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カラタチトリックルーム暁光編短編 の変更点


[[狸吉]]作[[からたち島の恋のうた・暁光編短編>狸吉#w98d3093]]用の自己パロコーナーです。
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*『[[Roots of Fossil]]』トリックルーム [#c08c05b7]
**『涙の化石』 [#j2105750]
 ドシン、と硬い塊がぶつかって来た衝撃で、僕は失いつつあった意識を取り戻した。
 そう、だ。僕は今朝、地殻変動で住処ごと陸の上に持ち上げられたんだった。
 水の支えを失い潰れて命絶えようとする中、エビさんに会いたい……ただその一念にかけて進化に成功。
 水晶の谷の向こうに見える海、エビさんがいるその場所を目指して岩山を這い下り、あと少しで下り切れるというところで……足を滑らせて岩盤に叩きつけられ、そのまま気を失ってしまったんだ。
 頭の付け根の組織が潰れているのが分かる。もう、立ち上がれない……
 辺りを見回すと、僕はどうやら岩山の麓の砂が堆積した窪地にハマり込んでしまったようで、周囲がこんな砂の坂ばかりではもし身体が無事だったとしても登れたかどうか。
 悔しいなぁ。せっかく進化できたのに、エビさんにも会えずにこんなところで終わってしまうなんて。
 エビさん……彼女は今朝の天変地異の中、無事でいられただろうか。
 どうか、あなただけでも生きて……
「……うくん……私よっ……!」
 …………!?
 今の……声。
 先刻ぶつかって来た、この塊から、だ。
 改めて見直すと、それは大きな身体のポケモンだった。
 全身傷だらけで最早虫の息の様子だが、死力を振り絞って震える腕を突き上げ、遥か頭上の岩山へ何事か叫び続けている。
 まさか。
 そんな、でも、あの爪の形は……
「ここにいるよ! あなたに会いに、ここまで来たのよ! お願い、返事をしてぇぇぇっ!!」
 あぁ…………
 エビさんだ。間違いない。来て、くれたんだ。
 嬉しい……
 僕が死んでも彼女だけは遠い海で生き続けて欲しかった……それも本当だけど、死に逝く僕と共に居て、共に逝ってくれる。その事への喜びを抑えられない。
 すぐに声をかけて振り向かせてあげたい。
 僕はここにいるよって、言ってあげたい。
 あぁ、だけど、喜びで喉が痞えて声が出せない。
 くそ、動け、僕の根っこ。
 何とか彼女の手を取って、僕の存在を教えてあげなくちゃ。
 よし、どうにか動けそうだ。
 彼女はもう限界寸前だ。今にも崩れ落ちそうなあの爪を取って、しっかりと握り締めてあげよう。
 あと、もう少しで届くぞ、
 ほら、エビさん。僕はここに…………

「生きているのなら、声でもオナラの音でもいいから聞かせてよぉぉぉっ!!」

 ガクリ。
 僕の根っこから、全身から、力が抜ける。
 結局遂に気づかれることのないまま、僕は彼女の傍らで、独り永遠の眠りに付いたのだった…………

 ◇

 一億年後。
 石英の谷の化石採掘地にて。
「博士、この根っこの化石、なんか悲しげなオーラ漂わせてね?」
 助手のジーランスの言葉に、老博士も眉を険しくひそめて頷いた。
「うむ、余程現世に未練を残してなくなったんじゃろうのう……」
「どうすんだよ、予定通り発掘していくのか? なんか呪われそうで怖いぞ」  
「そうじゃのう……そっとしておくことにするか」


**『過ぎたるは及ばざるが如し』 [#w27a80fb]
 ようやく、ここまで来た。
 絶望的なオーバーハングの絶壁に噛り付いてよじ登り、果てしなく長い坂を重い身体を持ち上げて進みながら。
 あと一回、岩を掴んだ爪に力を込めて引き上げれば、そこはもう紅藻くんがいる岩棚だ。
 愛の力は、全てを超える。
 不可能と思われた道程も、彼への想いだけで乗り越えることが出来たんだ。
 この上にいる紅藻くんの、恐らくはそうなっているであろう無残な姿を思うと悲しいけれど、それならそれでもいい。彼と共に眠ろう。
 そしてもし彼が奇跡的に生きているのならば、何としてでもふたりで海に帰ってみせる!
 そうだ、愛に不可能なんてないのだから……
 誓いを抱き、私は最後の岩を、遂に乗り越えた。
 紅藻くん、今、会いに来たよ…………

