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サマーバケーション! ~ミッドナイトスクールコープス~ の変更点


writer is [[双牙連刃]]

前話へは[[こちら>サマーバケーション! ~紅き心の内なる思い~]]

死した者が残すのは一体なんなのか、恨みか、はたまた願いか…。

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 ……何故だ、何故こんな事になった。これが、ポケモンの成長速度の速さが成せる業だとでも言うのか。

「やったー、これで5連勝!」
「なん……だと……」
「馬鹿な、俺達がもう歯が立たないなんて……」

 いやまぁ、何の話かと言うとゲームの話なんだがな? 司郎と対戦格闘系を始めたのはいいんだが、相手が増えた方が楽しいと考えたんで心紅に試しに教えた訳だ。
あぁ、俺の手は完治した。といっても、ズタズタになった形跡全てが消える事は無かったけども。我ながら、体の限界を超えた無茶なんてよく出来たもんだ。
いや、そんな事よりも今大変なのはこっちだ。簡単なコンボなんかは教えたが、それだけでどうして超上級の10割コンボなんてものが使えるようになるんだ一体!? 俺だって出した事無いぞ!?

「これって、どういう動きなら繋げられるか考えるの楽しいですねー。もっと長く繋げられると楽しいんだけどなぁ」

 いやいや、通常コンボからエアリルに繋げられて、終わりかと思ったらダウン寸前で拾われて再コンボ開始とか受けたら泣きそうになるからな!? あ、実際に受けたのは司郎だが。
これは、心紅の意外な才能なのかもしれない……大会なんかあったら出させたいくらいだ。
いやでも、ポケモンの姿でリラックスしてるから出来るのかもしれない。そういう大会だと上がっちゃって実力は出せ……。

「心紅……お願いだからちょっと手加減して……ぐすっ……」
「え? えぇ!? だ、大丈夫ですか司郎さん!?」

 うん、ごめん出せそうだ。まぁ、さっきからパーフェクトしか出されてない状況になったら泣きたくもなるわな。
ん? 司郎の携帯が鳴り出したな。これはまた珍しい。

「零次、バトンタッチ……」
「な、ぬぅぅ!?」
「うーん、楽しいとついつい集中しちゃうんですよねー。次はほどほどにしますから!」

 ごめんなさい、気合入れて程ほどにするって言われても説得力が皆無です心紅さん。
くっ、俺まで餌食にならないようにしなければ。せめて、せめて一矢報いて!

「はーいハートブレイク中の司郎で~す……んぁ? いいんちょ? どったの?」
「ん? 委員長だと?」
「そうそう……あ、ごめんごめん。実は零次も俺ん家に居るんだ。へ? 家に電話してたん? そりゃあ出ないよぉ~」

 ほう、何やら我がクラスの委員長が俺達に連絡を回してたようだな。……よし、一撃入れたぁ!
司郎は何やら話し込み始めた。流石に内容が聞こえてくる事は無いか。そもそも、今の俺にそんな余裕は無い。くそぉ、!? 馬鹿な、ガードブレイクだと!?
あ、司郎の電話が終わった。と同時に俺達の戦闘も終了……パーフェクトゲームは免れたが、ほぼ防戦しか出来なかった……駄目だ、心紅が強過ぎる。

「で、雪花の奴なんだって?」
「雪花? 親しい人なんですか? 零次さん」
「あぁ、小学校からずっと、何故か同じクラスなんだよ。まぁ、向こうは頭も良いし人徳も俺より遥かにあるんだけどな」
「ん~なんか、いいんちょプレゼンツでイベントするっぽいぞ? 夜の学校で肝試し~だってさ」
「ほぉ、お堅い雪花らしくないな。よくそんなイベントする気になったもんだ」
「あ、その辺は聞かなかったな~。自由参加だけど、暇ならそこに居る馬鹿も連れて来てってさ」

 あいつ……人の事を馬鹿とはどういう事だ。いつもの事と言えばそれまでだけど。
でも、まぁ肝試しなんかも夏の定番と言えば定番だな。他の他所様に迷惑を掛けない学校なら別に構わないだろうし。

「あ、学校ならあの人居るよな。夏休み入ってからは会ってないし、ついでに挨拶してこようか」
「あ~、そうだな。夢子さんも暇してるだろうし、夜に会うのも久々だしな」
「? 誰ですか夢子さんって?」
「まぁ、会ってみれば分かるさ。悪い……人じゃないから」

 多分心紅を連れていっても問題無いだろう。雪花も硬い事言わないだろうし、夢子さんも話し相手は多い方がいいって言ってたからな。
そんな訳で、肝試しは参加だな。で、何時やるんだ?

