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ファーメルンの草笛6 の変更点


ファーメルンの草笛6

小説内に官能表現多数。
♀→♂への強姦表現が苦手な方は退避しましょう。

[[ファーメルンの草笛5]]

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どきどきと胸が高鳴る。暗い室内……愛しの彼、丙君の匂いが染み付いたベッドの上で、私ははぁはぁと荒い呼吸を繰り返していた。
 体の中で熱く滾(たぎ)る熱情を収められない。どうしようもない興奮で、頭がどうにかしてしまいそうだった。
 ……無理もないか。彼が集落に越してきて早数年、今までこの想いを濃厚なシチューのように煮込んできたのだから。
 その熟した味わいのそれを、今宵ようやく味わうことが出来るのだし。
 ――予想通りというかなんていうか、彼の家の鍵はいつも通りの場所にあった。
 家の側面においてある、小さな植木鉢の中。一度として使われた形跡が見られないけど、それは植木鉢を大事にしているという事実をなによりも証明していると思う。
 因みにその植木鉢は、丙君と知り合ってから私が初めて彼に送った誕生日プレゼントだったりする。その中に隠されていた合鍵を使って、私は丙君の家に不法侵入したということだ。
 ここまでくれば、間違いないと思ってもいい……と自分では考えている。
 つまり。私たちは両思いなのだと。
 色々と思うことはあるけど、雌喜草の薬での結果が事実を物語っているだろう。
 ……昨日の昼食時、丙君の料理に仕込んだ雌喜草薬。
 ひとつの丸い錠剤で、円形のそれを半分に割った分量を、彼の飲んだスープに混ぜたのだ。
 そして、余ったもう半分の錠剤を、私が飲む。――そうすると、あら不思議。ある特異な作用で、薬を分けて飲んだ両者の想い(恋愛的な意味で)を検査できるのだ。
 ……因みに、私はその「特異な作用」で今朝大変な苦労をした。
 恐らくは彼も見たであろう淫夢。その強烈な熱に浮かされて。
 朝――それも3時の夜時に、発情して目を覚ましてしまったのだ。
 しかしまぁ、目を覚ました時にベッドのシーツがぐっしょりと濡れていたのには驚いた。それも、ちょっと寝汗をかいた、なんてレベルの濡れ方じゃない。
 幼い頃、体の冷えで目を覚ました時には既に手遅れになっている、アレみたいな感じ。……それと違うところとはと言えば、ずばりその後かもしれない。
 興奮して眠れなくなってしまったのだ。好きだとか嫌いだとかの感情論じゃあなくて、体が。雌としての本能が、強く色濃く表面化したせいで。
 ……でも、そのおかげだろうか。今朝から虎視眈々様なトラップワークを展開している自分が、確かに居る。
 丙君を、愛情という網で絡めとり。甘い囁きで動きを操作して。
 朝、彼と顔を合わせてからの私は、私のようで私じゃなかった。
 いつもならとにかく彼に振り向いてもらいたくて、気にかけてもらいたくて不器用な突貫ばかりしているというのに……自分で言うのも可笑しいが、昼間の私は魔性の雌であったように思えるのだ。
 どこかの偉いポケモンの格言で『雄は捕まえるものじゃない。誘い込むものだ』なんて偉大な言葉があったはずだけど、正にそれだ。
 でも、そんな想い想うだけの思慕はようやく終わる。今宵結ばれれば。
 あと少しの辛抱だ。私の狙い通りに彼が転がり込んでくれば、それだけで全てが成就されるのだ。
「まだかな……まだかな……」
 暗い室内。そこで響く、淫靡な水音。
 つぶやいて、ぼうっと彷徨わせる視線。
 幾重にも生えた尻尾の一つでぐりぐりと自らの秘所を弄くりながら、私はずっと彼を待ち続けていた。


