ポケモン小説wiki
トライ・アタック☆ の変更点


え? 俺が誰だって?
しょうがないなー!
じゃあヒント
最初は「[[ソ>想夏]]」!

この小説には、4P? っぽいポケモンならではの特殊な表現が含まれます。ご了承ください。
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 カントー地方の東。
 東といっても遥か、遥か彼方の小さな島。
 そこは無人島。人間たちの知らない、鳥ポケモンたちの楽園。
 そこには、太陽光により金属特有の光沢を輝かせ、空に舞うポケモンがいた。
 彼の名前はムード。鋼、飛行タイプという、とても珍しいタイプであるエアームドだ。
 エアームドの抜け落ちた羽は、光を反射せず、貫通させるという。つまり、透明という、雄なら誰でも憧れる色のない物質となる。
 とあるトレーナーは、それをモンスターボールに差し込み、対戦相手の虚をつく、ブーメランとしている者もいるらしい。
 これは、そのムードが、
 この無人島の雄に、羨望の目で見られるまでの物語である。

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 太陽が一番高く昇った頃、俺は目が醒めた。
 春は、ぽかぽか陽気でずっと眠っていたいとはよくいったものだ。
 にしても、寝過ぎてしまったのかもしれない。しかし、夜の事を考えると、これでいいのだと思い直す。
 唯一の自慢である羽を繕い、彼女らの元へ出かけることにした。俺は他の鳥ポケモンも住んでいる、樹齢1000年と言われる大木から離れる。
 暖かな風の感触を羽で感じ、太陽を背中に受け、全身に春の恩恵を染み渡らせる。冬の季節よりも、空が青々と澄みきっていた。
 俺のこの金属の身体は、他の鳥ポケモンよりも春をいち早く感じられるらしい。冬も同様に感じやすいという不便な点もあるが、俺はこの身体で良かったと思う。
 ワタッコたちのわたげとともに、風と遊びながら、彼女らの住みかである洞穴へと着いた。
 洞穴に住んでいるポケモンと言っても、俺がこれから会うポケモンは、ダグトリオでも、ましてや、イワークでもない。れっきとした鳥ポケモンだ。
「トライアタック!」
 ……俺が入り口に降り立った途端、すぐこれだ。彼女らの声が、洞穴で見事に木霊する。しかし、主な目的である彼女の声は聞こえない。聞こえたら聞こえたでかなりショックなんだが。
「……鋼の翼」
 氷、雷、炎。迫ってきた三種の集合体を羽ではたき落とす。一見、どれもが俺の弱点だけど、実はノーマルタイプだからさほどダメージは受けないのだ。
「俺だって! 本当は分かってんだろ?」
「気をつけて、鷺かも知れない! 第一、最初から俺って名乗る奴なんて怪しいよ」
「ふふふ、そうよね。怪しいわよね。飛べない私たちを襲いにきた鷺かもしれないわね」
「ちょ、ちょっとふたりとも!? も、もういいでしょ?」
「あら? どうして? まだ誰か分かってないのに?」
「そうだよ! あっちが仕掛けてくる前に僕たちがやらなきゃ!」
 よく言うよ。もう分かってるくせに。
 俺はすかさず、高速移動で彼女らの元へと滑空する。
「誰が鷺だって?」
「うわっ、出たー!」
「あら? 早かったわね。待ちきれなかったの?」
「ムードさん!」
 三匹それぞれの反応を俺に示す。
 いつも元気な子で、今驚いている子はサン。なぜか自分の事を僕という雌の子。いつも太陽のように周りを明るくしてくれるような笑顔がある。
 大人っぽい、艶やかな彼女はエン。彼女の側にいると、理性が壊されそうになる。
 そして、俺の名前を呼んでくれたのはレン。俺がここを訪れた目的で、俺が一番大好きな彼女。自慢じゃないが、お互いに相手のことが大事だと思ってる。
 それぞれが違った魅力を持ち、この三匹の右にでるほどのポケモンはそうそういないと俺は思う。
 だけど、その一匹が彼女である俺は、とても大きな問題を抱えている。
 そう、彼女たちは『ドードリオ』なんだ。

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 俺は、レンともっといたかったが、エンとサンに追い出されるかたちで、住みかへと戻ることになった。
「はあ、どうすればレンと……」
 彼女たちがドードリオだと、どうして問題なのか。
 まずはレンと二人っきりになるのが難しいことだ。それができるのは夜。しかも他の二匹が寝ている、彼女の見張りの時間帯に限られている。
 だから、夜の為に睡眠を確保していなければならない。
二つ目に――これが、最も頭を悩ませている事だが――彼女たちは一つの身体で繋がっていること自体である。昼間っから外では言えないような体験も、彼女たちは共有することになるのだ。夜に会うっていう、妄想が膨らむような話も、俺にとっては理性を決して外してはならない辛い話である。レンの可愛い仕草に心が融かされようものなら、その先には他の二匹からの地獄が待っているだろう。一緒に住みたくても、エンとサンという障害が待ちうけているのだ。
 俺は、何度目か判らない溜め息をする。
「もしもしそこの君。元気な若者が何をそんなに悩んでいるんだい? 他の鳥ポケモンたちとぶつかってしまうよ」
「うわっ!」
 背後から突然、声をかけられてしまった。俺は身体を反転させて、声の主を見る。
 落ち着いた感じのピジョットだった。目が優しさに満ち溢れ、いかにも賢そうな物腰の。
「君はまだ若いんだから、そんなに悩んでないで。羽目を外すくらいがちょうどいいんだよ」
 もしかしたら、悩みを解決してくれるかもしれない。
「あの、実は」
「おっとっと、私に相談を持ちかけないでくれ。そういうのは苦手なんでね」
 なら、そんな空気を作らないで欲しい。俺は少し鋭い視線をやる。
「そ、そんな目をしないでくれよ。代わりと言っちゃなんだが、良い相談者を紹介するから」
「相談者?」
「そうそう、ただそのポケモン、相談に見合う木の実を」
 そんなのが必要なのか。
「とらないから」
 ……とらないのかい!
「あのー、ふざけてません?」
「いや、ごめん! ほんの冗談で……ってエアカッターしないで。本当に悪かった!」
 第一印象かなり崩れたな。ポケモンは見かけによらずってことか。
「本当に良いポケモンだよ。いろんな経験を積んでいるから、絶対に解決してくれるから。うん」
「で、そのポケモンは?」胡散臭いけど、何もしないよりはましか。
「うん。そのポケモンは、みんなが住んでるあの木の一番てっぺんに――」

