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テオナナカトル(4):Bキャンセルの語源 の変更点


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**Bキャンセルの語源 [#b8bce026]

 今日の午前中、ナナは森で野草摘み。テオナナカトルにおいて薬の調達を任されているナナはロイの汗やリーバーの処女蜜のような変わった方法で薬の材料を得ることもあるが、こうして地味な方法で材料を調達することだって少なくない。
 とはいっても、今日はそんなことをする予定はなかったのだが、&ruby(フリージンガメン){琥珀の首飾り};に導かれたのでつい来てしまったのだ。

 セレビィの力が込められたフリージンガメンは、着用者の成長を遅らせたり、また進める能力を持つ。ナナは自身に成長を遅らせ若さを保つように使っているのだが、その分の埋め合わせに何かを成長させなければならない。つまりは誰かを老いさせるということだが、それは損なことではない。大体は成長させる対象を植物にする事で、薬になる木の実などを成長させ薬が手に入り、自分はいつまでも若く美しく。まさしく一石二鳥である。
 ナナほどのシャーマンならば能動的にそれを発動させることもできるのだが、気まぐれで悪戯っ子なフリージンガメンは時折その能力を勝手に発動し、ナナはそれをフリージンガメンの導きや神託と称している。
 ロイの酒場を決戦の舞台に指定したのも、テオナナカトルに勧誘したのもフリージンガメンの導きによるもので、ロイの酒場に季節外れの雑草が生えていたのはそういうことだったのだ。

 今日もフリージンガメンは雑草を成長させてナナをこの森までナビゲートしてきた。トラブルメーカーな一面があるフリージンガメンの導きには多少不安があるが従わないわけにもいかず、ナナは森に来たついでに薬草を摘んでいる。
 最初こそ面倒だったとはいえ、来てよかったとも思っている。最近は寒さも和らいできたので、左腕の肌寒さを気にする必要もなくなる麗らかな陽気。鼻歌でも歌いながらのどかな雰囲気と木漏れ日を感じての薬草摘みは、普段に酒や料理、もしくは乾燥した薬の匂いばかり嗅いでいるナナにとっては嬉しい変化である。
 腐葉土の香り、木々の香り、春風が運ぶ草の香り。鼻腔を通り肺を満たすこの感触はまさに夢心地だ。

「待てぇぇぇぇぇぇ!!」
「嫌ぁ!!」
 男性の声と女性の声、二つの声が同時に聞こえて、ナナは『待て』と叫んだ方を見る。黄色い影が通り過ぎた!!
(フリージンガメンに導かれたと思えば案の定か……所で、あの叫び声を上げたポケモンの女性はなんだったっけ……?)
 敵はトロピウス。相性は悪くない。ナナは脚に力を込めて、低空飛行をしているトロピウスに飛びかかった。木の陰から身を翻し、いきなり目の前に躍り出たナナ。なんの修行も積んでいない者に、それをかわせるわけもない。
 トロピウスの進行方向に並走するように走りだしたナナは、トロピウスの首に抱きつき、首に実る果実にかぶりつく。いきなり重みが増したトロピウスはバランスを崩し空中で横に傾く。迫りくる立木を避けられないと判断したトロピウスは地面に落ちてブレーキを掛けた。トロピウスにナナは押しつぶされる前にひらりと体から離れて、豊かな髪の毛から着地して安全に受け身をとる。
 衝撃を受け流すように転がりながら受け身を取ったナナと、もろに衝撃を受けながら体を痛めつけたトロピウス。もはや勝負は決したと言ってもよい状況でナナは手を抜かない。駆ける、跳ぶ、首を踏みつける。グハッと、大きく空気を吐きだしたトロピウスがぐったと頭を垂れるのを見て、ナナは勝ちを確信する。
 本能的にトロピウスの首にぶら下がる果実に歯形をつけてしまったのは失敗だったかと、噛み跡の付いた実を全て髪の毛の中に収納して証拠を隠滅した。
 芳醇な香りのその果実をしまい終えたところで、ようやくナナは女性の存在について気にし始めた。この匂いは蜜……そして、通り過ぎた時に聞こえたのは羽音……そして、転がっているのはトロピウス。
「逃げていたのは多分ビークイン。&ruby(虫タイプ){奴隷階級};……しかも、郊外で果樹園やっているポケモンの……よね、これは。やばい……」
 このトロピウスの男性は、恐らく果樹園で働いている職員もしくは経営者。先程逃げて言ったポケモンは蜜集めと花粉運びをやらせていた奴隷と言うところだろう。トロピウスがさっきの女性を追いまわすのは当然の権利(法律の上では、の話だが)だったのだ。それを殴って止めてしまうとは少々まずい気がした。
(とはいえ、黒白神教では奴隷は禁止。これでよかったのかしらね……どうせ私の事なんてだれも見ていなかったでしょうし。ま、だからと言ってこのまま逃げさせるに任せてもロクなことにはならないわよね。また捕まって別の所へ売られるのがオチ……ならば)
 ビークインの放つ甘い匂いは非常に濃厚で、鼻の利くナナにとっては追ってくれと言っているようなものである。空を飛ぶポケモンに本気で逃げられてしまえば追うことは困難だが、奴隷階級と言うことならば逃げられないように翅の一部が切り取られたりもしているだろう。追いつくのは容易なはずだ。
 匂い、そして翅音が徐々に近づいている。森の土は柔らかい。踏む場所を選ばなければ足を取られて転ぶこともあり得ない話ではない。踏む場所は選び、どうしても跳びにくい場合は枝につかまり体を振ってナナは加速する。
「とらえた!!」
 ナナが跳びかかる。抱きついて翅を押さえこめばもう飛べない。抱き付く時に薄い羽根に胸を切り付けられたが薄皮一枚だ。ジャネットから薬をもらえば一晩で治ると思って、ナナは痛みを無視して抱きつき続けた。ナナの重さが加わった状態でビークインは落ちる、滑る、転がる。
「くっ……」
 仰向けになってナナを視認したビークインが呻いた。
「逃げるな。そして抵抗するな……無意味に傷つきたくはないでしょう?」
「攻撃しろ!!」
 抑えられてなお、ビークインは諦めない。このまま寝技を極めて疲労させようと思ったナナは、舌打ちして戦闘に備える。攻撃性を高める効果のある、香辛料のように鼻を刺激する匂いが立ち上る。
(コレが噂の攻撃指令か……待てよ、この匂いは&ruby(アウズンブラ){原初の牝牛のアルセウス};の母乳と全く逆の効果……使えるわ)
 ナナがビークインを押さえているうちに腹にある六つの穴から、一匹ずつのミツハニーが躍り出る。ナナは爪にゴーストの力を纏わせ、神速の突きを放つ。研ぎ澄まされた爪から繰り出される神速の突きは、よけるのが困難だ。
 狙いを誤ることなく貫くナナの爪がまず一匹を落とす。噛みつこうと突進してくるミツハニーの突進を身を伏せて避け、立ち上がる勢いでカエルパンチ((相手の目の前で突如屈み、伸び上がるのと同時にパンチを放つ。カエルアッパーとも呼ぶ。この場面ではパンチと言うよりはむしろ貫き手である))。カエルパンチを喰らったミツハニーがゴムマリのように跳ね跳んだ所で髪を鋼のように硬質化させて振り抜き、後ろから迫っていた二匹をはたき落とす。残るは二匹、ナナは赤く輝く左腕の爪と、緑色の血液に濡れ光る右手の爪をこれ見よがしに構えて威嚇する。左脚はさりげなくビークインの腕を踏んでおり、咄嗟の反撃を封じていた。
「降参しなさい。『嫌』って言えるならば、降参しますとも言えるわね?」
「……ごめんなさい」
「全く、相手を見て抵抗すればいいものを……」
 面倒なことに巻き込まれたな、とナナは溜め息をつく。
「やっぱりこの子はじゃじゃ馬だわ」
 ナナはフリージンガメンを指ではじいて叱りつけた。
「全く、放っておいたらフリージンガメンに怒られそうだし……」
(いつも通り、ジャネットの家に集合するか)

