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エレメント! 第一章 の変更点


~序章~


昔々・・・いまから200年ほど前、この世界を滅ぼそうとした一匹のポケモンがおりました、名をアスラといい、ミュウツーという種族でした。

なぜ世界を滅ぼそうとしたのか、わかるはずがありませんでした・・・勇敢な者達はアスラの野望を食い止めんと、アスラの巣食う巨大な塔へ勇んで赴きました。

しかし、アスラの強大な念力の前に多くのポケモンたちが命を奪われていきました・・・もうこの世界はなすすべもなく滅びてしまうのか・・・ポケモン達が絶望に打ちひしがれたとき、それを良しとしない4匹のポケモンが、アスラを討伐しに行きました。

アスラの塔へ行く途中、4匹はさまざまな困難にぶつかりました・・・しかし彼らは幾多もの困難を打ち破り突き進みました・・・それは彼らがどんなものにも立ち向かう"勇気"と、どんなものも等しく"愛"する心と、幾多の困難を打破する"知恵"と、どんな絶望的な状況でも絶対に諦めない"希望"を、それぞれが持っていたからです。

四つの光を持った4匹のポケモンはアスラと対峙、激闘の末ついにアスラを打ち破ったのでした。そして4匹は自らの肉体と精神を四つの石に封じ込め、世界が転生するさまをずっと見守り続けるのでした。
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~一章第一幕~

「これが後に語られる世界転生の序章だ。」
昼下がりの午後、ぽかぽかとした陽気が眠気を誘うようなこの時間に、教壇に登っていたピジョットは教室の中をぐるぐると回りながら教科書の中の物語の一つを音読し、教室にいるポケモンたちに問いかけた。
「先生はこの話が大好きで何度もみんなに読み聞かせているが、先生が何を言いたいのか分かるかな?」
その問いかけにほぼ全員のポケモンたちが答える、
「みんながこの物語の人物のようになって欲しいから。」
全員が同じ答えをいったことを確認し、ピジョットは嬉しそうに頷いた。
「その通り、今いろいろな事件が発生している中、みんなにはそういった事には絶対に関わらず、健やかな未来をこの学び舎から育んでいって欲しいんだ。みんな、いいね?」
「はーい」
「わかりましたー」
といった元気な返事がほぼ全員から返ってくる、
「さて・・・と」
ほぼ全員の返事を聞いて満足そうな顔をしたピジョットは、がらりと顔つきを変え、教室の隅を一瞥する、そこにはまったく話を聞かず返事をすることもなく、すぅすぅと穏やかな寝息を立てて惰眠を貪る4匹のポケモンがいた、ピジョットはこめかみをひくひくさせながらどかどかと4匹が固まっている教室の隅へと移動し――――――
「そこの・・・」
手に持っていた教科書を丸め、
「4匹・・・」
大きく振りかぶると、
「話を聞いとったかーーーーー!!!!!!」
爆睡している4匹のポケモンめがけて勢いよく振り下ろした。
「いたっ!」
「ぴぎゃっ!」
「うひゃぁっ!」
「いっ!!」
スパンという小気味のいい音とともに眠っていた4匹のポケモンがそれぞれ異なる悲鳴を上げ起き上がり、派手に椅子から転倒した。
「「「「痛ったぁー」」」」
4匹が今度は同じことを呟き、眠そうな目をこすりながら目の前にいるピジョットを見てのんきにこういった、
「「「「おはようございますキンウ先生、今日はとってもいい天気ですね。」」」」
またスパンという音が響き、キンウと呼ばれたピジョットが4匹の頭を教科書ではたき倒した。
「もう午後だ!!」
怒りで4匹を一括し、倒れている4匹に背を向けて教壇に戻ると起き上がり座る4匹に対して、
「ライチ!レモン!ミント!シロップ!授業中に寝るなと何度言ったら分かるんだ!!」
と怒鳴った。その数秒後、授業の終わりを告げるベルが教室中に鳴り響いた、
「むっ!?もうこんな時間か、よし!今日はこれで終了!全員早く帰宅しなさい。・・・ただし!お前達は職員室だ!!」
「「「「ええぇーーーっ!!!???」」」」
4匹が同時に呟く、周りのポケモン達は「またあの4匹か」「ご愁傷様ー♪」「授業中に寝てるから・・・」「自業自得だね」「ばーか」などさまざまにいいながら帰り支度をし、教室を出て行く、




