ポケモン小説wiki
ポケットモンスタークロススピリット 第4話「運命と意思」 の変更点


&size(20){''ポケットモンスタークロススピリット''};
作者 [[クロス]]
まとめページは[[こちら>ポケットモンスタークロススピリット]]
キャラクター紹介ページは[[こちら>ポケットモンスタークロススピリット キャラクター紹介]]

 ポケットモンスタークロススピリット、[[前回>ポケットモンスタークロススピリット 第3話「衝突」]]までは……

 怪奇現象によりポケモン界へとやってきたツバサは二つの不思議なペンダントの力で、過去の時代からやってきたルカリオ、二つ目のペンダントの内部に存在したフーディンと融合――変身し、襲いかかるドククラゲ、サメハダーと対峙する。
 あと一歩のところまで追い詰めるも、変身によって心身を共有した状態での技の使用によりかかる疲労にツバサが耐えられず変身が強制解除されてしまう。間一髪のところで現実世界からやってきた少女らのポケモンに助けられるも、このことでルカリオらの間にツバサへの不満が高まっていた。
 何故ツバサたち現実世界の者がポケモン界へやってきたのか。その理由は、人やポケモンの自我を奪い凶暴化させる謎の物質と戦うためにあった。しかし、予想だにせぬツバサの惰弱さに失望したルカリオらとツバサの感情が激突。
 周囲に反発したい気持ちと、好きであるはずのポケモンの期待に応えられない自らの不甲斐なさを恥じる気持ちという相反する感情に悩まされ、ツバサの目からは一粒の雫が零れ落ちてしまうのだった。

第4話 「運命と意思」


 ユウキとヒトミに支えてもらい、オレはようやく気持ちが落ち着いてきた。まったくみっともないけど、とりあえず落ち着くことができてよかったと思う。たぶんフーディンたちも、バクフーンやフライゴンの説得で少しは落ち着いただろう。
 でも、このまま戻ってもまた喧嘩になりそうな気がする。まだ根本的には何も解決してないしなぁ……

「二人ともありがとう。オレ、もう少しここにいるよ。先にポケモンセンターに戻っててくれる?」

 オレの言葉にユウキとヒトミは無言で頷く。その表情は明るい。オレがもう立ち直りつつあるとわかってくれているようだ。
 彼女たちの後ろ姿を見送ると、オレは海を見つめる。気がつけば陽は傾いていて、照らされた海は綺麗なオレンジ色に輝いている。その眩しいばかりの輝きは、まるで宝石箱のようだ。
 壮大な海。そこから響く静かな波の音。繰り返されるそれが、時計が秒針を動かすように、オレの胸に時を刻んでいく。
 平凡な、でも温かい時間の流れは、危機が迫っている世界の風景とはとても思えないものだ。いったいこの世界に何が起ころうとしているのだろう。

「ふふ、ボウヤかい? 現実世界からきたっていうのは。わざわざ消されにきてくれるなんて手間が省けるわ」

 美しい風景に見とれ、物思いにふけようかというその時、突如背後から聞こえた声に意識を無理やり引き戻される。
 振りかえると、その場に立っていたのは四人の男女。腰にまで届く長い髪を持つ少年に、少し俯いたままの大人しげな少女。服の上からもわかるほどの筋肉を持つ大男に、女性的な体格が際立つ大人っぽい女。
 彼らを見たことはないが、その言葉から敵意を持っているのは明らかだ。こちらを見るその冷たい瞳は、人を見るものではない。敵だ。反射的に体が逃げようとする。

「四人を相手に、あなたは逃げられない……」

 彼らが何故襲ってくるのかはわからない。だが、ポケモンを繰り出して攻撃しようとしているのは間違いないだろう。
 暖かい海の陽気と、走ることによる筋肉の伸縮で、体に熱が生まれる。同時に背後から雪崩のように迫る殺気に背筋が凍りついていく。
 一つの体が暑くもあり、寒くもあるという異常をきたしており非常に重く感じる。まるで重症の風邪をひいたかのようだ。
 だが、今はなんとしてでも逃げなくては。と、その時一際大きな声が響きわたる。

