エロです。無理!!って人はバックバック ---- 「ウコン!笑って笑って。ほら、にぱ~って」 「………五月蝿い」 「それは怒った顔でしょ?僕は君に笑って欲しいんだってば」 「お前が笑っているから良いだろう」 「僕が笑ってもウコンは笑わないじゃない、それじゃあ駄目だよ。だから笑って♪」 「……お前は本当に馴れ馴れしい奴だな……」 二匹のポケモン達がへんてこりんな会話をして木漏れ日の午後を過ごしている。辺りは自然の森が広がっており、荒れた獣道にはいろいろな雑草が好き放題に生い茂っている。 空は雲ひとつ無いいい天気で、どこまでもどこまでもどこまでも―――美しい空は何処までも。遥か彼方、久遠の彼方まで広がっている。隙間から漏れ出す光が会話をしている二匹のポケモンに降り注ぐ。その姿は光合成をしている草ポケモンに見えなくも無い。 光に照らされて二匹のポケモンの姿が露になる。一匹は犬のような顔に太い二の腕、胸部に大きな角のような物が生え、青と黒で構成された綺麗な色合いをしているポケモン――ルカリオだった。 もう一匹は黒色に白色、まるでモノクロを思わせる単調な色つきに、顔の横についた大きな鎌のような鋭利な刃物。ルビーのような綺麗で透き通った赤色をしているポケモン――アブソルだった。 二人は他愛の無い会話をしながら森の中を進んでいく。他愛の無い会話とは、先程の笑う。という会話だ。アブソルがルカリオにしょっちゅう笑ってといっているため、ルカリオは疲れたような顔をしてそっぽを向いている。 「ウコン、笑おうよ。笑えばハッピーな気分になれるよ♪」 「ハッピーな頭はお前の頭だけで十分だ。いいから黙れ、ラック」 ウコンと呼ばれたルカリオは右手でしっしっ、という仕草をしてラックと呼んだアブソルを蝿を追い払うがごとく遠ざけようとしたが、ラックはにぱっと笑って、ウコンに問いただした。 「どうして~?黙らないといけない理由を300文字以上400文字以内に説明しなさ~い。句読点も一文字にはいるから…」 「うるさい」 「四文字~?」 邪険に扱われたことも気にせず、ラックは笑いながらウコンにぴったりとくっ付いて、頬を摺り寄せた。ウコンは顔を少しだけ紅潮させてたじろいだが、すぐに気を引き締めるとラックと離れて距離をとった。そして馬鹿な教え子を諭すような口調でラックにこう言った。 「あのな、さっきいた所の木の実はあらかた採りつくしてしまったんだぞ。これ以上あんな所にいたら茸くらいしか食うものが無くなる。そもそもこの森に食える茸があるかどうかまだわかっていないんだ。だから場所を移して食べられる木の実を探しているのはお前もわかっているんだろう」 「えっ?そうなの??」 「…………おい!」 「嘘嘘ゴメ~ン。ちゃんと分かっているってば。ホントにホントのホントだよ?」 「……嘘臭いな……」 ラックはニコニコ顔をまったく崩していない。ホントかどうか分からずに、ウコンは頭を抱えた。ラックといると何故だか精神的にくるのだ。 気を取り直してウコンは話を続ける。相変わらずラックは笑顔を絶やしていない。なんだかそれが不気味でもあった。 「……話を戻すぞ。とにかく、さっきの場所で木の実はあらかた取ってしまった。茸は食用か毒か分からん。だから場所を移して、木の実や魚を取るんだ。そうすればもう少しは持ちそうだからな…って、オイ聞けよ!!」 ウコンは獣道の端でケムッソと戯れているラックを引っつかむと、無理矢理顔をこっちに向けさせた。至近距離で顔が近づき、ラックの黒い顔は恥じらいと期待と不安の入り混じった顔で赤くなった。 「わぁっ!これはもしかして運命のキス~?だったら僕は運命に逆らわずにウコンとキスを~――痛ぁ!」 思い切りホッペを抓られて、ラックはびっくりしたようにウコンを見ると、すぐに顔をぶんぶんと左右に振ってウコンの指を引き離そうとした。 「いひゃいいひゃい~、うこんはなひて~、暴力はいけないんだよ~――きゃんっ!」 いきなりウコンが手を離して、ラックは勢い余って尻餅をついた。お尻を強く打ったのか、起き上がったときお尻を摩っていた。 「いったぁい。もぉ~、お尻打っちゃったよ。傷物になったらウコンが責任とってよ~?」 ラックは痛みでむすっとしていたが、すぐに笑顔に戻って、ウコンに怪しい視線を送った…が、ウコンはそれを完全にスルーして、冷たい視線をラックに送った。 「俺より強いくせに何が傷物だ。お前、戦闘で傷一つついてないだろ」 「え~?何のこと~?マグレだよマグレ~」 「マグレが20回以上続くかっ!!」 ウコンはいきり立って笑っているラックに大声で怒鳴った。これもウコンをカリカリさせる原因の一つだった。 つまり――ラックはウコンの数倍くらい戦闘能力があるのだ。 …ポケモンというのは基本的に本能で行動している。自分に危機が迫ると事故防衛本能が働き、目の前にいるポケモンを倒そうとするのが基本である。森というポケモンが集まる場所では、そういう戦闘は避けられない。災いポケモンと呼ばれるアブソルは、多くのポケモン達に危険な存在と認識され、アブソルについているポケモンも危険だと考えられている。そのため多くのポケモン達がウコンとラックを襲ったが、二人はその辺にいるポケモンたちとは生きてきた世界が違うため、特に危なげも無く撃退できてしまう。 しかし大型となると話は違ってくるだろう。強力な攻撃はウコンもてこずっていたというのに、ラックは息をするように大型のポケモンたちも撃退している。自分に不利なタイプのポケモンが現れても、ラックは決して屈服しようとはしない。経験と工夫、柔軟性と野性的な勘を総動員して、あくまで抵抗を続けて、ついには敵の隙をひねり出し、その気を逃さず致命的な反撃を叩き込む。そうしてどんなタイプのポケモンも退けていったのだ… なのに本人は楽観的で、危機感を持っていない。食料が尽きたら大変なことになるということよりも、ウコンが笑わないことが大変と思っている節があるのだ。 これはどう考えてもおかしいだろう。食料調達も、戦闘技術も、野性的な感性も、全てが全て、ウコンを上回っているラックが、どうして危機感を持たないのかがウコンには理解ができなかった。 「…そもそもどうして俺はこいつと一緒にいるんだ?」 マグレマグレと繰り返して笑っているラックをちらりと一瞥し、今更ながらどうしてだろうと思ったが、いつもの答えが頭の中に返ってくる。 それはラックとウコンが出会った時だった… ---- 「君、どうしてそんなに怖い顔してるの?笑おうよ♪」 「……」 俺とラックが出会った時は、同じような質問だった。そのころの俺は強力なバリアのようなものを張って、周囲との交流を完全に隔絶していた。そんな仲、一匹だけ俺に話しかけた物好きな奴がいた…それが――ラックだった… 「君は何処から来たの?」 「知るか、災いポケモンと一緒にいると不幸になる、何処かへ行け」 初対面のポケモンに対して冷たい対応。これで大抵のポケモンは呆れるか怒るかのどちらかで帰ってしまう。それでいい。それが俺の目的だからだ。 友達なんて得に欲しいと思ったことは無い。そもそも俺は気がついたときから天涯孤独――とまでは行かないが、とにかく一人のときが多かった。一人は一人で寂しいのかもしれないが、俺はむしろ好都合だったのかもしれない。一人でいれば特に他者を意識することなく気ままに生きていけると夢想していたからだろうか… だから、今回もこれでポケモンは寄り付かなくなる――はずだった。 「君、名前は何ていうの?僕はね、ラックっていう名前なんだ。お父さんとお母さんが付けてくれた良い名前なんだって」 「聞こえなかったのか、何処かへ行けといっている」 「ほら、僕ってアブソルじゃない?君が言ったみたいに災いを呼ぶポケモンって呼ばれてるんだよね、だから両親が幸せな人生になるようにって、ラックっていう名前をつけてくれたんだよ」 「人の話を聞け」 俺が言ったことにもラックは動じなかった。それどころか自分の生い立ちをいきなり語りだして、俺に近づこうとした。…こんな面倒臭いタイプのポケモンは初めてだった… 「君の名前も教えてくれるかな?