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コガネから来たあの子 の変更点


#include(第五回帰ってきた変態選手権情報窓,notitle)
この内容には逆レイプ表現が有ります
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作者は[[ヤシの実]]でした。これでシリーズ全部制覇……かも?
 
 太陽が高く上る雲の少ない青い空の下、暖かい気温と何処からでも漂うコーヒーの香りが広い街を包み込んでいる。
 そんな中でも、照らされる日差しの恩恵を受ける事が決して叶わない場所がある。いくつもの高い建物に阻まれて薄い影が長く支配する灰色の狭い路地裏がある。
 細い道の先には枝別れしたり途中で行き止まりがあったり、時に気がつかない内に方向を見失うような複雑な道順があるなど、まるで迷路みたいな構図をしていた。この土地に訪れる者を間違いなく迷わせる魔の路地裏。
 そこを抜けると一直線になった大通りがあり、常に人が行き交う中で馴染んだコーヒーの匂いがよりいっそうに濃くなっていく。
 街の大通りはいくつもあり、どの道も全てある場所に向かって続いていた。そこを歩く者なら当然のように目に着く建築物がこの街の中央に存在していた。
 見上げると白い雲を貫きそうな高い塔、巨大な街を動かすエネルギーを日々絶え間なく生み出しているその土地の象徴でもあった。
 ここはミアレシティ。芸術と言う文化が最も栄える、カロス地方の中心に位置する街だ。
 話の始まりはそんな栄え在る街の狭い路地裏での事だ。

「ごめんなさい」
 人通りの少ない灰色の路地裏で一匹のレパルダスが済まなそうに小さく告げられる。突然の出来事だった。
 蒼色の瞳を呆然と開いたまま相手を見つめ返す。ゆっくりと伸ばすその手は寒気がするのかガクガクと震えていた。
「な、なんでなの……?」
 レパルダスは答えず黙って目を背けた。
「僕、僕の何処か不満だって言うんだい。これまでいろんな事をしてきたし、君に嫌われるような事もしてきてなかったよ。それを、何で……」
 答えを求めるように悲しげな眼差しを向けるも、レパルダスはそれを更に避けるように下を向いてしまった。
「別にあなたの事を嫌いって訳じゃないのよ。あなたはキュートだし、魅力的だし……」
「それじゃどうして、別れようなんて言うんだい!?」
 別れる理由がないのに別れると告げられた雄は声を荒げる。
「君との関係は今まで順調だったし、これからの先も上手くいく気がする。そうだろう?」
 一方的とは言え最もな理屈を並び立て別れる事はないと必死に説得をする。
「えぇ、そうね。私に大してあなたは何時も紳士的で素敵なポケモンだったわね」
「分かっているのなら、別れたい理由くらい教えてくれないか?」
 蒼い瞳のポケモンは真剣な面持ちで理由を尋ねた
「それは……その……」
 中々打ち明けてもらえず、やがて尻尾を力なく垂れ下げて、擦れるような声でレパルダスの名前だけを呼んだ。
 哀れに思ったのかレパルダスは、一息を吐いて意を決したのか顔をまっすぐに向けて告げた。
 その答えに蒼い瞳のポケモンは絶句した。だがやがて納得したかのように表情は次第に冷めていった。
 レパルダスはもう一度だけ謝ると踵を返し、路地裏の角を曲がって姿を消してしまった。
 最後までその場を微動もせず残された蒼い瞳のポケモン、ニャオニクスは一匹で立ち尽くし、ぐったりとうな垂れた。
 あまりにも唐突に起こった別れ話。決して長い付き合いではなかったが、脳裏に彼女と付き合ってきた今までの思い出が浮かび上がってくる。
 恋人を紳士的にを扱い、世間話で花を咲かせた事や綺麗な場所で一緒に食事した事、ベンチの上で寄り添いながら夕日を眺めてその後にベッドの中で甘ったるい一夜を過ごしてきた事。そんなつい最近の出来事が遠い昔のように感じながらニャオニクスは悲しい瞳をしたまま踵を返していく。
「また、なんだね」
 悲しい声でニャオニクスは呟いた。

「あのね……ボクのエモンガが君のデデンネとしびれたいってさ」
「……え?」
 とある喫茶店の外で男性と女性の意味深なやりとりが聞こえたような気がした。
 そんな事など意識するのも面倒と思うほどに雄のニャオニクスはひどく落ち込んでいた。そんな彼に小さい体格をしたポケモンが近づき、慰めるように小さな手で背中をポンポンと叩く。
 ニャオニクスのレントンは小さい友人を一瞥するだけで、何度目になるか分からない溜息を吐いた。
 そこはカロスタワーの南方、プランタンアベニューに位置する「カフェ・アラモード」の看板を掲げている店がある。
 いくつも存在するカフェの中で主にブディック、洋服に関心のあるお客達が利用すると言われている。レントンの主人の行きつけの店でもあり、主な休日とかはよくここに訪れている。それぞれのポケモンを連れながら最新のブティックの話に花を咲かせていた。
 コーヒーが乗るテーブルで関心のある会話で盛り上がる主人の足元には、上のテンションとは逆に彼はまるでテーブル掛けに隠れるようにその場に座ったまま出てこないでいた。
「何時まで落ち込んでいるんだよーレントン?」
「もう、放っておいてくれないかな……」
 慰める小さい友人にそっけない態度を取り、レントンはそっぽを向いた。
 背中を叩いたのは雄のデデンネのチーフだ。アンテナのようなひげにアンテナのように丸っこい耳元をした小さく愛らしい種族だ。
「お前は何も悪くはないんだ。その子だってそう言っていただろう?」
「それでも僕は彼女に振られたんだよ。今度こそって、彼女の気持ちを理解して、沢山打ち解けて、色んな事をして過ごしてきたんだ。喧嘩なんて一度も無かったんだ」
「そうだよな。お前は彼氏としてどこでデートをしてもきちんと彼女をエスコート出来ていたんだ。それを振ったあの女が一方的に悪いとしか言いようがないだろ。だからな、もう落ち込むなって」
「落ち込むなって、これをどうやって落ち込むなって言うんだ? 振られたのは今回に限った事じゃないんだよ僕の恋愛は!」
 レントンは突然とチーフに振り返って強く言い放った。
 恋仲を裂く切欠があったわけではなく、これと言った落ち度もなかったと言える。しかし現実に起きた事は否定しようが無い。レントンは昨日の彼女に言われた一言が傷となってやや涙目になっていた。 
「ホントこれで何度目なのかしらねこの子」
 チーフの背後で同じように心配しに来たのはチーフと同種である雌のデデンネだ。そんな彼女の一言がレントンの心にグサリと突き刺し、傷心の余りにその場で蹲ってしまった。
「こ、こらオクサン!」
「あらま、傷つけちゃったかしら?」
 雌のデデンネ、オクサンはうっかりしたと軽く謝る。決して悪気はなかったが、レントンのダメージは相当なものだった。
「ま、まぁ女なんて石ころの数と同じだと言うし、振られたくらいで落ち込むなよ。お前のようないい男なら女なんてそこらの石ころを拾うようにまた見つかるはずだろう。なぁ?」
「あぁ、君の方は余裕があってそう言えるからいいさ。チーフにはとっても素敵な彼女がいて、付き合ってもう長いんだろう。しかも将来はチーフの奥さんになる約束もあるんだろう? 拾った石ころが最高の彫刻品で、僕なんかいくら拾い上げても吹き飛ぶ砂粒のように次々と僕の前からいなくなるんだ……!」
 チーフと付き添っているオクサンとは恋仲で付き合っている期間も長い。だがトレーナーが別々で本来は接点がなかったのだが、トレーナー同士の交流の盛んで出会う機会も多く、次第に互いに惹かれあった仲なのだ。
 それにくらべ、レントンは幾多も恋愛する機会はあってもそれが長続きする事はなかった。一時に見る甘い夢のように儚く消えて、再びひとりになってしまう。何度経験している事とは言え、決して慣れる事など無くその度に心に傷を負っているのだった。
 そしてつい最近振られたばかりであり、レントンは目に浮かべていた涙の粒は大きくしていた。さらには癇癪を起こすようにテーブルの下で喚いた。
「あぁそうさ、そうだよ! チーフの言うとおりさ。僕は何の問題はなかったんだ。常に最高の彼氏になるように尽くしてきたんだ! それなのに彼女は……一方的にさ……」 
「それはさ、きっと心境の変化なんだよ。例えばだがよ、お前よりも他に良い雄が出来た……ンガッ!?」
 必死に説得するチーフの背中をオクサンが強く蹴り上げた。
「このバカ!」
 オクサンの言うとおり、悪気の無いフォローが返って逆効果になってしまった。
 チーフの言葉に衝撃を受けすぎてついに涙を流してしまう。すべてを否定されたかのようにレントンの心はハンマーで殴ったガラスのように砕けてしまい、同時に放心状態にもなってしまった。
 顔面から落ちたチーフは申し訳なさそうに頭を摩る。
「あー、悪かったよレントン。悪かったから機嫌を直してくれないか……」
「あぁ、なんて事だ……僕以外の男が出来ていたんだ彼女には……!」
 チーフのもしかしたらの話を鵜呑みにしてレントンは一人でかって被害妄想に入る。その場で蹲り、泣き始めた。
「おいおい、今のは仮の話だ! あー、それで傷つけた事は本当に申し訳ないよ。けど、そうとは限らないだろ。やっぱり心境の変化でお前とは吊り合わないあの女はそう思ったんだよ」
「そうよ、貴方ほど良い男が他の何処にいないわよ。浮気なんて絶対無いって、自分にもっと自信を持つべきよレントン」
「いやそんなの嘘だ。彼女は僕を裏切ったんだ! 他に良い雄を見つけてお互いに気に入って、だからあんな事を言ったんだ……」
「あんな事って、あの女は別れ際に何か言ったのか?」
 思い当たる節をチーフが尋ねてくるるが、レントンは長い耳を押さえて体を震わせながら蹲る。
「おいおい、どうしたって言うんだ。しっかりしてくれよなぁ……」
「ちょっと、どうしたの突然大声出して。チーフとケンカしてるの?」
 チーフが懸命に宥めようとする中、テーブル掛けが捲られてて、そこからレントンの主人の顔が覗き込んで来た。芸術家の格好をしたトレーナーだ。チーフは違うと首を必死に振って否定する。
 オクサンも困り顔で首を左右に振って違うと伝える。トレーナーの足元で蹲って震えるレントンを見て怪しそうに見ながらも渋々納得をしてテーブル掛けを元に戻そうとした。
