『ダイケンキの観察日記 見開きの余白、或いは表紙裏』 作者:[[葉月綿飴]] この話には♂×♂のR18描写を含んでおります。ご注意ください。 …俺、ダイケンキは、幼い頃…つまりミジュマルの頃から、メッソン、ヒバニー、そしてツタージャと共にトレーナーの元で過ごしてきた。 トレーナーと同じ屋根の下で過ごすのはとても楽しかった。トレーナーと一緒に居ると色々な事を知れたし、多分これからも知っていくんだと思う。 俺達が人間の話す言葉を細かく認識出来るのは、小さい頃から触れてきた事の賜物…なんだと思う。 ただ…それでも、滅多に知識として取り入れることが出来ない事ももちろんあった。タチの悪い事に、それは俺達の本能と強く結び付いているせいで、切っても切れない腐れ縁のような物だ。 …身も蓋もない言い方をすれば、『性欲』に纏わる知識である。 初めての『ソレ』が来たのは、まだダイケンキに成り立ての時。 トレーナーの親がそこそこ裕福らしく、今現在俺達に1匹1部屋が与えられている。それが幸いした。 急に上がる体温、強く感じられる鼓動、奇妙な程胸が疼いて、ふわふわした気分になって…とにかく今まで体験したことの無いような気持ちを自覚し、気がつくと下腹部に熱の集まりを感じて、見るといつもはスリットの中に収まっているはずの自分の肉棒がカチコチになって自己主張をしていた。 (なんで…?胸が苦しくて、暑い…) そう思っていても、為す術などあるわけもなく、その日はただ自分でも分からない何かに悶々と耐え続けるしか無かった。 今思えば、誰かが部屋の中に入ってきて俺の可笑しな惨状を目撃しなかったのを感謝すべきなんだろうな、と思う。もし見られていたら…いや、これは想像しない方が良さそうだ。 夜に出ていたソレは、翌日の朝には治まっていて、胸をなで下ろしたものだ。 その次の日から、いつもトレーナーの近くに居るのをやめて、1匹で街をぶらぶらと歩いては立ち聞きや盗み聞きをして情報を集める事を始めた。賑やかな街の中で集まるか最初は不安だったのだが、路地裏近くを彷徨くと案外集まるものだ。 その結果、様々な情報を知れた。 ポケモンには「発情期」という物があること。 オスの場合、それを今すぐに治めるには自分のムスコを上下にしごけば良いらしいこと。 本来はオスとメスで「交尾」とやらをすることで、誰ものよく知るタマゴが出来ること… 今にして思えば、色んな意味でヤバい知識なんだけど、それでも当時の俺にとっては貴重な情報だった。 オスとメスが「恋」というものをする事はテレビに映るドラマとかで知ってはいたけれど、実際の経験はオスしか居ないような集団では幾分得ることも出来なかった。これでいつアレが来ても大丈夫だ、そう思ってその日は帰路に着いた。 え?1番大事なことを忘れていないか、って?そう。俗に言うオナニーの方法を知れたのに夢中で、その結果どうなるかをマトモに聞いていなかったのである。 そうとは知らずウッキウキで自分のスリットから肉棒を引きずり出し、見切り発車で実行した結果、俺がどんな独り舞台の惨劇を演じたのかはご想像にお任せしようと思う。何より俺が思い出したくない…。 そんな失敗をした次の日、俺は日々の鍛錬を済ませた後、今度は森の方に向かった。野生のポケモンならまた違う事を知っているかもしれない、そう考えたからだ。 …結論から言うと、俺の目論見は当たりだった。 が、それは俺がこうして腐った全ての(?)元凶だったのだ。 森に入ってから1時間後。 「.........迷った…。」 自分の方向感覚は普通のポケモン並、そう思っていたのだけれどどうもそうでは無いらしい。右を見ても左を見てもあるのは色とりどりの緑色で、なかなか明度が低いのがアクセントになっている。 要するに鬱蒼とした暗い森の、しかも奥深くに入り込んでしまったのだ。ダイケンキの俺とは言え、1匹だけだとやはり不安で、少し薄気味悪い。来た事を後悔したが、後の祭りだ。 「…取り敢えず、ノド潤すか…」 幸運にも木の実があちこちに成っていて、食べるのに困る事は無さそうな森だった。そのうち1本のオレンのみが成っている木に心の中で詫びを入れつつ、ちょっぴり力を入れて体当たりをかました。 「ふぃー…うまー…」 1匹でいることの心細さと空腹感をオレンのみと一緒に飲み込んでいた、その時。 「…はっ…は…」 「!」 自分自身以外のポケモンの声が草むらの中から聞こえてきたのだった。俺は一瞬躊躇したが、森から出られるかもしれないと思い声のする方角に向かう事にした。 