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トラベラー   第6・7章 ソルジャー の変更点


[[フロム]]の作りし小説
 
 
&size(18){警告!};本作品には流血死亡表現が含まれます 
 
 
 
 
**トラベラー第6章 目覚め [#qdee11a5]
 
燃え盛る炎に包まれた街の中、少年と血にまみれて死にかけの大人。  
「ルシャさん…」
「ユウト、逃げろ…」
夢の中で、また死んでしまった…
これは夢だ、もう過ぎ去ってしまった事、もう…思い出したくない。
『お前は情けないな』
どこからか声が響く、誰の声だか分からないがいつも聞いている気がする。
「うるさい…」
謎の声に聞こえた方向に向かって言い返すと、謎の声も言い返してきた。
『目の前で死んで行く友を癒す事も仇を討つ事も出来ない』
『ちっぽけで弱弱しい、お前は何か出来たのか?』
耳を塞いでも聞こえてくる、外からではなく体の内側から聞こえる。いやだ…助けて…
体を曲げて、その場にうずくまってしまった。
『そうやってうずくまるしかない、矮小で惨めなだけさ』
『子供だから?無力なだけなら罪じゃない?』
もう、分からない。
『なら委ねてしまえばいい、あの時お前はどんな感情に突き動かされていた?』
僕は…
『もう一度剣を持て、今度こそ』
何かが後ろから歩いてきた、見覚えのある長刀とマント、そして不敵な笑みを浮かべた顔。
体を起こし剣を鞘から引き抜く。
『殺してしまえ』
剣を構え、バッシュに向かって突進する。あの時と同じ、だがあの時とは違う結末を迎えた。
「ぐっ…!」
心臓に長刀が突き刺さる、体を突き刺し外へと抜ける。そのまま腕を上げて僕の体を持ち上げて行く。
手から剣が滑り落ち、地面に突き刺さった。僕を突き刺したまま長刀を横に振る、長刀から体が抜けて地面に放り出された。
「ぐ…ぁ…」
バッシュはまた歩き出し、闇の中に消えて行った。あの声ももう聞こえない。
血に塗れた僕と地面に突き刺さった勇者の剣だけが悪夢の中に残された。

 
心地の良い目覚めではなかった、全身に冷や汗をかき、目じりには涙がたまっていた。
天井を見つめながら深く息を吸い込み、吐き出す。
僕はベッドに寝ていたが、ここはどこなのだろうか。
体を起こして周りを眺めて見ると、家具はほとんどない。灰色の壁と夕焼け色に染まったガラスがあるだけだった。
シーツをどけてベッドから降りる、痛みは無いが僕の体はいたるところに包帯が巻かれていた。
部屋の端まで歩き、ドアを開けて外に出る。
どうやらここは大きな建物らしい、廊下に繋がっていてさっきの部屋と同じようなドアが何個もあった。
どこに行く宛てもなく適当にうろついていたら、あの時現れた大剣のバクフーンにばったり出くわした。
「あ…」
今は大剣は背負っていないが、彼の顔は覚えていた。
「気が付いたか…、寝てなくても平気なのか?」
「はい、傷は別に痛まないので」
「そうか…2日間目を覚まさなかったから心配した」
2日間…僕はそんなに眠っていたのか。
「ここで立ち話というのもなんだ、君の寝てた部屋まで戻ろう」
ウロウロしてここまで来たので戻る道順が分からなかったが、彼が前に立って進んで行ったので迷う事は無かった。
廊下にあった窓から外を覗いてみると、夕日はほとんど沈み、空は群青色に塗りつぶされていた。
風が吹いて木々が揺れる、数枚の葉となにか大きな物が落ちて行った。
下に視線を向けると鳥の様な生き物が倒れていた、だがその翼に生えた羽は周りに散らばり、ピクリとも動かなかった、もう生きていないのかもしれない。 
 『目の前で死んで行く友を癒す事も仇を討つ事も出来ない』
悪夢の中の声が聞こえた、空耳かもしれないがどこかから響く。もうやめてくれ、ここはまだ夢の中なのか?それとも…
「どうした?大丈夫か」
彼の声で我に帰る、もうあの声は聞こえない。早足で歩いて追いつき、彼と並んで歩いた。怖かったのかもしれない、誰かに傍に居てほしかった。
部屋の前まで戻ると彼は隣の部屋に入り、椅子を持って出てきた。僕の居た部屋には椅子もない。
部屋に入ると僕はベッドに、彼は持ってきた椅子に座りお互いを見合った。
そのまま数秒の沈黙が続いたが、咳払いをしてから彼が口を開いた。
「私はあの時のバクフーンだ、覚えているか?」
首を縦に振る、その反応を見て彼は続けた。
「私の名前はレノアード、南大陸の警団、 ソルジャー の隊長だ」
ソルジャー…何も説明されていないので僕は知らない。ここで質問する機会逃したらこれから困るだろう。
「ソルジャーって何ですか?」
隊長に対して言うのは無礼だったのではと思ったが、案の定レノアード隊長の顔は驚きと不審の意を込めた表情に変わった。
「知らないのか?ソルジャーを?」
拍子抜けした声が返ってきた、頭の上に疑問符が見えるような気がする。
「はい、僕はこの世界に来たばかりでこの世界の事はほとんど知りません」
隊長は余計に困惑したが、経緯を全て話し終えると少しは納得してくれたようだ。
「ジュナイル…いや、ばば様の占いか…」
いまジュナイルと言う名前が漏れたが、やはりあの絵のユンゲラーはばば様だったのか。
では隊長はウィルと言うサーナイトの事も知っているのだろうか?
「しばらく会っていないのだが、彼女は元気にしているか?」
「はい、若いもんをからかうのは愉快だなんて言って、いたずらされましたよ」
隊長とばば様は結構親しい仲なのだろう、「変わらないな」と言って微笑をこぼした。
「私も君と同じように滅茶苦茶な予言をされたよ、悔しい事に…当たってしまった」
そう言って、隊長は悲しげに顔を曇らせた。
「『それは、追い求め続ければ必ず手に入る、だが彼方にとって最も大切で掛け替えのない物を失くす』、私はそう言われた」
何故、止まる事が出来なかったのだろうな、そう言ってから彼は自分の過去を語ってくれた。 
 
