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ポケットモンスタークロススピリット 第6話「合流」 の変更点


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作者 [[クロス]]
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 ポケットモンスタークロススピリット、[[前回>ポケットモンスタークロススピリット 第5話「決意」]]までは……

 人とポケモンを凶暴化させる謎の物質ゾーンと戦うためポケモン界へとやってきたツバサは、見知らぬ四人組と出くわす。彼らはその命を狙いシードラを差し向けるも、ツバサは助けにきたフーディンと共にこれを撃破。改心したシードラは進化すると同時にツバサのポケモンとなる。
 そこへ、ルカリオが時間を超えて追っていた生命体ガレスが現れる。青白いゾーンの球体を発生させるガレスの圧倒的な力の前にツバサたちは成す術がなく、何も知らない島の人々や仲間のユウキ、ヒトミとそのパートナーを置いて逃げざるを得なかった。
 球体に吸い込まれるように消滅していく島を背後に、逃げる途中に出会った現実世界出身の少年ショウタとパートナーのボーマンダに助けられたツバサたちは命からがら逃げのびることに成功。その後ルカリオは彼らに課せられた使命が、ガレスの撃破、及び各地の伝説のポケモンが守る9つの伝説の宝石を集めテンガン山に納めることであることを告げる。
 そして一行は戦力増強のため四人組の仲間を説き伏せてくると言って去ったキングドラとの合流も兼ね、伝説の宝石を手に入れるべく動き出したのだった。

第6話 「合流」


 新たにショウタを仲間に加え、まずは伝説の宝石の一つ、グラードンルビーを手に入れることに決めたオレたちは、キングドラと合流する意味も兼ねてグラードンの待つ“灼熱の地底”へと向かっている。
 何でもフーディンによれば灼熱の地底は海底に存在するという。現在キングドラと離れていることもあり、水タイプのポケモンが存在しないオレたち一行は、地上から海底に繋がる道はないかとボーマンダに乗って風を切り、辺りを飛び回っていた。

「ん? あの島にでかい穴があるぜ!」

 オレとショウタを乗せるボーマンダが何かを見つけたようだ。彼が首を向けて示す方角を見ると、小さな無人島の中心に大きな穴があるのが見えた。
 円形の島に穴を守るように木が生い茂っている。無人島なこともあり、探検家でもなければ奥の大穴を見つけることは少なそうだ。それを見つけられたのは、ちょうど空を飛んでいたことが幸運だったと言える。

「とりあえずあれを調べてみよっか」

 ショウタの問いかけに頷き、見つけた穴を調査することに決める。先に進めるかもしれないとわかったからか、張り切ったボーマンダが翼を折りたたみ急降下していく。
 そのあまりのスピードに体が宙に浮かびそうな感覚に襲われるが、そんなオレに対しショウタは笑ってボーマンダの首を撫でている。まるで“いいぞ、もっと飛ばせ”とでも言っているかのようだ。
 そんな彼らに振り回されつつも、オレたちは無事穴の前に着陸する。今後飛ばしすぎないよう後で注意しなくては……。万が一落下でもしたら取り返しがつかなくなる。
 そんな憂いを押しのけ、改めて今やるべきことに意識を戻す。穴の前に立つと、吸い込まれそうに感じるほどの大きさであることがわかる。体格の大きいボーマンダでも楽々進んでいけそうだ。
 陸に着いたことで、フーディンとルカリオがペンダントから光となって出現。上空から見た辺りの様子を簡単に説明すると、ルカリオは手を打って頷く。

「グラードンたちにも空気は必要だ。地上と灼熱の地底とを繋ぐ道があると思っていたが、これぐらい大きな穴であれば可能性は十分にあるだろう」

 正直地上から海底に繋がる道などあるのかと思っていたが、言われてみれば地上とまったく繋がっていなくては空気がない。ともすれば、地上と海底とを繋ぐ抜け道があるのは至って自然のことである。
 もっとも、ポケモン界でもなければ地上と海底を行き来する生物など皆無と言えるだろう。現実世界にはないであろう冒険がオレの心を揺さぶる。