ガサガサという音に混じって、声も次第に大きくなってくる、が… (あれ…?) 最初はてっきり技の練習かなんかをしているのだと思っていた。しかしどうも違うようで、 「あっ…あ…んぁっ…」 という、所謂喘ぎ声も混ざってきていた。 (どういう事なんだ…?) そう思いながらも、一々止まって考えている余裕なんかなかったから、そのまま足を止めずにどんどん向かっていった。 そして、唐突に目の前が開けた。 「あの、誰か───」 そう言いかけて俺は速攻で草むらの中に隠れた。 なぜなら目の前の光景を信じることが出来なかったのである。 「はっはっ、あっ…どおよバシャーモ、オレ様の中は、さ、はっ!」 「ふ、う…クセに、なり、そうだ。ジュカイン…!」 「おーおー熱々でヌルヌルだぜお前のブツ、また長いこと溜めていたんだろ?そんなに我慢しなくても、いつでもオレに、言えばいいのによ、ぅあっ…!」 「すま、な、あ、ジュカ、いん…!」 「良いぜ…オレとお前の、仲、だもんな…お互い様、だからなっ…!」 果たして目の前には、ディープキスを交わしながらの濃密な交尾が行われていた。陽炎のように揺らめく雄の臭いをまとわりつかせて、汗を垂らしながら正常位で激しく交わるバシャーモとジュカインの姿があった。 (んな…なんだあれ……!?) 頭ではそんな思考が断片的に流れるが、身体は実に正直だった。 クラクラするような特有の臭い、抽送される紅色の肉棒、それに対してユラユラと揺れるゴツゴツとした暗赤色の肉棒、そして遠くからでも聞こえるグチュグチュという結合部の音… 俺の思考回路を少しづつ機能停止させるのには十二分だった。 「あ…。」 気がつけば俺は俺のモノを握り込んでいた。 (ヤバっ…でもどうすれば…) そう考えても良い方法なんて出るわけも無い。ブラブラさせたままこの場を離れて誰かに見られてしまえば一巻の終わりだ。かと言っても上手く治められない。 (…こう、なったら…) どうにもならないならいっそ、そう思うことにして俺はこっそりと目の前の光景をオカズにオナニーを始めた。 まだぎこちない手つきでも、あてられたのかすぐに擦れる感覚が快感に変換されてくる。と同時に下半身の神経が鋭敏になってくる。 「はぁ、あ…!もう、ダメだ、そろそろ、」 「あぁ、良いぜ、中に、オレも…んあぁ!」 受けの方も相当余裕が無くなって来たのか、艶めかしい声が混じる。音もジュブジュブという音からパンパンと速く鳴り始める。それにつられて俺の手つきも速くなる。 次第に何かが押し出されるような感覚が強くなる。確実に俺がオカシくなってくる。 それが何かを考える暇もない。 「…っイク、イクぞ…っ出るっ!!」 「くっ、ふ、んあぁ!」 (…っ!!) 体の中を何度も電流が駆け巡るような、快楽の大波に俺は沈む。 手に生暖かい感覚がする。飽和してしまいそうだ。 (気持ち…いいッ…!) 長く続くかのように思われたが、それもやがて収まり、俺は目を開けた。 「あ…。」 手から白いゲル状の物が滴り落ち、地面に水溜まりを形作っていた。 (…家でやらかした時より、多い…) 脱力感と余韻の残る中、そんなくだらない事をボーッと考えていると、不意に 「おー、よく出てんねェ。流石は水タイプといったところか?」 「あ」 声を浴びせられ我に返るも、当然時すでに遅し。視線だけを上にやると、先程のジュカインがこちらを覗き込んでいた。 「えっと…」 なにしろ相手が悪い。不意打ちしても背中を見せて逃げ出したとしても、あの俊足で追い付かれればどう足掻いても目の前が真っ暗になる。それ以前に見られてしまったという恥ずかしさで頭がパンクしてしまった。だから俺は角が当たらないように慎重に下がり、 「すみませんでした」 と頭を下げた。一方ジュカインは慌てたようで、 「あぁいやいや、こちとらアンタに危害を加える気は無いから安心してくれよ。ンでもまぁ…他のポケモンの交尾を盗み見るとは、アンタもなかなかいいシュミしてんねェ」 「ゔ」 全身真っ赤になる感覚を覚える。まさに正論だった。他のポケモンに交わっている所をオカズにされたら、あまりいい気持ちはしないだろう。俺もそうなる、と思う。 なのに攻め役をしていたバシャーモはこちらへバツの悪そうな表情をして来るなり、 「君に見苦しい所を見せてしまったな、本当に申し訳ない」 と謝ってきた。 「いえ、こちらこそ…あの、恋人、なんですか?」 「ん、オレ達か?いーや、ただの親友だな。或いはライバル」 「腐れ縁とも言うがな」 「…親友、なのに、交尾…?」 