長くなりそうです…。グダグダ感も高いので注意してください。 作者 [[フィッチ]] [[1>#sonoiti]] [[2>#sononi]] [[3>#sonosan]]※最新の更新です [[3>#sonosan]] [[4>#sonoyon]]※最新の更新です 大変遅くなりました。しかしまだ終わっていない上だんだんクオリティが酷くなっていきます。 ついでに15000文字超えました。ここまで続く文章を書くのは初めてです…。 ここで一旦執筆をやめて別作品に取り掛かります。完結はさせますのでしばらくお待ちください。 ---- #aname(sonoiti); 「ねーねーサンダースお兄ちゃん、ハンバーグとサンダースって似てるよね」 サンダースに並んで歩いていたイーブイがふと話しかける。 「名前の響きは……確かにそうだな。お前、今日がハンバーグの日だから言ってるんだろ?」 サンダースは苦笑する。 「うん! ハンバーグの事考えてたら気付いたんだ! お兄ちゃん、今日の夕ご飯楽しみだね!」 「ああ。俺達ブイズはみんな好きだからな」 この家では月に一度ハンバーグが出る。普段は安物のポケモンフーズを食べているブイズ達にとっては最高のご馳走だ。 「さっさとひき肉買って帰ろうぜ。ったく、あの時右のカードを選んでれば……」 どうやらサンダースはひき肉を誰が買うかのババ抜きに負けてしまったようだ。 「そう? 僕はお兄ちゃんと一緒に買い物ができて楽しいよ!」 今サンダースとイーブイはハンバーグ用の肉を買うために肉屋目指して歩いている。イーブイが財布入りのポーチをつけているため野生のポケモンと間違われる事はない。 「いいかイーブイ、そのポーチは絶対になくすなよ。あと何があっても俺から離れるn……」 サンダースがイーブイのいた方を見るがイーブイの姿は無い。 「お兄ちゃーん、こっちこっち!」 声のした方を見るとイーブイが公園の前でにっこりして尻尾を元気よく振っている。 「ねーお兄ちゃん、公園で遊んでいい?」 「駄目だ、さっさと行くぞ!」 サンダースはややきつくイーブイに言った。するとイーブイはたちまち泣き顔になり、 「うう……、お兄ちゃんが怒った……、怖いお兄ちゃんいやだよぉ……」 「……」 サンダースは泣き始めたイーブイをしばらく見ていたが、ため息をついてしょうがないな……と小声で呟いた。イーブイに根負けしたようだ。 「分かった、10分間だけな」 「わーい! お兄ちゃんありがとう!」 さっきの泣き顔はどこへやら、イーブイは嬉しそうに滑り台に向け走り出した。 「うわーい! 楽しいー!」 滑り台に背中から滑り降り、降りてすぐ階段を上りまた滑る事を楽しそうに繰り返すイーブイ。 「やれやれ……アイツもまだ子供だからな。これからの将来どの進化先を目指すか楽しみだな」 「ねーねー、お兄ちゃんも滑ろうよー!」 イーブイは木の下で座り込んでいるサンダースに呼びかける。 「いや俺はいい。それよりもうそろそろ10分経つぞ」 「えー、もう?」 イーブイはさみしげに滑り台を滑り、サンダースの元に走る。 「満足したか? さて、あいつらが首を長くして待ってる。急いで店に……」 「おや、こんな街中にイーブイとサンダース……珍しいですねぇ」 サンダースが即座に振り替えると、そこには黒いスーツ、黒いマント、顔に白い、不気味に笑う表情をしているマスクをつけた男の姿があった。さらにその男の背後には同じく黒いスーツを着たサングラスの男が2人、ついでに黒い車が1台停まっている。 「この付近じゃ見かけないな……何者だよ?」 サンダースは警戒態勢を取り、イーブイはサンダースの後ろに回る。 「おっと、そう警戒なさらずに……。私(わたくし)、現在イーブイとその進化形を探しているのです」 マスクの男は丁寧に話した。だがサンダースは警戒を解こうとはしない。 「イーブイのポーチ見て分かるだろ? 俺達はトレーナーのポケモンだ。……流石に分かってるか。お前達、ポケモンハンターだろ?」 マスクの男の表情は分からない。だが恐らくにやり、と不吉な笑みを浮かべている事だろう。 「ええ、私どもはポケモンハンターですよ。よく分かりましたね」 「人のポケモンと知りながら俺達に話しかけるのはポケモンハンター以外にありえないからな」 ポケモンハンター。その名の通り、ポケモンを捕まえる事を職業とした人である。だがトレーナーと違うのは「職業」であり、金銭が絡んでくること。基本トレーナーのバトルは「賞金制」を互いに了承しない限り金銭に絡むことは無い。だがポケモンハンターはポケモンを捕まえて売ることで金を手に入れているのだ。 ポケモンハンターが狙うのは野生ポケモンだけではない。むしろトレーナーのポケモンを狙う事が多々ある。なぜならトレーナーのポケモンは強い個体が多いから。強い個体ほど商品になりやすく、多くの裏の世界に通じるトレーナーが購入している。また多くのポケモンハンターは闇のルートからトレーナーの個人情報を調べあげどのトレーナーが珍しいポケモンまたは強いポケモンを持っているかを把握し、希望のポケモンの注文も承けたわっている。%%もしゲームの世界にポケモンハンターがいたらサブウェイのポケモン欲しいから捕まえてきてと依頼する最強を志している者が多く現れるだろう。普段から望みの個体地に満たない卵から生まれたばかりのポケモンを大量に逃がす犯罪行為を犯しているので、全く悪意は感じないはずである。%% 「さて、早速ですが大人しく私達の指示に従いなさい……と行けたら良いのですが」 「行くわけないだろ、俺達はお前みたいなふざけた仮面した奴に従うつもりなんて体毛ほどもないからな」 サンダースは余裕の発言をする。すると仮面の男は背後にいる男たちに命じた。 「では……、実力行使と行きましょうか。まず、彼らの実力を測るとしましょう。くれぐれも深い傷を与えないようにお願いしますよ」 「行けっ! グライオン!」 「出番だ! フリージオ!」 男たちはモンスターボールからグライオンとフリージオを出した。 「彼らのポケモンはリーグに出場したことのある実力を持つトレーナーから奪ったポケモンです。強いですよ」 「お兄ちゃん……ぼ、僕も戦う? 相手は2匹だし……」 強そうな相手2匹を前にイーブイの足は震えている。イーブイは子供なのでまだ一度もバトルした事が無い。 「なに、俺一匹で軽く倒してくるから心配するな。そこで待ってろ」 サンダースが2匹の手前に出る。 「グライオン、ハサミギロチン!」 男が命じると、グライオンはハサミを鋭くさせ突撃してきた。 「いや待て! 普通に危ないだろ! 深い傷になるって!」 「いえいえ、死なないようにする位でお願いします、との意味ですから」 サンダースのツッコミに当たり前という風に返すマスクの男。サンダースはハサミギロチンを華麗にかわす。 「フリージオ、絶対零度!」 フリージオは強力な冷気をサンダースに浴びせかけようとした。だがサンダースはこれもかわす。 「一撃技なんて簡単に見切れるからな。次は俺の番だ」 そう言ったサンダースの体が光り始め、周りから水色の玉が現れる。 「ほぅ……」 「目覚めるパワー!」 水色の玉は全てグライオンの方向へ飛んでいき、グライオンに直撃する。 「ぐら……ぁ……」 グライオンはそのまま倒れてしまった。戦闘不能状態である。 「なっ……、まさか今の目覚めるパワー、氷タイプ!?」 「氷タイプのサンダースの目覚めるパワー……、それもなかなかの威力ですねぇ」 マスクの男は褒め称える口調で話す。 