writer is [[双牙連刃]] リクエストにもあったポケタンのリメイクでございます。主人公がピカチュウである事以外殆どを一新しておりますのでご注意ください。 それでは↓から、スタートにございます。 ---- 最近、この町ではある事件の被害が目に見えて増えてる。 神隠し、それまで町に居た筈のポケモンが忽然と姿を消す、そんな事件。 誘拐されて何処かに捕らわれている。大体はそんな噂が横行し始めて、学校への登下校にも、目立つ通学路には先生が立つようになった。 警察も動いてるみたいだけど、消えたポケモンが見つかった事はまだ無い。どうやら、昨日も一匹のポケモンが居なくなったみたいだ。 とは言っても、僕自身にどういう事がある訳でもないし、今日も僕は窓の外の雲の流れを目で追う。良い天気だ。 こんな日は屋上で昼寝でもしたいな。午後の授業、サボっちゃおっか。どうせウトウトしてたら勉強なんて頭に入らないし、よし決めた。 「ピカく~ん、今、なんのお話してたでしょーか?」 「警察組織が出来た経緯。初代警備隊の隊長はジバコイルで、その名残で警察にはコイルが多い、です」 「ぐっ、正解よ。もう、ちゃんとこっち向いて授業を受けてくれないかな?」 「聞いてるんだから問題無いと思うよ?」 こうやってふざけて見せるから生活態度に「協調性に欠けてる」的な事書かれるんだろうな。でも、良い子を演じるなんて僕には出来ない。詰まんないし。 ま、母さんも何も言わないし、気にしなくていいよね。実際は結構協調性あると……自分では思ってる。 おっとチョークが飛んできた。しっかり受け止めてっと。 「先生、学校の備品は大事にしたほうがいいよ?」 「君に投げても減らないから投げてるの。はぁ~」 ナンセンスだね、ミローネ先生。尻尾で器用に飛ばすのは尊敬するけど、そんな労力を僕に割いても無駄なのだよ。因みにミローネ先生はミロカロスね。 ま、これでもミローネ先生の授業は真面目に受けてる方だよ。午後のなんかサボる気だしね。 っと、良い感じでチャイムがなった。無事に授業終わりっと。 「はぁ……日直さん、号令を」 お決まりの号令と礼を済ませて、僕は先生のところへ行く。チョークを返しにね。 「はい、先生」 「……もぉ、授業中以外は良い子なのにね」 「ははは、僕は基本的に良い子だよ?」 「なら授業もきちんと受けてくれない?」 「やだ♪」 だってもう知ってる事しか出ないんだもん、ようは詰まらないんだよね。何で知ってるか? 母さんが聞いてもいないのに教えてくるから。 最初は学校の勉強をちゃんと聞いてるのか確認してくるだけだったんだけど、それがエスカレートしていって、家でも普通に授業を受ける状態になった。正直勘弁してほしいんだけど。 母さんの楽しみの一つになっちゃってるみたいだから止めてもくれないんだよね……僕がどんどん覚えていくのもそれを助長してるんだろうけど。 つまり、僕にとっては学校の授業が復習みたいなもの。そういう訳。 手の無い先生の代わりに、授業で使ってた物を持つ。こういうところで埋め合わせってね。まぁ、先生も普通に尻尾に引っ掛けたりして持ち運びしてるんだけど。 「そうだピカ君、君の友達の中で、居なくなっちゃった子って居ない?」 「最近の事件の事? ううん、僕の友達で居なくなった子は居ないかな」 「そう……」 「もしかして、この学校の子が?」 「……あなたは気にしなくていいの。って、こんな風に言ったら分かっちゃうわよね、君なら」 イグザクトリィ。そうか、先生方が立つようになったのにはそういう背景もあった訳か。 僕の知ってる限りでの情報は、神隠しにあったのはどれも大人になったポケモンばかりだった。でも、子供にも被害が出始めてるとなると、僕もちょっとは気をつけないとね。 「君の隣のクラスに、エーフィの牝の子が居るのは知ってる?」 「あぁ、可愛いって有名な子が確か居たね」 「その子が、昨日の夜からお家に帰ってないみたいなの。友達の家へ勉強に行くって言って出て行ったきりね」 「無用心な……」 「確かに。でもそうも言ってられないから、警察にも捜索をお願いしてるところらしいのよ」 こんな事件が起きてる以上、関連性を疑うのは間違いじゃないね。ただの家出とかならまだ可愛いもんだし。 「君も、夕方や夜に独りでうろうろしちゃ駄目よ?」 「母さんがそもそも許してくれないよ。先生も気をつけてね」 「本当にね……それじゃ、荷物ありがとう」 話してたら職員室に着いた。僕は入る必要が無いし、先生の尻尾に荷物を掛けてここでお役御免。 隣のクラス、ね。まぁ、護身の為に少し調べてみようか。 ---- 僕の名前はピカ・フレイボルト。牡のピカチュウで、まぁ面倒臭いのと詰まらない事が嫌いかな。 フレイボルトは名字だよ。『炎と雷』って意味。なんでか? 家族構成の問題だよ。 それは置いといて、とりあえずクラスに戻った訳で今はお昼休み。給食? 他の学校ではあるみたいだけど、ここはお弁当です。 で、いつも僕が昼ご飯を一緒に食べてるメンバーと屋上に来てます。危なくないかって? 大丈夫、柵に鼠返し付いてるから。 メンバーはこんな感じ、まずは……臆病だけどパソコンにめっぽう強いフラシィ・サンドライン、牡のサンド。鼠繋がりで仲良くなった僕の親友。 