writer is [[双牙連刃]] 本当に長いこと掛かりましたが、ついにサマバケ外伝ラストエピソードでございます! まぁ色々要望がありましたので、あの二人(というか1人と一匹)の物語にございます。 お楽しみ頂ければ何より。……官能表現がありますので、それは嫌だ! という人はブラウザバックを推奨致します! ---- 「心紅ちゃーん、そろそろお味噌汁こっちに持ってきてー」 「はーい。今行きますー」 お玉に掬ったお味噌汁をお椀に移して、それを三つ用意。あ、海歌ちゃんの分の大きなお皿も用意しておかなきゃ。 よし、準備は出来た。後は持っていって、皆が起きてくるのを待つだけです。 あ、玄関が開いて閉じる音がした。零次さん達が戻ってきたみたいかな。 「ふぅ……なんか最近蒼刃の剣、重くなってないか?」 「ある程度実力が上がれば、我もそれ相応の力で打ち込ませてもらうさ。そうでないと詰まらないだろ?」 「お帰りなさい、零次さん。それに蒼刃さんも」 「あぁ心紅、朝飯の準備手伝ってたのか。お早う」 「はい、お早うございます」 相変わらず、零次さんと蒼刃さんの朝の稽古は続いてます。零次さんももう慣れたのか、眠そうにしてる様子は無くなりましたけど。 私が起きる頃にはもうお二人は稽古を始めてるんで、朝の挨拶もいつもこの時です。……本当は、零次さんが起きた時に言ってあげたいんですけど……。 というか、挨拶以前にあの夏祭り以降零次さんとなんの進展もありません……昼間は学校へ行ってるし、夜も皆で寛ぐのが終わると零次さんは自分のお部屋に行っちゃいますし。 私は海歌ちゃんと蒼刃さんと一緒に居間で眠ってます。部屋の空きが無いそうなんでそうするしか無いんですよね。 「あら、どうしたの心紅ちゃん? 食べないの?」 「え、あ、頂きます」 ぼんやりしてる間に皆食べ始めてました。私も冷める前に食べましょうか。 ご飯を食べながら零次さんの様子を見てるんですが、気付いてくれるでしょうか? 「ん、この味噌汁美味い」 「あらそう? それ作ったの心紅ちゃんよ」 「へぇ、美味しいよ心紅」 「そ、そうですか? ありがとうございます」 よかった、零次さんに美味しいって言ってもらえて。前に少し味が薄いって言ってたのを覚えてたんですよ。 「まったくあんたはいいわね~こんなつくしてくれる子が傍に居てくれるなんて。ポケモンだって言ってもこんな良い子そうそう居ないわよ?」 「そんなのは分かってるって。心紅には感謝してるよ」 「ふむ、感謝か……」 「ん? なんだよ蒼刃」 「いや、別に」 蒼刃さんがそう言った後、私の事を見てます……。私はその、感謝されるのは嬉しいです。ですけど……。 まだ、零次さんから好きだって言われた事はありません。告白したのは私からだから仕方ないと言えばそれまでですけど、あれから何も無いとやっぱり不安になりますよ。 零次さん、今は私の事をどう思ってくれてるんでしょうか……。 「さてと、ご馳走さん。学校行く準備でもするか」 「あ、じゃあ片付けは私がしておきますよ」 「いや、そんな悪いよ」 「いいですよ。零次さんは準備してきて下さい」 「そうか? んー……分かった、すまないな心紅。ありがとう」 ……今はこうして、零次さんの為に何かする事で少しでも傍に居ようとする事しか出来ません。余計に寂しい気持ちになるのは分かってるんですけど……。 零次さんの姿が見えなくなると、小さく溜め息が漏れちゃいました。誰にも気付かれてない、ですよね? 「……心紅、大丈夫か?」 「え? ど、どうしました蒼刃さん。私はなんともないですよ」 「とてもそうは見えんが? まったく、零次も傍に居て気付かないとは、朴念仁な事だ」 あぅ、蒼刃さんにはどうやら気付かれてたみたいです……。 「なになに? どうかしたの?」 「いえ、大した事ではありませんよ母君。心紅が少し疲れてるように見えたので労っただけです」 「あら、そうなの? 心紅ちゃん、色々お手伝いしてくれるのはありがたいけど、無理しちゃだめよ? もう私にも娘みたいなものなんだから」 「そんな、無茶なんて。手伝える事があったら言って下さい、私、頑張りますから」 「も~、そんな事言われたら私、嬉しくなっちゃうわぁ。本当はお手伝いしてくれる娘と一緒に暮らすっていうの、ちょっと夢だったのよ。ほら、うちって男ばっかりでしょ?」 「あはは……まぁでも私は見た通りラティアスですから、思ってるのとは違うと思いますけど」 「そんな事無いわよ。