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ポケットモンスタークロススピリット 第7話「求めるもの」 の変更点


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作者 [[クロス]]
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 ポケットモンスタークロススピリット、[[前回>ポケットモンスタークロススピリット 第6話「合流」]]までは……

 現実世界から来た者が成すべき使命の一つ、伝説の宝石の回収をすべく“灼熱の地底”へとやってきたツバサ一行は、戦力増強のため別行動を取っていたキングドラと合流する。彼が連れてきたのはチコリータ、グラエナ、そしてヘルガーだった。
 チコリータとグラエナはすぐにツバサの仲間となるも、ヘルガーだけはすぐに仲間となることを良しとしなかった。“私はお前の実力が知りたい。ヒリュウを裏切ってきたのだ。こちらも相当な覚悟できている”
 その言葉を聞いたツバサはグラエナとコンビを組み、ヘルガーとバトルすることに。コンビで挑む初のバトル、果たしてツバサはヘルガーに認めてもらうことはできるのだろうか……

第7話 「求めるもの」


 三人が一斉に地面を蹴りバトル開始。あのツバサとやらの実力は知らんが、グラエナ相手なら相性でも実力でも私に分がある。
 とは言え、当然油断していては足元をすくわれるだろう。マグマの光のおかげで視界が塞がれることはないが、それでも十分に暗い。私は体毛の色に合わせた戦術を取るべく、漆黒の闇に身を投じる。

「くっそー……ヘルガーの奴あっという間にいなくなっちまったじゃないか。Hey! どうやって倒すんだマスター?」

「その言い方やめろよ。オレはお前の主人なんかじゃない! 仲間じゃないか!」

 気配を消し、敵の隙を伺う。まったく奴らときたら、最初から仲間割れか。グラエナは人懐っこいところがあるが、同時に冗談が多い。それを冗談と見抜けぬ堅物では到底上手くなどやっていけないだろう。
 一気に攻撃を仕掛けても勝てそうだが、これではあまりに面白くない。もう少し様子を見て、あのツバサの秘めるとされる力の何たるかを見てみたいのだ。
 キングドラ曰く、奴はヒリュウたちを凌ぐパワーを秘めており、波導の勇者ルカリオに認められた選ばれし者だそうだが……
 そんな情報などあてにはならない。無駄な先入観を捨て、私のこの目で真実を確かめねば。ヒリュウを捨てた今、奴がくだらん存在ならば私は野に下るよりないのだから……

「ジョークジョーク。ちゃんと仲間だって思ってるぜ。で、どうしたらいい?」

「一対一なのに隠れるんだから、おそらく奇襲をかけるつもりだろうな。たぶん“かえんほうしゃ”で仕掛けてくる」

 耳を済ませて声を拾うと、確かにあのツバサ、なかなか良い分析力を持っているようだ。奇襲をかけるなら遠距離技がいい。私には強力な“かえんほうしゃ”があるのだから。
 変身能力を得たことでポケモンを頼りにし、実際は振り回されているだけかと危惧していたが、幸いそうでもなさそうだ。だが“わかる”と“できる”は違う。対策のほうはゼロか……
 忍び足で奴らの右後方を取り、体内に空気を取り込む。一気に体温が上がり、体の奥からあふれんばかりの業火が燃え盛る。口からこぼれるほどの火炎を牙で噛みしめ、確かに技の準備が整ったことを確認する。よし、今だ!

「くらうがいい!」

 灼熱の炎が私の体内から放射され、周囲の闇を一掃すると同時にグラエナを飲み込まんと迫る。視界には自らが放った火炎だけが広がり、それ以外に目に入るものはない。

「グラエナ、右だ!」

 と、そこへツバサの指示が耳に入る。グラエナは私と同等のスピードを持つが、あいにくトレーナーの指示が遅い。グラエナ自身も私に気づいてはいなかっただろう。直撃はほぼ免れまい。
 徐々に火炎の勢いが収まり、ツバサの姿が見えてきた。完全に火の勢いが収まれば、グラエナの姿も見えることだろう。すでに倒れた奴の姿が……