僕達きっと友達になれるよ♪」 ここまで俺に話しかける奴も珍しいとは思ったが、俺に言わせてもらえばこれほど鬱陶しい奴も珍しい。人の話を聞かないし。やたらと笑っているし… 「お前は人の話を聞いているのか?消えろ」 「聞いてるよ?だけど君、僕の話は聞いてくれないじゃない。だから僕の話を聞いてくれるまで僕は君の傍にいるよ?だって僕達…友達じゃない」 一瞬だけどびっくりした。目の前にいる奴は俺のこと友達だと言い張った。初対面の奴にそんなことがいえるわけが無い…しかし、こいつはそんな言葉を日常会話のように使っていた… こいつと俺、何処がどう違うんだ?俺と同じポケモンで、俺と同じ生き物。しかし、こいつは俺とは違う何かを持っているのかもしれない。…あと違うところといえば…頭のネジが五、六本抜けているところか… だけど、俺はそいつを追い払うことにした。これ以上こいつの話を聞いていると頭がおかしくなりそうだったから…いや、俺は恐れていたのかもしれない… ――一人でいるということが…崩れ去るということが… 「お前が俺の視界から消えないというのなら、お前を殺す…」 凄みをつけていってやったつもりだったが、ラックはニコニコしたままこう言った。 「わぁ!僕を"殺す"の?凄いや、是非やってみてよ」 そう言ってにっこりと笑った。作り笑いではない。本当に心から出た笑みだった…それが俺にはとても不気味なものに思えた… 「後悔するなよ?」 ゆっくりと立ち上がり、右手に波動のエネルギーを集中させる。殺すつもりなど毛頭無かったが、足の骨を折るくらいのエネルギーはぶつけてやるつもりだった。こうすれば俺を恐れて追ってくることは無くなる… 相変わらずあいつは笑っていた。まるで今の状況を楽しんでいるようだ。俺にはそれが相当恐ろしかった。…こいつは怖くないのか?恐れていないのか?自分が攻撃されることを… 「はぁっ!!!」 目の前にいるラックに向けて思い切り叩き込んだ"はどうだん"は、真っ直ぐに伸びていって――ラックの目の前で思い切り弾けとんだ。 「!!?」 弾かれた。と思った刹那、いつの間にか接近していたラックに押し倒されて、首に鎌を突きつけられていた… 「なっ…うぁっ…」 「僕の勝ち」 ラックはそう言って薄い微笑を浮かべた。俺はそのときにラックの目を見た… ――それはそれは、たいそう真っ赤に燃え上がっていて、刈り取るものの目をしていた。ラックはすうっと鎌を話すと、先程の笑顔に戻ってこう言った。 「君、弱いんだね。そんなんでよく今まで生きてこれたね。もしかして、戦いは今のが初めてだったのかな?」 図星だった。確かに俺には戦闘経験など皆無といっていいほど無かった。一応訓練は毎日欠かさずしていたので、それなりの力はついていた。だからこそ今まで話しかけたポケモンたちも俺とは戦わなかったのかもしれない。だが、ラックは違った。俺と戦い、俺より強いことを一瞬で俺の脳に叩き込んだ。 「僕はね、もうずっと昔からポケモンを殺し続けてきたんだよ。災いを呼ぶものとしていろんなポケモンが僕を殺そうとしたんだ。僕は必死に戦ったよ――そして、殺した。いろんなポケモンを殺した。嫌だったけど殺した。だって殺さなきゃ僕が死んじゃうもの。それで否応なしに戦う力が身についた…僕は嫌だったよ?平和に笑って過ごしたかったけど、それも無理だったから…殺した」 くすくすと笑いながら語るラックの顔に、悲しみの影がよぎる。俺はラックの話をただ聞くことしかできなかった… 「だから君も、殺すなんて言わないでよ。笑った方が、殺すことよりも楽しいよ」 そう言って、また笑う。本当に心の底から笑ったということが見てわかるような笑顔だった。俺は静かに乱れた呼吸を整えて、一言搾り出した。 「お前、変な奴だ」 「君もね。お互い様さ。それに僕の名前はラック。"お前"って名前じゃないよ」 そう言ってラックはニコニコしながら顔を近づける。互いの息がかかる距離にまで近づいて、ラックはこう言った。 「決めたよ、僕は君が笑うまで君の傍にいる。君が嫌だって言っても君の傍にいる。君が笑ってくれるなら&ruby(・・・・・・・・・・・・・){僕はどんな犠牲を払ってでも};君を笑わせてみせる」 微笑を崩さないままラックが当然のようにつげる。俺は正直に言ってかなり疲労していた。それにこいつの――ラックの言った言葉、まるで&ruby(スマイルジャンキー){笑顔中毒者};だな…と思った。 無言のまま立ち上がり身体についた砂を払って、俺はすくっと立ち上がる。そして目の前にいる笑顔中毒者にこう言った。 「…行くぞ、ラック」 「へっ?」 「俺についてくるんだろう?俺の名前はウコン。さっさと行くぞ」 「……うふっ。よろしく、ウコン」 ラックは笑った顔を更に歪ませて笑った。そして歩き出した俺の後を何処までも何処までもついていった… これがあいつとの出会い、そしてあいつは言ったとおり俺が笑うまでついていった。 ---- 「ウコン~??どうしたの?歩みが止まっているみたいだけど」 「ん?ああ、なんでもない。ちょっと考え事をしてただけだ」 ラックの一言で現実に引き戻されたウコンは雑念を振り払って周りを見る。だいぶ進んだようであたりには見たことも無いような木々が立ち並び、行く手を阻んでいる。ウコンとラックはそれらを避けるようにして歩みを進めて――急に広い場所に出た。 「あれは…天然の洞穴か……」 「わぁ、池もある。魚もいるし、そのへんの木には木の実も生えてるよ」 広い場所にある木々にはポケモン達がよく食べる木の実が大量に生えていて、風に揺られていた。左の方には小さな池があり、そこには脂の乗った魚が優雅に泳いでいた。その更に奥には自然の力でできたような洞穴がぽっかりと口をあけていた。ウコンはほっとしたように腰を下ろすと、マユルドと戯れているラックを手招きして呼んだ。 「なぁに?どうしたのウコン?婚姻届なら手続きを踏んでから…」 「お前のチャランポランなギャグに付き合っている暇は無い。食料調達の役割を分担するぞ」 「……結構本気だったんだけど……」 むすっとするラックを尻目にウコンは右手にある木の実の木を見つめて、その次に左手の魚の群れを見つめたあとに、真っ直ぐラックを見つめると、真剣な顔つきになってこう言った。 「木の実採取と魚とり、どっちがいい?」 「……木の実…」 「奇遇だな、俺もだ…」 「ふぅん…じゃあ&ruby(・・){アレ};で決めようか…」 ウコンとラックは真剣な顔つきになって対峙した。ラックはいつもの笑顔は消えうせて、ウコンは引き締まった顔をさらに引き締めて――右手をゆっくりと上げた。それと共にラックも右前足をゆっくりと天に掲げる。 「あの時は一瞬の油断が俺に敗北を招いた。だが、今回は一片の迷いも油断も無い。全力でお前に勝ってみせる…」 「……どうかなぁ?こっちだって負けるわけには行かないんだよね」 ラックが不適に笑う。二人は闘争心を剥き出しにして睨み合った。片や波動を司る勇者と称えられるポケモン。片や災いを呼ぶ凶星と恐れられるポケモン。…最強クラスのポケモン二匹が互いの意地と誇りを賭けて一世一代の大勝負に挑もうとしていた… 吹き荒れる風、乱立する大地、震える大気。二人は互いの手の内を読みつくし、どの方法が効率的に相手を屈服させることができるのかを考えている。緊迫した空気は数十秒ほど続き、ウコンが声を出した。 「いくぞ……はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 「………ふぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」 ウコンとラックは静かに息を吐き出すと、掲げていた右手を大きく振り下ろし―― 「「じゃんけんぽんっ!!」」 形を変えて相手に突き出した。 ウコンがグー、ラックがパーだった。 「やったぁ!」 「馬鹿なっ!」 ラックは有頂天になってはしゃぎ、ウコンはがっくりと頭をうなだれて自分の出したグーを見つめていた… 超人同士のじゃんけんは凄まじいものになるという話がある。それはじゃんけんが両者の時の運ではなく動体視力によって決まるからだ。相手の出す手を見切り、素早く自分の手を変える。