  
私は数年前からソルジャーに入隊していた。あの夜に現れたバクフーン、バッシュと一緒に。
私とバッシュ、二人とも父がソルジャーだったからな、幼いころから来る日も来る日も訓練訓練。
そして「大人になったらソルジャーになって南大陸の為に尽くす」なんて教育されてた、教育熱心な親父だったよ。
そんな親父を持ったせいか私の周りにはバッシュしかいなかった、ずっとあいつだけが友達で、親友だった。
訓練の合い間に会ってはふざけ合ったりくだらない話もしたし、夢も語り合った。
その頃はソルジャー精神と辛い訓練ばかり叩きこまれてたから、「ソルジャーだけにはなるものか」と思ってはいたんだが、なんで決めたんだか覚えてないがとにかく二人でソルジャーに入隊したんだ。
だがいざ入隊してみたら「野蛮人どもの吹き溜まり」だと思っていたソルジャーが「居心地の良い我が家」のように感じられたよ。 
私とバッシュの父は結構ソルジャーの中では名が知れていたみたいで意外と待遇もされたし、何より隣に居るのがバッシュだけではなくなった。
みんな野蛮人の父を持った奴等だったから、お互いの事に共感が持てたし信頼する事が出来た。
親父にはいつもまだまだだなと言われていたが、辛い英才教育のお陰で私とバッシュはいつもみんなより一歩前に出て戦える実力もあった。ちやほやされて…まあ、なんだ?いい気分だった。
私たちは次第に階級も上がって行き、私とバッシュは「双炎浪」((バクフーンって狼なのか?どうなんだ?))と呼ばれるまでになった。
双炎浪になってからしばらくして、その時ソルジャーを統括していたグラン隊長と一緒に仕事が出来るようになった。
今は…もういないのだがな…
グラン隊長はいつでも皆の憧れだった、あの人は超人的に強かったし、いつもみんなの事を考えてくれる優しさもあった。
頭もよかったな、リングマと言うと一見怪力だけに見えがちだがいつも冷静に的確に判断を下し、私たちを勝利に導いてくれた。
私は尊敬し、憧れていた隊長と共に闘える事が誇らしく思えた。
そして私とバッシュ、「双炎浪」のどちらも欠けることなく栄光に満ちた日々は続いて行った。
あの日が来るまでは…。 