 な、なんだとっ!? 放った炎が鎮火したとき目に入った光景は、煙を上げる焦げた地面。そこにグラエナの姿はない。確かに攻撃のタイミングは合っており、仮に直撃せずとも相当なダメージを受けているはずだ。それにもかかわらず視界から完全に消え去るとはどういうことか。
 油断はしないとしていながら、まったく対策が取れていない敵を見てつい侮ってしまったか。私としたことが己の策に溺れるとは……。策士、策に溺れるとはこのことか。
 自惚れていた自分に対し軽い自己嫌悪に陥っていると、突如足がふらついてしまう。頭痛がするわけでもなく、地震が起きているわけでもない。だとすれば……
 はっとして足元を見るが、一歩遅かった。“あなをほる”の技を使用したグラエナが、私の真下を取っていたのだ。これでは視界に入らないのは当然のこと。

「さっきのお返しだぜ!」

 まるで活火山が噴火するかの如く勢いよく地中から跳び上がったグラエナの頭突きを腹部に受け、私の体は天井間際の高さまで宙を舞う。同時に激痛が腹部から全身へと走っていく。くっ、急所を突かれたか……
 地に落下する際には受け身を取り、無駄なダメージは受けないよう心がける。この痛みはこたえるが、ここで地に伏せてしまえば敵の士気は高まり、間違いなく猛攻をかけてくるだろう。あくまで平静を装わねば……
 そんな私の内心を知ってか知らずか、グラエナは三回ほど舌をならして余裕の表情を浮かべている。私をあざ笑うかのように挑発しているつもりだろうが、それに乗るほど私は馬鹿ではない。
 それより、奴のほうはどれほどのダメージを受けているのだろうか。まさか無傷と言うことはあるまい。痛みをこらえ、冷静に敵の状態を分析する。じっと目を凝らし、火炎を受けた箇所がないか調べるのだ。

「よかった……。グラエナ、まだやれるか?」

「Of couse! さあ、とどめを……んぐっ……」

 ツバサの声に応え、勢いに乗って攻めようとしたグラエナ。だが、こちらへ向かって駆け出そうとした刹那、足に痛みを感じたのか、顔をしかめながら右前足を動かしている。
 火炎を受けた箇所は見当たらなかったが、これで奴がダメージを受けていることはわかった。一見無傷に見えるが、意地でこらえているだけでかなりのダメージを受けていると見える。このチャンスを逃すわけがない。こちらも手負いではあるが、今こそ決着をつけるのだ。
 仮にも良き友人であるグラエナを傷つけることへのためらい、そして期待していたツバサの実力がこの程度であったことへの失望が、地を駆ける私の心で渦巻く。
 だがこれはあくまでバトルであり、グラエナの件に至っては戦闘不能にして敗北を認めさせるだけだ。そしてツバサについては……私の想いを全力でぶつける、これ以外に道などない。
 内なる葛藤を振り払い、技の準備に入る。エネルギーを尾に集中して硬化させ“アイアンテール”を繰り出すのだ。足にダメージを受けているグラエナがこれを避けられるわけがない。
 細く長い悪魔を連想させる私の尾が、鋼の硬度を備えた。私とて手負いなのだ。もはや、ためらいなどない!

「させるか!」

 渾身の力を込め、回転して鋼の尾をグラエナに叩きつけようとしたまさにその時、立って指示をするだけのツバサが割って入り、グラエナを抱きしめてかばいに入ったのだ。
 微塵も予想だにしなかった事態だが、完全に攻撃態勢に入ったものを止めることなどできない。相手が生身の人間であることなど露知らぬとでも言うかのように、私の尾はツバサを叩き飛ばしてしまう。
 うめき声とも叫び声ともとれる痛みを乗せた声を発し、グラエナを抱いたままツバサの体が5mほど宙を舞う。次いで地を滑る痛々しい音が耳をつく。ためらいもなく攻撃したはずが、この光景を目の当たりにしてひどい罪悪感に悩まされる。