 その時、捲られた隙間から一匹のポケモンが首を出してきた。口に木の枝を咥え、小金色の体毛と耳元には燃えるような炎をイメージしそうな毛並みが生えている。フォッコと言う種族の特徴だ。
「もう、路地裏で見つけてきた女なんて相手にしてきたのが良くないんだよ。レントンは女のお付き合い方よりも相手を見る目を養ったほうが良さそうね」
「なんだサクラか、お前も話を聞いていたのかよ」
 サクラと呼ばれたフォッコは口元の枝をポリポリと齧りながら、拗ねているレントンを見やる。
「テーブルの下であんだけ喚けば、カフェの外側だって聞こえてくるわ。せっかくの楽しいお話が台無しになったわ」
「そうかい、済まないねサクラ……」
 レントンは顔を上げず呟くように謝罪する。 
「振った女の事で悩むのは、カフェで頼んだコーヒーがカフェオレよりも不味かったと後悔するぐらい馬鹿げている。ま、女のアタシがそれを言うのもおかしいかもね」
「だったら黙っていろ。今の彼を茶化さないでくれないか?」
「アタシは彼を慰めているだけよ。これで何度目になるかも分からないんだからもう少し慎重になりなさいとアドバイスしてあげてるの」
 これまでレントンが付き合ってきたポケモンは多々あり、彼自身も数え切れない程の恋愛経験者だ。しかし、それが長く続いた試しは一度もなかった。サクラの言うとおりなのかもしれない。
 新しく気に入った相手を見つけたら自分からアピールしていく列記とした女好きでもある。振られてもそうした経験を彼は何度も重ねている為にサクラにそう言われる要因になっていた。
「……そんな事、誰を選ぼうが僕の勝手じゃないか」
 言うとおりかもしれないが、余計なお世話だと疎ましげにサクラを睨み付ける。
「あら、せっかくの親切に言ってあげているのに」
 テーブル掛けを潜り抜けてサクラが入ってくる。
「ねぇサクラ、あなたさっき楽しいお話が台無しになったと言っていたんだけど、一体だれと会話していたの?」
「あぁ、レントンと同じニャオニクスの女の子よ」
 同じニャオニクスと言う言葉を耳にしたレントンが少しだけ瞳を覗かせる。
「あれ? サクラのトレーナーってオクサン以外他にいたっけ?」
「えぇ、でもその子ある事情からずっと前からカロス地方から離れてて、たしか……ジョウト地方のコガネシティって言う場所に住んでいたみたいなの。アタシもトレーナーに聞かされるまではずっとしらなかったわ」
「へぇ……僕と同種なんだその子。でも、ジョウトってすごい遠い所になんで一人で過ごしていたの?」
 同種と聞いて興味を持ったレントンがサクラの話に食いついた。
「ジョウトってトレーナーが言うには独特の文化があって、そっちに移り住んだ叔父と叔母が二人っきりで寂しがらないようにと預けられていたみたいなの」
「は~ジョウトか~。カロスにはない"わふう"とか言う物が沢山あって、なんでも神秘的だってテレビで言ってたな」
「私、エンジュシティに一度で良いから行ってみたいな。テレビで見た"まいこはん"の衣装や踊りがとっても綺麗だもの」
 チーフもオクサンもテレビでジョウト地方の町々を取材した番組を見てジョウト地方に強い関心を持っている様子だ。それはレントンも同じだった。
「あそこには二つ塔がある事でも有名な町なんだよね? ひとつはスズの塔で、もうひとつは火事で焼けてしまった"焼けた塔"だっけ」
「まぁ、元気になったようねレントン。そうよ、スズの塔にはジョウト地方で伝説とされているポケモンが舞い降りるともされる塔ね。虹のような羽色をした鳥らしいわ」
「伝説なんてどれも昔話みたいなものだろ。?」
「それを見た人間がそのポケモンを祭り上げる為にスズの塔を建てたんだろう。だったら実際に見たんじゃないのかな?」
「さぁ、そんなの人間が頭の中で作り出したポケモンだろう。人間っていうのはそういう作り話が大好きだもんな」
「まぁチーフったらムードの無い……」
 神話を信じないチーフの言葉にオクサンは呆れてしまう。
「ほんとね、信じる気がないならあなたの好物のオボンの実をほっぺにでも詰め込んでいなさい。私たちは彼女に会いに行って話しの続きをしましょう」
「彼女って、ニャオニクスの女の子の所にかい……?」
「そうよ。レントンと同じ種族なら会って是非話してみると良いでしょ。振られた女の話とかね」 
 サクラは悪戯にレントンを茶化し、テーブル掛けの外に出て行く。
「おいおい、冗談じゃないよ他人事だと思って!」
 怒るレントンとそれに続いてオクサンがその後を追いかけていく。椅子に座っているトレーナー達はテーブルの上で雑誌を広げて可愛らしい下着の色やデザインなどの話で盛り上がっている様子でレントン達の事はちっとも気にしてはいないようだ。
 サクラを追ってカフェから四角い模様の入った道路に出ると洒落た街頭の下に佇んでいるポケモンがいる事に気づく。
「あそこ。あの子よ」
「まぁ、あの子がそうなのね」
 サクラの言うそのポケモンを一目見た途端だった。レントンは少し前までレパルダスに振られて傷心していたはずの心に火が燈ったかのように胸がときめいたのだ。街頭に寄り添うそのポケモンの横顔を見て、可愛らしいと思ったからだ。
 体毛の殆どが蒼く覆われているレントンに対して相手の体毛は綺麗な白さをしていた。
 白と蒼の多さの違いがはっきりと見て分かり、丸みを帯びた二つの尾とオレンジの加わった小金色の瞳が種族の雄雌の違いを表している。
「綺麗な子だなぁ……」
 退屈そうに立ち尽くしているだけでもその雌としての魅力を醸し出している。その時、雌のニャオニクスの口元から何かが突然膨らみだした。それは大きく膨らんだかと思った瞬間、音も無く割れてしぼんだ残骸が彼女の口の周りに付着した。
「おまたせ!」
 サクラが声を掛けるとそのニャオニクスが振り返る。
「話は済ませたん?」
「えぇ、女に振られてグズッていた所をあやしていたら着いてきちゃったわ。ごめんなさいね」
「ちょ、誰が泣いていただよ。君が会いに行こうって誘ったんじゃないか!」
 サクラのとんでもない一言を必死に否定する。だが泣いていたのは事実だ。
 ふと相手のニャオニクスと目が会い、急に恥ずかしくなって目を合わせたまま固まってしまった。その可愛らしさ顔を真正面で見ると尚綺麗だった。
 慌てて前髪を両手で整えようとすると、サクラを通り過ぎてレントンの方に近づいてきた。
「え、あぁ、僕はレントン。よろしく」
 慣れた仕草でこちらも落ち込んでいた気持ちを切り替えて自然な笑顔を作りだし、握手を求める。
「ピッチや……」
 レントンは一瞬、「えっ」と間の抜けた声を出してしまう。ピッチと名乗った雌のニャオニクスは口元に付着した物をそのままに握手を返さず、名前だけをあっさりと答えた。
 こちらをジロジロと見るような視線にやや戸惑いながらも得意の笑顔を崩さずに愛想を返す。
「サクラの友達だよね。楽しいお話を邪魔してしまったようで申し訳なかったね」
 ピッチは伸ばした手をじっと見たまま、口周りに付着した物体を再び口に戻して再び噛み始めた。何を食べているのか気になってしまう。
 こちらの言葉になんらかの反応もないまま、時間が過ぎる。
「あー、ピッチって良い名前だね。可愛らしくて素敵だと思うよ。ジョウト地方のコガネシティって所からこっちに戻ってきたんだ、僕もその地方にはとても興味があるんだ。是非聞かせてくれないかな。みんな歓迎するよ」
 無反応に怯まず、まず相手の名前を褒めて次に住んでいた所を興味心身に尋ねる。そして最後に自慢とも言える最大の笑みを相手に差し向けた。今まで付き合ってきた元彼女達の中でこの笑顔を嫌う者は一人もいなかった。
「ふ~ん、そうなんか」
「ジョウトの文化は独特で美しいものが多いと聞いたんだ。神秘的な建物にが並んで、美味しい料理も沢山あって、その上に季節によって変わる自然の背景が何よりも素敵なんだってね。僕も一度目にしてみたいよ」
「よー知っとるんやな。ここの土地じゃ見れへん物ばっかりやからな。よっぽど珍しく感じるんかい」
「ふふ、君の喋り方ってとても個性的なんだね」
 とても少し前まで振られて泣いていたとは思えないレントンの巧みな切り替えにオクサンは関心し、サクラは逆に呆れていた。相手の特徴つかみ、すかさずにその個性を褒める。なんともお手の物だった。
「それに、その首に巻いているそのー……スカーフなんだけど、よく見ると何か絵柄が入っているね」
 ピッチの首に巻いている黄色のスカーフの端にエレブーの模様が入っている事に気が付き、尋ねると相手の目元がにピクッと動いた。
「こっちじゃ全く見かけないんだけど、確かエレブーだっけ。黄色のスカーフにエレブーを入れるデザインなんて変わった趣味をしているんだね」
 珍しそうに見つめるレントンに、ピッチは気のせいか不愉快そうな顔になっている。
「もしかして、ピッチの住んでいた所のお洒落アイテムなのかな。黄色と黒の色合いなんて初めて見るよ。今口にしているその風船みたいな物もジョウト地方のお土産なのかな――」
「それはウチの事バカにしとるんか?」
「えっ……?」
 ピッチの予想外の反応にたじろぐ。不愉快そうに睨み付けられてレントンは何か悪い事を言ってしまったのかと焦りが滲む。サクラが溜息を交えながら話に加わってきた。
「ここではあいての個性を尊重するのが普通なの。レントンはちょっとお馬鹿さんかもしれないけど、決してピッチの事を悪くは言ってないわ」
「なんや、このボウズてっきりウチの事を貶しているんかと思ったで?」
 サクラのフォローにピッチは納得したように鋭くなっていた目つきを元に戻した。
「ボウズ……?」
 初めて聞く言葉に大いに戸惑う。それこそがむしろ馬鹿にされているような気がした。
「私、オクサンって言うの。始めましてピッチ」
「ん、よろしゅうなオクサン」
 相変わらずな独特な声色でありながら、オクサンには普通に挨拶を交わす。
「ここにはいないけど、もう一人同種のチーフっていう子がいるの。ジョウト地方から来たあなたの事を話していたの。だから是非一緒にお話しましょう」
「ええで、ここに居ても退屈なだけやし。案内してや」
 オクサンはピッチを連れてカフェ・アラモードに戻っていく。サクラもその後を着いて行きながらレントンに一瞥する。
「行くわよ」
「う、うん……」
 こんな事は初めてでレントンは釈然としないままその後を追っていく。