「司郎、肝試しは何時なんだ?」
「っとそうだった。今日の夜八時集合で、解散は集まり次第にもよるけど、大体十時くらいだってさ」
「了解。ま、それまでは暇潰ししてるか」
「あの、私も行くようなお話でしたけど、参加しちゃっていいんですか?」
「人の姿ならいいんじゃん? 細かい事は言いっこ無しで、また零次の親戚って事でさ」
「だな。そうだ、ついでだし俺達の学校にある七不思議の話でもするか」
「うぇぇ!? それって、怪談ってものですか!? 怖いのは苦手ですぅ……」

 あぁ、大丈夫。そんなに怖い話は無いから。って事で、ついでだしリビングでテレビを見てるかおばさんと談笑でもしてるであろうリオルや海歌にも聞かせてやろうって事で移動。もちろん2匹も連れて行くぞ。
そんな感じで夜を待とう。学校での肝試し、実は俺と司郎にはな~んにも怖い事無いんだがな。

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 司郎の家から学校へは、寄り道しなければ約20分。その間俺はどうやら、心紅に腕を組まれたままになるようだ。

「心紅……そんなに怖かったか? あの話」
「だ、だだだだって学校ででで火傷して自殺したたたおおお女の子とととかかか」
「あ、だ~めだこりゃ。完全に怖がっちゃってるな。リオルも」

 そうそう、リオルは今、人になってる司郎に肩車されて、その頭にしがみついてる。心紅と同じで、七不思議の話がよっぽど怖かったらしい。
まぁ、そこまで怖くてもついて来る辺り、勇気はあるみたいだな。……単に俺達が出掛けて、家に残ってるのが嫌だっただけかもしれないが。

『よく分からなかったけど、幽霊なんて本当に居るのか?』
「ん? まぁ一般的にはただの噂だな」
『だったらそんなに怖がる事無いと思うんだけどな?』
「そ、そそそそれでも怖いものは怖いんですぅ!」

 海歌は心紅とリオルと違って落ち着いてるみたいだな。あ、因みに今はボールの中から念で会話してる。だから司郎には俺と心紅の言ってる事だけが聞こえてる状態だ。
そうそう、おじさんに任せたアクアボールの解析、あれは失敗に終わった。装置に掛けても、まったく何も読み取れなかったそうだ。おじさん曰く、協力してくれたアイテムマニアって人も随分悔しがってたそうだよ。
ただ、これに入る事になる海歌から面白い事は教えてもらった。なんとこのボール、中から外の様子を普通に見る事が出来るそうだ。普段は夏の海の風景が広がってるそうなんだが、外を見たいと思ったら、そのまま切り替わるらしい。自分が小さくなったみたいで面白いって言ってるよ。
だからこのテレパシーがあれば、海歌をボールに入れてても普通に見た物の話なんかが出来るって訳だ。便利だよな。……お陰で、心のリンクって奴は解く事が出来なくなったけど。

 さて、そんな話をしてたら校門に着いたな。……やれやれ、クラスの皆も存外暇だったと。全員集まってるじゃないか。

「おーっすいいんちょ~。遊びに来たぞー」
「よぉ」
「いらっしゃい黒子君。で、なんであんた黒子君の家に居るのよ?」
「親が旅行しに行って、俺だけ放置されたから」
「……なんというか、あんたの家って基本フリーダムよね」

 それには激しく同意する。兄貴も兄貴で父さん母さんもだからな。
さて、目の前の黒ポニーテールメガネが『小川原 雪花』。小学校からだが、一応俺の幼馴染だな。

「っていうか、何故に制服?」
「あぁ、一応まとめ役に指定されちゃったから分かり易いようにね。まったく、小野先生の気まぐれも困ったものよね。いきなりこんなイベント考えたからやって~なんて電話されても、こっちも困っちゃうわよ」

 なるほど、企画者は小野先生だったか。うちのクラスの担任な。

「ところで、あんたの腕にしがみついてるその子は?」
「ん? あぁ、俺の親戚で心紅って言うんだ。家に残してくるのも暇だろうしって事でつれて来たんだ。構わんだろ?」
「は、始めまして心紅です……」
「こちらこそ始めまして、多分そいつから聞いてるだろうけど、小川原雪花よ。っていうか明らかに怯えてるけど、何したのよ?」
「ん? 七不思議教えた」

 む、溜め息つかれた。いやまぁ、基本的にうちの学校の七不思議は怖い系で揃ってるからな。怖がる奴は本気で怖がるだろうな。

「まぁ参加は構わないけど、無理はしないでね心紅さん」
「あ、ありがとうございます」
「あんたも、耐性の無い相手にいきなりあれはきついでしょうに……」
「そうかぁ?」

 また呆れられたが、基本的に俺とこいつはこんな感じだから気にしない。
さて、結構集まってるがまだ始まらないのか? 時間は……そろそろ8時か。
ん? そういえば司郎は何処行った? かと思ったらなんだ、他の奴と話してただけか。聞かれてるのは、リオルの事みたいだな。
そういえば、そろそろ時間だがこの肝試しのルール説明なんかは始まらないのか?

「雪花、そろそろ始めないのか?」
「ん、そうね。時間も良い頃だし始めようかしら」

 とりあえずまずは雪花からのルール説明だ。どうやら、普通の肝試しとはルールが違うらしい。

「この肝試し、特に指定されたルートは無いわ。ただし、チェックポイントは存在するの」
「と、言うと?」
「校内の七箇所に、これの入った小さな箱があるの。そこから一つずつを集めて、七つ全部を集めたらここに戻ってきて終了。ようは夜の校内を探索して来いって事よ」
「……小野先生の考えそうな事だな。ビー玉か」
「まったくね」

 こういう探検とか冒険とかが年甲斐も無く好きなのがうちの担任なのだよ。そういえば、企画者である小野は何処に居るんだ?