 ナナはふと気になってビークインの翅を見る。やはりというべきか、彼女の翅は遠くまで行けないように切られていた。
(全く……奴隷商は酷い事をする)
「その翅……遠くに飛べないように切られたのね? 酷いことするわね。進化した時に切られたの?」
「え、あ……はい」
 優しい声を掛けられて、ビークインは動揺を隠せなかった。
「仕方ないわね、私の背中につかまって。おぶって行くから」
「おぶる……?」
 ナナは苦笑して困り顔をする。
「そっか、小さい頃は腹の穴に入って移動するからおぶる必要はないのね……だからって、そんな言葉も教えてもらっていないなんて、可哀想に。私の首につかまって」
 ナナは腰を落とし、ビークインの腕を受け入れる。恐る恐るナナの首に手を絡めるビークインの手を、ナナは笑って撫でてあげた。
「人目につきたくないけれど、あんまり幻影は長持ちしない……から、早めに行くわよ。しっかりつかまっていなさい、それと子供達もしっかり抱えていなさい」
 幻影だとか人目だとか、それらの単語の意味するところがわからないビークインだが、ナナの命令にはしっかりと頷いた。肩の後ろで顎が動くのを感じて、ナナは風のように走りだした。
 後ろへと流れる木々。景色が耳を通り過ぎていく速さで走るナナに揺られて、ビークインは早くも腕の力が怪しくなってくる。それでも落ちないように必死で掴まった。
 街にたどり着いても、これほどの速さで走るナナを誰も気にしない。
「……どうしてみんな、私達を見ないのか?」
 まるで自分達が存在していないかのような周りのそぶりが気持ち悪いのか、ビークインは不思議な顔をしている。
「それが私の能力の一つ……あんまり長い時間は使えないし、注意深い人には気が付かれるけれどさ……大丈夫、怖がらないで。私はあなたを悪いようにはしない……」
 なんて笑顔で言っても説得力は無いようだった。収支怯えきった表情のビークインは、自分が酷い罰を受ける光景でも想像しているのだろう。それでも、ナナの強さを見た以上は抵抗する気も無くなってしまったようだが。

 ジャネットの家に着いたナナは、ごめん下さいとお伺いを立てて家に入ろうとする……が。鍵がかかっている。
 留守ならそれで合い鍵があるから良いのだが、扉に耳を当てると、
『ユミル……もっと激しく……あぁん!!』
『もう、蔓が疲れるでやんすよ~。ジャネットさんは仕方がないでやんすねぇ……この甘えんぼさん』
 どうやら夫婦の営みの真っ最中のようだ。しかも、ユミルは草タイプの何かに変身しているらしい。卵グループを考えればロズレイドか何かだろう。
 ナナは奴隷階級であるビークインと一緒にいる所を見られたくないというのに、外で待っていろとでも言うのか。しかし、ナナとて透明人間のように振る舞う幻影を維持するのは疲れる。少し考えたナナは、結局髪の中に手を突っ込んで鍵束を取り出し、夫婦の営みを邪魔しないようにそっと中へと入り込んだ。
「静かにね……声を立てたりして邪魔しないように」
 ナナはそう言ってビークインを連れたままそっと居間に入る。
「さて、と……疲れたでしょう? そこのソファで眠っていなさい」
「あの……私は……」
「なにもしなくていいわよ。私はあなたを悪いようにはしない……分かる? 分からないならばそれでもいいわ……今は寝なさい。腹の子供たちと一緒にね」
 柔和な眼差しでナナが笑っても、警戒はいまだに解けない。仕方がないか、とナナは笑顔を解かずにビークインを見守る。ビークインが特に動く様子もないので、ナナは首飾りを手にとって
「で、これいいのかしら? フリージンガメン」
 フリージンガメンは応えない。このビークインを助けるように未だに、フリージンガメンに宿るセレビィの意志の目的は定かではないが、今のところお咎めもないので間違った事をしていないのだろう。
「まったくもー……本当に気まぐれなんだから、この子は」
『好きにしなさい』
 琥珀から声が聞こえた。驚き、目を剥いたナナはフリージンガメンを強く握って問いかける。
「今なんて言った? もう一度繰り返せ」
 フリージンガメンは応えない。
「くそっ……こいつだけはいつまでたってもじゃじゃ馬ね」
 吐き捨てるようにナナが言うと、ビークインが怯えていた。雇い主の機嫌が少しでも悪ければ暴行を受けるなどされていたとでも言うのか、ナナの気分悪そうな表情がどうにも苦手なようだ。
(先程フリージンガメンはこの子を好きにしろと言った。フリージンガメンに宿るはセレビィの意志。平和な時代にしか姿を現さないセレビィの……私達の思うようにやれば、貴方の望む世界が作られるというの?)
 怯えたままのビークインを監視しつつ、ナナはフリージンガメンの真意をはかるが、そんなことをいくら問答しても分かるはずがない。やがてビークインはナナに言われたとおり眠ってしまったので、ナナも考える事を止め、物音に気を配りながらの非常に浅い眠りについた。

