筆者[[フロム]] **トラベラー 第1章 鳥とわたしと… [#w899529c] 「あああああああ!!」 前略、皆さんこんにちは 僕は今、金色の砂により作られた大地に向かって、真っすぐ落ちています。 いくら、砂が軟らかそうでも、怖いものは怖いです。 これから僕は、自分の意志で高い所から飛び降りるなんてことはないでしょう。 こんな怖いこと、二度と味わいたくありません。 目を開けてると眼に砂が入って痛いし、地面に近づいて行くのが怖い。 いっそ目を閉じてしまおう、だいぶ高い所から落ちてるみたいだから軟着陸なんてできなさそうだ。 命の最後はせめて恐怖を感じないで…僕は目を閉じた。 目を閉じたので、視界はすべて暗闇に包まれた、ただ落ちていくのを感じる。 1…2…3…目を閉じてから時を数えている、なかなか落ちない、それほど高い場所なのか。 バサッ バサッ…何だ?何かが羽ばたいてる音か?。 注意を向けると、だんだん近づいて来ているようだ。 すぐ隣まで音が近づいてきたかと思ったら、体が下からすくい上げられる。 驚いて目を開けてみる、何だろう?赤い?そしてなんかブヨブヨする?。 何かに乗っかってるみたいだけど…なんだろ?。 「ほひ、はひひょほふは?(おい、大丈夫か?)」 「うわあ!?」 乗っかっていた部分が急に動き出した!、声のようなものが聞こえたところを考えると、 何かの生き物の口の中?のようだ…。 「あはふぇふふぁっふぇ(暴れんなって)」 口の中からひょっこり顔を出してみた、だんだん地面に近づいて行っている。 どうやら今僕を口に入れている鳥?は、落ちてる所を助けてくれたようだ。 地面に近づくと、羽ばたく風圧で砂の粒が飛び散った。 「ほひ、ふぇふぇふふぇ(おい、出てくれ)」 口の中から出た方がいいのだろう、何を言ってるのかよくわからないけど…。 ふちに手をかけて、口から這い出る。 運んでくれた人を見て驚いた、大きな黄色いくちばしに、先の方が青い翼を持ったとても大きな鳥。 体の大きさが僕より大きい、こんな鳥は見たことも聞いたこともない。 僕の体?、そう言えばさっきくちばしの端に手をかけた時、手が黄色かったような…。 手を顔の前に持っていく、………黄色い?。 黄色いだけじゃなく、手全体が何か小さくなってる?、指もみじかくなってる?。 視線を下げ、体を見た、手と同じように全体が黄色くなってる、服も着てない。 ギザギザした何かが飛び出していたのでつまんでみる。 「イタッ…」 ギザギザした長い物をつまんでみたら、自分に痛みが来た。 痛みがあるということは体の一部なのか、どこから伸びてるんだ?、 探してみたら自分のおしりの辺りのようだ、おしりの辺りに生えてる長い物…尻尾かな?。 手で顔に触れてみた、前に触った時より丸っこくなってる、 鼻は犬の物に似てるようだ、耳は先っぽが黒く長い物に変っていた。 …………僕って「人間」だよね?、この姿何?。 「ええええええええ!???」 「っ…なんだい、落ちてきたと思ったら、いきなり叫びだして…だいじょうぶか?アンタ?」 さっきのでかい鳥の方も驚いたようだ、でもこっちも驚いてるんだよ!。 そう言えば、なぜ鳥がしゃべる?、気づかなかったけどそれもおかしい。 「あ…あのすいません、僕って人間…ですよね?」 「はぁ?人間ってなんだ?、オマエさんは雷((ゲーム中の電気タイプと同じ))族の「ピカチュウ」って種族じゃないのか?」 話がかみ合わない、雷族?ピカチュウ?すべてが聞きなれない、わからない言葉だ。 相手からしたら、僕の質問の意味が解からないので怪しむような目で見ている。 「こっちも聞いていいか?、なんで落っこちてたんだ?ここら辺は砂がとても軟らかいから、 落っこちても死ぬことはないだろうが、はしゃぎ過ぎて運び屋から落ちたなんてことないだろ?」 