それを繰り返し、出し切ったときに相手より上回っていれば勝つことができるのだ。正直に言ってしまえば、そんなじゃんけん、楽しくない。 「じゃあウコンは魚をとってきてね♪僕は木の実を取ってくるから」 ラックはにこやかに笑うとスキップをしながら木の実の木に向かっていった。残されたウコンは重い足取りで魚の池に歩を進めた。 ウコンは魚とりは嫌いだった。水中でスピードのある魚は動体視力を活用すれば簡単に捉えることができる。しかし掴んだときにぬるりと手から抜けてしまうことが多々あるために一匹捕まえるのに五~六分かかってしまう。ウコンはため息をついて、目を閉じて神経を研ぎ澄ます。 りぃん、と何かが共鳴したような音が池全体に響く。ウコンは指先に集まった青白い光を池に送り込む。その瞬間凄まじい水しぶきが湧き上がり、池にいた魚が次々と浮き上がった。 「ふっ!」 ウコンは素早い手つきで魚を四匹掴み――取れなかった。掴んだ瞬間にゅるっと掌から抜け出でそのまま池へダイブ。振り出しに戻ってしまった。 「…何故掴めん…」 別段鰻を相手にしているわけでもないのに、魚が掴めない。魚が自分のことを嫌っているのではないのだろうかと、ウコンは思ってしまった。…だがここで諦めてしまっては、タンパク質のあるものにありつく事はできないし、何よりも自分だけ取り分が無くラックの集めた物のお零れに預かるというのはそれはそれで何だか嫌だった。 「…だから魚とりなんて嫌だったんだ…」 誰もいない事を確認して、ウコンは大きなため息をついた。 ---- 一方ラックは軽やかな動きで木に登り、次々と木の実を取っては麻袋の中に放り込んでいく。ウコンとは対照的な動きをしていた。あらかた木の実を採りつくした後、木から飛び降りてウコンの様子を見た。 「…ふふっ」 思わず失笑を漏らしてしまうほど、ウコンの動きは不恰好だった。魚を掴んではするりと抜けられ、掴んでは抜けられ、を繰り返して、もはや我武者羅になって池に手を突っ込んでいる。他人から見ればかなり面白い動きだが、ラックは真剣な顔でウコンの姿を見ていた。 「頑張れ…ウコン」 自然に出た応援がウコンに届くことは無かったが、それでもなんだか応援してあげたくなるような姿だった。 ……だが、ウコンは一行に魚を捕まえている様子は無い、それどころか、ぜいぜいと喘ぎ、池から這い出て休憩してしまった… 「……助言くらいしてあげよう…」 傍目に見ていたラックは木の実の入った麻袋を背中に載せ、ウコンの元へ駆け出した。 「ふぅ…よし、もう一回」 十分休憩したのか、ウコンはすくっと立ち上がると、もう一度池に入ろうとして――いきなり後ろからかけられた声に動きを止めた。 「魚を掴むときはね――」 「ん?」 そういうが早いか、ラックは盛大にジャンプして、思い切り池に飛び込んだ。派手に水飛沫があがり、盛大に水が叩きつけられた。十秒、二十秒、ラックはまだ浮かんでこない。ウコンが流石に心配になって池に飛び込もうとした瞬間、ラックが浮き上がってきた。 両の前足にそれぞれ三匹、口に一匹の魚を咥えて。 「&ruby(こうすればいいんだよ){ほうふへはひひんはほ};」 口に魚を咥えたまま奇怪な言葉を口にしたが、ウコンは大体の意味はわかっている。だが、手本を見せられたからといってそれが実演できるかといえば無理である。 「ちゃんとした言葉を喋れ」 「んぷっ…んむぅ…口の中がヌルヌルだぁ」 池から上がり、口の中の魚を地面の放り出し、指を口の中に突っ込んで出す。ヌルヌルした唾液が水あめのように伸びる。ウコンはしかめっ面をしてラックのとった七匹の魚を恨めしげに見つめていた。 「俺はお前みたいに何でもできる万能野郎じゃないんだ、手本を見せられてもいきなりそれができるか」 負け犬の遠吠えのようにウコンは言葉を吐き出す。ラックは湿った身体を艶やかに光らせて、艶っぽい微笑をウコンに向けた。 「ん~、僕にもできないことはあるよ」 「へぇ?どんなことができないんだ?」 「子供を孕むことだよ、一人じゃできないもん。男の子と一緒じゃないとね」 至極当然といった口調でラックは身体についた水を飛ばした。ウコンは顔を真っ赤にして怒鳴った。 「平然と卑猥な言葉を言うなっ!!」 ウコンの言葉にラックはむすっとして反論した。 「卑猥?どこが卑猥だって言うのさ。僕たちポケモンは互いに気になる異性と番の気持ちを確かめ合って愛の証明をする。そして子供を孕むんだよ。いわば子供は番になったポケモンの愛の証でしょ?生命の神秘じゃないか。そんな神聖な行為のどこが卑猥だって言うのさ」 凄まじい理屈をぶつけられたウコンは顔を紅潮させたまま押し黙ってしまう。ラックは水を飛ばしきった身体を温めるために日のあたる場所に移動して、さらに続ける。 「親は子供を愛することを許された唯一の存在。だから子供は親の愛を受けていろいろな感性が育っていく…そして大人になった子供はまた番を見つけて愛を育んでいく…だから愛されてない子供は可哀相だよ…笑顔を知らないまま育っちゃうなんて…」 「……それは俺に対しての挑戦状か?」 ウコンはむすっとした顔をラックに向ける。ラックとは正反対に、ウコンは親の顔も知らないまま一人でずっと生きてきた。それに対する皮肉なら受けて立つといった顔でラックを見たが、ラックは静かに首を横に振って話を続けた。 「ウコンだけじゃないよ。この世界にはいろいろなポケモンがいる。愛情を受けて育ったポケモンもいれば、まったく愛を受けることができなかったポケモンもいる。でも、種族の言い伝えや、変な迷信のせいで愛を受けて育っても色々な苦労をするポケモンだっている・・・そう考えると、僕は幸せ者なんだなって…」 ウコンは俯いたラックを尻目に、ラックの言った言葉について考え始めた。先程言ったのはラック自身のことを指しているのだろう。災いを呼ぶとされているポケモンアブソルは、その狂信めいた迷信のせいでまともな生活を送ることができなかったのだろう。だが、ラックは自分は幸せ者だと言っていた。それはどういうことだろうか。愛情を受けて育ったことを言っているのだろうか、それとも別の何かを言っているのだろうか。 「どうして自分が幸せ者だと思えるんだ」 ふと感じた疑問から、ウコンはラックに聞いてみた。ラックはウコンのほうを向いて、酷くはっきりとした声で告げた。 「どうして?答えは簡単だよ。僕は笑顔を知ってるからさ。笑顔を教えてもらったこと、これは幸せ者の証だよ」 ウコンはお手上げだ、といったように両手を挙げた。全くわからない。笑顔がそんなに大事なのだろうか。そんなことで幸せになれるなら俺は笑い続けるだろう。 「聞いた俺が馬鹿だった」 「僕は本気だよ」 至極真面目な声でラックが告げる。 「ウコンは笑顔を知らなさ過ぎるんだよ。騙されたと思って一度でもいいから笑ってみなよ。幸せになれるよ?」 「作り笑いでもか?」 ウコンの言葉を聞いたラックが言葉に詰まった。どう返して良いのか分からずに、視線を左右に泳がせている。ウコンはラックから視線を逸らすと、こう言った。 「作り笑いで幸せになれるなら。俺でも笑っている。…ラック、お前は俺に言ったな、俺は笑顔を知らなさ過ぎると、ならば言わせてもらうが、お前も俺のことなんぞこれっぽっちも分かっちゃいないだろう」 そういうと、くるりと踵を返して天然洞穴の方へと歩いていった。 「……どこ行くの?」 「瞑想だ。二日間はあの洞穴の中にいる。絶対に入ってくるなよ」 ウコンはそのまま洞穴の中へと消えていった。残されたラックは、ウコンの言葉が頭に染み付いて離れなかった。 「俺のことこれっぽっちも分かっちゃいない……か」 ラックの瞳はどこか虚ろで、生気が感じられなかった。口からは重い溜息が出て、ウコンが入っていった洞穴をずっと見続けていた。 「分かっちゃいないんじゃなくて、君が話してくれないだけだよ、ウコン」 ラックは真っ暗な洞穴の入り口を見つめて、誰に言うわけでもなく、ただ一言、そう呟いた ---- ウコンは座禅を組んで静かに目を閉じると、身体の力を抜いた。雑念を全て捨てて、心の中を空っぽにし、神経を集中させる。瞑想をするときによくする前準備の一つだ。 