「いいんちょ質もーん。これって、いいんちょも参加するんしょ? ここに誰も居なかったらどうやって終わったって判断するん?」
「あぁ、それなら問題無いわ。だって……」
「僕が居るんだからね!」

 ……居たのか、小野よ。校門の影に隠れてずっとスタンバるとかどれだけ暇だったんだよ。
あぁ、一応ドッキリは成功したようだ。俺と雪花以外の奴が驚いた声が聞こえたからな。

「まぁ、あんたは驚かないわよね」
「当然だろ」
「でも、心紅ちゃん放心してるわよ?」
「……おぉ!? 心紅、しっかりしろ!」

 口からなんか白いものが出そうになってるから正気に戻した。危ない危ない、心紅があっちの世界に行く所だった。
と言う訳で、ここに待機してる小野に七つのビー玉を見せれば肝試し終了。ん? なんかついでにちょっとした品を貰えるらしい。

「あと、一応チームを組むのも個人で参加も自由よ。ただし、上限は四人で、ですよね小野先生?」
「その通り! やっぱり四人くらいがベストだよね~」
「RPG的に、ってところか?」
「でしょうね」

 なんとまぁ……いや、ツッコミ入れてもどうしようもないから止めておこう。疲れるだけだ。
それじゃあチームを組むか。といっても、俺にはもれなく心紅がついて来るから、残りは二人か。

「おっしー、俺はもちろん零次と行くぞー」
「だな」
「それなら、私もあなた達に同行しようかしら。構わない?」
「いいんじゃん? なぁ」
「まぁ、雪花なら問題無いか」
「そう、なら決まりね」

 速攻で決まったな。俺と司郎、それに心紅と雪花でチームだ。あ、あと一緒に居るリオルもだな。
他も大体チームが決まったみたいだ。……あえて一人で行く猛者も10人くらい居るみたいだが。
懐中電灯も配られて、後はスタートを待つのみ。そうだな……俺達はまず、夢子さんを探すとしようか。

「それじゃあ皆、夜の学校を楽しんできてね~!」
「レッツゴー!」
「リォ~……」
「あら? そういえば黒子君ってトレーナーだったかしら?」
「まぁ、その辺は歩きながら話してやるよ」
「れ、零次さん、ゆっくり行きましょ!? ね!?」
『ここが零次達が言ってた学校って奴かぁ。あ、二階の窓際に誰か居るぞ』

 ん? ……どうやら、探し人にはすぐに会えそうだな。見た事のある少し茶色の長髪が、窓際で揺れてる。海歌、よく見えたな?

 学校に入ってからすぐに、俺達は海歌が見た人影の辺りに向かう。雪花がどうしたのか聞いてきたから、見れば分かるって行ってとりあえず納得させた。
校門から見て正面の辺りだったから……うん、この辺だな。

「夢子さん、居ますか?」
「夢子? そんな名前、うちのクラスに居たかしら?」
「ふふふ……残念ながら、私はあなた達のクラスメイトでは無いわよ」
「……え?」

 すぅっと廊下の闇が浮き上がったように、その場に誰も居なかった場所に現れる。いつも通りの登場の仕方だな。

「お久しぶりね、零次君に司郎君。夏休み、楽しんでる?」
「もちろん。夜に会うのは……半年ぶりですかね?」
「おっすー夢子さん」
「……ちょっと待って、整理させて。とりあえず、この人は誰? 知り合いなのは分かったけど」
「あら、零次君達のお友達?」

 足音も無く、夢子さんは雪花に近付いた。まぁ、足音なんてしようが無いんだけども。
それに若干怯えながらも雪花はたじろがずに居る。流石だな、俺でも最初に会った時は驚いたのに。

「可愛い子ね、あなた。そうそう、私の事だったわね。私は夢子、分かり易く言えば……『校内を彷徨う女学生』と言えばいいかしら?」
「! それって、七不思議の!?」
「そう、夢子さんはこの学校に憑いてる幽霊だ」

 ……場の空気が固まったな。まぁ、いきなりそんな事言われれば当然か。
うおぉ、腕に振動が走る。心紅がめっちゃ震えてるみたいだ。

「あぁ大丈夫大丈夫。別にあなた達にどうこうする気は無いから」
「待って、ていうか待て。なんでそれが分かってるのにあんたと司郎君は真っ直ぐにここに来たのよ!?」
「だって、なぁ?」
「夜はこの学校、夢子さん達のテリトリーだし、それに入るなら挨拶しないとなぁ?」

 あ、雪花に呆れられた。こりゃ、後で説明漬けにされそうだな。
簡単に説明すると、俺達と夢子さんが出会ったのは半年前。学校に忘れ物をした司郎に付き合わされて、夜の学校に忍び込んだ事があってな。その時に知り合った。
だから俺はこの肝試しも怖くないし、七不思議もなんとも無い訳だ。出るって知ってるからな。

「とりあえず、心紅ちゃんはこの事知らなかったのよね?」
「は、はははいいいい……」
「じゃあ、一緒に行きましょうか」

 ふぅ、と一呼吸置いて、心紅と雪花が同時に口を開いた。

「「いぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁああ!」」

 ……そりゃあ、いきなり幽霊だなんて名乗る相手に出会ったらこうなるか。

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 俺達は夢子さんも加えて、現在校内を探索中だ。が、さっきから雪花がご立腹で俺の横腹に肘を食い込ませてきてる。