「いっててて……グラエナ、いけるか?」

「ツバサ……」

「ごめん。オレまだ戦いに慣れてなくて、こんなことしかできないんだ。だから……あとは頼む」

 戦いに慣れていなくて出た行動がこれ……か。その行動に私は驚愕し、思考回路が凍結する。変身して共に戦っている時ならまだしも、まさか生身の体でポケモンの攻撃を受けるとは……
 一方のグラエナはツバサの言葉に笑顔で頷き、それに応える。その光景に何故か私の心に嫉妬の火がつく。いったいどうしたものか……
 弱者は弱者なりに頑張る。そうとでも言うかのようなツバサの行動が、異常なほどに魅力的に映ってしまったのだ。そして、その努力に応えようとするグラエナの姿。その立ち位置がどこか羨ましい。
 地を蹴りこちらへ駆けるグラエナを前に、私は完全に敗北を認めてしまっていた。と言うのも、今の出来事でツバサの秘めたる力の何たるかが明確に見えたからだ。もはや攻撃を避ける気さえしない。
 そんな私の気持ちをよそに、勢いのついたグラエナは“とっしん”攻撃を仕掛けてきた。余計なダメージを受けぬよう身構えるが、その攻撃を受け私の体がわずかに宙を舞う。
 大したダメージではないが、もう戦う気はないので立ちあがれないふりをしておく。それをチャンスと見たツバサはすっと立ち上がり、気力あふれる表情で腰につけたボールを取りだした。

「よし、今だ! いけ、モンスターボール!」

 彼の手を離れたボールが回転しながら宙を舞い、こちらへ向かって飛んでくる。ボールが私に直撃すると、あっという間にその中へと吸い込まれていく。
 ヒリュウを捨てたことでつい自分のことばかり考えていたが、先を見据えてもっと広い心を持たなければならないのかもしれない。例え今は未熟であろうとも、むしろ“私が支えてやろう”というくらいの温かさを持って接し、共に成長していこうと堂々と言えるのが私のあるべき姿ではないだろうか。
 ただ相手に求め続け自らを省みなかった私に比べれば、未熟ながらも誰かを思いやる心を持った彼のほうが器としては立派と言えるだろう。ならば、これから彼と共に生き、共に立派になれるよう歩もうではないか。
 そんな反省とこれからへの期待、そして意気込みを秘めた心を反映するかのように、私を入れたボールは三回ほど揺れ、一瞬光を放った。

「よっしゃー! ヘルガー、ゲットだぜ!」

「Congratulations! これで、みんなツバサの仲間だぜ。これからもよろしくな」

 こうして私はツバサを認め、その仲間へと正式に加入した。彼のことだ、この先いろいろと安定しないことがあるだろう。だが、それさえも今は楽しみである。
 彼の仲間を想う心と、私やその他のポケモンが力を合わせた時、ゾーンを消し去り、世界に平和を取り戻す。これを成せると確信が持てたのだから。





 バトルを終え、すぐにヘルガーをボールから繰り出す。彼のその表情は明るく、ついにオレを認めてくれたようだ。もちろん彼に甘えることなく、これからも自分にできることを一生懸命やっていきたいと思う。
 先ほどのバトルで傷ついたヘルガーとグラエナを気遣い、腰を下ろしてその背を優しく撫でる。グラエナの毛はふわふわで、ヘルガーの毛は短い。その違いはあるものの、どちらも毛並みはとても美しく、一度撫でると手が止まらなくなる。なんだか気持ちいいなぁ。撫でているとさっきの戦いの痛みなど忘れてしまいそうだ。

「ツバサ、お前に言っておきたいことがある」

 と、表情を緩ませ、しょうもないことを考えていたオレだったが、ヘルガーの低く冷静な声を聞き、はっと我に返る。彼の表情は至って真剣で、笑顔で聞いていては失礼にあたるのではと感じるほどだ。
 緩んでいた表情を引き締め、真剣な眼差しを彼に向ける。まだオレを認めてくれてはいなかったのだろうか。それとも何か要求でも? すると、彼の口から予想外の言葉が飛び出す。

