二度目の投稿となります[[けん]]と申します。 もしご連絡などある場合は、Twitter (@DEADTIRED__)までよろしくお願いいたします。 性的描写 (自慰やそれらを連想させる描写) など読み手を選ぶ要素がございます。 閲覧ご注意お願いいたします。 ---- 昔はただの友達であった。 大きくなるにつれて、疎遠になってしまったのはきっとたくさんのポケモンとの出会いのせいだと悟る。 こんなにも好きでいたはずなのに、いつの間にか遠ざけてしまった彼女に触れたくなってしまったのはなぜだろう。 ここの畑で採れたキーの実はいつもおいしいんだよと教えてくれたのはアイツだった。 アイツはビブラーバで、ナックラーだった時から俺は知っている。 お互いに友達で、いつも住居が近かった砂原が思い出の場所。 大好きな石を集めたり、木の実を一緒に食べたり、親の悪口を言い合ったり。 そんな他愛もない何の変哲もない、平坦な毎日がどれだけ愛しかったか。 大人になるにつれて、種族も違う自分たちはどんどんと疎遠になって、最終的には口も利かなくなって。 どこか遠い森に移り住む時には、もう彼女のことなんてほぼ頭になかったのかもしれない。 そんな昔の思い出を考えながら、オボンの実を一口かじる。 ガブリアスに進化を遂げて以降、いろいろと力をあり余していた。 バトルをするわけでもない、旅をするわけでもない、ただ退屈な一日を噛みしめるように過ごしていただけ。 怠惰と言われればそうかもしれない。 ただ何もない岩に囲まれた洞窟の中で、縄張りを奪おうとするヤツがいない限りは暇を持て余す。 本当にこれでいいのかと己に問いかけたことはあったが、もうそんなことを考える脳さえも残ってなかった。 蕩けきってしまった頭は、もう二度と戻ることはないだろうと切に思う。 あの頃のアグレッシブな自分はどこへとやら。 ガバイト時代の周りの環境がいけなかったのだろう、自分はバトルに強すぎると慢心していた時期があったからかもしれない。 ボロボロに負けて、それ以来俺は変わってしまったのだと思うと情けない。 そんないつものように、岩の天井を眺めながらぼんやり考え事をするのが癖になっていた。 退屈な毎日を過ごしていた俺が飛び起きる原因となったのは、近くの森に住んでいる鳥ポケモンの噂話を聞いたことが起因する。 ピジョットが言うに、近くの森でガブリアスのことを知らないかと探し回っているポケモンがいるとの噂。 こんな狭い森の中ではガブリアスは自分のみ。 一体何があったのだと訪ねたいところではあったが、会話に横やりを入れるのが嫌いな性分であって。 そしたら自分で探しに行こうと洞窟の外へと足を踏み出したのは何日ぶりか。 狭い森の中は今や自分の姿を見るだけでざわつく。 バトルで負けて以来、バトルをしなくなってしまった弱いガブリアスと噛みつかれるのは慣れっこだった。 言いたければ何度でも言えばいい、自分は強くもなければ偉くもない。 投げやりな思いだけが募って、つい苛立ちへと飽和してしまう。 ちょっと歩くとそこはもう森の外へと近い場所。 こんな所まで歩くのは久しぶりであったから、ちょうどいい木陰で立ち止まった。 この森からちょっと歩くと大きな砂丘が広がっている。 そこで俺と彼女は生まれ育ち、そして俺と彼女は別れてしまった。 そんな風に思うとちょっぴりしんみりするような、甘酸っぱい記憶がふとよみがえる。 彼女と一緒にいられれば俺はきっと幸せだったのかなと思うし、逆に彼女は俺といて幸せだったのかなとも思う。 自分のせいで彼女は嫌な思いをしてないか、だなんて口が裂けても聞けないから。 そうやって自分はいつも好きな彼女から逃げていたんだ、嫌われること、己の本心を知られることをひどく怖がったのだ。 