「それに、まるで隠されてるみたいな地形とあっちゃ怪しいよな。さっそく調査開始だぜ!」

 フーディンの掛け声に一同が応える。先に何があるかわからないが、ポケモンと共に行動すれば怖いものなどないだろう。
 と、言いたいところだが、あいにくフーディンとルカリオは変身なしでは技が使えない。フーディンの目が“早く変身しろ”と言っているのを感じ、オレはサイコペンダントを胸にあてがう。

「変身!」

 ペンダントが光を発し、一瞬で視界が真っ白になる。まるで雪原の中に立たされたかのようだ。そうかと思うとあっという間にフーディンと融合しており、体の主導権を握られてしまう。
 もっとも、見た目がフーディンそのものであるため、オレはいなくなったようにしか見えないのだが……



 穴を進むと、薄暗く、かつ非常に広い空間が広がっていた。当然のごとく進めば進むほど空間は光を失っていく。そのうち一緒にきているルカリオたちの顔もはっきり見えなくなってきた。
 はぐれてしまう危険はもちろん、いつ何時思いもよらぬ敵に襲われるかわからない。そんなことを危惧していると、フーディンが対策のために動き出す。

「さーてと、明かりでもつけるか」

 そう言うと、両手に持つスプーンがまるでランプのように光り、辺りを照らしだす。バトル中のみならず、移動中においても役立つ技“フラッシュ”だ。暗い洞窟を進むのを助けてくれる。
 と、そこへ不気味なうめき声が耳に響く。オレたち一行は人かテレパシーを使用できるポケモンだけで構成されており、うめき声のような声を上げるものなど誰一人としていない。
 スプーンの光をライトのような直線方向を照らすものに変化させ周囲を調べると、そこにいたのは体が岩でできた巨大なポケモン、イワーク。
 暗闇の中ライトに照らしだされたその顔は、ゲームで見たものと違い怖いものだった。いや、単にライトのせいで不気味に見えるだけか。
 唸り声を上げ、明らかに不機嫌そうな様子を見せるイワークを目の当たりにし、いったい何を言っているのか知るべくフーディンに通訳を依頼する。

「なるほどなるほど。わかりやすく言ってやるが、こいつキレてるわ」

 そう教えてもらったかと思うと、イワークが尻尾の硬度を上げ“アイアンテール”を仕掛けてきた。少し距離があったショウタたちはバックして岩陰に隠れる。一方接近していたフーディンは回転しながらジャンプし、軽々と敵の攻撃を避けてしまう。
 対象を失った“アイアンテール”は洞窟の壁に激突。巨体から繰り出された攻撃は凄まじい威力であろうと予測していたが、洞窟自体が非常に頑丈なのか、意外にも少々揺れた程度だ。

「こいつはゾーンに汚染されてるわけじゃねえな。汚染されてたら人語も喋るし、戦闘力がもっと強化されるはずだ。ま、普通の奴なら練習相手にちょうどいいぜ」

 イワークは縄張りを荒されたと思いこちらを攻撃しているようだ。今まで聞きそびれていたが、今フーディンにゾーンについて尋ねてみると、ゾーンに汚染されたポケモンは共通して人語を操り、戦闘力が格段に強化されるらしい。
 完全に自我を失い暴走するそうだが、オレたちが戦って倒せば体に傷は残るものの汚染から解放できるという。
 ゾーンの影響がないためか、このイワークには初めて戦ったドククラゲやサメハダーと違って殺気はない。あくまで怒気を持っているだけだ。
 フーディンはこのイワークを練習相手にすると言っているが、オレとしては野生のポケモンは必要以上に傷つけたくはない。

「(オレが本気出したらお前は即アウトなんだ。補助技は自由に使わせてもらうが、これから攻撃技は段階を踏んで少しずつ解放していこう)」

 変身能力により、フーディンは努力で覚えられる技はすべて使用可能となっている。だが、それを自由に使用されると、あいにく共に変身形態を作りだしているオレの体が持たない。
 ならば少しずつ体を慣らし、いずれ本気が出せるようになればいい。彼はそう考えているようだ。やっぱり自分の弱さが足を引っ張っている感が否めないが、ここは彼の厚意に甘んじるとしよう。
 攻撃技は強力なエネルギーを発することが多いため、まずは“ねんりき”のみ使用可能とする。エスパータイプであるフーディンの基本となる技で、応用の利く便利な技だ。