次はクラスで1、2を争う優等生バスター・ゲイルスノー。なんか僕に興味を持って話しかけてきて、話してる内に仲良くなった。牡のニューラ。 最後はこのメンバーの紅一点? キャル・グリーンベル。厄介事や事件とかが大好きな野次馬ツタージャ。 「なるほど、朝から先生方が立ってたのはそういう事だったのか」 「うぅ、隣のクラスの子が居なくなっちゃうなんて、すっごく怖いよぅ」 「何それ!? もう完璧に事件じゃない! こうしちゃいられないわ!」 話したらキャルは食いつくだろうなーとは思ったけど、とりあえず制止しておこう。やる事なんて分かりきってるし。 「キャル、この事調べようなんてしちゃ駄目だからね」 「えー、なんで?」 「多分その、一緒に勉強してた子を探し出そうとする気だと思うけど、どうやって特定する気さ?」 「そりゃあ片っ端から質問して……」 「で、先生方に見つかってお叱りを受けると」 「まぁ、キャルがやったらそんなところだろうね」 むくれても事実は事実。キャルはなんでも騒ぐからすぐに周りに気付かれるんだ。そんなんじゃ、効率も悪いし途中ストップが掛かるの当たり前。 聞き方とかアプローチを変えてこれは考えないとね。動くなら放課後だ。役割分担も出来るし。 「でも、ピカ君も調べるんでしょ? どうやるの?」 「フラシィ、ちょっと手伝ってもらいたいんだけど、放課後にパソコンで最近の事件について情報拾ってくれないかな? 噂とかも全部含めて」 「事件って、神隠しの? うん、いいよぉ」 「噂も……なるほど、それを元に誰かを特定する気か」 「まぁね。騒ぎを大きくしたくないし、その子も、僕達だけの内緒にするって言ったら話してくれるかもしれないでしょ?」 「えー? 今の話しちゃ駄目なの?」 「当たり前でしょ、何のために先生方が隠してると思ってるのさ」 それを言ったら、僕に話してるミローネ先生の立つ瀬が無いけどさ。ま、先生も僕が大袈裟にふれ回らないと思って話してくれたんだろうけど。 「それなら、居なくなった子の友達なんかのリサーチも必要じゃないか? 俺ならそれとなく聞けると思うぞ」 「流石クラス1のモテニューラ。そっちは頼むよ」 「じゃあ私は!?」 「騒がしくしなければ何しててもいいよ」 「ひっどーい! いいもん、勝手に色々調べるから!」 「先生に見つからないでよ?」 バスターに何故友達関係を調べてもらうか。ネットだとあくまで噂が蔓延してるだけだからね、種族を絞れたらそこから友達の種族をピックアップして特定しようって事。言わなくても分かる辺り、流石バスターだよ。 キャルについては……意外な事実って奴を拾ってきてくれるかもしれないし、ぶっちゃけ面倒だから放置で。 僕はフラシィと一緒に行動しようか。ネットの情報が集まったら整理しないといけないからね。 というか流れで皆を巻き込んじゃったけど大丈夫かな? まぁ、皆も結構乗り気だしいいか。 という訳で、これから僕はお昼寝タイム。放課後の為にも頭は休めておかないとね~。 皆に昼寝する事を伝えて、お昼休みの行動は終了。バスターとキャルは呆れてたけど、フラシィは一緒に昼寝したがってたかな。でもね、二匹もサボると流石に居場所がバレるから駄目♪ さて、寝て頭もスッキリしたところで、フラシィと一緒にネットから情報を漁ってるところ。ちゃんとキーボードが傷付かないように爪にカバーしてる辺り、フラシィの本気っぷりが窺えるね。 ずっとカタカタキーボード打ってるけど、僕なら途中で指がもつれるね。流石サイバーラットなんてあだ名が付けられる腕前。 「うん、学校のフィルター、やっと外せた」 「これバレない? かなり不味いと思うけど」 「説明すると長いからしないけど、シャットダウンしたら痕跡消せるようにしたからだいじょぶ」 「なんていうか……流石だね」 普通の方法じゃイン出来ないサイトにまで潜入してるって言ってたし、ここまで来たらもうハッカーだよね。 フラシィが検索してくれたサイトに順に目を通していく。なるほど、事件が発生したと思われる場所まで掲載されてる。これなら、僕の知りたい事もありそうだね。 ……あった、「消えた校内のアイドル」。多分これ関連の情報を探していけば、目星は付けられる筈だ。 消えるまでの行動? うわ、こんなのまで載ってる。す、ストーカー? なんか違う犯罪の予感もするけど、ここではスルーしておこう。 何箇所か見て、大体の目星は付けた。あとは、バスターの情報次第かな。 「ピカ、分かった?」 「予測は立てれたかな。ありがとフラシィ」 「えへへ、ピカの役に立ててよかったよ」 こうやって笑うと牝なんじゃないかと思うくらい可愛いんだよねフラシィって。隠れファンクラブなんてあるんだけど、フラシィには言った事無い。実害が出たら教えてあげるけど。 おっと話がずれるところだった。後はバスターが来るのを待つだけだ。 「そういえば……ピカ、ちょっと見て」 「ん? どうしたの?」 「各サイトで噂されてる被害現場をピックアップしてみたの」 「ふんふん……ん?」 「気付いた? これ、町の地図に当てはめてみるね」 うわ、なんかすっごいカタカタ音がしたと思ったら地図の略図と赤い点が記されてるグラフが出来てる。フラシィ凄過ぎるでしょ。 そして……赤い点は一箇所に殆ど集中してた。 