誰もいなくなった放課後の教室で、4匹は誰が悪いかについて無意味な口論を続けていた、
「絶対ライチが悪いって!!いきなり眠いとか言い出しやがって!!オイラびっくりしたよ!!」
ライチと呼ばれたポケモンはびくりと身を縮こませる。体がオレンジのような色に包まれ尻尾の先に炎が宿っている、ヒトカゲというポケモンだ。ライチは震えながら自分のせいと言い張るポケモンにしどろもどろに反論する、
「ななななななな!!なんでぼっぼっ僕のせいになななるんだよぅ!!しっ、シロップが眠いなら眠っちゃえばって言ったから僕は眠ったんだよぅ!!僕のせいにするなんてヒドイよ!!」
シロップと呼ばれたポケモンはぴくりと反応する。体が水色のような色に包まれ大きな甲羅を背中につけている、ゼニガメというポケモンだ。シロップはライチの言葉に反論した、
「なっ!?あんなの冗談に決まってるだろ!?何で本気にするんだよ!!やっぱりライチが悪いんじゃないか!!なぁミント!!そうだよな? 」
ミントと呼ばれたポケモンは呆れながらシロップを見つめる。体が黄緑のような色に包まれ背中に大きな種を背負った、フシギダネというポケモンだ。数秒間シロップを見続けた後ミントは口を開いた、
「シロップ、世の中に入っていい冗談と悪い冗談があるんですよ?だいたい、ライチよりシロップのほうが先に寝始めたじゃないですか。」
そういった瞬間にライチの顔が明るくなり、シロップにいった、
「ほ、ほら!やっぱり僕のせいじゃないんだ!シロップのせいじゃないか!!」
勝ち誇ったようにライチが告げると、付け足すようにミントが
「それでもライチも眠っていたんですからどっちもどっちですよ。」
と告げた、それを聞いたライチはまたびくりと身体を震わせ、ミントにいった。
「うぅぅ、でっ、でもミントも眠ってたんだから僕達とあんまり変わらないじゃないかぁ・・・」
ライチにそういわれるとミントはぎくりとして、理屈をつけて反論した。
「あ、あれは・・・その・・・光合成の一環です!だからただ眠ってるだけのライチやシロップとは違うんですっ!!」
などというとシロップがはんっと鼻で笑ってこういった。
「なーに屁理屈こねてるんだよ、素直にぽかぽか陽気で気持ちよくなって眠っちゃったっていえよな、そんなんだから理屈っぽいってみんなに言われるんだぜミントは。」
「屁理屈じゃありません!!だいたい、屁に理屈があるっていうんですか!!」
「そういうのを屁理屈って言うんだよ!!」
「あわわああわあわわあわ、み、ミントもシロップも喧嘩しないでよぉ!!」
「「ライチは黙ってて(くれ!!)(下さい!!)」」
「ひぃぃ、ごごごごごめんなさいぃぃぃ・・・」
「百歩譲って私が居眠りしたとしても、私はシロップみたいに下らない理由で眠っていたわけじゃありません!!」
「居眠りに理由も理屈も必要ないっての!!そもそもミントが馬鹿でかいいびきをかいて寝てたからキンウ先生に見つかったんじゃないか!!」
「女の子に向かって失礼です!!私はシロップやライチじゃありませんから、いびきなんてかきません!!」
「なななな何で僕を引き合いに出すんだよ!!いびきかいてるのはシロップじゃないか!!」
「あっ、てめっこのヤロー!!さりげなく罵倒するなよ!!」
「いたたたたたた、尻尾を引っ張らないでよォ・・・」
「言葉で負けたら暴力ですか?シロップは本当に野蛮ですね。」
「何だとこのやかまし女!!」
「何ですか!!この暴力男!!」
三匹は押し問答を繰り返し争っている、そこで忘れ去られたポケモンがゆっくりとした口調で言葉を紡ぎだす。
「みーんなっ、ちょっと落ち着きなよっ♪」
「「「何っ!!?レモン!!?」」」
レモンと呼ばれたポケモンは鬼気迫る三匹のポケモンをじいっと見つめた。体が黄色のような色に包まれ頬に赤い丸がついている、ピカチュウというポケモンだ。レモンはさっきと同じようにゆっくりと言葉を吐き出した。
「そんなくだらないことで争うくらいならさ、僕が全部悪いってキンウ先生にいっておくよ、そうすればみんな早く家に帰れるよねっ♪」
「「「えっ!?」」」
唐突に聞こえたレモンの案にその場にいた全員が黙ってしまう・・・レモンは自分の身よりも真っ先に仲間のことを思ってそういったのだ、それを考えるとライチたちは喧嘩することが馬鹿馬鹿しくなってきた。
「それじゃあみんなは先に帰っててよ、事情は僕が説明しておくからさっ♪」
レモンは明るい声でそう告げると教室から出ようとドアに手をかけた。
「「「待って!!!」」」
教室から出ようとするレモンを全員が制止させる。
「・・・どうしたの?早く帰りなよっ、変なポケモンに襲われるよ?」
レモンがそう告げるとそれぞれが口を開いてそれぞれの思いを口にした。
「やっぱり・・・僕達も謝りに行くよ・・・」
「オイラ達全員が悪いんだから・・・レモン一人でいかせるのはかわいそうだよ・・・」
「私達が馬鹿でした・・・だから、全員で謝りに行きましょう。」
それぞれの申しわけなさそうな顔をレモンはじいっと見つめると、明るく快活に一言だけ。
「うんっ♪」
というと、にっこりと笑った。
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~一章第二幕~
日もだいぶ傾き始め、美しい黄昏が見え始めた時間にライチたちは職員室のドアを叩いた。
「失礼します・・・」
がらりとドアを開けると一番手前の椅子にキンウ先生が座っていた、ライチがびくびくしながらキンウ先生に話しかけた。
「あっああああっああっあのっあのあのっ・・・きっ、キンウ先生・・・その・・・あぅぅぅぅ・・・えっ・・・うっ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
キンウ先生は何も喋らずただ黙々と何かを書き連ねている。ライチは泣きそうになりながらこみ上げてくる嗚咽を堪えて一言一言を搾り出すように喉から謝罪の言葉吐き出した。
「うっ・・・ひっく・・・キンウ先生ぃぃ、いっ、居眠りしてっ、ごっごっごめんなざい゛ぃぃぃ・・・」
苦しげに言葉を紡いだ後、その場の空気に耐えられずにライチが泣き出した。ライチが謝った後に続けてミントが、
「本当に申し訳ありません。謝罪します・・・」
と反省の言葉を紡ぎ次にシロップが、
「先生!!本当にすいません!!」
と矢継ぎ早に謝罪し最後にレモンが、
「先生ぇ、ごめんなさい。」
と、ゆっくりといって深々と頭を下げた。数十秒の沈黙の後、キンウ先生が言葉を紡ぎだした。
「・・・うん、お前達の気持ちは確かに伝わったよ。よし!もうすぐ暗くなるからもう帰りなさい。先生が校門のところまでついていってやるから、もう泣くんじゃないライチ。」
それだけ言うとキンウ先生は立ち上がりライチの頭を優しく撫でた。ふわりとした羽のやわらかい感触に、ライチは泣くのをやめキンウ先生を見つめてにっこりと笑いかけ、
「・・・はいっ・・・ぐすっ」
と返事をした。その後、4匹はキンウ先生に釣られるように職員室を後にし、長い廊下を歩いていた。歩いている途中でミントが興味本位からキンウ先生に問いかけた。
「キンウ先生、先生はどうしてあの物語をほとんどの授業中に音読するんですか?ただ単に好きというだけでは無い気がするんですけど・・・」
ミントの問いかけにキンウ先生は少し驚いたような顔をして、嬉しそうに答えた。
「ミントは鋭いな。あの物語のポケモンたちはね・・・この村の・・・ライラの村の出身という事実があるんだ。ただ単に好きということではなく、この村から派生した物語だからこそ、みんなに聞かせてこの村のことや物語のことを覚えていて欲しいと先生は思っているんだよ。」
世界を救ったポケモンがこの村の出身という事実に驚いたミント達であったが、キンウ先生がなぜ世界転生の物語をみんなに聞かせるのかという点についてはとても納得したように頷くと、
「先生は・・・この物語が先の獅子末代まで続くことが望みなんですね?」
と、もう一度問いかけてみた。その問いにキンウ先生はゆっくりと言葉を紡ぎだす。
「そうだな。少しでも覚えてくれるとこの世界がなぜ救われたのかということを思い出してくれるだろう?別に崇拝して欲しいわけじゃない、ただ少しだけでも感謝の気持ちを持って欲しいと思っているだけなんだ。最近はそういう気持ちを忘れたポケモンも多いだろう?」
キンウ先生と話しているうちに4匹は校門の前にやってきた。
「さあ、また明日もあるから、早めに帰って眠りなさい。」
キンウ先生が優しい言葉をかけてきびすを返していく。外はすっかり日が落ちていて。綺麗な星がきらきらと瞬いている。
「さっ、帰ろうぜ!!オイラ達の家にさっ!!」
シロップが先頭に立ち、4匹は自分達が住む大きな樹の家に向かって歩き出す・・・
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キンウ先生は職員室に戻った後、また机に向かい何かを書き連ね始めた。
「キンウ先生、何を書いているのですか?」
キンウが書く手をいったん止めて顔を上げると、一匹のポケモンが立っていた龍を連想させる長い体に、きらきらと輝く透き通った水晶球を首につけ、おでこに角の生えた、ハクリューというポケモンだ。
「ああ、シリュウ先生。いやなに、あの4匹のために今日の授業の内容を総まとめしたものを作っているんですよ。このままでは学力が他のポケモンたちに著しく離されてしまいますからね。」
キンウ先生が笑いながらそう答えると、シリュウ先生と呼ばれたハクリューは小首をかしげながらキンウ先生に向かってこう言った。
「うーん・・・あまり甘やかしているとあの子達はキンウ先生に依存してしまう気がすると思うんですけど。」
シリュウ先生がそういうと、キンウ先生は一瞬だけ考えるような顔をするとシリュウ先生の顔を見て、困ったような顔をして言葉を紡ぎだした。
「たしかにそうかもしれません。しかし先生、彼らは幼いころに両親と他界し、その後は子供達だけで生活しているのですよ?このまま保護者から教育を受けずに育ってしまったら社会に適合できるかどうか分かりません。そういうときこそ教職員である我々が親身になって接するべきだと私は思います。」
キンウ先生が熱っぽく語るのを見てシリュウ先生はなにやら困ったような顔をしてもう一度言葉を紡ぎだした。
「それはそうだと思うのですが・・・流石にそこまでやると他の生徒達に難癖をつけられますよ?あの4匹だけひいきされてるとか何とか。・・・それに、キンウ先生は本当にあの4匹ができない子だとお思いなのですか?」
唐突に問われた言葉にキンウ先生は書き物を一時中断し、シリュウ先生のほうを向いてゆっくりと疑問の言葉を投げかけた。
「シリュウ先生はあの子達ができる子だと思っているのですか?」
「ええ、勉学はもちろん、ゆとりの輪を育むこともできると思いますが・・・キンウ先生はそう思わないのですか?」
できる。そう答えられてキンウ先生はシリュウ先生の言葉を考えてみた・・・本当にそうなのだろうか・・・学校に来てもあまり楽しそうではないのに・・・本当にそうなのだろうか・・・と。
「キンウ先生が考えるのはもっともです。」
キンウ先生の心を読み取ったかのようにシリュウ先生が言葉をゆっくりと吐き出す。
「しかし、彼らが学校が嫌いなら学校になど来ていないでしょう?授業内容はほとんど聞かずとも遅刻や欠席などは一度もありません。・・・用は彼らのやる気しだいなんですよ。」
やる気・・・それがあの4匹にあるのだろうか・・・キンウ先生は自分が思ったことをそのまま口にした。
「やる気が彼らにあるのでしょうか?」
「それを奮い起こすのも教職員である我々の仕事でしょう?」
的確に答えられて、キンウ先生は一瞬考え・・・確かにそうだと思った。
「・・・そうですね。シリュウ先生の言うとおりでした。彼らをやる気にさせるのは担任である私の仕事ですからね!!」
キンウ先生の言葉にシリュウ先生も頷き、そして呟くようにいった。
「・・・でも・・・私には彼らが何かをしそうな気がするんですよ・・・」
突然呟いたシリュウ先生の言葉にキンウ先生は一瞬だけ思案顔をして、どういうことかとシリュウ先生に問いかけた。シリュウ先生は問いかけに歯切れが悪く答えた。
「うーん・・・その・・・これは私の勘なんですけど・・・彼らはこの村から近いうちに出て行って・・・その・・・とてつもないことをやるような気がするんです・・・あくまで私の勘ですけど。」
キンウ先生はははと笑うとシリュウ先生にこう言った。
「先生。あの子達はこの村から出て行くわけないじゃないですか。めんどくさいとか何とか言ってずっとこの村に住み続けますよ。」
「・・・そうですね。私の考えすぎでしたね。ははははは・・・」
と、シリュウ先生も笑った。キンウ先生はまた椅子を机に向け書き物を再開した。
・・・シリュウ先生の言葉を心のどこかおくに引っ掛けながら・・・
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~一章第三幕~
その夜、ライチは不思議な夢を見た。
黄昏時の学校の長い長い廊下の一番奥にある倉庫用の部屋・・・
そこから不思議な声が聞こえる・・・
我等の声を聞きし者達よ・・・我等を永久の眠りから覚ます者達よ・・・
どうかどうか・・・我等の願いを聞き届けてくれまいか・・・
ライチは何故者"達"といっているのかとても気になった・・・しかしそんなことを気にする暇もなく、ライチは吸い込まれるように部屋の扉を開け・・・
そこで目が覚めた・・・







目を開けると見慣れた天井が視界いっぱいに広がる・・・目を擦って欠伸をして小さく伸びをした後、ライチは先ほど自分が見た夢について思案した・・・
「・・・何だったんだろう・・・変な夢だなぁ・・・」
自分のベッドから跳ねるように飛び起き、顔を洗うため洗面所に向かう。洗面所に着くとすでにレモンが起きていて眠そうな顔に冷水をかけていた。・・・レモンが足音に気付きライチのほうを向くといつもと変わらない笑顔でゆっくりと
「お早う・・・ライチ・・・」
と挨拶した。つられてライチも
「あ・・・お早うレモン・・・」
と、生返事を返してしまう。レモンは顔を洗い終わったあと朝食の準備をするため台所に向かっていった。台所に向かう前にライチに
「ミントとシロップを起こしてきてくれないかなっ」
と、ライチに告げた。ライチは頷くと、先ほど自分が寝ていた寝室に戻っていった。寝室に戻り先に起きそうなミントを揺り起こす。
「ミント・・・起きて・・・朝だよぅ・・・」
穏やかな寝息を立てて幸せそうな顔をして眠っていたミントはライチに揺り起こされると少しだけ不機嫌そうに「うぅ・・・ん」と唸ると少しだけ目を開けのそのそと身を起こし、ライチの姿を肉眼で確認すると
「お早うございます。ライチ・・・」
と、淡白に朝の挨拶をした。ライチはその後ミントの隣でやかましいいびきをかいて眠っているシロップを揺り起こそうとした。
「シロップ・・・起きて。もう朝だよっ・・・遅刻するよ?」
ライチはシロップの体をゆさゆさと揺らして軽く頭を叩く・・・シロップはもぞもぞとベッドの中でもがくと・・・派手にベッドから転倒した。
「いってぇ・・・あー・・・お早う・・・ミント、ライチ。・・・今日の朝ご飯何?」
床に思いっきりぶつかった頭をぽりぽりとかきながら間の抜けた質問をしたためミントとライチは思わず吹き出してしまった。
「ぷっ・・・」
「くすくすくす・・・」
二人がケタケタと笑っているのをシロップはぽかんと見つめて
「何?オイラなんか変な事いった?」
などと聞いてしまった。シロップの問いかけに笑いながらミントが答える。
「ふふっ。いえ、シロップらしいなぁって。ね?ライチ」
「うんっ。そうだねっ。あはははっ・・・」
「・・・・・・・・????何だぁ?」
シロップはその場に居るものの空気や気持ちを若干だが和らげたり穏やかにすることができる。この間ライチと口喧嘩をしたときもいきなりシロップがやってきて
「ただいまー!なぁなぁ聞いてくれよ二匹共!!さっき道端でお金拾っちゃった!これでオイラもブルジョワの仲間入りだぜ?」
と、突然言い出したのだ。あまりにぶっ飛んだ言葉と突拍子もない出来事に二匹は腹を抱えて大笑いしたことがあった。そのためにシロップは知らず知らずのうちにムードメーカのような存在になっていた。居るだけでその場を和ませる力をシロップは持っているのだ。
・・・本人はそのことにまったく気付いていないのだが。





三匹が変な空気を作りながら話していると、突然ガンガンという音とともにエプロンをつけお玉とフライパンを持ったレモンが寝室にひょこっと現れた。
「みんな、起きたなら喋ってないでベッドを整えてよ。もうご飯できてるよ?」
それだけ告げるとさっときびすを返し、再び台所に消えていく。あわてて三匹は自分が眠っていたベッドを整えると我先にと台所へ走っていった。