「フンッ! 逃げるのか? クズは所詮クズだな」

「なんだとっ!?」

 声の主は髪の長い少年。その言葉は、ちょうど今しがた雑魚扱いされたところから立ち直ろうとしていたオレの神経を逆撫でする。
 挑発であることはわかっている。だが、ここで引き下がったら弱者というレッテルは永遠に剥がれないのではないだろうか。その恐怖とも羞恥とも取れる感情が理性を狂わせる。
 向き直って対峙しようとすると、少年は口元を緩ませ、目を大きく見開いてこちらを凝視する。その表情は不気味というよりなく、人間なのかと疑いたくなるような狂気さえ感じるほどだ。
 その彼が俯き、表情に影が差す。それと同時に体がわずかに発光し、青白い光を放ち始める。
 それは一瞬だった。少年は姿を変え、強靭な足腰と長い髪のようなものを持つ赤いポケモン、バシャーモへと変化したのだ。
 人がポケモンに変身。本来ありえないはずのことが目の前で起きている。しかし、オレにとってはありえないことではなかった。すでに自分も同じようなことをしたのだから。
 ふと冷静さを取り戻す。敵と対峙し、防衛本能が目覚めたのだろうか。自分でも奇妙なほどの冷静さが、先ほどの怒りと取って代わる。
 そこで気付いたことが一つ。彼は自分と同じ能力を持っているのではないかということだ。バシャーモに人に化ける能力はなく、そうとしか説明がつかない。

「驚いたか? 俺とヒリュウも変身できるのさ! さあ、お前もその力を解放してみろ。さもなくば、一瞬で消し去ってやろう!」

 激しい殺意がまるで突風のように吹きつける。立っているのがやっとで、少しでも気を抜けば腰が引けて倒れてしまいそうだ。
 驚いたことに、このバシャーモもテレパシーが使えるようで、彼の言葉から先ほどの少年はヒリュウという名であり、バシャーモとヒリュウは同一人物ではないことはわかった。
 対抗すべく変身したいところだが、あいにくフーディンもルカリオもこの場にはいない。先ほど走ったおかげで100mほどの距離は空いている。だが、そんなものバシャーモ相手では役に立たないことなどオレでもわかる。
 次の行動を思案していると、突然目の前に紫色の混じったどす黒い爪が現れた。これは“シャドークロー”。もう駄目だ。まさかもう一人敵がいたとは……
 恐る恐る振り返ると、そこにいたのはなんとバシャーモ。はっとして前に向き直ると、そこにいたはずのバシャーモの姿がない。
 瞬間移動する“テレポート”が使えないバシャーモが、100mの距離を一瞬で、それもまったく気配を感じさせることなく移動したのだ。いくら行動を思案していたとはいえ、敵の動きを見ていないほどオレも馬鹿ではない。
 ポケモンの動きとはこうも速いものだったのか。ゲームやアニメでしか知らなかったオレには、一度変身して戦った程度ではその速さの程を知ることはできなかったようだ。
 とは言え、フーディンとルカリオもこれほど速くはなかったと思う。それほどこのバシャーモの強さが桁違いということか。

「待てバシャーモ。ポケモンのパワーアップにそいつを利用してやりたい」

「あ~あ、めんどくさいわね。コウジ、あんた自分勝手がすぎるわ。しょうがないから今回の獲物はくれてやるけどさ」

 コウジという名の大男と大人っぽい女が何やら話している。やはり彼らはオレを人として認識していないようだ。単なるトレーニング用の道具といったところか。
 人を傷つけるためにポケモンを利用する。その非道なやり方に、抵抗する術のない身でありながら怒りの炎が燃え盛る。
 ポケモンは人を傷つけるための道具ではない。こんな扱いを受け、彼らのポケモンはいったいどう感じているのだろう。