「ああ、頂点を目指すトレーナー達が泣いて喜ぶぜ。まあマスター曰く偶然だって言うがな」 サンダースが話していると、フリージオが不意打ち気味に冷凍ビームを放つ。 「うぉっ! 一撃技だけじゃないのかよ!」 サンダースはギリギリのところでビームをよけた。フリージオは続けて冷凍ビームを撃つ。 「シャドーボール!」 サンダースは黒い塊のような球を発射し、それは冷凍ビームと相殺された。さらにサンダースは続けて攻撃に入る。 「10万ボルト喰らえ!」 サンダースから放出された電気は一つの太い線のようになり、フリージオに直撃した。 「ギギギギギギ!!」 サンダースの放電が止まり、フリージオはそのまま地面に落下した。 「げっ……、フリージオがやられただと!?」 「もう終わりかよ? じゃあ俺達は行くぜ。おいイーブイ、もう大丈夫だ」 「お、お兄ちゃん、本当に……?」 まだイーブイは怯えている。サンダースはイーブイの頭を優しく撫でる。 「ああ、大丈夫だ。見ろ、あいつらボールにポケモンを戻したからな」 グライオンとフリージオの姿はない。サンダースの言う通り男たちがボールに戻したようだ。 「おっと、そういえば仮面の男、お前もポケモンを出すのか?」 サンダースは仮面の男に問う。 「いえいえ、私残念ながらお気に入りのポケモンは現在いませんので、一匹もいないのですよ」 そう言うと仮面の男は車の方向に歩き出した。 「フン、諦めたか」 サンダースが仮面の男の後姿を眺めていると、ある違和感に気付いた。 話が出来過ぎている、という事。 グライオンが氷技で一撃で決まるのは当たり前だが、フリージオが10万ボルト一撃でやられるなんておかしい。 フリージオは特殊防御が高く、効果抜群の特殊技でも一撃で倒すのは至難の業である。 またグライオン等を直接ボールに戻した光景も見ていない。さらによく見ると、出したあのサングラスの男も見当たらない。つまり……。 「フリージオ、ソーラービーム!」 サンダースが罠と気付いた時、もう遅かった。ソーラービームが凄まじい速さでサンダースとイーブイに襲いかかる。 「くっ! 危ない!」 サンダースはイーブイを押し飛ばす。イーブイがソーラービームの範囲を抜けると同時にサンダースはその攻撃を無防備に受けてしまった。 「ぐあああああっ!!」 「サンダースお兄ちゃんっ!!」 「油断しましたねぇ……」 仮面の男はいつのまにか振り返っていた。仮面の裏では計画通りに行き不気味な笑みを浮かべている事だろう。 ソーラービームをまともに食らい、傷だらけで倒れているサンダース。そこにイーブイが駆け寄る。 「お兄ちゃん! しっかりしてよ!」 「だ……、大丈夫だ……、死にはしない……」 サンダースはイーブイの言葉に弱弱しく答えた。 「ええ、その通りです。大事な商品を殺すわけにはいかないのでね」 イーブイが後ろを振り向くと、仮面の男がすぐそばに立っていた。 「あっ……ああ……」 イーブイは前にいる不気味な仮面から放たれる雰囲気にただ怯えるしかなかった。 「さて、サンダース、もう抵抗できないでしょう。イーブイも。大人しく捕まってください」 サングラスの男とフリージオもサンダース達を取り囲む。もう逃げ場はない。 「お、お兄ちゃん……」 イーブイはサンダースを見た。するとサンダースは声を発さず口を動かした。イーブイに伝えるように。 「フラッシュ」と。 「サンダースお兄ちゃん、その技マシンどうしたの? 何が入ってるの?」 「フラッシュっていう強い光で敵の目をくらませたり暗い所を明るくしたりする技マシンだ。マスターにこれ覚えとけって言われて渡されたんだが、アイツ懐中電灯代わりにするつもりだぜ、絶対」 「へーっ! 便利なんだね! 僕も覚えたい!」 「イーブイには無理だ、フラッシュは覚えられない」 「えー、つまんないの」 「それにしてもアイツ、懐中電灯以外に使い道考えてないのかよ……ん? こんな使い道はどうだろうか」 「何? 何に使うの?」 「もしも強敵か何かにあったとするだろ? そうしたらフラッシュで目くらましさせてその間に逃げるんだ。よし、それに使おう」 「でもお兄ちゃん強いし、まず敵さんにばれるんじゃないかな? 合図で」 「確かにそうだな……。じゃあ俺が合図を出すとき、声は出さない。口の動きだけでやる。そうすれば敵に気付かれないだろ?」 「なるほどー!」 それはイーブイの頭に残っていた記憶。イーブイは迷いなく公園の出口に走り出した。同時にサンダースから太陽の輝きの数倍はあるような強烈な光が放たれる。 「ウッ……!? こ、この光は……!」 思わず男たちは目を手で覆う。サンダースはイーブイに向け叫ぶ。 「その通りだぜ良くやった! 俺はもうこいつらに捕まるしかない……。イーブイ、みんなに……伝えるんだ! 俺は信じてるからな!」 「う……うんっ!」 「……まさかフラッシュを使うとは、一本取られましたよ」 男達が目を開けた時、イーブイの姿はもう無かった。 「……へへ、だが俺にはもう立ち上がる気力もない。好きにしな」 2人のサングラスの男はサンダースを車に詰め込む。その間仮面の男は携帯電話で仲間に連絡を取っていた。 「良い知らせです。上玉が手に入りました。治療と『処理』の準備をお願いします」 電話を切ると、彼はすぐ車に乗り込んだ。そして車は走り去っていった……。 「まあ、私は大変なミスをしてしまいましたわ……」 冷蔵庫の前で嘆いているのはシャワーズ。300ピースほどのジグゾーパズルを完成間近の状態にしていたブースターはシャワーズに尋ねる。 「どうしたの? シャワーズ」 するとシャワーズから返ってきた言葉は「マヨネーズが切れている」との事。ブースターは何故か呆れている。 「……あのさ、たまには我慢したら? 体に悪いよ」 「それはできません! マヨネーズの無い食事など生ごみと同じです!」 シャワーズは食事の度にマヨネーズをつけるのが好きなようだ。すなわち、彼女はマヨラーである。 「シャワーズ、顔も性格もいいのに、これだからモテないんだよね……」 ブースターがぼそっと呟く。 「はぁ……迂闊でしたわ。切らした事に気付いていればサンダース達についでに頼めたのに……」 するとその時、シャワーズの目の前に一本のマヨネーズパックが転がってきた。なぜかフタにはリボンがついている。 「フフ、君の欲しい物はこれかい?」 2匹が声のする方を見るとそこにいたのはエーフィ。ブースターはため息をつく。 「全く、おいらの家のブイズは揃いに揃って変人だらけだよ……」 「やれやれブースター君、この場合変人ではなく変ポケとでも言うんじゃないかい? おっとそれより愛しのマイハニー、僕のプレゼントは気に入ってくれたかい?」 シャワーズはマヨネーズを取り嬉しそうに顔をすりつける。 「マヨネーズ……私にとって縁の切れない存在、マヨネーズ……エーフィさん、ありがとうございます!」 「ふふ、お安い御用さ。君の笑顔を見られるのなら……ね」 エーフィはどこからか取り出した青いバラをくわえキメ顔をする。 「重度のマヨラーにキザ男……もうやだ」 そんなこの家では何の変哲もない夕暮れ時。しかしその後の状況を一変させるのは窓から勢いよく駆け込んできたイーブイの発した第一声であった。 「みんなー、た、大変だよ! お兄ちゃんが……サンダースお兄ちゃんが……!!」 #aname(sononi); イーブイから一部始終を聞いたブイズ達。