全員が台所の椅子に座るころにはレモンがすでに食事を並べ終わってエプロンを外しているところだった。
「あははは、ご飯のことになるとみんな早いね。お早う、シロップ、ミント」
快活に笑いながらレモンが全員分のフォークとナイフを並べていく、大きなお皿の上には綺麗に焼かれ、半分に切られたトースト、レタスの上に盛られたポテトサラダにはレモンが自分で作ったクラボの実とモモンの実を混ぜ合わせたドレッシングがかかっている。その隣にからりと揚げられ綺麗な狐色をしたオニオンフライ。スープ皿にはマトマの実をふんだんに使ったスープがつけられ、左端の小さなお皿にはナナの実とオレンの実をチーズに混ぜたフルーツチーズが置いてある。朝ご飯にしては少々豪華すぎるチョイスである。
「「「「いただきまーす!」」」」
4匹が同時に音頭を取り朝ご飯にありつく。食べながらミントがレモンに言った
「レモン、いつもありがとうございます。朝夕とご飯作ってもらって・・・」
ミントの感謝の言葉にレモンはあははと笑いながら
「いーよいーよ、僕が好きでやってることだし。誰かがご飯作らなきゃならないのは事実なんだしねー。」
などと軽く流してしまう。ミントはそんなレモンを見て、申し訳なくも思い、同時にありがたくも思いスープを啜った。口の中いっぱいに広がる刺激は、眠かった頭を起こすのに十分だった。スープを啜りながらミントがぼそりと呟いた、
「私もご飯・・・作ってみようかな・・・」
その呟きにライチはトーストを喉に詰まらせごほごほと咳き込み、シロップは危うくスープ皿を取り落としそうになった・・・二匹の反応を見てミントはむすっとした。
「何ですか?その反応は・・・」
ミントがそういうとライチはむせこみながら
「やめといたほうがいいと思うよ・・・」
といいシロップも
「オイラもそう思う・・・」
といったためますますミントがむすっとした。唯一何の反応も示さずにたっぷりとバターを縫ったトーストにのんきに齧り付いていたレモンが口を開いて
「僕も今はやめておいたほうがいいと思うよ?」
と、コメントした。レモンの言葉にミントは
「今はってどういうことですか?」
と問いかけた。トーストを皿においてポテトサラダを食べながらレモンは
「好きな人ができると料理が上手くなるんだ。だから好きな人ができたときに作って。好きな人と一緒に料理の出来具合や成長を楽しむといいよ」
と答えた。好きな人という言葉に反応してミントがさらにレモンに問いかけた。
「じゃあレモンは好きな人がいるんですか?」
その問いにレモンはのんきに
「んー?いないよ?」
と答えた。ミントは訝しげに
「じゃあ何で料理を作るんですか?」
といった。レモンは笑いながら
「あはははは、さっきいったでしょ?好きで作ってるんだし誰かが作らなきゃ。それに料理作るのは楽しいしねっ」
といってデザートのフルーツチーズを頬張った。回答になっていないような感じもしたがこれ以上話しても意味がないと感じ、ミントはそれ以上詮索するのをやめ、
「お金は後どのくらい持ちますか?」
と、経済的な話に切り替えた。食べ終わった後の食器を流し台に持っていって洗いながらレモンが
「もう半分もないよー、僕達学業課程を修了したら働かなくちゃ」
と答えた。もう半分もない。その言葉を聞くとミントは深刻な顔をした。
「私達の両親が残してくれたお金を集めて低予算で何とかやりくりしてましたけど。学費も馬鹿にはなりませんから・・・もっと食費を削らないと・・・」
時折うーんと呟くミントを見つめて食事を済ませて皿をレモンに渡していたライチが
「あ・・・あんまり深く考えると頭痛くなるよ?」
と心配そうにミントに話しかけた。ミントは本気で心配してくれたライチに微笑みかけると
「そうですね、あまりお金の話はしないようにしようってみんなで約束しましたんですよね。すみません。」
表面ではそう言っているものの、ミントの顔はやはり優れなかった。もう半分もない。この言葉が相当きたらしい。話題を変えようとライチはいろいろな話をひねり出して・・・自分が見た夢の話をみんなに話した。
「そっ、それよりさ、僕今朝不思議な夢を見たんだよ。」
夢、という言葉に全員がぴくりと反応する。シロップはライチをまじまじと見つめミントは流し台に持っていこうとした皿をテーブルに再び置きレモンは洗い物を中断してライチのほうを向く。
「どんな夢だったの?」
「分かりやすく教えてくれよ」
「私も気になります・・・」
それぞれが口々にいう。その反応を待ってましたとばかりにライチが口を開いて語り出す。
「僕さ、夢の中で夕方ごろの学校の廊下に立ってたんだ。・・・夢にまで学校にいるなんて変だよね、あはは・・・。それでその長い廊下の一番奥の倉庫扱いされてる部屋からさ、不思議な声が聞こえるんだよ・・・えっと・・・何ていってたんだっけ・・・あれ?」
ライチが話し途中で必死に記憶の糸を手繰り寄せていると横からレモンが口を開いた。
「我等の声を聞きし者達よ・・・我等を永久の眠りから覚ます者達よ・・・
どうかどうか・・・我等の願いを聞き届けてくれまいか・・・でしょ?」
「そうそう・・・・・・・・えっ?」
ライチはレモンの言葉に心底驚いた。なぜならレモンも同じ夢を見ていたのだと理解できたからだ・・・
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~一章第四幕~
「僕も同じような夢を見たんだっ」
洗い物を再開して、4匹分の皿を洗い終えたあと、それを綺麗に拭いて食器棚に戻した後。レモンが口を開いてそういった。
「オイラもそんなよーな夢なら見たぜ。全然わかんない夢だったけど」
シロップが学校に行く準備をしながらぼそりと呟く。
「私もみんなと同じような夢を見ましたよ。」
レモンの片づけを手伝いながらミントも他の二人と同じようなことを口走る。ライチはしばらく黙っていたが、不思議そうな顔をして全員に話しかける。
「変だね?みんながみんな同じ夢を見るなんて。・・・これじゃあ夢じゃなくてテレパシーみたいだよね・・・」
ライチの言葉をしばらく考えていた三匹だがふと壁に掛けられた木製の柱時計に目をやると・・・かなり時間が迫っていることに気がついた。
「まずい!!のんきに話してる場合じゃないよ!!早く支度しなくちゃ!!」
レモンが叫ぶと全員が慌てて支度をし、しっかりと戸締りもせずに自分達の家から飛び出してわき見もせずに学校まで走って言った。






4匹が学校に着くころには授業が始まるまさに5分前ぐらいで、転がり込むように教室に入り、自分の席に着くころにはチャイムが鳴り終わっていた。
「めずらしいな。お前達がこんなギリギリに来るとはな・・・寝坊でもしたか?」
キンウ先生が笑いながらそういって、教室にいるポケモン達からも小さな笑い声が漏れる。
「「「「遅れそうになってすいません」」」」
4匹が同時に返事をする。キンウ先生は一瞬きょとんとしてから
「・・・んー、まぁいい。授業を始めるぞ。」
キンウ先生が黒板に長々と文字の羅列を書いていく、ライチ達はそんなことを気にも留めずに今朝全員が見た"夢"のようなものについてひそひそと話をしていた。
「結局あの夢って何なんだ?」
シロップが話を切り出す。レモンは一瞬思案顔をすると言葉を返した。
「んー・・・それ以前に、あれって本当に夢だったのかなっ?」
レモンはさらにこう続けた。
「なんだか夢って感じじゃなかった気がするんだ。まるで本当にあの場にいるみたいな感覚だったような気がするんだ。何ていうのかな・・・精神体だけがそこにあるって感じかな?うーん、自分でもよくわかんないやっ」
レモンはこめかみの辺りをぽりぽりとかくとえへへっと笑った。
「(精神体・・・)」
レモンの言葉をライチは自分なりに考えてみた。レモンはよく分からないといっているが。大体表現はあっていた。あれを夢とたとえるには少々不可思議な点がいくつも見つかる。なぜ全員が同じ夢を見たのか。なぜ村の学校なのか。謎の声の主がいっていた願いとは何なのか・・・そしてあの夢のような空間の中で感じた風の音。しっかりと踏みつけている学校の廊下の床の感触。どれもまるでいま自分がここにいるかのように感じたあの感じは夢という一言で片付けるにはあまりにも滑稽でお間抜けだ。ライチがいろいろと考えをめぐらせているとミントが蔓でライチを小突いた。
「ライチ、キンウ先生がこっちを見ていますよ、ノートを開いて教科書を読むフリでもしておかないと当てられますよ?」
「えっ?・・・!!あっ・・・」
ミントに小突かれてライチはキンウ先生のほうを見ると、あきらかにこちらを見ていた。というかライチだけをじっと見ているようだ。慌てて鞄の中から教科書とノートを引っ張り出すと、適当にページを開いて机の上に置いておいた。
「・・・ちゃんと授業中はノートを開くように。わかったかライチ?」
キンウ先生が名指しでライチの名前を呼ぶ。ライチは顔を真っ赤にしてうずくまり、周りのポケモンたちからはくすくすという笑い声が聞こえた。
「うぅぅ・・・」
ライチは恥ずかしくてその時間中ずっと俯いたまま黙りこくっていた。
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「結局のところ・・・あの夢みたいな空間はオイラ達に何を伝えようとしたんだろうな・・・自分で言ってて理解できなくなってきた。あー頭痛い・・・」
お昼休みの時間に全員は夢のようなあの出来事について自分達の考えたことを吐露していた。シロップは自分がいった言葉が難しすぎて頭を抱える。
「伝える・・・というよりは助けを求めていたっていったほうが正しいかもしれないねっ」
レモンがシロップの疑問に付け加えるように口を開く。レモンのいった言葉を思案してミントが三匹に聞こえる声でいう。
「助けを求めていたのなら・・・どうして私達に助けを求めたんでしょうねぇ・・・」
ミントが考えるように頭を抱えて「うーん」と唸っている横で、ライチが自分の考えを口に出す。
「僕達に助けを求めているってことは・・・僕達にしか助けることができないってことなのかな?うぅぅ・・・よくわかんないや」
ライチも頭を抱えて唸りだす。全員の考えがあいまいすぎて八方塞状態のとき、レモンが口を開いた。
「とりあえず・・・夕方になれば分かるんじゃないかな?夢かどうか・・・だからあまりこのことは考えないでおこうよ。頭痛くなるしねっ♪」
レモンの言葉に三匹が頷き、自分の席に戻って夕方になるのを待つことにした。しばらくすると授業開始のチャイムが鳴り響き、キンウ先生が教室に入ってきた。
「よし、みんなそろってるな?午後はぽかぽかするからうとうとして眠らないようにしろよ、そこの4匹・・・」
教団に上がり、すでにうとうとし始めたライチ達を起こすように喋った。名指しで呼ばれて4匹はびくりとして姿勢を正して前を向いた。
「よしっ。授業を始める・・・教科書を開いて」
キンウ先生の言葉とともに教室にいるポケモン達が一斉に教科書を開く・・・ライチ達も教科書を開き、視界いっぱいに飛び込んでくる文字の羅列を目に焼き付ける。キンウ先生は喋りながら午前中と同じように黒板につらつらと文字を書いていく。
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「・・・というわけで。コイキングのようなポケモンの中にも稀に突然変異を起こして本来なら覚えないような技を覚えるということだ。・・・おや、もうこんな時間か」
キンウ先生が教室の壁に掛けられた時計にちらりと目をやる。その仕草と同時に終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
「おっと、終わってしまったな。よし!今日はここまで。みんな早めに帰るように!」
キンウ先生がそういうと、全員が自分の鞄に教科書を詰め込んでいそいそと教室を出て行った。ライチ達は鞄を持って外を見た、昨日と変わらない美しい黄昏が輝いている。
「・・・もう夕方かぁ・・・」
レモンは感慨深げに言葉を吐くと窓の外できらきらと輝く黄昏を見つめた。
「結局何にもなかったなぁ・・・やっぱり夢だったんだよ。」
少し残念そうにシロップが呟く。そんなシロップを見てミントはこういった。
「何にもないほうがいいと思いますよ。本当に何かあったら嫌ですから。」
ライチはそんな2匹を見て小さく
「二匹とも本当に仲がいいなぁ・・・」
と、呟いた。4匹が動かないのを見ていたキンウ先生が警告のように告げる。
「おーい、早く帰らないと教室に閉じ込められるぞ。」
それを聞いた4匹は椅子から立ち上がるとゆっくりとした動作で教室から出て行った・・・それを遠巻きに見送る形となったキンウ先生がぼそりと呟く。
「あの子達・・・どうしたんだ?今日は居眠りもせずにずっと外を見てたけど。」