 ◇

「なんか、甘い匂いがするでやんすね……あれ、このオイルの匂いはナナ?」
「一体どうしたのじゃ?」
 仕事がないからという理由で朝っぱらから夫婦の営みに勤しんでいたユミルとジャネット夫妻。くんずほぐれつの後、ひと段落付いたところでようやくもってユミルがナナの存在に気が付く。
「どうしたもこうしたもこの気配……ナナが家に居るでやんすよ。お茶やその他甘い匂いまでするでやんすね」
「ま、まさかぁ……いくらナナとて、夫婦がこういうことしているのに入ってお茶とかそこまで野暮なことはしないはずじゃ……」
「わからないでやんすよ~」
 言いながらユミルは、サーナイトに変身して眠っているシーラを抱っこする。サーナイトの状態では鼻があまり利かなくなるが、別の感覚が鋭くなる。間違いない。紅茶の他にも甘い匂いはかすかに漂っているし、感情の数は明らかに一つではない。
(強い警戒心と戸惑いを感じる感情が……かなり強い? いや、複数……一匹や二匹じゃないようでやんすね)
「やっぱり、アッシらの喘ぎ声聞こえていたかも知れやせんねぇ……確かに居るみたいでやんすよ」
 ユミルはとりあえずそれ以外の診断よりもまずナナがこの家に居るということを先にジャネットへ教える。
「あの、悪狐!!」
「しかし、緊急事た……」
『緊急事態のようなので仕方なさそうでやんす』と言う前に、ジャネットは駆け出し乱暴に今のドアを開ける。
「リーダー!! お主、どういうことじゃ。あまりにも趣味が悪いのではないか!?」
「あ、お邪魔しています。先ほどまではお楽しみだったわね」
 羞恥で激昂するジャネットに、ナナは動じることなく笑顔で答えた。彼女の体からは蜜と乳の匂いが立ち上っている……『&ruby(アウズンブラ){原初の牝牛のアルセウス};の母乳』のようだ。
「お主のぅ……」
「しっ……」
 ナナは口元に指を当てて黙るように促す。余った指で指示した方向には、無防備な体勢で眠るビークインの姿。
「……どういうこと?」
「ジャネット。私にそんなこと尋ねられてもわからないわよ……フリージンガメンのお導きなんだから」
 困ったように笑って、ナナはフリージンガメンを手に取る。
「&ruby(この子){フリージンガメン};が、そうするように命令したんだもの。私のあずかり知る所ではない……しかも。&ruby(この子){フリージンガメン};はあそこで無防備な寝顔晒しているビークインと同じく眠ってしまった。けれどその前にこんな言葉を漏らしていたわ……『好きにしなよ』ってね。ふふ、なんというか無責任じゃないかしら?
 でも、そんな所が気まぐれなセレビィみたいで可愛らしいのよね……フリージンガメンは。ムカつくこともあるけれどね」
 ビークインの無防備な寝顔を見ているうちに気分が良くなったのだろうか、ナナの笑顔はシーラをあやす時のそれに似ていた。
「で、フリージンガメンには好きにしろって言われたけれどどうしようかしら? セレビィの期待を裏切って見る?」
「冗談ではない。そんなことしてフリージンガメンが拗ねたらテオナナカトルに何が起こるか分かったものではない……そうじゃな。どういうわけでここまで連れてくることになったのか知らぬが、お主はこのビークインに恩の一つや二つ売ったのじゃろう?」
 まぁね、とナナは笑う。ジャネットはどうしたもんかと、顎に手を当てて考える。
「ふぅん……アッシらの子供は、二つの進化形があるでやんすし……一応大事を取っておくのもいいんじゃなないでやんすか? ローラさんのような例もあるでやんすし」
「そうね、貴方達子供を愛してあげているもんね……って、オニゴーリの場合は進化の条件に愛され方は関係ない、か。でも、あれを作るの?」
 ジャネットは眠るビークインを見る。
「許可を取れれば……じゃな。そこは交渉する……というか、リーダーがしてもらえるかのう?」
「分かったわ。私に任せて……でも、その前にあれ。特殊な事情を持った新規のお客さんを迎える恒例の全員集合をしましょう。歌姫とローラもこの家に連れてきて……って、流石に女ばっかりね」
「ロイでも連れてくるでやんすか?」
「それだと遅くなっちゃうし……私もほら、お仕事のために酒場に行かないといけないし……呪術道具の材料採集を朝の内に終わらせるためにも、やっぱり女だけでいいわ。ユミル、行って来て」
「かしこまり!!」
 ナナがビシッと指さすと、ユミルはムクホークに変身して外へと飛び出していった。
「それにしても、私が神子として大成するために日々禁欲生活を送っているというのに、ジャネットはお盛んねぇ」
 まだまだ笑顔は崩さず、しかし皮肉たっぷりにナナが笑う。
「う……よいではないか。ワシはヴィオシーズ盆地に行けば陽性のエルレイドがいるのじゃから、神子にはなれるのじゃ……そんなこと言うならあんたも陽性のルカリオでも見つけて二人で神子になればよいではないか」
「男のルカリオなんて結構見つけたつもりだけれど、どれも役に立たないわ。貴方はいいわね、対になる有能なポケモンがいらっしゃって」
 顔も声も笑っているが、心は全く笑っていない。嫉妬と嫌みたっぷりなこの言葉にジャネットは、
「羨ましいじゃろう、まったく!!」
 拗ねてしまった。その時放った電磁波による攻撃で、ナナは軽く麻痺をさせられ、しばらく起きあがる事が出来なかった。

 ◇

「連れてきたでやんす~……って、何しているでやんすか?」
「次は私の番ね、頑張っちゃうぞ」
 子供用のおもちゃであるヨーヨーやゼンマイのおもちゃなど、見るもの全てが物珍しそうなビークインは何気に人気を得ていた。現在、3人はゴチルゼル落としと呼ばれる、ゴチルゼルを模した絵の描かれた輪切りの積み木をハンマーで素早く落とす遊具((ダルマ落としみたいなものです))による遊びに興じていた。元はシーラのために買った玩具なのだが、崩してしまった者が負けと言う単純なルールで始めると思いのほか盛り上がってしまう。
 彼女の子供のミツハニーも楽しそうに見守っているその様は、見ていて微笑ましい。

「ほんとに……ビークインなんですね」
「ふむ……ナナさんも物好きですね。しかしまぁ……貴方達らしいというか」
 おどおどした口調で歌姫は言い、ローラは呆れと好感を混ぜ込んだ口調でそう言った。
「ところで、名前は聞き出せたでやんすか?」
 ユミルに尋ねられて、ナナは首を振る。
「いや、どうやら名前で呼ばれたことが無いみたいなの。困ったわね……私達が考えてあげても結局、呼ぶ人はいないわけだし……ま、いっか。みんな、座って」
 ナナは皆に床に座った所で、至極真面目な顔をする。突然雰囲気が変わったことに不安そうな面持ちをするビークイン。ナナは無理にそれをなだめすかす真似はせず、終始笑顔でいることで安心しろと意志表示をする。
「さて、こんな話をするのはちょっとかわいそうだけれど……あまり長い間夢をみせるのも悪いから、言ってしまうわ。貴方は、明日の夜までには元の場所に返すわ」
 ナナは希望を与えないように冷たく言い放つ。
「え……私、帰りたくない。ここの皆、皆優しいから……もう帰りたくない」
「皆って言っても、まだ私とジャネットとしか話していないじゃない」
 言われて、ビークインは辺りを見回す。確かに、二人の名前しかビークインは知らなかった。
「いいわ、順番に自己紹介して……時計回りに、まずはユミルからお願いね」
 さぁ、とナナは手で促す。
「ア……アッシはユミル。まぁ、見ての通り……と言いたい所でやんすが知らないでやんしょうし、種族名を教えときやす。種族名はメタモン。まぁ、いつまでこの名前を呼べるか分からないでやんすがよろしくでやんす」
「私はローラです。種族はエーフィ……以後、お見知りおきを」
 二股に分かれた尻尾をふよふよと揺らして、ローラは会釈する。
「えと……私は、歌姫です。よろしくお願いします」
 全員が名乗り終わると、ビークインは物足りなそうな顔をする。