運び屋?タクシーみたいなものかな、でも落ちるって言うんだから この人みたいに人を乗せて空を飛ぶことができる人のことを言うのかな。 それよりもここはどこ?砂漠みたいだけど?どう見ても人間の常識は通じそうにないな…。 「あの、すいませんここってどこですか?日本…じゃないですよね?」 「はあ?ニッポン?そっちの方こそどこだ?ここは「グラナ砂漠」だぞ」 グラナ砂漠?僕が知ってるのはゴビ砂漠とサハラ砂漠ぐらいだ…。 別世界とか、異世界とかってホントにあったんだ…。 別世界も異世界も、全て人間の脳内で作り出された空想だと思ってた。 そう言った空想を作り出すのは、どこか違う場所へ行きたいという他所への憧れから来る物。 だけどホントにそれは実在したんだ…。 ちょっとの間ボーッとしてると、鳥の人が話しかけてきた。 「なあ、あんたあれか?記憶喪失とか言うやつか?」 あの鳥の人は、ここまでトンチンカンなことを言うやつが普通のはずないと思っているのだろうか。 いくら記憶力がなくても「記憶喪失か?」と聞かれたことは一度もないぞ、ちょっと失礼なんじゃ… 「違いますよ、いくらなんでもひどいんじゃないですか?」 「ぐぅ…、じゃあなんでそんなトンチンカンなことばかり言うんだ?」 今度はこちらが言葉に詰まった、別の世界から来たなんてまともに受け止められないだろう。 「あの、よくわかんないんですけど…多分ここと違う世界から来た…んだと思うんですけど」 「それ嘘じゃなくて、ホントか?」 嘘をついてもしょうがないでしょ、頷く。 だけど意外に、真面目に聞いてくれてるようだ、なんでだろ?。 「じゃあ、あんたがばば様の言ってた「勇者」なのか?」 「ゆうしゃ!?僕が?なんで!?」 別に悪くはないけどさ!なんで僕!?あの石に触ったから!? 「まああんたが勇者じゃなくても、一度ばば様に合って言ってくれ」 「あ、はい」 鳥の人がまた大きく口を開いた、もう一度中に入れということだろうか。 「もう一回口の中に入ってくれ」 考えていた通り、ドンピシャリである、でもなぁ…。 口の中より背中とかに乗りたかったな…、でも鳥の人の背中は口より小さいし乗りにくそうな形だ、 下手をしたらもう一度まっさかさまに落ちてしまう。それだけはいやだ、怖いから。 鳥の人のくちばしに手をかけて登ろうとした時、急に強い風が吹いてきた。 砂が吹き荒れて目に入る、っぅ…目が痛い…、鳥の人も口を全開だったのでひどくむせた。 砂が吹き荒れる?そう言えばここ砂漠だよね?でもあんまり暑くないや…。 「あの、?…え~と?…その…」 そういやお互いに名前も教えてないじゃん、忘れてたな。 「ああ、名前言ってなかったな、俺は空((ゲーム中の飛行タイプと同じ))族フュクル、種族はぺリッパー、あんたは?」 フュクル…なんか2ヶ国語くらいが混じってるような名前…。 「僕は相川勇人((人間、無論日本人の名前、一切フロムやフロム周囲の人の名前と関係はない))って言います」 「アイカワユウトねぇ…そんな感じの名前はやっぱり聞いたことないな」 こっちもフュクル何て名前は聞いたことないです。 「で、何が聞きたかったんだい?」 そっか、質問しようとしてたんだっけ。 「ここって砂漠ですよね、なのになんであんまり暑くないんですか?」 「砂漠の中でもここらは特別なんだよ、普通に見えるほど近くはないけど、この近くには永久氷土 と呼ばれる、一番下からてっぺんまで全部凍りついてる山があるんだよ、 ここら辺があんまり暑くないのはそっちの方から吹いてくる風のおかげだな」 永久氷土か…、ファンタジー小説かRPGみたい。 僕としては砂漠は汗ダラダラ、目の前がぼやけて歪んでるイメージがあったんだけどな、 風が吹けば砂は邪魔だけど涼しいし、ちょっと外れてるな。 