「信っじられない! 何!? なんで七不思議と知り合ってるのよあんたは!?」
「なりゆきと言うかなんと言うか……なったものは仕方ないだろ?」
「私もあの時は驚いたわねー。司郎君は真っ白になって驚いてたのに、零次君は「おぉ」としか言わないんですもの」
「れ、零次さん……怖くなかったんですか?」
「別に」
「それが零次らしいって言えばそこまでだよな……」

 そりゃあ俺だって驚かなかった訳じゃない。でも、敵意を感じない相手にそこまで驚くのも失礼だろ? ……ずれてるのは認識してるから気にしないでくれ。
とりあえず夢子さんには肝試し実施中である事と、心紅と雪花には夢子さんの事を説明して現在に至ってる。
夢子さんの正体は、この学校にある七不思議の一つ『校内を彷徨う女学生』。
この学校で、よろしくない事をやっていた教師の実態を見てしまい殺され、死体をこの校内に隠されそれを延々と探し続けている女学生って事らしい。
ま、実際はその教師はとっくの昔に悪事がバレて投獄、夢子さんの体も発見されてるそうだ。が、成仏するのも詰まらないから校内に残ってる、という事だ。

「それにしても肝試しねぇ。事前に分かってれば、他の皆にも説明しておいたのだけど……」
「他の? ……ま、まさか」
「七不思議、だぞ? 夢子さん以外にも居るに決まってるだろ」

 あ、雪花と心紅が青ざめた。もう既に夢子さんと話してるんだから慣れてきてもいいと思うんだがな?

「じゃ、じゃあ、理科室で火傷して、他の人を同じ目にあわせようとしてくる女の子とか……居るん、ですか?」
「芳野ね。あの子も最近は丸くなったし、驚かしはするけど襲って来る事は無い筈よ? あなた達の場合は私も居る事だし」
「あぁ……まさかこんな形で七不思議が実在する事を自覚する事になるなんて……」
「まぁまぁ、いいんちょもこれで怖くなくなったっしょ? 結果オーライ♪」
「で、でも、さっきの言い方だとひょっとして……他の人には」

 心紅が言おうとした事を遮るように辺りから悲鳴が聞こえてきた。そういう事だな。

「七不思議実体験中~」
「……肝試し的には盛り上がるか?」
「写真部辺りが喜ぶのは間違いないわね」
「ふふっ、もう皆にも伝わってるし、ちょっと脅かし役が出来たと思ってもらえれば嬉しいわ♪」
「実物に役をやってもらえる肝試しなんて、最高に贅沢ね……」

 呆れ気味に雪花はそう言った。どうやら夢子さんにも慣れてきたみたいだな。

「それにしても……」
「ん? どうしました?」

 夢子さんがそっと近付いてきて、俺に耳打ちするような仕草を見せた。

「……変わった知り合いが出来たみたいね」
「分かるんですか?」
「まぁね。私は、どっちかと言うと相手の『魂の形』を見ているから。見た目を変えてても、その辺は変えられないのよ」

 そういう事か……つまり、夢子さんには最初から心紅がラティアスの姿で見えてたと。そりゃあ変わった知り合いが出来たなんて分かる訳だ。
そんな事を話しながら、しばらくは探索をしてたんだが……。まったくビー玉が見つからない。一体何処にあるんだ?

「うーん……」
「全然見つからないですね……」
「隠したのは小野先生含む先生方だから、私も隠し場所までは知らないのよね」
「でも、七箇所と言ってたのよね? もしかしたら、七不思議のテリトリーに隠されたのかも。それだったら、まだ行ってないから見つかるかもしれないわね」

 可能性は高そうだな。一応心紅とかが落ち着くまでは行かない方がいいだろうと思って探索から除外してたんだが、もう落ち着いてきてるみたいだし行っても大丈夫だろう。腕は掴まれたままだが。
しかし、七不思議が動いてるんだろ? それだとしたら、他の皆はビー玉に辿り着けるのか?
いや、そんなに露骨に驚かしはしないか。お祓いなんてされて困るのは自分達だろうし。

「ここから一番近いのは、音楽室かしら。俊樹君も久々に思い切りピアノが弾けるから喜ぶわ」
「音楽室だと、『寂しげなピアノ弾き』ね。夜中に独りでに鳴り始めるピアノ、その音色を聞いた者は永遠にそのピアノ弾きの観客として音楽室に囚われるっていう……」
「うん、確かに良い演奏だよな。聞き惚れた人が居るのも納得だ」
「……当然のように聞いた事あるのね、あんた達」