 気にならないと言えば、それは嘘だった。
 謎めいた台詞。その言葉に含まれる真意。春菜先生のことは、医師という立場だけで見れば十分に信頼はしているつもりだ。
 だけど個人的な私情を挟むのだとすれば、それはもう全くの別物だった。
 狂おしい位に一途な性格。欲しいものはどこまでも追いかける執念。――時折表情の端に浮かぶ、不敵な笑み。
 丙は、それがこの上なく恐ろしかった。そんな魔女に眼を付けられてしまった自分が、心底恨めしかった。
 ――だけどまぁ。それが重要な、保身の為の武器にもなり得るわけで。
「……あーぁ。君子危うきに近寄らず、っていうのになぁ」
 考えながらも、丙の脚は自宅ではなく春菜医師の診療所へと向かっている。
 目的は簡潔だ。
 ひとつは、あのロズレイドの事。
 宿無しの彼に、何故追い立てるようにして集落から突っぱねたのか。――春菜らしいといえば実にそれらしいが。
 ともあれ、それは上辺だけの理由だ。それこそ今更。医師でありながら冷徹な心を持っている(と、丙は勝手に考えている)彼女にしてみれば、それはなんてこともないのだろう。
『私に対しての警告のようにも聞こえたのです』
 ――ロズレイドにして、そう言わせた所以。それが、今は無性に気になっていた。
 彼のような植物ポケモンには、黒点病が転移する可能性があることを、丙は十分に理解している。勝手ながら、丙は黒点病とその警告に、なんらかの関連性があるのではないかと考えているのだった。
 ふたつ。――と、いうよりはこっちが本題だ。
 それというのは、菫が飲ませてきた薬――雌喜草についてだった。
 菫の口ぶりからするに、どうも春菜医師に譲ってもらったもののようだし。彼女なら、詳しい効能について何か知っているに違いないだろう。
 ……ま、興奮に巻き込まれたまま、菫とゴールインしてもいいかなぁ、なんて考えている自分が居ることは内緒の話だが。
 それはそれでも、効能について知っていても損はしないはず。……雌喜草の正体が惚薬とか媚薬だったりしたら眼も当てられないし。
 そんなわけで。
 集落の外れにある、小高い丘。丙はそこにやってきた。夕焼けに染まる美しい花畑が望める場所としても集落では評判だが、今はちょっと時間が遅い。
 黄昏に染まりきった朱色の空は藍色の闇へと染まりつつある。……もしかしたら、今日は家に帰られないかもしれないな。
 そんなことを考えながら、眼下へと視線を送った。この丘を下れば、診療所は既に眼と鼻の先だ。
 悪くなっていく視界に気を付けながら、丙はその丘を下っていった。

「先生。先生! 居ますか!」
 こんこんと数回木製の扉をノックする。声も張り上げて呼びかけてみるも、やはり返事は無かった。
 ……出かけているのだろうか。
 否。それならば診療所の看板は裏返していくはず。彼女は間違いなく診療所の中に居るはずである。
 だが叫ぼうが叩こうが、どんなことをしようが扉の奥からの反応は皆無だった。
 暗くなっていく草原に音は吸い込まれ、無になる。
 ……何か、おかしい。
 恐る恐る取っ手を引いてみると、珍しいことに鍵が掛かっていなかった。いつもは戸締りに余念が無い筈の春菜医師。これはあからさまにおかしいのではないだろうか。
 ともあれ、ここで引き返すのも気が引ける。
「先生…? 入りますからね!!」
 躊躇いがちに診療所へと体を滑り込ませると、丙は長い廊下の先へと歩き出した。
 ……診療所の中は、やはりというかなんというか、明かりが取られていなかった。暗い廊下の彼方此方に取り付けられた灯しに炎を吹きかけながら歩いていく。
 真っ直ぐ、真っ直ぐ。丙は、ただそれだけを念じて歩き続けた。ぎしぎしと床の軋む音だけが診療所に木霊して、より一層心理的な恐怖を煽ってくる。
 もう帰ろうか、と三度目くらいに感じた頃、ようやく終点が訪れてくれた。
 診療所の廊下の突き当たり。行き止まりにつくられたその部屋には、資料室と書かれた看板がぶら下がっている。
 春菜医師は、患者が居ないときにはいつも資料室に篭っていることを、丙はあらかじめ知っていた。今日のところも、きっとそうに違いないだろう。――否、そうであって欲しい。
「先生、入りますよ」
 こんこん、と木製のドアをノックして、丙は資料室を覗き込もうとした。
 