さっきも言った通り、心紅ちゃんはもううちの娘。ラティアスだからって、そんなの関係無いわよ」 はわ、知子さんから急に抱かれちゃいました。ビックリしたけど、温かくて、とっても優しい……。 少しの間そうした後、片付けは大丈夫だから少しゆっくりしてって言って知子さんは台所へ。……お母さんに抱かれるって、こんな感じなのかなぁ……。 「……やはり母君はお優しい方だ。そして、心の芯の強さも持ってらっしゃる。零次が真っ直ぐに育ったのも頷けるな」 「はい……私も、そう思います」 私のお母さんも、知子さんみたいなラティアスだったのかな……そうだったら、嬉しいな。 「しかし、母君もああ言っているんだ。心紅、零次と親密に接してもなんの問題も無いと思うが?」 「え……えぇ!? な、何を急に言い出すんですか蒼刃さん!?」 「君と零次は交際しているのだろう? しかし、あの祭り以降君達にその様子は無い。交際している異性を蔑ろにしている零次にはもちろん非があるが、これはもう零次から動かないなら君が動くしか無いと我は思うが?」 「!? し、知ってたんですか!?」 「昔から、こと他者から恋愛の相談を受ける事は多かったのでな、そういった事にもある程度は精通しているつもりだ」 あ、蒼刃さんが!? 最近で1番驚きの事実かもしれないです。 ……私から積極的に、か。でも、あのお祭りの夜だってかなり限界まで勇気を出してああ言ったんです。あれ以上となると心の準備が、その、色々と掛かると言うか。 「恋とは儚いもの。相手を求めるだけでは成り立たないし、相手に求められるだけでも然り。だが、君達は互いを想い合っている。ならば、君から零次を誘っても零次が君を手放す事は無いと我は思うよ?」 「私は確かにそうですけど、零次さんは……どうなんでしょうか。告白も私からだったし……」 「ならば素直に聞いてみるといい。迷わず、躊躇わずに」 迷わず、躊躇わずに……蒼刃さんが言うと、なんだか本当に大丈夫なように聞こえるから不思議です。 ……そうですよね、躊躇ったり迷ったりしてても何も変わらないんです。それなら、きちんと零次さんとお話したいです。 『それなら、私も少しお手伝いしようか?』 「え、海歌ちゃん? 起きてたんですか?」 『うん、蒼刃の心紅と零次が親密に~の辺りから。蒼刃って結構詩人だね』 今の海歌ちゃんの一言で蒼刃さんの顔が真っ赤になりました。あれ、意識して言ってた訳じゃなかったんですね。 いや、その前になんで海歌ちゃんが!? いやまぁ今散々話してましたけど! 『心紅もそうだけど、私から言わせるとなんでもっと仲良くなってないか不思議だよ。こういう事に関しては零次も意気地がないというか』 「零次さんって……」 『忘れたの? 心紅の力で私と零次、それと心紅の心は繋がってるんだよ? いつもって訳じゃないけど、囁きみたいに聞こえてくる事って言うのもあるんだよ』 え……えぇぇ!? わ、私にはそんなの聞こえて来た事無いですよ!? い、意識すれば見る事は出来ますけど! で、でもそれって、海歌ちゃんにも気付かれてたって事ですか!? あ、あの時そっと抜け出したのって一体……。 『ま、零次の方は私に任せてよ。心紅、零次と話をしたいんでしょ? 今晩でいいの?』 「え、あ、えと……」 言葉に詰まっちゃったんで、頷いてみせました。今晩……晩!? 「海歌ちゃん!? なにもよ……」 「おーい海歌ー。ん、起きてたか。支度出来たから行くぞー」 「ルー……皆お早ぅ……」 !? な、零次さん!? お話してる間に準備出来ちゃったんですか!?」 あ、拳斗君も零次さんと一緒に起きてきたんですね。拳斗君、零次さんの部屋で一緒に寝てるんですよね。……いいなぁ。 って、そんな事考えてる場合じゃない! 海歌ちゃんを止め……。 『私はいつでもいいよ。行こうか』 「おう。蒼刃はどうする?」 「ん、我は今日は家に居よう。海歌だけでも対戦は問題無かろう」 「まぁ、元々バトルなんかする気無いからな。んじゃ、行ってくる」 「えぁ、行ってらっしゃいです」 ……どうしよう、何も言えないまま零次さんと海歌ちゃんを見送っちゃった。 海歌ちゃん、一体何をするつもりなんだろ? 今晩零次さんと話を出来るようにするって……。 ほわ!? 考え事してたら目の前に拳斗君が!? 「心紅お姉ちゃん、どうしたの?」 「な、なんでもないですよ! あ、拳斗君も朝御飯食べますよね? 知子さーん、拳斗君が起きましたー」 「あ、本当? ……あら? 海歌ちゃんは?」 