 幽霊だっていう先入観を取っ払えば、普通に良い演奏を聴けるんだからいいだろ。七不思議に語られてるような事になってないし。
それに、語られていない事実をあげると、寂しげなピアノ弾きこと俊樹は、この学校とまったく関係無い。近くに暮らしてた、病弱な男の子だったんだ。
唯一の楽しみであり特技だったのはもちろんピアノ。でも、ある日に俊樹は、重い病気に掛かって亡くなってしまった。去年9歳、もしそのまま年を重ねていたら、間違いなく天才ピアニストになってただろうな。
唯一の楽しみであり特技だったのはもちろんピアノ。でも、ある日に俊樹は、重い病気に掛かって亡くなってしまった。享年9歳、もしそのまま年を重ねていたら、間違いなく天才ピアニストになってただろうな。
それがどうして学校の七不思議になってしまったか、理由は簡単なんだ。自分が亡くなった事で、俊樹の両親が使っていたピアノを処分してしまった。けれど弾きたい、もっと弾きたかって思いが、一番近かったここの学校のピアノと俊樹を結んでしまったって話。

「ここが……音楽室、ですか?」
「あぁ。俊樹、入るぞ~」

 音楽室の扉を開けると、パジャマ姿の少年がぺこりとお辞儀をしてきた。そう、これが俊樹だ。足無いけど。

「トッシー久しぶり~」
「あ、そうか。俊樹は司郎に懐いてたっけ」
「そ、そうなの? ……うわぁ、足無いわね」
「うーん、ベッドに入りがちだったから足のイメージが上手く形にならなかったみたいなの。霊の足が無いって、大体そういう理由なのかもしれないわね」
「ゆ、夢子さんにはちゃんとありますよね? それはどうしてですか?」
「あぁ、私の未練が『自分の死体を見つけたい』だったからかしらね。体が分からなかったら、見つけようも無いでしょ?」

 さらっと怖いですから夢子さん。そして、司郎に俊樹が抱きついて気が気じゃないのはリオルだろうな。めっちゃ表情が引きつってるぞ。
仕方ない、俺が助け舟を出すか。司郎の方からリオルをひったくってと……よし、こっちに肩車させれば落ち着くだろ。

「折角だから一曲お願い出来ないかしら、俊樹君」

 夢子さんの申し出に俊樹は頷いて、一直線にピアノへ向かって走っていった。
そして始まった演奏は、ピアノ曲では有名なエリーゼの為に。名前は結構誰でも聞いた事あるんじゃないかな?

「わぁ……」
「凄い、9歳だったのよね? 完璧じゃない」
「間違いなく天才だろうな。惜しむらくは、もう亡くなってるって事か」
「私としては、俊樹君の演奏をいつでも聴けるから良いのだけど、やっぱりもっと多くの人に聴いてもらいたいと思う時もあるわ」

 演奏を最後まで聞いた俺達は、惜しむ事無く拍手で俊樹を称えた。ちょっと恥ずかしそうにしながら、俊樹はそれにお辞儀で返してくれた。
っと、気付いたら心紅も拍手してるじゃないか。今ので、怖いのも和らいだみたいだな。……涼しくなった腕が少し寂しく思ったのは言わないでおこう。

『零次、ちょっといいか?』

 ん、海歌か。どうした?

『あの子は喋れないのか? その夢子っていうのと同じで幽霊なんだろ? 一言も喋らないから気になって』

 あぁ、それならどうやらそうらしい。というか、会った事のある幽霊で喋れるのは夢子さんだけだな。
なんでも、その辺りは力の強さで決まるみたいだな。夢子さんは、この学校で一番古い七不思議だから喋れるようになったそうな。

『なるほどねぇ……でも、さっきから思ってたけど……』

 なんだ?

『幽霊って、本当に居たんだなぁ』

 ……俺と海歌って、どっか似てるのかもしれないな。俺が夢子さんにあった時の感想も、まさしくそれだったぞ。
っと、ここに来た目的を忘れるところだった。ここに居た俊樹なら何か知ってるかな?

「なぁ俊樹、昼間ここに、誰かが何かを隠しに来なかったか?」

 少し顔に疑問符を浮かべてたが、何かを思い出したように楽器を収めてある棚へと向かっていく。
……あった、ビー玉入りの箱だ。

「おぉ! あったー!」
「なるほど、こんな風に隠してあるのね」
「まずは一つか。……ありがとな、俊樹」

 頭を撫でてやると、照れくさそうにしながらも嬉しそうだった。霊の頭を撫でるっていうのも、かなり斬新だよな。

「これは、七不思議巡りで間違い無さそうね。これの企画者、なかなかチャレンジャーじゃない?」
「だとすると、一つは所在不明ですね……」
「あら、どれかしら?」
「『校内を彷徨う女学生』。そう言えば分かりますよね?」
「あ~……それもそうね」

 そう、夢子さんのみ範囲が校内全てだ。何処か一箇所って事が無い以上、隠し場所を特定するのは難しいって訳だ。
が、それ以外のものなら分かりそうだな。俊樹がそうだったように、隠しているところを見ているだろうし。挨拶しながら七不思議巡りとしようか。
暗い校内を、懐中電灯の明かりだけを頼りに進む。それがもう出るって事が分かってるだけでどれだけ楽な事になるかはお分かりだろう。暗闇や幽霊の恐怖は、居るかどうか分からないところに集まってる。既に出会ってて、それに敵意が無いなら怖くもなんともない。
次々に七不思議に語られている場所を巡り、そこに居る語られている者に軽く挨拶をしながらビー玉を集めた。……時々クラスの奴にすれ違うが、パニックになってたり妙なテンションになってたりとなかなか愉快な事になってたな。