「レイカ、お前はいいのか?」

「ええ、かまわない……。ユリも了承したから……」

 バシャーモがおとなしい少女、レイカに問いかける。ユリとはもう一人の女のことだろう。どうやら彼らの意見は一致したようだ。
 するとコウジという大男が、筋肉でカイリキーというポケモンのように太い右腕を上げる。それを合図に海から一匹の青いポケモンが飛び出してきた。
 毒を持つ全身の鋭いヒレが特徴のポケモン、シードラ。ヒレと同様に目も鋭く、とても強そうな印象を受ける。
 そのシードラの登場を受け、バシャーモは瞬時にオレから離れる。シードラのトレーニングにオレを使うと了承した以上、一切手は出さないというのだろう。
 さて、これからどうするべきか。逃げればバシャーモにやられてしまうが、逃げなくとも生身の体でシードラに勝てるわけがない。
 対処法がまったく思いつかず、額から汗が垂れ落ちる。せめて近くに武器となるものがあれば……
 夕闇ですっかり暗くなってきた周囲を見渡す。陽の光を失った砂浜は同時に輝きを失い、味気ない風景が広がっている。
 と、そこで目に付いた黄色いもの。輝きを失った白い砂浜とは対照的で、存在感が際立っている。しめた!

「変身!」

 首にかけていたサイコペンダントを握りしめ胸にあてがうと、掛け声と共に変身する。全身が光に包まれ、オレはフーディンと一体化することに成功。やはりあの黄色のものは、こちらに向かってきていたフーディンだったようだ。
 心配して迎えにきてくれたのだろうか。一言感謝の言葉を述べたいところだが、あいにく今はそれどころではない。

「最強ヒーロー、オレ、見参! 売られた喧嘩は、全部オレが買うぜ!」

「ふっ……そう、それでいい。俺たちは弱者をいたぶるようなクズとは違う。戦いはこうでなくちゃな」

 自信満々に登場するフーディン。そう言えば、戦う前のこの台詞は彼の決め台詞なのだろうか。まあ本人がやりたいならよしとしよう。自信満々なくらいが、頼りがいがあってちょうどいい。
 一方、敵方のバシャーモはこちらの変身を読んでいたのか、この状況を楽しむような態度を示す。四人でオレを狙った時点で十分卑怯だとは思うが、彼なりに戦いにおける美学のようなものがあるのだろうか。
 変身が完了し準備万端。また足を引っ張らないようにしないとな。緊張が高まる自分の心に“できる”と言い聞かせ、そしてフーディンを信じる。
 いざ戦闘開始と意気込んでいた矢先、敵側に変化が。物静かなあのレイカという少女が、頭から足にかけてみるみるうちに雪女のような生き物に姿をかえる。
 あれはユキメノコというポケモンだ。となると、レイカもまたヒリュウと同じ変身能力を持っているということになる。ペンダントに選ばれたが故に固有の能力と勘違いしていたが、奴らはオレのように道具を使わずして、いとも容易く変身してみせる。
 ヒリュウが変身して、レイカが変身したのだ。となると、残りの二人も間違いなく変身できるはず。そんなことを思っていると、案の定残りの二人の体も変化し始める。
 大男のコウジは、鋼鉄の刃のごとき翼を持つ鳥ポケモン、エアームドに。もう一人のユリは、ドレスのような体格とお嬢様の雰囲気が特徴の草ポケモン、ドレディアに変身した。
 先ほど手は出さないと言っていたが、実際のところ何をしでかすかわからない。奴らの動きにも気を配らねば……
 そんなオレの憂いが的中するかのように、ユキメノコが着物の袖のような部分から多量の冷気を繰り出す。一瞬のうちに、辺りは一面銀世界。
 だが、気候を変えるなど伝説のポケモンでもなければ不可能なはず。と言うことは、これはただの霧なのでは……?
 これに乗じて襲ってくることを危惧するオレとフーディンだが、敵からの攻撃はなかった。それどころか、霧が晴れるとユキメノコたち四人の姿がない。
 目の前にいるのはこちらを鋭く睨みつけたままのシードラ一匹。シードラにすべてを任せ、奴らは高みの見物でもするつもりか。
 奴らの行いを許せないオレだが、今は戦いに集中するしかなさそうだ。フーディンもそれを理解しているようで、シードラを鋭く睨み返す。

「おい、どうした。かかってこい」

 なんとシードラも喋るらしい。テレパシーを使いこなすポケモンがこれほどいると、その能力がさほど珍しいものでもなく感じてしまう。
 先攻をオレたちに譲るそうだ。まったくなめられたものでしゃくに障るが、ムキになっても仕方がない。
 一体化しているとはいえ、主に戦うのはフーディン。その彼はというと、激しく闘志を燃やしつつも冷静なようだ。まだ戦いになれないオレを気遣うように、今回の戦い方を教えるため、心に語りかけてくる。