あれ? そういえば海歌ちゃん朝ご飯食べていってないですね。よかったのかな? 「海歌なら零次と共に行きましたよ。今日は昼に雪花殿が何かご馳走するとか」 「あ、それで何も食べていかなかったのね。零次もそれなら何か言っていけばいいのに」 「単に母君に言うのを忘れていたんでしょう」 「ルゥ~、お腹空いた~」 「あぅ、す、すぐに用意してもらえると思うからちょっと待ってね」 私も手伝えばすぐに用意出来るだろうし、知子さんのところに行こう。……何故か拳斗君と手を繋いで。 ---- ……現在私は人の姿で、蒼刃さんと拳斗君と一緒にお散歩に出ています。理由は……拳斗君が外に行きたいって言ったからなんですけど。 因みに拳斗君は蒼刃さんの背に乗ってます。零次さんにもよく肩車してもらってるけど……これは少し違うかな? でも、のんびりお散歩してると大分落ち着いてきました。思えば、別に焦らなくてもお話するだけですもんね。そう、それだけ。 そういえば、朝は慌てちゃって思わなかったけど、蒼刃さん自身はそう言った話は無かったんでしょうか? 相談はされるって言ってましたけど。 「蒼刃さん、朝、恋愛の相談をよくされたって言ってましたよね?」 「ん? あぁ、まぁ」 「蒼刃さんはどうだったんですか? その、そういったお相手は?」 「……居た、には居たんだがなぁ……」 あら、なんだか蒼刃さんの歯切れが悪くなりましたね。何か訳があるんでしょうか? 「なんというか、その方の誘いを受けてしまうと色々なものがとんでもない事になってしまってな。断るしかなかったのだ」 「え、その方とお付き合いするだけでですか? どうして?」 「なんというか……その方がだな、我が仕える城の……王女だったという話でだな」 ……つまり、その方と蒼刃さんがお付き合いしていたとしたら……。 「そのまま誘いを受けて、あまつさえ交際等という話になってしまうと、我が、その、次期国王に召し上げられてしまってな……」 「す、凄いじゃないですか。どうして断っちゃったんですか?」 「我に一国の主になるのは荷が重すぎる。……まぁ、王女は美しい方だったが」 おぉ、蒼刃さんが赤くなってる。これは……レアですね。 でも王女様と恋って凄いなぁ。今じゃ絶対出来ない事ですよね。 ……ん? その王女様はどっちだったんでしょうか? 人? それとも……ポケモン? 「蒼刃さん、その王女様はどっちだったんですか?」 「……彼女は王族の人だったよ。まぁ、王族にも前にポケモンと添い遂げたお方が居たようだから、多少ポケモンの血も流れていたのやもしれないがな」 「うーん、さっきから聞いてたけどなんの話? 僕よく分からない」 あ、拳斗君にはまだ早い話だったかもしれないですね。分からなくても仕方ないか。 ……蒼刃さんの言う通り、ポケモンと人で子供が出来るんでしょうか。なら、私と零次さんでも……。 「蒼刃さん……本当に人とポケモンで、そういう事は出来たんですか?」 「二千年も前の話にではなるが、事実だ。恐らく今もそうであろうとは思っているが」 「そうなんですか……」 「……君の気持ちが堅いのなら、我は零次と君がそういった関係になるのも構わないと思うが?」 「で、あ、うぁ!? そ、そそそそそ!」 「わぁ、心紅姉ちゃんが真っ赤になった」 そ、そんななここことでででで!? で、出来る訳無いじゃないですか! そんな事したら……どんな感じなんでしょうか? わ、私もその、そういう事に興味が無い訳ではないです。寧ろ零次さんとなら……って、何を考えてるんですか私は! 「わ、私と零次さんの関係はそういうのでは無くてですね!」 「違うのかい? 交際するということは、最終的には添い遂げたいと思っているのだろう?」 「添い遂げるって……一緒に居たいですけど、そこまで親密になろうと思うのは贅沢かなって」 「ふむ、零次は色恋に関心が薄いのだし、君が頂いてしまっても問題無かろうと思うがね」 い、頂いてしまうって! 何をさせるつもりなんですか蒼刃さん! ……零次さんと……。だ、駄目です、頭が熱くなってきました。 「ま、どうするかは夜までに考えておくといいさ。別に今日行動しろとまでは言わないよ」 「だ、だから行動とか頂くとか、そういうんじゃないんですぅ!」 「……今日の心紅姉ちゃんお顔が色々変わって面白いね」 「うっ、はぅぅ……」 頭の中がいっぱいで拳斗君の視線に全く気がつきませんでした……。は、恥ずかしくなってきたです。 