 今までに相手にこんな反応をされる事はなかった。恋愛の長続きこそは出来なかったが、この方法で相手の心を掴め損なった事などなかったからだ。
 カフェに戻ったレントン達を前にトレーナー達は飲み物を啜りながらお喋りを続けていた。
 自分のトレーナーの膝の上で暇そうにしていたチーフに声を掛けた後、誰もまだ利用していないテーブル席に集まっていた。レントン、ピッチ、サクラは椅子に乗り、小柄のチーフとオクサンはと言うとテーブルの上に上がって話に興じていた。 
 第一印象でつっけんどんな態度だったピッチだがレントン以外とはうまが合う様子だった。
 話の中心であるピッチをチーフやオクサンが色々質問をしてくると彼女は「ええで」と愛想良く話してくれた。コガネシティにはラジオ塔以外にも狭いながらも活気で溢れている地下の繁華街やとなりの地方を行き来する"リニア"と言う高速の乗り物があると話した、ゲームコーナーというとても騒がしい人間の娯楽があるなどと色々話していた。
 住む地方の影響で好みの木の実や言葉の話し方などの違いが沢山あった。彼女は辛い物が好きで甘い物好きのレントンとは反対だった。
 レントンも何か質問をしようとしたが何故か気まずい状態のままになって、楽しそうに話すピッチの観察ばかりをしていた。会話が出来ずただ見ているだけでも興味は尽きなかった。
 ジョウトの観光名物にいかりまんじゅうがあって"あんこ"の甘さを具体的に教えてくれたりしてくれた。お返しにとチーフがミアレガレッドの上手さを長々と喋り、話を盛り上がらせていた。
 後で教えてもらったピッチの独特的な喋り方である"かんさいべん"はコガネなら人間ポケモン問わず皆が普通に喋っている言葉だと興味深かい話もしてくれた。 
 会話が弾むに連れてピッチが時折魅せる女の子らしい仕草にも、レントンは次第に魅了されていた。  
 初めて会う同種は、今までレントンが知り合ってきた彼女達とは一段と全く違う魅力を醸し出していたる。
 毛並みの整った細長い脚、楽しそうに揺れる二つの尾、そしてややきつそうな黄金色の目つき。会話こそ殆どしなかったレントンだったが自然と雄としての本能がこう考えるようになっていた。ピッチの事を知りたい。彼女を深く知り得たいと、そう考えていた。
 ピッチと知り合ってからレントンは、毎日のように彼女にアプローチを掛けるようになっていった。

 ピッチがカロス地方に来てから1ヶ月の時が経ち、彼女はそこそこミアレシティでの暮らしに馴染んできた頃だ。。
 これまでに暮らしていた土地の違いで彼女が気に入る事を見つけるのは難しかった。ピッチは友達の前だと愛想は良いのにレントンと一緒にいる時だけはぶっきらぼうな態度だった。
 最初は第一印象が悪かったからじゃないのかと危惧したが、それでもレントンは何度でもアピールを繰り返し、時にそっけなくされてもめげずに友好的に彼女と接し続けた。その甲斐あってがピッチとの距離感は若干縮まり、ふたりっきりでデートをする約束を持ちかける事が出来るようにまでなっていた。
 レントンはこの日、トレーナーの許しを得て首元に可愛らしい蝶ネクタイを飾ってもらってベールの広場へと向かった。ピッチとはそこで待ち合わせをしていた。途中の水路に反射する自分の身だしなみをチェックして自信を持って歩き出した。
 ベール広場に到着するとベンチに腰掛けている人をちらほら見かける中で、中央の銅像の近くにすでに到着していたピッチを見つけた。
「おまたせピッチ」
 第一印象を大事にと爽やかな挨拶をする。
「ん、ようやく来たんかいな」
「はは、待たせちゃったかな? 予定よりも早く着いた筈だったんだけど……」
 デートの日、予定時間より早く到着して女の子を待っているのがレントンのルールだった。だが予想外な事に彼女の方がずっと早くベール広場に来ていて遅刻してしまったんじゃないかと困惑の色を隠しきれなかった。
「ええで別に。コガネのポケモンはせっかちなんや。だからウチも丁度ここに着いたばかりや」
「そ、そうかい。それなら良かったよ。てっきり待たせたのかと心配したよ」
 レントンは改めて蝶ネクタイの位置を直す。ピッチとの始めてのデートで若干緊張をしていた。
「まぁウチものんびり待つのは性に合わんからこのタイミングで着てくれると丁度ええし、ほな行こうか」
「あ、待ってよ」
 出会って間もなくすぐにピッチは動き出した。レントンは慌ててその後を着いていく。
 カフェ・ツイスターを通り抜けながら二匹はお喋りを始めた。
「ねぇ、ピッチはいつもそのスカーフを身に着けているよね」
 ピッチは何時も首辺りにエレブーの絵柄が入ったスカーフを着用している。チーフ達と揃っている時もずっとそれを身に着けていた。
「そうやな、けどそれがどうかしたんか?」
「前から気になっていたんだけど、どうしていつもエレブーの模様が入っているスカーフを身に着けているのかなって思ってさ」
「あぁ、これな……」
 レントンがスカーフの事を尋ねると、ピッチがコガネシティでトレーナーの両親に購入してもらってからずっと愛用しているものだったらしい。先月、レントンがそれについて変わっていると指摘した為に侮辱されたのかと勘違いさせてしまったらしい。
 なんでもそのスカーフはコガネの住民が応援しているスポーツ球団のマスコットキャラで、球団名は"えれぶーず"と言うらしい。球団ファンの人にとっては常識アイテムらしい。レントンはスポーツの事はよく知らないが、彼女が野球のファンであることは分かった。
 改めて見て個性的でピッチにとても良く似合っていると言うと、彼女はお世辞など言わなくても良いとあっさりと返されて呆気に取られた。容姿やお洒落を褒められて喜ばないポケモンは今までいなかったからピッチの反応は新鮮だった。
 その他にも通りのファッション店に展示されているポケモン用のサイズの服を見つけてレントンは足を止めた。ピッチも振り返ってまじまじと見つめるが大して興味が無さそうにその場を立ち去ってしまう。
 あまりの反応にレントンはもしかしたらピッチが大してお洒落が好きじゃないのかと疑ったりしたが、もうひとつ通りのファッションの店では人間の少年用に作られた黄色と黒い線が引かれたデザインの帽子に目を輝かせている様子を見せていた。彼女のセンスは全くもって理解に苦しむが、とりあえずピッチが黄色と黒のラインの入ったお洒落が好きなんだろうと知った。よほど"エレブーズ"が好きなのだろう。
 寄り道に裏路地を進み、途中で買い物袋から細長いパンをはみ出している人間にぶつかりそうになり、慌ててその場を後にした事をピッチにどんくさいと叱られたりした。
 近くのカフェに通り過ぎる際にほのかなコーヒーの香りがしてレントンは心地良さそうに嗅いでいて、ピッチにも意見を求めると彼女は「ウチはコーヒーの香りなんて全くわからへんし、サイコソーダーの味かミックスオレの味にしか興味あらへん」とそっけなく返された。
 サウスサイドストーリーに差し掛かると、黒いビルにトレーナープロモスタジオのロゴが入った巨大なモニターの前に来ていた。
 モニターの中で雌のピカチュウが煌びやか可愛い衣装でトレーナーらしき日焼けした女性と一緒に華麗に踊っている様子が映し出されている。ピッチが何の真似かと尋ねてくる。
 カロス全土で流行っていて、沢山のトレーナーがポケモンと一緒に出演してプロモーションビデオを作り友達とかに自慢する為のものだと説明した。もちろんレントンも経験者でなんどかプロモーションビデオをトレーナーと作ったことがあった。
 詳しくは分からないが、自分をアピールするに絶好の機会だからとレントンは喜んで出ていた。
 ピッチにもプロモーションビデオを作ってみないかと聞いてみるたが、彼女は「こないなキラキラした格好して皆の前で晒すくらいやったら"ポケスロン"で腕試しした方がよほど楽しいわ」など一蹴し、これにも大した関心を見せなかった。"ポケスロン"とは何の事だかレントンには分からなかった。
 色々見て回って気が付いたが、ピッチとは住んでいた地方のせいなのか趣味が正反対である事にレントンは戸惑っていた。道路の中央の木陰で一休みをしながら、どうしたら彼女と共通の話が出来るのか、どうやったら彼女に興味を引かせることが出来るのかと頭の中で奮闘していた。
 このデートは自分に気を引かせるだけじゃなく、ピッチの好き嫌いを知る為のものでもあった。だからどうしても彼女の心を掴む材料が欲しかった。
 やがてレントンはこの日の為に用意をしていたデートプランを実行しようと考えていた。
 レントンは自分のオススメのスポットを勧めようとした。車と人通りの多い街路を進んでミアレの中央に向かい、夕方にはミアレタワーの頂上へと誘い、町を一望できる絶景の場で夕日が沈むまで互いの事を語らう。夜になると街中が電気で燈り、芸術のように美しく照らされる街の光景をピッチに披露して彼女のハートを掴む計画だった。
 いけると思ってレントンは早速ピッチをそこに誘おうとした。だがピッチはこれらを全て断ってしまった。この日の為に用意していたプランさえも蹴られたレントンは大変ショックを受けて、ひどくうな垂れた。
 かわりにピッチの方から来てもらいたいと言い出してきたのだ。詳しい話を聞くと、なんとピッチの方からもデートするのに良い場所を見つけていたらしく、そこに二人っきりになりたいと言われて着いていく事にした。
 まさか相手の方からリードされるとは思ってはいなかった。甘い期待を胸にしながら誘われた場所に、レントンは絶句した。
 そこは人気の無い袋小路だった。ミアレシティの裏路地は入り組んだ場所が多いが、そこはレンガの雑居ビルの壁に囲まれて日が殆ど当たらない所で、壁の至る所には人間がやったと思う落書きがあり、隅っこには何処の物かもわからない空っぽのポリバケツが横たわっていている。人目につかないような暗い場所だ。
 人に全く使われて無さそうな場所に、レントンは連れてこられた。
「わぁ、ピッチの言う良い場所ってここなの?」
「そうや。アンタとふたりっきりに慣れる為にウチがこの場所を見つけてきたんや。ここなら誰も入ってくることもあらへんしな」
「あー、うん、そうだね。君らしいって言うか、今まで色んな所を回ってきたけどこんな所があるなんて思いもよらなかったよ……」
 満足そうに彼女は言うが、正直どう考えてもデートスポットには向いていないし、野良ポケモンが住処にしていそうな場所でレントンにとっては不気味だった。