_____________________________________________ 

一面青い空と、金色に輝く大地だけ。ここは砂漠だ。揺れる馬車((3章の行商荷台と同じつくりだと考えて欲しいと作者は語る))は、金色の砂粒を蹴散らして進む。ここの砂は柔らかいと言われているのに何故こんなに揺れるのだ?舌を2回も噛んだのでヒリヒリする。 
今回の任務は、ナグフ周辺を荒らしまわっている盗賊団の殲滅((ソルジャーによる治安維持のための殺害は、特例として許される))だ。
奴等はグラナ砂漠の外れにある地下洞窟を根城にしているらしく、通りかかった商人などから何度か目撃の情報も入っている。
この任務は殲滅なので殺害は許されるが、俺は余り人を殺すのが好きではない。
愛用している大剣を取り出してじっくり眺める、出来るだけこれを使わないで済ませてしまいたい。
「どうしたレノアード、剣なんか眺めて」
隣に座っていたバッシュが話しかけてくる、彼の長刀は荷物と一緒に後ろへ置かれている。
「ん、いや別に」
言うまでもない事なので言わなかったが、何を考えているのかバッシュには分かったらしい。
「お前その剣使いたくないとか、人殺さないように戦いたいと思ってるだろ」
「なぜわかった?」
「もう何年お前と死地をくぐり抜けてきたと思ってるんだよ、お前の考えてる事は大体分かるよ」
確かに、だが何年だろうか?バッシュとは親父の訓練が始まる頃にはもう知りあっていたからかなり長い付き合いになる。
「殺すってのは全部が悪いってことじゃないだろ、俺たちのは正義だ、罪悪感を感じるんじゃなくてもっと堂々としていいんだよ」
「確かに、バッシュの言う事も一理あるな」
二人で話していた所にひょっこり顔を出されたので、後ろに仰け反って馬車から落ちるところだった。
それを見てバッシュと隊長が笑う。なんか恥ずかしい…
「さて、確かに私たちは、私たちから見たら正義だが、それでも徒に人を殺めるなんてことはあってはいけない」
そうは言うものの、隊長は大抵の相手は素手で殴り倒してしまうので、人を殺した所を見た事がない。まあ「素手で倒す」と言っても殴られた後は水族((水タイプと同じ意味))でなくとも口から泡を吐いているのだが…
「私たちは剣を持ち、民を守るために戦い恐れてはいけない、だが人を切ると言う事の重さは何時も心に留めておけ」
命の重さ
その事は今まであまり考えていなかった、いや、考えたくなかった。
いくら正義であろうと、命を奪っているのだ。罪人にも父が居て母が居て、恋人もいたのかもしれない。どのような形であろうと、人を殺める俺たちも、「罪人」なのかもしれない。
ガタン、と音を立てて、突然馬車が止まった。今度も不意打ちで、前にのめり込んでしまった。
「どうした、まさか奴等に感付かれたか?」不審に思い、隊長が馬車を引いていたギャロップに訪ねる。
「いえ、まだ気付かれてはいないですが、これ以上行くと確実に、奇襲をかけるならここからは歩いて行くのがいいでしょう」四人居た内の右端のギャロップが答える。
「そうか、ありがとう」隊長は荷を下ろしながら、礼を言った。
「いえ、隊長と双炎浪の御二方、お気をつけて…」
俺とバッシュも馬車から下りて、剣と荷を下ろした、大剣を背に、荷物と言っても少量で非常用の食料などの入った袋を腰に括りつける。準備を整え、盗賊団の根城である地下洞窟に向かって歩き出した。

砂漠、灼熱の地獄のように思っていたが太陽が照りつけるだけで、なぜか涼しい。五分ほど歩いただろうか、バッシュが口を開いた。
「なあ、砂漠ってもっと暑い物じゃなかったか?」
「それ俺も思ってた、なんか涼しくないか?」
汗一つかいていない、風もよく吹く、本当にここは砂漠か?誰かに幻でも見せられているのでは?
「私も詳しくは知らないのだが、どうやら近くに氷山があるらしいぞ」
隊長の言葉に唖然とする…金の地面に透き通る青色の氷塊とは神様も粋な事をしてくれたものだ。
そもそも氷なんて砂漠でなくても普通に溶ける物((水の氷点は0度、つまり0度以上の場所に放置して置けば溶けて水になりますな))なのに何故砂漠に氷のまま残っているのだ。
だが驚く事はそれだけではなかった、右に見えるあれはなんだ?何故砂漠に家なんかがあるんだ?
なんだかいやになってきた…この砂漠はどうしてしまったんだ?暑くは無いが、うなだれる。
「隊長、あそこに民家がありますが…」声にも気持ちが表れる、とてもうんざりした声。
「疲れがたまっているのか?休んでいてもいいぞ」
どうやら疲労を溜めこみ過ぎたせいで、幻覚を見ているとでも思われているようだ。
「右を見てください」
その言葉を聞き隊長は右手の方向を見て、そのまま静止した。表情が凍りついている、隊長でも信じられないようだ。
「こんな場所に住む奴が居るのか…?」


 
  

 
 

今はここまで
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