「……」 身体に洞穴の冷たい風がひゅうひゅうと吹き付けるが、そんなものでウコンは動じない。自然と一体化し、無の境地に辿り着き、気配を完全に消して、この世の欲を全て捨て去ることにより、瞑想は完成する。何故だかわからないけど、身体がそれを覚えていた。 ――どうしてそんなことを覚えているのだろうか…? まったくわからない。そもそも自分には幼少期の記憶が無い。それは何故なのだろうか?それもわからない。そんなことはどうでもよくなっていく。瞑想をしていると心が安らぐ。風の声を聞き、水の音を捉え、大地の答えを問う。自然と一体化することこそが、無の境地になる。 ――何故そう思えるのだろうか? それもわからない。だが、そうすることによって頭がすっきりするのは確かなのである。瞑想をして、波動の力を高めれば、アイツの強さに近づくことができるのかもしれない…あいつは強い、しかし、弱い。どちらも正解で、どちらも不正解である。よく分からない。何を考えているのだろう…? ――アイツとは…ラックのことなのだろうか?? ……ああ、そうだろう。アイツとはラックのことだ。ラック以外に俺は知っているポケモンがいない。ラックは無理矢理俺についてきた。最初は変な奴だと思っていたが、今はどうだろうか?変な奴だと思っているのだろうか??―――否。今は違った考え方をしているだろう。ラックは今や俺の中の日常で当たり前のような存在に変わってきている…どうしてそう思うのか。それは今まで過ごしてきた時間が長かったなどという陳腐な答えではないだろう。 ――ならば何故、ラックは大切な存在になっているのだろうか… 答えは簡単だ。ラックは他のポケモンと違い、いつも笑っていた。その変な癖が、俺に新しい世界を見せてくれたのかもしれない。一人で見るのと二人で見るのとは、視点や考え方も全て違ってくるというものだろう。今までは一人で生きてきた。ラックとであって、ラックと一緒に旅をして、今までの価値観はがらりと変わった。それは一人で見るのと二人で見るのとの違いである。今までは一人、これからは二人、その些細な違いが、俺を変えてくれたのだろう。アイツは変な奴だが、悪い奴ではない。…頭のネジは七本ぐらい緩んでいるのかもしれないが… ――そもそも何故ラックはついてきたのだろうか? ラックは俺が笑うまでどこまでもついてくるといった。初対面の奴に友達と言い張って、俺の笑顔を見るまで絶対に離れないと意気込んでいた。傍から見ればかなり変な性格である。それどころか、ストーカーの域まで入っているのかもしれない。しかし、ラックが笑顔を大切にすることには理由があった。それは自分の生きてきた世界が血と狂気に満ちた世界だからこそ、その世界でもっとも必要とするもの。それすなわち笑顔なのだろう。おそらくラックの心の中では、笑うということは陰陽で例えるならば陽の力になるのだろう。自分の存在が陰という存在であるが故に、陽の力を求める。玩具を欲しがる子供と同じ理屈かもしれない… ――では、自分が笑ったとき、ラックはどうするのだろうか? 答えは不明、未確定、まだわからない。ラックは俺が笑ったらどうするのだろうか、・・・更なる笑顔を求めて他の土地に言ってしまうのか、それとも自分の幸せを探すために遠くの世界に旅立ってしまうのだろうか?否、ラックはそんなことはしないだろう。するとしても前者の答えが最も近いかもしれない。ラックは笑顔中毒者だ。俺の笑顔を見たら自分のことを見つめなおすのかもしれない。そうして俺の元から離れてしまうのだろう。 ――もし、ラックがいなくなったら、自分はどういう反応をするのだろうか…? おそらく、何も感じることはない…そう思いたい。自分は一人だった時間が長すぎた。ラックと過ごした時間が短すぎた。しかし、長くいた一人の時間の記憶よりも、ラックといた二人の時間の記憶の方が鮮烈に脳裏に焼きつくのは何故だろうか?…答えはわからないが、それはきっと一人の時間よりもラックといた時間が楽しかったからだろう。それ故に、ラックがいなくなると途端に胸が締め付けられる気持ちが強くなるのかもしれない。そんな気持ちなど持ったことが無い。これはどういうことだろうか?多分、俺はラックのことが…気になるのだろう。でなければ一緒になどいない。だから俺は笑わないのだろうか?もう十分笑顔というものを知ったし、それを出すことのできる生活をしている。今の生活は緩く、昔の狂気に満ち満ちた生活に比べると随分と腑抜けているが、この生活も悪くない。そう思っているためきっと笑顔も自然と出るのかもしれない…だからだろうか?笑顔を出したくないというのは…もし自分が心の底から笑顔になれる時が来たら、ラックはきっと自分のもとから離れてしまうだろう。何となくだけど、そう思えてしまう。それが嫌だから、意地になって、笑顔を絶対に出さないようにして、今の生活を続けているのだろうか… ――わからない…全くわからない… 雑念を振り払ったつもりだったが、全く集中できていない。しかし、身体は微塵も動かずに地蔵のように座っている。そんな状態が続き―――気がつくと二日間経っていた。 「ふう…そろそろ出るか…」 極限状態の瞑想のためだろうか、極端に腹が鳴っている。外の様子を波動で探ってみると、どうやらこの二日間で雨が降ったらしい。湿気の具合を確かめてみると、土砂降りの様だ。 「…ラックは…何やってるんだ?」 変なことを考えていたためラックの動向が妙に頭の中に残っていたが、きっと魚を焼いて木の実でも貪っているのだろうと考え、外に出た瞬間目にしたものは――― ――荒い息をついて、雑草の上に横たわっているラックの姿だった… ---- 「ラック!!」 ウコンが慌ててラックに詰め寄り、身体を抱えて抱き起こす。ラックははぁはぁと荒い息をついて、顔を紅潮させてじぃっとウコンを見ていた。その瞳も虚ろで、ウコンを見ているのか、ウコンの背後の木々を見つめているのか全く分からない。ウコンは恐る恐るラックの額に手を当ててみると――案の定かなり熱かった… 「……あ、ウコ…ン?……どうしてここにいるの?もう瞑想は終わったの??」 ぼうっとした顔でウコンを見ると、にへらと笑って力なく手をひらひらと振る。ウコンは額から手を離すと、ラックに向かってこう言った。 「ラック、お前、風邪引いたのか?どうして雨が降ったときに洞穴に入って雨宿りしなかったんだ!」 「アレ?どうして雨が降ってたって分かったの?もしかしてエスパー?それとも波動のチカラで察知したのかな?」 「俺の質問に答えろ!!」 病人に怒鳴ってはいけないのだが、ウコンはお構いなしにラックに問いただす。ラックは暫く黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。 「だって、ウコンは入っちゃ駄目って言ったから、僕はそれを守って入らなかったんだよ」 ウコンははっとした。確かに瞑想は神経を集中するため周りに雑音を入れてはいけないのだが、まさか自分の言ったことをここまで忠実に守るとは思わなかったのだろう。しかし、それでも何処かの木々の下で休むということもできたはずだった… 「……確かに洞穴に入るなといった俺が悪かった。…だが、せめて木の下で休んで雨が上がるまで待てばよかったのに・・・なんでこんなところで棒立ちしてたんだ…」 ウコンの言葉に、ラックはつらそうな顔でまたにこりと笑うと――信じられないことを口にした。 「ウコンは言ったよね…僕がウコンのことなんてこれっぽっちも分かっちゃいないって。…だからウコンの気持ちが分かるかなぁって思って、僕も洞穴の入り口で瞑想してみようと思ったんだよ…瞑想し始めて二時間くらいたったら、急に雨が降り始めてね……でも、これくらいの雨で動いちゃ、ウコンの気持ちは絶対に分からないと思ったから、雨に打たれても瞑想を続けて…風邪引いちゃった…」 荒い息を吐きながら精一杯の笑顔でそういったラックは、どんどん瞼が沈んでいって、そのまま力なく眠りについてしまった。残されたウコンは、苦しそうな呼吸をして眠っているラックを見つめて、小さな悪態をついた。 