すると、ジュカインは一瞬キョトンとした表情をした後、すぐに心得た表情になって、 「ははーん?おメェ、トレーナーの元で一緒に暮らしてきたタチだろ?そんで、交尾は恋人同士の、それもオスメスでやるもんだと思っている」 全くその通りだったのでコクンと頷いた。 ジュカインはガハハと笑いつつ、隣にきて俺の肩に腕をかけて顔を寄せた。 「オス同士の交尾は良いぞぉ?メスとヤるより臭くて熱いし、恋人じゃなくても好きに性欲解消出来るしな。メスとはそこら辺が面倒ったらありゃしねェ。ガキも孕まねぇで済むし、野生ならではだな」 「…止めないか」 バシャーモの制止も聞かず、尚も俺に滔々と続けるジュカイン。 「んでさ、お前はノンケなのか?それともホモか?んん?」 「えと、そこら辺はまだ意識したことないんで、あまり…」 「アハハ、まぁそーだよなー。んまぁ、もしムラムラ来て我慢出来ないなら、オレ達この森を根城にしてっから来いよ。オレがお前の筆下ろしをしてあ、げ、る、ぜ♡」 「おい、いい加減にしないか。…すまないダイケンキ君、今コイツが言った事は全て忘れてくれ」 そう言って強引に引きずりさろうとするバシャーモ。ジュカインはというと、引き摺られつつも 「本気だかんなー!覚えておいてくれよなー!」 …かくして、2匹組は去っていった。 半ば呆気に取られつつもそれを見送って、今更大切な事に気付く。 「…やべ、帰り道聞くの忘れてた」 結局、夕飯迄に帰られたものの、全身クタクタになってしまったのだった。 実のところ、話はまだオチない。 夕飯の後、ジャローダと少しじゃれた後の満月の夜、しかし俺の脳裏には昼の強烈な光景が蘇っていた。そのせいでなかなか寝付くことが出来なかった。 (寝れない…) あまりにも扇情的なせいか、また俺のムスコが主張してしまいそうだ。 仕方ないので、夜風に当たろうと部屋を出ることにした。 …が、その途中で異変は起きた。 (…ん?) 玄関に行く途中、トレーナーの部屋から光が漏れているのに気づいた。 気になって開けてみると、そこには灯りの点いているパソコンがあるだけだった。 (消し忘れか…?珍しいな) 隣で見ていたので扱い方は一通り知っているし、なんならパスワードも盗み見て知っている。少し気を利かせてシャットダウンしてやろうとパソコンのロック画面を開く、と─── 「んな」 そこには対面座位でヨダレの吊り橋を掛けつつ盛り合うルカリオとゼラオラの絵があった。 こんなのをトレーナーが好いていたという事実への驚愕と、何故か湧き出る嘘であって欲しいという思いと、そして胸の辺りが濡れたように悲しくて、寂しい気持ちとが一緒くたに出てきた結果、俺の思考回路は見事にショートした。 瞬間、電気が点いた。 「っ誰だ!?」 「あ」 「てあれ、ダイケン、キ…?」 もう詰んだ、完璧に詰んだ。今すぐ消えてなくなれ俺、絶対幻滅されるし嫌われるくらいなら穴の中に入って一生を終えたい、そんな思考が脳裏に過ぎった。その癖身体は馬鹿正直に下半身が反応してしまっている。 (もうダメだ、完璧に終わった) そう確信して俺は後悔の涙を流した。 「…ダイケンキ」 「…あう」 表情が恐ろしかったが、振り返らないわけにも行かなかった。 (…あれ) しかしトレーナーは、怒っているかと思えばそうでもなく、意外にも照れていた。 「えっとね、その…ダイケンキのそれを見なかったことにするからさ、ダイケンキも…パソコン、見なかったことにしてくれないかな?」 「………。」 そんなのお易い御用、どころか願ってもない事だった。こうして、1人と1匹の間に不可侵条約は結ばれた。 (…それにしても) 部屋に戻ったものの、先程の事件で眠気は吹き飛んでしまった。パソコンに表示されてたイラストを思い起こしつつ思った。 (トレーナーがいない時に少し調べてみよう) こうして、俺はオス同士の恋という概念を知り、見事に腐るのだった。 今のところ、紆余曲折あったが後悔はない。インテレオンとエースバーンが今後どんな様子を見せてくれるのか、それを楽しみにしつつ俺の余白埋めをここでシメる。 「…柄にもない事したな…」 <あとがき> ここまで御精読頂き、誠にありがとうございます。今回初の濡れ場描写に挑戦してみましたが、頭の中では容易に思い描けても、文字にするにはかなり難しいですね…後語彙力のなさがやばい(語彙力) ダイケンキに言葉責めをされたい人生でした。本当にありがとうございました。 コメント、是非お待ちしております。 #pcomment(観察日記の見開きの余白コメント,10,below)