 ◇

 ようやく、ここまで来た。
 不慣れな歩みで険しい岩壁を何とか無事に滑り降り、硬く尖った水晶と干からびた屍だらけの谷を越えて。
 今僕の前に広がるのは、見渡す限りに広がる蒼い海原。
 愛の力は、全てを超える。
 二度と戻れないと思った海にも、彼女への想いだけで辿り付くことが出来たんだ。
 この広い海のどこにエビさんがいるのかは分からない。
 もしかしたらあの地震で彼女はもう……
 いや! そんなことはない。きっと彼女は生きている。
 どこにいたって、どれだけ時間がかかったって、絶対に探し出してみせる!
 そうだ。愛に不可能なんてないのだから……
 誓いを飲み込み、僕は懐かしい海水の温もりに、身を沈めた。
 エビさん、今、会いに行くよ…………

 ◇

 ◆

 ◇

「かくして、辿り着いた岩棚に求めていた彼の姿はなく、アーマルドは絶望のあまりそこで息絶え、亡骸は塵となって風に飛ばされた。一方でユレイドルは見つかるはずのない彼女を捜し求めて当てもなく彷徨った末に力尽き、文字通り海の藻屑と果てた。それから遥かな歳月が過ぎ去った今となっても、哀れな恋ポケたちの魂はすれ違ったまま、めぐり合えぬ相手を求め続けているとのことじゃ……」
「うわ~~~ん、かわいそうだよう!」
「爺ちゃんのおはなしは何度聞いても泣けるなぁ……」
 話聞かせた昔語りに涙する孫たちを、老いたジーランスはよしよし、と優しく鰭で撫でてあげるのだった。


**『……無理っ!』 [#d702af7a]
(この話は、リングさんの承認を得て書いています。)

「早速なんだけど、ここの中庭にね、とても素敵な花壇があるのよ。ぜひあなたに見て欲しいわ。一緒に行きましょう」
「あぁ、それは楽しみです! でも、僕は歩くことが出来ないのでこのままでは……博士、モンスターボールに戻していただけますか?」
「ま、待って!」
 慌てて私は彼に飛びつき、その柳腰に爪をかけた。
「私が抱えて連れていってあげたいの。研究所の中も案内してあげたいし、ボール越しより直に見た方が楽しいよ」
「あ、でも、ちょっと待っ……」
「覚悟を決めなさい。私はもうあなたを連れて行くって決めたから。つべこべ言っていると、強引に摘んで行っちゃうよ?」
 有無を言わさぬ私の勢いに押されて、彼は床から放した根を私の爪へと絡み付けてきた。
「お……お願い、します」
「よしきた!」
 緊張に強ばる彼の房をもう一方の爪で支えて抱き上げると、私は力一杯身体をうねらせて進みはじめた。

 ◇

 げんぢつ。
 アノプスの体重12.5kg。
 リリーラの体重23.8kg。
 浮力や水流を味方にできる海の中ならいざ知らず、陸上じゃどんなに力一杯足掻こうが、倍近く重いリリーラをアノプスが抱えて運ぼうだなんて、『お姫様だっこ』のピュアくんの台詞を借りて言うなら…………
「『……無理っ!!』だろそりゃどう考えても……」
「すみません博士、やっぱりボールに入れて運んでいただけますか? 早くしないとアノプスさんが潰れちゃいます」
「そうした方がよさそうじゃのう……」
「うう……ごめんねリリーラくん。私、トレーニングしてちゃんと王子様抱っこできるようになるからね……シクシク……」


*『R-18』トリックルーム [#7kTzs6j]
*『[[R-18]]』トリックルーム [#7kTzs6j]
**『メイキングR-18』 [#xMvibQp]

