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プロローグ 霧雨の中で の変更点


writer is [[双牙連刃]]

はい、この作品は黒歴史内の『幻影の少年』のリメイク作にございます。
リメイクにあたってリメイク前を読みまして…過去の私に何があった!? と言わんばかりの散らかった内容だったので、現在のスキルでリメイクするとどんなもんかな? と思ってリメイクを始めた次第です(他に書かないとならない作品あるだろ)。
今作は三人称視点でお送り致します。私の普段の一人称? 視点の作とは違った感覚で書いておりますので、粗い部分があるのはお目こぼし頂ければと思います。それでは…

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 しとしとと降り頻る雨の中、泣きじゃくる女性とその女性の肩を支える男性が一組。傘もささずに歩き続けている。
女性の涙は降る雨のように、止まる事無く流れ続けていた。

「大丈夫、子供を授かれないとしても、俺達は夫婦だ。そうだろ?」
「でも、でも……!」

 辛く悲しい事実を突き付けられた女性に、男性は優しく語り掛ける。それでもなお、女性の悲しみは収まるところを知らなかった。
大切な存在だからこそ、二人の愛の結晶を授かりたい。そう思うのはごく自然な事。さりとてそれが出来ないと告げられれば、女性の悲しみは如何程か、計り知るにはあまりにも悲しみは深い。
空は勢いを変えず、二人を打ち付けはしないが……止まない霧雨を降らせ続ける。霧雨の中を一組の男女は、まるで抜けられないトンネルの中を彷徨うが如く、その重い足取りを、それでも前へと進めていた。
そんな二人の前、歩く国道の脇の茂みが揺れる。男性はそれに気付き、女性を庇える姿勢に入った。

「え? コウジさん?」
「待って。……何か居る」

 そっと女性が男性の影に隠れる。男性は、更に警戒を強め茂みに身構えた。
が、その警戒は思わず薄れさせられる。茂みから飛び出した……いや、力無く姿を表したと言った方がいいポケモンによって。
よろめきながら姿を見せたポケモンは、そのまま濡れる地面に体を横たえた。動けず、虚ろに二人を見上げている。

「これは……」
「この子、どうしたのかしら?」
「弱ってるのは、確かかな?」

 倒れたポケモンに、男性の背から姿を出した女性が手を伸ばす。それを男性は止めようとしたが、女性の方が動くのは早かった。
抱えられたポケモンは暴れる事も無く、女性の腕の中に包まれた。虚ろな瞳に、女性の姿はどう映っているのだろうか?
その内、女性の温かさが伝わってか、ポケモンの瞳はゆっくりと閉じられていく。まるで、母に抱かれた子のように。

「眠っちゃったのかしら? でも、なんだかこの子、少し苦しそうだけど」
「倒れるくらいだから、間違い無く弱ってるんだろうね。暴れはしないだろうけど、どうしようか?」
「どうしようって……助けてあげないと! このままじゃこの子、手遅れになっちゃうわ!」
「あ、あぁ……それならポケモンセンターへ」

 女性を連れ立って男性がまた歩きだそうとすると、女性の腕の中に変化が起こった。眩い光が、女性の腕の中のポケモンを包み始めていたのだ。

「な、何!? これは!?」
「ど、どうしたんだ!?」

 光はしばらくして止んでいき、眩んでいた二人の目が元に戻った時、二人の目には驚くべき事が飛び込んできていた。
女性の腕の中に居たポケモンは、そこには居なかった。しかし、女性の腕の中には確かに一つの命があった。

「これって!?」
「な……これは、人間の赤ん坊!?」

 そう、女性の腕の中に居たのは、紛れもなく人間の赤子。雨の冷たさに震える小さな命だった。

「どうなってるんだ? 一体……」
「コウジさん、今はそれどころじゃないわ! 早くなんとかしないと、この子が!」
「そ、そうだね。とりあえず病院……よりは家の方が近いか。行こう!」