「(“サイコキネシス”でも使わねえと、イワークみたいなデカブツは持ち上げられねえ。んじゃ、こういう時はどうしたらいい?)」

 “サイコキネシス”と“ねんりき”は似たような技ではあるが、やはり前者のほうが強力である。後者ではイワークへの直接攻撃が不可能となれば、何か補助技を使うしかないのだろうか。
 あいにくイワークの繰り出す技は体を使った直接攻撃ばかりで、どれもこちらの攻撃として利用することはできそうもない。
 打つ手が見つからずに困っていると、しびれを切らしたのかフーディンが動き出す。イワークが動いていないにも関わらず高いジャンプで宙返りをしたのだ。
 いったい何をしたかったのかと思っていると、ジャンプの前に立っていた場所にはトゲのだらけのボールのようなものがあるではないか。

「(サンドパンの“ころがる”だな。オレが見抜けねえとでも思ってたのかこいつ)」

 どうやらボールのようなものはサンドパンらしい。確かにトゲだらけの体で、ボールのように丸くなると言えばサンドパンしかいない。
 そのサンドパンの体に薄紫色の気がまとわりついている。攻撃を回避しつつ、フーディンが“ねんりき”を使って動きを封じたようだ。

「(お前じゃ打つ手がでないんだろ? まあ見てろ。こうやって倒すんだよ)」

 打つ手が見つからないオレに呆れる様子もなくそう言うと、フーディンはサンドパンを宙に浮かせていく。こちらの体に負担はないがそこそこの威力があるのだろうか、サンドパンはびくとも動けないようだ。
 浮かせたサンドパンを武器代わりに、イワークの顔面に向かって投げ飛ばす。堅いトゲのついたボールが顔面に当たり、さすがのイワークも洞窟中に響くような唸り声を上げながら倒れ伏す。
 イワークに激突したあとサンドパンもすっかり伸びてしまったようだ。フーディンにとっては何でもない練習のようだが、こうもあっさり勝てるとは思わなかった。
 同時に、気絶した二体には申し訳ないが、とりあえず勝利することができてよかったとも思っている。
 決まったとばかりにガッツポーズを決めるフーディン。そんな彼の様子に、改めてポケモンバトルの奥深さを思い知らされる。工夫次第でいくらでも攻撃のバリエーションが生まれるのだと。
 自分の体力のなさを恥ずかしく思っていたオレだったが、そんなことを思っている暇があったら、今できることで最大の力を出せるよう考えるべきだろう。
 わずかなバトルだったが、今後変身して戦うことにおいてとても大切なことが学べたと思う。もっと強くなりたい、強くなれる。そう思い、感じた瞬間だ。



 バトルを終えたオレたちは、洞窟のさらに奥へと進んでいく。と、そこでルカリオが何か疑問が浮かんだように周囲を見回している。
 いったいどうしたのかフーディンに尋ねさせると、周囲の温度が先ほどまでに比べ上昇していると言うのだ。オレをはじめ、彼を除く一同は特に何も感じていない。
 今の状態では本来使用できるはずの波導が使用できないルカリオだが、鋼タイプを持つ彼は温度差に敏感なのかもしれない。まして熱気とあれば、炎タイプを苦手としているのだからなおさらのこと。
 特に異常が見当たらなかったため先に進むと、今度はこちらでもわかるほど周囲の温度が上昇してきた。これは先に何かあると見て間違いないだろう。