「いやー、考えるだけ無駄だったねっ♪早く帰ってあそぼっか♪」
レモンが明るい声で言葉を紡ぐとシロップが笑いながら言葉を返す。
「そうだなー。今日はいろいろ考えすぎて疲れちゃったからその分体を動かしたい気分だよ。」
それを利いたミントが呆れ調で言葉を紡ぐ。
「何いってるんですか。シロップは頭がこんがらがるって言って殆ど会話に参加してなかったじゃないですか。」
ミントにずばりと指摘されるとシロップはぺろりと舌を出して
「ははははは・・・バレた?」
などと笑って返した。ミントはそんなシロップを見て呆れながらも
「でも・・・シロップのそういう所・・・私は大好きですよ?」
とほんのりと顔を赤らめていった。ミントらしかぬ言葉にシロップはどぎまぎしながら
「えっ?・・・そっ・・・そっか・・・あー・・・ありがとな・・・」
とギクシャクした言葉を返した。そんな初々しい二人を見てレモンはいつものニコニコ顔を少しだけニヤニヤ顔に変えて
「やるじゃん♪ミントっ♪」
とミントを小突いた。ミントは顔を真っ赤にしてぷくっとむくれると
「かっ・・・からかわないで下さいよっ!・・・もぅ・・・」
などといってそっぽを向く。その中でいまいち空気が読み取れないライチは三匹に聞こえるように大きな声で
「シロップが運動不足ならさ、今から走って帰ろうよ。たれが一番早く着くか競争しない?」
と、何とも空気を読んでない発言をした。シロップがライチの言葉に反応すると
「えっ?・・・あぁ!!そうだな!!競争しようぜ!!」
といって。ぎくしゃくとミントの傍から離れた。それを見たレモンは深いため息をつき
「あぁ・・・ライチもシロップと同じくらいDQNだったんだ・・・忘れてた・・・」
などと失礼な発言をした。ライチはそのことにまったく気付いておらずレモンとミントに
「走るよ?もたもたしてると置いてくよー」
とのんきに告げた。レモンはもう一度深くため息をつくと、ライチたちに聞こえないような小さい声で
「・・・まぁ、ライチのそういう所・・・嫌いじゃ・・・ないけどね」
と呟いた。レモンが横に加わったことを確認すると大きく息を吸い込むと
「いくよー!!よーい・・・」
全員が走り出そうと構える。ライチがドン!といおうとしたその時、頭の中に声が響き渡った。


我等の声を聞きし者達よ・・・
「・・・!!」
ライチが黙ったまま立っていると流石に不可思議に思い、シロップたちがそれぞれ声をかける。
「ライチ?どうしたんだよ?」
「お腹でも痛いの?」
「何とかいってください」
ライチは仲間達の声をまったく聞いていなかった。夢に聞こえたあの声、あの言葉が鮮烈に頭の中に響き渡る。


我等の声を聞きし者達よ・・・我等を永久の眠りから覚ます者達よ・・・
大いなる光を持つものたちよ・・・久遠の彼方へ飛び立つ希望たちよ・・・
どうかどうか・・・我等の願いを聞き届けてくれまいか・・・
我等の声に耳を傾けてくれないか・・・


夢の中では聞き取れなかった部分が頭の中に直接叩き込まれる。気がつくとライチは正面玄関から左右に広がる長い長い廊下に引き返し、左の奥にある倉庫用の部屋へと一歩ずつ歩き出した・・・
「ライチっ!?どうしたんだよ!!戻ってこいって!!」
「どこへ行くんですか!!ライチ!!」
「待って!!止まってライチ!!」
シロップたちが止めようと必死に声をかける。もちろんライチは止まることなくどんどん先へ進んでゆく。ライチの様子が普通ではないと思ったレモンは。
「追いかけよう!!何か嫌な予感がするんだ!!」
シロップとミントは頷くと、ライチを追いかけていった。
ライチが倉庫用の部屋に辿り着き・・・その場から微動だにせず立っているのを見て、レモンたちが駆け寄って声をかける。
「ライチ!!どうしちゃったのさっ!!」
「寝てるのかよ!?だったら起きろって!!おーーーーーい!!」
「ライチ!!聞こえないんですか!?」
それぞれが耳元で呼びかけるがライチは聞こえたような気配もなく何かを呟いた。
「大いなる勇気・・・全能なる愛・・・溢れる知識・・・そして・・・輝く・・・希望・・・僕は・・・勇気・・・大いなる・・・"勇気"・・・」
熱に浮かされたようにぶつぶつと呟きながら、ライチは部屋の扉を開け、吸い込まれるように中へと消えていった・・・
「「「ライチっ!!!!!!」」」
シロップ達が後を追うように次々と扉へ飛び込んでゆく。そしてレモンが最後に入り込むのと同時に扉が勢いよく閉まると、ガチャリという錠がかかる音とともに何事もなかったかのように廊下は再び静けさを取り戻した・・・
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~一章第五幕~
薄暗い洞窟のような空洞の中で、レモンは目を覚ました。
「うっ・・・うぅ・・・あ、あれ?ここは・・・学校じゃあ・・・無い・・・?」
レモンはずきずきと痛む頭を抑えて立ち上がる。飛び込んだときにシロップの甲羅に頭からぶつかったようで、酷く頭痛がする。あたりをきょろきょろ見渡すと傍に他の三匹が倒れているのを見つけ、優しく揺り起こした。
「起きてよ。シロップ、ライチ、ミント」
レモンがゆさゆさと三匹の体を揺さぶる。すると倒れていた三匹がぴくりと動き、ゆっくりと目を開けていく・・・
「うっ!・・・うぅ・・・レモン?・・・どこだ・・・此処」
「・・・うぅーん。あれ?レモン。此処はいったいどこですか?」
シロップとミントが先に起きて周りを確認する。あきらかに知らないところで目が覚めていささか戸惑っているようだった。
「どこだか僕にも分からないんだ。ライチを追いかけて・・・部屋に入ったはずなんだけど・・・」
ライチ、というとミントとシロップが顔を見合わせ、思い出したように慌ててレモンに質問する。
「そうだ!!ライチ!!あいつはどこにいるんだ?」
「急に人が変わったようになってしまったんですが・・・」
二人の質問にレモンはいつもと同じようにゆっくりとした口調で言葉を紡ぎだす。
「ライチなら二匹の傍で倒れてるよ。でも・・・さっきのライチ・・・やっぱり変だよね」
二匹は同時に横を見る。そこには確かにライチが気を失って倒れていた。それを見て二人は安堵の息を漏らす。
「・・・んっ・・・うぅん・・・」
ライチを見ているとライチがもぞもぞと動いてゆっくりと目を開ける。
「・・・ここ・・・は・・・?」
まだ完全に意識が戻っていないのか・・・ぼけっとして辺りを見回しシロップたちの姿を視界に捉える。
「シロップ・・・ミント・・・それに・・・レモンも・・・」
自分達の名前を呼んだことに正気を取り戻したのだと確認したシロップ達は。ライチに抱きついてもみくちゃにした。
「この莫迦野郎!!心配かけさせやがって・・・オイラほんとに心配したんだぞ!!」
「ライチ!!・・・よかったです・・・本当に・・・よかった・・・」
「もうっ・・・ライチの馬鹿ぁ・・・遠くに行かないでよ・・・みんなに心配かけて・・・」
「うひゃあ!!いたたたた・・・あんっ・・・尻尾をつかまないでったらぁ・・・」
三匹にいろいろいわれてライチはすっかり意識を取り戻す。同時に・・・自分がどれだけ友達に愛されているかを知った。
「ごめんね・・・なんか心配かけちゃったみたいで・・・」
ライチが申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。すると三匹は首をゆっくりと横に振るとこう言った。
「確かに心配はしたけど・・・無事ならそれでいいよ。」
「いつものライチに戻ってくれて・・・本当によかったです」
「ライチがいないと僕達火が消えたみたいになっちゃうからねっ♪」
それぞれの思いを口々語るのをライチは聞き、頷いたあとに改めて辺りを見回した。
「此処はどこなんだろう・・・僕達は学校にいたはずなんだよね」
ライチの言葉に三匹が頷く。ライチは立ち上がり体についた砂を払うと
「とりあえず出口を探してみようよ・・・ここはなんだか嫌な感じがする・・・あまり長くいないほうがいいよ」
三匹はもう一度頷くと立ち上がり、奥へ向かって歩き出した・・・
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「長いなぁ・・・いったい誰なんだ?この洞窟を作った奴は」
しばらく歩いているとシロップが声を上げてそういった。シロップの言葉にミントが返す。
「ポケモンが作ったのではなくて自然にできた洞窟ではないんですか?このぐらいの広さの天然洞窟なら溶岩が流れた後にできたりしますから」
ミントの仮説にシロップが小首を傾げて疑問を口にする。
「溶岩ん!?でもさぁ、この辺に火山なんてあったかなぁ・・・」
シロップの素朴な疑問にミントもふと自分のいったことに疑問を持ち始めた・・・
「あ、そういえばそうですね。この辺りには低い山しかありませんからね、だとしたらいったいこの洞窟はどうやってできたんでしょうね?」
4匹の中では頭の回転や思考力が一番高いミントが首を傾げて?を浮かべているため4匹は益々頭がこんがらがった。
「あまり考えると頭が爆発するよっ♪どうやってできたのかなんてどうでもよくないかなっ♪あはは・・・」
考えるのがめんどくさくなったレモンがけらけら笑いながら話を打ち切るように別の話を紡ぎだした。
「それよりこの洞窟に出口って本当にあるのかなっ?」
レモンが笑いながらいっているが実際は笑っている場合ではない。しかしレモンは笑って話している。ライチたちの顔色を伺いながら・・・まるで不安をなくすかのように明るく振舞っていた・・・そんなレモンを見てミントは表情を曇らせ心配そうな顔でレモンを見ていた。