「何でだ…何でラックはそんな風に笑ってられるんだ…自分の体調を崩してまで…何で俺に…ここまでするんだ…!!」 俯いて身体を震わせ、ラックを抱きしめる腕に力がこもった。そのとき、眠ったはずのラックがぴくりと動いて、ゆっくりと目を開けて口を開いた… 「それはね…ウコンに笑って欲しいからだよ…ウコンは……怖い顔と、辛そうな顔と……哀しい顔しか……しないから…お母さんに教えてもらった魔法の言葉……"笑顔は心に咲く希望の力"……この言葉を信じてたから僕は笑顔を大切にしたんだよ…そんなこといえばウコンはまた頭のネジが緩んでるとか言うかもしれないけど…それでもいい、どんなこといわれたって、どんな扱いを受けたって構わない。僕はどうなってもいいから、一度だけ…一度だけでいいから…笑ってよ、ウコン。僕は……ウコンの笑った顔が……見てみたいな」 そう言ったあとに、また瞼を落として眠りにつく。ウコンはラックの辛そうな寝顔を暫く見つめて何かを考えていたが、すぐに何かを決意すると、ラックを楽な姿勢で寝かせたあとに、小さく呟いた。 「今はお前を風邪を治すのが先決だ……笑うのは……そのあとでいい……」 そう言って、森の奥へと進んでいった。今の持ち物ではラックを助けることは不可能だ、森の奥に行けば霊薬や風邪に効く木の実などもありそうだった。 「……くそっ」 小さく毒づいて、ウコンは木から木へと華麗に飛び移り、どんどん森の奥へと進んでいく。ウコンは外科医の知識なら多少は心得ているが、内科の知識は皆無に等しい。そのため、風邪にはどんなものが聞くのか全く分からなかった。どんどん奥へと進むにつれ、どんどん日の光が消えていき、樹海のような鬱蒼とした暗さが森全域に広がっていくような感覚がウコンを襲った。 「……あれは……?」 森の最奥まで来たウコンは、薄暗い空間の隅のほうに、ぽつんと生えている木の実の木に、非常に珍しい木の実が生っていることに気がついた。 「……珍しいな、こんなところにオッカの実があるなんて…」 ウコンはまじまじと木の実の木を見つめた。オッカの実とはクチートなどが持っているとても不思議な木の実のことで、食べると炎による攻撃を軽減する力があるといわれているものであった。普通ならお目にかかれない珍品であったが、何故だか目の前にある木には五~六個ほど実をつけていた。 「……解熱剤に使えるかもしれないな……」 勝手に想像し、オッカの実をもぎ取ろうとした刹那――強力な爆風がウコンの身体を横殴りに吹き飛ばした。 「ぐっ!!」 すばやく体勢を立て直して周りを見ると、一匹のダーテングが威嚇するようにウコンの目の前に立っていた。 「木の守人という奴か?……あいにくだが友人が死に掛けていてな…早めに終わらさせてもらう!!」 言うが早いか、ウコンは跳躍しダーテングに突貫した――― ---- 「う…うぅ…」 ラックは痛む頭を抑えてよろよろと立ち上がると、周りを見渡した。ウコンの姿は無く、代わりに自分のいた場所の隣に氷が置かれていることに気がついた。おそらくウコンが急遽作った熱さましのようなものだろう。 「…あんまり意味ないなぁ…」 氷は半分くらい溶けかかっていて、もう殆ど熱冷ましとしての機能を失っていた。最初は頭の上に置いてあったのかもしれないが、寝返りでも打ったのだろう、変なところに落ちていた。 「……でも、ちょっと嬉しい…」 ラックはまだぼんやりする頭で氷を無造作に掴むと、おでこにピッタリとくっつけると、そのままごろりと横になった。雨上がりの空から差す光が、ラックを優しく包んでいく。 暫く空を眺めていたが、どこからか聞こえる草を踏む音、荒い息遣いが聞こえてくる。ラックはその音の方向に顔を向けると、そこには全身傷だらけで、綺麗なオッカの実を両手いっぱいに抱えたウコンの姿があった。 「……どうしたの?ウコン」 訝しげな顔をして、ラックはボロボロのウコンを見つめた。しかしウコンはそんなことを気にせずに、ラックの傍によると、手に持っていたオッカの実を一つ差し出して、こう言った。 「ラック、腹減ってないか?これ、食えるか?」 それは気を遣ったのかもしれないが、ラックはウコンの心配そうな顔と、オッカの実を交互に見てから、いつものニコニコ顔を、少しだけいやらしいニヤニヤ顔に変えて、ウコンを見つめた。 「ふぅん、病人にそんな物食べさせるんだ…ウコンって意外とエッチなんだね…」 くすくすと笑うラックを見つめて、ウコンは不思議な顔をして問い返した。 「……な、何だ?そんなに変な木の実なのか?これ……」 「ん~ん、なんでもないよ♪……それよりさ、くれるなら早く頂戴」 ラックがそう言って、ウコンは思い出したように木の実をラックに渡す。それを受け取ったラックは、くすりと妖しい笑みを浮かべると、がつがつと芯まで残さずに食べて、そのまま眠ってしまった… 「……何なんだ…」 苦労してとってきたのに、お礼の一言も無く、それどころか"エッチ"といわれ否応無しに変態扱いされては気分が萎えるというものだろう。しかし、病人を締め上げるほど自分は鬼畜外道なポケモンではないと自分で自分に言い聞かせると、ラックの隣に横になって雲一つ無い青空を見上げた。 「……綺麗だな……」 空を見上げて素直な感想を漏らす。自分に翼があったのなら、あの空まで飛んでいくことができるのだろうか?自分の心も、あの空のように澄んだ心になるのだろうか…そう思うと、自然と笑みがこぼれた。 「……ふっ、笑顔は心に咲く希望の力…か、まんざらでもなさそうな言葉だな…」 小さく、だがしっかりと微笑を浮かべて、ウコンはラックの寝顔を見つめた、もし起きていたなら、これで君もハッピーだね、とでも言いそうだっただろう。微かだが、ウコンは確かに笑ったのだ。 澄んだ青空はどこまでもどこまでも続き、それを見ていたウコンは次第にうとうとして、そのまま本能に従い眠りについた。 「………」 穏やかな微風が流れて、ぽかぽかとした陽気が次第に訪れる。降っていた雨が嘘のような天気、そのまま日差しがラックとウコンを照らして、ぬかるんだ地面を徐々に乾かしていく。いろいろなポケモンの泣き声が次第に聞こえ始め、子守唄のように森に響き渡る。そんな時間がどんどん過ぎていき―――ウコンは目覚めたのは夕刻を過ぎた、夜だった… ---- 夜なのになぜかむしむしする、そんな感覚が襲ってきて、ウコンは目を覚ました。周りを見渡すが、特に気温が上がったわけでもなさそうだ。もしかして、ラックに風邪を移されたのかもしれない、そう思って額に手を当ててみても、特に熱い様子は無い、では、どうしてこんなにも自分の身体が熱気でむせ返っているのだろうか…そう思ってラックを見てみたら、ラックははぁはぁと荒い息――というよりも喘いでいる様な感じで息を吐き出して、ころころと寝返りを打っていた。 「……?」 ウコンがけ幻想にしながらラックの額に手を当ててみた。まだ額は熱く、熱が下がった様子は無かった。ウコンは途端に心配そうな顔をしてラックを見つめた。あれだけ必死になってとってきたものが、まさか何の効果も無かったとは思いたくなかった。貴重な木の実を使った為、きっと何らかの効果があると信じて、ラックが目覚めるのを待っていた。 「ん…あんっ…ふぅ…」 ラックは奇妙な声を漏らして目を覚ました。不思議な顔をしてよく見てみると――自分の足がラックの股の部分にあたっていた…そこからは微量の愛液が漏れ出していて、ぬちゃりと足に付着した。 「おわぁっ!!」 素っ頓狂な声を張り上げて、ウコンは後ずさった瞬間に、自分の足と足が絡まり、つんのめって倒れてしまった。ラックがのろのろと身を起こして――倒れたウコンに覆いかぶさるように圧し掛かった。 「…オイ、ラック、どいてくれ…」 「んふ~ウコンだいしゅき~」 何となく呂律の回っていない声を上げて、ラックはウコンに抱きついてすりすりと頬擦りした。まるで人懐っこい子犬の様な感覚を覚えたが、ウコンは消えかかった理性をフル回転させてラックに問いただした。 「オイ、お前まさか、酔っ払っているんじゃないだろうな」 オッカの実にアルコール成分でも含まれているのかと思ったが、ラックはウコンの言葉を否定した。 「酔ってないよ、身体が熱くて,とろけちゃいそうなだけだから…」 「十分重症だろそれ!!」 