「みんな、あそこに誰かいる!」

 突然ショウタが驚いたような声を上げ、先に誰かがいるのが見えたというのだ。“フラッシュ”のおかげで周囲は明るいが、細かいところまで見えるわけではなく、地形で死角となっている場所には光が行き届いておらず、真っ暗で何も見えない。
 しかし、ショウタが指さす方向をじっと見つめると、一瞬明かりがつき、そうかと思うとまた消える。そしてまたつく。確かに誰かいるようだ。
 その不思議な光景は少なからず恐怖をあおるものではあるが、調べないわけにはいかないだろう。そこでフーディンが名乗りを上げたため、結局オレも一緒に行くのと同じことになる。
 “フラッシュ”の明かりを弱めながらも、地面に転がる石を蹴るなどして音を立てないよう、わずかにしか見えない暗黒の道を忍び足で踏みしめていく。
 見つからないように一歩ずつ……。ところが、周囲の岩がわずかにオレンジ色の光を発し、こちらの影がちらついてしまったではないか。

「誰だ!?」

 見つかった途端、目指す方向から周囲全体を照らし出すほどの大きな炎が迫ってくる。炎タイプの上級技“かえんほうしゃ”だ。
 奇襲に近い形で攻撃が迫るため、回避する余裕がない。それがわかると、フーディンはかがみこんで左手に持つスプーンを地面にあてがう。そこを起点に二本の光の線が走り、彼を囲うように伸びていく。
 線が結ばれ正方形を形作ると、身の回りを黄色の結界が覆い、それが防火壁となって“かえんほうしゃ”を退ける。おそらく“ひかりのかべ”と呼ばれる技だろう。
 ゲームでは特殊攻撃を半減する効果のはずだが、フーディンが繰り出した“ひかりのかべ”は空間に設置する仕組みになっているようで、かつ防御可能なレベルの攻撃であれば無効化できるようだ。
 しかし、その性質から技を解除しなくては場を動けないようで、敵に反撃するべく結界を解除して地面を蹴る。
 接近すると徐々に敵の姿が見えてくる。敵は四体。一体は水色の体に、口が伸びていて……

「ちょっと待ったー!」

 オレと敵側の一体の声が重なり、場の一同全員が立ち止まった。オレの声はフーディンにしか聞こえないが、唯一彼だけは敵とこちらの二人の声が耳に響いたためか、ひどく機嫌を損ねた表情を浮かべている。
 そんな彼に心の中で軽く謝罪しつつも、早く敵の姿を確認しなければ。“フラッシュ”で周囲を照らし直すと、ようやくはっきりとその姿が確認できた。

「フーディン! ということは……ツバサじゃないか!」

 そこにいたのは仲間を呼ぶために離れていたキングドラだった。そして、彼の言っていた仲間と思われるポケモンが三体。
 頭の葉っぱと、愛らしい表情が魅力的なチコリータ。美しい黒の毛並みと、鋭い牙がたくましいグラエナ。スマートな体格と、悪魔を連想させる尻尾がかっこいいヘルガー。
 この三体が元はあのユリ、レイカ、ヒリュウのポケモンであり、キングドラの説得のもと、今オレの仲間になろうとしているのだ。
 身の安全がわかると、オレは変身を解除して後ろで待機していた仲間を呼び寄せる。これで目的の一つが達成できるはずだ。
 と、変身を解除してしまったせいで、“フラッシュ”の技が途切れてしまい、またも空間は闇に閉ざされてしまう。
 そこで、ヘルガーが首でオレを移動させ、口から高熱の火炎を放ってその場を焼き尽くす。いったい何をするつもりなのか。火事とはならないだろうが、彼の意図が読み取れない。
 すると、火炎が直撃した箇所から地面が淡いオレンジ色の光を放ち、それに連動するかのように周囲の岩が同色の光を放ち始める。
 辺り一面があっという間に照らし出され、岩の放つ淡い光が空間の闇を引き裂く。これで“フラッシュ”がなくとも、ほぼ問題はなさそうだ。