普通なら一緒に暮らす大切なポケモンがさらわれたという事で、サンダースがどうなっているのか心配するだろう。しかし彼らの反応は全く違っていた。 「フッ、情けないよ全く……、ブイズ一生の恥だよ」 「サンダースもまだまだねー、結局ひき肉も買ってきてないわけ?」 「私、早く食べたいのに……」 「いやシャワーズ、どんな食事もその手に持ってる白い物でご馳走を台無しにするんだから変わらないでしょ」 「じゃあシャワーズ買ってきてよ。私は嫌よ、疲れるから」 「いや、レディにそんな事はさせたくない。ここは僕が……」 「み、みんな!! お兄ちゃんが連れていかれたんだよ! 何でみんなへー、そうなんだ位で済ましてハンバーグの話題になるのっ!!」 彼らはサンダースよりもひき肉をまだ買っていない事を気にしている。エーフィがイーブイのツッコミに対応する。 「まあまあ、だってもう捕まったのはどうにもならない事だからね。ポケモンハンターなら大事な商品は大切に扱う、だからサンダースも無事だよ。その男のアジトがどこなのか分からないから今は何もできない。そこでどう助けるか考える前に夕食にしようって事さ」 「その間にお兄ちゃんが売られちゃったらどうするの!!」 非常事態なのに全然緊張感を感じられないブイズ達にイーブイは怒りをあらわにする。その様子を見たグレイシアがエーフィの隣に座る。 「ふふっ、こんなに心配しちゃって、サンダースもいい弟分を持ったわね」 「いつもサンダース君と一緒とは……たまには僕と一緒になれないのかい? 二人っきりでお互いを分かり合いたいのに……」 「だ、だってサンダースお兄ちゃん優しくて強くいから……。エーフィお兄ちゃんは関わらない方がいいってサンダースお兄……って話を逸らさないでよ!」 するとエーフィは一瞬ムッとしたがすぐ元に戻った。 「サンダース君も酷いことを言うね……。僕は何もしないよ。だから今夜一緒に」 「……イーブイ以外みんな知ってるのよ、あなたが何でもOKなのは。あ、そうそうサンダースが売られるかもって事だけどその心配はないはずよ。取引が捕まえてすぐ行われるなんて稀な事。大体は希望のポケモンを捕らえたと依頼人に伝えて、その後日取りや場所を決めてから金と引き換えに希望のポケモンを渡す……これがポケモンハンターの一般的な取引よ。あらかじめ決めておけばスムーズにできるからみたい。ハンターも依頼人も犯罪者だから取引が長引くと見つかりたくないのよ、警察に」 グレイシアが説明をしたが長いのでイーブイの頭には半分以上内容が入っていないようで、イーブイはぽかんとしている。 「とにかく……、今夜はサンダースが売られないって事さ、だから安心していいよ」 「う……うん……でもお兄ちゃん、どこにいるんだろう……捕まってる場所も分からないんじゃ……」 イーブイは頷いたが元気がない。取引が行われなくてもマスクの男のアジトが分からなければ何も始まらない。 「大丈夫だよ、この僕に任せれば場所なんて簡単に分かるのさ。それに君の話によると他のブイズも狙っているんだろう? それなら確率はさらに上昇する。まあこの僕だからできる事だけど……ね」 自身を称える事でキザっぷりを示すエーフィ。だがイーブイの反応は薄い。それどころかさらに不安になっている。 「グレイシアお姉ちゃん……ほ、本当に大丈夫なのかな?」 「心配しないで、こんなキザで頼りなさそうな感じだけど彼は本当にやってくれるから。さあ、落ち込んでいても元気は出ないわ。ハンバーグを食べましょう! 私とリーフィアが美味しく作ってあげる!」 「う……うん」 イーブイも少し元気が出てきたようだ。 「いただきまーす!!」 ブイズ達の夕食の時間。それぞれの目の前にはハンバーグがあるが大きさは全て違っている。イーブイが一番大きく、リーフィアとグレイシアがその次、シャワーズとブラッキーが中程度、エーフィ、ブースターはやや小さめである。 「どう? 私が作ったハンバーグよ、まずいとは言わせないからね」 そう言いながらハンバーグを口に運ぶグレイシア。 「おいしいけど……何でこんなに大きさが違うの?」 そう言ったブースターのハンバーグは2口程度で食べられるくらいの小ささだ。 「あら、分からないの? まずイーブイは子供だから食べ盛り、それにサンダースが捕まったショックが結構大きいから元気を出すためのサービスよ」 グレイシアがイーブイの方を向くとイーブイは笑顔を見せる。 「グレイシアお姉ちゃん、ありがとう! 僕元気出すよ!」 「で、次に私とリーフィアはハンバーグを作ったから。シャワーズは買い物に行ったからよ」 「ちょっと、だからおいらとエーフィが小さい訳!? それは差別だよ!」 毛を逆立てて反発するブースター。それを横目に見ているエーフィが一言放つ。 「やれやれ……、夕食は静かに食べるものだよ? 僕は文句は言わないよ。何故ならたとえ一口だけでも彼女たちの手料理を食べられること、それだけで僕の心は満たされるのさ……」 「はぁ……、こんな事になるならおいらがひき肉買ってくれば良かったよ」 「…………ちょっと待て」 ブースターがハンバーグをご飯と一緒に口にほおばっている最中、またしても不満を述べる者が一人。ブイズ達の主人である男である。 「あらマスター、何か不満でも?」 グレイシアが聞くと男は自分のハンバーグをフォークで刺し彼女にバッと見せる。 「おおありだぁっ!! 何でおれのハンバーグがこんな小さいんだよ!? これ駄菓子屋のお○つハンバーグより小さいだろ!!」 男のハンバーグは一口サイズの大きさで、よく綺麗に焼けたな……と感心してしまうほどである。 「俺がひき肉代出したんだかせめてブースターより大きくしろよ!」 「そ、そう言われても最後にマスターのハンバーグ作ろうとしたら残りがこれだけで……」 「主人のものを先に作れええ!! つーか大きさ配分考えろ!!」 「ご主人様、それなら私のハンバーグを少し分けましょうか」 そんな男を見かねたのかシャワーズは自身のハンバーグを男に分けようとした。しかし男はすぐさま断った。 「い……いや。き、気持ちだけ受け取るからさ」 シャワーズの皿の上にあったのは最早マヨネーズに包まれたハンバーグ……いや、「ハンバーグが中に入ったマヨネーズの塊」であった。 「……あのさシャワーズ、マヨネーズ……どのくらい使ったの?」 「あらやだ、今日はご馳走ですから少し多くかけ過ぎたみたいです! いいじゃないですか、贅沢に1本丸ごと使うのも!」 「…………」 黙り込む一同。 元より黙ってもくもくと食べているポケモンが1匹。ブラッキーである。 「ブラッキー、おいしい?」 グレイシアが聞くとブラッキーは箸を動かす手を止め軽く頷き、そして再び手を動かし始める。 「ブラッキーは……しょうがないよね」 「ああ、僕達はしかたないよ。だって彼は……おっと、楽しい夕食の時間にそんな話はいけないね」 悲しそうな目でブラッキーを見つめるブースターとエーフィ。ブラッキーに何があったのか……、それはまた別の話になり今回の話では語ることはない。 「1億円ですか、それはまたありがたいですねぇ」 仮面の男は電話でブイズを頼んだ依頼人と思われる人物と会話をしていた。 「俺にとっては1億なんてはした金に過ぎないからさ、マスターK」 マスターK…それが仮面の男の呼び名のようだ。 「さすが旦那様、イッシュでも名を馳せる大富豪ですね、羨ましい限りですよ。