「うーん、ちょっとやり過ぎたかしら?」
「まぁ、肝試しなんてやってもろくな事が無いって教訓にはなるんじゃないですか?」
「私も、あんた達に同行してなかったら同じ目にあってたと思ったら、あながち笑えないわね……」

 さて、俺達が見つけなければいけないビー玉はあと二個になってた。残りは所在不明な夢子さんの分のビー玉と……心紅の恐怖の元、理科室だ。

「うぅ、理科室、行くんですよね?」
「大丈夫よ心紅ちゃん。芳野はこの二人の事気に入ってるし、私も居るしね」

 夢子さんが居るっていうのは本当に心強い。この学校の七不思議達の纏め役だし、その他の事にも詳しい。伊達に50年霊をやってる訳じゃないって自慢された時は苦笑いだったけどな。
そうして理科室が目の前に迫った時、突然理科室から飛び出してくる人影があった。そしてそれは……扉も開けずにそのまま俺達の前に現れて、そのまま倒れた。

「!? 芳野さん!?」
「え、えぇ?!」
「芳野!? ……なるほど、出たのね」

 出た? どういう事だ?
何も言わずに夢子さんは理科室に入っていった。とりあえずまずは芳野さんを起こすか。

「大丈夫ですか?」

 ん、芳野さんの口が、必死に何かを言おうとしてるみたいに動いてる。……夢子を追って、か?
何やらただ事じゃない事が起きてるみたいだな……。

「司郎、ちょっと心紅とここで待っててくれ。中の様子を見てくる」
「え!? 零次だけで!? それなら俺達だって……あ」
「……お前達じゃ、今は無理だろ? それに、俺は一人じゃない」

 いざとなったら力を借りるかもしれん、頼むぞ、海歌。

『了解だ。……零次、その部屋の中からは嫌な感じがする。多分、ポケモンが居る』

 ふむ……海歌は感も効くみたいだな。初見で夢子さんを見れたりしてるし、この助言も念頭に置いておいたほうが良さそうだな。

「ちょっと待って。何か起きてるのは私にも分かったし、一緒に行くわ」
「雪花? いや、だが……」
「大丈夫、ユキメノコとグレイシアは連れて来てるわ。自衛はするから、ほら行くわよ」
「あ、あぁ……」

 こういう正義感の強いところが、クラス委員長とかに選ばれる要因なんだよな。トレーナーとしては頼りになるし、止めても来るだろうし行くか。
扉を開けて中に入ると、夢子さんとある者が対峙していた。……海歌の言った通りだったか。
ゲンガーとジュペッタ、だったかな? 芳野さんはこいつ等にやられたみたいだな。

「……長期休暇になると、こういった子達がここに入ってきちゃう事があるのよ。そういった子達は、大抵は私達が追い払ってしまうんだけどね」
「ポケモン!? 一体、なんの為に?」
「さぁ? でも、人気が無くて広いから居心地が良いんじゃないかしら。こっちとしては迷惑なのだけどね」

 同意する。こんな奴等に学校に居座られたら、休み明けに学校がどうなってるか分かったものじゃない。ゴーストスクールなんて勘弁だ。

「普段は私が見張ってるから力の強い子は入って来れない筈なんだけど、まさかこんなに強力な子達が入り込んじゃうとは……多分、肝試しの騒ぎに紛れ込んで入ったのね」
「それなら責任があるのは俺達、だな」
「償いはしないとね。ゴーストタイプが相手なら、トレーナーでもないあんたも下がってなさい」
「いや、やるさ。俺にも、相棒が出来たんでね」

 アクアボールを開放して、海歌を出した。スペースはあるし、大丈夫だろ。

「ラプラス!? ……あんた、トレーナーにはならないんじゃなかったの?」
「トレーナーになったつもりは無い。が、こうなってるから力を借りる。それだけだ」
『やっぱり居たな。零次、やっても?」

 あぁ頼む。ここを荒らされる訳にはいかないからな。

『了解!』
「私も行こうかしら! ユキメノコ!」
「それなら、ここは任せるわ。流石に、ただの霊では弱いポケモンを追い払えても、戦える訳ではないからね」

 夢子さんが俺達の後ろまで下がったのを見計らったように、ゴースト二匹は動いた。海歌はそんなに動き回れそうにないし、迎撃するしかないな。
っと、早速向こうからの攻撃か。黒い玉がゲンガーから放たれて、海歌に向かってきた。……問題無いか?

『問題無いね。このくらいなら、私の兄弟のほうがよっぽど強いよ』

 すぅっと息を吸い込むような仕草をした後、海歌の口からは勢い良く水が放たれた。それは黒い玉にぶつかって、弾ける。
おっと、どうやら向こうのゲンガーにとってこれは予想外だったようだ。明らかに動きがワンテンポ止まった。それを、海歌は見逃さない。
追撃の水流がゲンガーを捉えて、押し流す。……はぁ~、こうして戦ってるのをみるのは初めてだが、なかなかどうして、強いじゃないか海歌も。

『どうだ? 私も結構出来るだろ?』
「ナイスだ。俺がやれれば、出す事も無かったんだけどな」
『また無茶な事言うな。海で散々心配させられたんだ、あんな思いするくらいなら、一緒に戦った方が数倍マシだよ』