「こいつがオレの話していたツバサだ。これから一緒に過ごすから仲良くしてくれ」

 キングドラがそう言うと、チコリータとグラエナは優しげな笑顔を浮かべて頷く。ただ、ヘルガーだけは何か納得がいかないのか、無表情、いや、若干不機嫌そうな表情でそっぽを向いている。
 その態度にフーディンは不満があるようだが、彼の肩を叩いてその怒りを静める。最初から喧嘩をしていたのでは先が思いやられるからだ。
 まずはキングドラが連れてきたポケモンたちに慣れてもらうため、礼を尽くす意味も含めてこちらから軽く挨拶を済ませる。
 次にあちらからも挨拶をしてきた。チコリータは元ユリのポケモンで、グラエナはレイカ、ヘルガーはヒリュウのポケモンだったようだ。
 挨拶が終わると、さっそく仲間入りといこうというのだろう。キングドラが体を曲げてぴょんぴょんと跳ねてオレの目の前までやってくる。
 本来水中で暮らす種族なだけに地上での移動は不得手な彼だが、必死に前に進もうとする様子は、頑張っている彼には失礼だが、どこかかわいらしくもある。

「じゃ、さっそくオレたちをゲットしてくれ」

 キングドラのその言葉に、オレは“もちろん”という気持ちを伝えるべく笑顔で頷く。彼の行動にはじめは疑いを持っていたルカリオもこれで一安心のようだ。
 腰につけていたモンスターボールを取りだすと、下から放り投げるようにして優しくぶつける。それがキングドラの頭に当たると、ボールは赤い光を出して彼を吸いこんでいく。
 それが地面に落下すると、三回揺れて一瞬輝いた。ゲット完了の合図だ。
 こうして改めてキングドラを仲間に加えたオレは、言い知れない喜びが胸にあふれるのを感じる。この喜びは実際にポケモンをゲットしてみなくてはわからない初めての喜びだ。

「ツバサ、私強くないけど一生懸命頑張るからね」

「Hey! これからナイスなグラツバコンビになるよう頑張ろうぜ!」

 続いてチコリータとグラエナも先ほどと同じ要領でゲットする。フーディンやルカリオとは違う個性を持つ彼らとの出会いは、オレにこれから真新しい感動を与えてくれることだろう。
 最後にヘルガーをゲットだ。先ほどの“かえんほうしゃ”を見ても、彼の強さは相当なものだろう。これからお世話になることも多いはずだ。

「ヘルガー、よろしく頼むぜ!」

 そう語りかけ、優しくボールを投げる。先ほどまで機嫌が悪そうな彼だったが、どうやら皆と同じくゲットされてくれるようだ。
 と、そんなふうに油断していたのは大間違いだった。ボールが頭に当たる直前、ヘルガーは素早いサイドステップでボールの落下位置からずれると、悪魔を連想させる細い尻尾でボールを弾き返してきたのだ。
 まさかそんなことをしてくるとは思わなかったオレは、高速で戻ってくるボールをキャッチできずに顔面に受けてしまう。
 さすがにこれは痛く、オレは衝突した反動で背中から倒れる。もちろんばったり倒れるわけではないので怪我はないが、ヘルガーの弾き返しは予想以上の強さであり、その行動自体予想外だったため、いろんな意味でダメージが大きい。
 オレが倒れた反動で腰につけたボールが起動し、先ほどゲットした三体が光となって現れる。その表情は不機嫌そのもの。

「ちょっとヘルガー! ツバサになんてことするの。もっと仲良くしないと駄目だよ……」

「おい、お前納得のもとでオレについてきたんだろう? それともヒリュウの元に戻るというのか?」

 チコリータとキングドラが立て続けにヘルガーを非難する。味方をしてくれるのはありがたいが、正直こちらの気持ちとしては複雑なものだ。
 彼らは、元は別のトレーナーのポケモンであり、その元トレーナーの敵となりうるオレの味方につくのだから、彼らも彼らなりに複雑な心境のはず。
 それを考慮しても、オレが彼らに気を配ってやるのは当たり前であり、無理やりゲットしようなどという束縛はできない。
 ヘルガーを非難するキングドラたちをなだめ、オレはその旨を伝える。これからどうするかは、すべてヘルガー次第だと。

「ふっ……立派な心意気だな。私はお前の実力が知りたい。ヒリュウを裏切ってきたのだ。こちらも相当な覚悟できている」

 “相当な覚悟できている”。その言葉がオレの胸に重く響く。彼の決意と、オレの責任の重さを感じずにはいられない。
 こちらの実力を知りたい。要はバトルで勝ってみせろと言うのだろう。彼の意に沿い、またこちらの気持ちをぶつけるべく、オレは喜んでその挑戦に受けて立つ。

