ポケモン小説wiki
フライゴントーク8 ・ よくはないけど、それなりにありそうなこと の変更点


作[[呂蒙]] 




 今日は、雲一つない青空が広がっている。旅行初日としては、申し分ない。今日から1週間ばかり、ご主人は海外旅行に出かけるというので、ぼくもそれについていく、というわけ。家にいても暇だし、こうやって見聞を広めるのって悪いことだとは思わないからね。
 朝が苦手な癖に、旅行の時はものすごく朝が早い。飛行機に乗り遅れたくないって言うのは分かるんだけどね……。まだ、朝5時だよ?
「おい、ナイル! 起きろ!」
「も、もうちょっと、寝かせてよ……」
 こういう時のご主人は容赦がない。起きないと、耳元でがなり立てられる。はっきり言って拷問に等しい。
 ぱっぱと用意を済ませて、ご主人は準備万端。スーツケースをぼくに引っ張らせて、駅まで向かう。私鉄で、大きなターミナル駅に向かい、そこから空港行きの特急電車に乗り換える。それにしても、いつまでスーツケースを持ってればいいんだろう?
「うわっ!」
「ん? 何やってんの、ナイル?」
「翼が突っかかった……」
 なんで、特急列車とか、新幹線は乗車口が狭いんだろうね? こういう時は、翼が突っかからないように工夫しないといけない。肩に力を入れて、横に広がっている翼が真ん中で重なるようにしないといけない。この乗車口、ぼくにとっては非常にやさしくない設計だと思う。翼って、こういう時だけは、非常に邪魔っけだなと感じてしまう。普段は、空を飛ぶための便利な道具なんだけどね。
 何とか特急電車に乗りこみ、後は空港に着くのを待つばかり。
「ねえ、ご主人、この時間の電車だと、着くのが早過ぎるんじゃない?」
「いや、そうは思わないな。時間に余裕はあった方がいいだろ?」
 よく時刻表や、航空会社のホームページ、空港の案内板に「国際線に乗るときには、出発の2時間前までには航空会社のカウンターでチェックインを済ませましょう」といったことが書いてある。でも、それは、あくまで、人間だけの場合。ポケモンが一緒だと、パスポート以外にも必要な書類があって、チェックを受けないといけないから、もっと時間がかかる。何でそういうことをしないといけないかというと、ポケモンを海外で売り飛ばす、あるいは密輸入させないための制度らしい。だからご主人は、この旅行の前に、最初の目的地の国の大使館で「この人と、ポケモンは何の問題もありませんよ。入国させても大丈夫です」というお墨付きの書類をもらっていた。もっとも、あくまで「推薦状」だから、入国管理官の判断では入国させてもらえないこともある……かもしれない。まあ、やましいことがなければ大丈夫だけどね。これまで何の問題もなかったもん。
 ぼくらが乗る飛行機は午後1時の離陸予定だから、何の問題もなければ、4時間以上前に空港につく……はずだった。
 でも、何故か、こういう時間に制約がある時に限って、何かと足止めを食う。
 なぜか、途中で、電車が止まって、アナウンスがあった。この先で事故があったから、運転をしばらく見合わせるらしい。
「どうしよう……」
「まあ、大丈夫だろ?」
「暇だな……」
「1人いじりでもすれば?」
「できないよ、こんなところで!!」
 ご主人は、すぐに動くと思っていたらしい。けれど、20分、30分、40分と時間がたつにつれて、ご主人も焦ってきた。落ち着きが無くなって、イライラしているのが分かる。
 どうにか、電車が動いて空港には着いたけれど、すでに離陸まで3時間を切っていた。
「まずい、まずいぞ……。時間がない……」
 大急ぎで、手続きだとか、チェックインを済ませている。
「はぁはぁ……。何とか全部終わった……。後は出国審査だけだ……」
「お疲れ様」
 ご主人の額には、汗がにじんでいた。
 なんで、こういう時に限って、電車が遅れたりするんだろうね? いや、これに限ったことじゃないね、こう起きてほしくないときに起きてほしくないことが起こっちゃうっていうの。
ちなみに、ご主人、早く着いた時は、空港内でコーヒーを飲みながら、旅行先で具体的に何をするか、決める。そして、何を食べようかどこを優先的に回るかといったことに、妄想……ではなく、思いを巡らす。いやいや、妄想じゃないよね。あんまり禁欲的な旅をしてると溜まっちゃうかもしれないけれど、1週間だからね……。けれど、今日は時間の余裕がないから、コーヒーを飲んでゆっくりするのは無理だね。
出国手続きを済ませる。これで、ぼくらがいるのは、法律で言えば、もうこの国ではない。あとは、時間になったら、搭乗券を見せて飛行機に乗るだけ。
 搭乗ゲートの前で椅子に座って、搭乗開始時刻まで、間に合わないといけない。でもまぁ、間に合ってよかったな。
 周りを見ると、結構ポケモン連れの旅行者がいる。旅行のシーズンであるから、当然といえば当然なのかもしれないけれど。
「ご主人、結構、ぼくらと同じことする人がいるね」
「まあ、野郎同士で、旅行するようなのは、オレらくらいだろうがな」
「あー、そう。そういうこと言うんだ??」
「でも、行先がハワイとかじゃないからいいか」
「え?」
「だって、野郎同士が海で遊んでるなんて、気持ち悪いだろ?」
「んー、ま、まぁ、そうかな?」
「そうだろ?」
 

 おわり

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