今の自分もそう、洞窟なんていう誰も立ち寄らない場所にこもって、自分の心が傷つかないようにそっと閉じ込めたんだ。 嗚呼情けない、俺は情けないと思いながら、立っているとそいつは現れた。 最後に会った時はビブラーバで、その虫らしい見た目はさほど変わりはない。 他のビブラーバとかと比べても少し体が小さかった彼女。 今はもうフライゴンになって、俺とそこまで変わらなくなってしまった体。 ガブくん、と懐かしい声で囁かれた時にはもう俺は何も言えなくて。 その場から俺は逃げるように走り去ってしまう。 彼女は俺の名前を呼んでは、俺の後を追う。 待って、と言っては俺の後を追う。 なんであんな風になっちまったんだ、どうして俺の前なんかに現れてしまったんだ。 会いたくなかったんだ。 俺の情けない顔をアイツには見せたくなかったんだと。 ふと涙が零れそうになる。 アイツから逃げる理由がわかった気がする、俺はアイツに情けない姿を見せたくなかったのだ。 アイツの中では一番強いポケモンはきっと俺で、俺以上に強いポケモンはまずわからないというはずだ。 それなのに今の俺の姿を見たらきっと失望してしまうだろう。 好きになってはくれない、そんなことは明白なのだ。 だからこそ、もうアイツのことを見たくないとなおざりにしてしまったのだと思う。 アイツから逃げるように森に移住して、何十年もアイツから逃げるように生きてきて。 走って洞窟まで逃げる最中、たくさんの後悔と羞恥心が俺を蔑むように襲ってくる。 はあはあと息を切らして、壁に寄りかかって息を整えていると彼女は俺に追いついたようで。 「ガブくん、なんで、なんで」 息を切らした彼女は、俺にそう何度も問いかけた。 「俺はお前の知るガブリアスじゃない」 洞窟の冷えた空気が頬を撫でる。 心なしか冷たかった、きっと涙が零れてしまったからだ。 「俺は、違うんだ」 俺が口を開くとすべてが言い訳に聞こえてしまうような気がして、本心なんて言えなくて。 全てが嘘になってしまいそうな怖さが露呈して、声が震える。 洞窟の中にかすかにこだまする俺と彼女の呼吸音が、時折震える。 「なァ、お前は情けないガブリアスなんて知らないだろう」 問いかけると彼女は言う。 「ガブくんは優しいから、誰かを傷つけるようなバトルなんてしないから。 もっと言うと誰かを守ろうとしてバトルに負けるのは負けなんかじゃないよ。 私は世界で一番あなたが強いと思う」 そんなことを言うから、俺はこんな風に弱虫になってしまうんだ。 アイツの優しさに寄り添ってしまいそうな、甘えたくなるような奴に成り下がってしまうのだと。 バトルに負けたことを未だに引きずっているわけじゃあない、俺が弱いってことを知られてしまったのが一番悲しくて、悔しくて。 「どうか逃げないで。やっと見つけたのに逃げるなんて酷いよ...」 泣きそうな彼女の言葉に、俺はもう我慢ができなかった。 怒鳴る元気もなく、ただみすぼらしい己の姿を見せつけていることだけが辛くて。 「頼む、また夜にでもここに来てくれないか。今はちょっと一人でいたい」 情けない声色で俺は彼女にそう言う。 彼女はこくりと頷く。 整理のつかない頭で彼女の言葉に返事できるほどの元気が今の俺には毛頭なかった。 そういうと彼女はしょんぼりしたまま洞窟を去っていった。 その場で座り込んで、今にも張り裂けそうな思いを胸にたたえながら蹲った。 彼女のいなくなった洞窟は、こんなにも寂しくて寒くて切ないものなのか。 何度目だろう、こんなにも鉛のような重い後悔に苛まれるのは。 ひょっとしたら俺は一生後悔を背負いながら生きていかねばならないのだろうか。 気でも狂ってしまいそうな葛藤に、俺は溢れた涙が止まらずに。 「愛してるよフライゴン」 情けないガブリアスでごめんと何度も呟きながら、自分が嫌で嫌で仕方がなかった。 