「名前……」
「そうね、貴方の名前はないわね」
 ナナはそう言って話を皮切る。ナナからは微かに花蜜と乳の匂いがした。
「それも含めてお話させてもらうわ……私達は貴方の元の仕事場所がどこなのかは分からない。けれど、私達のように優しい人がいないっていう事は……貴方が働いている場所って、相当酷い場所なのねぇ?」
「えぇ……もう二度と戻りたくない」
「でも、戻らなきゃいけないわけだけれど……あそこの雇い主が優しくなればそれで問題ないわけよね?」
「貴方達のように……優しくなるのですか?」
 ビークインの問いに、ナナはうんと頷く。
「ちょっと、リーダーは何か良いプランでもあるのか?」
 自信満々なナナにジャネットが問いかける。
「もちろん、無いわけないじゃない。でも……何の見返りなしにやってもらえるほど、世の中甘くは無いわ」

 ビークインはゴクリ、と唾を飲む。
「貴方の体を、ちょっとだけ弄らせてもらいます。ちょっと痛かったり苦しいかもしれないけれど……それと引き換えに、貴方の待遇を改善させると約束するわ。だから、貴方の体を弄る事、それを許可してもらいたいの……貴方の子供たちも、心配しないで貰いたいしね。
 どうするの? そのまま帰れば、貴方は酷いお仕置きを受けるでしょうね。でも、私達に従えば……そう、全てが上手くいく。私達に任せてみない?」
 ナナに脅されて恐ろしい想像ばかりが駆け巡るビークインはおどおどしていた。
「お願いします」
 しかし、このビークインはこの国で生まれ育った奴隷のようだ。少なくとも2世以上は世代を重ねた奴隷。虫の楽園と呼ばれる故郷の匂いも風景も知らないのは悲しいことだが、世間知らずこの上ない生活環境が幸いした。
 このビークインは優しい奴ほど悪い奴が多いという法則も知らずに、労働ばかり強いられていたのだろう、酷く御しやすかった。
 初めて触れた肉親以外の優しさに、このビークインは簡単に頼ってくれたのだ。無論、フリージンガメンの監視がある以上は酷い事は出来ないし、するつもりも元々ないが、話が以外にも早く済んだのは楽でいい。
「だ、そうよ。ユミルは準備して。歌姫とジャネットは小さなお客さんのお相手をして」
「かしこまり」
 ユミル達が頷くのを見て、ナナはローラに視線を向ける。
「そして、ローラ。沢山の人の不幸と幸福に触れること、それが黒白神教流のシャーマンとしての強さを高める方法。だからね、私達のやること、ビークイン達の姿をよく見聞きしなさい」
「見聞き……ですか。そんなことでよろしいのでしょうか?」
 不思議そうに見上げるローラの頭を撫で、ナナは笑う。
「そうよ。シャーマンとして力を高めると言うのは、世界とより強く一体化することに他ならないの。断食や瞑想によって自身を極限状態に置くことで一体化することもあれば、薬を使うこともある。テオナナカトル……私達の組織名の由来となったキノコを食べて一時的にシャーマンとしての能力を上げることもその手段の一つにすぎないの。
 日常の何気ない事、さりげない心遣い。何を思い何を触れるか……それがを突き詰めることで他社と心を通じ合わせ、不幸も幸福も理解する……それは世界との一体化に他ならないわ。でも、そういう風に誰かの事を慈しむ気になるのは練習が必要よ。いざ誰かを慈しまなければいけない状況になった時には経験がものを言うの……だから、私達はこんな仕事を生業にしているの。
 だからね、こういうものはつぶさに観察しておきなさい」
「観察っていうけれど……兄さまにやったことを考えると、なんか変態的ですね……」
「そういうイメージとはちょっと違うんだけれどなぁ……。苦しんでいる人を救おうと思う気持ち、他人の笑顔を素直に喜べる気持ち……そういう事がシャーマンとしての力を育てるんだから」
 ナナは苦笑した。
「ま、変態的だと思うのが嫌ならば、アフターケアまでするのが私達の役割ってことで良いんじゃないかしら?」
「ん、そうですね。そういうことにさせていただきます……ところで、兄さんは?」
「ロイは仕事でしょう? 大丈夫よ、夜にはロイにもきちんと仕事はやってもらうし、貴方にも仕事はしてもらう。今はもう定職についていないんだし、どうせ暇なんでしょう? 薬の材料採集が終わったら昼寝でもしておきなさい」
 言いながらナナは薬棚から何らかの薬を取り出す。薬の名前を見ただけでは何に使うのか分からないローラだが、とりあえずそれを目に刻みつけようと注意深く観察することにした。

「ところで、今から作るのはなんなんですか?」
 ユミルがビークインを横にして、何かの薬を飲ませている。それを横目で見ながらローラが尋ねる。 
「ん~……今から作るのはね、Bキャンセルって道具というか……変わらずの石って知っているかしら?」
「え、えぇ……変わらずの石さえもっと幼い頃に見に身に着けていれば、私もリーフィアに進化していたんでしょうがね。親兄弟に愛されすぎるというのも考え物ですよ。でも、Bキャンセルって言うのはあれでしょう? 進化をキャンセルする方法の総称で、お薬の名前では……」
「違うわ。Bキャンセルの語源とは『Bee』つまるところミツバチ、ビークインのことなのよ((実際の学説では、殴るなどのショックを与えてキャンセルすることから『Blow』とする説もある))。ビークインはね、虫の楽園と呼ばれる大陸では数百の群れを作るけれど、その中に雄と雌は役7対1。もしも400の群れならば350対50……ただし、それだけの雌がいても、女王つまりビークインは一匹……って言い方は差別用語ね、一人なの。
 それはどのような原理によるかというと、ビークインは女王物質と呼ばれる匂い成分によって他のミツハニーが進化するのを防いでいるのよ。私たちは今からそれを取り出そうとしているの。それを特殊な加工をした木材に振り掛ければ、十数年は匂いが消えない香木を作られるのよ。虫の楽園にて何らかの理由でビークインが他のポケモンと同居するときは、数日間ビークインから離れた場所で生活しないと進化が起こらないというわ」
 ふと見れば、ユミルがルカリオに変身してビークインのマッサージをしている。どうやら発経によって体の内部から刺激しているらしい。
「そうなんですか……初めて知りました」
「もともと、黒白神教の道具であるBキャンセルは、確かに進化を止める方法の代名詞として黒白神教内外に広まった……けれど、その材料が何から出来ているかを知られてしまえば、奴隷階級であるビークインにどんな仕打ちが待っているかわからない。
 だから、黒白神教の者たちはBキャンセルの材料を曖昧にした……そして、廃れさせた。そして今でもその名残として言葉だけが残されている……そういうことなのよ。本当なら輸入に金も時間もかかる変わらずの石よりも安価で手に入る道具なんだけれどね。もったいないこと……こうして役に立つものがすたれていくのね」
「ビークインが奴隷階級である以上は……」
「そう、材料の公開は無理ね。そんな事したらビークインが何されるか分かったものじゃないわ」
 残念そうにナナはつぶやいた。