 ふう、着いた。ここに住んでるヨルノズクだったな。
「あのー、すいませーん。ちょっとお話をしたいのですが」
「すー、すー」
 居眠り中だった。夜行性のポケモンだし、かなりの長寿らしいから当然かもしれない。
 骨折り損だけど、帰るしかないか。と、俺がきびすを返した時。
「おい、話があるんじゃろう? なぜ帰るのじゃ?」
 後ろから声が返ってきた。しかし、後ろを見ても、どうみても寝ているようにしか見えないヨルノズクだけ。
「えっと、あなたはどこにいるのですか?」
 姿の見えない声に質問をしてみる。
「ほっほっほっ。面白い事を言うのう。目の前にいるじゃろうが」
 喋った。目をつぶりながら。
「えっと、寝ていたのではないのですか?」
「こうやって話しているのに、寝ている訳が無かろう。お前の目は節穴か?」
 どうみても、寝ているようにしか見えない。俺の目は節穴のようだ。
「それで? わしの知恵を借りにきたのじゃろう? どんな相談じゃ?」
「あ、すいません。実は――」
 俺はこのヨルノズクさんに、悩みごとを洗いざらい話した。今度どうすべきかということを聞くために。
「なるほど。確かにそれは難しい質問じゃのう」
 そう言って、寝ているようにしか見えないが、考えているようだった。
 他のポケモンに聞いても、答えられない質問だと自分でも思う。これからも自分だけで背負わなきゃいけない問題なのかもしれない。
 しばらくの静寂。寝始めたのじゃないかと思い、起こそうとした時。
「おお、思い出した。確か、そんな悩みを持ったポケモンが過去にもおったわ」
「ほ、本当ですか?」
「おお、おお。そいつも一匹のドードリオを愛したんじゃよ。懐かしいのう。あれは、もう三十年も前の事じゃったかのう」
 ヨルノズクさんは、顔を少し上げ、口をちょっと吊り上げる。昔の余韻に浸っている様子だった。
「そ、そんなに前だったのですか」
「そうじゃよ。あいつも君みたいに純情でのう。泣きながらわしの下へとやって来たんじゃ」
「俺は泣いてません! で、その答えは」
「まあ、まあ、そんなに焦るでない。誰かの話は最後まで聞くのが礼儀ってモンジャラ」
「モ、モンジャラ?」
……。
「そこは笑う所じゃよ。せっかく、わしが君の気持ちを休めてあげようかなと思ってやったのに」
「え、えっと、すいません」
 このヨルノズク、大丈夫なのだろうか? 未だに目は開いてないし。
「まあ、ええ。で、そいつにわしは言ってやったんじゃよ。『どうせなら、三匹纏めて愛してみてはどうか』とな」
 三匹、まとめて?
「で、でも、それじゃ三股になるのでは?」
「なーに言っておるんじゃ? 逆に考えてみろ。三匹でドードリオじゃないのか? 一心同体じゃろ? 君は彼女の三分の一しか愛せないという事になるぞ?」
「で、でも」
「それと、他の二匹を考えてみなされ。一匹が恋愛してるのを指をくわえて見ているだけ、って事になるじゃろ? その子らが可哀想ではないか」
「た、確かにそうですね。けど」
「ええい! 女々しい子じゃのう。君は彼女と一緒に暮らしたくないのか? 身体を一つにしたくないのじゃな? それを考えれば、自ずと答えが出る筈じゃぞ。その答えが、きっと彼女たちにも良い結果となる筈じゃ。彼女たちの事も考えてみろ。いいか? お前が彼女たち&ruby(トライアングル){三角形};の重心となるのじゃ」
「は、はい……」
「大丈夫じゃ。現にその雄は、三匹共に愛すことが出来て、幸せに暮らしとる」
 考えてみた事もなかった。三匹を同時に愛すことなんて。大丈夫、なのだろうか? でも、方法は今の所、その一つしかない。考えてみるのもありかもしれない。
「じゃが、その雄にも一つだけ悩みが出来たらしいがの」
「え? それはなんですか?」
「それは……」
一つももらすまいと、耳を傾けた。だが、聞こえてくるのは。
「すー、すー、すー」
 寝息だけだった。
「あのー、ヨルノズクさん?」
 起こしてみても、反応がない。思わせ振りなことを言っておいて、これは無いと思う。仕方ないので、俺はこの場から去ることにした。

――――
――――

「おお、おお、思い出した。思い出した。確か、夜の営みで三匹を満足させなきゃいけない、と嘆いておったわ。雄にとって、幸せな事ではないか。まあ、三匹分の性欲を満たすのは難しい事じゃろうがのう」
「確か子供が一匹おったのう。名前は……、そうじゃ、そうじゃ、レーサじゃったはずじゃ。ドードリオになった時に、名前がレン、エン、サン、三匹出来るようにじゃったな。……ほっほっほっ、達者に過ごせよ、若造」

