。ガーネットは生物が行う交尾行為としての知識はきちんと持っていたが、いわゆるエロ方面の知識は一切なかった。故に、目の前のこれを舐めるように言われ、驚くしかなかったのだ。 「こ、これを……?」 息も荒く唾がのどを通る。温かい吐息をかけてみれば、男性器はそよぐように一瞬反る。初めて見た時とは違って魅力的なそれは、ガーネットを誘うようにピンクになびいていた。 これが、先ほどまで自分の中に入っていた。そう思うと、途端に愛おしくさえ思えた。自身の中を擦りまわっていたそれは未だに快感を求めるかのように、妖しく垂れさがっている。 大きく呼吸しながら口を開けた。顔を近づけ、左手で肉棒を掴む。 「口に入れなくていいからな。優しく舐めてほしい」 メシスの要求のまま、舌を出した。本来後ろ足と前足1本で体を支えるのはつらいのだが、性に支配されたガーネットにはそんな疲労は感じなかった。 舌を伸ばし、密着寸前。恐れ半分いや、恐れ1割性欲9割の面持ちで、舌先が触れた。 「うっ」 いかんせん舐めたことがないのでどうすればいいのか分からない。言われたことをそのまま解釈するならば優しくだが、優しくといわれてもいまいちよくわからない。だが、舐めてくれと言っているメシスの手前、もう1度交尾を始めるにはどうにかするしかない。 角が当たらないよう、肉棒を少し斜めへ向ける。舌先を中腹から根元へ滑らせ、次に先端へ。 「おおおぅ……」 腰と共に声をも震わせるメシス。よがる彼を眼鏡越しに確認しながら、これでいいと解釈し、続ける。 「ふう、初々しいな……。でもそれがいい……」 舌から伝わる刺激を、メシスは息を荒げながら受け取っている。エロ方面の知識などないガーネットは緩急をつけることこそなかったものの、同じ力具合、同じ速度と時々かかる吐息で、肉棒に堅実に刺激を与えていた。 「はあ……はあ……」 メシスの吐息が荒くなるにつれ、肉棒を持っている左手に少し抵抗が発生した。垂れ下がっていたそれは、徐々にではあるが反りあがり、鼓動のたびに天に向かって伸びていた。舌先で明らかに容積を増していく肉感を逃がすまいと、ガーネットはなおも舐め続けた。 「ふう……ふう……」 ガーネットも息が荒くなる。キョダイマックスジュラルドンのごとく天を貫く性器を、明らかに自身の股間が欲している。膣口は切なくしまり、腹の奥の子宮は待ち遠しく跳ねた。 「ガーネット……待ってくれそろそろ」 メシスが呼びかけるが、興奮のあまりガーネットは歯止めがきかない。ただ一心不乱に、同じリズムでひたすら舐め続ける。持ち続ける左手にも心無しか力が入り、それすらも刺激として伝えていた。 「あ、出る、本当にもう……」 ガーネットの耳に声は届かない。ただこの肉棒が愛おしい、恋しい、欲しい、それだけの本能で舐め続ける。目の前にあるそれから目をそらすことは、もはや不可能だった。 「ああっ!」 メシスの声と共に肉棒が大きく痙攣し、欲求のままに吐精した。 「きゃっ!」 思わず左手を放してしまう。生臭い液体が先端から大量に放たれ、ところかまわずぶちまけられた。 思わず閉じた目を開いてみれば、左手はべとべと。顔もにも大量にかかり、眼鏡などは白い飛沫がべっとりついて前がよく見えなかった。 「す、すごい臭いね……」 言いながらもガーネットは左手についた白濁を観察する。液体のような、それでいて寒天のような、どちらともいえない中間の物質。鼻腔にただよう生臭い香りは、ガーネットの脳をいたく刺激する。 「ガーネット……」 メシスが息も絶え絶えに呼びかける。メシスのほうを見てみれば、肩で息をしながらも、その目は明らかに性に支配され、獣に近い目でガーネットを見ていた。吐精したばかりだというのに肉棒は再びいきりたち、痛々しく鼓動していた。 「なんだそれ……。今までたくさんの女の子が同じように顔にかかってたが……眼鏡って、すごいな」 目にも止まらぬ速さでガーネットの両腕を掴み、無理くり立たせたかと思うと、一気に押し倒した。 「きゃあ!」 突然の体勢の変化に理解が追い付かず、悲鳴をあげてしまう。視界が安定して見てみれば、荒息の留まるところを知らないメシスがガーネットに覆いかぶさっていた。轟き狂う肉棒はガーネットの股間に押し当てられ、今にも挿入されそうだった。 「正直きつい……痛くてたまらない。でもな。いくらなんでも、可愛すぎるだろ」 息絶え絶えになりつつ、メシスは右手を伸ばす。白濁まみれの眼鏡をつまみ、離れた地面へ置く。レンズで小さく見えていたその大きな目は、まっすぐメシスを見据えていた。 