「でも、なんでこんな場所が良かったんだい? なんだかここ殺風景だし、ピッチでこういう場所の雰囲気が好きなんだ」
「雰囲気?」
 ピッチは首をかしげた。
「ここは君が勧めたデートスポットなんだろう?」
「あ~、ちゃうちゃう」
 突然の否定に今度はレントンのほうが首を傾げた。
「ここはあくあまでウチのお気に入りの場所なんや。来てほしいのはもっとここからもっと先の方や」
「え、まだこの先に君のオススメのスポットがあるの?」
「スポット……よーわからんけど、こっちに隅っこに抜け穴があるやろ?」
 ピッチの指す場所にアートな落書きの下に空のポリバケツがあるだけだが、レントンが困惑しながら彼女に振り返るも、そこを探せ言わんばかりに顔をクイっと上げるだけ。
 不潔なポリバケツに触れるなどプライドが許さないが、有無を言わせないピッチの態度にしぶしぶとそれに触れてほんの少しだけ動かした。
「エスパーならサイコキネシスで動かせばええのに、律儀なやっちゃな~」
 ケタケタと笑われそうだったと気づかされて余計な恥じを掻いてしまったが、不潔な物をどかした先に壁の劣化なのか、小柄のポケモンサイズならようやく通れそうな穴を見つけた。
「ここを潜り抜ければいいのかい?」
「他にどうやってこの壁越えるんや」
 それもそうだと思った。雑居ビルの壁に囲まれていて飛行タイプでもないと超えられそうにない。何が悲しくてデートの最中に行き先の怪しい穴をくぐらないといけないのかと心の中で愚痴る。
 本当にピッチは同種でありながら考えている事が理解できない。だからこそ、全てを知って心を掴みたいという欲望もまたレントンの中に沸いてくるのだ。
「ほら、後がつっかえとるさかいはよ進みや」
「うぅん、ちょっと狭いよ……」
 レントンが穴をくぐると、行き成り石ころでごつごつした手入れの全くされていない庭らしき場所にでた。
 近くには、もう使わなくなってから大分時間が経過したと思うような廃れた雑居ビルがポツンと建っている。よくよく見れば洒落た看板が飾ってあり、古びた雰囲気がまるで古城を思わせる。
 看板に何が書いてあるかまではポケモンのレントンには分からないが、どうやらホテルのようだ。
「よーやく着いたな。ホナ、入ろうか」
「入るって……ここに?」
「そうやで」
 そう言ってピッチはさくさくとホテルの中へと入っていく。
 お城のようなホテルはデートスポットには有りかもとレントンは思った。彼女は良いセンスを持っているかもしれない。しかし、何故ここに誘い込んだのだろうと疑問にも思った。
 ピッチに連れられて一階の割れたガラスから中に入ると、そこは殆ど暗闇の中だった。電気の入らないホテルは暗くて不気味で窓から入ってくる日差しだけが内部を照らす便りだった。
 幸いにもニャオニクスである二匹は暗い場所でも目が利いた。四足で階段を駆け上とホコリがたって、どのくらい人の手入れがされていないのかがわかる。
「ねぇ一体何処まで上るんだい?」
「黙って着いてきーや。お楽しみは一番上の屋上でやるんや」
「お、お楽しみか……」
 どんどんホテルの上に昇らされてやや不安があったが、ピッチのお楽しみに胸をときめかせた。ホテルの屋上でどんなデートでどんな事を語らうのだろうかと、もしくは何も語らず寄り添い合って夜空の月を眺めながら甘い一時を過ごすのだろうか……
 そう考えると顔が自然と綻んだ。
「着いたで。ここやレントン」
 ホテルの屋上の階層に到着すると、通路には清掃具が大雑把に投げられて散乱していた。部屋のドアはどれも閉じられていたが、一室だけ開いたままのドアがあった。
 ピッチはドアの前で壁に手をやり、レントンの前でにんまりと不適に微笑んだ。
「ほな、入ろうか……」
「あぁ、うん」
 レントンは誘われるがままに部屋の中に招き入れられた。
 部屋の内部はやはり誇りと家具が散らかって大分放置されたままの状態で、窓も一部ガラスが割れていてそこから入ってくる風がカーテンを揺らしている。
 外は夕日が掛かっていて、本来ならば今頃はピッチとミアレタワーの上で夜を待って美しい街の光景をうっとりと眺めているはずだったのだ。
 今じゃそこら中の家具にホコリの積もったホテルの室内で彼女と広いふかふかのベッドの上で他のビルの隙間から覗くオレンジ色の日が落ちるのを眺めていた。
 しばらくピッチとはこれと言った会話はなかった。彼女の言うお楽しみとやら一体何なのか察しもつかず、汚れた枕に腰を掛けてゆっくりとしている。
 どうにもこれまで付き合っていた女の子とは一際違ってピッチはムードと言うものをどうでも良さそうな感じがあった。
 このままじゃ空気が重くなるだけだと思ったレントンは、とりあえず話をしようと考えた。
「あー、そういえばピッチさ」
「なんや?」
 念力で鏡を宙に浮かせてながら覗いていたピッチが返事をする。
「この間ノースサイドストリートでサクラと一緒にミアレガレットを食べたって、オクサンから聞いたよ。僕もさ、あの味は大好きなんだ。初めて口にした時なんだけど、最初はチーフの悪ふざけでで僕に覚えたての技"ほっぺすりすり"をしてきたんだ。僕は麻痺しちゃって体がビリビリで大変だったんだよ。彼は年の割には子供っぽい所があってね、フフフ。その時、チーフのトレーナーが気づいて僕にお詫びにってミアレガレットをくれたんだ。その時のさっくりとした感触と甘さに麻痺しているのに夢中にかぶりついていたんだ。まぁ、その後チーフはオクサンにこってりと絞られたけどね、フフフ。それ以来からミアレガレットのファンになって休日に僕のトレーナーがガレット屋の前を通ったら必ず強請る様になってしまったんだ。フフフ……」
 お菓子の話は女の子は必ず食いつく。甘い物は誰だって好きだが、中にはダイエットしている子もいて不機嫌にさせてしまった事もあったが、ピッチなら心配はいらないだろう。
「実はさ、ミアレガレットは人気のあるお菓子らしくて食べたいなら早く人の列に並んでおかないとすぐに売切れてしまうんだって。だからピッチも強請るなら早めに言った方が絶対にいいね。そうじゃないとさ、ようやく次って時に品切れってになってしまって泣くはめになるんだ。前に僕が経験した事さ、ハハハ」
 ピッチは鏡を少し下ろして、レントンのほうに視線を配る。
「その他にも、スタイリッシュとか言うのを目指している人間は決まって沢山ミアレガレットを買っていくらしいんだ。顔が広いとこのミアレシティでは何処行っても人気者になれるらしくてね。例えばファッションのお店やサロンとか、ホテルでもサービスとかしてもらえるんだって。僕にはよく分からないけど、ポケモンでもスタイリッシュになれるかな。あぁ、そうだ今度トレーナー達が次の休日にレストラン・ド・フツーで食事をしようって話になってね、君とはそこでゆっくりと食事をして語り合いたいな。ほら、ベール公園の近くに広場を一望できる高い木をみつけたんだ。今度一緒にどう――」
「なぁレントン。お喋りしている所すまんけど、サクラから聞いたんや」
 話を遮られピッチが見つめてくる。
「えぇっと、何の話かな」
「アンタ、ウチと出会う前に女に振られてひどぅ落ち込んどったらしいな。しかもそれに限った事じゃないことも聞いたで」
「さ、サクラがそんな事を? 確かにそんな話をチーフに愚痴った事はあったけどさ……」
 お喋りなサクラをが余計な事を喋ったのだろう。恥ずかしくてサクラを恨みたい気持ちを抑えつつレントンは笑って済まそうとした。
「ハハハ、確かにそんな事もあったっけ。だけどそんなのもう過去の話なんだし、もう気になんて……」
「レントンは前の女忘れたくて、それでジョウトから来たウチに近づいて、慰めが欲しくてウチに近づいたんやろ?」
「い、いやそんな理由で君に近づいたんじゃ……」
 ピッチは枕から腰をあげて、じりじり距離を詰めるようにレントンにゆっくりと近づく。
「じゃぁ、ウチとはただのお遊び目的で近づいた言うんか?」
 意地の悪い事を言いながら距離が詰まる。黄金色の瞳が困惑するレントンを見下ろしている。
「僕はただ君とお近づきになって、その、友人として一緒になりたかっただけであって、やましい気持ちなんてないんだって」
 咄嗟に嘘をついてしまった。ピッチの言う事には一部当たっている事があったのだ。
 前の彼女の事を忘れたい。それをピッチと新しく付き合う事で失恋のキズを癒したいとも思っていたのだ。それを見越されているようで胸の鼓動が高鳴っていた。
「そうなん、それじゃ元カノの事はもう気にしてへんの?」
「そ、そうさ……誰があんな女なんか。こっちの気持ちを踏み躙るような奴だったんだ。一生懸命尽くしたって言うのに、一方的に振った女なんてぇ――」
 言葉の最中で声が詰まり、怒りの感情が顔に出てしまった事に気が付きそれを隠そうとしたが今更遅かった。振ったレパルダスの事を口に出すにつれ、ふつふつと怒りが湧き起こってしまっていのだ。
「ほれみぃ、ウソつくなやアホ。元彼女の事を引きずっているってな」
「うっ……」
 案の定簡単にばれてしまった。エスパータイプで心が読んだ訳ではなく、単純にレントンが分かりやすい男だけだった。
「……ごめん」
 図星を付かれた顔を見られてピッチがニンマリと笑むと目の前で屈み込み、目線が同じになる。
「ウソが下手なんやな。その眼を見ればエスパータイプじゃなくても分かるでアンタの心の中が」
「君の言うとおりだよ。やっぱり僕は今でもちょっと引きずっているみたいだ。今に限った事じゃないと分かってはいても、やっぱり別れてくれと言われる慣れないんだ」
 オレンジ色の夕焼けを見ながら心の内を吐露する。
「捌け口なんて欲しくないと言ったら嘘になる。でも僕はそれ以上に君の事を知りたかった。決して自分の為だけとかじゃなくて、色々回ったり話をしたりして一緒に過ごして、君と最高の思い出を作りたいと思っていたんだ……」
「意地らしいなぁ、でもそういうとこ可愛らしいなぁ……」
 ピッチはレントンの足元に腰を下ろしてくると顔をグッと近づけて、まるで子供を見るような目で微笑みかける。鼻息がやんわりとヒゲに触れてピクピクと揺れ、蒼い手が頬を撫でてくる。
「え、ちょっとピッチ……?」
「アンタの事、気に入ったわ」
「それは嬉しいけど、どういう意味かな?」