「で、その女王物質とやらはどうやって採集するんですか?」
 ローラの素朴な質問に、ナナは笑顔になって答える。
「この女王物質は、進化した瞬間及び女王の役割を果たしているときに分泌される。女王の役割とは即ち、交尾と出産。だから、性的な刺激を与えることである程度能動的に体中から分泌させられるんだけれど……今回はあの女王様にフェロモンその他をたくさん分泌させるためのお薬と、理性を破壊するためのテオナナカトルを飲んでもらい、ついでにそういう食材も料理に混ぜさせてもらったわ。体力を回復させて元気になる食材もね。
 そうして、性的な刺激で体中から発したフェロモンを、木彫りのペンダントに擦り付ければBキャンセルの完成……と」
「つまるところそれって……体を」
「うん、弄るの」
 語尾に音符マークでも付きそうなほど楽しそうな声色でナナは笑う。
「大丈夫、あなたのお兄さんも似たような方法で汗や精液の中の毒を採取されたんだから」
「貴方たち……なにやっているのよ。付き合ってられないけれど……いや、でも私も似たようなもんだしなぁ」
 苦い思い出を思い起こしてローラは重い溜息をついて意気消沈。
「っていうか、ユミルさんは子供もいるんじゃないんですかぁ? こんなことやっていていいの?」
「だから、本番は無しなのよ。それだけは鉄則……まぁ、長い黒白神教の歴史の中で破る人もそりゃいたでしょうけれど。さぁさ、ともかく私たちのやり方をきちんと見ていなさい。興奮してもいいのよ」
「私はそういう趣味なんてなーい!! やっぱり変態じゃないですかぁ!!」
「見るの。趣味があろうと無かろうとやる。報酬を得るために、日々の糧を得るためには大事なことよ。それに、テオナナカトルに入ったからには仕事を覚えてもらわないと」
 大声で叫ぶローラに、あくまで笑顔のナナは有無を言わさない威圧感でローラに言った。

「ごめんなさい……」
 あまりの威圧感に萎縮したローラは反射的に頭を下げる。
「あら、謝らなくたっていいのに。可愛らしい子ね」
 しかし、そこにいるのはいつものようにローラの頭を撫でるナナ。ナナは横たわるビークインの元へと向かっていった。ユミルのマッサージによってすっかり息を荒げたビークインの目は、どこを見ているのかも定かではない。すでにして漂い始めた匂いは雄を興奮させるための役割を持つ香りで、女王物質とは異質なもの。しかし、通常よりも何倍も強くなったそれは、興奮を通り越して&ruby(めいてい){酩酊};させてしまいそうなほどに高貴な香りだ。薔薇のような、南国の果実のような、香木のような、僅かにタバコの匂いを加えて、そこに上等な葡萄の香りとさらにはバニラ……女王の名は伊達ではないとローラに感じさせる。
 現在別所に避難しているミツハニーたちがその誘惑に耐えられないであろうこの匂いは、まさしく天然の媚薬だ。自分が女であるにもかかわらず、その魅惑の香りにあてられ理性が曖昧になる中で、ローラはこのフェロモンも売ればそれなりの金になるんじゃないかと関係の無いことを思っていた。

 ルカリオに変身したユミルは、時折蒼い炎のようなものを手の平から漂わせている。あれが波導というものなのだろうとローラは理解する。体の奥深くまで響く愛撫をしているユミルのそれの前には、虫ポケモン特有の硬い外皮も形無しだ。鈍感な外皮を貫いて届いた慣れない感触に、fビークインは酷くうろたえている。
 しかしそれも、無理やりに快感を起こしている感じではなく自然に揺り起こすような、そういう愛撫の仕方だ。苦しそうでもなければ疲れていそうでもないのに、快感だけは一人前に感じているような。
 そのユミルの孤軍奮闘にナナも加わる。しなやかでつややかな髪を床に下ろし、正座の姿勢をとってはビークインを膝枕。
「んあぁぁ……」
 ナナが自身の手を唾液で濡らしてビークインの触覚を握る。どうやらそこは性感帯の一種らしくて触れた瞬間糸が切れたように漏れた吐息は蜜のように甘い。ハァハァと、こちらまで荒い息遣いが伝わってきて、ローラの敏感な体毛は湿気ともフェロモンとも付かない心地よい淀みを感じた。
 ローラは自分も快感に呑まれたかのように体を震わせる。良く利く鼻も、大きな耳も、敏感な体毛も、周囲の情報を取り入れずにはいられないエーフィの体がローラの想像力を無駄に掻き立て、思わずどんな快感なんだろうとビークインの体に走る感触に思いを馳せた。
(なんて、気持ちよさそう……)
 見ていれば、ビークインは触れられるたびに体をよじっている。湧き上がる快感に自分から飛び込まずにはいられないのだろう、自ら快感を得やすいように姿勢を変え、ナナたちの愛撫を受け入れようとする動きにはある種の羨ましさすら覚えた。
「どうかしら、働き蜂でもない私たちに奉仕されるその気分は?」
「いぃ、です……」

 意地悪な質問でナナが戸惑わせようとするが、奴隷として生まれ育った彼女には羞恥心なんて無縁らしい。あそこまでやられたら恥ずかしくて相手の顔も見れなそうだが、そんなナナの思惑はどこ吹く風と、ビークインは潤んだ目をして笑顔で答えた。
(そんな反応されてナナさん困らないかしら?)
 ビークインの言葉に対する反応はともかく、体に対するが徐々に良くなって来た所で、ユミルのマッサージのような手つきは相変わらずだが、ナナは触覚を綺麗な舌で舐め始める。
 なるべくその鋭い歯に触れないようにではなく、歯による刺激と舌による刺激という緩急の応酬。一時も気を休めることなく、なおかつ手を変え品を変える千変万化の愛撫には、ビークインが気を逸らすことも快感を拒絶することも出来ない。
「はうぅぅぅぅ……」
 搾り出すように弱弱しいビークインの声。どうやら達してしまったらしい。
「よし、と……この匂いは確かにBキャンセルね。ユミルのほうも確認して」
「間違いないでやんすよ。ルカリオの体は匂いを嗅ぎ分けるのは得意でやんすから、信頼しても良いでやんす」
 先ほどまで、ビークインに怒涛の攻めを展開していた二人はというと、冷静に。なんだか見ていてむかつくほど冷静に装飾の彫られた木をビークインの体にこすり付けている。あれを首飾りにでもして商品として売り出すのだろう。
(あそこまで無味乾燥に作業されると無意味に興奮していた私が馬鹿みたいじゃないのよ……)
 結局、なんだかんだ言って興奮し最後まで食い入るように見つめていたローラの気分もそこで急激に冷めていった。

***

『大きな仕事を請けるとき(どういう基準で「大きい」と決めるのかは不明だが)私たちはよく集められる。レシラムの逆鱗のときも、私は何度かあの夫婦の様子を見に行かされたっけ。あの時も復讐によって心が癒されたわけでもなかったようだが、少し心が楽になったような……そんな表情をしていたことを覚えている……けれど、これは何!?
 なによあれ、私はレズの気はないって言うのに、ナナとユミルはビークインのことを……ちょっと羨ましいと思ってしまった私が情けない。しかもむかつくことにあの二人、手馴れすぎていて女性を悦ばせる事に何の感情も抱いていないかのようだったしぃ!!
 あれは、ビークインに余計な感情を持たせないための一種の気遣いなのかしらね? ともかく、今回のは非常に良い経験になりました。えぇ、なりましたとも。だからもう勘弁してって感じなのに、ナナさんは自分でも薬の材料を調達出来るようにね♪ とか言ってくるしぃ……私も慣れて来ると二人みたいになんでもなくなってくるのかと思うと怖いよ……』
RIGHT:テオナナカトルの構成員、ローラの手記より。神権歴2年、5月2日
LEFT:
 ◇