「ここって、公園とその付近じゃないか」 「うん、どういう事なんだろ?」 この町には一つ、大きな公園があるんだ。住民の憩いの場って事で考えられて作られたのがね。 まさか、ここで何かしらの事が起こってるって事? だとしたら、何か残ってる可能性もあるかな……。 っと、そんな事考えてたら見慣れた影がコンピューター室に入ってきた。もちろん正体はバスターだ。 「どうだ、そっちの首尾は?」 「上々。そっちは?」 「とりあえず調べられるだけだ。ほら」 「あいあいっと」 バスターが投げて寄越したメモ、それにはかなりの量の名前と種族名が載ってた。流石人気者、友好関係も広いってことか。 「うわぁ、この中からピカの目星を探すの?」 「やるしかないでしょ。ま、ちょっと待ってて」 集中力はかなり掛かるけど、速読には自信あるんだ。メモ帳一冊くらいなら、三分あればいける。 ……居た、該当する一匹。種族は、ブイゼル。 「アーミ・クリアブルー、多分この子だ」 「はぁ~、大した速さだな」 「サイトでよくブイゼルって出てきたんだ。で、このメモにあるブイゼルの名はこの子だけ。消去法でこの子でしょ」 「すごーい、流石ピカだね」 「あぁ、この発想力は流石だな」 それほどでも。とにかく、これで質問する相手は分かった。後は、まだその子が学校に居るか、か。 ん? なんかバタバタ走ってきてる足音が聞こえるな。もしかして……。 「せいっ! やっと見つけた!」 「やっぱりキャルか」 「やっぱりって何よ! こっちはすっごい情報見つけてきたんだから!」 「期待してないけど、何?」 「なんと、今日居なくなった子はセレナだけじゃなかった! どーよ!」 セレナって誰? って聞いたら居なくなったエーフィの名前だった。その子以外に居なくなった子が? 「名前は? 調べてきたんでしょ?」 「アーミ・クリアブルー! 牝のブイゼルで、今朝学校に向かってから行方が……」 「なんだって!? アーミ・クリアブルー!?」 「ひゃ!? そ、そんなに驚く事でもないでしょ?」 ……仮定を立てよう。アーミとセレナは一緒に勉強する程度の仲ではあった。それが、自分と一緒に勉強する為か勉強した後に居なくなった。 そうすると、アーミは少なからず罪悪感を抱く。そして、セレナを探そうとした……。 「フラシィ、アーミとセレナの家の位置をマップに出せる?」 「え? ……うん、多分出来るよ。ちょっと学校のサーバーにアクセスする事になるけど」 「どうしたんだピカ?」 「僕の仮定が正しければ、アーミは居なくなった訳じゃない。そして、まだ何とかなるかもしれない」 時間は夕方……これが事件だとすると、被害が出てる時間は夜。まだ、ぎりぎり間に合う筈だ。 「お待たせ。これだよ」 「やっぱり……皆、急いで公園に行くよ!」 パソコンに表示された二つの点、それは、まさに公園を挟んでた。くそ、間に合うかな? 「ど、どうしたんだ!?」 「ちょっと! 説明くらいしてよ!」 「時間が無いんだ。走りながら説明する!」 「えぁ、……よし。待ってよ~」 パソコンの電源を落としてたフラシィだけ出遅れたけど、四匹全員で走り出した。仮定が外れてればそれでも良い。でも、嫌な予感がする。 走りながら僕の仮説を皆に話した。仲がよかった友達が自分の所為で居なくなってしまった。そう考えたアーミがとった行動は、きっと。 「自分だけでセレナを捜しに行った!?」 「そう、それなら居なくなった事にも納得出来る」 「で、でも、それでなんで公園なのよ!?」 「た、多分、近道になるから、セレナちゃんも公園を通ってたんじゃないかって事だよね?」 「ご明察!」 公園は広い、一匹のポケモンだけじゃ丸一日掛かっても全部は見れない可能性もある。林とかもあるからね。 それは僕達にも言える。時間帯的にバラバラに行動するのは得策じゃないけど、やるしかない。 夕暮れの町を僕達は全力で走り抜ける。お願いだから夕日さん、もうちょっとだけ出てて! 「はぁっ、はぁっ、着いた!」 「ふぅ……でも、日没が近いぞ!?」 「手分けして探そう! 何か見つけたりおかしいと思ったら大声上げること! いい!?」 「う、うん!」 「やばいわね……急ぐわよ!」 集合場所は公園の中央、噴水の前にした。よし、行くぞ! 僕は電気を使える。だから、薄暗い林の中は任せてもらった。日没が迫ってる所為でかなり暗いな……。 木々の間を縫うように進んでいく。目標はブイゼル、オレンジ色だ。 ん? 何か落ちてる。これは……ポーチ? 中には化粧品が数個入ってる。僕達くらいのポケモンはこんなの使わないだろうし、アーミの持ち物では無さそうだね。 くそ、暗い。これ以上この中を探すのは、かなり危険かもしれない。日ももう沈む直前だ。 「み、皆ー! 見つけたよー!」 「フラシィ? やった、凄いよ!」 急いで声のした方に走る。林を抜けたら、丁度皆が集まってきてるところだった。 公園の掃除に使われてる道具が納まった倉庫。その横の暗がりで、フラシィが呼んでる。 「フラシィ! あ……」 「多分、探し疲れて眠っちゃったんじゃないかな。この辺り、あまり誰も来ないから気付かれなかったんだね」 確かにフラシィの隣にブイゼルが眠ってた。よかった、怪我とかはしてないみたいだ。 