 頬を撫でられて擽ったそうに顔を持ち上げる。
「ここだけの話にしといてな。レントン、ウチがなんでこの古びたホテルにアンタを誘ったかわかるか?」
 密着してくるピッチの突然の問いにレントンは戸惑う。
「ウチはな、男と遊ぶのが趣味やねん。コガネに住んでいた頃からこれだけが生きがいでな、そんで時間かけてこの手頃な場所を見つけたんや」
「遊ぶ?」
 随分あっさりした理由にレントンは首を傾げる。 
「ぼ、僕も女の子と遊ぶのは好きだけど、どうせなら外で遊ぶほうが好きだよ。デートするなら沢山のスポットがあるしね」
「はん、そういうのとちゃうわアホ。なんでウチがこんな何も無いオンボロな建物でデートせんとあかんのや?」
「えっと……てっきりピッチがこういう人気の無い廃墟で過ごすのが好きなんじゃないのかなっと思ったんだけど」
「はぁ……鈍いなぁレントンは……女と付き合っていたなんてウソなんちゃうか?」
 的外れな反応にレントンは意味が分からず困惑してしまう。
「女と男がする事言うたらひとつしかないやろ?」
 鈍すぎると言わんばかりに半笑いする彼女。その顔を見て、ようやくその意図を理解することが出来た。
「それってもしかして、あっ……!」
 察した途端、ピッチが両手でレントンの顔をしっかりと掴んできたのだ。
「よーやく理解できたようやな、ふふ。レントンったら、ウチが思うとったよりずっと可愛いらしいでぇ……」
 突然の事に驚いて声を上げそうになったが、ピッチのまっすぐな艶やかな瞳に捕らえられて思わず固まってしまった。彼女の瞳の中で自分の顔が反射している。
 普通じゃない様子の彼女に慌てて制止しようと試みる。
「ま、ま、ま、待ってよ。お互い知り合ってからまだそんなに経っていないし、こっちも心の準備が……!」
「仕方がないやろ。カロスに移り住んでから随分ごぶさただったんや。それに、そないな顔されるとこっちもたまらんで……」
 激しく動揺するレントンを見た彼女は掴んだ獲物を離さんばかりに力をこめて来る。痛くはないが、少し怖かった。相手は雌なのにまるで飢えた野獣のようだった。
「うぅんっ……!?」
 その時、急に顔中に熱が込み上げてきて意識が浮ついていく。鼻をくすぐる甘ったるい香り、体毛越しに伝わる雌の柔肌の心地良さに溺れそうな感覚にとらわれた。
 次第に胸の鼓動と呼吸が乱れて口の中の潤いが渇き、蕩けそうな蒼色の瞳が彼女の顔をしっかりと捉えている。もう彼女以外の部屋の家具や外の世界を意識出来なくなっていた。
「その気がないなら無理やりにでもそうさせたるわ。ウチな、この技が大の得意やねん。ウチの見た目で近づいて男にはこれで骨抜きにしてやったんや」
 得意げに言うピッチだが、レントンは呼吸を荒くしたまま彼女の話など聞いてはいなかった。
 ピッチはレントンの頭に手を回して抱き寄せてくる。顔が彼女の首周りの体毛に被さり、雌のフェロモンが濃く伝わってくる。体毛に隠されたふっくらな胸の感触にも興奮を覚える。
「あぁ……これって、メロメロ……?」
「あはっ、もう気が付いたんかぁ。ウチのは強力やからな、せっかくの良い男が台無しになっとるで……」
 殆ど骨抜きにされたレントンは目からハートの色を浮かべ、自分の意思に関わらず口を開いた。
「ピッチ、触って……いいかな……?」
 無意識に手が膝の上に腰掛けている綺麗な足元に伸びていく。ピッチはそれを受け取ると自ら誘導して腰に手をかけさせる。
「ええで。振った女の事なんて忘れさせてあげる……」
 唇を僅かに尖らす雌の顔。黄金色の瞳に吸い込まれそうになり、レントンは少しだけ顔を前に出すとそのままピッチの唇に触れた。少し触れただけで蕩けるような感触に落ちる 
 やんわりと触れ合うだけの接吻だが"メロメロ"の効果は強力で、次第にレントンの方から求めるように顔を前に出す。
「んちゅっ……ちゅっ……ちゅぅっ……」
 深く密着するほどピッチの放つ強力なフェロモンに理性を犯されていき、その度に更に彼女を求めるように唇を重ねあう。
 最初はくすぐるような鼻息も次第に荒々しくなり、お互いのヒゲを揺らし合っていく。
「ちゅぅ……んんぅ……はぁぁ~……久々にすると気持ちが高まるなぁ……」
 ピッチは艶かしく唇をなめずり、顔を抱き寄せてるとレントンの頬に口付けをする。性経験のあるレントンでも相手の方から積極的に口付けしてくるとは思わなかった。引っ張るように頬の肉をに吸い付いてきた。吸い付く力は強く、引っ張れるだけ引っ張って最後はチュポンと音を立てて元の形に戻す。痛みなのか快感なのか判別出来ない刺激にレントンは女々しい鳴き声を上げてしまった。
 キスに飽きると今度はザラザラした彼女の舌触りに身を震わせ、頬からねっとりと瞳のあるの方に移動し、周りを集中的に嘗め回される。その厭らしい舌が何時自分の蒼い瞳に触れてくるのか恐怖と期待感に身を委ねた。"メロメロ"による興奮効果は体内の熱をより高めていく。
 反対にレントンは手を彼女の腹部へと移動させて柔らかな脂肪の集まりを見つけて撫で回す。体毛越しから伝わる柔らかい感触に虜ににされ、そっちの方にも夢中になる。 
「んふぅ、そうがっつかんでええってぇ……ちゃんと遊んであげるさかいに……」
 ピッチはおもむろに耳を触れると毛づくろいをするように愛撫を始めた。
「はひっ……そこはっ……!?」
 そこはサイコパワーをコントロールする重要な器官でもあり、ニャオニクスと言う種族にとって最もデリケートな部位でもある。毛づくろいをされるならまだしも、そこを愛撫させると言う事は自分の弱点を相手に握らせているようなものだ。こそばゆいなんてものじゃない。
 這いずる雌の舌先に気持ち良さよりもゾワゾワした悪寒が走った。最初は抵抗を考えたが、舐められる危機感と同時に心地良い興奮に気持ちが浮ついて彼女に成すがままにさせている。
 むしろ彼女に身を委ねるている方がとても気持ち良く、快感にふるふると震えた。
「ここはウチらのような種族にとってはあかん場所なのに、舐められるのが好きなんなやなぁ……んふ、はむぅ……」
「ひぃぇっ……!」
 情けない悲鳴を上げるレントンを面白半分に責めあげ、重要な器官である事知っていながら耳元を唇で食んで持ち上げようとしてくる。
 サイコパワーが暴走しないか心配する中、ピッチは半分程持ち上げた所で唇を離した。
「いちいち可愛い反応してくれるな、もうちょっと弄ってあげたろ。ふぅ~……」
 色っぽい艶のある声を息と共に吹きかけて、更にくすぐってくる。
「あふぅっ……!?」
「こんどはこっちのお耳や」
 ピッチは向きを変えて反対側の耳元も同じように愛部をしてきた。触れられる事に馴染んでいない所にザラついた舌が這いずり、ビクッと痙攣を起こす。
 本当にサイコパワーを暴走しかねないような危機感と快感にレントンは自身の抑えが効かなくなってきていた。
「ぴ、ピッチ、そこそれ以上弄るのは、も、もう……」
「チロロ……我慢せぇや、ウチも同種とヤるのは初めてなんや。レントンがどんな反応をするんか気になってたまらんのや……」
 意地悪にも耳元の付け根に唇を押し当てて舌先を上下にスライドさせていく。その微弱で尚且つ強烈な刺激にレントンは再び悲鳴をあげる。
「で、でもこれ以上は変になりそう……」
「なら気を紛らわす為にウチの体をペロペロしてや……」
 呼吸を乱しながらレントンはピッチの体を舐めまわすように見る。白い体毛に覆われたむっちりとした身体つき目を向け、目眩がしそうなくらい魅力的に見えて、舌が乾いていくような錯覚に陥る。これも"メロメロ"によるものなのだろうか。
 堪らず彼女の柔肌にしゃぶりつく。彼女の愛部に負けじとふっくらした胸元の下からまず舌を走らせ、胸に辿り着くとその周りに沿って舌先でチロチロと愛部する。
「あはぁん……器用やなぁ。レントンったら実はそっちの経験豊富なんやろぅ……はむ、はむぅ」
 ピッチに耳の尖端を食まれ、唇で左右にコリコリと弄られ、口を離して次に唾液を交えた舌で耳の裏側、つまりサイコパワーの発生源の近くを舐めまわし、絡みつく。
 これには流石に体がビクン激しく震えた。絶対領域である箇所をお構い無しに犯してくる恥辱的な侵入は、レントンの心さえも鷲掴みにせんとばかりに攻め入る。
「はひっ、あむ、ちゅっ、んちゅぅ、レロ、レロォ……」
 頭がおかしくなりそうになり、焦りで彼女の胸をおもむろに食み噛み、柔肉を舌で撫でまわしていく。体毛が唾液で湿り、くにゃくにゃと形を変える。この愛部攻撃で彼女の侵略に抑えが効けばいいと思った。
「あふんっ、ほんとよぅがっつくなぁ、彼女がおらんで溜まっておったんか? ウチと同じやな。チロッ、ペロゥ……」
 しかしピッチは容赦無しと言わんばかりに反対の耳の裏筋にも舌を滑らせてきた。まだ触れられていない部分から伝わる電流のような刺激にレントンは堪えた。
「あひぃっ……ず、ずるいよそこばっかり舐めてぇ……」
「やかましぃわ、あむっ……女みたいな反応ばっかりするからあかんのやろ。てろっ……自分から弱点を晒してからに、イジメてくださいと言わんばっかりやないかぁ、チロチロチロ……」
 そう言ってピッチは意地悪に舌で尖端を連続で突き、ピンピンと跳ねさせる。
「んひぃっ……!!」
 また情けない悲鳴を上げてしまう。これ以上は理性が保てない。彼女の体をギュッと抱き締め、僅かながらの抵抗で彼女の胸を撫でまわしたり、舐めまわしたりするも、もう痩せ細った野良が媚びて足元を舐めているようにしかなっていなかった。 
「ぁん……感じやすい体質やな。お耳が相当気持ち良かったらしいなぁ。その証拠にアンタの股間がギッチギチやで……」
 耳への愛部が収まり、言われたままに自分の下半身を見降ろしたが、自分の性器物は彼女のふとももで隠れて見えなかった。
 しかし見なくとも、股間に血流が集中しすぎてビンビンと跳ねさせているのが分かる。感じすぎて股間の様子に意識を向けれていなかったのだ。
「見んでもわかるで、ウチのふとももでごっつぅ硬いのがツンツン突いてくるのが」
「ふっ、ふぅ、ううぅぅ……!」
「んぅ……?」
 ピッチはレントンの荒々しい呼吸の仕方に、様子のおかしさに気がついた。
「どないしたん。チンポが腫れ過ぎて痛いんか?」
 ピッチはしっかり様子を見ようとふとももをずらそうとすると、雄の勃起物がむっちりした肉質と擦れる。その瞬間……
「あひぃぃぃっ!!」
 ブシャッッッ!