でも……零次さんと一緒に、一つになれたら……どれだけ幸せなんでしょう。 ラティアスである私がそんな事を思っても意味が無いって思ってました。零次さんは人で、私とは違う存在だから。 でも、違うとしても、零次さんと一緒に居たい。これから先もずっと、ずっと。私が居る限り、傍に居続けたい。 だからあのお祭りの夜に勇気を出したんです。……あの勇気を、もう一度……。 「今度はすっごく真剣だ。大丈夫?」 「ふぇ、あ、大丈夫ですよ! 大丈夫……」 あ……蒼刃さんが私をチラッと見てニヤッと笑ってます。……まさか、今の話は私を焚きつける為に? う、うーん、結果として私は蒼刃さんにのせられたってことでしょうか? でも、今回はお礼を言わないといけないのかもしれません。 私と零次さんの事を応援してくれてるってことですもんね。皆が応援してくれてる私達は幸せ者です。 今晩、か……。海歌ちゃんが手伝ってくれるとは言ってましたけど、どうなるんでしょ? うぅ、考えるとまたドキドキしてきました。どうしよう、今からこれだと、零次さんの顔を見たらどうなっちゃうか分からないですぅ。 ---- ……そろそろ時間かな。何も無ければ、零次さんが帰ってくる筈です。 あ、玄関から音がした。……今はいつも通り、いつも通りお帰りなさいって言えばいいんです。 「ただいま~」 「お、お帰りなさいです」 「あ、う、うん、ただいま、心紅」 あ、あれ? なんだか零次さんの様子も変なような気が……。 「その……いや、今はいいや。着替えてくるわ」 「あ……」 海歌ちゃんを出してそそくさと部屋に戻っちゃいました。私に何か言おうとしてたみたいですけど、何を? これは、何があったか海歌ちゃんに聞かねばなりませんね。 「あの、海歌ちゃん?」 『零次なら、心配しなくても後からなんでああなってるか分かるから平気だよ。それからどうするかは、心紅に任せる』 「えっ、それってどういう事ですか?」 『まぁそう焦らないで。あ、蒼刃~』 あぅ、蒼刃さんと話始めちゃいました……。本当に、一体何をしたんでしょう? 「ん~……にーさんどうしたんだろ?」 「え? 拳斗君、零次さんがどうかしたんですか?」 「にーさんから出てる波がね、いつもよりおっきく揺れてるの。心紅姉ちゃんと話した時に特に」 「え、私と?」 「うん。なんだろ?」 私と話した時って事は、やっぱり私と何か関係あるってことで間違い無いんですよね。 「ふぅ……」 「あ、零次さん」 「うん、あぁ、その……心紅」 「は、はい」 「晩飯食った後だけどさ、ちょっと話しないか? その、俺の部屋で」 「え!? あ、えと、いい、です、けど」 ま、まさか零次さんから!? し、しかも零次さんの部屋で!? こ、これは全然予定してませんでした。いや、私も話をしようとは決めましたけど、どこでまでは考えてませんでしたね。 零次さんの部屋で、零次さんと一緒に……。 「皆揃ってるしご飯よー!」 「ひょわぁ!?」 「あ、あら? 驚かせちゃった? ごめんね心紅ちゃん」 「い、いえ、大丈夫です」 ば、晩ご飯……これを食べたら私は零次さんの部屋へ……。 って、そんな事よりお手伝いしなきゃ。せめて盛り付けられたものを運ぶだけでも。 「やぁ、皆お早う~」 「……親父、今まで寝てたのか?」 「帰ってきたの朝の2時だし三日徹夜だったからなー。これならまだ早い方だよ」 「あなたはもう……あまり無茶しないでよ? 今はなんの研究してるか知らないけど」 「いやー集中しちゃうとどうもね。それより今から夕食かい? お、皆揃ってるなら良い時間に起きてきたかな」 箕之介さん、今まで寝てたんですね……。やっぱり変わった名前です。葛木 箕之介(みのすけ)って。 それじゃあお皿を増やしてと、これで準備は出来ました。 「パスタか、なんだか久々だね」 「たまには作らないと、作り方忘れちゃうから」 「何故にボンゴレビアンコ?」 「海歌ちゃんリクエスト!」 あぁ、納得です。海鮮食べたくなったんですね海歌ちゃん。 じゃあ頂きますって事で皆食べ始めました。……蒼刃さん、これも聖なる剣で食べられるんですね。 とりあえず食べながら……零次さん、一体なんの話をするんでしょう? 海歌ちゃんが手伝うって言ってた事が原因なら、私とのこと、ですよね。 零次さんの方を見ると、偶然視線が合いました。なんだか恥ずかしくなって伏せちゃったけど、まさか零次さんも私を見てるとは思いませんでした。 よし、零次さんを待たせちゃいけないので早く食べましょう。