私達ポケモンハンターは日々ひもじい生活を送っていますから」 「やれやれミスター、アンタはハンターの世界でもトップクラスの実力を持つとされ毎日数多の依頼が来ているじゃないか。冗談はよしてくれたまえ」 「さて、サンダースの取引時間はいつにしましょうかね?」 「ふむ……だがその前に、ミスターによい情報がある」 「ほぅ。その情報とは?」 「ブイズは1億で買い取る。これはさっき言ったんだが……、全てのブイズを捕らえて売ってくれればボーナスとして2億つけよう。つまり10億円だ((ニンフィアは3月24日現在情報が全くないのでさすがの凄腕ポケモンハンターでも捕える事はほぼ不可能。それは取引相手も知っているのでニンフィアはこの会話の中のブイズに含まれない))」 マスターKの口元がかすかに動いた……かもしれない。 「それは嬉しい情報ですね。では、残りのブイズも私の総力を持って捕える事に致しましょう。私にかかればあと数日程度で」貴方の元に全てのブイズを送り届ける事ができます。それまでお待ちください」 「随分と余裕だな。まあいい、取引は全てのブイズをミスターが捕まえてからだ。一気に引き取った方が負担も少ないだろう。では、期待しているぞ」 「お任せください、旦那様……」 マスターKは受話器を置く。同時に部屋のシャッターが開き部下の男が入ってきた。 「マスター、『処理』完了したため持ってきました」 「ご苦労様です。運んできたらしばらく休憩してよろしいですよ」 数人の男が車輪のついたベットを運びながら部屋に入る。ベッドには捕えられたサンダースが乗っていた。 サンダースは起きているようだが様子がおかしい。まったく拘束されていないのに抵抗や逃亡するそぶりは一切見せず言葉も発しない。表情も一切なく彼の瞳はまるで催眠術にかかったかのように虚ろである。%%レイプ目と言えば早い%% 男たちは全員部屋を後にした……と思いきや1人のこってサンダースを不思議そうに見ている。 「おや、貴方は新入りの方でしたよね? サンダースの珍しさに興味があるのですか?」 「あ、すいませんマスター。僕が興味を持ったのはサンダースじゃなくて、サンダースの状態です。何で抵抗しないのかな……って」 男が訊ねるとマスターは説明を始めた。 「商品に暴れられると体が傷ついてしまいますからねぇ、そこで私は独自の方法で捕えたポケモンに細工をするのです。詳しくは私と数名の幹部しか知る事ができませんが、ポケモンを特殊な催眠状態にし、意識を全て失わせるのですよ」 「え、でも催眠状態にするなら普通にポケモンでやった方が……」 「いえいえ、そんな方法では衝撃を与えるとすぐに催眠は解けてしまう。しかし私の編み出した催眠状態はある言葉をポケモンの目の前で言わないと永久に解除されないのです。仮に救出されても解除する暗号を知らない限りただの人形と化するです」 「へ……そ、そうなんですか……」 中々怖い説明に恐怖を覚える男。さらにマスターKは続ける。 「おっと、人間には効かないのでご安心を。第一私達はポケモンハンター。人間を傷つけたり洗脳して利用するはずがありませんから。ちなみに解除する暗号は絶対に探ることができませんよ。言葉の法則なんて全くない文字列ですから。『Y278は5b0Wし』の様にね」 「そ、そうですか……。ありがとうございます、それでは」 男は一礼し部屋を後にした。 「さて……、あの男が気付くはずなんてないでしょう。今発した意味のない暗文字列が唯一彩文状態にあるポケモンを思うがままにコントロールできる暗号という事を。記憶しておくのも大変ですよ。サンダース、私の元に来なさい」 ミスターMがサンダースに指示するとサンダースはその通りに腰かけているマスターKの膝に乗った。ミスターMはサンダースを撫でる。 「さて、サンダース君、君に幾つか聞きたいことがあるのですよ。私の質問に答えてくれますか?」 #aname(sonosan); 深夜0時。全員寝てしまったのか、家は物音ひとつせずにひっそりとしている。 しかし裏庭から微かに草を踏む音が聞こえてくる。そこにいるのはポケモン……ではなく2人のサングラスの男。昼間のマスターKに付き添っていた男達である。 「本当にこの家で合ってるのか?」 1人が小声で話しかける。もう1人も小声で返す。 「ああ、マスターが直々に聞き出したからな。この家にサンダースの仲間、全ブイズがいる」 「依頼主からの報酬は10億……、5割はマスターが貰うが残り5割は部下全員で分けられる。成功の貢献度にもよるがな」 「俺達は確実に1億だろ。なんせ今から全ブイズを捕らえるんだからな」 「へっへっへ……じゃあ準備を始めようぜ」 月の光に照らされながら男は黒いケースから謎の機械を取り出す。四角い形をしていて先端にアンテナがついている。取り出してすぐ男はトランシーバーのスイッチを入れる。 「本部に連絡。準備完了した。電波を発信してくれ」 「了解」 「さて、これでブイズ捕獲作戦はほぼ完了した」 トランシーバーを切る男。するともう1人がポケモン用の檻とみられるものを運んできた。 「こっちも準備完了だ。車も完璧に偽装して俺達が離れても気付かれないはずだ」 「さて……もう電波がここらに発射されているからもうすぐ家から出てくるはずだ。この電波は特殊な電波でブイズにのみ反応し、電波の元へと無意識に集まってくる。おっとお前、モンスターボールの準備は完了か? ブイズの飼い主に出てこられると面倒だからな」 「何、最悪殺せばいいんだよ」 男は片手に持ったナイフをちらつかせる。 「物騒だな、そんなのしまっておけよ。もしもの時は遠慮しなくていいがな」 「……おかしいな、電波が発信されてからもう10分経つぞ」 男の言う通り10分が経過した。しかし家から一向にブイズが出てくる様子は無い。 「本当に発信されているのか? ちょっともう一回連絡を……」 男が携帯に手をかけたその時。 「やあ、今夜は良く晴れたいい月だ。こんな夜に空から女の子でも降ってきてほしいものだよ」 ふと男達の背後から砂利を踏みつける音とキザな声がする。 「!?」 現れたのはエーフィ。だが催眠電波は全く効いていないようだ。 「予想通りだね。悪いけど僕達全員神秘の守りがかかっているから、催眠状態にはならないんだよ」 「なっ……、どういう事だ!?」 予想外の展開に男達は動揺する。その時リビングの窓が開いた。ブイズ達の主人が目を半開きにして男達を見ている。どうやら男達の声で起きてしまったらしい。 「ふぁ……。本当に来たのか……、こんな遅くまでご苦労さん。さて……、準備してくるから任せたよ」 主人は窓を閉めようとしたが男達の行動は素早かった。電光石火にも匹敵する速さで男を引っ張りだしナイフを首の前にかざす。 「おっと、ここで主人が現れるとは俺達も運に見放されていないぜ! おいエーフィ、何かしたらこいつがどうなるか……」 「……」 エーフィは何もする様子を見せない。男の1人がエーフィを捕らえようと歩み寄る。 「ところで……君達、何か聞こえないかい?」 「ああ?」 男の足が止まった瞬間、主人を掴んでいる男にどこからか噴射された大量の水が襲いかかる。その勢いに男は吹き飛ばされ地面に激突した。。 「な、なんだ……ぐわあっ!」 もう1人の男が気を取られている間にエーフィはシャドーボールを男の腹部めがけて放ち、もう一人の男も同じく宙に舞い、先に飛ばされた男の付近に落下した。 「ご主人様、お怪我はありませんか?」 シャワーズが月明かりに照らされながら現れ主人の足元に座る。