「ひゃぁっ!?」
 下から何かがピッチは一瞬何が起きたのか理解できず目を閉じ、初めて悲鳴を上げた。そして彼女の顔には液体のような物が降りかかった。
「な、なんや一体!?」
 パニックになったピッチは慌てて顔についた液体を両手で拭う。しかし粘っこい液体は簡単に拭えず、その上に陸地に打ち上げたマーイーカのような臭いがむわぁと漂う。
 両目を閉じたお陰で入る事は無かったが、次に目を開けた瞬間、ピッチの目線の下には股座の間から突き出ている勃起物が、ネバっとした白い液体を滲ませている。そして自身に降りかかった液体が何なのかを思いだした。
「はぁ、はぁ、はぁぁぁ……」
 レントンが浮ついた顔でがっくりと項垂れる。
「レントン、あ、アンタまさか……!?」
 ピッチの言葉にレントンは体をびくりと震わせる。
「今のでもうイったんかぁ!?」
 悲鳴に近い大声が部屋中に響き渡った。 
 ピッチはもう一度だけ顔に掛かったマーイーカ臭い液体を嗅いだ。
「ご、ごめん……君の足が触れちゃったからつい……」
 罪悪感に押し潰されそうになりながら枯れそうな声でレントンは謝ったが、ピッチは怪訝そうな顔をする。
「はぁ、触れただけでイくかふつう……?」
 強烈な言葉にレントンは縮こまってしまう。
「その、あの、出したくて出したんじゃなぃんだ……ただ、その、これは……我慢とかが苦手って言うか……」
 ふとももに触れただけで発射した早撃ちテッポウオを無様に晒したまま、レントンは言い訳にもならない言葉を口にした。尻尾も力なくベッドの上で寝そべるようにぐだぁとしている。
「ほ、ほら、色んな所ペロペロされたせいで、ちょっと感じやすいって言うか、それでつい果てちゃったと言うか……ハハハッ……」
 擦れた声は次第に涙声に近く、笑い方も全くと良いくらい生気がない。
「……つまりアンタそれ、早漏って事なんやな」
 呆れ顔のピッチにレントンは溜まらずついに叫んだ。
「仕方が無いんだっ! ぼ、僕は昔から敏感な体質なせいで、ちょっとした刺激だけで、うっ……来ちゃうんだよ……!」
「何がや?」
「し……イ……」
 酷く言葉に詰まり、ワナワナと体を震わせる。追い詰められている雄を前にピッチが追い討ちの言葉を掛けた。
「ちょっと触れたくらいでイく男とするなんて始めてやでウチ……」
「うぐっ……!」
 レントンは体を酷く震わせ、下を向いた先に小さな水の粒が零れていく。
「な、あっ……!?」
 ピッチが慌ててレントンから降りて顔を覗き込んでくる。涙顔など見せたくないと顔を反らそうとするが。
「レントン、泣いとんのかのか?」
「……うぅっ」
 あっさりとばれた嘘は心身の傷となってベッドに落ちていく涙の数が更に増していく。
「あーもぅメソメソすんやなドアホ! 興醒めやで!」
「興奮してて、ウッ……すっかり言うの忘れてた……自分の体の事、彼女に振られた原因……ひぐっ……」
「アンタぁ、察するに女と別れた理由ってまさかそれがなんか……」
 ピッチはジト目で、辛うじて膨らんでいるテッポウオ棒を抓め先で軽く突いた。
「ひぃぅっ……」
 敏感さが残されたままの早漏棒に耐え難い刺激が走る。レントンは涙の粒を散らしながら、怯えるように両手で股間を押さえる。
「やめてくれ……誰かに触れられるとまた……」
「はぁ……難儀やなぁ。他の女ともスケベして、その体質のせいで呆れられて捨てられたって訳か……」
「スケベって……でも、そうなんだよ。最高のムードの中でベッドで色んな女の子と過ごしてきたんだ。でも、行為の最中ですぐに果てちゃって、すぐに終わって、でもその時は女の子は笑って許してくれていたんだ。こんな僕を……」
「笑って許したと言うより、笑うしかなかったんちゃうんかな。その女共の気持ちも今じゃわかるわ……ウチも気持ち良い事する時はじっくり楽しみたいし、自分だけさっさとイくような男なんて誰だって愛想尽かすわな……」
 最後の言葉でレントンは意気消沈してしまった。唯一元気なのは、絶頂する前の半分の大きさにした早漏棒のみだ。
「だからせめて、夜以外の事で女性を楽しませたい。そう頑張ってきたんだけど、やっぱだめだな僕って奴は……ふふふ……」
「他が良くても"そっち"の方が早撃ちじゃどうしようもないなぁ。レントン、アンタこのままじゃ女にとって一生良い人止まりやで?」
 更なる追い討ちにレントンは全身の毛が逆立つような絶望と恐怖にビクッと震える。
「そ、そうなのかい? ここが、駄目なせいで僕は一生女の子とは縁の無い人生を送るの?」
「少なくとも、ウチが住んでいた女共はみんな上辺だけの良さで相手選ぶような事はないで。肝心なのはあそこがええか、自分を満足させてくれるか、あぁ、あとガキをバンバン作ってくれるような逞しさのある奴を好むな」
「ううぅ、やっぱり、男はあそこの我慢強さが全てと言うのか……僕の努力は一体、あぅぅぅ……」
 ピッチから聞かされる容赦無い現実にレントンはベッドの上で悶えた。
「努力ならベッドの上でもするべきやったな」
「ぐぅ……グスッ……ねぇ、ジョウトの男はみんな、僕のここより我慢強かったと言うのかい?」
 レントンはすすり泣きながら、傷付くのを覚悟で聞いた。
「そりゃジョウトのポケモンはスケベな連中ばっかでな、男の本性剥き出しにすぐに股間おっ勃ててスケベしたがるけど、すぐにイってしまうような奴はなかなかおらんと思うわ」
 レントンは深い溜息を吐いた。やはり自分は男の中で一番堪え性の無い早漏なのかと改めて自覚してしまった。
「あの頃が懐かしいわぁ、ウチも数えるのも忘れるほど沢山の男を相手にしよったなぁ……」
「え、沢山の男と、関係を……?」
「ウチはな、ジョウトで過ごして今までに沢山男と関係をもっとる。外から来とるだけあってどいつもこいつも興味津々に近づいてくるから男に困ったことはなかったんや。無論、恋愛事などウチは興味ないけど、体で相手の事を知るのは楽しみのひとつではあったな」 
 彼女が沢山の男と肉体関係を持っている事を想像してしまい、顔が赤くなってしった。
「時には、ウチ一人でぎょうさん(沢山)相手もしたなぁ……」
「一度に、沢山の男とも……!?」
 とっさにレントンは股間を押さえてしまった。
「四方に男共のモツがあって、それ一度に咥えたり扱ぅてあげたり、中に入れられた状態でズコバコ突っ込まれて……はぁ~……」
 ピッチは昔を語りなが乱交時の愉悦に浸り、一人で善がっていた。
 彼女の綺麗なボディが沢山の雄を相手に乱れ狂う姿が脳裏に浮かび上がり、言葉にし難い興奮に血が頭に上っていく。
「まぁ、ウチもあの頃はやんちゃでとにかく無茶したりもして……えっ?」
「はぁ、はぁ……えっ? ど、どうかしたの?」
 ピッチはまじまじとレントンの股間を驚いた表情でみつめている。
「アンタ、何時の間にそんなに汁出しとったんか……?」
「な、なんの事……あっ!?」
「見せぇ!」
 何事かと聞く前にピッチは強引に体押し飛ばし、レントンはベッドの上で仰向けに倒れる。股間を剥き出しにされてしまう。
 早撃ちテッポウオ棒は口から透明な液体を滲ませ、性器を全体をテラテラと濡らす程に溢れていた。ピッチは唖然とした表情のまま、それに触れていく。
「あふっ……! ちょ、だ、駄目だよ。イったばかりなのに、またビリっと来ちゃうって……」
「イってからまだ間もないのに、こない濡らしてギンギンになって、それもごっつう熱ぃ……」
 両手で竿を掴み上げ、我慢液でネチャネチャと汚し、トゲトゲした肉竿を熱心に見つめて顔を紅潮させている。
「あぁ……ひっ、うぅっ……」
「なぁっ……えらいビクビクしとる……前のよりも元気になっとるやんか!?」
 口元を綻ばせ、淫乱の顔になったピッチは両手にべたついた我慢液を全体に塗りたくるように扱き始めた。やんわりとした動作にレントンは痙攣するように反応していく。
「ひっ、あっ、あぁっ、な、撫でられたら、あっ、あぁっ……! イィィッ!!」
 ブシュ、ブシュウウゥッ!」
「ひゃんっ……!」
 水鉄砲のように噴出した白色のマーイーカ液が受け止める準備も無いピッチの顔面に直撃し、激しく舞う水滴のように辺りに散りばめていった。
「ふぁぁぁぁっ……」
 激しい脱力感に気分が浮付きそうになるのを堪え、警告も無しに再び顔面に吹きかけてしまったピッチを恐る恐る見る。
 二度目を食らった彼女の顔は蒼色の前髪をベドベドの白を足したように染まり、マズルにもまるで子供が鼻水のようにダラァと垂れていた。
「んはぁぁぁっ……あつひぃ……」
 汁塗れになった彼女は、むわっとした生暖かい匂いに蕩けた表情でだらしなく口を半開きにさせている。
「はぁ、はぁ、ご、ごめんよ……突然すぎて抑えが全く出来なくて……うぅっ……」
 やられた側とは言え、女の顔を再び汚してしまった謝罪を口にする。しかしそれとは反対に早撃ちテッポウオ棒は白濁液を付着させながら未だピンピンとまっすぐに勃てているままだった。
「すごい量やで……イったばかりとは思えへんよ……んちゅるっ……」
 顔が火照ったまま、口周りに付着した液をなめずり、やんわりと笑みを浮かべる。
 そして目線が再び、元気な早漏銃に向き、汚れた両手を今度は上下に動かし始める。
「はひっ!?」
 女々しい声を上げてしまう。柔らかな雌の両手に扱かれて、全身を麻痺せんばかりの刺激の波がレントンを襲った。液体と共に扱かれてヌチュヌチュと卑猥な音を鳴らしていく。
「もっと、もっとイけるやろ。なぁ、これ、こんなにまだギンギンなんやでぇ!?」
 興奮で叫びながら、次第に根元から肉竿の先に掛けて動きを激しくさせていく。その攻めにレントンは体をビクンビクンと痙攣させ、送られてくる快感と刺激は波ではなかった。
「ひぃぃぃっ!! いっ、あぅぁっ、や、ら、あああぁぁっ!!」
 ブシュッ、ブシャアアアァァッ!
「あぁんっ……!!」
 すぐさま三度目の絶頂を向かえ、二度目に負けない程のマーイーカ臭の白濁液をぶちまけた。淀む視界の中で、ピッチの周りを白い粒がキラキラと反射させている。
 一瞬のような幻想の後に、彼女の顔はさらに白を足してベトベトに汚れてしまった。口内にも入ったのか、ドロドロしたのが涎のように垂れ落ちていく。
「ぷはぁ……あっつぅ……! おまけにこの臭さ、んはぁ……ごっついわぁっ!」
 肉竿から両手を開放される。
「はひぃっ……はひぃっ……」
 ほんの僅かな間に三回も果ててしまった疲労感と脱力感は、レントンの意識を天に昇らせてしまいそうな程だ。
 快楽の後が消えずに今も尚、下半身は淫乱女の手の感触が残されている。
「これはホンマもんやぁ……まだ、イけるやろぉ……?」
 全身に掛かった液体をぬぐう事もなく、ピッチは自身の欲望に取り付かれた目をして、顔を下げて股間と同じ位置になる。熱い吐息が直接に触れてきて、それだけでくすぐる様な刺激に震える。
 まるでこれから食べられるような錯覚を感じていた。
「今度はお口にちょうらぃ……あむぅっ……」
「ひゃっ!?」
 ピッチのプリプリした唇が敏感肉棒に触れ、半分ほどまで飲み込まれる刺激の襲来に早くも射精感が込み上げる。
 レントンの反応に淫乱が綻び、じっくりと味わうように舌を使いながら竿の周りを舐め回していく。
「ふぐっ、ちゅるっ、じゅっ、じゅるっ、ちゅるぅっ……」
「ひぃっ、ピッチぃ、だめっ、ぇぇっ……!」
 込み上げてくるものを懸命に堪えようとしたが絶頂間際の奮闘など全くの無駄な抵抗だった。
 ブチュルルルルッ! ブシュッ、ブシュッ!