 見知らぬ赤子を抱えて、二人は家路を急ぐ。そんな二人にも、霧雨は降り続けていた。
しかし、空は僅かにその明るさを増し、やがて来る雨の上がる時が来るのを予感させていた……。

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 部屋の暖房が動き、温められた空気が部屋に満ちる頃……二人によってこの家に運ばれた赤子は、白いバスタオルに包まれて女性の腕の中に居た。
雨に濡れ冷え切った体は丁寧に拭かれ、体が温まってきたのか、その頬には赤みが戻ってきていた。

「良かった……でも、この子は一体何処から来たのかしら? それに、あのポケモンちゃんは何処に?」

 疑問を口にする女性の後ろで扉が開く。その開いた扉を抜けて、タオルで頭を拭いている男性が入ってきた。どうやら冷えた体を温める為に、入浴をしてきた後のようだ。

「ふぅ、済まないね先に頂いちゃって。その子は俺が見てるから、君も入っておいで。その子も心配だが、君も風邪なんか引いたら不味い」
「そうね。じゃあ、お願いするわ」
「あぁ」

 女性から赤子を受け取り、男性は入浴へ向かう女性を見送った。女性が部屋を後にすると、男性はゆっくりとソファーに腰掛け、視線を赤子へと移す。

「さて……どうしたものかな? とりあえずこの子は眠ってるみたいだが……おっと」

 呟く男性の声が聞こえたからか、今まで閉じられていた赤子の目が開いた。虚ろな様子も無く、捉えてからは真っ直ぐに男性を見つめている。

「お目覚めだね。うん、どうやら元気にはなったのかな?」

 それに答えるかのように……かは分からないが、赤子の顔がみるみる曇っていく。そしてそのまま、わんわんと泣き始めてしまった。
これに男性は驚いた。子育てをした事の無い男性だと言われれば、当然と言えば当然の反応なのかもしれない。

「うぉっと!? な、なんだ? どうしたんだ?」

 問い掛けたところで、赤子から返事が返ってくる訳も無い。つまり、状況から判断して、赤子の求めている物を導き出さねばならないのだ。

「えっと……お腹が空いてるとかかな? でも赤ん坊にあげられる物なんて家にあったかな?」

 慌てて冷蔵庫へ向かい、中を漁る。そして、男性が掴んで出した物は牛乳だった。

「これなら……あ、でも冷たいままあげるのは確か危険だよな? 確か粉ミルクとかも人肌くらいの温度で与えるとか聞いた事があるし、なんとかしてみるか」

 所謂うる覚えの知識ではあったが、他に方法の知らない男性は、とりあえず思いついた方法を実践する事にしたようだ。
牛乳を鍋に移し、コンロに火を付ける。無論赤子を火に近付ける訳にもいかない故に、赤子はソファーの上に一先ず横にされている。油断ならないと思っているのか、鍋を火に掛けながらも男性は赤子の方をちらちらとしきりに警戒している。
赤子は以前わんわんと泣き続けており、それが男性の焦燥感を煽る。だからだろうか、鍋への意識が疎かになり、鍋の中の牛乳はコトコトと音を立てる程にまで温められたようだ。

「わっと!? しまった、少し熱くし過ぎたかな? ……仕方無い、なんとか冷ましながら飲ませてみるか」

 温めた牛乳を更に移し、男性は小さなスプーンを用意した。育児に備えた用意の無いこの家では、あらゆる物で代用していく以外に赤子を世話する方法が無いのだ。
赤子を抱き直し、ソファーに腰掛けて牛乳を掬う。それを冷ましていき、男性は冷ました牛乳を何度か自分の唇に触れさせた。もちろん飲む為ではなく、牛乳の冷め具合を測る為に・
 温めた牛乳を皿に移し、男性は小さなスプーンを用意した。育児に備えた用意の無いこの家では、あらゆる物で代用していく以外に赤子を世話する方法が無いのだ。
赤子を抱き直し、ソファーに腰掛けて牛乳を掬う。それを冷ましていき、男性は冷ました牛乳を何度か自分の唇に触れさせた。もちろん飲む為ではなく、牛乳の冷め具合を測る為に。