 うぐっ、あの時の事を出されるとちょっと弱いな。俺もあの時の二の舞はごめんだ。

「ユキメノコ、氷の飛礫!」
「メノォ!」

 あっちもどうやら押してるな。……こうなってくると、問題は……。

『! 不味い、ゲンガーが!』
「やっぱり逃げようとするか!」

 倒れこんでた筈のゲンガーは、さっと海歌の脇を通って理科室の出口へ向かっていた。くそっ、奴の方が僅かに速い! 逃げられるか!?
!? ゲンガーがドアに手を伸ばしてそれを開けたと思ったんだが、そのドアが開く事は無かった。……あれは俺達が入ってきたドアだから、鍵は掛かってなかったぞ。

「やっぱり、怪談なんかの定番は閉じ込められないと始まらないわよね?」
「夢子さん!」
「私から警戒を解いてるんだもの、これくらいやらないと入ってきた意味が無いものね」

 こういった事をされると、改めて夢子さんが幽霊なんだなと思う。でも、今は良い仕事だと思っておこう。
海歌も振り向いて、ついでにユキメノコに追い詰められてたジュペッタも合流してきた。なんだ、あっさりとした幕引きだったな。

「で、こいつ等はどうします?」
「そうねぇ……ちょっと芳野に聞いてくるわ」

 そう言って夢子さんは壁に吸い込まれるように廊下に出た。……ちょっと便利だよな。
廊下に待機してた司郎達と何か話して、夢子さんと芳野さんが戻ってくる。まぁ、司郎達は壁抜けなんて出来ないよな。

「はい、まずはあなた達が襲ったこの子にお詫びなさい」

 夢子さんにそう言われると、ゲンガーとジュペッタは必死に芳野さんに頭を下げている。……まぁ、芳野さんがガスバーナーなんて物を持ってるのも原因だろうが。
あぁ、これが芳野さんの七不思議としての姿だ。流石、『呪う火炎少女』。迫力が違う。っていうか普通にポケモンとも戦えそうだから凄いよな。
芳野さんも脅すのを止めて、ガスバーナーは消えた。ゲンガー達もホッとしたようだ。

「よーし良い子達ね。じゃ、入り口から窓までの通路は開けてあげたわ。これ以上何かしようとは思わないで、真っ直ぐに外まで出なさい。じゃないと……」

 ん? じゃないと?

「彼等があなた達にとんでもない事をしちゃうわよ♪」

 ……何をさせられるんだろう。とか何とか思ったらゲンガーの後ろのドアが開いて、その先の窓も同時に開いた。
そこへ一目散にゲンガーとジュペッタは飛び込んで逃げていった。……ポルターガイストって、霊からしてみればかなり便利な力なのかもな。

「一件落着ね」
「いや、お見事です夢子さん。流石、いつも追い払ってるだけありますね」
「今回はあなた達が弱らせてくれたのが大きいけどね。雪花ちゃんもありがとう」
「あははは……気付いてなかったけど、私、幽霊に協力してたって事よね……」

 芳野さんも近付いてきて、笑いながら口がありがとうって動いたのが分かった。何とかなってよかった。

「それにしても、あなた達のパートナー強いのね。羨ましいなぁ、私も生前はトレーナーになりたかったのよねぇ」
「あぁそうだった。海歌もサンキュー、助かった」
「お疲れ様ユキメノコ。ありがとうね」

 お互いにボールにパートナーを戻して、ついでに俺は目を逸らして、雪花はこっちを滅茶苦茶見ていた。……次はボールを持った経緯か? やれやれ……。
あっと、ついでに芳野さんにビー玉の事を聞こう。これで、あと一個になる筈だ。
尋ねると、顎に指を当てて考えた後、何かを思い出したかのように芳野さんは教師用の机へと向かった。
ついて行くと、引き出しの一つを指差してる。開けてみると……あった、ビー玉だ。

「これで六つね。そうそう、あと一つの在り処なんだけど、心当たりが一つあったわ」
「本当ですか。それは重畳、あってくれると有り難いですね」
「多分間違い無いわ。それじゃあ芳野、もしまた何かあったら呼びに来なさいね」

 頷いた芳野さんに、また遊びに来る旨を伝えて理科室を出た。まぁ、来るのは大体昼間だから、芳野さんは眠そうなんだけども。
そして俺はまた心紅に飛びつかれた&リオルによじ登られてた。……どうやら、窓やらドアが勝手に開いたのが怖かったらしい。まぁ、確かにいきなりだったら驚くわな。

「ま、マジで心臓に悪かったし……」
「あはは、ごめんなさいね。でも、ちょっとは説明したつもりだったのだけど」
「ちょっとびっくりしちゃうかも、じゃ何が起こるか分かりませんって!」
「や、やっぱり夢子さんも幽霊さん、なんですね……」

 それは紛れも無い事実だな。人では出来ない力を行使出来るし、かと言ってポケモンである筈も無い。霊っていうのは、ポケモン以上に謎が多いな。
まぁ、それにこんなに暢気でいられる状況がそもそもありえないんだが。霊なんて居ないって言ってる奴に夢子さん達を会わせたいもんだ。
そして夢子さんに導かれるままに辿り着いたのは、屋上へと続く階段だった。