夜になったらという約束のもと、彼女に再度会った時の言葉をひたすらに探していた。 なんて言えばいいだろうと考えても、謝罪の言葉だけは浮かぶ。 勝手に砂原から出て行ってしまったこと、彼女はきっと許さないに決まっている。 常に逃げていた俺は、今もどうやったら逃げられるかとつい考えてしまう。 愚鈍な自分に呆れながらも、彼女のことを一生懸命に考えた。 そうしてふと思いついたのが、彼女のことを考えすぎてしまって少し欲求が吐露してしまうというもの。 彼女の匂いや、仕草や声も、全部が魅力的で、己を奮い立たせるにはきっと十分すぎるもの。 ダメだと言い聞かせても、魅力的なのは魅力的で、実際彼女に惚れている自分がいる。 どうすれば俺を好いてくれるのか、と思った時にはもう約束の時刻が近づいていた。 俺は本当にバカだと一人ごちりながら、壁に寄りかかるようにもたれかかった。 どうすればいい。 俺も愛されたい。 あの子に好きっていってもらいたい。 ほとばしるような思いを抱えてふと思う。 己を掻き立てるような出来事は何一つないと信じたい。 どうしてこのような気持ちを抱いてしまったのか、どうしてこうなるまでに至ってしまったのか。 あやふやな思いは自分の心を悶々とさせるだけ。 うまくこいつが晴れればいいのだがとは思ったが、そこまで自分は器用ではなかった。 ただ一つ、わかったことがある。 この思いは一筋縄では到底どうにもならない、未知のものだということを。 こんな気持ちを呼び覚ますことになってしまったアイツが許せずにいた。 そうか、きっとこれが愛情の一端なのだなと思う頃にはしっかりとした劣情が露呈していただなんて。 その場でぺたんと座り込むと、股間からは生々しいそれが自己主張を始める。 撫でるように、優しく爪で弄っては体を震わせる。 アイツにこうされたい、願わくば。 息を震わせながら、それを傷つけないように刺激を始めた。 口を閉じた歯の隙間からは快感に震える息が漏れ始める。 たまらないと言いたげな顔は、アイツには見られたくはない。 せめて、アイツのことを考えながら致すことをどうか許してくれと無様に請うてしまうのだ。 上、下と擦り始めるともう難しいことを考えるのはやめてしまった。 気持ちがいい、アイツのことが好きなんだ、アイツをこうしてしまいたいのだと目をぎゅっとつむる。 本当はアイツの中に己の精液をぶちまけてしまいたいなどという気持ちが小さいながら生まれていた。 しかしアイツはきっと牡とそういう経験はきっとない、自分がきっと初めてなのではないかと罪悪感を抱く。 (こんな好意を抱いてしまうだなんて、俺はどうかしてる。) 脂汗を頬に流しながら、一番敏感な部分に爪が当たって喘ぎ声が小さく漏れてしまう。 もうダメだと体を震わせた頃には、びゅくびゅくと精液を放ってしまっていた。 息を荒げながら、体に体液を付着させながら、だらんと力の抜けた体はそのまま壁へと凭れ込む。 あいつがエロいからいけないんだ、俺の劣情を刺激するからいけないんだとふと涙で視界をゆがませる。 こんなことあってはいけないのにと思えば思うほどに、自分が恥ずかしくなってくる。 立派な変態だ自分は。 自身に呆れながら、そのまま座り込んでは洞窟のひんやりとした壁に身をもたげる。 「ガ、ガブくん……」 ちょうど目をつむってだいぶ時間が経ったであろう、そんな言葉で一気に現実へと引き戻される。 そして顔が一気に真っ赤になる。 己の住処に勝手にアイツは入ってきたんだ。 何の許可もなしに、恥じらいでいっぱいになりながら俺を見る彼女の姿。 「ご、ごめんね。今お取込み中だった?」 言葉を失った。 何も言えず、俺は座り込んだままこくりと頷いた。 アイツは、フライゴンは目を丸くしたまま立ち尽くしていたようで。 