「……ん、このくらいでどうかな? ほら、お飲み」

 男性がスプーンを差し出すと、それまでは火が付いたかのように泣いていた赤子は泣くのを止め、差し出された牛乳を口に含んだ。
それが熱すぎれば、赤子はそれを即座に吐き出していただろう。しかしそんな事は無く、次に赤子が口を開くと口の中は空になっていた。

「よぉし、良い子だ。ちょっと待ってくれよ? 今次をあげるから」

 赤子の反応にホッと胸をなで下ろしたのか、男性の顔も綻んだ。口を開けている赤子も、何処か男性に気を許しているようだった。
牛乳を与えられた赤子は、次第に調子も良くなってきたのかもう泣く様子は無かった。それどころか、男性に笑い掛ける程になった。

「あ……ははっ、参ったな。子煩悩って事は無い筈なんだけど、こういうのは悪くないかな」
「本当……とっても可愛い」
「おっと? なんだ、戻ってたのかい?」
「えぇ。あなたが一生懸命だったから、つい声を掛けないで見てたの」

 男性が顔を上げると、そこには女性の姿があった。穏やかな笑顔で赤子を見つめる顔は、正に母親のそれであった。
用意された牛乳を一頻り飲み、赤子はその瞼を微睡みさせ始めていた。その様子を見て、女性は男性から赤子を受け取る。
赤子を男性が渡すと、女性は赤子の背をそっと叩く。赤子は牛乳と一緒に飲み込んでいた空気を吐き出し、またその目を閉じる。

「流石の手際だね」
「……病院で妊娠出来ないって聞いた時は、こうしてあげられる子とは、もう出会えないと思ったのだけどね」

 女性に抱かれた赤子は、穏やかな寝息を立て始める。その姿はまるで、本物の親子のように見えた。
その様子に、男性は安堵していた。病院からの帰り、深い悲しみに苛まれていた彼女はもう居ない。子供を慈しむ、母親の顔をした彼女がそこに居たのだ。

「……でも、この子は一体何処から来たのかしら? それに……」
「君が抱いていたあのポケモンは何処に行ったか、だね。……もしかしたら、この子が?」
「だとしても、今この子はこうしてここに居るわ。人として」

 男性は女性の一言によって、彼女がどういう覚悟を持ったのかを理解した。そして、それに自分はどう答えるべきかも。
二人は寄り添い、共に女性の腕の中の子に笑い掛ける。そして、二人は一緒に口にした。

 ――この子を、二人で育てよう、と……

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 そして、この出会いから10年の時を越えて……一つの物語の幕が上がろうとしている。
その物語は、何かを失い、何かを追い求め、大切な何かを見つける物語。たった一人の少年が仲間と共に駆け抜ける、一つの物語。
回りだす歯車の先に何が待ち受けるのかは……その先を目指す者達にのみ、見い出せる。

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~後書き~
 自分が築いてきた書き方って大事…はい、今作書くのがめっちゃ大変ですorz
第一に、私の作品がメインのキャラに喋らせて進むっていう書き方になったのは三人称での進め方がイマイチもっさりしてしまうからでありそれを自分でやってるんだから大変なのは当然ですよね、HAHAHA
でも自分の書き手としてのスキルアップ、並びにマンネリ化を払拭する為に手を付けた以上、不定期更新ですが頑張りたいと思いますです、はい。
ここまでお付き合い頂けた皆様、本当にありがとうございます! 拙い書き手ですが、これからもまったりと付き合って頂ければ幸いにございます!

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IP:153.220.42.52 TIME:"2015-04-30 (木) 12:08:07" REFERER:"http://pokestory.dip.jp/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%80%80%E9%9C%A7%E9%9B%A8%E3%81%AE%E4%B8%AD%E3%81%A7" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; Trident/7.0; rv:11.0) like Gecko"

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