魅惑の手紙 私の名はルイス。ルカリオである。この小説を書くにあたって、私が助手を務める名探偵である、IQ5000のデイトとともに解決した事件の数々をここに書いていきたいと思う。また、本作品は殺人や強盗と言った凶悪犯罪を扱ったものが多い。嫌な人には読まないでいただきたい。 1.「デイトさん。昨日から妻が行方不明に…」 私はこの西洋風の屋敷に住むデイトとティーブレイクを楽しんでいた。もっとも、デイトは偉そうに髭を生やすフーディンであるが、無口なほうである。彼はテレビを嫌う。従って、デイトの持つ推理小説を読むことしかすることがない。 私が用を足しにトイレへ入り―トイレは玄関の前である―出てきた直後であった。玄関に一人のお客…マニューラがぼんやりと立っていた。 「どうしました?」私が訊く。マニューラはしばらくぼんやりしていたが、私の言葉で意を決したように、 「デイトさんは―デイトさんはいらっしゃいますか?」 と丁寧な物腰で言った。 私は、さっきの応接間にマニューラ氏を案内した。デイトは私に紅茶を淹れるように頼んだ。全く、使用人が居ないからこうなのだ。―愚痴はともかく、私が椅子に座るとあの冒頭になる。 「昨日から妻が、行方不明に…」 2.マニューラ氏は名をニュール・クレバスと名乗った。しかし、氏の話は支離滅裂だったので、私は完全には覚えちゃいない。そのため、氏の家へ行く合間に、要約した話をしよう。 彼はいつもと同じ朝食を妻と採っていた。食べていたのはバタートースト2枚とクレバス夫人お手製マトマのホットスープであった。 この辺の郵便局は新聞配達を兼ねて手紙を届ける。従って昨日の手紙が届くのは翌朝となっている。局長の無精癖のおかげだ。郵便が来たことに気付いたクレバス夫人が手紙をとってくる。ニュール氏は食後に新聞を読む習慣があるので、今朝も同じことをしていた。 夫人は戻ってくると同時にまだ飲みかけだったホットスープを飲んだ。その時は何でもなかったのである。 食後、テーブルの上の食器を片づける間もなく夫人は自分宛の手紙を読んでいたらしい。しかしその後、夫人はニュール氏に 「ちょっと出かけてくるわ。」 と言って出て行ったのだという。そして夫人が戻ってくることはなかった……。 氏の家は立派な洋風の邸宅であった。デイトの家もなかなかのものであるが、この家には敵わない。 「クレバスさん。奥様宛の手紙を見せていただけませんか?」 デイトが言う。そんなもの夫人が持って行ったに違いない、と私は思っていた。しかし、 「これですよ」 「ふむう……」 デイトはなぜかあった手紙を裏返したり、匂いを嗅いだりしながら眺めていたが……。 「この手紙、消印がないですな」 3.デイトと私は郵便局へやってきていた。一応デイトは名の売れた探偵だから身分を明かせば無精なここの局長も応じてくれた。デイトの悪い癖は自分の考えを言わず、私を連れて歩くことだ。これだから天才は……。 局長のデリバード、デリフス氏は眠そうであった。だが、デイトが何か耳打ちすると奥の金庫へ行って1枚の書類を持ってきた。 「これが新聞配達員の名簿ですが……」 「私たちのD-8地区は……ふむふむ」 手帳に書き込んだデイトはすぐ私に 「D-8地区3丁目通りにあるアパートの103号室のカルザさんの家へ行ってくれ」 そして私にメモを渡し、テレポートをかけたのである。 D-8地区は、デイトやクレバス氏のような金持ちだけでなく、この3丁目の貧民街のようなところもある。 私はアパート「シリウス」にいた。メモを見る。その途端私は愕然とした。メモは「せいぜい倒されないように」としかなかったのだ。自分が戦い向きじゃないといったってなにも私だけが肉体労働させられるいわれはない! ……そんなこと言ったらきあいだまで吹っ飛ばされるから言わないだけだが。(ここで書いたのはどうなのかって?言ってないしいいでしょ) それはともかく103号室のドアをノックした。出てきたのはゴウカザルだった。 「何だ、てめえは?」 配達人にあるまじき発言である。遺書を書きたかったが、ペンがないのである。 「あ…あのですね」 「はっきりせんか!」 「あの…」 「カルザ・フラスコさんですな」 いつの間にか、デイトが立っていたのである! 「ああ」 「クレバス夫人のことで参ったのだが……」 カルザは目に見えてあわてていた。だが、今回は事なきを得たのである。よかった! 4.「カルザさん、なぜさっき慌てたのですか?」 デイトが訊く。 