よく見ると泣いた後が眼の所にある。やっぱり、セレナの事を探してたんだね。 とにかく、起こしてここから移動しよう。夕日も沈んだし、あまりここに長居するのは危険だ。 「起きて、起きてアーミちゃん」 「う、ん……あれ? ここは?」 「自分が何をしてたか、覚えてるか?」 「そうだ、セレナちゃんを探してて、ちょっと休もうと思って寝ちゃったんだ」 「君がアーミちゃんでいいんだよね?」 「そうだけど……君達、誰?」 あ、そうやって聞かれるとちょっと困るな。調べてて偶然君の事を知って助けに来た……としか言いようが無いよね? 「調べてたって? 何を?」 「君のクラスのセレナちゃんの事だよ。本当は、僕達が同じような事にならないように調べてたんだけど、色々あって君が居なくなった事も知って、ここに探しに来たの」 「そうなんだ……なら知ってるの? 私がセレナちゃんと勉強してた事も」 「うん、とにかくここから離れよう。歩ける?」 「大丈夫。うわぁ、真っ暗だ」 ……皆を急かして、とりあえずアーミちゃんの家に行く事にした。ここから一番近いのはそこだからね。 母さん心配してるかな? 後でアーミちゃんの家の電話とか借りて連絡しとこう。 とりあえず何事も無くアーミちゃんの家に着いた。神隠しを警戒してか、町中を歩くポケモンが全然居なくてちょっと不気味だったよ。 「えっと、あ、どうしよ……」 「ん? どうかしたのか?」 「そうか、アーミちゃんって行方不明になってたんだっけ」 「大丈夫じゃない? 帰ってきたんだから大丈夫でしょ?」 「事情の説明は僕達も手伝うよ」 だから、僕達の事は友達ってことにしてもらった。これなら家の中に入っても問題無いでしょ。 ま、入った途端にアーミちゃんのご両親が泣きながらアーミちゃんに抱きついたのは言うまでも無いでしょう。さて、説明タイムだ。 なんとか納得してもらって、暗いからって事で上がらせてもらった。母さんに連絡させてもらって……一時間くらい掛かるけど迎えに来てくれる事になった。もちろん公園の近くは通らないように言ったよ。 それじゃ、アーミちゃんに話を聞くとしようか。昨日何があったのかをね。 牝の子らしい可愛い内装の部屋、アーミちゃんの部屋に来てます。僕達四匹とアーミちゃんを合わせるとちょっと狭いかな。 「ねぇ、聞いて良いかな? どうして公園に居たか」 「え? セレナちゃんを探すためでしょ?」 「そうだけど、どうして公園だと思ったのかを聞きたいんだよね」 「……昨日、セレナと一緒に勉強してね、家の出口まで見送ったの。それで、そのままセレナは公園に入っていったんだ」 なるほど、勉強が終わるまでは一緒だったって事か。そして公園に入っていく姿を見た後、セレナは姿を消す。アーミちゃんが公園を探すのも当然だね。 なんでセレナが居なくなったのか知ったのかは、直接セレナの両親から電話があったからだって。行き先が分かってるんだから、電話があって当然か。 「それで、一日探した結果はどうだったんだ?」 「これ、見つけたの。セレナのお気に入りの耳飾り」 「太陽のトップが付いたピアスか……これは何処で?」 「公園の林の手前。そこにこれだけあったの」 公園の林……そういえば僕も、あの中でポーチを拾ったっけ。少し見てみようか? 「あら? ピカ、どうしたのそのポーチ」 「アーミちゃんを探してる時に林の中で見つけたんだ。中は口紅とかの化粧品ばっかり」 「ふーん……あれ? ピカ、その中に写真入ってるよ?」 「ん? あ、本当だ」 出してみると、それは写真じゃなかった。身分証明書かな? 一匹のサーナイトが写ったカードだったよ。 「わー、綺麗なサーナイトさん」 「これ、役所の役員証じゃないか。父さんが同じのを持ってたぞ」 「ふーん、つまり、このサーナイトさんは役所で働いてるんだ」 「俺なら父さんに聞けるし、調べようか?」 「そうだね、渡しとくよ。……取り上げられないようにね?」 「そんなヘマしないって」 バスターのお父さんは町の役所に勤めてる役員なんだ。僕も会った事あるけど、優しいマニューラさんだったよ。 しかし……これだけ何かあるとすると、あの林……怪しいね。 「……セレナちゃん、何処行ったんだろ……」 呟いたアーミちゃんは今にも泣きそうになってる。……乗り掛かった船、かな。 「ねぇ、明日って皆放課後に予定ある?」 「特に無いな」 「僕も無いよ」 「あたしはあるわね。って言っても、あんたのやろうとしてる事で、だけどさ」 「オッケー、林狩りに行くって事でいいよね?」 三匹とも頷いてくれた。このままじゃアーミちゃんも可哀想だもんね。この事件、もう少し調べよう。 「え? セレナを、探してくれるの?」 「見つかるかは分からないけど、怪しいところの目星があるからね。出来る事をやらないのって気持ち悪いでしょ」 「だな」 「うん」 「もっちろん!」 「な、なら私も一緒に行っていい? セレナを、見つけたいの」 満場一致で頷いた。ただし、学校には行く事って付け加えてね。 明日はこれで五匹行動だ。まずはバスターの調査を聞いて、行動開始だね。 「アーミ~、お友達の親御さんがいらっしゃったから降りてらっしゃ~い」 「あ、はーい」 「となると、今日は解散だな」 「だね。はぁ、母さん怒ってるかな?」 