「傲慢な態度でお前に接してしまいすまなかった。今後私に何かあれば、遠慮なくいってほしい」

 それは、ヘルガーからの謝罪の言葉だった。オレは決して彼の態度を傲慢とは思わなかったし、初対面のオレに対して反発してくるのは当然だろうと思う。だから、彼は何も悪くない。謝罪の言葉を前に、オレは首を左右に振ってその言を否定する。
 オレはオレ。彼は彼。それぞれ違うところがあるから一緒にいる意味がある。そして大事なところは共通しているから、お互い良い時間を過ごせるのではないだろうか。
 まだ彼と会って間もないオレだが、今こうして話していてとても良い時間を過ごせていると思っている。夢にまで見たポケモンが、それもこんなにかっこよくて優しいヘルガーがオレの仲間なのだから。
 話を聞き終え、オレはすっと立ち上がり、バトル中走ってきた道を振り返る。他の仲間を置いてきてしまったことを今になって思い出したのだ。

「そして、私のことをあまり優先するな。これが私からのお願いだ」

 おっと、てっきり話は終わったとばかり思っていたが、まだ続いていたようだ。今度はオレに要求を出してきた。それも、要求とは言い難い要求を。要求とは、本来その多くは自らにメリットがあることを他者に依頼することである。
 ところが、ヘルガーは自らにデメリットがあることを要求してきたのだ。話の内容から、彼はまだ自分が傲慢な態度を取っていたことを気にしていることが伺える。そんなに悪びれる必要もないのに……
 しかし、ここは言葉で何を言っても彼の心は動かないだろう。再度腰を下ろすとヘルガーと同じ目線になる。今の言葉は彼なりに迷いながらも出した答えなのだろう。その証拠に目の前には揺れる瞳が……。
 オレはその揺れる瞳を見つめると、無言で彼を抱きしめる。“大好きだよ”と、恥ずかしくて言葉に出せない気持ちをこの行動に託すのだ。
 ふと、ヘルガーの元トレーナーであるヒリュウのことが思い出される。彼はポケモンには危害を加えないそうだが、ヘルガーのことはこうやって抱きしめたりしたことはあるのだろうか。
 そんな何気ない疑問が胸に浮かび上がるが、今はそんなことはどうでもいいのだと思いなおす。元のトレーナーと比べる意味などない。オレはオレのやり方で、ポケモンに精一杯の愛情を与えるのだ。その心意気こそ、オレがこの世界にやってきた意味の原点なのだから。



 下手に動けばすれ違う危険性もあると考えたオレたちは、その後少しの間その場で待機する。すると、間もなくバトルに夢中で置いてきてしまった仲間がやってきた。熱くなって突っ走ってしまったことをばつが悪く思い、思わず苦笑いを浮かべてしまう。一言謝ればいいのだが、苦笑いで済ませようと思うのは何故だろうか。
 しかし、彼らはオレを叱るどころか、温かな笑顔を見せてくれた。それにこちらも笑顔で応え、ヘルガーを仲間にできたことを伝える。それぞれがこちらに目を合わせて頷く様子は、この大きな喜びを共感してくれているかのようだ。すっかり振り回してしまったにも関わらず優しくしてくれる仲間に、オレは“ありがとう”と感謝の気持ちを添えて声に出し彼らの心に届ける。こっちは普通に言えるのだが……
 と、喜びに浸っていたその時、突然手を叩く高い音が耳につく。洞窟の中であるために音が響き、その震源がわからない。

「フフフ……キミ、なかなかやるじゃないか」

 はっと後ろを振り返ると、なんともわざとらしい拍手をする見ず知らずの少年がいるではないか。この人目につかない洞窟にいったい何をしにきたのか。彼の服装はどこをどう見ても探検家と言えるものではなく、明らかに街を歩くような私服だ。
 眼鏡越しにこちらを見るその瞳は奇妙なほどにこちらの気に障る。まだ何もされていないにも関わらず言っては失礼だが、オレの目にはいわゆるナルシストにしか映らない。オレはナルシストが大嫌いなんだ。

「お前、ここへ何しに来た?」

 ルカリオが低い声で彼に尋ねる。その声はどこか重く、あまり初対面の相手に対してかけるような声ではない。つまり、彼を怪しんでいるのだろう。ここが人目につかない場所なのだから無理もない。
 他の仲間の様子を横目で伺うと、完全に無視している者が三人。警戒心をむき出しにしている者が二人。気味が悪そうにしている者が二人。いずれも彼に対しあまり良い印象を持っていないようだ。