先程の放水は彼女のハイドロポンプである。 「ああ……、だけどもう少し早く撃ってくれないか? 少しひやひやしたんだが」 「くそっ……」 男達は立ち上がり1人がそばに落としたナイフを拾おうとした。だが男が持つよりも早く冷気のまとまった光線がナイフに命中し、ナイフが氷に閉じ込められてしまった。 「悪いけどマスターが死んだら私達困るのよ。彼がいないとご飯が食べられない、欲しい物も買えない……」 「……寂しいとかそういう感情はないんですかそうですか」 グレイシアが男の前に姿を現した。男はナイフを諦めモンスターボールを取り出す。それを見たもう1人も同じく手に取る。 「くそっ、こうなったらポケモンで……」 が、男達がモンスターボールを投げようとした時ボールは手から浮かび上がりふわふわと流されていった。ことりとボールが落ちた目の前に目を青く光らせたエーフィがいた。恐らくサイコキネシスを発動したのであろう。エーフィの目は元に戻りボールを前足で転がせている。 「ふうん、これが君達のポケモンかい? まあ十中八九奪ったポケモンだと思うけど。最近はトレーナーのポケモンを強制的に逃がす状態にできる機械があるって聞いた事があるからね」 「くっ……。こうなったら仕方がない、退却だ! 逃げるぞ!」 「お、おう!」 「悪いけど逃げられないよ。もしかして、ブイズを甘く見ていたんじゃないのかい?」 エーフィがそう言った瞬間壁を乗り越えようとした男達の動きが止まる。 「ぐっ……? あ、足が動かないだと!?」 男達の足はなぜかいう事を聞かず全く動かない。 「君達、横を見てごらん」 男達が横を見るとエーフィがサイコキネシスを使ったのと同じように怪しく目を光らせるブラッキー。 「これは黒い眼差し。効果は分かるよね? もっともマスターはとんでもない事に使っていたけど。スーパーのタイムサービスが始まった瞬間に命令して主婦達の足を……ぐぇっ!!」 「俺の事は言わなくていいんだよ!」 いつのまにか靴を履いていた主人はエーフィの頭を小さな頭を踏みつけたかと思うとそのまま足全体でぐりぐりとかき回す。未だにブラッキーは黒い眼差しを発動し続けているので男達は動けない。 「さて、準備するからこのまましばらく押さえててくれ」 主人は玄関へと引き返していった。 「くそっ……、な、何で俺達が今日の夜ここに来る事を、いやそれだけじゃない、どうして催眠電波を使うって予測できたんだ!?」 「イタタ……、その辺は僕が説明するよ。やれやれ、早くシャワーを浴びないと。僕のかっこよさが台無しじゃないか……」 エーフィの頭部が土で汚れている。長い尻尾で器用に土を軽く払い落としてからエーフィは説明に入った。 「まず、君たちの行動がなぜ予測できたか……。それは僕の予知能力のおかげなのさ」 「予知能力だと!?」 「その通り、まあ完璧な予知とは言えないけど大きな事なら予知できる。例えば火事や地震等の災害、24時間以内に誰が来るかとかね。予知してみたら君達が壁を飛び越えて侵入してくるのが見えた。だから夜僕達はスタンバイしておいたのさ」 「だ、だが俺達が催眠電波を使うのは予知できてないんだろ!」 男がそう言った時にはスタンバイしていたのか、リーフィアが口に何かをくわえながら歩いてきた。 「確かに僕は催眠電波の使用は予知できなかった。だけど我が愛妻、リーフィアがこれを持ってきてね」 「……愛妻じゃないんだけど。これよ」 リーフィアが何かを置いた。「7泊8日」とラベルの張られたDVDのようだ。%TS○T○Y○で貸し出したものだ。%% 「このDVDにはこんな話が入っていた。とある2人組と一匹のニャースが腕時計を装ったスピーカーをポケモントレーナーに無料で配布する。その夜スピーカーからポケモンを無意識に誘導させる催眠術を流し街中のポケモンを一斉に捕獲する……という話だ。これなら犯人が目撃される事も(目が覚める程度の)音量を出す事もなくポケモンを捕らえられる。例によってとある少年により失敗に終わったけどね。ただ、これは使えると思ったのさ」 「くっ……」 「備えあれば憂いなしだからね、神秘の守りは催眠状態も効かないのさ」 「だ、だが待て、何でお前はそこまで予知できるんだよ!? せいぜい明日の天気や目の前の相手の行動位しかできないんじゃないのか!?((ゲームの図鑑説明より))」 男の1人が指摘する。確かにエーフィにはそこまで高度な予知能力は無い。 「フッ、その通りさ。この性別さえ違っていれば即刻嫁として迎え入れたい全国の独身達が増える能力値を持つ……それより僕は彼女が欲しいんだけどね、あ、ちなみに人間も構わないよ。何故なら僕はロリはおろか人妻でも雄でも……あ、でも成長しきった雄h」 「無駄な話はいいからさっさと喋りなさいよ! ブラッキーだってもう限界なのよ!」 無駄な話に入ってしまったのでグレイシアが間に入り話を元に戻そうとした。実際ブラッキーはもう10分以上も男達を黒い眼差しで動きを封じている。彼の額からは汗が垂れ息も少し上がってきたようだ。 「おっと、ブラッキー君には申し訳ない。とにかくエリートな僕でも予知能力なんて普通は持っていないよ。普通は……ね。悪いが詳しい事は教えられない。さて、時間を無駄にはしたくないからマスター、そろそろ縄で縛りあげようか」 エーフィが窓を向くと寝癖を直したブイズの主人と不機嫌そうなブースターが現れた。 「よし、すぐに終わらすからブラッキーもう少し足止めしてくれ」 「ブツブツ……おいらは必要ないとか……どうせ役立たずだもん……((ブースターは何もしていません。残念。))」 「ご苦労様ブラッキー。もういいよ」 ブラッキーが黒い眼差しを解除した途端彼は疲れ切ったのかその場に倒れた。シャワーズが心配そうに駆け寄る。 「ブラッキーさん……よく頑張りました。あなたの頑張りは無駄にしませんからね」 主人はブラッキーを家に運ぶ。その後をシャワーズがついていった。技を出し過ぎて疲労で疲れただけだがよほど彼女は心配しているのだろう。 「……さて、ブラッキーの頑張りを無駄にしないために、すぐ次の行動に移ろう。サンダースを助けるために彼らからアジトの場所を聞き出さないとね」 エーフィがそう言うとブイズ全員(といってもエーフィ、グレイシア、ブースター、リーフィアしかいないが)、縛られた男達に注目する。だが男達は全く顔色を変えない。 「へっ、俺達が簡単に言うと思うか? 死んでも吐かないぜ」 やれやれ……と呆れるエーフィ。 「君達映画の観すぎだよ。ここは秘密研究所でも悪の組織でもない。君達は吐いた後、死なずに警察に行くだけさ。だから安心して吐きなよ。今なら助かるよ?」 「はぁ? 何言ってるんだよ、お前ら殺す気無いって言いながら吐いたら助かる? 矛盾してるだろ! よく分からないが俺達は絶対に吐かないからな!」 男達はそう言って口を固く閉じた。どんな事をされても場所を明かさない覚悟はできているようだ。 「……本当に後悔しないんだね?」 エーフィが念を入れて確認を取る。相当彼等には吐いてほしいようだ。この後待っている恐ろしい出来事を体感させたくないために……。 「やれるものならやってみやがれって!」 男が挑発するかのように笑いながら返した。 「……分かったよ。グレイシア」 「ええ。私に任せなさい。30分もあれば終わるから」 その時主人とシャワーズが戻ってきた。 「ブラッキーさんは休めばすぐに良くなるから、安心してください」 「あらちょうど良かった、マスターとシャワーズ、手伝ってくれない? 