 午前から昼に掛けての作業を済ませたナナは、今日もいつも通りに酒場へと赴いた。
 相変わらず賑わっている酒場の忙しい時間帯を縫うようにロイが休憩しているときを見計らい、ナナはロイへと仕事の話を持ちかける。
「それでビークインを預かっているわけか……お前も大変だな」
「そうなのよねぇ……もう、嫌になっちゃう。あ、これお土産ね」
 ナナは髪の中に手を突っ込んで、その中からよく熟れた山吹色の柔らかい果実を差し出した。
「……何故にお土産がトロピウスの果実?」
「それはあれよ、歯型で私達ゾロアークだって特定されないために取ってきちゃったの。私一人じゃ食べきれないから食べてくれる? 貴方のために一番噛み跡が少ない果実を持って来たのよ」
「全く、思わず果実に噛み付くとか……アホか。いや、食べるけれどさ」
 何とも馬鹿らしい理由で持って来られた果実を見てロイは笑う。葡萄や柑橘など、他の果実には見られない酸味のほとんどない果実の風味。
「それでね、ロイ」
 柔らかい果肉は例え歯がなくとも食べられそうなほどで、租借するたびに広がる芳醇な香りと後を引く甘さ。
「何だ?」
「今日は貴方にもお仕事を頼みたいの。汗を使ってお薬を作る手伝いとかじゃなくってね、貴方の得意分野である戦いよ」
「ふ~ん、どういうお仕事?」
 爽やかさとはまた違うふわりとした優しい後味は他の果実には無い魅惑の満足感がある。
(この甘ったるさ、腹が減っている時には中々悪くない)
「依頼人のビークインからは、もうすでに薬を作らせてもらった。その薬がどんなものかは後で説明してあげるけれど……契約の内容はこう。私達に薬の材料を提供する代わりに、『依頼人の雇い主を優しい性格にする』
 でも、雇い主を依頼人に優しくなるようにしたいところだけれど……そんなの、説得して出来ることじゃないでしょ?」
「そ、そりゃまぁ……でも、脅して何とかするの? あ、木の実は美味かったよ、ありがとう」
 ロイは果実を呑みこんで笑った。
「うん、ありがと。えっと……脅すには脅すけれどね、脅すのは私じゃなくってダークライに任せようと思うわ」
 ナナは髪を掻きあげてポーズをとる
「またわけのわからんことを……また何か怪しい呪術道具を使うのか?」
「んふっ、そういうこと。呪術道具だと長いから、神器って呼んでいるんだけれどね。でも、どんな大層な神器とて、あたらなければ意味がないから……道中貴方の夜目を生かして見つからないように護衛してもらいたいの。今日はもう、朝にいっぱい力使っちゃったから、幻影をみせるのも疲れちゃったし……」
「分かった……じゃあ、お店の営業終わったら付き合うよ。親父は、『困っている人を見捨てるな』って言っていたし……親父のように立派になるにはそれくらい通過儀礼だ。
 俺は水を飲んだら休憩時間終わりにするから、ナナも後で適当な時間にお客さんの前で踊ってあげてくれ」
「はい、かしこまり。それじゃ、夜のお仕事も深夜のお仕事もがんばろうね、ロイ」


 そうして、店の営業時間も過ぎた所で、ロイはこっそりと家を抜け出しナナの家に向かう。この時間帯に家を抜け出して女性の家の元に向かうというのは中々に燃えるシチュエーションではあるが、今日は色っぽい事情があるわけではないのが残念だ。
 ナナの家に着くと、一足先に帰っていたナナはなにやら真っ白な紐を手に持っている。傍らには、先程まで眠っていたのか、まだ寝ぼけまなこのローラも待ち構えている。ローラは闇夜にまぎれるように、黒い服を与えられ、今はそれを着込む真っ最中のようだ。
「それは何だ?」
 純白の紐を見てロイが問うと、ナナは笑顔でそれを説明する。
「これは悪鬼が産んだ巨大なウインディを拘束するための紐……グレイプニルを模して作ったの。本物はミミロップの体毛をベースにニャルマーの足音、フーディンの尻尾、岩の根、リングマの腱、魚の息、鳥の唾液を使うのよ。本物はそれらを材料に作ったから、現在はそれらが存在していないっていう神話があるのよ。
 とはいえ、これはそれを模しただけのまがい物。ダークライの毛髪を編んで紐にしただけの代物よ。本物作るのはかなり大変なのよねぇ……材料が二つほど足りないし。作れると便利なんだけれどね……こだわりスカーフとか、そういう道具の力を封じられるって言う反則的な道具なのに。
 ともかく、ダークライの力が込められたこれ、レプリカグレイプニルの瘴気に当てられたものは、その多くが悪夢を見ることになるわ。
 私は、ダークライともきちんと仲良くなっているというか、もはやダークライは体の一部のようなもの。ある程度の悪夢ならば自在に操ることもできるわ。だからこそ、それを利用する」
「うわぁ……黒い笑み」
 言い終わったナナの笑みは、誰が見ても良い事をたくらむ顔ではない。
「それがナナさんの魅力的と思うのですがね、私は」
 どこか大人びた雰囲気のナナにあこがれている節のあるローラはそれを褒め、ロイは苦笑する。
「それにしても、レプリカグレイプニルを作るための材料を取り出した光景、兄さまにも見せたかったわ」
「へぇ、どういう光景? ダークライを監禁しているとか? そりゃ見てみたいわなぁ」
「やだもぅ、ロイったら。そんな畏れ多いこと出来るわけ無いじゃない」
 くすくすと笑いながらナナは続ける。
「ただ、放って置くと髪の毛が伸びる呪いの人形につけたダークライの髪を剃刀で切り取っただけよ」
「十分とんでもねーよ!! 呪いの人形ってはっきり言うのもどうかしてる」
 楽しそうに笑うナナをロイは大声で突っ込んでつられて笑い始める。今から物騒なことをしにいくとは思えない和やかな雰囲気をひとしきり楽しみつつも、ナナは慣れない衣服に四苦八苦するローラの着替えを手伝った。