でもこのパスタ美味しい……今度教えてもらおうかな。 「……ご馳走様でした。とっても美味しかったです」 「あらよかった。結構自信はあったけど言われると嬉しいわ」 「ん、俺もご馳走さん」 「あ、じゃあお皿は私が片付けますよ」 「お、おぅ」 やっぱり零次さんの様子が変です。いつもはこれだけで照れる事は無いんですけど、今は確実に照れてます。 居間から出る前に私をちらっと見ていったって事は、終わったらすぐ行ったほうがよさそうです。 お皿をシンクに置いて、知子さんには申し訳ないですけど行かせてもらいましょう。 零次さんは……もうお部屋みたいですね。後を追いましょう。 「零次さん、失礼します」 「あぁ、入ってくれ」 沈みかけた夕日が差し込む零次さんの部屋……零次さんは、自分の机の前にある椅子に座ってました。 「あー……とりあえずこれでも飲んでゆっくりしてくれ」 「え? あ、これってフルーツオレじゃないですか」 「あぁ、そういえば心紅と一緒に飲んだなと思って買ってきたんだ」 あ、零次さんが手を怪我してた時のお散歩で。そういえば、あの時に飲んだのもこれでした。 本当に二人だけになるのはあの時以来ですね……まぁ、あの時も司郎さんと拳斗君が見えなくなってついて来てたらしいですけど。 缶を開けて傾けると、あの時と同じ味が口の中に広がりました。ジュースの中ではこれが1番好きですね。 「ははっ、なんだかあの公園のこと思い出すな」 「零次さんもですか? 実は、私もです」 あの時私は、自分の過去を零次さんに打ち明けて、自分の心を零次さんに見せたんでしたね。 思えば、あの頃からもう私の気持ちは零次さんを想ってたんです。大切な、大好きな相手として。 「……なぁ、心紅。あの時から俺の事を、その……」 「はい、好きでした。私を助けてくれて、始めて一緒に居てくれた人。こうして、一緒に居ようって決めたのもその頃でした」 私の言葉に、零次さんは頬を赤くして照れ隠しに頬を掻いてます。私も、少しだけ熱く感じます。 持っていた缶の中身を一気に飲み干して、それをことりと机の上に置くと、また零次さんの口は開かれました。 「海歌に今日言われたんだ。俺は、心紅の事をどう思ってるんだ。それをちゃんと心紅に伝えてるのかって」 「海歌ちゃんがそんな事を……」 「……どうも俺は、こういうの苦手でさ。いざこうなると、なんて言っていいか分からないんだよ」 「それは私も……!? れ、零次さん!?」 椅子から立ち上がった零次さんが、私を……抱きしめてくれてます。 「簡単に、大好きだって、言えばいいのにな……」 「零、次、さん……んっ……」 すっと目の前に零次さんの顔が来て、お互いの口が繋がりました。とっても、温かい……。 目を閉じて、その温かさをもっとしっかりと受け取ると、今度は零次さんの舌が私の方に。拒まなくても……いいんですよね? 触れ合った舌と舌を絡め合って、ゆっくりと、深い口付けを続ける。私と零次さんが、繋がっていく。 「心紅……俺は、こういう風にお前を好きで……いいんだよな?」 「……はい。だって私は零次さんの事が好きで、大好きで……愛してますから」 零次さんが部屋のドアの鍵を掛けると、私は零次さんに、優しくベッドに寝かされました。 私、いいんですよね? 零次さんの、そういう相手になって……。 ---- 「さ、先に言っておくと、俺こういう事の知識全く無いからな?」 「わ、私だって人がするこういうのは知らないですよ。ポケモンのは、その、前に見た事ありますけど」 零次さんが服を脱いで、仰向けに寝てる私の上に覆い被さっている状態です。こ、これだけでも私の鼓動は過去最高の勢いで早まってます。 裸の零次さんが目の前に……少し視線を落とすと、零次さんのあれが見えちゃう。あれが、今から私の中に……。 「でもこれ、初めては女性側はとんでもなく痛いらしいよな? 少しでもそれは和らげたいが……」 「そうしてくれると私もありがたいです。けど、どうやって?」 どっちもこういう経験が無いとなると、何をどうすればどうなるかが分からないです。 「そうだな……じゃあ、あの、心紅のを確かめてみても、いいか?」 「それって、……ですよね?」 零次さんが顔を赤くしながら頷きました。やっぱりこれからそうなるって事は、私のあそこを確かめるって事ですよね。 正直恥ずかしいですけど、零次さんにだけなら、いいかな。でも、私だけっていうのは不公平ですよね? 「いい、ですよ。ただし、終わったら私もさせてもらいます」 「俺の、を?」 