レモンは自分のことより他人のことを真っ先に考えるタイプの女の子だった。自分がしたいことや欲しいものなどはまったく言わずに、みんながして欲しいことややりたくないことなどを総出で引き受けていた。願望などがあってもあまり口にも出さず。ただみんなの言葉に耳を傾けてみんなの意見の中からみんながレモンにして欲しいことを愚痴一つこぼさずにそつなくこなしてきた。全員分の食事を作ったり、部屋掃除をしたり、作物などの栽培や採取、雑草の除去やベッドシーツの洗濯などを辛いとか苦しいとかなどの言葉一ついわずに笑顔でやっている。そういうところにシロップやライチは気づいていなかったがミントだけは気づいていた。
ミントは不安だった。このまま自分の言いたいことややりたいことを口に出さず心の中に溜め込んでいていつか爆発するのではないか、自分で自分を追い詰めて押しつぶされてしまうのではないかと。


「・・・何あれ?あそこがなんか光ってるよ?」
ライチの言葉で我に返ったミントが前を向くと、右に曲がる道の壁が淡く光っていた。不思議に思っていた四匹だが近づいてみてみることにして、ライチが先頭に、シロップがしんがりになり先へと進んだ。
道を曲がった先でライチたちが見たものは・・・巨大な水晶に閉じ込められた4匹のポケモンだった。七色の光を放つ4つの水晶の中には生きているのか死んでいるのか分からない謎のポケモン達がたたずんでいた・・・三匹は見たこともない鳥ポケモンだった。一匹は炎のように燃える羽を持ち、一匹は氷華のようにきらきらと輝く美しい羽を持ち、一匹は光る雷のような眩いほどの羽をそれぞれ持ち、まるでお互いの存在を確認するかのように向かい合って立っている。その真ん中に見たこともないような草タイプのポケモンが眠っていた。三匹の鳥ポケモンよりも小さく薄い羽のようなものを背中に生やし、触覚のようなものが二本頭から生えていた。
「・・・何だよ・・・このポケモン達・・・なんで石の中に入ってるんだ?」
シロップが目を見開いて後ずさりする。ミントが恐ろしいものを見るような瞳で水晶体を見上げる。
「このポケモン達はいったい・・・皆ポケモンなんですよね・・・見たこともない種類です・・・」
一言一言をまるで呪文のように呟いてミントが視線をおろした。レモンは考えるような仕草を見せ、数秒の後に口を開き言葉を紡ぎだす
「もしかして・・・ライチを媒介にして僕達を呼び出したのは・・・このポケモン達・・・?」
レモンがさも当たり前の言葉のように言うと、ライチがぶるっと震えてびくびくしながら言葉を吐き出す。
「やっ・・・やめてよレモン・・・どう考えてもこのポケモン達は死んでるよ・・・死んでるポケモンが僕達に話しかけるなんて・・・」
おかしいよ。そう言葉を吐き出そうと思った瞬間にまた頭の中に声が響く。今度はライチだけでなく、全員に。


・・・・見つけた・・・・
・・・我等の意思を継ぐ者達・・・
4つの希望を持ちし・・・"勇者"達・・・!!!