「体洗わないと汚いよ」 アア、情けねェ。 そんな風に唇を噛みながら、つい己の愚かさに嘆いてしまって。 半分ぐらい彼女に見られてしまったも同然ではないか、性欲の捌け口にしてしまったのもバレバレではないか。 まさか自分がオカズになってただろうだなんて夢にも思わないはずだろう。 「放っておいてくれないか」 今はアイツの顔が見たくなかった。 いざ見てしまうと、先ほどまでの行為がフィードバックしては切なくなるから。 「頼む、俺を一人に――」 最後まで言わせてくれないのが彼女の悪いクセ。 俺の口を塞いで、彼女は俺の体に絡むように両の腕を回して。 もう絶対に離さないと言わんばかりに、アイツは俺の体を抱きしめた。 まだ、体に体液がついてるのもきっとお構いなしに。 「ガブくんだけ楽しむなんてズルい」 目を潤ませて、俺のことをしっかりと見つめるものだから。 今まで堪えていたものが爆発してしまいそうで。 ドロドロに溶かされていく理性が、確実に俺と彼女を蝕んだものだろう。 彼女をこんな風にしてしまったのは一体なぜなのだろうか。 そして、どうして俺は今こんなに劣情に忠実になってしまったのだろうか。 全ては神のみぞ知る。 「ガブくんになら食べられても」 「ここに来たっていうことは覚悟は決めたんだな」 「貴方になら」 濃いアイツの香りに脳をクラクラとさせながら、ちぎれそうな理性を強く掴む。 それももう、手放してしまいそうで怖かったが。 「犯してほしいだなんてえろい牝だお前は」 彼女の腰に手を回してから、何かが音を立てて崩れていくような気がして。 肉付きのいい体に触れていくと、彼女の声が微かに漏れる。 魅力的という言葉が相応しい彼女に、己の欲求はいつも以上に彼女を欲しがった。 まだ出会って数時間も経っていないのに、とその時はまだ冷静だった自分は考える。 彼女の腰に触れて、 「俺はいきなりお前を襲おうとした。折角の再会をこんなものにしてよかったのか」 今更何を言うんだと頭を強く叩かれそうな物言いに、彼女は別段怒った様子はなかった。 「私は貴方にこうされることを望んでいたのかもしれない」 恥ずかしいことだけどと言葉を付けたして、彼女は赤面する。 お互いの体が触れ合ったまま、こんな話をするのも野暮ったいし、まず理性が持つ保証もない。 ずっとずっとガブくんを探していてようやく出会えたと安堵に溜息を吐く。 「お前には勝てないや」 恥ずかしさに委縮した欲求がちらと顔を見せ始める。 ビブラーバの時と比べても、格段に美人になった彼女を見ていると、本当に俺でよかったのかと思う。 自分のせいで彼女を傷つけてしまったらどうしようだの、そんな不安だけが俺の中で募る。 この行為に及ぶ上で、彼女が嫌な思いをしてしまったら――、そんなことを杞憂してしまう俺だ。 彼女はきっぱりと、 「誰でもいいわけじゃない。貴方だから体を許したのよ」 恥じらいながらもちゃんと俺に言ってくれた。 後ろめたい思いが背筋をなぞるのを感じて、不意に彼女から目線を逸らしてしまう。 嗚呼、なんて小心者なんだ俺は。 こういう時どうすればいいのだと自問しても、彼女を優しくするしか方法はないのはわかっていた。 岩の上に横になってくれ、っていうのはあまりに不躾のようにも感じる。 暗く湿った洞窟の中で、ここにいるのは二人きり。 もっと喜んでくれるようなことができたらなと弱音を吐くと、彼女は別にいいと笑う。 まずは優しく彼女の唇を奪った。 落ち着いて事が進んでしまえばあとは流れに乗るだけなんだと言い聞かせながら、舌を絡めあう。 やっと好きなポケモンと二人きりになれたんだ、もし行為に及ぶことができなくてもこれだけは。 彼女の呼吸が直接伝わってきて、なんともいえない熱に覆われる。 牙をなぞり、舌を絡めると途端に敏感になってしまった体が反応する。 