「んぐむむむっ! ごぶっ、んぶっ!」
 ピッチは四度目を発射を口で直接受け止める。その勢いは口内で水鉄砲を食らわされたような苦悶を浮かべていた。絶頂はすぐに収まってしまうが、それでも口に含まれている刺激と快感の残りは未だにくすぶり続ける。 
 これまでに異性と夜を共にしてこれだけの回数を経験した事はなかった。
 過度な呼吸のせいで口の中が渇いてしまう。それに引き換え、ピッチは頬の中を体液でいっぱいにして息苦しそうな顔をしている。
「んぷぅっ……ヴォヘェッ……」
 早撃ちテッポウオ棒からゆっくりと唇を引きずるようにして離し、その滑る感触にまたビリッとした快感に襲われる。ただ性器から口を離しただけでさえ、感度は異常な程に敏感だ。
 口の中のものを吐き出し、薄いドロドロの液体をふかふかのシーツの上にぶちまける。
「ピッチぃ、やりすぎだって……」
 震えた声で言うが、彼女は口元を手で拭ってにんまりと笑うと話を聞かずに再び大きく口を開けると、今度は一度に竿の半分以上を飲み込んでしまう。
「あぁむぅっ! んむっ、れちょっ、んんぅ~、ちゅるるぅぅっ、ちゅぷっ、じゅるるるぅっ……」
「ひぃうぅっ!?」
 むしゃぶりつく勢いに飲み込まれ、舌のプリプリが肉竿の裏側を捉えると口内で複雑に絡みつかせながらピッチは顔を前後する。舌先も動きに連なってずるずると舐めまわされる。
 快感の電流は竿全体に駆け巡り、何時爆発してもおかしくなく、レントンは腰を痙攣させ、防衛本能で両足を閉じようとしたが、それさえも彼女の悪魔のようなテクニシャンに体の動きが麻痺する。
「あぁぁっ! と、とめてぇぇ……! ひっ、いっ、ぐぅぅっ……ああっ!!」
 ブシュッ! ブシュッ! ブシュッ! プシュゥゥゥッ……
「んぶっ! んぐっ、コプッ、むっ……ぐっ、ジュルルルゥ、ごきゅっ……」
 待ち構えていたように吐き出される白濁液の水圧を受け止め、口内をドロドロにしている中で喉を唸らせ、生々しい液体を飲み込む音をこっちにも届くように鳴らしていく。 
 勢いが弱まり、痺れが残る中でようやく射精の波から開放されようとしたその時だ。
「んちゅっ、じゅうううぅぅぅぅぅっ!!」
 ピッチが唇で肉竿をキュッと締め付けた後、なんと吸い上げてきた。痛いと感じる程の吸引力に快感と電撃の波が同時に迫り、まさかの絶頂が込み上げる。
「っ――ああああぁっ!?」
 黄色い悲鳴と共に落ち着いていたはずの射精が一瞬で蘇り、再びピッチの口内にぶちまけた。
 まるでストローで吸い上げるような吸引にレントンはなんと、連続で絶頂を繰り返し、肉竿は求められるがままにビクンビクンと射精を繰り返し、体が天井を仰ぐように仰け反る。
 そして吐き出される勢いを殺さずに吸い続け、水分に飢えた生き物みたいにそれらを残さず全て飲み込んでいく。
 連続射精がようやく収まった後も快感は全く消えず、まるで今も尚彼女にしゃぶられ続けているような錯覚が残っている。
「ひぃっ……ひぃっ……!」
 涙を流し、痛みと区別の付かない快感に自慢の顔をぐしゃぐしゃに変えたレントンをピッチは上目で見つめ、愉悦に黄金色の瞳をとろんとさせる。
 そして意地悪にも唇から離し、白い糸を沢山引かせると竿の先を舌の先っぽでチロチロと小刻みに愛撫してきた。
「はひっ……!?」
「はぁんっ、こんなにドバドバ出しまくる男、ウチは初めてやぁ……れろぉ……」
 激しすぎる快感の連続で自分の意識を遠い世界に飛ばしてしまおうとしても小悪魔が引きとめ、拷問のように男の一物を縛り、貪る。
「ひんっ!!」
 叱るトレーナーにすら聞かせた事のない情け無い喘ぎ声を上げ、肉竿が嬲られる様子をただ震えながら見ているしか出来ない。
「また、ウチの顔にかけてぇ……いくらでも、気持ち良くさせたるからぁ……チロチロッ……」
「ひっ、ひぃっ……はうぁっ……」
 今度は肉竿の先だけを集中的に弄り続けるだけであったが、それでも込み上げる射精感からは逃れられない。
 舌だけでなく両手で竿の根元を撫でるように上下に扱く二重攻撃にネチョネチョと液体の生々しい音色が五月蝿く鳴り響き、絶頂の波がすぐそこにまで押し寄せてきた。
「ねぇ、またイきそうな顔しとる……チンポがドピュドピュしたがってる……狂いながらイきまくって、ウチをドロドロに汚してやぁ!」
 小悪魔の卑猥な言葉と艶かしい声に、ついには聞かされる声でさえも快感のように錯覚してしまう。
 その囁きに引きずり込まれるようにレントンの僅かな心の抵抗は無残に崩され、その言葉通りに数度目の開放に導かれる。
 ブシャァッ、ビュッ、ビュルッ、ビュビュッ……
「にゃはぁぁぁ~……」
 濃く無い色の精がフォッコの尾みたいに舞い踊り、ピッチの色白に遠慮なく振りかけてしまう。顔との距離が近いだけあってぶつかった液体の小粒が幻想的にキラキラと反射する。
 勢い余って、くるんとした耳や蒼色の体毛にも降りかかり、更には二つの丸い尾にすら付着していた。
 可愛らしいコガネっ娘の顔は微塵の欠片も無いく、すべてレントンによって汚されてしまっていた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……はぁぁ……」
 レントンは自身の許容回数をとっくに超えた射精についに息切れを起こす。
 どれだけ自分の体内に子種の原料があろうとも、これ以上は体力の限界だった。快感ばかりでそれ以外の事を考えられず、目がグルグルしてしまう。
「あぁん……顔中が熱いぃ、それにむっちゃ精液臭いでぇ……ウチもう、こんなに汚されたの初めてやぁ……」
 撃ちすぎた刺々しい肉竿を愛おしそうに凝視し、口の中に残っている液体を舌でクチュクチュと舐めまわして味わう。そして一息に飲み込んでいった。
「でも、まだ足りへん。もっとほしぃわぁ……レントンのせぇえきぃ~……」
「も、もう、ゆ、ゆるして、くれぇ……」
「いややぁ……タマタマの中身が"殻"になってしまうまで、もっと出しまくってやぁ……」
 艶やかな声色と共に身を起こし、体力の残されていないレントンを押し倒す。股間の上に跨ると腰を少しだけ浮かし、ピッチは自分の下半身を顔の前に突き出して見せる。
「ウチのここ、見て……」
「ふわぁ……!?」
 驚愕と恥ずかしさにレントンは喉を鳴らす。
 体液を振りかけていないはずの箇所が、毛を濡らしているのが分かる。蒼色の足の間から、ピタピタと厭らしい水が体の上に落ちている。
「もうヌレヌレになってしもうとるんやぁ……レントンのチンポが欲しいって疼き過ぎて、溢れて止まらんのやぁ……」
 恥ずかしいのかそれとも興奮しているのか、ピッチも顔をかなり紅潮させていた。
 愛液で濡らし過ぎた下半身の体毛。それを証明するかのように彼女は片手で塗れた箇所を触り、ねっとりとした糸を引く湿った手でレントンの頬に触れた。
 女特有のフェロモンが強烈に鼻腔をくすぐり、疲れている筈なのに体の一部に熱が篭り、ビクビクとしながら膨らんでいく。
「あっついチンポ……まだ遊び足りないでぇ……」
「まってぇ……はぁ、はぁ……これ以上は……!」
 助けを請いてもピッチは止まらず、体毛越しに洪水のように愛液溢れさせる卑猥な"パルシェン"をじっくり見せてきた後、体を後ろに移動させてピンと天井に向かって張っている早撃ちテッポウオに、自分の秘部を当てこする。
 竿に体重をかけて肉ヒダを押しつけてくると、ヌルッとした感触に震えが走った。
「ふあっ!?」
「にゃはっ……まだ、中に入れとらんでぇ?」
 愉快そうにピッチが笑う。下の口で食らう前に、もう一遊びと肉ヒダでキスをするような形にしてグリグリ押しつけ、その間にも愛液で竿全身を濡らしてくる。
 それだけでもレントンを快感に導くのに十分で、肉竿をビクビクと震わせながら何時果ててもおかしくない状態にあった。そして彼女は両手をベッドに置いて体を支えると腰をゆっくりと前に出し、肉ヒダが竿の上にスライドしていく。
「ひっ、あぁっ……!」
 天へと昇りそうな性器を使った愛部に今までとは違った新鮮な快感に襲われる。すでに何度も絶頂を迎えても外部からの刺激に反応せずにはいられず、それをわかってピッチが愛液で汚しながら腰を後ろへと戻し、再び前へと動く。
 ゆっくりした動きでも射精を迎えるまで時間は無く、レントンはせめての意地として上体を浮かし、ピッチの腰をギュッと掴んで快感に抗おうと必死になった。少しでも気を抜くと爆発してしまいそうな絶頂を堪える辛さを、歯を食いしばって耐える。
「んっ、んっ、なんや、きっつそうな顔をして。我慢してるんか? 可愛らしいでぇそういうとこ……ウチのオメコでもうおかしゅうなるその顔も……チュッ、チュッ、チュゥッ……」
 ピッチは上体を倒して顔との距離を近くすると腰の動きを遅くし、快感で涙ぐむレントンの顔に口付けをしてきた。愛おしそうに何度やっても尚、彼女は肉ヒダのスライドをやめない。我慢液と愛液が混ざり合ってすでにどっちの体液なのか分からなくなっていた。
「うくぅっ……い、うぅっ……いじわる……しないでぇっ……!」
「いやや、いじわるしたくてたまらんわぁ……」
 ピッチはそう言って腰を掴んでいる両手をとってギュッと掴むと腰の前後のスライドを早める。レントンは忍耐の元となる握るものを失い、一気に射精感が迫る。
「あっ、あぁっ、はわぁぁぁぁっ!!」
 肉ヒダの高速な摩擦に快感が高まり、雌みたいに喘ぐ。やがて我慢も空しく限界が訪れた。
 ドパァッ ビュッ、ビュッ、ビュルゥッ
 押し潰され、摩擦に耐えかねて出してしまった体液。その矛先にはレントンの方に向いていた。自らの放ったものがモンスターのように襲いかかり、腹から順に首の毛、口、顔にと降りかかってくる。
 少量とは言えどその勢いは凄まじく、あっという間に紳士の顔を白濁液で汚されてしまった。
「にゃはぁ、自分に顔射するなんて、どれだけ我慢してたんや。変態~」
 むわぁと広がるマーイーカ臭を拭う気にもなれず、股間に残り続ける快感の痺れ、そして疲労感に目が虚ろになっていく。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
 すでに体力の限界だが、ピッチの方は興奮度全開な雌の目付でレントンを見る。その表情はとても止めさせてくれそうにはない。
「せーえきだらけの臭い、ウチもそろそろ辛抱たまらんわぁ……」
 部屋中に蔓延した精の臭いにピッチの方でもついに我慢が切れた。本体が疲れていても終わるまで決して萎える事なく上を向く肉竿を彼女は片手で掴み、もう片方の手で自分の肉ヒダを広げていく。
 モモン色の身が見えて、雌のフェロモンが色濃く漂い鼻をくすぐる。これからピッチと繋がると思うと、普通じゃない快感の連続に恐怖する半面、欲望の残り火が大きくなっていく。
「ピ、ピッチぃ……」
 彼女の名前を呼んだ瞬間、ピッチは肉竿をヒダの間に当てて、それから一気に腰を落としていった。
「んにゃぁっ……はぁぁっ……!」
 肉竿はピッチの中で充満した滑液で驚く程スムーズに入り込み、それであって窮屈に絡みついてくる体内の肉に押し潰され、一瞬だけ忘れていた快感の波が全身を駆け巡る。
「んひぃぃ!?」
「はぁぁ~、すごぉい……すぅっと入るでぇレントンのチンポぉ……」
 今までに女と経験があっても、これだけすんなりと異性の体内に挿入出来た事はなかった。それだけピッチが濡れていたと思うとそれだけで股間の物が張れていきそうになり、射精感が込み上げてくる。
「あっ、はぁっ、締め付けっ、きついっ、ううっ……!」
 肉竿の根元まで中に入った瞬間、気持ちが浮かれていたのが油断となっていた。絡みつく快楽と刺激に負けてそのまま絶頂が迫った。
「にゃっ!?」