「「「「!!!???」」」」
そんな言葉が頭の中に流れ込んだ後、突然目の前の水晶体にヒビが入る。
「なっ!?」
「えっ?」
「何が!?」
「・・・っ!!」
その瞬間死んだように動かなかった4匹のポケモンの瞳がくわっと見開かれ、大きく動き出し、水晶体の中から抜け出したと思うと、
赤い鳥ポケモンはライチに、
青い鳥ポケモンはシロップに、
緑の不思議なポケモンはミントに、
そして黄色い鳥ポケモンはレモンにそれぞれ向くと、
・・・勇者達よ・・・我等が願い・・・聞き届けてくれ!!!
と言うとそれぞれの瞳に映ったポケモンの身体に吸い込まれていった・・・
「「「「うわーーーーーーっ!!!!」」」」
身体の中に入り込んだと同時に、ライチ達の意識は深遠の闇へと消えていった・・・
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~一章第六幕~
風の音がひゅうひゅうと聞こえて、ライチは闇の中に消えた意識を少しずつ頭の中に戻していった。
「・・・っ・・・うぅん・・・あ、あれ?確か僕達は・・・気を失って・・・」
目を覚ましてきょろきょろと辺りを見回す。目の前にあった水晶体は粉々に砕け散り、その傍らにはレモンたちが倒れていた。
「・・・気を失って・・・それで・・・」
「(目が覚めたか・・・勇気を司る者よ・・・)」
いきなり頭の中に声が響き渡り、ライチはびっくりしてその場に倒れこんだ・・・砂埃が肺の中に入り・・・大きく咽こんでから辺りをきょろきょろと見回して声がどこから聞こえたのかを確認しようとする。
「うわぁ!声が・・・声が聞こえたっ!!誰?誰かいるの?」
ライチはどこかに隠れているのかと思い隠れられそうな場所なども見つめてみたが誰かがいるような気配はまったく見受けられなかった。
「(私を探そうとしているのか?だとしたらいくら探しても私の姿は見ることはできないぞ。私は精神体・・・つまり今お前の精神の中にいるのだからな・・・)」
「セイシン?分けわかんないこと言っていないで出てきなよぅ!僕怒るよ!?」
ライチは謎の声が言った言葉に耳を傾けることもせずにあたりを見回し続けている。声の主は呆れるような口調でライチに再度語りかける。
「(わたしの言ったことの半分も理解できていないのか?まったく・・・なぜこんな幼稚な子供が勇気を司る心を持っているのだ・・・)」
少し小ばかにしたような口調でさげすむように言うとライチはむっとなって天井に向かって怒鳴った。
「僕は子供じゃない!!これでも十七歳だ!!大体僕にはライチって名前があるんだい!!」
言わなくてもいいことをぺらぺらと喋った後にぜいぜいと肩で息をする。声は少しだけくっくっと笑った後に、先ほどとは違う柔らかい口調でライチに話しかけた。
「(ようやく私の声に耳を傾けてくれたな。ライチ・レイシ君・・・)」
「!!・・・なんでぼくの本名知っているんですか?あなたは・・・」
いきなりフルネームで自分を呼ばれてライチは少なからず動揺した。声は自分のいった言葉にさらに付け加えるように言葉を重ねた。
「(どうやら私の言葉を聞く気になったようだね。先程言ったようにわたしは精神体・・・私は君の精神の中に入っているんだよ?ライチ。君の中の情報も私に入ってくるのだよ・・・疑うかな?)」
自分が十七年間生きた証が得体の知れない声の主に筒抜けになっていることがライチをさらに動揺させた。ライチは舌っ足らずな口調で矢継ぎ早に心の中を暴露した。
「えええええええぇぇぇぇぇぇ!!?何だよぅ!?それ覗きと同じじゃないか!!出て行って!!僕の心の中から出て行ってよぅ・・・」
ライチが目に涙を浮かべそうになったとき、声は残念そうにライチに向かって
「(ライチ・・・私は精神体なのだよ。君が死なない限り・・・私達の使命が達成されない限り・・・私が君の心から出ることできない・・・)」
「そんなの知らない!!!!!使命とか僕には関係ない!!!!!今すぐ僕の心から・・・でていってよ!!!!!!・・・うっ・・・うぅぅ・・・っく・・・ひっく・・・」
ライチの目から大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちる・・・そして声を上げて泣き始めた。
「うわぁぁぁぁぁぁん!!!!!うっううぅぅぅぅぅっ!!!!!うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ライチの大きな泣き声が洞窟内に響き渡り、その音にびっくりしたレモン達が目を覚まして何事かと辺りを見回した。
「ライチ!?また泣いてんのかよ!!よーしよしよし、怖くない怖くない・・・」
「ふっ・・・ふぇぇぇっ・・・シロップぅ・・・」
シロップがライチを抱き寄せて背中を優しく撫でる。ライチはまだ泣いていたが少なくとも大声で泣くようなことはしなかった。
「ライチどうしたの?怖いことでもあったの?」
「私達がついていますから・・・泣かないで下さい・・・」
レモンとミントが心配そうに声をかける。シロップの胸の中でぐずぐずと泣きながらライチは申し訳ない程度に頷いた。そしてシロップから離れるとゆっくりと語りだした
「あのね・・・ぐすっ・・・あのね・・・」
それからライチの語りだしたことをシロップたちは真剣に聞き入っていた。水晶体のポケモンがライチの身体の中に入っていること、それが自分の中から出すことが不可能なこと・・・全て話し終わった後ライチはすっかり泣き止んでいた。
「なるほど・・・その謎の声が頭から離れなくってパニックになって泣き出しちゃったってわけか・・・」
シロップは最後まで聞くともう一度ライチを抱きしめて耳元で優しく囁いた。
「ごめんな・・・お前がパニックになってることも知らないでずうっと気絶してたなんて・・・オイラは最低だよ・・・せめてライチを抱きしめて慰めてあげることしかオイラにはできないけど・・・それでも・・・ライチの気持ちが落ち着くまでずっとこうしていてあげるから・・・もう泣かないでくれよ・・・なっ」
柔らかい腕の感触に顔をほんのりと赤らめてライチは無言で頷いた。
「そっか・・・よかった。それで・・・その謎の声の主とやらはいないのか?」
ライチの心の中に話しかけるようにシロップが言葉を紡ぐ。
「(私を呼んだかな?シロップ・メイプルード君)」
声が全員の頭の中に語りかけてくる・・・ライチはびくりとしたがシロップは平然と声に質問した。
「貴方はいったい何者なんだ?オイラの本名を知っているってことはライチ以外の心も覗けるってことだな?・・・なんでライチの・・・いや・・・おいら達の心の中に入ってきたんだ?他の奴は語りかけてこないけど、どういうことなんだ?貴方達の使命ってのはいったい何なんだ?」
ぺらぺらと若干早口に言葉を吐き出す。シロップもいささか緊張しながら言葉を紡いでいるようだった。
「(・・・一つずつ質問に答えよう。私の名前は・・・ファイヤー・・・勇気を司る世界転生の物語のポケモンと言ったなら分かるかな?」
「!!何だと!?」
シロップ達が驚愕する。ライチの心の中に入っていたのは。この世界を転生させた勇者のうちの一匹、ファイヤーだったのだ。ファイヤーはシロップ達の顔を見て理解したと思い話を進めた。
「(理解してくれたようだね。次に・・・私しか語りかけてないのは、この子の・・・ライチの心が一番早く覚醒するからなのだよ)」
「覚醒?それってどういうこと?」
レモンが首を傾げて質問する。ファイヤーはゆっくりと言葉を吐き出す
「(私の力が憑依すると言うことだよ。私達の力はあまりにも強大すぎて一気に開放することができないのだよ。それで私達と心を通わせ、思いが共有するとき、私達は始めて肉体と言う器を媒介にして自分の宿り主と意思の疎通ができる。ライチは私との思いが少しだけ重なったから会話をするぐらいの力が宿っていると言うことだよ・・・分かったかい?)」
ファイヤーが丁寧に説明し終わるとレモンはにっこりと笑うと
「よく分かったよ♪ありがとうファイヤー♪」
「(どういたしまして。理解が早くて助かるよ)」
ファイヤーも丁寧に謝辞をする。するとそれまで黙っていたミントがシロップが先程問いかけた質問をもう一度問いかける。
「なるほど・・・でもどうして自分の力を開放する必要があるんですか?アスラは滅んだのでしょう?貴方達の言っていた使命と言うのは何なんですか?」
それを聞くとファイヤーは真剣な声になって一言一言を刻み込むようにライチ達に告げた。
「(そう・・・問題はそこだ。これから言うことをよく聞いていて欲しい・・・まず私達のしたことがどのように伝えられているのか分からないが・・・アスラは死んではいない。)」
「「「「ええええっ!!???」」」」
ライチ達はさらに驚愕した・・・自分達はもう死んだと思っていたアスラがまだ生きていたと言う事実に。それが倒したといわれる勇者本人の口から語られた事実に。
「(私たち4匹よりも若干だがアスラの方が力が上回っていたのだ。私達では倒すことができないと判断したので私達の力を全て使ってアスラの肉体と精神を封印したのだよ・・・それからどう伝わったのかが分からなかったが・・・どうやら背ひれ尾ひれがついて話が拡大したようだな・・・)」
ライチ達はまだ驚いていた・・・そんな凶悪なポケモンがまだこの世に存在しているとは微塵も思っていなかったからだ。
「でっでも封印したのなら誰かが封印をとかない限り絶対に目が覚めることはないんじゃあ・・・」
ライチがわずかな希望を見出そうと問いかける。しかしファイヤーはその希望を微塵にも粉々にする言葉を言った。
「(残念だが・・・私達の力では一時的に封印することしかできなかったのだ・・・時間にして約200年・・・しかしその封印がもう切れ始めていたのに気付いたのだよ・・・私達は焦った・・・このままではまたあのときのような大惨事が繰り返されることになると。しかし私達は自分達の力を自分達で封印していたもしもの時のために。私達の心を継いでくれるものが現れることを信じて・・・ここまで言えば分かるだろう・・・)」
ライチ達は黙ってファイヤーの言葉を聞いていたが喋り終わったあとにファイヤーにライチが語りかけた。
「・・・つまり・・・僕達の心の中に入ったのも、僕に語りかけてきたのも・・・全てはアスラを倒して欲しいと言うことなんですね?」
一言一言を搾り出すように語るライチの顔はとても重苦しく、この世の終わりでも感じたような顔だった。
「(その通りだ)」
ファイヤーが答えた・・・ライチはしばらく黙っていたが・・・やがてゆっくりと言葉を吐き出し
「・・・・嫌・・・・です・・・」
ファイヤーの頼みを完全に拒絶した。
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~一章第七幕~
ライチは硬く目を瞑り、自分は関係ないということを態度で示している
「(嫌・・・何故だ・・・ライチ・・・君には)」
「嫌な者は嫌なんですっ!!!」
ファイヤーの言葉をさえぎってライチはいやいやと首を横に振る。レモン達が悲しそうな瞳でライチを見つめる。ライチは呟くような小さい声で喋った。
「伝説の存在である勇者でも倒せなかったポケモンを、一介のポケモンである僕達がどうやって立ち向かうって言うんだよ!?無理だ、できっこない。そもそも僕達には関係ないよ!!何で僕達に取り付いたんだよ!?取り付かれる方はいい迷惑じゃないか!!たとえ死ぬまで取り付いていても、僕には関係ない!!やりたければ他のポケモンにでも取り付いてください!!紛争地帯にでも行けばそんなポケモンが山ほど――――――――」
言葉が終わらないうちに頬に痛みを感じてライチは我に返る。前を見るとレモンが険しい形相でライチを見つめていた。次の瞬間レモンが大きく右手振りかぶると――――――――
思い切りライチの頬をひっぱたいた。バシンと言う音とともにライチの顔が横を向く。驚いているとレモンがいつもの口調でライチに話しかけてきた。
「ライチ・・・僕は今のライチは嫌いだよ・・・自分が大事なのは分かるよ、たった一つしかない命だからね。だけど・・・だからって・・・他人の命を差し出すような言葉は最悪だよ。僕はそんな考え死んでしまえと思ってる・・・今のライチは自分のことしか考えてない自己中心的で傲慢な最低野郎だよ」
ライチはレモンの顔を凝視することができなかった。
・・・レモンが・・・泣いていたからだ。ぽろぽろと大粒の涙をこぼしながらレモンはさらに言葉を続ける。
「世界を救うなんて大それた真似は確かにできないよ。僕も無理だと思う。だけど・・・自分の我が儘で他の命を紙屑みたいに言うのは・・・でないことをやらせるよりもひどいよ・・・僕の知ってるライチは・・・そんなこと言わないよ!!!!!」
レモンが叫んでその場に泣き崩れる。シロップとミントが駆け寄ってきて泣き止ませようとする。その際ライチを見据えて
「ライチ・・・お前の気持ちは分かるぜ・・・でもな・・・俺達だって同じ事言われてるんだぜ?なのにお前は・・・」
「ライチ・・・命を・・・なんだと思っているんですか?」
二人が口々に言う。ライチは虚無感に支配されてその場に立っていた。
「皆には・・・分からないんだよ取り付いたポケモンと話してもいない皆には」
「(・・・・)」
沈黙が洞窟内を支配する・・・レモンのすすり泣きだけが洞窟内に響いていた。
しばらく黙っていると、不意に天井から大きな音が聞こえてきた。がりがりと岩盤を削るような音に4匹が同時に上を見上げた瞬間、天井の岩の一部が砕かれて、上から巨大なポケモンが降ってきた。
「ぶはぁっ!!!やっと見つけだしたぜぃ!!勇者の波動をよぉ!!!」
ライチたちが驚いて土煙の向こうに見てる巨大なポケモンを見つめた、灰色の身体に覆われた巨体に鼻先にドリルがついている。まるで巨大に岩が目の前に立っているようだった。
「んんんん!?感じるのは一匹だけじゃねぇか??四匹だったとアスラ様に聞いてきたんだけどなぁ?・・・んんんん?まぁいい、どの道全員殺しちまえば・・・勇者の力もおしまいだぜ!!」
「(サイドンだと!?まさか・・・アスラの手のものか!?)」
ファイヤーが目の前の巨大なポケモンの名を口にする。その名を聞いたとたんにライチは授業中に聞いていたポケモンの講義の話を思い出した。
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「・・・と言うわけで・・・巨大な身体と大きなドリルを持ったこのサイドンというポケモンは、あまりこの辺では見ないだろう。南の高山などに住み着いているのが一番多いケースだ。鼻先のドリルは高層ビルも一撃でジャンクの塊に変えてしまうから。巨大な岩盤などを削って運ぶ仕事が多く・・・」
と言った話をキンウ先生がしていたのを、ライチはおぼろげにだが聞いていた。
「ビルを一撃でジャンクにするポケモンなんて・・・勝てるわけ・・・ないよ・・・」
ライチはあまりの恐怖にその場にへたり込んでしまった・・・レモン達も恐怖を感じて、その場から逃げようとするが、恐怖でその場から一歩も動けないライチを目の当たりにして逃げると言う行動をやめた。
「んんんん??そこのヒトカゲから勇者の力を感じるぜぇい!!まずはてめぇからだっ!!」
サイドンは大きく咆哮すると、ライチに照準をあわせ、ドリルを回転させ始める。
「ひいぃぃぃ・・・うっ・・・ううぅぅっ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ライチは情けない声を上げるとその場から立ち上がり、大きな岩の陰に隠れようとした。
「んんんん!?逃がすかぁっ!!!」
サイドンが逃げ惑うライチに向かって突進する。その瞬間足元から伸びた草が絡みついてサイドンは大きく転倒した。地面がぐらぐらと揺れ、派手に砂埃が舞った。
「んんんん!!てっめぇ!!先に死にてーのかぁ!?」
サイドンが起き上がると、"くさむすび"を使って自分を転倒させたミントに向かっていく、ミントは震えていたが、毅然と立ち向かうと
「私は・・・ま・・・まだ死にたくありません!!」
と言って横っ飛びに飛んでサイドンの攻撃をかわす。
「んんんん!!避けんじゃねぇよ!!!」
サイドンがミントを再び視界に捕らえる。もはや岩陰に隠れたライチは完全に無視している。
「よそ見するなよ!!オイラもいるぜ!!」
シロップが間髪をいれずに地面に"れいとうビーム"を叩き込む。床の広い面積が凍り付いてサイドンはまた転倒した。
「ぐおぉぉっ!!!ちょろちょろとっ!!」
サイドンが起き上がろうとする瞬間にレモンが空中に飛び上がる。
「まだまだっ!!これはおまけだよっ!!!」
そのまま身体を回転させながらサイドンの額に思い切り"アイアンテール"を打ち込んだ。
「・・・どうだっ」
「・・・・ぐふっ・・・ぐふふふふっ」
サイドンは自分の額の辺りで制止していたレモンを掴むと、掴んだ手を大きく振りかぶり地面に打ち付けた。
「がはっ・・・・あ゛ぁぁぁっ・・・・がっ」
レモンは大きくのけぞりバウンドした後、地面に落ちて口から血を吐き出して動かなくなった。
「「レモン!!!!」」
シロップとミントがレモンのほうに駆け寄ろうとする。
「んんんん!?ぬるいわぁ!!!」
サイドンが地面に向かって"はかいこうせん"を掃射する。すさまじい熱エネルギーは周りの岩盤を引っぺがしシロップとミントに襲い掛かった。
「うわぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
「きゃあああああああああ!!!!!」
シロップとミントは頭に岩石が直撃し、頭から血を流してその場に倒れこんだ。サイドンがげらげらと笑いシロップたちを見据える。
「んんんん!?ぬるい、ぬるすぎる!!貴様らの攻撃など蚊ほども利かぬわ!!」
シロップ達は何も答えることができなかった。毒を吐くことも、反論することも。意識はある、しかし本能的な恐怖が立つことを、戦うことを拒んでいるのだ。
「・・・ちくしょお・・・ちく・・・・しょう・・・」
シロップは自分の無力さを呪い、大粒の涙を流す。サイドンはシロップ達を一瞥しきびすをかえすと岩陰に隠れてがたがたと震えているライチを摘み上げた。
「んんんん??お前から勇者の波動が見えるんだよ。お前を先に殺して後の奴らをゆっくりと料理してやるよ」
「ひっ・・・・うっ・・・うぅっ・・・」
「(ライチ!!何をしている!?戦うんだ!!)」
ファイヤーが叱咤激励するが、ライチはそんな言葉など耳に入ってはいなかった。恐怖に震え、戦うことを恐れ、死ぬことを拒絶する。生への執着で頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。
「んんんん??お前は本当に勇者か?仲間がやられても何もせずにただ震えているだけとはな・・・こいつは傑作だ、この張りぼてめ!!!」
サイドンはライチを掴んでいる手を大きく振りかぶりレモンの傍にある尖った岩盤に叩きつけようと腕を振り下ろした。
「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!!!!!!」
尖った岩盤が迫る。これに今の速度で激突すれば自分は串刺しになり確実に絶命するだろう・・・
「(・・・・僕・・・・死んじゃうんだ・・・・死にたくない・・・・死にたくないよぉ・・・・)」
激しい轟音と地響きがして。土煙が舞い上がる。サイドンが手を離して手ごたえを確認する。
「んんんん!?やったか?」
「ライチっ!!!!!!!」
「まさ・・・・か・・・死んだ・・・んですか・・・!?」
シロップが叫び、ミントが驚愕する。しかし生死を確認することもできず、もうもうと立ち込める土煙の先をずっと見つめていた。
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土煙の中、ライチは恐る恐る目を開けた。
死んで・・・いない・・・
自分の身体は打ち付けられたときの擦り傷や打撲で酷く痛んでいたが、致命的な怪我などは一切していない。しかし自分の身体を見ると多量の血が体中にこびりついているのが分かった。
「うわぁっ!!!さ・・・刺されたの!?」
ライチは血に塗れた自分の腹部を触ってみる・・・少し痛むが特別目立った外傷などは見られなかった。
「これ・・・僕の血じゃあ・・・無い・・・じゃあ・・・いったい誰の」
よく見ると地面にも大量に流れ出していて血の水溜りを作っていた。ライチは恐る恐る顔をあげて前を見て―――――――――――
信じられないものを見た。自分が刺さってしまいそうだった尖った岩盤に見覚えのある黄色い身体が・・・深々と岩盤に刺さってた。未だ血は止め処なく流れ、滴り落ちてさらに水溜りの範囲を広げる。
レモンがライチを庇って・・・衝撃のクッション代わりとなってライチを助けていたのだ。
「レモン!!!レモン・・・どうして!?何でっ!!!」
ライチは自分が何を言いたいのか分からなかった。ただただ錯乱して目の前にいる虫の息の友人を潤んだ瞳で見つめているだけだった。
「・・・ライチ・・・無事・・・なん・・・だね・・・よかった・・・」
レモンは口からごぼこぼと血を吐き出しながらにっこりと微笑んだ。ライチは瞳から溢れる涙を拭くこともせずにレモンに駆け寄っていく。
「レモン!!・・・死んじゃ嫌だよ・・・レモン・・・」
ライチは泣きながら意識の消えかけている友人の名をひたすら呼び続ける。レモンはそんなライチの姿を見ると・・・もう一度にっこりと微笑むと苦しげに語り始めた。
「・・・ライチ・・・今の君の気持ちが・・・いつもの君だよ・・・他人の命でも・・・そんな風に思える君の心が・・・きっとファイヤーの心と同調・・・したんだ・・・ごほっ・・・」
レモンは喋るたびに血を吐き出す。しかしそんなことを気にもせずにレモンは言葉を紡ぎだす・・・
「ライチ・・・君には・・・世界を救う"勇気"にはなれないかもしれない・・・君は・・・臆病で泣き虫だから・・・だけど・・・勇者じゃなくても・・・君はとても強い心を持っているじゃない・・・皆を思いやってくれる・・・人の心を愛しむことができるじゃない・・・ねえ・・・ライチ・・・僕のお願い・・・一つだけ聞いてくれるかな・・・?」
お願い・・・こんな言葉をレモンが使ったのは初めてだった・・・ずっと己の欲望を押さえ込んできたレモンが始めて自分の願いを聞いて欲しいといったのだ。
「・・・何?お願いって・・・何なのレモン!?僕にできることなら何でもするよ!!・・・だから・・・死んじゃ嫌だよぉ・・・」
ライチは涙を流してレモンの願いを聞き届けようとする。それを聞くと柔らかな微笑を浮かべて、自分のお願いを口にした。
「・・・魔王を倒す勇気を出さなくてもいい・・・世界を救う勇気を出さなくてもいいから・・・君とファイヤーの力で・・・僕のために・・・勇気を出して・・・戦って・・・くれるかな・・・?僕の・・・さいしょ・・・で・・・さい・・・ごの・・・お・・・ねがい・・だよ・・・ライチ・・・」
そういった後にレモンは静かに瞳を閉じて・・・何も喋らなくなった。ライチはレモンの肌に触れてみた。暖かかったからだからぬくもりが・・・命の光が・・・消えていった・・・。
「レモ・・・レモォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!!!!」
ライチがレモンに抱きついて泣いた。自分を庇ったせいで大好きな友達が目の前から永遠に消えてしまった・・・ライチは泣き続けた。
流した涙がレモンの頬に落ちた瞬間、不意に洞窟全体が柔らかな虹色の光に包まれた・・・その輝きはまさしく命そのもののようだった・・・
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~一章第八幕~
白い・・・とても白い・・・白が広がる空間の中にライチはぽつんと一人で立っていた。じいっと目を凝らすと白い空間の先にゆらゆらと揺らめく綺麗な紅蓮の炎が視界に移った。
「・・・・・・・」
ライチは紅蓮の炎に向かって一歩、また一歩と歩みを進めていく。自分が歩いているのかがまったく分からなかったが、自分が登っているわけでも落ちているわけでもないのでとりあえずは地面があるのだと考えてゆっくりとした速さで一歩一歩を踏みしめていく。
「・・・・・・・」
紅蓮の炎がどんどん近づいていく。ライチにはその炎がどのようなものかすでに分かっていた。しばらく歩き続けてライチは紅蓮の炎と対峙した。ライチがしばらく見つめていると、ぐにゃりと炎が歪んで美しい羽を持った大きな鳥ポケモン・・・ファイヤーに変わっていた。
「・・・・・・・」
ライチが黙ってファイヤーを見つめていた・・・その瞳には・・・決意の燈が灯っていた・・・
「ライチ・・・君は友達があのような目にあっても・・・自分は無関係だと思うのか・・・」
ファイヤーがライチに問いかける。ライチは首をゆっくりと縦に振ると
「そうだよ・・・僕には無関係だ・・・だって・・・友達は僕じゃない・・・」
ライチの言葉を黙って聞いていたファイヤーは静かに・・・透き通るような声でライチの言葉を確めた。
「・・・それが君の考え出した結論かい?・・・ライチ・・・」
ファイヤーの言葉にライチはゆっくりと・・・今度は横に首を振ってよく聞こえる声でゆっくりと語りだした・・・
「・・・さっきまでの僕なら・・・そう思っていた・・・自分が助かるなら・・・他のポケモンなんてどうでもいい・・・だけど・・・自分のせいで他のポケモンが傷ついて・・・自分のせいで他のポケモンが目の前で死んでいくのは・・・自分が死ぬより耐えられない・・・その思いが強ければ強いほど・・・痛いほど・・・心を縛り付けていることが分かったから・・・」
ライチの静かな言葉は白い空間によく響いた・・・ファイヤーは黙ってライチの"答"を聞いていた。
ライチが自分の胸に手を当てて言葉を吐き出した。
「ファイヤー・・・僕は貴方のように魔王に立ち向かう勇気なんてありません・・・だって・・・僕は本当に弱虫で・・・臆病だから・・・でも、レモンが目の前で冷たくなっていくのをただ見ている事しかできない自分が腹立たしくて情けなくて・・・僕はもっと・・・もっと強くなりたい・・・一番強くなるとか・・・弱者を痛めつけるとかそんなんじゃあない・・・せめて・・・粉々になってしまった僕達の日常をもう一度元通りに・・・せめて・・・自分に立ちふさがる困難に立ち向かえるだけの・・・強さが・・・勇気が欲しいです・・・だから・・・力を貸してくれませんか?」
ライチの言葉がファイヤーの心に伝わる。ライチの思いがファイヤーと重なる。
自分はもっと強くなりたい・・・もっともっと・・・目の前のポケモンを守れるくらいに・・・
「・・・ライチ・・・やはり君はとても強い勇気の力を持っているんだね・・・」
ファイヤーがにっこりと微笑む。ライチは首を横に振ってその言葉を否定した。
「勇気なんてありません・・・もし勇気があったら・・・レモンは死なずにすんだんだ・・・」
ライチが目に涙をためて苦しげに呟く。ファイヤーははっきりと
「それは違う」
と言い切った。ライチはきょとんとしてファイヤーを見つめる。今度はファイヤーが訥々と語りだした。
「私が言った勇気は。強敵に立ち向かう勇気ではないのだよ。勝てもしない相手に立ち向かうのは勇気ではない・・・それは単なる無謀だ。私が持つ勇気とは・・・己に立ち向かい、己と向き合うことができる心の強さのことを言ったのだよ。そしてライチ・・・君は一度は拒絶して恐れた自分の心と対等に向き合い・・・そして全てを受け入れる覚悟を決めた・・・君は十分勇気ある者だよ・・・」
ファイヤーの言葉にライチは胸の奥が熱くなるものを感じた。身体がぴりぴりとして身体の芯が熱くなっていく。ファイヤーがすうっと燃え上がるように赤く輝く光を差し出した。
「ライチ・・・君の心に少しでも迷いが生じれば・・・私の炎は君の身体を容赦なく焼き尽くすだろう・・・それでも私の力を求めるかい?」
「求める!!」
ライチが力強く肯定する。ファイヤーはこくりと頷くと
「わかった。ならば手を・・・」
ライチも頷き、互いの手が触れ合う。ライチの身体にゆっくりと赤い光が入っていき、ライチは胸の奥から煮えたぎる火山のような力を感じた。気を抜けば一気に自分の身体が燃え尽きて墨になってしまいそうなほど自分の中にすさまじいエネルギーが入っていくのを感じた。完全にライチの中に入った後、不意に周りの空間が揺らめき、消滅していく。
「(ライチ・・・忘れないでくれ・・・今の君の心を・・・)」
ファイヤーが心の中で語りかける。崩れかけた空間の中でライチはその言葉をしみじみと聞いていた。
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シロップとミントは何が起こったかまったくわからなかった。ライチたちがいた所から虹色の光が立ち上りあたりを包んだ・・・ここまでは覚えていた。しかし光が消えた後に周りの状況を見てとても信じられないものを見ていた。
熱線を浴びた地面が・・・
崩れていた天井の一部が・・・
傷だらけになって息絶え絶えだった自分達の身体が・・・
まるで時間を逆戻りしたかのように・・・綺麗さっぱり消えていた。
地面はえぐれているところなど一つもなくしっかりとそこに存在している。ぐずれていた天井は影も形もなくぴったりと塞がっている。ぼろぼろだった自分達の身体には血が流れるどころか汚れ一つついていなかった。
「・・・何だ・・・?オイラ達・・・夢でも見てるのかよ・・・」
ようやくはれた土煙の先をシロップが見つめていた。そこには先程まで死に掛けていたライチがレモンを庇うようにサイドンの前に立ち塞がっていた。レモンは外傷一つなく気絶していた。
「ミント!!シロップ!!レモンをつれてどこかに隠れていて!!今の僕は・・・僕でも制御ができない!!!」
ライチがサイドンを睨み付けながらシロップとミントに指示を出す。言っている意味がよく分からなかったが、とりあえず今のライチはとても危険ということだけは理解できた。
「わ・・・わかった!!」
シロップは立ち上がると気絶しているレモンを抱き上げて適当な岩場に隠れた。隠れてからシロップはレモンの生死を確認する。頬がほんのりと赤く、呼吸もしているし心臓の音もする。
「?・・・どういうことだ??さっきオイラは・・・レモンがライチを庇っているのを見たのに・・・」
岩陰に隠れてライチの様子を見ながらミントが呟く。
「わかりません・・・けど・・・ライチが何かをしたのは確かみたいですね・・・」
ミントとシロップはさっきまで怯えていたライチの姿と今の姿を互いに比べ、何があったのだろうと考えていた・・・