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 ヨルノズクから助言を受けた夜、俺は彼女のもとへと降り立った。
 あたりは寝静まっていて、空には神秘的なまでに星が散りばめられている。
「ムードさん、こっちこっち」
 彼女と俺だけの内緒の時間。
「今行くよ」
 エンとサンは寝ていた。この時を狙っていたのだから、当然と言っちゃ当然だけど。
 なんたって、今日は彼女の見張りの日。俺たちは三日分の二匹だけでの密度の濃い話をする。傍に君がいるだけで、甘美な熱い気持ちがせりあがってくる。
「ふふ、ムードさん」
「ん? 何?」
「なぁんでもない」
「何だよそれ」
「何でもないよ。ただ……」
「ただ?」
「名前を呼ぶだけで、幸せな気持ちになるの」
「ふふ、レン」
「何?」
「俺も」
 お互いに顔を見合せ、はにかむような笑み。一瞬の間をおいて、軽い口づけ。
 コツン、とお互いの気持ちを確かめあうかのような響きが空中へ溶けていく。
「かれこれ、もう一年たつんだよなあ」
「懐かしいねぇ。でも、いつだって、幸せじゃない日はなかったよ?」
「俺だってそうさ。そういえばレンはさ、最初の頃は俺のこと、怖がってなかったか?」
「はい、実は。……でも、今は全然違うからね!?」
 そうやってレンは慌てる。俺は疑ってすらいないのに。
「本当?」
「本当だってば! もう、信じてよぉ」
「ごめん、ごめん。ほんの冗談だって。俺が信じてないわけないだろう?」
「もぅ、そんな事言われたら……。ずるい」
 そう言って頬を膨らませ、そっぽを向いて拗ねる。
 正直なところ、そんな風に可愛い仕草を見せられると、もっといたずらしたくなる。怒らせたくはないんだけど。
「ははは、んでさ、何で俺のことが怖かったの?」
「えっと、それ聞いて嫌いにならないよね?」
 レンはちょっとうつむきがちに、上目遣いで聞いてくる。これが計算じゃなく、自然に使ってくるんだから、彼女は凄い。
「誰のことを?」
「わ、私のことを……」
 少しくちばしが震え、涙目になっている。
 こうなると俺の性格上、もっと彼女を困らせたいなんて思ってしまう。思うだけに止まらせておくけど。
「何で嫌いにならなくちゃいけないの? 大丈夫だよ。それとも、そんなことで壊れちゃう仲かな?」
「そんなことない! 思ってもいないよ!」
「なら、ね」
「う、うん」
 そして、お互いの目をみつめあうこと数十秒。
「えっとね。ムードさんの積極的な態度が怖かったんだ。夜、一匹だけで見張りをしてる時に、ムードさんがやってきて……。エンとサンが昼に親しく話してるのを見て、悪いポケモンじゃないことぐらいはわかってたんだけど、でも、やっぱり怖くて」
 そう。元々はドードーの頃から、他の二匹とは知り合いだった。そして、進化して新たにこの世に生まれたのが彼女、レンだったんだ。
 最初は彼女とも他の二匹と同じくらいに仲良くなれればいいな。そんな程度にしか思ってなかった。だけど、エンやサンの影に隠れて、クスクス笑っている姿、二匹とは反対の、大人しい姿に、次第に惹かれて。もっと彼女だけと話してみたくて。彼女だけ起きてる時間帯におしかけたんだったな。
「思い出した。レンと話してみたかったんだよ」
 俺の言葉にクスクスとレンは笑う。そんな面白いこと、言ったつもりはないんだけど。
「あの時と同じこといってる。『君と話がしたくて』って」
……むう。さっぱり覚えていない。
「でも、」
 彼女は深呼吸をし、
「その時のひたむきさと、純粋さに、私は惚れちゃったんだよ」
 ――花が咲いた。
 いや、正確には、彼女が目を細め、にっこりと笑ったんだけれども。でも、そう形容したくなるほど、惚れ直……、違うな。より一層、深く惚れ込んだ。
 いいんだろうか? こんな彼女の他に、エンとサンも同時に愛するなんて事。
「あ、あのさ……」
 レンから目を反らし、自分の羽で自分の首を撫でながら、今日のヨルノズクの話をする。
 彼女は少し首を傾け神妙な面持ちで悩み始めた。
 彼女の悲しむ顔が見たくなくて、目を閉じて、顔を背けた。
「いいよ」
「え?」
 彼女を見ると、なぜか笑っている。
「私も、それが一番なんじゃないかなーって思ってたの」
「それで、レンはいいのか?」
「ムードさんが他の二匹も好きになるのは……本当は嫌だよ。嫉妬、したくなる。でも、ドードリオだから仕方ないことかなって」
 こういう時、何を俺は言うべきなんだろう。かけるべき言葉が、全く見つからない。
「けれど、さっきのヨルノズクさんの言葉で決めたの! 私たちは三匹で一匹だから。ムードさんだったら私……ムードさん以外に誰かと一緒に生活するのは嫌! だから、三匹まとめて愛して!」
「レン……」
 彼女がここまで決心したんだから、俺も……やるしかないじゃないか!
「頑張ってみるよ。三匹とも、愛せるように」
「うん、その意気! それと、あの二匹だけどね、一つの身体を共有してるから分かることなんだけど、ムードさんのこと、少しは気があるとおもうよ」
「そ、そうなの?」
「うん、多分。過信し過ぎはだめだけどね」
「よし、気合い入れて頑張るよ。それでもあの二匹、手強そうだし」
「かもしれないね。あと、それと」
「ん? 何?」
「それでも、あの、ええと」
 一体、何を言いたいんだろうか? すごく恥ずかしそうで、でも、今にも崩れそうなほど弱々しい。
「三匹の中で、私のことを、一番、好きでいてくれたら嬉しいかなって」
顔を真っ赤にしながら、何とかレンは伝えてくれた。
「もちろんだよ。俺の気持ちは絶対にレンに傾いてるから」
彼女を離すなんて馬鹿げたことを誰がするだろう?
 少なくとも俺はしないと思う。
 今回のことで、さらに彼女のことが好きになった。
 俺は優しく、そっと彼女の頭を撫でる。
 彼女と目を合わせる。彼女といるだけで、一秒という一刹那が、何十秒、何百秒、いや、もっと、もっと長くなる。
 そして、さっきよりも長い、いわゆるフレンチキスというものを、彼女とした。
 くちばしが触れるまでの瞬間、触れないでいるのがとても切なくて、もどかしい。彼女をめちゃくちゃにしたくなるほど、乱暴に扱いたくなるほど、苦しい時間だった。
 彼女に触れた瞬間、彼女も同じような感覚を味わっていることが、なんとなくだけど、感じた。
 互いにくちばしを開け、俺よりも少しひんやりとした、けど、とても感情の高ぶりが顕れているような暑さを同時に感じる。
 ひどく簡単に言えば、でも、伝えきれてないと完璧に言えるけど、
 ――甘くて、柔らかくて、気持ち、良い。
 彼女はトライアタックの氷を司っている。
 それを体現したかのように、彼女のキスは、雪のように融けそうで、柔らかくて、冷たくて、でも、優しくて。
俺の舌と彼女の舌がゆっくりと、溶け込むように、絡まって。
 幸せで、ほんのりと温かいキスをした。

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「つってもなあ。どうすればいいんだ? 二匹とは、今更って感じなんだよなあ」
 今考えているのは、二匹とどうやって恋仲になるか。云わば、彼女たちの心を落とすための『攻略』方法。
 いざ、彼女たちとそうなると言っても実感が湧かない。恋愛感情が起きないのだ。
 考えても、考えても、考えても、考えても、考え――。
 ――無理だ。
 俺が二匹とイチャついている事。
 想像できないーーーー!
 そんな事だから、彼女たちを振り向かせるなんてのは、言うまでもないってやつだ。
 そうやって考えが纏まらず、心の中の霧が立ち込め始めると必ず出てくる昨日の密会。
 とても幸せで心が満ち足りていた。
 昨日は、俺の何かが溶かされて、彼女の、言葉では表現する事の出来ない、けれど、強くて温かい何かが流れ込んできた。
 その何かは、多分、
 ――幸せ、なんだろう。 と、今考えてるだけで、色々な意味で顔が熱くなる。
 何を一体考えてたんだ。俺!?
 でも、その時の感情は、思い出すだけで幸福で――。
 っていけねぇ! あの二匹をどうするかを考えないと。
 でも、どうすれば?
 そんな堂々巡りをしていた。
「……ふふふ」
「ひうっ」
 突然、とてもくすぐったくて、生暖かい感触。心がざわついて、心臓が跳ねる。
「こんなこと、するのは……、エンか?」
 俺はざわめきを必死で押さえながら、背後から息を吹きかけてきた相手に呼びかける。
「当たりよ。それにしても、雄にしては、可愛い鳴き方したわね。いつもレンにそうやって鳴いているのかしら?」
「う、うるさいなあ。たまたまだよ。俺が首筋弱いの、知ってるだろ?」
「ふふ、私に背後をとられるなんてまだまだね」
「そうだよ。ボク1人で勝てるんじゃない?」
 横からサンが会話に入ってくる。
「……、サン、いたのか」
「最初っからいたよ! ボクたちドードリオなんだから普通でしょ!」
「そうね。隙だらけだから、大丈夫じゃないかしら」
「もう、ふたりとも! ムードをからかうのは止めて!」
「スキンシップよ。ねぇ、ムード」
 そしてまた、俺の耳に息を吹きかけよう……、
「ダメーーーーーーー!」 ……。え?
 俺は突然、