「しかし、戦闘を行うったってこう……なるべく静かにばれないようにやるんだろ? なんと言うか、気が進まないなぁ」
「気が進まないってあんたねぇ……ここは戦場じゃないから武勲を立てちゃいけないのよ。気が進むってのはどういう状況かしら? 褒美が無いとやってられないとか?」
「う~ん……そういうんじゃなくって。いいやローラ、合わせて」
「あ、はい」
 兄弟の会話に珍しくナナは首をかしげる。
「我々にはサンライトヴェール((エーフィのポケボディー。周囲にいるイーブイとその進化系の生命力を向上させる))の加護がある!! 死を恐れずに突き進め!!」
「オォーー!!」
 ロイの鼓舞にローラが応じる。
「我々にはムーンライトヴェール((ブラッキーのポケボディー。周囲にいるイーブイとその進化系の持久力を向上させる。上記のサンライトヴェールなどと合わせることで、イーブイは徒党を組むと相乗的に強くなるため、戦争の主力となる騎士の位を与えられたといわれている。))の加護がある。疲れを知らず攻め立てろ!!」
「オォーー!!」
「戦うのは誰がためか!?」
「偉大なる父、ロノがため!!」
「戦うのは何のためか!?」
「美しき祖国がため!!」
「ならば戦え!!」
「オォー!」
「勇敢になれ!!」
「オォー!」
「突撃だぁーーー!!!」
「オォーーーーー!!!」
 ロイ、ローラ共にふぅ、と息をつく。
「とまぁ、こんな感じで……叫ばないとやってられない感じ」
「個性的ね」
 ナナの突っ込みを無視してロイは続ける。
「しかし、今叫んだおかげでちょっとやる気出てきたかも」
「それだけでやる気が出るって言うのもまた、単純ね。っていうか貴方達息ピッタリね。流石は兄妹って所かしら? 羨ましいわ」
「私達、小さい頃はこうやって戦争ごっこをしていたんです。ですから……」
「戦争がどんだけ辛いことかも知らずにね。実際、始めて実戦に出たときはあぁいう風に鼓舞したもんだけれど……殺しあうことが楽しいとあこがれていたなんて思うとぞっとするよ。神権革命のときにはやっと死に場所を見つけたって思うくらいに思いつめてたって言うのにさ。
 それでも、俺は戦う気になるにはあの掛け声が必要なんだなって感じるんだ。友達と遊ぶときも、演武を行うときもそうして自分を奮い立たせてきたからね」
「でも、今回の仕事はそういう風に叫んでいい仕事じゃないからね。何度も言うけれど」
 ナナが呆れた風に苦笑する。何気に初めて見た表情かもしれない。
「はいはい」
 ナナの注意に、ロイはぶっきらぼうに頷いた。
「ま、いいわ。仕事前に一回くらいは叫びましょう。美しき神、レシラムがため!!」
 ロイは感心したような、嬉しそうな顔をして、前脚を振り上げ追従する。
「猛々しき神、ゼクロムがため!!」


「ねぇ、ここでいいの?」
 ナナは髪の中に手を突っ込んで、ミツハニーを取り出し問いかける。見覚えのある光景と判断したミツハニーは、うんと小さく頷いた。
「財布に木の実にミツハニーに……何でも入るな、お前の髪は」
「だって、ゾロアークが母親になったらここでゾロアを寝起きさせるんだもの。いろんな物が入らないことにはどうにもならないわ」
「なんと言うか……ガルーラみたい。その髪の中からひょっこりとゾロアが出てきたら可愛いでしょうね」
「うん、なんとなく可愛いって言われていた記憶はあるわ。よく覚えていないけれど……きっとね」
 ナナは昔を語ろうとして、やっぱりやめる。暗に母親が幼い頃に死んだことをほのめかすナナはの表情は、ローラには暗くて見えなかったがロイにはよく見える。影を落とした暗い表情だ。
「さ、それよりも。ここから先は要らないお喋りは厳禁。見つからないように慎重に行くわよ」
「わかった」
「わかりました」
 二人の返事を聞いて、ナナは音を立てずに敷地の柵を乗り越える。そろりそろりと言う忍び足ではなく、ナナは軽快な足取りながらも全く音を立てない。追従するロイとローラもまた、無音で通り過ぎるのを苦にしている様子も無い。
「まって」
 と言ったのはローラ。大きな耳をぴくぴくと動かしながら、彼女は周囲の様子を感じている。
「ナナさん、兄さん、あそこに見張り……がいると思うんだけれど、どう?」
「あぁ、確かにムウマージが居るな。やり過ごすか? それとも気絶させて強行突破か?」
 ローラが指し示した方向を見ると、確かにそこには見張りがいた。ローラは視認したわけではないので種族までは特定できなかったが、ロイはそれを可能にしている。ナナも陰くらいは見えているようだが、はっきりと見えるのはロイだけ。
「いや、ビークインのお姉さんと同じ奴隷じゃないなら、やっちゃっても構わないわ。果樹園の大きさを考えれば見張りも2人か3人いれば十分だし……そんなに数もいないでしょうから、この果樹園の持ち主と一緒についでにやってしまいましょ。それにしても、やっぱり二人を連れてきてよかったわ」
「どういたしまして。慎重に行きましょ」
「あぁ、家に帰るまでが戦だからな」
「そうね」とナナは笑い、影だけ見えるムウマージの視線伺う。普段は2足歩行のナナが、この時ばかりは4足歩行で身を低くし、木の根元に積まれた雑草や木の幹に身を隠して接近する。ゾロアークに進化してからのブランクを感じさせないその移動は、速度だけでなく身の低さも音の少なさも一流の域に達している。
 十分接近した所で、ナナは襲いかかる前に小さな木の枝を投げ、自分の現在位置とは違う場所に注意を向けさせた。案の定、音のした方に注意を向けたムウマージに息をひそめてナナは接近し、後ろから襲いかかっては手に持ったレプリカグレイプニルで首を絞める。
 首を絞められたムウマージはくぐもった声すら出せず数秒間バタバタともがいた後、がっくり項垂れて気絶した。
「……いい夢見なさい。とびっきりの悪夢をね」
 倒れ伏したムウマージを積み上げられた雑草の上に寝かせてナナは微笑んだ。処理の済んだナナは二人を手招きして、ミツハニーの案内を再開させる。二人がナナに追いつく頃には、ムウマージは早速悪夢を見始めたようで酷くうなされうわごとを呟いている。
「えげつねぇな……どんな夢を見せているんだ?」
「『例え奴隷であっても大切にしないとお化けが出るぞ』って神龍様が言ってくれる夢よ。少なくとも三日間くらいは眠りたくならないハードにね」
「単純だな」
「さぁ、どうでしょうね?」
 まるで子供を脅かすような単純な口ぶりが逆に恐怖を誘った。ナナならば、どんな夢だって見せかねない。

「うん、あれが雇い主さん達の眠る母屋ね」
「少なくとも中には数人はいそうですし、エスパー対策の施錠も施されていますが……どうやって入るのですか?」
「それはあれ、ムウマージが持っていた鍵を使って」
 じゃらりと鍵の音を鳴らしてナナは微笑む。
「手際がよろしいことで」
 ロイが笑う。
「お褒めの言葉ありがとう……とりあえず、ここから先は私がやるわ。何かあったら加勢よろしくね」
 そう言って雇い主の母屋に乗り込んでいくナナを。
「あいつ絶対助け必要ないだろ……」
「兄さまもそう思いました?」
 二人のどうでもよい会話が見送った。