「んんんん!?なんだ??何をしやがった!!」
サイドンが辺りをきょろきょろと見回して驚愕する。ライチはサイドンをまっすぐに見据えると、凛とした口調でサイドンに向かって喋った。
「お前の頭じゃ考えられないことだよ!僕の大切な仲間に攻撃したこと・・・絶対に許さない!!」
ライチがそう言い放ちサイドンと対峙する。サイドンは少しの間ぽかんとしていたが・・・やがてげらげらと笑い出した。
「んんんんん!!!ぐはーっはーっはっはっはっ・・・笑わせるな!!さっきまでがたがたと震えていた張りぼてに何ができる?んん??」
サイドンがひとしきり吐き捨てた後またげらげらと笑い出す・・・ライチはそんなサイドンの行動を見て小さく呟いた。
「・・・今なら・・・きっと倒せる・・・」
ライチは相手が完全に油断していることを読み取り、よける暇もなく倒すように心がける。
「(そうだ・・・今あいつが警戒したら・・・こちらの攻撃が完全に読まれてしまったら・・・もう勝機はないんだ!!・・・一発・・・一発であの鋼の塊を粉砕しなくちゃ・・・)」
ライチは心の中で強くイメージする・・・大きな山を焼き尽くす・・・灼熱の火球を、神経を集中させ、右手一つにエネルギーが集まるように・・・
その瞬間、ライチの右手からめらめらと炎が立ち上る。ゆっくりと・・・しかし確実に炎の力が強くなっていくのをライチは感じていた・・・
「(イメージ・・・イメージだ・・・この炎は・・・あいつの身体を焼き尽くす・・・なるべく早く・・・なるべく早くあいつに届くんだ・・・)」
ライチの強いイメージが浮かび上がる。ライチの頭の中に浮かんだのは・・・