頷くと、少し慌てた様子でしたが零次さんも頷きました。なら、今は零次さんに身を委ねます。 零次さんの体が後ずさっていって、あそこの近くに手が置かれました。 今、零次さんに見られてるんですよね……うぅ、は、恥ずかしい……。 零次さんの右手が浮いて、それから……。 「ん、ぅ……」 「うわ、柔らか……」 人差し指が私の割れ目をなぞって、ぞわぞわしたような感覚が体中に流れます。体を洗う時に自分が触れてもならない感覚。きっと、好きな人に触れられるから起こる不思議な波。 零次さんが指を動かす度に体は素直に反応して、少しだけ体が跳ねる。なるべく声を出さないように堪えようとしてるけど、そんなに長く持ちそうにありません。 割れ目を少し広げて、零次さんの指が私の中に入ってきたのが分かります。 「凄いな、柔らかくて吸い付いてくるみたいだ」 「やぁ、い、言わないで……恥ずかしいですぅ……」 「恥ずかしがる事無いさ。綺麗だよ、心紅……」 あっ……零次さんの指が私の中で動いてる。ゆっくり動くそれが気持ち良くて、体の力が抜けていくのが分かります。 それでも何処か安心していられるのは、傍に居てくれてるのが零次さんだから。安心して、私の全てを預けられる。 つぷりと零次さんの指が抜けて、私の割れ目からはとろとろと液体が溢れてるのが分かります。私が、零次さんを受け止められるように出される愛液、でしたね。 「大丈夫か? 心紅」 「平気です。零次さん、優しかったですから」 「そっか。じゃあ、俺も約束は果たさないとな」 私が体を起こすと、今度は零次さんがベッドに横になってくれました。……これが、牡の……男の人のなんですね。 実は、見るのだけはこれが始めてじゃないんです。前にお兄ちゃんが、その、シてるところを偶然見た事がありましてですね……。 でも、お兄ちゃんのそれよりも近くで見てるのもあると思いますけど、お、大きいです。これが、私の中に入るんですね。 そっと触れると、びくんと大きく揺れました。私の割れ目がそうであるように、零次さんのこれも敏感なものってことですよね。乱暴にはしないようにしなきゃ。 熱い、触れてるだけで脈が分かるくらいに。こんなのが入っちゃったら、私の中、溶けちゃうかもしれません。 「うっ、くっ」 「あ、大丈夫ですか?」 「へ、平気だ。心紅は我慢してくれたんだから、俺もこれくらいどうってことない」 我慢してる零次さんがなんだか可愛く感じて、なんだか勝手に笑顔になっちゃいました。 ゆっくりと指でなぞって、少しだけ握ってみると硬くなってるのがよく分かります。根元の方には、零次さんの精子が作られる場所が。前に読んだ司郎さんの教科書の中にあった名前は、精巣だったかな? これは柔らかいまま、中に二つの丸いものがあるのが分かりますね。 あ、先端から透明な液が出てきました。精液が出てくる前に確か、こういうのが出てくるんでしたね。なら、ここで止めておきましょう。 「はぁっ……もう、いいのか?」 「はい。それに、もう零次さんも限界だったみたいですし」 「ま、まぁ……」 きっと、そのまま続ければ零次さんは射精してたんでしょう。それでスッキリするって事はお兄ちゃんから聞いてはいましたけど……出すのなら、私の中へ注いで欲しかったんです。 大切な初めてだから、私の中を零次さんで満たして欲しい。でも、零次さんに無理はさせたくないんです。だから……。 零次さんに起きてもらって、また私が寝そべり零次さんを迎えます。繋がって、一つになる為に。 「心紅……」 「零次さん……」 体を寄せて、口付けを。零次さんのものは、私の割れ目に当たって今にも入り込んできそうです。 口が離れると、割れ目に力が掛かって熱いものが入り込み始めました。入口を広げながら、ゆっくりと零次さんが私の中に入ってくる。 「あっ、はぁぁっ」 「大丈夫か? 不味かったらすぐに止まるから……」 「そのままで、大丈夫、です。でも、お願いです。私を……抱きしめてて下さい」 零次が頷くと、包むように私と零次さんの体は重なりました。そして、もっと奥へと零次さんのものは進んできます。 零次さんが頷くと、包むように私と零次さんの体は重なりました。そして、もっと奥へと零次さんのものは進んできます。 あ……零次さんが触れたことで分かりました。零次さんが着いたのは、壁。私の純潔を守るもの。それを零次が破れば、私はもう純潔とは呼べなくなる。 でも、構いません。私の時間は、私の全てはもう、零次さんに捧げるって決めたんですから。 