 ピッチの体ががビクンと仰け反る。彼女の体内に最後まで入れた瞬間にレントンが果ててしまったのだ。膣内で早撃ちテッポウオが絞られるがままに白濁液を吐きまくり、二匹共ガクガクと震える。
「あぁぁっ……ご、ごめぇ……!」
「はっ……入れただけなのにもう出したんかぁ! このバカぁっ!」
 これには流石にピッチも怒った。始まった瞬間に果ててしまったから当然の反応かもしれないが。
「あ、あんなに急かされたら僕だって準備が出来なくて、つい……」
「せめてウチが気持ち良くなってから出せや、この垂れ流しチンポ!」
「うぅ……」
 ピッチと繋がったまま、レントンは再び縮こまってしまう。もちろん股間の方ではない。
「他の女の時もそーやって我慢できずにピュドピュかましよったんやろこの早漏! こうなったら腹がパンパンになろうともウチがイくまでやめへんで! ええなっ!?」
「ひっ……」
 レントンが委縮する中で、果てたばかりでろくな猶予も与えられないないままピッチは強引に性交を再開していく。
 欲求不満の肉壁が生き物のように蠢き、早撃ちテッポウオに複雑に絡みつきながらぎゅうぎゅうと圧迫されていく。その快感は気持ち良さと言うよりも敏感すぎるあまり痺れの方がずっと近い。 
 にもかかわらず怒りと欲求まかせに腰を激しく前後されていく。肉同士がぶつかりあって激しい音が鳴り、強烈な刺激もはやそれは拷問と変わりない。 
「だめっ、だめぇっ、だめぇっ!! 激しくしないれぇぇぇっ!!」
「だめや、アンタの根性と我慢の全く無い早撃ちチンポをとことん叩き直して鍛えたるわぁっ!」
「ぎにぃぃやぁぁぁ~っ!」
 快感と痛みのダブルパンチに女々しい叫び声をあげてしまう。そして膣内の激しい摩擦に早撃ちテッポウオが早々と限界を伝え、ピストンしている最中にも関わらずそのまま二発目を放ってしまう。
 肉竿が小刻みに震えながら勢い良く液体を膣内に打ち付ける。
「にゃはぁんっ……!!」
 ぶちまけ続ける肉棒の膣内の射精にピッチが初めて悶えた。
「あついぃっ……中で熱いのがでまくっとるぅ……!」
 もはやまともな気持ち良さではなく、痛みと合わさったような射精感だ。ビリビリと伝わる快感に麻痺したかのように体が硬直していく。
「ま……まだ、イ、いぃ、イかないのぉー!?」
「ハァッ、ハァッあ、当たり前っ……やん……はぁんっ、レントンが早すぎるんやっ……!」
 二度果てても執拗に腰を上下に振る休む事のない快感が頭を覚醒させて寝る事も気を失う事もできず、永延と射精する為の電撃を送りつけてくる。
 雄の上でピッチは精を貪り食う野獣のようで、同時に魅惑に踊って無限の誘惑を誘う天使のように錯覚してしまう。
 思考すらまともに働かなくなったレントンは間もなく、ビクビク仰け反りながら下から腰を突きあげて三度目の絶頂を迎えた。
「ひっ、ひぃっ、あっ――」
「ひああぁっ……ま、またクるうぅっ……!」
 膣内はすでに精液でいっぱいで、行き場の無い勢いはピッチの体内で逆流して
 雄と雌を繋いだ間からレントンが漏らした液体が溢れ出てている。身の周りの物が汚れ、彼女の足元にも白い筋がトロリと流れているのがわかる。
「腹がいっぱいになるぅ……こ、こない出されたら孕んでまうてぇ~!」
 やられるがままに射精ばかりさせられて、本当にピッチが身籠ってしまうのではないかと心配も今のレントンには出来ない。考える事すら億劫になっていた。
 それでも彼女は止まる事なく絶頂を迎えるまではこのイき地獄は白濁液でドロドロまみれになりながら続いていくのだ。
「はぁ、はぁ、た、たまらんわぁ……顔も体もウチの中も、せーえきまみれでイかれてしもうたわぁ……」
 どうやって帰るのかそんな考えは全く無く、窓の外がすでに暗くなっていても今の二匹には関係はなかった。
「ぴ、ぴっちぃ、ハァ、ハァ、ま、またイきそうだぁっ……」
「ウチも、あっ……ドプドプオメコにぶつけられまくって……んぁっ……もぅすぐイきそうやぁ……はぁんっ……最後に……一緒にイこうやぁ……」
 肉竿を何度も淫らに絡まれて、時にユラユラと腰を前後に降りながらピッチが喘ぎながら綻んだ表情で言う。
 そして一気に勢いづいて腰を上下し、激しい快感に気が狂いそうになりながらレントンも彼女の腰を掴んで自分から突き上げていく。
 ぶつかり合う度にびちゃんびちゃんと体液が散り、蒼色の体毛を汚していく。
「あ、あ、あ、あぁぁっ、あぁっ、で、でるぅぅっ、出るよぉっ!!」
 レントンはこれまでにない快感の波に残った体力を全部使い果たす勢いでズンズンと奥の限界まで突きまくった。ピッチも絶頂間近で甲高い喘ぎ声を上げてレントンの手をギュッと握る。
「にゃあぁっ、あぁんっ、ウチ、あはぁっ、イ、はぁんっ、イくぅっ、イっちゃうぅぅぅっ!!」
 最後にピッチの膣内が全てを絞りとらんばかりに肉竿を締め上げてきて、限界まで耐えてきたものが上へと上へと迫り、一気に爆発した。
「んあああぁぁぁーーーっ!!」
「はああああぁぁぁっ……!!」
 最後の射精は長く続き、頭の中が一気にクリアしていく。無意識に突き上げた物が痙攣するピッチの中からとめどなく漏れ出ていく。幾度となく繰り返してきた射精の中で、初めてピッチは絶頂した。
 彼女はレントンの上で、自分の体を強く抱きしめて口をだらしなく開けて蕩けた表情をしている。その時、レントンは初めて達成感と愉悦感を感じたのだ。自分が初めて女をイかせた事を感じていたのだ。 
「にゃはぁ……ウチ、せーえきまみれにされて、初めて早漏のチンポでイってしもうたわぁ……」
 ピッチは力無くレントンの上に倒れこみ、ゆっくりと顔を上げると、黄金色に涙を浮かべて笑顔を見せる。
「最高の男やで、アンタ……」
 最後に口付けをする。ピッチの言葉でレントンはゆっくりと体の力が抜けていき、眠気に誘われる。
 付き合ってきた女の中で、早漏の物で初めてイってくれた相手の淫らの姿を、レントンは閉じていく瞼に焼き付けた。


 晴天の空の下、何時もの顔触れが揃い、お洒落に決めたきた様子でコーヒーカップを片手にトレーナー同士が先日に入手したブティックの新情報について語り合っていた。
 渋くて甘い香りの漂う何時ものカフェ・アラモードでレントンはテーブルの下で目を閉じて休んでいた。目を閉じていてもテーブルの上と下では話が絶えない。
「おいおいサクラ、やっぱりお洒落するならこだわりハチマキがベストだろう?」
「どうしてそこでこだわりハチマキがベストになるのよ。男らしさを強調するアイテムが最高のお洒落とでも言いたい訳?」
「そうだろう? こだわりスカーフなんて見慣れたものじゃ自慢にもならないさ。これからの時代はタフガイなイメージを醸し出すハチマキこそ僕らが身につけるべきアイテムだろう」
「そう? 見た目的にはこだわりスカーフのほうがやっぱり馴染むからいいと私は思うけど?」
 チーフ、サクラ、オクサンの何時もの面子で自分たちがこれから身に付けていくお洒落アイテムについて話し合っていた。
「わかってないなぁ、スタイリッシュ目指すなら新しい物に目を付けるのが世の中の常じゃないかぁ。なぁレントン?」
 チーフの話にレントンは反応できなかった。
「レントンは今眠ってるで」
 レントンの近くで付き添っているピッチが変わりに言った。
「なぁんだ、付き合いの悪いな。あ、それよりもピッチはどう思うんだい?」
「私も聞きたいわね。あなたのお洒落感覚って独特的だし、どうなのかしら?」
 みんなピッチの意見を聞きたくて彼女のほうに向く。
「ウチかぁ、お洒落と言うものはどうにも疎くてなぁ。でも、こだわりメガネならいけるんちゃう?」
「こ、こだわりメガネかぁ……そこに目を向けるとはなぁ……」
 チーフが下を向いて悩む、その頭の中では色々な想像を駆け巡らせているだろう。
「それはいいセンスしているわね。ピッチならとっても似合いそうね!」
 オクサンも同感だと言わんばかりに褒める。
「レントンだったら何が似合うかしらねぇ」
 サクラが言う。肝心の本人はまだ眠りの中にいて気がつかないでいた。
「こいつか、メガネは似合わないから何時も身に付けている物以外で言うなら、やっぱりこだわりハチマキだろう」
「またそれなの?」
「チーフはたんじゅんな思考ね」
 サクラとオクサンが呆れてレントンの方に向く。
「ピッチなら、彼が何に似合いそうか想像つくかしら」
「チーフよりもセンスがありそうだし、何が良さそうかしら」
 ピッチはのんきに寝ているレントンの顔を見て、小さく唸る。
「そうやな、レントンに必要なものを含めて考えるとなると、やっぱあれやなぁ……」
「あれって事は、ピッピ人形か? 女の子みたいでこいつには必需品みたいで似合いそうだな、ハハハッ」
「あなたは黙って"ほおぶくろ"にマトマの実でもつめてなさいよ」
 オクサンが呆れてきつそうな木の実を例に出して言う。その時、レントンが寝言でムニャムニャと何かを言い出した。
「うぅん……そんなにはやくないってばさ~……くぅ~……」
 ピッチがレントンの寝顔を見て、クスッと笑う。
「きあいのハチマキになるなぁ」
 ピッチの言葉にサクラとオクサンがエッとなった。
「あなたもハチマキが良いっていうの?」
「以外だわ……」
「おぉ、よく分かっているじゃないか。ところで、どうしてきあいのハチマキなんだ?」
 皆が聞きたがっていて、ピッチは黄金色の瞳で遠い所を見るような雰囲気でこう足した。
「忍耐力が必要って意味やな……」
「はぁ?」
 チーフが突っ込みを入れる。
「どう言う事かしら、彼の事をそこまで詳しいの?」
 オクサンも聞いてくる。
「っと言うか、まるで彼女みたいなものいいね」
 サクラがまじまじと見つめてきて言ってくる。
「あー、ただのそんな気がしただけやから気にせんといてや。フフッ」
 ピッチは頬をかいて照れくさそうに笑った。
「うぅん~、そこはだめだよぉ~……」
 今日もミアレの街には、コーヒーの香りが漂う。

*自己感想 [#wa85d849]

 エントリー締め切りギリギリの参加で投票開始前ギリギリの投稿で今回二回目の大会参加です。
 変態選手権と言う題目で始めに思いついたのがニャオニクスであり、ネコ同士のあれやこれやで想像するのが楽しかったですね。
 本作品は本来ならばもう少し長めのストーリーで構成する予定でしたが、描写に悩んで大幅に縮小する残念な出来になってしまいました。やはり作品作りは日頃の積み重ねが大事だと改めて実感しましたねぇ……
 投稿に遅れたせいもあって順位は11位でしたが、無事参加できただけでも今回は良しとしています。
 雌ニャオニクスをコガネ弁(関西弁)にしたのは独特な口調でで官能をやってみたら卑猥な雰囲気を演出できるのではないかと思い切った事をしてみたのですが、案の定コレが気に入りました。コガネっ子最高っす!
 もうひとつの雄ニャオニクスの方は超絶早漏という設定でやらせて頂き、少しの刺激で何度も絶頂を繰り返す描写するのは楽しいものがありました。もう少しいじってみたい気持ちもありましたね。
 今回の経験を糧にして次回からは演出にも力を注ぎたいと思ってます。ご愛読、投票、ありがとうございました。

#pcomment()
IP:180.25.111.204 TIME:"2015-12-19 (土) 00:38:03" REFERER:"http://pokestory.dip.jp/main/index.php?guid=ON" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64; Trident/7.0; rv:11.0) like Gecko"

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