ガーネットとしては、白濁が視界から消えたものの、やはり視界がぼやけてしまう。だが、それすら気にならないほどに、股間に気を集中していた。待ち望んでいたものが、今―― 「お願いメシス。挿れて」 ガーネットは懇願した。 メシスの忍耐は限界を超えていた。腰を引くや、なんの雰囲気もなく一思いに突き刺したのだった。 「ひゃあああ!!」 「ぐあぁつ!」 1度挿入されたこともあり、抵抗も少なくすんなり奥まで入った。しかし2回射精した肉棒は痛覚が大きく、精神的にもけだるさがあった。しかし、目の前のガーネット、そして先ほどまでに白濁がかかった眼鏡のガーネット、それだけで痛みなどどうでもよく、痛みすらをも超えて達したいとすら思っていた。 「いくぞ!」 理性など存在しなかった。求めるがままに腰を打ち付け、快感の代わりに痛みが走る。それでも射精を求め、ひたすらに動き続ける。 「ふわあぁ!あ、やああ!」 激しい攻めにガーネットも喘がずにはいられない。ほぐされた膣は肉棒をぴったり締めつけ、その大いなるタネを欲していた。 激しくも響く水音は洞穴内に反響し、聴覚を通してさらなる興奮を促した。 腰を動かしながらも、メシスは痛覚の向こうから徐々に射精感が湧き上がってくることを自覚する。ひたすらに射精を求め、、目の前のサイドンを心行くまで懐柔したかった。 快感にあえぎ、白目がちになるガーネットの顔。ヒトがやるような口づけでもしようかと脳裏をよぎったが、その過程で角が目についた。 腰を振り続ける中、メシスは口を角に近づけ、じっとりと舐めた。 「ひいい!?」 声を上げるや、腰も顔も大いに跳ねるガーネット。股間の快感だけで精一杯なのに、角に舌が触れたことで、頭が追い付かなくなっていた。 メシスは軽く笑い、長ったらしく、唾液多めに角を舐め上げた。腰を打ち付け、跳ね上がるたびに、角までをも舐め続けた。 「ひいっ、やめて、ひゃ、きゃああああ!!!」 ひらいしんであってすら角から伝わらないであろう電流が脳天に落ち、意識すら快感に追い付かない。未だに振られる腰も快感を発生させ、尻尾とは違う大きすぎる刺激に、だらしなく口を開けているしかなかった。 「は、はうわぁ!ふわ!あああ!」 喘ぐことに必死で舌がうまく動かないようだった。 いくらガーネットが喘いでもメシスの腰と舌は止まらない。 大きくつく息と共に角を舐める舌は、先端を、角のすじを、根元を、唾液交じりに大ぶりに舐め続ける。 大きく打ち付ける腰は、射精だけを目的に今や痛覚が徐々に消えゆき、肉棒の根元から快感を無理やり引っ張り出していた。もはやどちらのとも言えない液体は存分に分泌され、交尾と共に散っていた。 「がはぁっ、ねっと!」 舐めながら呼びかける。全身を震えさせて快感に浸るガーネットは、朦朧とする意識の中でかろうじてメシスに目を向けた。 メシスの表情は鬼気迫っていた。痛さしかない肉棒から快感を生み出すほどに腰を打ち付け、行為しているのだから当然だった。性に支配された2体の頭には今や交尾しかなく、絶頂を求めあっていた。 「ひいいいあ!あっあっ」 角と膣から脳に蓄積した快感は、蓄えた知識を押しつぶさんとする勢いで溢れそうになっていた。溢れたものの行き先などない。頭が、腕が、足が、体が、股間が痺れ、行きつく先は発散しかない。 「もう、すぐ……!」 激しさがさらに増し、秒をも数えない瞬きに腰を打ち付けた。角もひたすら舐め続け、重なり合った2体は激しく揺れる。 「あうっ!」 度を越えた容量など保持できず、首が大きく跳ねあがった。後ろ足は激しく弛緩し、快感と共に肉棒を締め付けた。 「うぅっ!」 痛みをはねのけて快感が襲い、奥に入れるとともに3度目とは思えない量の白濁を放った。 「あぁっ」 絞り出すような声と共に、ガーネットは放心する。浅く速い息つぎは、水音の代わりに洞穴にこだまする。 「ふう……」 快感の後にくるのは当然、肉棒の猛烈な痛み。躍動を続ける膣に触れるたび、体中に鈍痛が走った。しかし、足腰もろくに立たず、疲労のあまりガーネットに体を預けてしまう。 「はあ、はあ」 「はあ、はあ」 互いの吐息が至近距離で聞こえる。行為の後の疲労は体を重くしてしまうものの、心地よさもあった。 「ガーネット……」 メシスが静かに呼びかける。ガーネットは目だけを向け、息を吐きながらも小さく笑いかけた。 メシスも同じく笑いかけた。小さく舌を出し、軽く角を舐める。 「ひゃっ!」 小さな喘ぎが洞穴にこだました。 ◇ 「ガーネット……?」 トレーナーは目を丸くせざるを得ない。 預かり屋から帰ってきてからというもの、ガーネットの勉強速度は端から見ても明らかに上がっていた。以前まで使いこなせなかったノートPCをブラインドタッチし、アーボが這ったようにいびつだった文字は整然とノートに書かれていた。 ガーネットの目の輝きは以前の比ではない。勉強が楽しくて仕方ないようで、以前までいっぱいいっぱいだった表情は柔和かつ嬉々としていた。 預かり屋でのこおてゃトレーナーはあえて聞かなかった。帰ってきたばかりのガーネットは、トレーナーと目を合わせるのもままならず恥ずかしそうにしており、何が行われたかは大方想像ができた。その行為のことを聞くのは野暮であり、トレーナーもあえて黙っていた。幸いというかタマゴは生まれてくることはなく、トレーナーとガーネットは平穏に生活していた。 「あ、トレーナーさん」 PCから目を放し、笑顔で対応するガーネット。あまりに余裕がありすぎて、トレーナーのほうが委縮してしまう。 「勉強がはかどるようになってよかったよ。ちょっと心配はあったけど、預かり屋にいかせて正解だった」 「本当にありがとう。おかげで余計なことは考えずに済むし、勉強もどんどん理解できるの。すごく嬉しいの」 ガーネットの満面の笑み。眼鏡越しに薄橙色の目尻を上げて喜ぶその様子に、トレーナーも大いに安堵した。 「でもね」 ガーネットはブラインドタッチしていた指を止めた。 「正直、交尾のことがまだ記憶に残ってて……あっ、変な意味じゃなくて」 ガーネットは顔を赤らめる。 「彼がその、勢いもあったけど私のためにきちんと付き合ってくれて。初めてだったし、すごくいい経験になったの。できれば彼ともう1度会いたいけど……。だから私、決めたの」 ガーネットは手招きした。呼ばれるままにトレーナーは近づき、PCの画面を見た。映っていたのは『IPPO付属研究室』の文字。 「国際超能力警察機構!?」 さすがにトレーナーも叫ばずにはいられない。 「そう。エスパータイプの中でも特にエリートしか入れない機構をサポートするための研究室。大学を出たら、ここの試験を受けてみようと思うの」 得意げなガーネットに対し、トレーナーもさすがに物怖じしてしまう。エリートなどというレベルではない、真の天性の天才が集まるといわれる、超がいくらついてもたりない頭脳はの職場である。 「ほ、本当にここに……?」 トレーナーはおずおずと聞く。 「ええ、もちろん。もっと頭よくなって、いっぱい稼いで、彼に会いに行くの。彼と本当に番いになれないのは残念だけど、それでもいいって思ってるわ。私は優しい彼が好き。そしてもちろんトレーナーさんも好き。だから、私が楽にしてあげるの」 ガーネットの決意は固いようで、その赤い目の奥には闘志が燃えていた。交尾のために稼ぐとはまた極端な動機だが、ガーネットの決めたこと。難しいという言葉すら簡単にしてしまう超々難関に挑もうという気概に、トレーナーは優しく息をつくしかなかった。 「分かった。そこまで言うんだったら、僕も何も言わない。もっとばりばり働いて、応援させてもらうよ」 「ありがとう、トレーナーさん」 トレーナーは笑顔で頷き、キッチンへ向かう。今日の食事は何にしようと、隷属子を覗く。ガーネットはまた指を動かし、勉強を続けるのだった。 トレーナーは笑顔で頷き、キッチンへ向かう。今日の食事は何にしようと、冷蔵庫を覗く。ガーネットはまた指を動かし、勉強を続けるのだった。 「それにしても気持ちよかったなあ……はっ、いけないいけない」 END ---- あとがき いやー、大会以外で投稿なんて本当に久しぶりです。相も変わらず短い駄文ですが、書いてよかったって思ってます きっかけはもちろん、色違いサイホーンの孵化。輝石型で育成したのですが、まあ可愛かったので書きたくなったのです。 そうして設定していくうちに、なぜか勉強大好きっ娘になっちゃいました。そこから発想を派生させていくうちに、どんどんすごいことに…… 尻尾や角を舐めたいっていうのはもちろん僕自身の願望です。 あと眼鏡女子にぶっかけるのはマナーですよね(? ちょこっと性癖が入った作品になりましたが、楽しんで読んでいただけたなら幸いです。 みなさんからの感想、指摘、評価、重箱の隅つつきなど、何かあればなんでもお寄せください。 カナヘビはみなさんの言葉を真摯に受け止め、より良い作品作りにむけて精進していきます。 #pcomment(薄橙色のコメログ,10)