心配そうな視線を送る零次さんに笑い掛けること。今の私に出来る事はそれくらいですね。 来るだろう痛みに備えて、目を瞑りなるべく体から力を抜きます。ゆっくりと息を吸って、リラックスすることを意識して。 ぐっと力が掛かって、私の中で何かが弾けました。そして、弾けた場所から、大きな傷みが体に伝わっていく。 「ぁっ、あぁぁ!」 涙が自然に溢れて、零次さんの体を必死に抱きしめてました。痛みの恐怖を少しでも和らげる為に。 荒くなった息を整えて、零次さんの温かさを感じる。……少しだけ、落ち着いてきました。 「……頑張ったな、心紅。ごめん、辛い目に遭わせて」 「平、気です……やっと……零次さんと、一つになれたんだから」 頭を撫でてくれる零次さんの手の温もりが愛おしくて、重なり合った体の重みが愛おしくて、私の中で脈打つ零次さんが愛おしくて……。 私は今、零次さんの全てが愛おしく感じます。あなたを、愛しています。 「心紅……愛してる。これからもずっと、ずっと一緒に居よう」 「……約束、ですよ」 「あぁ、約束する」 零次さんは絶対約束、破りませんもんね。なら、ずっと一緒ですよね。 零次さんの腰が浮いて、また降りてくる。その度に私の中を零次さんのものが深く深く入り込んで、その熱が私の意識を溶かしていく。 でもそれが心地良くて、それに対する怖さは無いです。身も心も預けられる相手が出来たんですから。 「ふあ、ぁぁん! 気持ち、良いですぅ!」 もう、自分が何を言ってるのかも分からなくなってきて、何も考えられなくて、何もかもが真っ白になっていくみたいです。 ただ、零次さんがしてくれるキスは優しくて、私を抱きしめてくれる手は温かくて、重なった鼓動が心地良いのははっきりと分かります。 一際深く零次さんのものが刺し入れられたと思ったらその動きは止まって、代わりに何かが私のお腹の中に注がれて、広がっていきます。 熱いくらいに温かくて、それでお腹が一杯になって、溢れていく。私と零次さんの約束、その……証。 脈打っていた零次さんのものがその動きを止めて、私の中から引き抜かれました。私の中から溢れて、零れ落ちてもまだお腹の中を満たしてるそれが、私と零次さんの子供になるかもしれないと思うと、なんだか不思議です。 「はぁっ、はぁっ、ふぅ……」 「……私の中、零次さんでいっぱいですよ。子供、出来ちゃうかもしれませんね」 「そうなったら……一緒に、頑張るか」 「はい♪」 横を向いた体制になった私の前に零次さんも横になりました。一緒に、笑って。 体を寄せ合って、目を閉じました。零次さんも私も疲れちゃったし、周りの片付けをするのは……起きてからでも大丈夫ですよね? ---- 「……なんだかなぁ、あれだけ疲れた筈なのに、きっちり訓練に間に合うように目が覚める俺に脱帽だ」 「ま、まぁ、皆が起きる前に片付けられたしよかったですよね」 まだ夜明けが来る前、部屋に残った臭いを消す為に窓を開けれるだけ開けて一息ついてるところです。 私達の目が覚めたのは一時間程前で、それからは大変でした。 まず、汚れちゃってる自分達を綺麗にして、それから部屋の中をお掃除。さらに大変な事になっちゃってるベッドのシーツを洗ってと、やる事はいっぱいでしたよ。 まぁその間に蒼刃さんが私達の気配に気付いて起きてきて、今日の訓練は休みだって伝えてきたんですけど。居間に戻る時に笑ってたんで、私達に何があったのかは察されたんだと思います。 「にしても蒼刃の奴、まさか心紅を焚きつけてたとはな」 「お、応援してくれたって事ですよね?」 「まぁ、そうなんだろうな。……まさか、親父とかに話してないよな?」 「そ、そうだったら気不味いですね……」 「まぁ……そのうちバレるかバラす事にはなるけどな」 「そうですね……」 ベッドに腰掛ける零次さんに寄り添って、お互いに笑い掛けます。 今までは一緒に居るだけ。これからは、一緒に歩いていくんです。明日へと、それからもっと先へと。 あ……朝日が昇ってきました。始まるんですね、新しい……今日が。 「よし、とりあえず朝飯食べに行くか」 「はい!」 零次さんの部屋から出て、居間へと向かいます。あ、でもその前に。 「零次さん」 「ん、どうし……」 少しの間だけ唇を重ねて、余韻を残しながらゆっくりと放す。……ずっと、ちゃんと言いたかった一言があるんですよ。 「お早うございます♪」 「あ、あぁ……お早う、心紅」 照れた零次さんに笑いかけて、今度こそ居間へ。