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「ここですか?」
「えぇ。私の七不思議って、彷徨った後に辿り着くのは屋上でしょ? それって、私の遺体があったのが屋上だからなのよね。だから、ここで間違い無いはずよ」

 なるほどな……でも、屋上は完全に鍵が閉まってる筈だから入れない。だから、その手前に置いてあってもおかしくないか。
階段を上って、屋上へ続く扉の前の踊り場の片隅にそれはあった。最後のビー玉だな。

「よし、これで全部だな」
「そうね。……はぁ、本当に斬新な肝試しになったわ」
「本当に最新式だよな~。普通に決まったルート巡って帰ってくる肝試しがなんでメジャーなのか分かったし」
「あれが一番お手軽にドキドキ出来るのよね。そうだ、ここまで来たんだし、私が一番好きな夜景でも最後に見ていかない?」

 夢子さんがそう言って屋上へのドアに手をかざすと、割とあっさりと扉は開いてしまった。……もう鍵要らずだな。
屋上に出ると、空には満点の星空が広がってた。それに町明かりも綺麗だし、なるほど、これは良い眺めだ。

「おぉ~!」
「これは……凄く綺麗ですぅ」
「でしょう? 基本的に夜にしか見れない景色だし、私以外だと、あなた達が見るのは初めてじゃないかしら。あ、生徒の中ではね」

 まぁ、基本的に夜に生徒がこんな所に入ったり出来る訳無いからな。いや、夢子さんの口ぶりからして、生徒以外は来てるのか?

「ふふっ、零次君? 今、生徒以外は来てるのかって思ったでしょ? 答えはイエスよ」
「えっ、やっぱりそうなんですか?」
「そんな、ここって立ち入り禁止にされてもう長い筈ですよね?」
「そうねぇ、もう12年かしら」
「それって、危険だからじゃないんですか? だとしたら、先生方は余計に近付かないと思いますけど……」

 いや、考えてみるとおかしいな。ここの屋上には、胸よりも高いフェンスもあるし、それに鼠返しもある。乗り越えてどうこうはまず出来ないだろう。
だとしたら、閉鎖の原因はなんだ?

「ここの閉鎖ってね、ちょ~っと男女の問題があったからなの。カップルがここで……って言えば分かるかしら?」
「それって、えぇ!? 学校でって事ですか!?」
「ま、マジで!?」
「そうなのよ。それで、人目の付かないここはそういう意味で危険だから閉鎖ってなった訳。因みに、そのカップルはその後も付き合ってたみたいだけどね」

 ……理由がしょうも無さ過ぎる。まぁ、それなら閉鎖されてもおかしくはないが。
逆に言えば、それだけここの景色にロマンがあるって事かもな。絶景なんだ、入れてくれた夢子さんには感謝しないとな。

「……ここから50年も町を眺めてると、随分様変わりしたと思うわ。それは、あなた達みたいな変わり者が現れるのも納得ね」
「あ、夢子さん酷いな~。俺達ほどイカしたヤング居ないジャン?」
「司郎、言い回しがなんか古いぞ」
「それに、黒子君とあんたが変わり者なのはクラス全員が認定済みよ」
「おいおい……」
「でも、零次さんも司郎さんも、凄く良い人ですよ」

 その心紅の一言に夢子さんはすぐに頷いて、雪花はちょっと溜めを作った後、ちょっとだけ頷いて見せた。

「こうして皆で夜景を見るのも、あなた達と出会ったからだしね。でも、今日はこんなところかしら」

 すっと夢子さんが指差した方を見ると、校門の辺りにクラスの奴等が集まってるのが見えた。……残ってるビー玉の数的に、あの中の何組が目標達成してるのかな。
でもまぁ、肝試しじゃない方向で結構楽しめたし、よしとするか。初めてトレーナーもどきな事も出来たしな。

「……私は、いつでもこの学校に居るわ。よければ、また遊びに来て。雪花ちゃんも、心紅ちゃんもね」
「そうですね……昔の学校の話なんかを聞きにくるかもしれませんね」
「あ、は、はい!」

 雪花達の言葉を聞いて、そして俺達の方を向いてにっこり笑った後、夢子さんの姿は薄れるように消えていった。……俺達もそろそろ戻らないとな。
最後に全員で夜空を見上げた後、俺達は屋上を後にした。全員が踊り場に出た後、扉の鍵が閉まった音がする。……また来ますね、夢子さん。

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後書き的な
はい、怖くない怪談というか肝試しを目指したらこんな感じになりました。どうしてこうなった…orz
まぁ肝試しネタというか心霊ネタはやってみたかったので、訓練作という事で流してやってください。
そしてまだまだ零次達の夏休みは終わりません。が、そろそろ後半戦へと向かっていきます。予定は…あと4話ほどでございます。(あくまで予定ですが)もう少し、お付き合い下さいませ。

次話へは[[こちら>サマーバケーション! ~キャンプとカレーと友達と~]]

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IP:180.53.48.71 TIME:"2014-03-22 (土) 23:07:34" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%82%B5%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%90%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%EF%BC%81%E3%80%80%EF%BD%9E%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%97%E3%82%B9%EF%BD%9E" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; rv:27.0) Gecko/20100101 Firefox/27.0"

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