「まあそれは置いといて、とりあえず乗ってくれ」 改めてくちばし淵に手をかけ、腕で体を持ち上げよじ登る。 なかなか大変だな…、「運動とかして体鍛えろ」と大人が言うのがわかるような気がした。 「ふふゅひゅふふぁは、ふぁふぁふふぇくふぇ(すぐ着くから、我慢してくれ)」 口の中に食べ物がある時にしゃべると、口の中の食べ物はこんな感じなのかな…。 バサァッバサァッと大きく5回ほど羽ばたいたら、砂が崩れて大変そうだったけど飛び上がった。 **トラベラー 第2章 水晶のばば様 [#a45eba9f] ばば様の家に着いたのはホントにあっという間だった。 色々と考え事をしていたからかもしれない、でも僕にはあっという間だった。 フュクルさんは、最初に助けてくれたようにゆっくりとスピードを落として着陸した。 でもここでは砂は飛び散らない、ばば様の家はオアシスの草の上に立っていた。 オアシスで暮らすのは当り前だろう、砂の上に何か立てても全く安定しないし、何より水がない。 ばば様の家は、エジプトとかにあるような干しレンガでできた物ではなく、木でできていた。 オアシスに生えていた物を使ったのだろうか、それほど大きくはないが質素というほどじゃない。 建築には詳しくないけど、風通しを良くする工夫とかもされてるみたいだ。 「ばば様はなかなか名の立つ占い師なんだ、主に水晶占いをやってる」 占いねぇ…僕はあんまりそうゆうのは信じてないんだけどな…。 「占いですか?それで僕がこの世界に来るってわかったんですね」 「そうそう、水晶に「勇者が他の世界からこの世界に訪れる」って映ったらしいんだ」 僕が勇者に選ばれることは決まってたことなのかな…、じゃああの石はなんだったんだ?。 「ばば様と話をするときは言われたことをあまり本気で考えない方がいいぞ」 「何でですか?」 「話が難しすぎるんだよ、頭がこんがらがっちまう」 フュクルさんがわからないなら僕がわかるわけないや、それよりフュクルさんは足がないんだね。 バッサバッサと家の中なのに飛び回っている。 部屋の中の家具にぶつかりそうだが、フュクルさんはギリギリで避けている。 家具は、大体が木で作られていた、机やタンスなど何に使う物かわかる物も多い。 僕が居た世界、そこにあってもおかしい気はしない、むしろこれはおしゃれなんじゃないかな?。 少し奥に進むと、オレンジ色のドアがあった、開けて中に入ってみる。 前の部屋よりも狭く、窓のない暗い部屋だった、またドアがある。 「ばば様は多分この部屋にいるよ、ここは占いの為の部屋なんだ」 ドアの方を向いてフュクルさんが言った。 「じゃあドアを開けてくれ」 足もなければ手もないからねフュクルさん、ノブに手をかけドアを開けた。 ギィィ…軋んだ音がしてドアが開く、椅子に座った立派な口ひげ?のような物を生やした人が居た。 部屋の中には、水晶を置いた机と、端に小さな箱と椅子が3つあるだけでさっぱりしている。 さっきの部屋と同じように窓はない、だけど少し紫がかかったような気がする ばば様ってことは、おばあさんだよね?、口ひげ?ひげは男の人に生える物じゃないの?。 「寝てるのかな…?、ばば様はなかなか珍しい心((ゲーム中のエスパータイプと同じ))族のフーディンっていう種族なんだ」 「あの…口のひげは…」 「勘違いするなよ、フーディンって言うのは口の周りの毛が長いんだよ、男じゃないから」 椅子に座ってコックリコックリしている、本当に寝てるみたい。 「ちょっと起こしてきてくれないか?」 「起きてもらわないと僕も困りますしね…」 ばば様の座っている椅子に歩いて行く時、机の上の水晶に目が行った。 大きな水晶だ、これで占うのかな?、未来が見えるとかいうけど出まかせにしか思えないんだよな… 「占いをバカにするんじゃないよ、それより早く起こしてくれないかい?」 !?、頭の中に声が響いた、まさかばば様?。 ばば様を見てもすやすや寝てる、少しも動いてない。 起こすか…、肩に手をかけて揺さぶってみる。 「ばば様、起きてください」 さっきより強くゆすって見る。 ボウン!! いきなり白い煙が出た、げほっ!げほっ!ばば様が爆発した!?。 ばば様が座っていたところを見てみる、なんだ?これは…人形か?。 「ほっほほほ!やっぱり若いもんをからかうのは愉快じゃの!」 後ろからさっき頭に響いた声と同じ声が聞こえた、少ししわがれているけどよく通る声。 「身代りかい…ばば様、あんまりいたずらしないでくれよ…」 フュクルさんの隣にいるみたいだ、同じ所から聞こえる。 「じゃあ煙も消すかね」 パチン、とばば様が指をならしたら一瞬で煙は消えた、どうやったのだろう?。 「ばば様あのピカチュウがばば様の言ってた「勇者」みたいだよ」 「うむ、解かっておったよ、家の近くを飛んで来た時にはもうわかっておった」 近くを飛んでた時から?どうやってわかるの?。 「さて、勇者よ名は何と言う?」 「相川勇人と言います」 「やはりこちらとは名前も全く違うの」 「はあ…、そうみたいですね、でも僕はどうしてこの世界に来ることになっていたんですか?」 「うむ、それは…いや話すとちょっぴり長くなるの、立ち話もなんじゃし座ってくれ」 ばば様がまた指を鳴らすと、今度は壁際にあった椅子がビュンっと音を立てて吹っ飛んできた。 勢いがあり過ぎたせいか椅子は目の前を通り過ぎてから戻ってきて僕の前で止まった。 「勢い有り過ぎたかの…」 そう言うと人形が座っていた椅子から人形をどけて、ばば様は椅子に座った。 「フュクルは座れんからいいじゃろ」 もう一つ椅子を飛ばそうと思ったのか、指をならそうとしたが途中でやめた。 「勇人、客人は素直にもてなされるべきじゃぞ?、ほれ、座らんか」 飛んだ来た椅子の速さにおっかなびっくりしてた所に言われてしまった。 おとなしく椅子に座る、木のさわり心地が学校の椅子を思い出させる。 「じゃあ本題に入るかね、まずは勇者さんがどうやって来たか話してもらおうか」 「あ、はいまず僕は………………………………というわけなんです」 省略したけど、同じようなこと何回も読みたくないよね、皆も。 「そうか、おそらくその石は、魔鉱石…しかしなぜじゃ…」 魔鉱石?ただの鉱石ならわかるけど「魔」というのは、なんなのだろうか? 「ばば様、さっき言っていた魔鉱石というのはなんですか?」 「世界を、星を宿した魔性の鉱石じゃ」 世界を宿す?どういう意味だろうか?。 「わかりづらかったかの?、簡単にいえば…世界を、星を宿すというのは、 魔鉱石が世界の意思を持っている、魔鉱石自体が生き物の様に心を持つということなんじゃよ」 鉱石が心を持つというのはよくわからないが、だいぶわかりやすくなった。 「でも、なぜそのような不思議な物が生まれるのですか?」 その質問をしたら、フュクルさんが割り込んできた。 「俺もそれがわかんねえんだよ、ばば様も今までちゃんと説明してくれなかったよな」 だけどフュクルさんは簡単につまみだされてしまった。 「フュクル、わしは勇人と話しておるんじゃ、急に入ってこんでくれんか…?」 「だけどさー」 「これから言うから、黙ってきいておれ」 フュクルさんはぴしゃりと跳ねのけられてしまって、不機嫌な顔をした。 「正確に知っている者は、そういないじゃろうな…実のところはわしにも全てはわからんのじゃが… 魔鉱石はこの星を作るのに重要な要素の一つじゃ、よくわからんが各地に何個も散らばっておる、 人は死んだあと魂が星に還り、再び生を受けるというじゃろう?