やっぱり熱が下がっていなかったのだろうか、と、ウコンは思った。だとしたら変な木の実を食べさせてしまったウコンにかなり重い責任が圧し掛かってくるだろう。やはり内科に詳しいポケモンを探して診てもらわないとやばいのかもしれない。と、そんなことを悶々と考えていると、ラックが不意に顔を近づけて――ウコンの口を塞いだ。生暖かい甘い匂いと、湿った唇の感触が鮮烈に伝わり、ウコンは顔を高潮させてラックの瞳を見ていた。ラックは瞳をとろんとさせて、ウコンをじっと見つめていた。 どのくらいキスをしていたのだろう、不意に口を離したラックが、ウコンを見つめて問いただした。 「……まさか、ホントに分かってなかったの?オッカの実の特徴。…てっきり分かってて誘ったのかと思ったけど…」 ウコンはラックが何を言っているのか分からなかった。特徴?誘った?変な言葉を聞いてウコンの頭が混乱した。その顔を見たラックは悪戯っぽく微笑むと、教えるように話し始めた。 「ホントに分からないみたいだね。じゃあ教えてあげるね。ねえラック、どうしてオッカの実が炎の力を軽減するか分かる??」 「………いや、知らんが」 ウコンは知らないといって首を横に振った。全く恥ずかしい話だったが、生きることに精一杯だったウコンにとっては、そんなこと知るわけが無い。木の実など腹に入れてしまえば何でも同じだと考えていた。稀に変な木の実にあたることもあったが、大体は腹痛で終わったために、特に気にもしなかった。 「それはね、戦闘中の興奮状態を利用したアドレナリンの大量分泌みたいなものなんだよ。戦闘中は集中力が高まって興奮するよね。オッカの実は食べることによって身体を熱くする力がある。だから炎を受けても自分の身体がもとから熱いからそんなに熱いとは感じなくなる。神経麻痺と同じような感覚なのかなぁ?僕にもよく分かってないんだけど、とにかくそういう力があるんだ。でもね、それは戦闘中の興奮状態だからこそ使える力なんだ。ほら、興奮すると頭とかパーになっちゃって身体が火をガンガン焚いたみたいに熱くなっちゃうじゃない?だから特に木の実の力は感じないんだけど、興奮状態じゃないときに食べると、行き場のない熱エネルギーが体の中に溜まっちゃってお酒を飲んだときみたいになっちゃうんだって。不思議だよね」 熱っぽい顔で雄弁に語るラックを見て、ウコンはこのマウントポジション状態を何とかしてほしいと切に願っていた。 「……それで?」 「うん、それで、その行き場のないエネルギーは発散させないと身体の中に異変が起きちゃうんだ。ちょうど媚薬を使ったときと同じになるみたい…ホントは身体を動かせば発散できるんだけど、僕病み上がりだしさ、動くのはちょっと危険だから…」 「……だから?」 「ごめん、ちょっと僕のエネルギー発散に付き合ってね。悪気がなかったとはいえ木の実を持ってきたのはウコンだしさ」 ラックはぱちんと両手を合わせて謝罪する。ウコンは全く理解できていなかった。 どういうことだ?っていうか媚薬と同じ効果?俺はそんな木の実をラックに食わせていたのか?っていうかそもそも分かってたなら何故に食った。何で俺に教えてくれなかったんだ。教えてくれたら別の食い物を持ってきたのに… いろいろな考えが頭の中に浮かんでは消える。ラックはそんなウコンの心を見透かしたように喋りだす。 「ごめんね、わかってて僕に食べさせるつもりだったのかなって本気で思ってたから…いや、まさか……知らないとはおもっ…てなく…て」 はぁはぁと荒い息が段々大きくなっていくラックを見て、ウコンは相当困惑していた。どうすればいいのだろう、このままでいいのだろうか、と、いろいろな気持ちが錯綜する。 「も…もう……限界だぁ……体が…疼いて…変な感じだよ…」 「だ・・・だけど、俺と行為をしたって、お前は駄目だろう、そういうことは、場数を踏んで、その、お互い好きあった者どうして愛を育むって言ったのはお前だろ…言った本人のお前がそれを守らなくてどうするんだよ!?」 いきなり理性的になって諭すようにラックに告げたが、ラックはこう言った。 「ううん、守ってるよ。だって、僕、ウコンのこと大好きだもん…」 ウコンは目を見開いてラックを見つめた。そして、ラックに再確認するように問いただす。 「……俺……なのか?何で、俺なんだ?……俺のどこがいいんだ?…ぶっきらぼうだし、優しくないし、何より、俺は笑わないぞ?」 自分で自分の短所を次々と挙げていって、ウコンはなんだか惨めな気持ちになったが、ラックはそんなこと関係ないよといった感じで首をゆっくり横に振った。 「全然、ウコンは優しいし、気を利かせてくれるじゃない。優しくなかったら、僕のこと看病してくれないでしょ?それに、ウコンはもう十分笑っているよ。見た感じじゃないよ、心だよ。心が笑ってる。心に笑顔が映えているよ。最初に出会ったときよりも、ずっといい顔してる。そんな君だから、僕は君のことが好きなんだ。君は僕のこと好きじゃないかもしれないけど、僕は君のこと大好き。こういうの……何て言うのかな…告白?まぁ何でもいいや。言うね。ウコン、僕は、ラックはウコンのことが大好きです。ずっと一緒にいたいです。こんな僕でよければ…一緒にいてくれませんか?」 ラックが熱っぽく語ったぎこちない告白の言葉。それが媚薬の効果だったとしても、それはラックの本心だったのだろう。ウコンはあの時――洞穴の中で瞑想していたとき、ふと疑問に思ったことがあった。それは―― ――ラックがいなくなったら、俺はたぶん胸が締め付けられるような気持ちになるだろう。それは何故だろうか? 何となく思った疑問、自分の中で答えた返答は、ラックが、気になる存在だから―――否。 本当は分かっていたんだろう。何となく恥ずかしすぎて分かりたくなかったその気持ち。それは―― ――ラックが、自分にとって、大好きなポケモンだから。 あの時からずっと一緒にいて、少しずつ、時計の針のように遅々とした変化だったが確かに膨らんでいった思い。それは、好きという感情。この気持ちは…嘘じゃない。 ウコンは暫く沈黙した後、自分の思いを告げた。 「…こんな俺でよければ、ずっと、ずっと、永遠に…一緒に…いてください」 恥ずかしそうに言ってから、照れ隠しのように――&ruby(・・・){笑った};。それを見たラックは、満面の笑みを浮かべてこう言った。 「ようやく…見せてくれたね…君の笑顔……大好きだよ…ウコン」 お互いの唇が再度重なり。二人は抱き合った。 ――長い夜は…まだまだ続きそうだった… ---- さらさらと風が流れる夜。星が輝く美しい夜。その中に、湿った水がぶつかる音、荒い息遣いが聞こえてくる。 「んっ、あれ?いつの間にか立場が逆だぁ…」 ラックは不思議そうな顔をしていた。今度はウコンがラックを押し倒す形になっていた。ウコンはラックの胸のあたりに顔を持っていくと、乳首に口をつけて、舐め始めた。 「ふえっ!?ひゃうっ…ああっ…うぅん…」 急な不意打ちにびっくりしたのか、はたまた媚薬のせいで感度が上昇したのは分からないが、ラックはふやけた声を上げて身体を小刻みに震えさせた。ウコンはそんなことなど御構い無しに舌を使って乳首を弄り回す。 「あぅぅ…ふあっ……ああっ!」 ピチャピチャという淫らな音が森に響き渡る。ウコンはそのまま右手をラックの秘部に持っていくと、指を一本、膣内に挿入した。中はじっとりと濡れていて、ぬるりとしていて何ともいえないような感覚がウコンを襲った。 「あっ!!そんなぁ、同時にするなんて…やぁっ!はぁんっ!」 両方の感じる部分を同時に弄られて、ラックはびくりと身体を跳ねさせた。さらにウコンは指をもう一本増やして、そのまま秘部への出し入れを繰り返した。 「ひぁっ!?」 ラックの頭が一瞬だけ真っ白になり、後は桃色に塗りつぶされる。両方から感じる刺激は更に加速していき、その都度にラックの身体が敏感に反応する。元々ぐしょぐしょに濡れていた秘部からてらてらと光る愛液がとめどなく溢れ出す、更にウコンは指をもう一本増やして、ピストンのスピードを加速させた。じゅぷじゅぷという音が次第に大きくなり、ラックの息の荒さも喘ぎ声もどんどん大きくなる。 