 赤銅に黄の縦縞が走るずんぐりとした身体が、どうっと地面に転がされる。
 胴から伸びる土色の細長い首に、小さなポケモンたちが群がり取り付いた。
 鉄色の外殻に身を覆った小さき者たちは、鈍く光る顎を倒れ伏した者の細首に、
「こらあぁぁぁぁぁぁっ~!?」
 当てようとしたところで、突如として響き渡った重厚な怒声に紅い瞳を向け直させられた。
 広大な丘陵を飛び越えて、長大な影が躍り出る。
 光を写さぬ闇色の背をうねらせ、妖しい濃緑色に染まる腹でどっしりと地を這う大蛇の姿をしたそのポケモンが、5枚の襟を扇のように逆立てて威嚇したのは、しかしもつれ合ったアイアントたちとクイタランではなく、その周囲で彼らを囲み、レンズとレフ板の光を当てていた人間たちの方であった。
「か、カットカット!? 何ですかジガルデさん、いきなり飛び出してきて!?」
 ベレー帽を被る太った男がメガホンを片手に抗議の声を上げると、ジガルデも憤然と声を返す。
「何ですかではないわっ!? 貴様ら、白昼堂々何といういかがわしいことをしておるのだっ!?」
「……はぁ!?」
 戸惑いの声が、周囲から口々に上がった。
「い……いかがわしいって何のことですか? 僕らはただ、至極健全な映画を撮っていただけですよ?」
「ええい、とぼけおって! 私に判らぬとでも思っておるのかっ!? 何が至極健全だ、だったらそれは何なのだ!?」
 とジガルデは、ベレー帽の監督が持つ台本の、表紙に書かれている題名を吻先で指し示した。
「どう見てもその題名は、貴様らの言葉で『成人指定』を意味する略語であろうがっ!? それが狭義においては官能描写ありという意味であることぐらい、よく山中に置き捨てられている本で確認済みだ! よりにもよって我が住処の界隈でそんな破廉恥な映画を撮ろうなど、私の眼の白いうちは断じて許さんぞっ!?」
 いや、アンタの眼ってほとんど緑やん。
 っていうか、白い部分がなくなったら何色になるんだ?
 それより、置き捨てられていた本とやらの行方が非常に気になるんですけど?
 様々なツッコみが撮影班たちから細々と囁かれたが、コホン、と監督が咳払いしてそれらを鎮め、ジガルデに語りかけた。
「誤解ですよジガルデさん。僕たちが撮っているのは、この地の自然と歴史を描いた映画です。今の場面も、蟻塚を崩そうとしたクイタランがアイアントたちに返り討ちに遭っているところでして、まぁ役者ポケモンたちを使った仕込みでしたけど、性的な内容はここまで撮ったのにもこれから撮るのにも一切ありません」
「だからそれがどうして『R-18』になるのだっ!?」
「ですから、これ」
 監督を筆頭に、その場にいたスタッフ全員が、道端に立つ標識を指さす。
 ヒャッコクシティから渓谷の吊り橋へと続く山道に立てられた、その標識に記された文字を。

 ''~Kalos Route 18 Etroite Vallee Wey~''

「…………&ruby(Route 18){18番道路};?」
「はい」
「……………………」
 闇よりも深い沈黙に、周囲が包まれる。
 石化したように固まったまま、しばらくジガルデは標識を見据えていた。
 やがてその姿が、頭頂部からボロボロと崩れ始める。
 呆れと哀れみの入り交じった視線の中、ジガルデは無数の小さな緑色をした細胞へと分裂して、大地の奥深くへと染み込むように消えていったのだった。

 ※

「お嬢さん、この先に行っても誰もおらんぞ」
 エトロワ・バレ通り東部に口を開く廃鉱洞〝終の洞窟〟。
 その最奥部へと続く梯子の前で、マフォクシーを連れた緑のジャケットの少女が、壮年のベテラントレーナーに呼び止められる。
 短めの黒髪に覆われた浅黒い顔を傾げ、少女は尋ねた。 
「とても珍しいポケモンの住処だと聞いていたのですが?」
「いや、そうだったのだがな。少し前から遙か南の地方まで旅行に出かけていて留守なのだよ。フレア団が動かそうとした最終兵器とやらの影響で地脈のバランスが崩されて、あのポケモンも調律に奔走されて相当疲れていたらしい。しばらくゆっくり休んでくるとさ」
「そうなんだ……伝説のポケモンも大変ねぇ」
「留守の巣に入るのも悪いですわね。引き返しましょう、ティユ」
「そうね魔月、行こっか」
 引き返していく少女たちの背中を見送った後、ベテラントレーナーはホッと肩を落とした。
 ジガルデにゆっくり休んで貰うためにも、あんな出来事は知られん方がいいのだから。

 ※

「……とまぁ、次の仮面小説大会非官能部門はこんな感じで」
「却下! 却下! 却下だバカ者!!」
 六角形の眼を歪に吊り上げ、怒声を張り上げてジガルデは僕の案を一蹴した。
「まったく、『[[白珠の奉納祭]]』といい『[[ジェルパドレンズ]]』といい、貴様は伝説ポケモンというものを何だと思っておるのだっ!? 毎度毎度ふざけたネタにばかり使いおって、弄ぶのも対外にせい!!」
「え~、そんなことないですよ?『 [[僕らのレンジャー ~新たなる切り札~]]』では、レジシリーズを悪と戦う正義の合体ロボにしましたし」
「あぁそうだなすまんかった過去最悪の悪ふざけを忘れておったよこの大バカ者が!!」
「別に伝説でなくてもネタに走るときは全力で走りますし」
「反論にも言い訳にもなっとらんぞむしろ尚更悪いわっ! 大体今回のネタなどしょうもなさすぎて顰蹙しか買わんだろうが! ネタに走るなら走るで、せめて映画の内容をまじめに考えい!!」
「仕方ないですねぇ。じゃあその方向で考え直しますか」
「映画にはちゃんと私も出せよ! 無論超カッコいい役でな!!」

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