「ねえ、そこのキミ」

「え、オレ?」

 怪しげな少年がこちらを指さす。隣にショウタがいるためどちらを指しているのかわからない。そのため、自分を指さしオレに用があるのか尋ねる。別段怖いわけではないが、正直見た目からして気に入らなく、あまり関わりたくないというのが本音だ。
 そんなオレの意思を知ってか知らずか、オレの問いに彼が頷く。残念だがオレに用があるらしい。ショウタの様子を伺うと“どんまい”とでも言いたげに、苦笑いしながらこちらを見ている。まったく面倒な奴に絡まれた。

「僕とバトルしよう。キミと僕の強さを比べてみたい」

「バトル? よし、乗った! やろうぜやろうぜ!」

 何を言われるかと思っていたが、まさかのバトルの挑戦。これなら断る理由はない。戦いに慣れていないオレにとって、一戦一戦大事に戦って勝利を積み重ね、少しでもポケモンの力を引き出せるようになることが大事なのだから。
 ルカリオが呆れた様子で断るよう指示してくるが、申し訳ないがもう一度オレのわがままに付き合ってもらうことにする。と言うのも、挑戦の申し込み方からしても、こういう奴は断れば“逃げるのか”と言うに決まっているからだ。ちょうど顔からして嫌な奴だったし、ここは圧勝してとっとと家に帰ってもらうとしよう。

「使用ポケモンは一体。僕のパートナーを先に見せてあげよう。おいで、メタモン」

 彼が腰につけたモンスターボールを手に取り、宙に放り投げる。出てきたポケモンは紫色のぷにぷにした柔らかい体が特徴のポケモン、メタモン。“へんしん”というトリッキーな技のみ使用可能で、トレーナー次第で強くも弱くもなるポケモンだ。
 さて、こちらは誰でいこうか。フーディン、ルカリオは変身が必要なため不可。グラエナ、ヘルガーはバトルの後でダメージがある。キングドラは地形の関係上不利。となると、残るはチコリータだけだ。ここは彼女にお願いするとしよう。
 幸いメタモンはノーマルタイプ、チコリータは草タイプであり、相性における有利不利はない。ストレートに実力が試されると言えるだろう。

「チコリータ、いってくれるか?」

「う、うん……」

 こちらの問いかけにチコリータが小さな声で応える。やはり、初めて組む仲間との初戦は緊張するものなのだろうか。なんとかその緊張をほぐしてやらなければ……
 彼女が自分の使える技を耳元でささやく。なるほど……。決して強い技ではないが、十分戦えそうな技を覚えている。これなら大丈夫だ。チコリータの背を軽く撫で、絶対勝つぞと気合いを入れる。

「やめたまえ。怯えているじゃないか。そんな弱い奴に勝っても面白くない」

「なんだと!? てめえ、ふざけるな!」

 せっかく気合いを入れたところに、なんと少年がチコリータ相手ではつまらないと言いだすではないか。第一印象から気に入らない相手ではあったが、よりにもよって自分のチコリータを馬鹿にされたとあっては我慢ならない。
 “弱い”“雑魚だ”そんな言葉二度と聞きたくない。オレに対してだろうと、オレの仲間に対してだろうと。絶対に勝ち、なんとしてでも奴を黙らせてやる!

「オレのチコリータは強い! ナルシストめ、なめやがったことを後悔させてやるぜ! いけ、チコリータ!」

 右手を広げて前に突き出し、チコリータに応戦するよう指示。こうしてオレとチコリータが組む初めての戦いが幕を開ける。





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[[ポケットモンスタークロススピリット 第8話「プライド」]]
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''あとがき''
今回はツバサとヘルガーの小バトル(「迫力<心理描写」のバトル)の回でした。バトル中と後で視点を変えてみましたが、混乱せずに読んでいただけたでしょうか?
小バトルとは言えあくまでバトルなので、戦闘描写と心理描写を並行してやっていかなければならないのが大変でした。まだまだ精進しなくては……
小説と言うジャンルはバトル物に不向きではありますが、心理描写を重視した小バトルにすることでバトルらしいバトルになる山場と上手く緩急をつけられたらと思います。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
よろしければ誤字脱字の報告や、感想、アドバイスを頂きたいです。
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