「あっあうっああ、ひゃあっ!だめ、だめぇぇっ!!」 ラックはあられもない叫び声を上げてウコンにしがみついた。甘い匂いが、二人の身体に漂う。ウコンは余った手をもう一つの胸に持っていくと、乳首をつまんでくりくりと弄った。 乳首を弄られて、舐められて、秘部には指が生き物のようにうねる。それだけでラックは達しつつあった。脳の奥がじわりと痺れて、その部分から溶け出していく。更にウコンは追い討ちをかけるかのように、乳首を吸いだした。 「あっ…ああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 身体が浮き上がるような感覚、頭の中がスパークするような感覚、何も残らない真っ白な気持ち。気がつくとラックは愛液を大量に噴き出して喘いでいた。愛液はウコンの手首までかかり、それを見て、ラックは恥ずかしそうに顔を赤らめた 「あっ…ご、ゴメンナサイ…」 か細い声で喋って、更に顔を紅潮させる。ウコンはそれを見て、意地悪な笑みを浮かべた。 「笑顔のほかにも、なかなかいい反応をするじゃないか、ラック」 「!!……むぅ…ウコンの意地悪、エッチ!」 自分から誘っておいてそれはないだろうと思ったがあえてそこはスルーする。ウコンはそのまま秘部から指を抜いて、付着した愛液を綺麗に舐め取った。 「甘いな」 「…嘘だぁ…」 「嘘だ」 「!!……もう!!」 ラックはむすっとむくれるといきなり起き上がってウコンを押し倒す。最初の状態に逆戻りした。 「お…おい、ラック?」 「僕ばっかり気持ちよくなっちゃ駄目だからね、ウコンも気持ちよくしてあげる」 言うが早いか、すっかり大きくなったウコンの肉棒を手で掴むと、舌を使って舐め始める。擦るのとも、扱くのとも違った感触がウコンの肉棒に伝わる。ぬめぬめした唾液が肉棒を絡めていき、ねっとりとした感触がウコンを満たしていく。 「んむ、ちゅぷ…ぷぁっ」 ラックの舌がウコンの理性をかき消していく、荒い息遣い、ざらつく舌の鮮烈な感触が、ウコンの脳から理性を剥ぎ取っていく。快感の波は寄せては引き、引いては寄せてを繰り返す。それを繰り返すうちに、ウコンは射精感を覚え始めた。 「うっ、くっ…ラック…で、でるっ!!」 言うのが遅すぎたのか、いえなかったのか、ウコンはに公方の先から白濁色の液体を思い切り吐き出した。それはラックの口の中に大量に注がれ、ラックはそれを全部こぼさないように口に入れた。 「お、おい、ラック、大丈夫か?」 ラックは何かを言おうとしたが、口をもごもごとさせるだけで何を言おうとしたのか分からなかった。まだ口の中には先程出した精が大量に残っているのだろう。ウコンはそんなラックを見てこう言った。 「馬鹿、そんなもの吐き出せ、ほら、ベーって」 ラックは両の前足を出し、重ねた掌を上に口内の白濁色の液体を吐き出した。どろりとした液体は、大量に掌に注がれていく…ラックはまじまじと掌いっぱいの精液を見つめて妖艶な瞳を浮かべる。ウコンはそんなラックの仕草に釘付けになったが、すぐにぶんぶんと首を振ると、自分の出した精液をじっと見つめているラックにこうつげた。 「そんなに見るなって、ほら、さっさと捨ててこいって…」 「……わぁ、ウコン、こんなに出してくれたんだ……なんだか嬉しいな…」 ウコンは全く人の話を効かないラックを見て、どうしたものかと考えていた――と、ラックがニコリ、というよりもニヤリとした笑顔をしたと思ったら――掌を口に近づけ、吐き出した白濁を再び口に流し込んだ。 「お!おいラック!!お前何やって……」 粘り気のある液体をずずっと啜り、口内に溜めてから一気に飲み込んで、口元からこぼれたものもぺろりと舌を使って舐め取ると、はぁっと息をつく。驚きに目を丸くしていたウコンに怪しげな微笑を浮かべて、ただ一言言った。 「ふふっ…甘ぁい…」 「嘘つくな」 「うん、嘘」 「!っこのっ!!」 思い切り怒鳴ってやろうかと思ったが、ラックの心底嬉しそうな顔を見て、これは先程の仕返しなのだと思い知らされた。ウコンは全くといった顔をして、ラックの頭をくしゃくしゃと撫でた。ラックは気持ちよさそうにそれを受け入れて、そのままウコンの頬にキスをする、柔らかい唇の感触を堪能してから、ウコンはラックを押し倒す。体系が再度逆転する。 「そろそろ、いいか?」 「うん。大丈夫。きて、ウコン」 ラックの了解を得ると、ウコンはラックの秘部に自分のモノを宛がうと、ゆっくりと挿入ていく。元々媚薬の効果で濡れていたため、ゆるゆると入っていき、その度にラックが切ない喘ぎ声を上げる。 「あっ…うぅん……はぁっ……んんっ」 甘い声を出してラックは力なくウコンに抱きつく、ウコンはそのまま腰を落として、こつり、と、薄い膜に肉棒が当たった。ラックはそれを気にせずに腰を落とす。何かが破れる音と共に、ラックの秘部から少量の血が漏れ出す。ラックがくぐもった呻き声を上げて、辛そうな顔をする。 「ラック、大丈夫か?……やっぱり――」 「やめ…ないで…」 気持ちが揺らいだウコンににこりと微笑む、その微笑を見て、ウコンはこくりと頷くと、一気に腰を落とした。 「あっ!!ああああああああああああああっ!!!」 いきなり最奥まで疲れて、ラックは悲鳴を上げた、腰が浮くような感覚が走り、足が震える、まともに立っていられなくなるような感覚。ウコンはしっかりとラックの腰を押さえると、自ら腰を動かし始めた。湿った音が乾いた森に響き、甘い吐息と、切ない喘ぎ、そして、二つの影がより重なって森に響き渡る。 「ふぁっ、あぅっ……そんな、はっ…激しすぎるよぅ……あっ…」 「うっ、くうっ、凄いな、ラックの膣内…絡み付いてくるよっ…」 ウコンの言葉を、ラックはまともに聞くことができなかった。置くまで達したものが、引き抜かれて、力強く突かれる。それだけで、どうしてこんな快感が走るのだろう?その動きは、何度も、何度も、何度でも続く。激しい動き、最初から全速力なのだろう―― ――頭の中は真っ白に、身体だけが快感を貪る。 「あっ…ひゃっ、ふっ、ふあっ、あっ、あっ、ああぁぁぁ…」 ラックは何度も疲れて、甘い喘ぎを呼吸をするように吐き出す。最初から始まった激しすぎる交わりは、意識を奪い、肉体に更なる快楽を与える。締め付けをものともしないウコンの力強い動きは、ラックの身体をかき乱すには十分な力だった。 「あっ、ウコッ…もうっ…げんかっ…限界だよぉ…」 ラックは涎を垂らして、とろんとした両目でウコンに自分の絶頂を伝える。ウコンも顔を紅潮させて、必死に快楽に耐えているが、そろそろ限界なのが見て取れた。 「あっ、ああ、俺も、そろそろっ…限界…ラック、このままで…いいか?」 「うんっ…あっ…いっぱい…出して……ウコン…っ!!」 互いに耳元で名前を呼び合う。互いの快楽を、自制心も理性も捨て去り、獣のように貪った。交わっているという実感が、二匹を高ぶらせる。 そして、あっという間にその瞬間は訪れた。もっと感じていたい、もっと喘いでいたい、もっと繋がっていたい。そんな気持ちは、与えられ続ける淫らな痺れにくしゃくしゃにされる。ラックが叫ぶ。いや、叫んだのかどうかは分からなかった、絶頂を迎える喘ぎ声だったのか、それとも快楽を貪った獣の咆哮だったのか。 ウコンがビクリと跳ねてから、ラックの膣内に思い切り己の欲望を注ぎ込む。熱を持ったそれは、ラックのの膣内を縦横無尽に駆け回り、暴れまわった。 「ふあぁぁぁ…熱いよぅ……」 ウコンは肉棒をラックから抜くと、まだ熱を持った液がどろりとラックの膣からこぼれだす。そのまま二人は抱きついたまま、強烈な睡魔に誘われて眠りについた… ---- すっかり朝日が昇り、ウコンは目を覚ました。朝に起き出すポケモンの独特な泣き声が木霊し、朝の到来を告げる。隣ではラックがすやすやと幸せそうな寝息を立てている。どうやら昨日の行為がかなり身体に負担がかかったらしい。ゆすっても起きなかった。 「やれやれ、どうしたもんかな…」 はあ、と、ため息をついて周りを見渡す。もはや周りを見渡すのが癖になってしまっているようだった。