今から男達に場所を言わさなきゃならないの。あ、マスターは分かってると思うけど男達を運ぶだけだから」 グレイシアの言葉を聞いたシャワーズは途端に顔を赤らめる。 「わ、私もですか? それは……」 「時間がないから文句は言わない! ほら行くわよ!」 「うう……」 グレイシアは意気揚々と家に入った。シャワーズが後に続くが何故か落ち込んでいる。そして主人が縛られた余裕そうな表情をした男の縄の先を持って連行する。その後ろ姿を悲しげな眼で見つめるブイズ達。 「可哀想に……。これでもうあの男は……」 「しょうがないさ、僕達にできる事はないんだから」 その会話を聞いて絶対に場所を明かさないと自信を持っていたもう1人の男は急に不安になる。 「な、なあ……、ど、どうなるんだ俺……。か、体の一部が無くなるとか?」 ブースターがその質問を返す。 「いや、体は大丈夫。ただ終わった時……、あっマスターが戻ってきた」 疲れた表情で主人が戻り、もう1人の男を同じように連れて行った。男はかなり怯えている。連れられる直前残りのブイズ達全員が男に向け「黙祷」をしていた事が更に男の不安と恐怖を誘ったからであろう。男の姿が見えなくなると、ブイズ達は会話を始めた。 「あの男達……もう助からないよね?」 「無理ね。最低1週間は彼女に弄ばれてその後無様な姿で警察署の前に磔にされるのがオチよ。彼女相当な痴女だから」 「僕も本性を知った時は恐怖に体の震えが止まらなかったよ。男を誘ったら華麗なるテクで魅了して玩具にしてしまう。そうして相手の気の実やら金銭やらを自分のものにしてしまう。最初に誘われた時リーフィアに止められてなかったら……。彼女は悪女だよ」 「全くグレイシアったら変な楽しみを見つけちゃって。まあいいわ、後で部屋の隠しカメラ回収しないと。でもあれは販売用にはならないかしら? 犯罪者だし何より人間だし。でも早くDVD焼かないと。この間とったアンケートには数千人が続編希望って……」 「リーフィアもおかしいよ。というか世の中にはそんなにポケモナーがいるんだ……」 1時間後、グレイシアとシャワーズが戻ってきた。 「ふう、ようやくサンダースが捕まってるアジトの場所を聞き出せたわ。早くサンダースを助けに行きましょう、彼らの続きをしないと!」 グレイシアはペロリ、と舌舐めずりをする。それを見て顔を逸らすブイズ達。グレイシアはふとある事に気付きブースターに尋ねる。 「あら? マスターとエーフィは?」 「ああ、マスターは車を出しに行ったよ。エーフィはブラッキーの様子を見に行っただけだからすぐ戻るよ」 「そう……ところでブラッキーは留守番でしょ? イーブイを起こすわけにもいかないし、1匹で大丈夫?」 「心配ないよ、もしものためにもう1匹最強の用心棒がいるからね」 「大丈夫かい? ブラッキー」 エーフィはブラッキーの様子を見にブイズ達が普段寝ている2階の部屋にいた。ブラッキーはエーフィを見て頷いた。ブラッキーは既に意識があるが体に布団をかけ足を出してリラックスしている。その隣にはすやすやと天使のような可愛い顔をして眠っているイーブイがいる。 「そうか……。さて、留守番は任せたよ。まあ君は寝てても大丈夫。最強の用心棒もいるからね。でもイーブイは頼んだよ」 エーフィが声を立てずに言うとブラッキーは頷き返事を返した。 「じゃあ行って来るよ。ここの鍵はちゃんとかけてくれよ」 エーフィは部屋のドアを閉めた……のではなくドアの左端に加工された小さいドアから出て行った。この小さなドアは見ての通りブイズ専用である。ドアノブに前足が届かないブイズのために主人が自作したものだ。 「ブラッキー……」 エーフィが呟く。 「残念だけどもう……僕達は元には戻れないんだよ……。あんな人達がいなければ……僕達は……」 「おーいエーフィ、みんな車に乗ったからそろそろ行くぞー」 下の方から主人の声が聞こえた。エーフィは急いで階段を駆け下りエンジンがかかった車へと向かう。 1分後、ブイズ達を乗せた車は走り出した。サンダースが捕えられているアジトに向かって……。 「よし、行ったわね」 走り出した車を物陰から見送る謎の女性。 「携帯忘れちゃったから本部に連絡はできないけど……、彼等の会話からこの家にはブラッキーとイーブイを留守番させている。しかもブラッキーは疲労で弱ってイーブイはぐっすり夢の中。ふふ、頂いちゃってマスターK様のお膝元になっちゃうんだから!」 #aname(sonoyon); 深夜の住宅街。道が暗い上住民に迷惑をかける事などできないので、速度を落としてブイズを乗せた車は走っている。 「いい、シャワーズ? マスターの首が下を向いてたらすぐに水をかけるのよ」 「分かっています、グレイシアさん。ご主人さま、寝てたらすぐにおこしますから安全運転で頼みますね!」 「あ……ああ……」 主人は1人暮らしのため、軽車である(しかも中古)。助手席にシートベルトもしっかりとつけたシャワーズ、後部座席には地図を持ったグレイシア、他はモンスターボールにしまわれている。 「えっと、次は右へ曲がるのよ。で、2つ目の信号を左に」 「了解っと」 主人はハンドルを握り車をぶつけることなく順調に運転していく。 「静かね……」 グレイシアがふと呟く。住宅街を抜け大きな道路へと出たものの深夜のためすれ違う車は稀である。車内は小さくエンジン音がするのみ。 「このままだとシャワーズがもたないかもしれないわね……」 「私は大丈夫で……ふぁー……」 シャワーズが口を大きな欠伸をする。彼女が起き続けているのも限界のようだ。 「いいわ、シャワーズは寝ていなさい。後は私がマスターが寝ないよう監視してるから。どうせボールの中の連中もグッスリ寝ているに決まってるわ」 「そ、そうですか……すみません……では」 シャワーズは瞼を閉じる。すぐに静かな寝息が彼女から聞こえてきた。 「マスターはつられて寝ちゃ駄目よ? あとシャワーズが寝てるからって変なことしたら即刻氷漬けよ」 「わ、分かってるって……(氷漬けにされたら一番危ないんじゃないのか?)」 主人はバックミラーに映るグレイシアに苦笑する。 「とはいってもつくのはまだまだ先そうね。この道をしばらくまっすぐよ。そうだ、私が男達から聞き出した話、聞きたいかしら?」 地図から目を離すグレイシア。主人は迷うことなく頷いた。彼も一度寝ていたとはいえ深夜に車を走らせると退屈で眠気が再び来てしまうのだろう。その退屈しのぎも兼ねた上にサンダースを奪った謎の集団が知りたいからだ。 グレイシアの話した事は以下の通りである。 マスターKは3年前からポケモンハンターをしていて、成功率は95%以上の実績を誇る凄腕ハンター。さらに失敗した5%はなんと「そのポケモンへの複数の依頼が来てしまい断るしかなかった」というもので、成功率はなんと実質100%である。 彼の手持ちのポケモンは分からない。いや、使った所を誰も目撃していないのが正しいと部下達に噂されている。マスターK に部下ができたのは彼が活動を始めて1年後。その時にはもう彼がポケモンを使う事はなく、数々のポケモン捕獲に優れた道具のみで多くの依頼を成功させてきた。また彼の素顔を知る人もいない。素顔を見た者はこの世から消されると言われている。 捕まえたポケモンは特殊な装置で洗脳し無力化させてしまう。その時にトレーナーのポケモンという記録も初期化させる。