数分間のキスは興奮を呼び起こすには十分すぎた。 「こんな風に抱き合うの久しぶり」 「よかった」 俺は彼女の頬を撫でた。 貴方になら、という言葉を何度も反芻しては彼女の体を貪るように触れていった。 彼女は嫌がるような素振りは見せない。 こうして、彼女がくすぐったさに身悶える姿を見ていると、己の欲が奮い立たされていく。 「ま、待って」 彼女の心の準備ができてない、なんていうことはどうでもよかった。 濡れてしまったそれを絆すように、周りをじっくり舐ると彼女は面白いぐらいに腰を浮かせる。 腰を掴んでは舌を掻い潜らせる感覚に、蕩けていく己の理性。 「溢れてくる」 ぽつりと言う俺の言葉に感じるように、彼女は甲高い声をあげた。 ずっと一人で我慢してきたんだもんなァ、俺と一緒で誰にも分かってもらえなかったお前だ。 今日だけは俺のものなってくれと言わんばかりに、彼女を舐めまわす。 表面だけを舐めていた俺は、彼女の中に舌を無理やりねじ込んで中のものを掻き出そうとする。 すると一層彼女は喘いだ声を漏らすのだ。 彼女が汚されていく。嫌われたくないな。 そんな弱気の自分の思いがふと露呈して、舌の動きを止めてしまう。 無理やりこんなことをしてしまったら、彼女は嫌がらないだろうかと心配になってしまうのだ。 先ほどの言葉が嘘でないにしろ、自分はどこか疑ってしまう。 「エロい」 目の前で果ててしまった彼女を見ては、俺はどこか遠くを眺めながら囁いた。 魅力的な彼女は性的でもあるのだ、そんな単純なことを思い返しては己が恥ずかしくなる。 欲求に捕らわれてしまったポケモンになどなり下がりたくはないのだ、ただ今の俺はそんな奴らと何の変りもない。 ただただ、好きな相手を貪りたい下品なポケモン。 いきり立ってしまったそれを早く彼女に入れてしまいたい、という思いしか頭になかった。 「すまない」 呼吸を整え余韻に浸る彼女を後目に、俺はもう彼女の中に入れてしまっていて。 のしかかるように彼女を抱いてしまった俺に、彼女は目を丸くしていた。 一言謝っただけじゃ許されないことは知っていた。 それでもなお、欲求に従いたかった俺がいる。 彼女を食らいたかった俺がいる。 苦しそうに息と声を漏らす彼女に、俺は見て見ぬふりをしてしまった。 己の肉棒をねじり込むように入れると、彼女は痛がった。 しばらく腰は動かさずに、彼女の中を感じることだけに意識を集中させる。 吸いついてくる、今から貪欲に搾られてしまうのではないかという危惧もあった。 それどこから、こんなことをして彼女は怒ってしまわないかという不安もあった。 俺はとことん弱腰で、ここまで行為に及んでもなお怖がっている。 ( 嗚呼、フライゴン。こんな俺に汚されちまって。 ) そんなことを考えては、苦しさに目を瞑る彼女に俺は無償に謝りたくなる。 「大丈夫か」 俺はそんなことを思いつつ、彼女に問いかけた。 彼女は首を横に振る。 あともうちょっとだけこの状態でいよう、とは思うが腰を振りたくてたまらない自分だ。 「痛いんだよな、すまない。俺は乱暴で」 「大丈夫、初めてだからちょっと怖いだけ」 彼女はあくまで笑ってくれた。 俺の言葉に反応して、きゅっと中が締まったような感じすら覚える。 「そろそろ、いいかも」 彼女の言葉に俺はもう―――。 彼女が自分から腰を振るから、打ち付ける度に濃厚な気持ちよさが溢れる。 こんなにも俺のものに食らいついては離れず、搾り取ろうと締まりあがる感覚に弱音を吐きそうだった。 じんわりと結合部分から溢れる体液も、骨盤にびりびりくるような気持ちよさも、全部ひっくるめてたまらなかった。 これが、愛するものと行う行為なのかと思うとそれすらも快感に思える。 