めのまえが まっしろに なった

――――

 ここは、どこだろう? 暗い。何も見えない。真っ暗だ。
 そうか。俺は、まぶたを閉じていたんだ。……。……いつの間に?
 とりあえず、俺はまぶたを開いて、現実へと戻る事にした。
「やっと起きたのね!」
「……ここは?」
 目が覚めたその場所は俺の住み処ではなかった。澄み渡った空がなく、上は岩肌の天井がある。そして何故か、頭に鈍い痛みが襲っていた。何故なんだろう?
「……本当に大丈夫!? 自分の名前、覚えてる?」
「それくらいは覚えているよ。馬鹿にするなよ、エ……。エン? 何でここに?」
何で彼女の声がするのだろう? レンならなんとなくわかるのだけど。
 俺の言葉を半分聞いてなかったのか、エンは、良かった、頭は正常に動いているわね。とか横でぶつぶつと呟いている。他の二匹は寝ていた。
 俺は改めて周りを見渡した。辺りは暗く、岩でごつごつとしている。右の方は暗く、闇で先が見えない。反対側には、満天の星空が見え、夜遅い時間だと教えてくれている。どうやら、ここはレン、エン、サンの住み処である、トンネルの入り口らしい。
「心配したのよ。ずっとあれから意識がなかったんだから」
「……あれから?」
 全く思い出せなかった。思いだそうとすると、頭の痛みがさらに酷くなる。まるで、思い出してはいけないと言っているかのように。
「覚えてないの?」
「ああ、全く。この頭の痛みが関連してるのかな?」
「え、ええ。そうね。関連しているわ」
 エンは俺から目を反らし、顔をしかめる。
「何があったんだ?」
 そう俺が聞くと、もう言うしかないと諦めるように、俺を見つめ。
「……ごめんなさい。少し、冗談が過ぎたわ」
「え? いきなり何だよ」 
 彼女の顔は元気がなかった。しゅんとしていて、いたずらを叱られた、子どものような表情だった。
「あなたに息をまた吹きかけようとしたとき、レンがかなり怒ったのは覚えているわよね?」
「ああ、俺はその直後に意識を失ったんだ」
「ええ、そうね。……実はね、そのとき、レンがドリルくちばしをね、貴方の頭にやっちゃったのよ」
「……なるほど」
 わずかにそのときの光景が浮かび上がった。かなり必死な顔で、俺をエンから引き離すために……。どうりで思い出したくなかったはずだ。
「まさかそんなことになるなんて思ってもみなかったわ。反省してる」
「気にすんなって。俺も予測できなかったし」
「本当はレンも起きていたかったみたいだけど、見張りの担当の時間に眠気で集中出来なくなるからって、寝かせちゃったの。レンも、凄く申し訳なさそうだった」
「そ、そっか」
「う、うん。ごめん……」
 そして、お互いに次の言葉が見つからなかった。きっかけさえあれば、次々と言葉が出てくるのだが、こんな気まずい出来事の後だと、色々と、な。
「レ、レンを嫌いにならないでね!」
「な、何で嫌いになるんだよ?」
 いきなりレンが大真面目に、必死になって叫んだ。俺は何でそういう事に繋がったのか分からず、聞いてみたが、あっちもきょとんとしていて、俺が言った言葉が理解できなかったようだ。
「だ、だって、頭におもいっきりドリルくちばしをされたでしょ? だから、怒っているのかと」
「そんなんで怒らないって」
「そ、それに、私のせいでレンとムードの仲が悪くなったら嫌だし」
「仲は悪くならないって」
「……本当に?」
「ああ、俺がレンを好きなのは変わらないよ。絶対に。これからも」
 どうやら、レンは俺らの仲を心配してくれているようだった。
 レンは、いつもいたずらをして、誘惑をしたりして、からかったりして、誰かの反応を見るのを楽しむのだが、基本的に優しい。普段は表に出さないだけで、いつもみんなを気遣う。昔からそんな奴だったことを思いだした。
 まだレンがいない、つまりまだドードーだった時、サンと俺がいつも危ないとき、ずんずんといろんな所へ踏み出そうとしたとき、いつも助けたり、ブレーキ役になったのは彼女だった。
 ドードリオになっても、その本質は変わってないみたいだ。
「……こんなに好きって言ってくれる相手がいるなんて、レンは幸せね。少し、羨ましいな」
「ん? 何か言ったか?」
「な、何でもないわよ」
「あ、ああ。そっか」
 凄く必死になっていて気になるが、ま、いっか。
「ねえムード、これからどうするの?」
「どうするって?」
「すぐに家に帰るかどうかって事。別に私は、ムードがまだここにいても構わないんだけど。頭も心配だしね。でも、すぐに帰りたいんだったら、帰らせたいし……」
 これ以上、俺とレンの仲がこじれちゃいけないって思っているのだろう。現に、かなり不安げな顔をしている。
 どうしよう。今までだったら、真っ直ぐに帰っていたかもしれない。でも、俺は、
「ここにもう少しいるよ」
「え?」
「いや、どうせだったらレンと早く会いたいしさ。見張りはエンの次だし、俺はけっこう寝たから、眠くないしさ。それに」
「それに?」
「こうやって、エンと話すのって久しぶりじゃん。たまには話そうよ」
「ええ、そうね。レンとの交代まで、久々に話しましょうか」
 そうやって、最近よく見る小悪魔のような笑みではなく、子どもの頃と変わらない、満面の笑みで返してくれた。
 今なら自然と、彼女も好きになれそうな気がした。
「待ってて、何かきのみ持ってくるわ」
「いや、そこまでしなくても」
「気絶してから今まで、何も食べてないでしょ? お腹空いてるんじゃない?」
「俺は……」
 そこで、かなりお腹が空いている事に気がついた。
「……お願い」
「ふふふ、待ってね。すぐに取ってくる」
 そして、ドードリオの自慢の脚力で駆けていった。
 改めてそういう目で見ると、エンはかなり性格の面でも魅力的だった。色々な雄が、あのレンだけじゃなく、エンも可愛いって言っている理由が分かる気がした。
 問題はどうやって彼女とそういう仲に……。
「きゃーーーー!」
「エン!?」
 彼女の悲鳴が聞こえた。彼女の身に何かあったらしい。
「すぐに行かなきゃ」
 空とは違って、壁があって飛びづらいが、今はそんな事言っている場合じゃない。出来るだけ速く飛び、出来るだけ早く着かないと。
「嫌! 離して」
 声が近くなった。何があったのだろう?
「ぐへへ、この時を待っていたんだ。今さら止めるものか」
 見ると、エンの頭を手で掴んでいるゴローンがいた。
「おい、そこまでにしとけよ」
「ムード!」
「あぁん? ……ああ、いつもエンたんと一緒にるやつか。誰が離すか」
「そこのゴローン! 汚らわしい手で私を掴まないでよ!」
「……汚らわしい? この俺の事が?」
「ええ、そうよ。こんな事をしている時点で汚らわしいわよ!」
「……俺はエンたんの事好きなのに、どの雄よりも愛しているのに」
 ……こいつの愛かなり歪んでるだろ。第一、俺の事完全無視ですか。まあ、色々と助ける準備が出来るけど。
「……なるほど、天井の穴からエンを襲った訳か」
「それがどうした?」
「いや、お前一匹だけみたいだからな。お前弱そうだし、簡単に倒せそうだ」
「ふひひ、忘れてるわけじゃあないだろうなぁ?」
「ん?」
「人質がいる事をだよ」
 俺の顔から、汗が一筋垂れる。
「ぐひ、そこまでバカじゃないみたいだな。おぅらぁ!」
「ぐっ」
「ムード!」
 岩が俺の頭上に落とされる。……今日は頭に災難が降りかかりやすいな。これくらいなら、全然痛くはないけど。
「なんだ、もう終わりか?」
「ぐへ、威勢がいいなぁ」「お前みたいな雑魚の攻撃、効く奴なんているのか?」
「ンだとぉ」 
「近寄らないで攻撃なんて、つまらない姑息な奴」
「黙れ、黙れ!」
「俺がお前だったら、がんせきふうじかステルスロックでエンを封じておいて、俺をぎったぎたにするけどなあ。ステルスロックって自由に痛め付けること出来るだろ?」