そちらの世界では知らんが、 その循環を司るのが魔鉱石のようじゃ、そして魔鉱石の意思は星に還った魂だといわれておる」 そしてこう続けた。 「星に還りし魂は、一度還った事により星の知識を受けたのじゃろう、 その魔鉱石が勇人、おぬしを呼んだのじゃ、おぬしがこちらに来たのは魔鉱石がこの世界にかかわ ると考えて呼んだ、つまりおぬしは星、世界に選ばれし勇者なのじゃ」 「でも、なんで僕なんですか?」 「そんなことはわしにもわからんよ、魔鉱石にでも聞いてごらん」 「勇者って何をすれば…?」 「わからんよ、しかし星が導いてくれるじゃろう、星がおぬしを読んだのじゃから」 「どうすれば元の世界に戻れるのでしょうか…?」 「………」 「ばば様?聞いてますか?」 「うるさい!そんなにいちいちきかんどくれ!おどおどしおって…わしもおぬしがくるということしか知らん」 質問が多すぎたようだ、あとはおどおどとした態度が気に食わなかったので怒ってしまった。 「ふう…、まったく…、そうじゃおぬしに渡す物がある」 そう言ってばば様はちいさな箱のほうへ歩いて行く。 「何でもはるか昔から異世界から来た勇者に渡すよう伝えられている物みたいじゃ……お、あった」 そういってばば様が小さな箱の中から出したのは、鞘に収まった剣だった。 この世界に来る前に見た魔鉱石のような物じゃないけど、何か透明な石がはめ込まれている。 「これは?」 「見ての通り、剣じゃな。はめ込まれてる石は見たことないの」 剣を鞘から引き抜いてみる、シャインッ と金属質な音を立てて簡単に抜けた。 刀身は銀よりも白に近い色をしていた。 「危ないからためしに振ってみたりしないでおくれ?」 本当に振ってみようとしていたところなので、ちょっとびっくりした。 「伝えられるってことは、この剣はだいぶ前に作られてたんですか?」 伝わるなんて何年間かかるんだろう、昔話みたいなものなのかな?。 「これを渡しに来た男は、その言い伝えと「頼む」としか言わんかったからのう…」 剣を鞘に納め、机の上に置く。 「渡しに来た人ってどんな人だったんですか?」 この世界の人は全く知らないから聞いてもしょうがないことだったけど、聞いてみた。 「うむぅ…商人の男じゃったな、行商荷台((売り物を乗せた移動が可能な荷台、この世界では主にケンタロスなどが引く))も近くにあったよ」 「行商人ですか…?」 行商人と勇者…どうしても結びつかない。 「最初はちょっと疑ったがの、心を覗いても嘘をついてるようには見えんかったから受け取った」 「心を覗くなんて事ができるんですか?」 テレパシーが飛ばせればできそうだけど、感じるだけじゃなくて覗けるのか…。 「わしらの種族はそうゆう事もできるんじゃ、その力を恐れられ、だいぶ殺されてしまったがの…」 心の中で、西洋の歴史「魔女狩り」を思い出していた。 異教徒や異端の者を炙り出し、次々と殺していく…ばば様の一族も殺されて行った…。 頭の中にばば様の言葉が響く。 「悲しむことはないよ…還るのが早いか遅いかだけさ。 それに…力の大きな物はやがて滅びていくものじゃよ、殺されたのは聞こえが悪いがの…」 だけどそんな事があったんなら、ばば様も危ないんじゃないですか?。 「そうゆうことばっか引きずってるやつが来たらすぐにわかるよ。 で、わしに手を出そうとしたら…こうやってあげることにするよ」 また椅子((この作品のように吹っ飛ばしたり、持ち上げて相手を殴打するような使用法をしてはいけない。))が吹っ飛んで来た、なるほど…相手は椅子に強打されて意識を失うわけか…。 「さて、話題がそれたけど、まずは人の多い街に行くといいじゃろう。ここからはナグフの街が一番近いの…。 まだこの世界に来て1日もたっていないんだし、確かな目的も決まっていない。 