「フランマさん、ピカの事になるとすっごく心配性になるもんね」 「ちょっと過保護だと思うんだけどねぇ」 皆と一緒に一階に下りると、皆の親が勢揃いして、ついでに皆で怒られました。まぁ、当然かな。 でもそこまで怒られなかったよ。どうやらアーミちゃんのお母さんが事情を話してくれてたみたい。よかったよかった。 さて……。 「ピカ! もう、幾ら友達を探してたって言っても暗くなるまでする事無いでしょ!」 「うっ、ごめん母さん。でも、心配だったんだよ」 僕の言った事を聞いてたか分からないけど、僕は母さんの腕の中に捕まった。他の皆が見てるから止めてほしいんだけどな。 母さんの名前はフランマ・フレイボルト、牝のマグマラシ。おかしいでしょ? マグマラシからピチューが生まれるなんて。 実は、母さんは僕の本当の親じゃない。それどころか、まだ母さんなんて呼ばれる年ですらないんだ。働いてはいるけどね。 僕がピチューの時に、僕の事を助けてくれたのが母さん。僕は捨てられたのか、町の近くの原っぱで誰にも見守られずに孵ったんだ。 そうして生まれて彷徨ってる間に、母さんに逢って、それからはずっと一緒に暮らしてるよ。母さんも独り暮らしだったからね。 「も、もう帰ろうよ母さん。じゃ、皆また明日ね」 「あぁ、また明日な」 「フランマさんもさよなら~」 「明日学校でね!」 「えと、ピカ君。今日はありがとう。また明日ね」 皆と別れて、夜の町を母さんと一緒に進む。うーん、やっぱり出歩いてるポケモンは少ないな。 公園の横を通り過ぎながら、何か無いかと軽く辺りを見回す。……まぁ、昨日の今日で何かある事は無いか。 「そういえば、なんでさっき公園は通らないでなんて言ってきたの? 特に何も無さそうだけど?」 「最近物騒だから、公園なんて暗がりの多い所通ったら危ないかな、と思っただけ。母さんに何かあったら大変でしょ?」 「そういう事。でも、そう言われると確かに危ないわね」 「でしょ?」 母さんなら、仮に誰かが捕まえようとしても返り討ちにしそうだけどね……。だって前にこの町で開かれてバトル大会の一般の部で準優勝してたし。 母さんなら、仮に誰かが捕まえようとしても返り討ちにしそうだけどね……。だって前にこの町で開かれたバトル大会の一般の部で準優勝してたし。 とにかくお腹空いたな。今日はシチューらしいし、いっぱい食べて明日に備えよっと。 ---- 教室に入ったら、もう皆が待ち構えてた。いや、気合入り過ぎでしょ。 「ピカ、昨日のサーナイトな、やっぱり役員だったぞ」 「そっか、それで?」 「想定済みか。あぁ、やっぱり行方不明だった」 やっぱりね……これで何かあるのは間違いない。あの林が、事件の真相に繋がってる筈だ。 「うわぁなんかドキドキしてきたじゃない!? 私達が神隠しの真実って奴を見つけちゃうんじゃない!?」 「でも、僕達だけで大丈夫かなぁ? 警察のコイルさんに言ったほうがいいんじゃない?」 「まぁね。でも、アーミちゃんにも約束したし、今日は僕達で調べてみようよ」 アーミちゃんは隣のクラスだからね、お昼休みにでも様子を見に行こう。 おっと、そろそろ朝の会だ。席に座って待ってないと。 ん? あれ……ミローネ先生じゃない。あ、このクラスの担任はミローネ先生ね。 「日直、号令だ」 「先生、ミローネ先生は?」 「……今日はお休みになってる。どうやら、風邪を引いたらしい」 ……先生の間に、僕は嫌な予感がした。まさか、ミローネ先生も? 元々水タイプであるミローネ先生は寒さに強い。今はそんなに暑くないし、昨日も体調は良さそうだった。そんな急に学校を休むほどの風邪を引くとは考え難い。 緊急事態だし、悪い事だって言うのは分かってるけど、でも……。 朝の会は何事も無く終わった。一時限目までは約10分、行動を起こすなら今だ。 皆も同じように思ったのか、僕のところに集まってきた。 「ピカ、もしかして……」 「先生の歯切れの悪さからして、多分そうなんだと思う」 「じゃあ、ミローネ先生も? ど、どうしよう……」 「フラシィ、どうしようじゃないだろ? 今、事件の真相に一番近いのは俺達だ。そうだよな、ピカ」 「バスター分かってるね。皆、アーミのところに行くよ」 授業が始まるまでの僅かな時間だし、急いで動かないとね。 教室を出て、隣のクラスを覗くとアーミはすぐに見つかった。扉に近い後ろの席、ついてるね。 「アーミ、アーミちゃん」 「あれ? ピカ君? それに皆も、どうしたの?」 「ちょっと事情が変わってね、これからあの林に向かうんだ」 「えっ、もう一時限目始まっちゃうよ? それに、校門閉まっちゃってるんじゃ……」 「だからこっそり抜け出すの。一緒に行く? 聞く事無いかもしれないけど」 「……うん、行く。連れていって」 隣のクラスも授業前はお喋りしたりトイレに行くポケモンが居る。それに紛れてアーミちゃんも抜け出した。事情は抜け出しながら説明しよう。 さて、ここからは慎重に行動しないとね。先生や用務員さんに見つかったらアウト、教室に逆戻りだ。 校門へ行くのは目立つから駄目だろ、裏門から抜けるのが一番かな。よし、決めた。 皆を誘導しつつ、裏門へと進んでいく。もう授業は始まっただろうし、気をつけるのは用務員さんだけだね。 