その後特殊な方法で記憶を抜き出し従わせたり凶暴化させるらしいがその詳細は不明。その状態である暗号を言うとなんでも命令を聞いてしまったり元の状態に戻せる(洗脳解除)ようだがこれも不明。暗号はマスターKと幹部しか分からない。 マスターKの現在の部下の数は、幹部が4名、エリート下っ端が10名、普通の下っ端が45名である。ブイズを捕獲しようと家に侵入した男達はエリート下っ端。部下は捕えた中で特に強力なポケモンを凶暴化させて使用している。そのためそこら辺にいるトレーナーでは歯が立たない。また、大半の部下含めマスターKはだまし討ちなどの卑劣な行動をとる。 ただしマスターkは部下にとても信頼されている。部下が任務を失敗して怒った事は一度もないらしい。部下への素の給料も高く、おまけに困った時様々なアドバイスをしてくれるためだとか。ただ仮面の裏では別の感情を持っている、との噂もあるが……。 これから潜入するアジトは地下にこっそりと作られたもの。最深部がマスターKの部屋となっていて、そこにサンダースが捕えられているらしい。しかしアジトでは常に部下達が戦闘態勢を敷いている。男達の通信が途切れたことで更に警戒を強めているだろう。 また、アジトには「最終兵器」があるらしい。その凶悪さにより本当に手段がなくなった時にしか使用できないらしい。その正体は一部の下っ端(制作した研究員)と幹部格のみしか知らない。 「あの男達、マスターKの付き添いをしていたらしいわ。どうりでたくさんの情報を知っているわけ、助かるわ。サンダースを捕まえてマスターKに渡した後は知らないって」 ふう……とグレイシアは息を整えた。大量に仕入れた情報を一気に伝えたために疲れたようだ。その全てを聞いた主人は完全に目を開けている。 「眠気も吹き飛ぶ話だな……。今の話だと……サンダースは恐らく洗脳されたんだろう。そして、俺達の家を聞き出して今夜一斉捕獲を試みた……」 「その通りよ。アジトまでもう半分位かしら? ちょっと急ぎましょうよ」 「ああ。そろそろスピードを上げるぞ、気をつけろよ」 主人はアクセルを踏みスピードを上げる。 車を走らせて1時間後、人里もポケモンの気配もないごろごろした岩場へと到着した。 「ここか……思ったより近かったな。他の地方じゃなくてよかったよ」 「……ここにマスターKとかいう奴のアジトがあるんだな?」 ブイズ達をボールから出した主人がグレイシアに聞く。出した瞬間、全員眠そうな顔をしていたがすぐに切り替えた。 「ええ。あの男達から聞いた話だと……入り口は目の前よ」 グレイシアが前足を出した方向には丸い大きな岩。近くにある岩とは特に変わったところはない。ブースターがその岩に近づいてみる。 「ブースターさん! 危ないですよ!」 「いや大丈夫。うーん……ん? 何か変だよ?」 ブースターは大きな岩と周辺に転がっている石、両方の感触の違いに気付いた。 「この岩、人工的な物じゃないかな?」 主人がためしに足元にあった石で叩いてみる。すると大岩からは鈍い金属音がこだました。 「ああ、そのようだな。普通岩は叩いた箇所が砂になりサラサラと落ちる。だがこの岩は叩いても砂にならない。おまけにこの音……」 主人が何度も叩いてみるが相変わらず金属音が響くだけである。 「ここで合っているわね。この岩はエレベーターの入り口を示しているらしいわ。カードを通すとこの下の扉が現れて地下アジトに行ける仕組みみたいよ」 「でもエレベーターに乗るために必要なカードはどこにあるんだい? それに通し口も見当たらないよ?」 エーフィがそう言うと、グレイシアはどこからか黒いカードを出す。そのカードの左上には情報を聞き出した男の写真がついている。 「これがマスターK一味専用のカード。で、差込口は……これね」 彼女が岩の地面すれすれにある切り込みにカードを通すと、岩が突然音を立て震え始めた。 「うわっ……い、岩がう、浮き始めた!?」 「違う、下から扉が出てくるみたいだよ。ほら」 エーフィが言った通り、岩の下からエレベーターが現れた。扉が開いたので主人とブイズはエレベーターに乗る。程なく扉は閉まり、地下へと動き始めた。 「こんな扉、どこかのゲームにもあったような……」 リーフィアがぼそっと呟いてみたが誰も反応しなかった。 「さて、ここで君達に残念なお知らせだよ」 エーフィが残念そうな顔をする。全員がその話に耳を傾ける。 「僕達が潜入したのは既に気付かれているんだ。予知したらたくさんの下っ端がボールからポケモンをたくさん出してスタンバイしているのが見えたのさ」 「それはまずいわね……。出た瞬間一斉攻撃されると勝ち目はないわよ」 グレイシアが困り顔を見せる。他のブイズ達も同様な反応だった。だがエーフィは策があるのか余裕の表情で全員にこう話した。 「でも心配はいらないよ。みんな聞いてくれ、このエリートな僕の最高の作戦を」 エーフィの予知した通りエレベーターの扉の前には10人以上のハンターと10匹のポケモンが扉が開くのを待ち続けていた。 「残念だったな、このアジトの侵入者対策は完璧だからな。飛んで火にいる夏の虫ポケモンだ」 「ほんと、一網打尽にできるとは手間が省けたぜ」 ハンター達が話し合っていると「チーン♪」とエレベーターが着いた音がした。彼等は話すのをやめ扉に視線を向ける。辺りが緊張に包まれ、そして扉が開いた瞬間……。 「うわああああっ!!」 「ま、眩しいっ!!」 エレベーターが開いた瞬間中から耐えきれないほどの強い光が彼らに向け放たれた。不意をつかれたハンター達は目を塞いで、完全に怯まされた。 「いまだっ! みんな走れ!」 その間に主人とブイズ達はエレベーターから降り、目を塞いで動けないハンターやポケモン達の隙間を通り抜け通路の先へと駆けて行った。 「くそっ! 追え! 絶対に捕まえるんだ!」 やっとの事で目を開けたハンター達。目の前にはリーフィアが1匹、草の葉を口に咥えてにっこりとしている。その光景を理解しようとせずにリーフィアを捕らえようとポケモンに指示するハンター。だがそれは間違った行動だった。一人がハッと気づき今すぐ耳を塞ぐよう叫んだがもう遅い。リーフィアは草から耳触りの良い、思わず聞き入ってしまうような音のハーモニーを吹き始める。ハンターとポケモン達は次々と倒れていき深い眠りへと落ちていった。 「こんなに上手く成功するとはね。僕も驚きだよ」 エレベーターの手前にいたエーフィが草笛の演奏をやめたリーフィアの元に寄る。先程の強い光はエーフィが放ったフラッシュである。 「まず僕の目くらましでみんなをこの包囲から突破させる。他は先を急がせるけどリーフィアは残って草笛吹いてハンター達を眠らせる。怯んだハンター達に草笛はよく効くからね」 「これなら体力を使う事ないもんね。で、このハンター達はどうするの?」 「放っておいてもいいんじゃないかな、モンスターボールだけ何とかすればね。後の事は僕がしておくから、リーフィアはみんなと合流するんだ。僕も終わったら後を追うよ」 エーフィの言うとおりにリーフィアは先へと進んだブイズ達の後を追う。 「ブイズ達を捕えろ!!」 狭く分岐点の多い通路を進むたびにハンター達がポケモンを従え立ち塞がる。だが……。 「相手するの面倒だからブースター、全部頼むわよ」 「ええ!? 酷いよグレイシア、少しは手伝ってよ! おいらだけじゃ……」 「あら? 全部倒せば唯一王の称号が脱却できると思うけど?」 「…………やる」 ブースターはグレイシアの言葉を皮切りに獅子奮迅の様を見せつけた。 