「愛してる、好きだフライゴン」 何度も耳に囁くように、俺は腰を打ち付け続けた。 なあ、本当に俺なんかでよかったのか。 問いかける暇もなく彼女の中で解き放たれた精液は彼女の奥深くまで満たした。 本当だったらこれを彼女の腹にかける予定だったのにと考えると、浅ましい己が嫌になる。 彼女は嫌がった様子も見せずに、何度も絶頂を迎えていた。 止まらぬ絶頂、締まる体内。 びりびりとくる快感に、解き放った余韻も合わさって効果は覿面だ。 疲れ切った彼女の顔を見ながら、俺は途端に冷静になってしまって。 汗まみれになった彼女の体から己の汚れきった体を離して、少しだけ時間を置いた。 呼吸を整える彼女を見ながら、近くの川で体を綺麗にしなくてはと考える。 愛する彼女とはいえ、少し酷なことをしてしまったなと思えば俺は悲しくなってくるのであって。 すまなかったとも言えず、俺は一人頭を抱える。 「ガブくん、愛してるって言ってくれてありがとう」 途端に俺の理性は舞い戻ってくる。 「ようやく本当のことを言ってくれたね」 「なんだ、てっきり聞いてないとでも」 「失礼ね。ちゃんと聞こえてるわ」 彼女を体の汚れを少しばかし怪訝な顔をしながらも、寝転んだ体を起こしては座った。 「本当に俺でよかったのか、って言ったのも覚えてる。言うタイミングが遅いってば」 「悪いな、いつも遅くて」 「貴方だったらいいって言ったじゃない。貴方に抱かれた私は世界で一番幸せ」 彼女は俺を見ながら、嬉しそうに言うもので。 嗚呼、幸せ者は俺のほうだよとは言えなかった。 こんな時まで、俺は弱気になってしまうのかと思うほどに俺は情けなくなって。 「すまなかったな、お前から逃げてしまって」 最後の最後まで謝っては、彼女に涙で濡れた顔なんて見せられなかった。 これからは逃げないでね、と釘を刺されて俺はようやく彼女の顔が見れたような気がした。 ところで俺がいない間、ずっとあの砂原にいたのかと聞くと、彼女は首を横に振った。 彼女は何も言わず、貴方が来るのをずっと待っていたとだけ言う。 その言葉を聞いて、余計に涙腺が緩んでしまう俺だからついつい言葉なんてなくしてしまって。 何千もの言葉よりもたった一回だけの行為だけで十分だから。 あのキーの実畑で出会った時も、貴方はそうやって私から逃げてしまったよねと言う。 初めて出会った時だって、俺は怖がって彼女に近づくことすらできなかったんだ。 いつかはこの子と一緒になりたいと願っても、自分はきっと彼女には届かないと勝手に思ってしまったから。 臆病な自分が嫌だったから、きっと自分は誰よりも強くなろうとしたのだと思う。 結果として、それは彼女を遠ざけてしまった原因にもなり兼ねない。 「昔は昔、今は今。少しは将来について話さない?」 彼女は俺にそういうと、咄嗟に言葉を失う。 そんなこと、頭になかったと言わんばかりに。 「もちろん」 しどろもどろになった頭では、もう頭が真っ白になっていたのかもしれないけれど。 もう絶対にお前からは逃げないよと言ってしまったからには、やるべきことはたった一つ。 ずっと彼女の傍にいてやることだけ。 それだけを考えながら、俺は彼女を不意に抱きしめるのだ。 顔も見れず、汚れた体はお互いに触れ合い先ほどまでの行為を思い返しては紅潮し。 「さあ、川まで行くか」 少々体を痛めた彼女を抱きかかえながら、俺は住処の洞窟から足を踏み出す。 夜風の涼しさが初めて出会った初夏の時と似たような、そんな気がした。 ---- 全て書き終えました、長らくお付き合いいただきありがとうございました。 ガブリアスとフライゴンの二人、そんな二人を書いてみたかったのでようやく願望が叶いました。 誤字や脱字、その他についてはコメント欄でお受けいたします。 #pcomment(キーの実畑のコメントログ,10,below)