「こういうのやらせるとピカって本当に上手いわよね」 「それはどうも。よし、ここを抜ければ裏門だよ」 その前には……誰も居ないね。裏門はもちろん閉じてるから、僕とバスターで皆を引き上げる。下からは、フラシィに持ち上げてもらおう。 最後のフラシィをキャルの蔦で持ち上げてもらって、それを僕等で引き上げる。よし、これで全員脱出成功。 「っはぁ! もう、か弱いツタージャにこんな事させないでよ」 「しょうがないでしょ? 腕届かないんだから」 「俺がピカを掴んで引っ張り上げるって手も無くはなかったがな」 「それ僕が大変な事になるでしょ」 喋ってないで早く移動しないとね。目指すは公園、林の中だ。 五匹で町の中を進むのはちょっと目立つけど、学校ほど見つかっちゃいけないって事は無い。自分達の親以外にはだけど。 よし、公園到着だ。昼間だからポケモンも結構居るな。 「昨日は私、林の中までは入らなかったんだよね。暗くて、怖くなっちゃって」 「妥当な判断だな。が、今日はここに入らないとならないんだな」 「うん、皆、周りに注意しながら行くよ」 「うふふふ、ワクワクしてくるじゃない」 「キャルちゃん、楽しんじゃ駄目だよぅ」 昨日は夕方で真っ暗だったけど、今はまだ朝の9時、視界は悪くないね。 でもやっぱり薄暗い……昨日はがむしゃらに歩き回ったし、ポーチ拾ったところは分からないや。 「入ったはいいが、どうする? 闇雲に探して何かあるとは思えないぞ?」 「せめて、昨日ポーチを拾ったところとか分かればいいんだけどね……」 「なんだ気付いてなかったの? てっきり気付いて歩いてるのかと思ってたんだけど」 「へ? キャル、何か気付いたの?」 「足元見てみなさいよ」 ん? あ、これって……。 「足跡、か?」 「それに、何か引きづったような跡もあるね」 「どー見ても何かあるって言ってるようなものじゃない? どんどん行きましょー!」 こういう目聡さはキャルの十八番だね……足跡と引きづったような後はまだまだ続いてる。この先、何があるんだろ? 足跡を辿って林の中を進む。結構広めに作られてるだけあって、端に着くのにはまだ掛かりそうだな。 「あれ、ピカ君見て」 「ここで足跡が途切れてる……でも、放課後まで待たなくてよかったね」 「あぁ、引きづった跡は不自然に途切れてる。フラシィ、ちょっと手伝ってくれ」 「え? どうするのバスター君」 「爪を引っ掛けて欲しいんだよ。その切れ目のところにね」 二匹が割れ目に爪を差し込むと、そこだけ地面が僅かに浮いた。こんな物、一体何時作られたんだ? 「これって……」 「隠し、通路?」 「蓋の上に丁寧に偽装までしてる辺り、後ろめたい物である事は確かだな」 「じゃ、じゃあこの先に?」 「まだそうと決まった訳じゃないけど、可能性は高いんじゃないかな? 僕が先行するよ。バスターは一番後ろをお願い」 「分かった、皆は俺とピカの間に」 中は、明かりは無いけど真っ直ぐの一本道みたいだ。何処まで続いてるかは分からないな。 足元を確認しながら焦らずに進む。ん? 何か落ちてる。 「これは?」 「何か見つけたのか?」 「うん。でもこれ、なんだろ? 鍵みたいだけど」 「これ僕知ってるよ。ディンプルっていう新しい鍵だったと思う」 ふーん、新しい鍵ねぇ……。 「ねぇアーミちゃん、公園の近くで一番新しい建物って分かる?」 「アーミでいいよ。えっと……あ、確か新しくお菓子屋さんが出来てた。でも、元々あった建物を新しくしたって聞いたよ」 ……なるほどね。 「そこにここは繋がってるのか?」 「だろうね。鍵からちょっとバニラみたいな匂いがするし」 「って事は、そのお菓子屋さんが犯人って事?」 「言い切れないけど、関わってるのは確かでしょ」 ここに鍵が落ちてるのが動かぬ証拠ってね。これは僕が持っておこう。 「っていうか、ここまだ続くの? いい加減暗いのには飽きたんだけど」 「そうは言っても……ん、でももう終わりみたいだよ」 「あ、明かりが漏れてる。終点かなぁ?」 「のようだな。少し様子を見てみるか」 バスターの行動力には本当に助かるよ。明かりが漏れてるところは、どうやら扉みたいだね。 キャルは何とも無いみたいだけど、アーミはやっぱり怖かったかな。ちょっと震えてるみたい。 「アーミ、ちょっとだけ手繋いでいこうか」 「え? う、うん……」 「大丈夫だよ。皆一緒だし、僕もバスターも結構戦えるから」 「そうなんだ……ありがとう、ピカ君」 「ピカでいいよ」 バスターが手招きしてるから、明かりの中へと進む。若干フラシィが羨ましそうに見てくるのが気になったけど、ここでは気にしないで行こう。 ここは……何処かの地下室みたいだね。漏れてきてたのは蛍光灯の明かりだったんだ。 「おぉー、それらしい感じになってきたじゃない」 「キャル、あまり浮かれないでよ。ここはもう相手の敷地内なんだから」 「で、でもピカ? あの通路がここに繋がってたって言っても、居なくなったポケモン達がここに居るのかなぁ?」 「……それは、自分の目で見てみれば分かるぞ、フラシィ」 「え?」 バスターは一つの部屋の前に居た。ここにあるのはバスターの居る扉とあと二枚の扉、それと上への階段だけ。 中が見えるように小窓が付いてる。後は……鍵穴と取っ手だけだ。 んと……あ、あれって……。 