「あ、ありゃびっくりしたんだ。それだけだ。」 ウソをつくのが苦手らしい。 「そうですか?私には違うように見えたが?」 「……分かった。」 カルザはさっきとは打って変わって、落ち着いて話し始めた。 「あいつは―あの人は……俺が付き合っていた相手だったんだ。」 デイトは表情一つ変えない。大方、予期していたのだろう。 「しかし、あの守銭奴に―クレバスの野郎にレイプされてから、俺に申し訳ないからわかれたんだ。そしてあいつと……結婚した。だが、俺はあいつを愛している。あんた、何でここへ?」 「その守銭奴が私に言ってきたのだ。妻が行方不明になったとな」 「ウソだろ?」 「本題はそれではない。夫人はあんたの持ってきた手紙で行方不明になったのだ。しかもその手紙には消印がなかったのだよ」 「そんなことが……。でも俺は何も知らんよ」 「やはりな」 デイトは溜息と共に立ち上がり、 「失礼した」 「ルイス、あの依頼主がただの夫じゃないとわかったかい?」 「ああ」 何ということだ。この時点でお見通しだったわけである。IQ5000はタダものでない!このとき、夜の惨劇を予測していた者はいなかったはずである。 朝、デイト邸で新聞を見て驚いた。中央大河の河川敷でカルザ・フラスコが刺し殺されていたというのだ。しかも爪のようなもので。私は犯人が分かったような気がした。 「ルイス、犯人がわかったかな?」 「ああ」 「じゃあ、クレバス氏を連れて郵便局へ行こう」 なぜ郵便局なのか分からなかったが、私はデイトに付いていくことにした。 5.私たちは郵便局の金庫前の応接間にいた。デイトと私、クレバス氏と何故か局長。 「なんで私が……」 当然の権利として局長はブツブツつぶやいていた。そんな中デイトはゆっくりと喋りだした。 「この事件に関係した人たちはみんな役者なのです。」 私は訳が分からなかったが、デイトはお構いなしに続ける。 「カルザ・フラスコを殺害したのはクレバス夫人の旦那です。そうですな。デリフス局長」 局長は当然怒った。 「名誉棄損ですぞ、デイトさん」 「いえ。いいですか。あなたの姓を知っている人はそういない。なぜなら、名札には上の名前しか書かないからです。あなたの姓はクレバス。そうですね」 空気が、凍りついた。私がデイトに質問した。 「どういうことだい?」 「簡単だ。ニュール氏が夫人の旦那でないと言っているんだ。」 私にもやっとわかった。 「第一にこの事件に大きくかかわっているはずの人が自分のメインの武器を使って堂々と人を殺しますか?少なくともそうしないが」 デリフス局長が苦しそうに言う。 「どうやって爪のような刺し傷を作ったんです?」 「簡単です。武器屋には『マニューラのツメ』がある」 「しかし、カルザがニュール氏のことを悪く言ったはずだが……?」 言ってからデリフス氏がハッと息を呑む。 「ボロを出しましたね。なぜあなたがそれを知ってるんですか?理由は簡単。あんたたちが共犯だからだ。カルザも、ニュール氏も、そしてクレバス夫人も!」 「証拠は?」 「今の発言がそうじゃないですか。いずれカルザにゆすられて殺したんでしょう。」 「じゃ、夫人はどこに?」 私が訊く。 「ここの金庫だ。誰もこの局長と夫婦だと思わないしな」 「夫人も共犯なのか?」 「そうだ。要するにこの事件は狂言なのさ。ニュール氏は昔、演劇をやってたそうだからな」 「……ええ。そうです」 ニュール氏が口を開く。「資金繰りがうまくいかなくて、仕事柄付き合いのあった局長と手を組んだんですよ」 「カルザもまじめに働いてればな……」 デイトの言葉に空気は紺色から漆黒へと変わっていった……。 エピローグ あの後金庫から毒を服んだ夫人の遺体と遺書が見つかった。二人も警察で自供し、あと何日かで裁判になる。 私の今の研究テーマは、「なぜデイトは謎解きになると口数が多くなるのか」である。 #pcomment(ポケモンミステリー1/感想ページ) IP:202.229.177.50 TIME:"2011-12-18 (日) 00:58:14" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%83%9D%E3%82%B1%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC%EF%BC%91" USER_AGENT:"DoCoMo/2.0 P02C(c500;TB;W24H16)"