「はぁい」
 物音一つ立てないままに、ナナは上機嫌で返ってきた。母屋からは時間差でうめき声どころか叫び声のようなものが聞こえる状態で、悪夢を見ているのであろうことは容易に推察できた。悪夢程度で彼らが更生するのかという疑問も浮かぶが、二人ともそれは口にしなかった。
「ほらやっぱり必要無かった」
「そりゃ、ナナさんなら必要ないわよね」
 呑気に言う二人の頭を撫でてナナが笑う。
「うふっ、私ってば期待されているのね、嬉しいわ。さ、後はビークインのナビゲートのお仕事だけ……貴方達はもう帰ってもいいわよ。貴方達は先に帰っていて。後の処理は私がやっておくから……」
 ナナは何処か歌劇のような、わざとらしく大げさな動作で腕を振りつつにこやかに語りかける。
「分かった。一応大丈夫とは思うけれど気をつけろよ」
「……同じく。怪我しないでくださいね」
 二人は心にも無い心配の言葉を送り、その場を後にする。その後ロイたちが口にした『結局俺達が居なくっても仕事は完遂できたんじゃ』と言う言葉など、ナナが知る由しもないのだ


「心配なんてしてないくせに……」
 ナナは力ない笑いを浮かべてため息をついた。
「全く、頼り甲斐の無い男の子に、守り甲斐のない女の子だこと……男の子にはもうちょっと弱み見せたほうがいいのかなぁ」
 独り言を言い終えたナナは、髪の中からミツハニーを取り出し
「君はもうひと頑張りね」
 と、わしづかみにしたミツハニーへ話しかける。息苦しい髪の毛の中からようやく開放されたミツハニーをつれてビークインを待機させている場所へ赴けば、不安そうな面持ちのビークインが眠れない夜をすごしていた。
「お待たせ、ビークイン」
 童話の中でお姫様の手を引く王子のようにナナは手を差し出す。
「後はあなたの仕事よ。あのムウマージを介抱してあげなさい」
「なんで……こいつらに親切をしなきゃいけないの?」
 最もな疑問を投げかけられたナナは、ビークインの手を優しく握って微笑みかける。
「怒ることは大事だけれど、許すことも大事よ……一方だけが歩み寄るだけでは、和解は生まれない。天秤が逆に傾くだけでは意味など無い……って、天秤なんていってもわからないかな?」
 ビークインが頷くのを見てナナは頭を掻きながら続ける。
「要するにね。今度は貴方達がふんぞり返るようになってしまっては意味がないってこと。あくまで仲良く、助け合えるような関係に。お互いを心配し、配慮し会える関係になってくれればいいなって事。わかるかしら?」
「みんな、仲よくですね……」
「うん。次の日にはきっと、貴方は手の平を返したように待遇が変わると思う。もしそうならなかった時はまた私が仕事するから安心して……で、貴方達の待遇がよくなったら、それに甘えすぎちゃだめ……貴方達が不満を抱えているように、相手もまた不満を抱えて生きているの。
 相手があなたの苦しみを理解してくれるようになったら、あなたも相手の苦しみを理解してあげて。それが、一番いい形よ」
「……わかった。難しいかもしれないけれど……頑張る」
「よし、いい子ね」
 ナナはビークインを抱きしめ背中を軽く叩く。ナナの温かみに触れたビークイン、叩かれる手の平から暖かな力を感じて、それにすがりつくようにナナのことを抱き返した。
 ナナの胸が上下する息遣いを感じている最中、ナナは卵を握るような力加減でビークインを押し返した。
「よし、行ってらっしゃい。あのムウマージを悪夢から覚ましてあげなさい」
「はい!!」
 励まし、元気付けられる声で送り出されたビークインは、今まで一度も見せなかった笑顔をナナに向ける。一仕事終えたナナは、夜の空気に触れてすっかり冷え切った左腕を暖めるため、左手を脇に挟む一風変わった腕組をする。
「さて、とりあえず今日一日はビークインに危害が及ばないか否かを徹夜で監視しなくっちゃね。ふぅ、酒場の仕事大丈夫かしら?」
 寝不足を心配したナナの言葉はしかし、どこか嬉しそうに弾んだ声色であった。

***

『なぜか、私達の行く道を遮るように2mはあろうかという雑草が街への道をふさいでいた。もちろん、乗り越えようとすれば邯鄲に乗り越えられただろうけれど、セレビィの加護が込められたというフリージンガメンのことを思い出した私たちは、ナナの元へと引き返すことにした。
 そこにはビークインと抱き合うナナがいて、会話の内容はあまり聞き取れなかったものの励ますような何かを言っていたのは、兄さまがナナさんが笑顔でしゃべっていることを教えてくれたことや、声色のおかげでなんとなくわかった。
 そうそう。仕事自体は確かにナナさん一人でも簡単に出来ただろうけれど、シャーマンとしての力を高めるには人の不幸と幸福に触れること。だから、行く意味がなかったかと聞かれれば答えはNOだ。私達は一緒に仕事を請け、他人の不幸と幸福を観察した……それで十分じゃない?
 好奇の目で見るのではなく、共感し、それを解決してあげる……いい事じゃない。でもBキャンセルの材料を採集する方法もう少しどうにかならないのかしら……?』
RIGHT:テオナナカトルの構成員、ローラの手記より。神権歴2年、5月3日早朝
LEFT:
『前回の日記の出来事の後、ナナはビークインの身に何か起こらないようにずっと監視していた。それを昼ごろ、私とユミルが引き継ぐ時には「明日からは必要ないかも」って笑っていた。

 そうそう、その時にナナが言っていたことも書き加えておきましょう。
「奴隷とは、職業選択の自由が無いものを指す。いくら奴隷が禁止である黒白信教とて、広義の意味での奴隷は禁止しない。それに、世間知らずなあの親子たちに他の職業が選べる気もしないしね」と、ナナは言った。でも、こう付け加えた「だから、苦役からだけでも開放させてあげましょ」と。
 私も思えば「貴族」という職業を強制された奴隷だったのよね。おいしいもの食べられて、石鹸で体を洗えて、良い家に住める。贅沢な奴隷といえばそうだけれど、糞の役にもたたなそうな奴と婚約させられ、厳しい英才教育。
 まったく、母親が言うようにそれが「貴族の務め」なんでしょうけれど、冗談じゃなかった。願わくば、あのビークインさんがあのときの私以上の幸福を得られますよう、私はここに祈ります。

 それにしても……最近奴隷の取引が急激に増えた気がする。神権革命でごたごたしているこの国を攻め込もうとしている国があるという情報のせいだろうか? 奴隷に陣地や砦を築かせようという事なのだろうか? ……全く、没落してしまって貴族の身分に意味が無くなると、戦争ほど迷惑なものは無いってよくわかるわね』

RIGHT:テオナナカトルの構成員、ローラの手記より。神権歴2年、5月3日夜
LEFT:


[[次回へ>テオナナカトル(5):花を買うのは偽善者?]]


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何かありましたらこちらにどうぞ
#pcomment(テオナナカトルのコメントページ,12,below);

IP:36.2.145.65 TIME:"2013-12-31 (火) 01:50:16" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%83%86%E3%82%AA%E3%83%8A%E3%83%8A%E3%82%AB%E3%83%88%E3%83%AB%284%29%EF%BC%9AB%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%81%AE%E8%AA%9E%E6%BA%90" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 10.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/6.0)"

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