「捨て身タックルーっ!!」 「うおおお炎の牙だあっ!! なんでフレアドライブないんだぁーっ!!」 「唯一王なんて……呼ばせないぞおおおつ!!!」 次々と出会う度にブースターの心からの叫びと共に倒されていく下っ端のポケモン達。唯一王の本気は凄まじい。 「私達は下っ端からサンダースが捕まっている場所を聞くだけ、楽な作業ね」 グレイシアが不吉に笑う様を見て主人とリーフィア、シャワーズはこう思った。 「とんでもない悪女だ…」と。 ブイズ達が進んでいると途中でシャワーズが何かに感づき、足を止める。目の前には部屋が1つ。 「この部屋……、気になりますね。入ってみませんか?」 「ん? 多分何もないと思うが……まあいいや、入ってみようぜ」 「ここは……捕えたポケモン達の保管庫のようだな」 たくさんの檻が並ぶ部屋。檻の中にはポケモン達が入っている。 「変ね……、私達を見ても何も反応しないわよ」 「いや、入った瞬間からだな」 ポケモン達は怯える様子も見せずただぼーっとしている。グレイシアが呼びかけてみたが一切反応しない。 「これって……、男達から聞いた洗脳じゃないかしら?」 「多分な。だが現時点で俺達がこのポケモン達を助け出すことはできない、マスターKを潰すまでは……」 「はぁ……はぁ……」 先程の部屋を出た後も次々と出てくるハンター達だったがもう最後のようだ。息切れを起こしながらも無傷で立っているブースターの目の前にはバンギラスが倒されている。これが最後の下っ端のポケモンのようだ。 「こ、これでおいらは唯一王じゃ……」 「あら、本当に信じてたの? 嘘に決まってるじゃない、見てる人がマスターだけだもん。ふふ、お馬鹿さん」 「グーレーイーシー……」 「はい、ご苦労様、しばらく休んでいなさい」 冷凍ビームでまさに怒りを爆発させる寸前のブースターを氷漬けにしたグレイシア。 「全員倒した事だし先に進むわよ。サンダースも目の前ね」 一行は凍ったブースターを放っておきアジトの最深部へと進んでいく。 ブイズ達の目の前にあるのは黒ずんだいかにも頑丈そうな雰囲気を漂わせる扉。 「下っ端の話だとこの扉の先にはマスターKの部屋があるアジト最深部に繋がるエレベーターがあるそうだが、入るには幹部以上が持つカードキーが必要らしい。幹部が一人もいなかったしどうやって通るんだ?」 主人が頭をひねる。他のブイズ達も困り顔……と思いきやリーフィアがある提案をした。 「大丈夫よマスター、ちょっとこれを見て」 リーフィアは1冊の本を主人に渡す。主人は疑問を抱きながらもページをめくっていく。するとあるページで主人の手が止まり、本を持つ手が震え始めた。 「よし……これならいけるぞっ!!」 「まずい……まずすぎる! どうしましょうマスターK様! 扉が突破されました!」 アジトに何十か所も仕掛けられた隠しカメラの映像を映すモニターを見て頭を抱え込む一人の男。マスターKの幹部である。ここはアジト最深部、マスターKの部屋。そこにはマスターK、幹部4人とサンダースがいる。マスターKはサンダースを膝に座らせ、優雅に紅茶……ではなくオレンジジュースを仮面に少しだけ開いた部分にストローを通して飲んでいる。 「あの幹部以上しか通る事の出来ない扉がですか? ほう、力技も通用しない頑丈に作られた扉ですが、どのように?」 幹部の1人がモニターの画像をマスターKの目の前にあるスクリーンに映し出す。映ったのは先程の扉。全く変わったところは見当たらない。変わったところがあるとしたら右側の壁に大穴が開いている事である。 「アイツら……壁を掘って突破したんだ! この地帯の地盤は固くないから……クソっ!」 悔しがる幹部達。しかしマスターKがとった行動は意外な事だった。 「ふふふ、これはお見事。彼らの奇想天外な扉の先へと進む方法、賞賛に値します」 なんとモニターの画像に向け拍手をしていた。仮面をしているので顔と本心では怒りに満ちているのでは? と疑いの目を向ける幹部もいたがその穏やかで冷静さを保っている声から演技ではないようだ。 「ちょ、ちょっとマスターK様!? 何敵に拍手しているんですか!! こちらはピンチなんですよ! もう私達の部屋までに彼らの障害となる物はありません!」 マスターKはその幹部の言葉に冷静に返した。 「障害となる物がない……そうでしょうか? 1つだけある事を皆さんお忘れではないでしょうかねぇ?」 マスターKの言葉で幹部達に衝撃が走る。そしてすぐさま反対の声が幹部全員から上がる。 「ちょ……それはダメですよ! 下手したら商品が……いや、我々が……」 「私達がどうなってもいいのですか!? 最終兵器、「KONG」は動く物に容赦なく襲いかかってきます! 目覚めさせた時、我々が一番危ういのですよ!?」 「それだけは……「KONG」を使用する事だけは絶対にやめてください……お願いします……!」 「おやおや皆さん、誰に対してそのような戯言を申し立てているのでしょうかねぇ?」 散々反対していた幹部達が一斉に無言となる。 「いいですか、彼らの戦いを見る限り貴方達の持つポケモンで戦いなどしても無意味。もうやむを得ません、このままでは私達は全員捕まってしまうのですよ。イーブイの進化形など探せばいくらでもありますし、ここの1匹でも渡せば最低限の元は取れるはずです。心配はいりません、アレにはここのシャッターは破壊できない作りとなっておりますので逃げこめさえすれば安全です。さあ、最終兵器を目覚めさせるのです。その間に私は緊急脱出経路を解放しておきますので……」 幹部達は「KONG」を目覚めさせるため、急いで隣の部屋へと向かったがその表情は浮かない、むしろ恐怖と絶望を顔に出している。その後ろ姿を見ていたマスターKは全員の足音が聞こえなくなったのを見計らうとシャッターの隣に隠されていた黒いボタンを押した。するとシャッターが閉まった上に、幹部達がいた時にはなかったぶ厚いシャッターが降りてきた。 「……『KONG』が破壊できないシャッターはこのぶ厚いシャッター。そしてこれは永久に開かないのですよねぇ……。長い付き合いでしたが、あの位の腕前ならいくらでもいる事。それに死にますので私の名声が失われる事もない。さて、地上にいる雑魚共も一掃しましょうかねぇ……残すと面倒ですから。くっくっく」 マスターKは本棚を軽く動かす。すると謎のスイッチが幾つも現れた。 「さて……彼等とのお遊びもフィナーレにしましょうか。最後に苦しみと絶望にもがきながら死んでいく様……間近で見られないのが残念です。さて、サンダース、私達は脱出する事にしましょうか」 ---- 前回更新した中で最後に出てきた女ハンターがどうなったのかは最後に番外編として出す事にします。そのため一部削除しました。 指摘などあればどうぞ。 #pcomment(ブイズと仮面のコメログ,10,below); IP:111.191.241.24 TIME:"2013-04-17 (水) 22:14:35" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%83%96%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%81%A8%E4%BB%AE%E9%9D%A2%E3%81%AE%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0)"