「(あいつは先攻を譲ってるんじゃねえ。地上に上がると動きが遅くなるから、自分から攻めてこれねえんだ)」

 なるほど。確かに水タイプのポケモンであり、かつ手足を持たないシードラは地上に上がれば不利になる。
 逆に水タイプでないフーディンが海に飛び込めば、それこそシードラの思うがままにされてしまう。つまり、先に攻めれば負けることになる。
 と、ここで攻撃案が浮かび上がる。フーディンには水タイプに有効な飛び道具“エナジーボール”がある。それを駆使すれば一方的に攻撃できるのではないだろうか。

「(駄目だな。それもあいつの思うつぼだ。オレが本気を出せばお前は三分も持たねえ)」

 悔しいが、確かに彼の言うとおりだ。彼の動きにオレがついていける自信はなく、もしシードラが回避に専念すればそれこそ自滅するだろう。
 またも足手まとい感が否めず、つくづく恥ずかしく思う。だが、手持ちポケモンはフーディンしかおらず、彼は変身なくして技は使えないのだ。この状態で戦うしかない。

「(まあオレに任せとけ。あんな奴かる~くぶっ飛ばしてやるぜ! ただし、集中は切らすなよ?)」

 そんなオレの不安と申し訳なさという名の重りを吹き飛ばすように、フーディンは頼りになる自信たっぷりの声で語りかけてくる。
 “かる~くぶっ飛ばす”の発言が少し矛盾している気がするが、そんなことはどうでもいいだろう。彼に作戦があるのだから、オレは意識を集中させてそれに従うだけだ。





 二人だけの心の会話をやめ、いよいよ戦闘に入る。はたして、フーディンはどのような作戦を持って戦いに臨むのだろうか。


「喧嘩は殴り合いに決まってんだろ! こっちに来てこのオレを思いっきり殴ってみろよ」

「ははは! 殴り合いしか知らないとは、お前はただの馬鹿か? フーディンはスーパーコンピューター並みの頭脳があると聞いているんだが」

「はあ? んだとこの野郎! てめえ、オレをなめてんのか!」

 おいおい、さっきの自信満々な態度はどこにいった。種族のイメージを覆すように、短気で喧嘩っ早いオレのフーディンは、作戦を実行する前にシードラの挑発に乗ってしまう。
 シードラは仰向けになってぷかぷかと海に浮かんでおり、典型的な挑発の態度を見せている。
 聞いてもらえるかわからないが、きちんとパートナーとして彼を支えなくては。そう思ったオレは、冷静さを取り戻すよう助言することに。
 ところが、その言葉を待たずしてフーディンが動き出す。動いている間に喋ってしまえば、当然体力の消耗が激しくなる。何やってんだよフーディン……

「しょうがねえな。んじゃ、こっちから招待状を送ってやるか」

 招待状? 何のことかと思っていると、突然海に浮かんでいたシードラが宙に浮かびあがる。
 ここではっと思いだす。喧嘩っ早い印象が強すぎるあまり“サイコカッター”の剣術などと言った物理技ばかりを使うと思っていたが、考えてもみればフーディンはエスパーポケモン。シードラぐらいの重さなら“サイコキネシス”ほどの上級技を使わずとも、エスパーの初歩的な技“ねんりき”で浮かび上がらせることができる。
 “サイコキネシス”と違って初歩的な技の“ねんりき”であれば、威力こそ低いもののオレの負担は軽くなる。このスムーズな作戦実行の様子を見るに、始めからそこまで計算していたしていたと思われる。
 完全に油断していたシードラは、体をひねらせてじたばたしているが、到底“ねんりき”を破るには至らない。
 あっという間に海から引き離されたシードラは、そのまま光を失った砂浜に叩きつけられる。その光景は、彼の敗北を強調するように物悲しい。