「い、今からやるところだったんだよ!」
「きゃあ!」
 そういって、俺が言った通りにやり、俺に近づいてくる。
「このや……痛!」
 エンとゴローンが話している間に撒いておいた、まきびしに見事に引っ掛かった。……単純な奴。
「お前はかなりバカみたいだったな。簡単に挑発にのるなんて」
 高速移動でゴローンに近づき、エンに触っていた手を、固めておいた鋼の翼で切り刻む。
「ぐぎゃあ」
「俺の大事な奴に触るな。さっさとここから消えろ」
「わ、分かった。うわぁぁあ」
 叫びながら、ゴローンは去って言った。
「ありがとう、ムード」
「大丈夫か?」
「ええ」
「じゃ、きのみを取って、戻りますか」
「そうね。……あ、少し頼みがあるの」
「ん?」
「久しぶりに、ムードの背中に乗ってみたいなって」
「ああ、懐かしいなぁ。エンが乗ったのはいつ以来だ?」
 本当は、レンにはけっこうやってあげているんだけどな。確かにエンは久しぶりだ。
「さあ、私も忘れたわ。それより、早くしましょう」
「だな」
 きのみを取って、俺たちは洞窟の入り口へと戻ってきた。俺の背中に乗っていたエンは、一切口を開かず、俺に身体を預けていただけだった。お互い、昔の事を懐かしみ、いろいろと思い出に浸っているのが何となく分かっていたから、沈黙していても、心地よい空間が拡がっていた。
 入り口に戻った後、それぞれが思い出していた過去話に花を咲かせ、笑いあい、時に昔のことで怒りあい、時に当時言えなかった感謝を伝えあった。
「ねえ、ムード」
「ん?」
「……本当にありがとう」
「え? 何だよいきなり」
「思えばね、私が楽しいと思った思い出は、いつもムードがいるなって。レンとすぐに打ち解ける事ができたのも、あなたのおかげ。気づいてないのかも知れないけど」
「そうなのか?」
「そうよ。いつもあなたが私たちの中心にいたのかも知れない。それに、さっきみたいに、いざというとき、あなたは私たちを助けてくれたのよね。だから、あなたには感謝してる。……ああ、恥ずかしい。他の二匹が寝ている時しか言えそうもないから今言ったけど、面と向かって言うのも恥ずかしいわね」
 本心で言ってくれているのがすごく分かる。だからこそ、今の言葉はかなり、嬉しかった。
「……だからね、サンには悪いのだけど、私は許そうかなって思うの」
「なんのこと?」
「あなたとレンの関係。私たちだって、恋愛をしたいけれど、でも、私たちが一番幸せになれるのは、あなたと一緒の時だと、思うから」
「でも……」
「あなたの言いたいことは分かる。でも、レンが幸せなら、私も幸せだから。サンだってきっと、分かってくれるはずだから」
 思えば、彼女はいつもそうだった。自分の幸せよりも、自分の大切な人の幸せを願う。それは、彼女の良いところでもあるけど、でも……。
「……認めない!」
「え?」 
「そんな自己犠牲、俺は許さない!」
「ムード……」
「お前はいつもそうだ。誰かが幸せになっている所を横で笑って。少しは自分を大切にしろよ!」
「……じゃあ、どうすればいいのよ! 私たちはドードリオ。三匹で一つの身体を共有しているの! 誰かが認めなきゃ、駄目なのよ!」
 エンは涙を浮かべていた。
「……俺がお前も好きになるよ! お前も愛してみせる!」
 エンはそれを聞き、しばらく呆然としていたが、はっと我に返ると、涙を一筋流し、必死に俺を睨み付けた。
「勝手なこと、言わないで! 最低! そんな事許されると思ってるの。レンの、レンの気持ちはどうなるのよ!」
「じゃあ、エンは隣でずっと、エン自身は幸せじゃないんだぞ! 俺はそんなお前を見るなんて嫌だ!」
「それが勝手だって言うのよ! 同情からそんなこと、言わないで!」
「……同情?」
「ええ、同情よ。私が可哀想。だからあなたも愛します。あなたが言っているのは、そういうことよ。……私だって、ムードのこと好きだったのに、レンと付き合い始めて、諦めてたのに、今さら……」
「俺のことを?」
 初めて聞いた。エンが俺をそんな風に見てたなんて、思いもしなかった。
「ええ、鈍感なあなたには分からなかったでしょうね。でも、忘れて。さっきのことであなたのこと、嫌いになったから。同情なんて嫌よ。私はそんなに軽くないわよ!」
「エン、二つ、勘違いしてる」
「何よ!」
「同情から、好きだなんて俺は言わないよ」
「……それじゃあ、あなたのその気持ちは何なのよ」
「俺だって、これはおかしいって始めは思ってた。あるヨルノズクから言われても、自分から好きにならなきゃ、余計傷付けるって」
「じゃあ、どうして……」
「エン、お前も俺にとって大切なんだ」
 びくんとエンの身体が揺れる。
「今日話してみて分かった。エンが俺のことを大切に思ってくれてるように、エンは、俺にとって大切な人なんだなって。生半可な覚悟でこんな事言っちゃいけないって分かってる。でも、エンを、それにサンも、ないがしろにして幸せになりたいとは思わない。どうせなら、俺が、三匹まとめて幸せにする! エン、俺はお前のことも大好きだ!」
 ……これが、俺の気持ちの全てだ。これで駄目なら、もっと、もっと、俺は努力して、苦労しなきゃならない。諦めるなんて、出来ないから。長い道のりだって、覚悟はしてる。
「もう、勝手過ぎるわよ」
「……ごめん」
「レンはどうするのよ。そんな事したら、悲しまない?」
「それが勘違いの二つ目。レンは、許してくれた。むしろ、後押ししてくれた」
「そうだったの。そしたら、レンの気持ち考えなさいって言ってた私が馬鹿みたいじゃない」
「……ごめん」
 俺は彼女から目を反らし、俯いた。次に何を言われるか、想像もつかない。
「……あなたを信頼するわ」
「……え?」
 俺は顔を上げ、彼女を見た。
「あなたなら、できそうな気がする。私たち三匹が一番信頼しているし、そしてね」
 エンは満面の笑みで、惚れ惚れする顔で、
「私が一番好きなあなただから」
 そういって、キスを、された。
 触れるか、触れないかの軽い、しかし温もりの込もった柔らかいキス。
 突然の事に、俺が惚けていると、
「あら、満足しなかった? もっとディープなのがお好みかしら?」
「そ、そんな事、うむっ」 エンは最近よくみせるイタズラっぽい笑みで、今度は長く、舌を絡めるキスを。
 彼女とのキスは、炎のようだった。すごく激しくて、淫らで、とても、温かい。
「ふむっ、くちゅ、まだ、よ。もっと、もっとぉ」
 すごく積極的で、頭の芯がとろけそうだった。
「ぷはぁ、はぁ、はぁ」
「はぁ、はぁ、いきなり、過ぎるだろ」
「あら、私は初めてだったのよ。あなたはレンと何度もしてるはずなのに、まだまだね」
「いや、エン、かなり上手すぎ」
「こんなんでよく、三匹まとめて幸せにするって言ったわね。これからは私が、鍛えてあげるから覚悟しなさい」
「……エンには敵わないな」
「あら、今頃気付いたの?」
 その後も俺たちは、レンとの交代時間まで、キスをし続けた。
「ああ、そろそろ交替ね」
「ああ。……そういえば、俺がレンにドリルくちばしやられてレンと話できる状況になったんだったな」
「ふふふ、そうだったわね。レン、ムードがそういう風になる事を目指しても良いって言ってたみたいだけど、心では認めていないかも」
「え?」
「だって、私が息を吹きかけてこうなったでしょ? 多分、かなりの焼きもち妬くわよ」
「う゛」
「まあ、頑張りなさい。これはあなたの試練よ」
「……頑張ります」
「ああ、それと……、サンにも、あなたの気持ちをちゃんと伝えれば届くはずよ。ムード、応援してる。絶対に、私たちの事、幸せにしてね」
「もちろん!」
「じゃあ、最後におやすみのキス、して?」
「ああ。おやすみ、エン」
 そして、エンは俺とキスをしながら眠りについて……。
 レンが、起きてしまった。
「な、何やってるのーーー!」