「少し海を渡るときに体力を落としたが、先ほどこの洞窟にあるマグマで力は取り戻した。いや、普段より力がみなぎっている。そんな私をお前が倒せるのか?」

 ヘルガーたちはこの島の近くにある別の島で待機していたようで、そこからキングドラが連れてきたようだ。その際キングドラの力を借りつつも多少海を泳がなければならないこともあり、炎タイプの彼は体力を削られたと思われる。
 そこで、洞窟に埋もれるマグマに浸かり、その体力を回復させていたのだという。先ほどから淡いオレンジの光を出していたのはマグマだったようだ。
 そんな、彼に有利と言える場所で勝てと言う。だいぶ高い難易度に感じるが、あいにく戦わずして負けを認めるなどオレのプライドが許さない。

「ルールは一対一だ。お前は好きにパートナーを選べばいい。この洞窟内がバトルフィールドだ」

 確実に勝つべく、パートナー選びは慎重にしなければ。今場にいる仲間は、フーディン、ルカリオ、ボーマンダ、キングドラ、チコリータ、グラエナの六体だ。
 ヘルガーは炎と悪の二タイプを併せ持つポケモン。相性で一番有利なのはキングドラだが、バトルフィールドを考えれば手数で押されてしまう危険性が高いだろう。
 次に相性で有利なのはボーマンダだが、さすがにショウタのポケモンである彼を選ぶわけにはいかない。
 ならば戦い慣れたフーディンかルカリオにすべきか。しかし、彼らは変身なしでは戦えず、また制限のある技でヘルガーに勝つのは難しいだろう。タイプ相性も悪い。
 となると、残りはまだ一度も共に戦ったことのないチコリータとグラエナ。ここまで絞られれば、もはや迷う必要はないだろう。

「よし、グラエナ、お前に決めた! 一緒に頑張ろうな」

「OK! グラツバコンビのファーストマッチだな。テンション上げていこうぜ!」

 選ばれたグラエナは元気ハツラツと言ったところで、調子もよさそうだ。彼とのコンビでは初陣となるが、彼となら上手くやっていけそうな気がする。
 グラエナもそう感じてくれているのか、尻尾を振ってこちらに笑顔をふりまく。その笑顔にオレも笑顔で応える。と、ここで何を思ったのかグラエナが飛びかかってきた。
 なんと頭に噛みついてきたのだ。幸い甘噛みのため怪我はないが、いくらなんでも驚いてしまう。
 一方、当の本人は変わらぬ笑顔をふりまいている。どうやらこれが彼なりの愛情表現のようだ。少々迷惑な気がしないでもないが、ここは良しとしておこう。

「お前たちのコンビで、1+1を3以上にしてみろ。さもなくば私には勝てんぞ」

 あくまで手加減はしないというのだろう。もちろん、そんなものこっちからお断りだ。それでは戦う意味がない。
 ヘルガーにはヘルガーの、オレにはオレの想いがある。その想いに迷いなどない。

「Hey! Are you ready?」

「こっちはOKだぜグラエナ。ヘルガー、オレの本気を見せてやるぜ!」

 バトル開始の合図代わりに、三人が一斉に地面を蹴る。この時、この瞬間より、それぞれの想いが&ruby(クロス){激突};する。





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[[ポケットモンスタークロススピリット 第7話「求めるもの」]]
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''あとがき''
今回は繋ぎのような回でしたが、また重要なキャラを追加しました。キャラが多いとそれぞれに個性を出すのが難しいですが、個性が出せれば面白さは膨らむと思っています。
初心者ゆえに実力不足に恐れてしまうことがないよう、面白さを追求して難しいことにもチャレンジしていきたいと思っております。
キャラが増えることで、少しでも多くの方に好みのキャラを出せたら嬉しいです。次回もお楽しみに!

ここまで読んでくださりありがとうございました。
よろしければ誤字脱字の報告や、感想、アドバイスを頂きたいです。
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