「ミローネ先生……」 「あ、セレナ!」 「じゃ、じゃあやっぱりここが……」 「神隠しの正体見たり、だな」 「ちょっとピカ、見てないで拾った鍵試してみなさいよ」 おっとそうだった。って、試すまでもないと思うんだけどね。 うん、入りすらしない。だってこの扉が閉じれたって事は、ここの鍵はまだ先生達を閉じ込めた奴が持ってるって事でしょ? 「駄目か」 「うん。ここで大声も出せないし、先生方は後にしよう」 「え? いいの?」 「鍵が無い以上どうしようもないし、声を出して誰かに聞かれても不味いでしょ?」 「なら鍵を探すか……」 繋いだ手からアーミの震えが伝わってくる。これは怖いからじゃない、怒ってるからだ。 友達をこんな目に遭わせた相手……許せる訳ないよね。 でもここで出来る事は無い。行けるのは階段だけだし、そっちへ行くしかないか。 音を立てないようにそぉっと階段を上る。コンクリート製だし、軋みを上げることは無いだろうけどね。おっと扉だ。さっきと同じようにバスターが様子を窺ってくれるみたい。 ……さっきの先生方、大分時間が経ってる筈なのに眠ってるようだった。多分何かしらの技を掛けられてるんだろうな。それから察するに、相手はエスパータイプ。油断出来ないね。 「! 誰か居る」 「あれは……ブーピッグだな」 部屋の中の様子からして、ここはお菓子を作ってるところみたいだ。そっか、売り物のお菓子を取りに来たところだったんだ。 よし、居なくなった。……ん? この鍵穴……あ、僕の持ってる鍵でぴったりだ。なーるほど。 「……! 鍵束みーっけ!」 「お? キャルナイス!」 よし、キャルが鍵を手に入れた。これで下の扉を開けられる筈だ。便利な蔓だなぁ。 ここは一旦引き返して、先生方を起こそう。どうしてここに居るか分かれば、それを証拠に出来る。 鍵は……よし、開いた。 「セレナ!」 アーミがセレナの傍に行った。向こうはアーミに任せようか。 先生の息は……大丈夫、眠ってるだけだ。催眠術でも掛けられてるのかな? どうやらあっちもそうみたいだ。先生方から話を聞くのは駄目そうだな……。 「! 不味いピカ、誰か降りてくる!」 「え!? どどどどうしよう!?」 「……丁度いいや。これがどう言う事か話を聞こうじゃないか。ここに来る誰かにね」 階段を降りてきた相手は、そのまま僕達に姿を晒した。やっぱりブーピッグか。 「な、お前達は誰だ! どうしてここに居る!?」 「さぁ、何処だろうね。心当たりはあるんじゃない?」 「……まさか、公園からここに来たのか!? 馬鹿な、見つかる筈は……あ」 「……自白、だな」 「あなたがセレナに酷い事したのね! 許さないから!」 「おっと熱くならないでアーミ。まずは聞こうか、何故こんな事をしたのかを」 相手のブーピッグは僕達に不味い物を見られて明らかに動揺してる。揺さぶるなら今だ。 「な、なんの事だ?」 「とぼけられる状態か考えてから発言しなよ? どうして行方が分からなくなったポケモン二匹がここに居るのさ?」 「そ、それはだな、……そう、道端に倒れていたのを見つけて、ここに保護していたんだ」 「なら何故警察に届けない? 不自然だな」 「ぐっ……」 「それに、保護しただけなら閉じ込めておく必要は無い筈だよね? それも上のお菓子屋じゃなくこんな地下に運んでる。どういう事かな?」 僕とバスターの問い掛けに答えは無かった。代わりに、ブーピッグの目が光った。何かしらの技を使うつもりだな。 「……眠れ!」 「残念! バスター!」 「へっ? ふわぁぁぁ……ぁ……」 「何!? 眠……く……」 「きゃあ! ピカ……く……」 流石にバスター以外の皆を逃がす暇はなかったか。バスターは僕の声に反応して、力の効果範囲から逃れたみたい。 「ちっ、二匹逃がしたか」 「実力行使に出たって事は、認めるんだね?」 「あぁそうさ。神隠しなんて嘘っぱち、ぜーんぶ俺が攫ってたんだよ」 「下種が……なんでこんな事をした」 「なーに、この町に越してきて偶然こいつを見つけたから利用したまでよ。この町の奴等と来たら、俺の事なんてだーれもしりゃしないんだからお笑いだぜ」 ってことは、何かしらの裏があるポケモンって事か。後で調べてみるとしようか。 「オッケー、犯罪者。捕まって鉄格子の中に入る心の準備は出来た?」 「誰がてめぇらみたいなガキに捕まるかよ。牡か……何処ぞに売り払えば良い金になりそうだな」 「最低だな。容赦する必要もないだろう」 「さっさと倒して、警察に引き渡さないとね」 ぐっと足に力を溜めて、一気に前に出る。こっちは二匹、やられる心配なんて無いね。 さっきと同じように、ブーピッグの出してきたのは催眠術。……あれ? ブーピッグって催眠術使えたっけ? まぁいいか。 完全に僕達の反応に対処出来てない。体育の成績優良者を舐めないでほしいね。 「一気に決めるぞ!」 「当然!」 ブーピッグを左右から挟むように位置取って、同時に仕掛ける。狭いから間合いを詰める必要が無くて楽だよ。 オロオロしてる暇なんか無いよ? どうせだったら一矢報いれば? ま、もう遅いけど」 「せいっ!」 「終わりだよ!」 「なっ、うぎゃあぁぁぁぁ!」 バスターの乱れ引っ掻きと僕のエレキボールがほぼ同時にブーピッグに当たった。