人の多い街に行けば、自然と知識は着き、こちらにもなれるじゃろうからの」 「でもどうすれば砂漠を抜けられるかわかりません」 「なにも今すぐ行けとは言ってないよ、もう日も暮れている頃じゃ、今日はここで休みなさい」 もうそんな時間なのか、僕が来た頃は昼間だと思ったけど、だいぶ時間が回っていたのかもしれない。 「フュクルは仕事に戻ってしまったようじゃの、ああ見えて真面目で忙しい奴なんじゃよ」 確かに、フュクルさんは居なくなっていた、運び屋って大変なんだな…。 助けてくれた時も、運び屋の本拠地に戻る途中に、偶然僕が落ちてきたわけか。 「それにしても、おぬしのその相川勇人という名前はこの世界と合わんの…」 「そうですか?でも、しょうがないですよ」 2秒ほど空いてから、ばば様は急に何かひらめいた。 「よし!わしがおぬしの新しい名を考えてやろう」 「ええ!?」 さすがに驚いた、いきなり新しい名前なんて、その前にそれは偽名って言う物じゃ…。 「なんじゃ?いやか?せっかく考えてあげようと思ったのに…」 「あ、いやじゃないですけど…」 「それなら決まりじゃな!、素敵な名前を考えてやるから期待しておれ!」 ああ…しまったな。 頼みますから、他人事のように変な名前つけないでください…お願いします。 僕は一時期、相川の「あ」と勇人の「ゆ」で、アユ(魚)って呼ばれてたんだよ…。 「まあ考えるのは後でもよいじゃろう、それよりそろそろご飯にしようかね」 塾に行く前にちょっと食べたきりなので、とてもおなかが減っていた。 「ユウトもおなか減ってるじゃろう?」 「はい、とても」 なんかいやしい子供みたいだな…私は腹が減っているのだ、ご飯を要求する!。 「じゃあちょっと手伝っておくれよ?、二人で作った方が早いじゃろう」 ちょっとどきっとした…いや変な意味でじゃないよ、「ときめいた」とかじゃないからね。 僕、料理苦手なんです。調理実習ぐらいしかちゃんと作れた経験ないよ?。ちゃんとできるかな? 「手伝ってもらうだけじゃから、全部自分で作れとは言っておらんよ?」 調理実習で成功といっても、ほとんど机のかたずけとか道具持ってきたりとかだったんですよ。 「ハイ…」 「何をおち込んでおるんじゃ…?料理嫌いかの?、 でもこれからどうしても作らなきゃいけないこととか有るかもしれないじゃろ?」 「はい」 「じゃあ作るかの」 ばば様はそう言ってキッチンの中に入って行ってしまった。 キッチンといってもそれほど立派な物じゃない、でも木目調がしゃれてる。 しょうがないか…男でも料理のひとつもできなきゃな。 後は包丁で指を切らないこと祈るしかない。 料理指導開始 _____________________________________________ 以下料理指導教室内部の様子 ガタン、バタン、ドサッ ドサドサドサっ コトッ ばば様「まずは野菜を水洗いしておくれ」 勇人「はい」 ジャブジャブジャブ ばば様「ほれ、もうちょっと力を入れてこするんじゃ」 ジャブジャブジャブ ばば様「汚れも落ちたし、このぐらいでいいじゃろう」 勇人「こっちに移しますね」 コトッ、ドサッ ばば様「じゃあ皮むきじゃの、こっちのをやっておくれ」 勇人「よく切れそうですね…この包丁」 ばば様「気をつけてやるんじゃぞ」 シュッ シュッ シュッ ザクッ…! ぴゅー(笑 勇人「っっっ…痛いっ!」 ばば様「包帯!包帯どこじゃ!?」 勇人「血がぁぁぁ!」 ばば様「包帯の前に止血か!どこじゃ!?救急箱!?」 勇人「まな板が…まな板がぁぁぁ!」 ばば様「ひゃあ!真っ赤に染まっとる!」 わー!きゃー!ひゃー!血がぁぁぁぁぁ! [[トラベラー 第3・4・5章 紅蓮]]へ続く… - パソコンに負けるな! -- &new{2009-05-03 (日) 23:29:03}; #comment