あ、今日は結局部屋で休んじゃったから朝ご飯のお手伝いしてない。知子さんには申し訳ない事しちゃったです。 「「『おめでとう!!!』」」 「……は?」 「へ? 皆、どうしたんですか?」 いやえっと、居間に入ったんですけど、知子さんも箕之介さんも海歌ちゃんも起きてました。 これは、まさか!? 「ねーししょー。にーさんと心紅姉ちゃんがなったふーふってなぁに?」 「ふむ、それはだな」 「ちょっと待てぇ! 何を教えとるんだ蒼刃!?」 「いやー昨日心紅ちゃんにうちの娘だって言ったけど、まさかこんな風に本当に娘になっちゃうとはねー」 「零次も少し前までは子供だと思ってたけど、もうそういう事をする歳になってたんだなぁ……」 「な、なんでこんな事になってるんですか!?」 『いやだって、私は二人と心繋がってるからどうやっても分かっちゃうし』 「何を今更。事に及んだのなら騎士として、いや、男として責任を取るのは当然の事だろう。それを隠してなんとする」 ぜ、全部知られちゃってるって事ですか!? しかも肯定的に受け取られてる!? 「お、親父も母さんもいいのか!? 俺が言うのもなんだけど、心紅ラティアスだし俺学生だぞ!?」 「「別に?」」 「そ、それでも道徳的に問題があると言いますか、とにかく問題じゃないんですか!?」 「身内だけの話にすれば全然問題無いし、心紅ちゃんならまぁいっかって感じよ私は」 「私と知子が知り合ったのも学生時代だし、私も特に問題に感じないけど」 そ、それでいいんでしょうか? なんだか色々ダメな気がするんですけど。私が言うのもおかしいですけど。 「零次、これから先何があっても心紅ちゃんを悲しませるんじゃないよ? 私達ももちろん協力するから」 「そんなの当然だ! もう一生心紅と一緒に居る! って俺はなに言ってるんだ!?」 「れ、零次さん……」 「うむ、我が息子ながら天晴よ零次! もし心紅ちゃんを捨てたりしたら地獄巡りの刑だからね」 「とにかく今日は二人の門出って事でお祝いしよう。零次は今日休みだったか?」 「あ、あぁ……」 ……なんだか私達を置いて、今晩のお祝いの事で皆が盛り上がり始めちゃいました。 なんというか、知子さんも箕之介も凄い人だなって思いました。本当は有り得ないことを、こんなにすんなり受け入れちゃうなんて……。 零次さんと顔を見合わせて、可笑しくて笑っちゃいました。でも、なんだかこれからもここで上手くやっていけそうな気がします。 ……私は、素敵な人達に出会えましたよ。知子さんも箕之介さんも優しくて素敵な人達ですし、ポケモンである私と添い遂げると約束してくれる零次さん。皆、私を受け入れてくれました。 だから、私はこれからもここで生きていきます。皆ともう会えないかもしれないけど、選んだ生き方を後悔しないで生きていくって決めたから。 ありがとう、兄さん、父さん。そして……――さん……。 ---- ~後書き~ っという訳で、サマバケ外伝もこれで最後でございます。……なんか外伝で1番短い気がするけど気にしないでおきましょう。 これにて、サマーバケーションにて企画していたお話全てが終了したんですが……実はまだ色々書きたい事が後から増えていたりするんですよね。なんだかこの物語のキャラクター達、とても動かし易いんですよ。 でもその話が形になるかは現在未定です。……誰かこいつらを使って話を書きたいって方いませんかね? 一言言って頂けたらどんどん使ってほしいなーなんてw ではでは、これから先の零次達の幸せを祈りつつ、次の作品まで……ご機嫌よう! #pcomment IP:119.25.118.131 TIME:"2013-07-12 (金) 22:17:25" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%82%B5%E3%83%9E%E3%83%90%E3%82%B1%E5%A4%96%E4%BC%9D%EF%BC%93%E3%80%80%E6%B0%B8%E4%B9%85%E3%81%AE%E8%AA%93%E3%81%84%E3%82%92%E3%80%81%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%A8" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 10.0; Windows NT 6.1; Trident/6.0)"