これで立ってくれば大したものだよ。 おっとそのままダウンだね。ま、僕とバスターのコンビなら、大人だって単体なら落とせるさ。 「せいぜい反省するんだな。己の行いを」 「さて、皆の回復もしないとね。あと警察へ連絡」 「菓子店なら木の実くらいあるんじゃないか?」 「そうだね、それ頂いちゃおう」 えーっと、まずは皆を部屋の外へ出して……それでこいつを放り込んで部屋の鍵を閉めちゃえばもう平気だね。 やれやれ、ちょっと調べるつもりで探り出したんだけど、結局真相まで暴く事になっちゃったか。 でももうこれでこの町で神隠しが起こる事は無い。神様だって、こんな奴の代わりに犯人に仕立て上げられるのは不本意だろうしね。 ---- その後、僕達の連絡によって駆けつけた警察官によってブーピッグは拘束された。まさか、連続強姦容疑と奴隷売買の容疑者だったとは思わなかった。 警察のデータベースにはあったみたいだけど、指名手配のリストには無かったんだって。思わぬところで警察の職務怠慢も見つかったってしばらく騒ぎになったよ。 僕達はもちろん褒められ……なかった。ま、学校抜け出してこんな事やってれば当然だよね。 でも、目が覚めたミローネ先生からは怒られた後に泣きながらありがとうって言われた。まぁ、よかったかな。 ……でも、助けられたのは先生とセレナだけ。他の行方不明者はもう、ブーピッグの被害に遭った後だった。地下の別の部屋で全員が見つかったよ。 牡は痛めつけられて、牝は……ね。でも、死んじゃったポケモンはいなかったみたい。 「酷い奴だったんだな、あいつ」 「本当にね。何とかなって本当に良かったよ」 「も、もしピカとバスター君がやられちゃってたら、僕達どうなってたのかな?」 「あいつの口ぶりからして、どっかに売られちゃってたんだろうね」 「あぁ、そんな事言ってたな」 フラシィの顔が凍りついた。ま、青ざめて当然の話か。 屋上でお弁当を突きながら話すのも三日ぶり。この三日間? こってり絞られた後に警察で話をしたのがあの日で、それから二日間は自宅謹慎って奴に処されました。 でもそれは口実で、事件を解決させた僕達への特別休みって位置付けだったみたい。ミローネ先生がさっきそっと教えてくれた事実です。 でも僕には悪夢の二日間だったよ……ずっと母さんの手伝いさせられながらお説教とお褒めを受ける事になったからね。因みに母さんの仕事はガラス細工作り。 「とーう! 華の無い食事風景ねまったく!」 「キャルが増えても変わらないと思うけど」 「なんですってー! ま、いいわ。今日は私だけじゃないし」 「あの……私も一緒に食べて良いかな?」 「あれ、アーミ? うん、もちろん良いけど」 よかったって言って笑ったアーミ、普通に可愛かったです。ありがとうございます。 でも急にどうしたんだろ? クラスで仲の良い子……そうそう、セレナとかと一緒に食べればいいのに。 「そうだ、セレナの様子はどうだった? 僕達と一緒で、今日から学校に来てるんでしょ?」 「それが、まだショックで家から出れないみたいなの。凄く怖かったみたいだから、今日も会いに行ってあげるんだ」 「それも仕方の無い事だな」 「私達も会いに行ってあげましょうか? どうなってたか知ってるのって、私達だけでしょ?」 「そうだね、そうしようか」 「皆……ありがとう」 「だって、僕達もうアーミちゃんの友達だもんね。セレナちゃんとも友達になってあげようよ」 「ま、セレナちゃんがよければね」 この事件でよかった事、全然無かった訳じゃなかった。僕達には、大切な友達が増えたんだから。 探偵、か。あぁ、僕達が今日学校に来た時にそうやって冷やかされたの。そんな大したものじゃないのにね。 正直もう事件とか危ない事に首を突っ込むのは御免だよ。怒られるばっかりだしね。 そういえば今日、警察署に来いって言われてたっけ。なんか先生も引率するらしいし、今度は何を言われるのかな? とにかく、もう探偵なんて役はこれっきり。……でも、また面白そうな事があれば、調べるだろうけどね。 「ピカ君、隣座っていい?」 「いいよ。あと、僕の事はピカでいいったら。僕もアーミって呼びたいし」 「そうだね。えへへ」 な、なんか皆にニヤニヤされたけど、とにかくお昼ご飯食べちゃおっと。 ---- はい、新しくなったポケタンはいかがでしたでしょうか? 個人的に、調査や推理を増やしてみてそれっぽくしてみたのですが……こういうジャンルは難しい! 続編は、多分ありません。(ネタが無い限り) この下はコメントエリアになります。ここまでお付き合い頂きありがとうございました! #pcomment IP:153.220.42.52 TIME:"2015-04-30 (木) 11:09:34" REFERER:"http://pokestory.dip.jp/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%83%9D%E3%82%B1%E3%82%BF%E3%83%B3%EF%BC%81" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; Trident/7.0; rv:11.0) like Gecko"