「勝負ありだな。さて、ツバサの命を狙ったんだ。覚悟はできてんだろうな?」

 戦いに勝利したフーディンは、冷たい眼差しで力なく伏せるシードラを見つめる。その口から発せられる言葉は、冷静を通り越して冷酷にさえ感じる。
 彼が今何をしようとしているのか、そのくらい言わずと知れている。二つのスプーンを紫色の刀身を持つビーム状の剣に変化させると、両腕を高く持ち上げた。シードラは覚悟を決めているようで、目を閉じて時が来るのを待つ。
 これがポケモンバトルなのか? オレはゲームやアニメでしかポケモンのバトルというのは見たことがなかった。だから知らないだけだったのかもしれない。
 だが、やはりこの戦いが本来あるべきポケモンバトルとは一線を博す、いや、それどころではない。対極にあるとも言える、まったく違うものと思えてならないのだ。
 念力で形作った剣を振り下ろすフーディン。振り切ってしまえば……

「んっ……おいっ! なんで腕を止めんだこの馬鹿野郎!」

 シードラに刃が降りかかる直前、オレはフーディンの腕を押さえつける。見た目はフーディンそのままでも、この状態を形作っている要素にオレ自身も含まれている。
 一方の意思のみで動くことはないようで、オレが拒絶すればフーディンも自由に動くことはできない。

「(もうやめろ! こんなの……こんなのおかしいだろ!)」

「こっちが気遣ってやったってのに……邪魔すんなへなちょこ!」

 そんなのわかってる。あのコウジって奴が仕向けたとはいえ、このシードラは生身のオレを襲う気だった。
 でも、ポケモンは戦いの道具なんかじゃない。人と同じように生きる、大切な命じゃないか。このシードラだって、誰かを傷つけるために生まれてきたわけじゃないはずだ。
 オレは、何も考えないで運命に振り回されたくなんかない。願う心があれば、きっと分かりあえる道もあるはずだ。
 この声はフーディンにしか聞こえない。でも、彼の心に強く訴えかけることで、それがきっかけで何かが変わってくれたらいい。
 オレの、シードラにとどめを指すことを激しく拒絶する意思により、変身は強制解除される。体が分離し思い通りに動ける代わりに、フーディンは技が使えなくなってしまう。
 それに怒りを覚えた彼は、細い茶色の腕で掴みかかってくる。こいつとは上手くやっていかなければならない。でも、こればかりは我慢できないんだ。

「選ばれし者だか、英雄だか知らないけど、誰かを傷つけてまで、オレはそんな奴になりたくねえんだよ!」

 もう後先のことなんてどうでもいい。思いっきりフーディンを突き飛ばすと、すぐに力なく倒れるシードラを抱き上げる。
 オレの言葉に、行動に、シードラは目を見開き、まるで天地がひっくり返ったかのような驚きを見せる。
 こんなことしてたら一瞬でやられるかもしれない。でも誰かを、それもポケモンを手にかけたら一生後悔する。
 愛しむように、恐怖に怯えすがるように、無我夢中でシードラを抱きしめる。目をぎゅっと閉じ、目の前に広がるのは無限の闇だ。

「お前……ありがとう。オレもその想いに応えるから……」

 そんなオレの視界に一筋の光が差し込む。夢中に抱きしめていたシードラの体が突然光だしたのだ。これはまさか……
 はっとして距離を置くと、シードラの体が光の中でみるみるうちに変化いく。間違いない。進化が始まったのだ。
 全身のヒレはその鋭さを失い丸みを帯びる。そして鋭い目つきは凛とした顔つきへと変化し、たくましいドラゴンタイプのポケモン、キングドラへと進化した。
 進化してオレやフーディンよりも大きくなったその背から見下ろすように、でも温かく、力強く頼もしく語りかけてくる。

「ツバサと言ったな。この力……お前のために使おう!」





----
[[ポケットモンスタークロススピリット 第5話「決意」]]
----
''あとがき''
今回は謎の人物4人の登場、そしてシードラとの戦いのお話でした。ツバサと同じ変身能力を持つ謎の人物4人ですが、厳密には同じ能力ではなかったりします。今後の展開にご期待ください。
シードラとの戦いは、戦闘シーンというよりはツバサの心情描写が立ちすぎたのが反省点ですね。ただ、まともに戦闘シーンばかりだと緩急がつかないので、その意味ではよかったかなと思っております。
展開がだいぶ遅いので、もう少し全体的にスピーディーに、かつ更新速度も上げられればと(苦笑)次回も頑張ります!

ここまで読んでくださりありがとうございました。
よろしければ誤字脱字の報告や、感想、アドバイスを頂きたいです。

#pcomment(above)

トップページ   編集 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.