------

「……はぁ」
 昨日、いや、今日のまだ陽が昇っていない頃か。……レンにこってりと絞られた。いつものトライアタックより強かったかもしれない。
 俺がエンを襲っているように見えたらしく、みだれづきを散々やられ、俺がお互い合意の上だと言って事情を話しても、それでも、いくらなんでも早すぎだとか、変態ーー! だとか、不埒者ーー! だとか言われて、何度もドリルくちばしを至るところにやられて、全身傷だらけだ。……もしかしたら、一番怖いのは彼女かもしれない。レンがようやく収まった後、レンがごめんなさいと謝って仲直りをして、その後は二匹だけの時間を過ごしたけれど。
 ……浮気はかなりヤバいことになりそうだ。
 とりあえず、今は自分の住みかで、はねやすめ中。レンから受けた傷がまだ痛む。
 はねやすめで傷が全快したのは、三匹が交替を始める時間ぎりぎりだった。もう夕日が沈み、星が明るく照らされてくる時間帯。
 遅かった。
 洞窟に着いた時、起きていたのはサンだけだった。「あ、やっと来たー! レンちゃんが一日中怒ってたぞー」
「……まじで?」
 いやでも、傷を治してたんだからしょうがなくて、そもそも、レンから受けた傷で。
「うんうん。『あの甲斐性無し』って怒ってたよっ」
「……はあ」
 ああ、明日どうしよう。またドリルくちばし百烈拳やられるのか。俺は……、明日生きているかな?
「嘘、だよっ!」
「え?」
「だから、ぼくの嘘! 本当はかなり心配してたよ。私のせいでって」
「そ、そっか」
 ああ、神様。私は生きられるみたいです。本当に、良かった。
「にしてもお前。エンに似てきたな」
「えへへ、褒め言葉?」
「いや……、まあ、そういうことにしとくよ」
「わーい、褒められた褒められた。でも、ぼくより弱いムードに褒められても、そんなに嬉しくないや」
 ぐ、こいつ。
「何でサンより弱いんだよ」
「だって、レンに受けた傷でそんなに休んでたんでしょ? つまり、同じ能力を持ってるぼくより弱いって事じゃん!」
 ……確かに一理あるけど。こいつに言われるとなんか悔しい。
「レンはレンで、サンはサンだろ? お前が俺より強いなんて認めない!」
「じゃあ、かけっこしよ!」
「か、かけっこ?」
「うん! 昔よくやってたじゃん。ムードは飛んで、ぼくは走って。どっちが速いか勝負!」
「それで勝敗が決まるのかよ」
「なあに? ぼくに負けるのが怖いの?」
 こいつ! 
「……ああ、やってやるよ! 負けて泣いても知らないからな」
「じゃあ、あの大きな木までね。よーい、ドン!」
「……ちょっと長くないか? ってこら、待て!」
「へっへー、ほら、速くしないと負けちゃうよー。負けたら土下座ね!」
「それは卑怯だろ。ってか」
&size(20){''「お前、土下座できないだろーーーーーー!」''};
 俺は飛ぶ、飛ぶ。この満天の星空を。
 サンは、何か技をしかけると、ズルだ、もう一度! って言って訊かないだろう。だから、まきびしを撒かないし、高速移動もできない。これは、意地と意地のぶつかり合いだ。負けるわけには、いかない!
 ……よしっ、追い越した。
「先に行くぞー」
「あ! 待てーー!」
 追い抜き、追い抜かれ。そんなデッドヒートを繰り返し、目的地まで後もう少しの所までさしかかった。……スパートかけるなら今だ!
 俺は力を振り絞り、最高速度で飛んだ。
 結果は……タッチの差だった。
「俺の、はあ、はあ、勝ち、だな」
「負け、ちゃった」
 振り返ると、サンは……泣いていた。
「お、おい、いきなりどうしたんだよ?」
「だって、ひっぐ、うわぁぁぁあん」
 しばらく、サンは大声を上げて泣いていた。
 対する俺はどうすればいいのか分からず、そっとしておくしかなかった。
「ぼくってさ、女としての魅力、ないよね」
 突然、ぽつりとそんなことを呟いた。
「はあ? 何でそうなるんだよ」
「ぼくってさ、ムードにとって三番目、いや、もっと下なんでしょ?」
「……二匹から聞いたのか?」
 もしかしたら、いや、絶対にレンとエンから昨日の事を聞いたのだろう。そこからなぜ、三番目の雌となったのかは分からないが。
「だってさ、ぼくってさ、他の二匹よりも異性を惹き付ける魅力がないでしょ?」
「そんなことな」
「大有りだよ! じゃあ何で付き合いの長いぼくとエンより、レンを先に選んだのさ! ぼくより先にエンを好きだって言ったのさ!」
 確かに、レンを先に選んだ事は何も言えない。昔からよく知っていたからこそ、そういう対象として見ることがなかったって言っても、それは違うような気がする。
「ぼくってさ、雄っぽいでしょ? だから、友達って関係で終わると思うんだ。雄が雄を好きになること、ないでしょ?」
 そういう風に考えていたのか。そういうボーイッシュな所が可愛いって思う奴いっぱいいるのに。
「違うよ」
「何も言わないで! 分かってるから。ぼくはおまけなんだよね」
 頑として聞かないようだ。
「ちょっと、俺の話を聞け!」
「うひゃい」
 俺がいきなり大声を張り上げたことに驚き、サンは変な声を上げていた。
「ったく、俺がいつ順位を言ったよ。いいか? 俺はサンの性格充分可愛いと思うよ。それにレン、エン、サン、それぞれ違う魅力を持ってるだろ。それぞれが魅力的で可愛いと思うぞ」
「それって、何かズルい」
「かもな」
「じゃあ、私の可愛い所って?」
「その純粋で真っ直ぐな所。その真っ直ぐに表に出して、何でも言える奴滅多にいないぞ」
「うぅぅ」
「断言するよ。お前は可愛い」
「うぅぅぅ」
「それに」
 これからは絶対に曲げない。心からの本心。
「三匹を絶対に幸せにするって言ってるんだ! もちろん、サンもその中に入ってるんだって!」
「……じゃあ、教えて」
「ん?」
 サンは俺を上目遣いで見上げて
「恋人同士でする事。ぼく、何も知らないから、さ」
 俺はその可愛さに彼女をぎゅっと、力強く抱きしめた。
「ムードぉ、ちょっ、ちょっと、痛いよぉ」
 俺はじっとサンを見つめて、
 キスをした。
「……ねぇ、ムード?」
「ん?」
「でぃーぷ、キス? って何?」
「お、おい、それどこで」
「エンとレンが、言ってた」
「……ふぅ」
 何て説明すればいいんだろう? やらなかったらやらなかったで、サンは、大切にされてないとか思っちゃうかもしれない。
「ディープキスってのは、舌を絡めあったり、口の裏を舐めたり、唾液を交換しあったりするんだよ」
「何か、エッチだね」
「……だな」
 サンが緊張しているのが分かる。これ以上は後戻りできないって肌で感じ取っているのだろう。
「……サン」
「な、なあに?」
「ちゃんと言うぞ」
 俺は一旦、深呼吸をして、言葉を噛み締めながら、伝えた。
「お前の事、大好きだ」
「うん! ぼくもだよ!」
 そして、ゆっくりと、月が昇っていくのと同じくらいゆっくりと、大人のキスをした。
 サンとのキスは、健気で、積極的で、気持ち良くさせよう、気持ち良くさせようと必至な感じが伝わってくる。
 やっぱり、他の二匹よりは下手、なのかもしれない。でも、それを補って、余りあるくらい、気持ちがびしびしと伝わってくる。それがとても、幸せな気分を引き寄せてくる。ほんわかとほっこりした気持ちが。
 可愛いキス。
 しばらくキスは続いて、彼女が目を細めてにっこりした時は、意識せずに、俺も微笑みを返していた。
 一通りキスを終え、かけっこしていた道をゆっくりと歩いて帰った。
「へへ」
「ん? どうした?」
「幸せ、だね」
「ああ」
 彼女の笑顔は眩しかった。