『うわあああああああぁぁ!!!』

「?!」
 と、その時だった。
 丙が覗き込んだ資料室の、丁度反対側にある部屋。――『手術室』。
 鉄扉に硬く閉ざされたその部屋から、断末魔みたいな叫び声が聞こえてきたのは。
 ぎょっとしながら振り返ると、そこにあるのは重々しい鉄扉だった。
 それに近づいて聞き耳を立ててみるが、物音は特に聞こえてこない。先程の叫びは聞き間違いなのだろうか? いや、それは無いだろう。
「……」
 もしそれが、聞き覚えの無い赤の他人の叫び声であったのなら。丙だって、多分全速力で診療所から逃げ出していたことだろう。
 だが先ほど聞こえてきた叫び声。丙はその声の主を知っていた。
「尖尾……? 尖尾がここに居るのか?!」
 つい先日まで、身を挺して自分を守ってくれていた親友。――ま、昨日裏切られたといえば裏切られたが。
 先ほどの空気を切り裂いて聞こえてきた叫びは、間違いなく彼のものだった。
 何故今、この時間この場所に彼が居るのか。居ないはずの彼の声が聞こえてくれば、気にならない筈はない。
 ……手術室から聞こえてきた、という点も異常である。尖尾と、あともう一匹。誰か居るに違いない。
 順当に考えれば。春菜医師である可能性は高いか。
 鉄扉には、鍵は掛けられていないようであった。
 ゆっくりと押し開いて、中をそっと覗き込む。――すると、黒い闇に閉ざされた部屋の中。ぼうっと浮かび上がる手術台が一つ。
 尖尾は、その台の上に仰向けの格好で寝かされていた。
「尖尾! 大丈夫か……?!」
 思わず叫んで彼に近寄って……丙は絶句した。
 ぴくぴくと小刻みに痙攣している尖尾の体。寝台の上に寝かされた彼の四肢は、黒い革ベルトによって拘束され、文字通りに貼り付けにされていたのだ。
 だがそれよりも異常なのは、彼が体中に纏っている匂いだった。
 独特の生臭さが漂う室内。暗闇に透かしてみれば、彼の毒々しい体のあちこちには半透明の白濁がこびりていている……!
 その量の凄まじい事。――彼が激しい痙攣を起こしている理由も、ここでなんとなく納得がいった。
 そして、先ほどの断末魔の叫びの意味も。ここで一体……何があったのかも。

「丙君。自分から来てくれたんだぁ」

 だから、部屋の脇。
 ゾンビみたいな動作でゆらりと立ち上がった春菜医師の姿を見つけても、丙はそんなに動揺しなかった。

「先生……。 なんでこんなこと」
 ぴくぴくと小刻みに痙攣する尖尾。時折小さく呻き声を上げているのが妙に生々しい。その表情に張り付いている無機質な笑みも、なんだか今は恐ろしく見えた。
 そんな尖尾に歩み寄り、その汚れた体に前足を這わせる春菜医師。
 雄の柔らかい部分に触れて、彼の体中にこびり付いた穢れを舐め取っている。……その表情がなんとホラーでエキゾチックだこと。
 春菜の表情はいつになく暗い。確かに笑っているのだが、笑っていないのだ。
「せ、先生。聞こえてる?」
 ……そろそろ丙は、本当に恐ろしくなってきた。
 焦りから、高ぶった感情をぶつける様にして出した声。聞こえていないはずの無い声にも、しかしながら春菜はなんら反応を示してはくれない。
 ただ酷く緩慢な動作で。尖尾の体を撫で回し。舐め回し。思う存分にいたぶっているだけだ。
「うふふ。ふふふふふ」
 何が、どうなって。
 訳の分からない、恐怖にも似た感情が競りあがってくるのを抑えられなかった。
 思わず後ず去ってしまう丙。……だが、それをきっかけにして春菜は顔を上げた。その表情に張り付いているのは――汚い意思。
 丙を逃がさんとする、確固たる感情だった。
「丙君。丙君は逃げるんだ? 友達の尖尾君を見捨てて」
「ぐ……」
 見捨てて逃げる。これ以上屈辱的な言葉も、そうそう世の中には存在しないだろう。
 逃げるに逃げられなくなってしまった丙を見て、春菜はにっこりと笑う。……笑いながら、ゆらゆらとした足取りで丙に近づいてきた。
「丙君は逃げないよね。優しいもん。お友達を見捨てて逃げる、なんて卑怯な真似をするくらいなら……」
 ごくり。
 飲み込んだ生唾の感触が、何故か今は無常に鬱陶しく思える。
 一歩一歩、少しずつ確実に近づいてくる恐怖の幻影に、どうすることも出来ない。
「自分から体を捧げる様なポケモンだもん」
「……」
 買い被りすぎだ。
 自分で言うのもなんだが、丙はそこまで正義感溢れ真っ当で自己犠牲新の強いポケモンではない。

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蒼い鳥を聴きながら。
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- スフ
――[[クフ]] &new{2009-09-13 (日) 14:32:47};
- 逃げるのだろうか……… それとも………?
――[[Fロッド]] &new{2009-09-13 (日) 17:33:04};

#comment

IP:133.242.146.153 TIME:"2013-01-30 (水) 14:44:09" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%8D%89%E7%AC%9B6" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0; YTB730)"

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