朝の日差しが二人を照らして、その眩しさからなのか、ラックがもぞもぞと動き出して、のそりと身を起こした。 「ふぁ…お早う、あ、な、た♪」 妙に悦に入った声で色っぽくいったあとに頬を摺り寄せてくる。それを聞いたウコンは、正直吐きそうな顔をしてこう言った。 「あなたはやめろ」 「ええ~?じゃあダーリンの方がいい?」 「普通に呼べんのか、お前は」 「だって、僕達番になったんだよ?それなりに相応しい呼び方をした方が…」 「頼む、やめてくれ、キモイ、いや、キショイ」 ラックはむすっとしてから、可笑しくなった様に笑い出す。それにつられてウコンも声を上げて笑い出す…二つの笑い声が重なり合い、奇妙な交響曲になる。 ひとしきり笑った後に、ウコンが思い出したように語りだす。 「ははっ、ラック、お前の言ったことは本当だったな」 「何のこと?」 「笑顔は幸せ。って、言ってただろ?笑えばハッピーな気分になれるって、正直、俺は笑顔がわからなかった。…けど、今ならお前が笑顔に拘る理由がわかる気がするよ」 ラックは興味津々といった笑顔でウコンの話を聞いている。その笑顔は――まるで"&ruby(ハッピースマイル){幸せの笑み};"だな。と、ウコンは思って自嘲気味に微笑む。多分今の自分は締りの無い顔をしているだろう、でも、それもきっと"幸せの笑み"なのだろうと思った。 ウコンは話しながらふわふわした草の上に寝転ぶ。ラックもつられて寝転んで、空を見上げる。 青く透き通った空は、どこまでもどこまでも、何処までも。二人を見守り何処までも―― ―――駆けていく。 おしまい ---- 高校の友達に言われた言葉「本当に笑ったときって、幸せなのかな?」…そんな言葉を考えているうちに、この小説ができました。笑ったときって、幸せなんでしょうね… 読んで下さった皆様…笑顔を大切にしてください。そして、こんな駄文を読んで下さり本当にありがとうございました! ---- コメントがあればどうぞ - ハッピーな頭はお前の頭だけでいい。に吹きましたw&br;あと【ウコンとラック】が【ウコントラック】になってます。&br;続き楽しみにしています(・ω・)ノ -- [[イノシア]] &new{2008-09-19 (金) 23:27:05}; - イノシア様ご指摘ありがとうございます。・・・誤字脱字を直したほうがいいね、私orz -- [[九十九]] &new{2008-09-19 (金) 23:35:24}; - 『お母さんがつけてくれた“言い”名前』&br;『いままで離しかけたポケモンは』誤字多いですよ……&br;アブソルってやっぱり禍の芽を刈り取るポケモンなんですね。みんなが笑顔でいれば人為的な災害は防げるという、なかなかに良い心がけだと思います。 -- [[リング]] &new{2008-09-20 (土) 21:22:28}; - >リング様&br(); …ま、まだ誤字があったんですか…笑って見逃してくださいorz -- [[九十九]] &new{2008-09-20 (土) 21:35:18}; - ラックの性別は、♂ですか? 最近『僕少女』のキャラが増えてきたので、どっちか気になるんですが・・・ -- [[桜花]] &new{2008-09-20 (土) 22:19:04}; - >桜花様&br();雄でガチホモってのもありですねww性別はご想像におまk(略 -- [[九十九]] &new{2008-09-21 (日) 00:02:20}; - じゃんけん……かよ……(。д゚ )&br;戦闘になると思わせぶりな地の文で想像を誘っておきながらじゃんけんって…騙された…orz -- [[イノシア]] &new{2008-09-21 (日) 00:42:53}; - そんなじゃんけん楽しくないです(爆笑)。 -- [[XENO]] &new{2008-09-21 (日) 08:28:59}; - 変な希望ですが、BL希望ですね(笑) -- [[桜花]] &new{2008-09-21 (日) 08:57:52}; - バトルで決めるのかと思いきや、ジャンケンでしたか(笑)&br;いや~、笑わしてもらいました。続きを期待しています! -- [[ガルトル]] &new{2008-09-21 (日) 09:36:51}; - ウコンがどのように心の壁を壊していくのか、非常に楽しみです。続きに期待しています。頑張って下さい。 -- &new{2008-09-21 (日) 22:20:05}; - むむっ。ウコンが瞑想してた間にラックになにがあったんでしょーか。気になります・・・。続きが楽しみです。どうぞがんばって! -- [[孔明]] &new{2008-09-21 (日) 22:53:38}; - ラックが暖かすぎて泣けてきます。生きることに真剣なんですねぇ -- [[リング]] &new{2008-09-21 (日) 23:15:57}; - 目の前に歩き→目の前にある木 ですね。&br;ラックの性格がツボです。いいやつですね。 -- [[XENO]] &new{2008-09-22 (月) 21:53:01}; - ははははっははっはっはっはっはあはははは……もう死んだほうがいいね、私、何で誤字脱字をちゃんと確認して投稿しないんだろう… -- [[九十九]] &new{2008-09-22 (月) 22:08:32}; - 以前はふざけたを書いてすみません。誤字があります、「風邪引いたのか」ではなく「風引いたのか」になっています。 -- [[桜花]] &new{2008-09-22 (月) 22:16:42}; - ラックはウコンにとって、煩わしくもあり、大切でもある存在に思えます。&br;はてさて、オッカの実にはどんな効果があるのでしょうか。そこら辺りにも期待してます。 -- [[カゲフミ]] &new{2008-09-23 (火) 17:15:44}; - やはり・・・媚薬? -- [[T-T]] &new{2008-09-23 (火) 18:16:31}; - うわ……。なんだろ。思わず感情移入しちゃうような、心情描写の深い文ですね。&br;某チイラも似たような解釈でしょうし。そこら辺りの説明は充分に分かりやすいですよw -- &new{2008-09-23 (火) 22:00:00}; - じゃあオッカの実を非戦闘時も常備しているクチートって(以下略&br;ウコンの性格からして、わざとな訳ないでしょう。まあ結果オーライということで(何) -- [[XENO]] &new{2008-09-24 (水) 07:23:02}; - 執筆お疲れ様でしたー!サイコーでしたよ!ラックかわいかったですねー。アブソルっていうと、クールで冷たいイメージがあったんですけど、完全に変わりましたよー。今からちょっとアブソル探しに行って来まーす!・・・次回作はどのようにするおつもりですか?とっても期待してますから、これからもがんばってください! -- [[孔明]] &new{2008-09-24 (水) 21:14:26}; - 素直になってくれたウコン君。幸せになれてよかったよ。うんうん。&br;……っかしまぁ、一線越えたら越えたで物凄いいちゃつきっぷりww だがそれがよかった(笑) 執筆、お疲れ様でした。 -- &new{2008-09-24 (水) 22:59:09}; - 最後にタイトルが出るって言うのは好きな表現です。私ももう少しうまくこの表現を使いこなしたいものですね。 -- [[リング]] &new{2008-09-24 (水) 23:08:59}; - 完結ですね!最後の最後でタイトルの意味がわかり、とてもよかったです! -- [[ルギアス]] &new{2008-09-25 (木) 04:04:59}; - 完結お疲れ様でした! 最後幸せになれたみたいでよかったですw -- [[absl]] &new{2008-09-25 (木) 08:20:23}; - とってもいい話でしたね!長男も現実で「幸せの笑み」をしてほしいです。 -- [[次男]] &new{2008-09-25 (木) 20:53:31}; #comment