-------

「朝……か」
 最近はずっと晴天。春という季節にふさわしい、穏やかな季節が続いている。
 しかし、ここ数日の俺の周りは、目まぐるしい程の変化が起きていた。
 俺がハーレムを作れと助言され、つい昨日には、レン、エン、サンという、三匹を同時に愛する事となった。……まあ、その三匹はドードリオという、特異なポケモンなのだが。
 そして今日。俺はその三匹と共に、つい最近までは予想さえできなかった、幸せを共有する初めての日となるのだろう。
 春の爛々とした気分も相まって、俺の気分はいつになく高揚としている。
「トライアターック!」
「うおわっ」
 洞窟の入り口に降り立った途端、いつものような歓迎を受ける。
「だから俺だって。いい加減止めろって」
「あら、俺って誰かしら? それだけじゃ分からないわよ」
「そうだよ、そうだよ。ぼくたちの彼氏はそんなに鈍い反応はしないぞー」
 相変わらずの反応を示すみたいだな。でも、サンが彼氏って認めてくれて嬉しい。そして、レンがフォローしてくれれば……。
「こういう無防備な彼こそ、私たちの彼氏のような……」
 レ、レン!? それってフォローしてくれてるの? と、とりあえず彼女たちの所へ行かないと。
「「「お帰りなさい、ムード!」」」
 お、お帰りなさい? ……何か、恥ずかしくて、くすぐったい言葉だな。
 そうして、俺たちは四匹で一日を過ごした。昼ごはんのきのみの時、「あーん」と、三匹から一斉に口移しをねだられた時は大変だった。最初に誰からしてもらうかに迷ったし、最初にレンを選んだ時、いじけてしまった二匹を宥めるのに苦労したし。
 でも、そんな甘い一日もすぐに過ぎていき、夕日もすっかり隠れてしまって。
「じゃあ、そろそろ俺は帰るよ」
 いつものように家に帰ろうとすると、
「あら、何で帰るのかしら?」
「え、だって夜になってきたし」
「別にいいじゃん。ぼくたちもとがめたりしないし、むしろ歓迎だよ!」
「いや、でも」
 そこで、頭をレンに小突かれて。
「もっと、一緒にいよ?」
 そんな風に言われたら、断れないわけで。

 俺は三匹と、初夜という日を迎えることとなった。

 いつも慣れ親しんだ、レンとの甘いキス。前から二匹で望んでいた日が、他の二匹と共に今――。
 長いキス。お互いの唾液を交換し、くちゅくちゅと厭らしい音をたてながら、二匹の体温を一つにしていく。レンの唾液はとても甘美で、口内はひんやりとしているのに、俺の体温はどんどんと高まっていって。
 ふと、こんなに長くやっていて、エンとサンはどうしているのか見てみる。……やっぱりちょっと不機嫌な顔でこちらを見ていた。背中に落ちる汗はまやかしではないだろう。このまましていれば、いずれ何かをするに違いない。
 エンが何かを思い付いたらしく、みるみるうちに小悪魔的な笑みを浮かべ、サンに耳打ちをする。しかし、レンはまだまだ止める気配はない。むしろ、もっと厭らしく、大きな音をたてて俺の口の中を蹂躙していく。
「ムードぉ、んちゅ、好きぃ、大好きぃ」
 そんな彼女とのキスに、また意識を寄せているうちに……、エンとサンが目の端から消えていた。
「ん゛ん゛ん゛、ぷはぁ、うぁ、あぁ」
 途中で急に俺が口を離したせいか、銀色に鈍く光る橋はすぐに崩れ落ち、レンは不満足そうな顔をしている。
 ……しょうがないじゃないか。だって、
「エン、サン、うっ、急にそこは、だめ、はぅあ、だろ」
「ふふ、私たちをないがしろにした罰よ」
「そうだよ。ぼくたちつまんなかったんだから!」
 ……急に下腹部に甘い痺れ。そう、彼女たち二匹が俺のアレを舌で舐めたり、しごいたりしていたのだ。
「あ、エン、サンずるい! 私も混ぜて」
「ちょ、レン、うぁ、まで」
 三匹同時はまずい。二匹でさえ、今にも達しそうなのに、一気に三匹は……。
「はあ、うあ、ぐう」
 すぐに出るのは俺のプライド的にあれなのだが、レンに先端、サンに裏すじを舐められ、エンは細長い舌を輪っかにし、見事に俺のモノを緩急つけてしごいていく。当然だけど、かなり俺は限界が近づいていて、
「で、出る。でるぅぅぅう!」
 先端から溜まっていたものが放出された。その真正面にいた、レンは白い液体まみれになっていて。
「! ずるいわよ、レンばっかり」
「そうだよ! ぼくたちにもミルク、ちょうだい」
 といって、三匹で俺の精液を舐めあい、ディープキスを繰り返していた。その光景は、あまりにも扇情的で、俺のモノはすぐに先ほどまでの状態に回復した。
 と、行為をするとき、俺がどうしてもやりたかったことを思い出す。俺はすぐさま、エアカッター用に用意しておいた羽を、自分の羽の先端に疎らに取り付け、彼女たちを押し倒す。
「ム、ムード!?」
「ごめん、もう俺も我慢出来ない」
「いいわよ、かかってきなさい。でも、私たちを気持ち良くできるかしら?」
「ふふん、なめるなよ。今すぐに屈してもらうからな」
「見栄張っちゃってぇ」
 俺は、羽が当たっていないように見える位置に、秘処に宛がい、なぞる。
「あら、練習かし……ひゃあ! な、なん、う、で」
「はふう、ム、ムードぉ」
「きゃん、ぼ、ぼくたち、どうなって、いる、の?」
「覚えてるか? 一度抜け落ちたエアームドの羽って、透明になるんだよ。だから、どう羽が動くか、俺以外、誰にも分からない」
 先ほど為す術もなく、いいようにやられた仕返しに、少しは反撃しないとな。
 彼女たちはそれぞれ違った声で喘ぎだす。レンは鈴のような、透き通った少し高いソプラノの声で。エンは落ち着いた、綺麗なアルトの声で。サンは少年のあどけなさの残ったような、高い声で。それぞれが鳴く。その声はどれも気持ち良く、もっと聞いていたかった。
 気付けば俺は、羽だけでなく、舌も使い、クリトリスを転がし、中で色々と動かしていた。
 彼女たちは絶頂が近づいているらしく、リズムが速まっていた。
「ムード、お、お願い」
 エンが懇願するように言った。俺は行動の一切を止める。
「は、初めてイク時は、一緒にイきたいの。駄目かな?」
 俺はさっさとイかせたのに、とか思ったが、彼女の頼みだから受け入れるのが普通だと思った。
「私からもお願い。初めての体験はムードも一緒にしたいの」
「分かったよ。……少し痛いけど、我慢しろよ?」
「うん、ぼくたち、頑張る!」
 俺は秘処に宛がい、三匹の中へゆっくりと入れていく。
「あぅ、ムード!」
「こ、これが破瓜っていう感覚、なのね」
「ム、ムード! ひぅ、ちょ、ちょっと痛いよ。けど、頑張る、から」
 三者三様の反応が来る。でも、三匹とも痛みを堪えたような、苦しそうな表情を浮かべていた。その顔を見ると、一瞬戸惑ってしまう。
「ムード、私たちのことは気にしないで、早く」
「そうだよ! ぼくたち我慢する、って、言ったでしょ!」
「で、でも!」
「ムード」
 レンがゆっくりと、しかししっかりとした声色で、俺に呼びかける。彼女の顔は真剣だった。
「私たちはね、早くムードと繋がりたいの。体を一つにしたいの」
「レン……」
「今は痛いかもしれないけどね、それよりも繋がってる幸せの方が、何倍も何倍も強いんだよ」
 他の二匹を見てみれば、エンも、サンも、笑顔で頷いている。
「私からもお願い。こうやって四匹で、この初体験の幸せを共有出来るなんて思わなかった。そんなことが出来るようにしてくれた、あなただからこそ、これを破って欲しい。私たちの、望みでもあるんだよ?」
「ぼくたち、痛いよーって顔してるかもしれないけど、それよりも、嬉しい気持ちで一杯なんだあ。だから、速く速く!」
「……分かった。ありがとう、レン、エン、サン」
「「「うん!」」」
 俺は挿入を再開する。その先が俺たちの、幸せに繋がっているのなら、俺は!
 彼女たちの中は凄く気持ち良くて、俺を、優しく包みこんでくれた。その、俺を包んでくれる壁が、中で動き、程よい刺激を与えられ、空中を飛び回っている
以上の、高揚感を与えてくれる。これが、彼女たちの愛、なんだなあとか、らしく無いことを考えていた。
 そして、奥までたどり着く。
「一番奥まで、いったよ」
「うん。……何とも言えない感じだね」
「そうね。あら、いけない。涙が」
「ぼく、痛みさえ、幸せに感じるよ」
 そしてしばらくの間、そのままの体制で、俺は彼女たちの身体を羽で優しく抱きしめていた。
「ムード、そろそろ動かしていいわよ。今度は一緒に……イきましょ」
「ああ」
 俺はゆっくりとピストン運動を開始した。動き始めるとさらに快感が身体中を巡り、電撃が走っていく。 だんだんと彼女たちも喘ぎだす。その3つの声は重なり、まるで、ハーモニーを織り成しているかのようだった。
 俺たちはだんだんと昇りつめ、
「俺、うっ、そろそろ」
「あっあっあっ、私たちも」
「あっ、一緒に」
「イ、イこう?」
『ぁぁぁああああ!』

――――
――――

 とある木の、頂上にて。
「お久しぶりです、ルノーさん」
「おお、お前さんはピジョットのジョーじゃないか。久しぶりじゃのう。妻のドードリオはどうしておる?」
「ええ、相変わらずですよ。三匹分の性欲の高さも相変わらずです」
「ほっほっほ、良いことではないか。……そうじゃ、そういえば最近、お前さんと同じ悩みを相談しにきたエアームドがわしの下へ来たぞ」
「ああ、悩みを抱えているエアームドって、私があなたのことを紹介したんです。なんだ、それなら私でも相談にのれたのですね」
「それなんじゃが、ドードリオはこの島に……」
「ええ、私の妻と娘だけです。……そうか、あれが私の娘の婚約者になるわけか」
「ほっほっほ、面白そうなことではないか」
「ええ、同じドードリオを妻に持つもの同士、上手いきのみを二匹で食べられそうです」
「あの若造も、三匹分の性欲に困るかもしれんのう」
「そうですね。私の場合、海のど真ん中で、妻を乗せて、飛びながらヤりたいって言われたり、台風の目でしたいって言われたり、大変でしたから。さすがに台風の目ではやりませんでしたが、海の上では、水の中に落ちないようにしないといけないので、大変でしたよ」
「血は争えないとよく言うからのう。お前さんたちの子であるあの子も、同じ要求をしてもおかしくないの」
「そうですね。もしかしたら、妻以上の要求をしているかもしれませんね、レーサは」
 そして、二匹の笑い声が空へと消えていく。

――――
――――

 朝、気だるい感覚が身体を包む。
 あれから、二回戦、三回戦へと移り、結局は七回もやってしまった。……正直な所、かなり疲れた。
「おはよう、ムード」
「……レン、起きていたのか」
「うん、昨日はお疲れ様」
 昨日、俺はこの三匹と結ばれた。この現実が、とても嬉しくて、幸福で、この先に何があってもやっていける。そんな思いが募る。
「あ、あのね、ムード」
「ん?」
「私から、直接は言っていなかった気がするから。……ありがとうね」
「ああ。……俺からも言っていなかったな。ありがとう。こんな俺を好きになってくれて」
「う、うん。こ、これからも、私をよろしくね」
 俺は心からの言葉を込めて、返事を返そうとする、
「私たち、でしょう?」
「ひゃあ、エン、サン、起きてたの?」
「レーン、抜け駆けはずるいぞ。これからはムードは、ぼくたち三匹のものなの!」
「そうよ! 私たち三匹の&ruby(トライアングル){三角形};の重心なのよ!」
 こんな感じで朝を迎える。
 俺たちの四人三脚はまだ始まったばかりだ。
------
あとがき
これを思いついたのは一年前のこの時期でした。
しかし、執筆開始が投稿日の三日前。
正直まにあうかどうかぎりぎりでした。
いいわけですが、だからエrが少なかったり、急展開過ぎる恋愛模様。
ハーレムの難しさが分かった今日この頃でした。
これからあの三匹は幸せに、それこそ他のポケモンたちが羨むような生活をしていることでしょう。
最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
--------
よろしければコメントはこちらにお願いします
また、投票所のコメントは

・面白かったですよ。作り込みがしっかりしている為各場面が脳裏に浮かんできます。 (2010/03/22(月) 04:31) 
ありがとうございます。今回は三匹の可愛さと情景をうまく表現しようとしていたので、伝わって嬉しいです。

・どれも、個性があってよい作品でした。作者様方、GJです (2010/03/22(月) 09:09) 
自分もそう思います。作者様方お疲れ様でした。

・すごくおもしろかったです。次回作も期待しています。 (2010/03/22(月) 19:16) 
次回作ですかぁ。他の作品に力を入れる予定なので、この続きを書く予定はございませんが、頑張ります。

・ドードリオに愛を感じました。 (2010/04/02(金) 12:08)
愛を感じていただけて嬉しいです。もっと鳥ポケモンたちに愛を(ry 

・ドードリオならでは、の話に感心してしまいました。確かに色々と困ることがありそうです。
 これからも四匹仲良くして欲しいですね。
 発想が本当に素晴らしかったと思います。上手かったです。 (2010/04/04(日) 21:22) 
ありがとうございます。これからもあまりここで光があたらないポケモンたちを書いていきますのでよろしくお願いします。

投票してくださった皆様ありがとうございました。
#pcomment

IP:61.22.93.158 TIME:"2013-01-14 (月) 17:47:06" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A4%EF%BD%A5%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%AF%E2%98%86" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0)"

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