――――――――――――弾丸――――――――――――










「・・・・いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ライチが勢いよく右手を突き出す。ライチのイメージは形となりうねりを上げて目の前の敵に向かっていく。高速で発射された弾丸のような炎はサイドンがその存在に気付いたときにはもう眼前まで迫り、
直撃、炎上。
火山の噴火のように炎が吹き上がり半径十メートルぐらいの範囲にいるものを焼き払った。岩石は炭となる暇もなく蒸発して消滅する。中心地にいたサイドンは爆炎に包まれて悲鳴を上げる暇もなく炭となった。
「なっ・・・なんだありゃ・・・!!!???」
「まるで・・・火山・・・・」
すさまじい熱風の余波を受けながらシロップとミントは目を丸くしてライチの放った火球の火柱を見つめていた。
「・・・・・・・・・・・・嘘・・・・・・・・・」
ライチは自分の出した炎のイメージに自分が腰を抜かしていた。
「・・・こ・・・怖い・・・」
ライチは自分が授かった勇者の力に恐怖しがくがくと震えていた・・・
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~一章終幕~
誰もが寝静まっている静寂の夜・・・誰もいない学校の広いグランドから巨大な火柱が立ち上り爆音とともに静寂を打ち破った。
「・・・こ・・・これは一体・・・」
キンウ先生を含んだ大勢のポケモン達がごうごうと衰えることなく燃え続ける炎を見つめ続けていた・・・
「何かの前触れでしょうか・・・」
シリュウ先生がキンウ先生の隣でうわごとのように呟く。すさまじい炎と熱風がごうごうといまだに燃え続け・・・不意に消え去った。
半径10メートルぐらいのぽっかりとした大穴が開いている・・・そこから小さく話す声が聞こえる。それに続けて這い上がってくるような音が聞こえた。
「キンウせんせー・・・」
「怖いよぉ・・・」
「先生・・・何が来るんですか!?」
生徒達は怯えた様子でキンウ先生を見つめている。生徒の親達は半ば錯乱していた。
「大丈夫・・・落ち着いてください・・・生徒達は命にかけても守り抜いて見せます」
凛とした口調でシリュウ先生が言葉を紡ぐ。キンウ先生も深く頷き這い上がってくる何かに対して身構える。声と音はどんどん近くなり、会話の内容が途切れ途切れに聞こえてくる。
「・・・すぐ・・・口・・・星が・・・るよ・・・」
「早く・・・・ましょう・・・皆に・・・えないと・・・」
「オイラ達・・・ここから・・・出て・・・何処へ・・・」
「後から・・・・えようよっ♪・・・っと・・・考えが・・・よっ♪」
途切れ途切れで聞こえてきたのは・・・聞き覚えのある声の数々。シリュウ先生は身構えるのを止めると大穴に近づこうとしたその瞬間
「脱出ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
ひときわ大きな声が満点の星空に響き渡ったかと思うと、見覚えのある4匹のポケモン達が大穴から這い出した。
「ここは・・・グランド・・・かな?」
「ようやく空気がすえたぜっ!!オイラ疲れたぁー」
「あの部屋がこんなところに繋がっていたなんて・・・いいえ・・・ファイヤーが呼び出したんでしたっけ・・・」
「あれぇ?何で皆がグランドに集まっているの??」
現れた4匹は体中がすすで汚れていて指の先には土や泥がこびりついている。そんな汚い出で立ちをしている4匹を見つめてシリュウ先生とキンウ先生はぽかんとしていたが、やがて姿を確認し
「「ライチ!!レモン!!シロップ!!ミント!!何があったんだ(ですか)!!??詳しく話しなさい!!」」
と怒鳴った。ライチ達はびくっとして、しばらく黙っていたがやがてレモンが口を開いて語り始めた。
この世界の危機について・・・
自分達が課せられた使命について・・・
そして・・・そのためにこの村から出て行くことについて・・・
キンウ先生を含めてその場にいたポケモンたちは真面目にライチ達の話を聞いていた。ライチ達は村に居たころから村のポケモン達全てに関わっていたため、皆が自分達の話を信じてくれるだろうと言う信頼があった。また、村のポケモン達はライチ達が嘘を言っているとは考えなかった。・・・それもまた、ライチたちを信用していたからである。全てを話し終えた後、キンウ先生がゆっくりと口を開いた・・・
「・・・いまだに信じられないが・・・お前達は嘘はついたことがない・・・では・・・どうあってもこの村を出て行くというのか・・・」
キンウ先生の言葉に4匹が力強く頷く。そしてライチが喋りだした。
「確かに僕達がいきなり外の世界に出て行っても所詮は世間を知らない子供達の集まりです。さまざまな困難にぶつかると思います・・・それでも・・・僕達はいきます・・・この村のように・・・皆が笑って暮らせるために・・・僕達は・・・僕達は行きます・・・」
ライチの言葉にキンウ先生はしばらく黙っていた・・・しかしライチたちを真っ直ぐに見つめると
「わかった・・・もはや何も言わない・・・明日の早朝・・・全員でお前達を見送ろう・・・今日はここで過ごす最後の夜だ・・・自分達の家に帰りなさい・・・」
と言うと背を向けて飛び立っていった。それに続けて他のポケモンたちも自分達の家に帰り始める・・・残されたライチ達はしばらくその場で突っ立っていたが不意にレモンが口を開いた。
「ここですごす最後の夜・・・か」
レモンの言葉は吹き抜ける風とともに千切れて夜空に舞った。ミントが言葉を紡ぎだす。
「明日のために準備をしなくちゃいけませんね・・・身体も洗わないと・・・」
ミントの言葉に全員が同意すると、汚れ切った身体を引きずるように自分達の家へと帰っていった・・・
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家路に辿り着き、身体を綺麗に洗い流して、旅の支度を終えるころには眠気が襲ってきた。ライチは大きく欠伸をすると、今日一日のことをずっと考えていた。
「・・・どうしたの?ライチ・・・眠れない?」
レモンがベッドからもぞもぞと這い出してライチの隣に座る。すでにシロップとミントは眠っていて、穏やかな寝息が二匹から聞こえる。ライチは首を横に振るとレモンに語りかけた。
「不思議だね・・・僕達朝はここで起きて・・・レモンの作ったご飯を食べて・・・学校で不思議なところに飛んで・・・それで・・・」
それ以上は言葉が続かなかった。今日一日でいろいろなことがありすぎたのだ。ファイヤーが自分の心の中に入ったこと・・・アスラの手先が現れたこと・・・レモンが・・・死んでしまったこと・・・。
気がつくと身体が震えていた。なぜだかは分からなかった。しかし・・・とめようと思っても震えは止まらなかった。レモンはぶるぶると震えるライチを見つめて心配そうに話しかける・・・
「ライチ・・・恐いの?」
レモンの言葉にライチはビクリと反応してしまう。ライチが恐れていたのは・・・仲間の命が・・・消えること・・・
「・・・レモンが死んでしまったとき・・・僕は何もできなかった・・・ファイヤーが助けてくれなかったら・・・レモンは・・・レモンは・・・・・・・・僕は・・・恐いんだ・・・自分の力が・・・こんな不安定で強大な力で・・・僕は本当にレモン達と一緒に戦って行けるのかって・・・僕の力が災いして・・・また・・・仲間を・・・死っ・・・」
それ以上は言葉が続かなかった・・・
気がつくとレモンが顔をほんのりと赤らめてライチに近づいて・・・
・・・・唇を重ねていた・・・・
柔らかい唇の感触がライチに鮮烈に伝わってくる・・・ライチは何をされたのか一瞬分からなかったが、気がつくと顔を真っ赤にしてレモンのとろんとした瞳を見つめていた。
「・・・・ぷぁ・・・」
レモンが唇を離す・・・キスしたときに舌と舌が接触したらしく二匹の間に銀色の糸を引いた・・・
「・・・元気が出るおまじないっ♪」
ライチはレモンの言葉が聞こえていなかった・・・まだ顔を真っ赤にして・・・虚ろな瞳でじいっとレモンを凝視していた。
「・・・元気でた?」
レモンがライチの頬を軽く叩きながら聞いた。ライチははっとすると無言でこくりと頷いた。レモンは手をぱちんと叩いて喜んだ。
「よかった!・・・・・ねぇ、ライチ・・・・・助けてくれて・・・・本当にありがとう・・・おやすみなさい・・・・」
レモンは静かな声でライチにお礼を言った後、自分のベッドに戻ると背を向けて眠りに着いた。
「・・・・・・・・・・」
ライチはまだぼおっとしていたが、やがてのそのそとベッドに潜り込むと眠りに着いた。
・・・・さっきのキスの感触を頭の中に残して・・・・
----









朝の早い時間にレモンが起きて隣にいるライチを揺り起こした。
「ライチ・・・起きて・・・朝だよ・・・」
レモンの言葉にライチはもぞもぞと身体を動かしてベッドから半身を起こしてレモンのほうを向き、ニコリと笑って朝の挨拶をした。
「お早う・・・レモン・・・今日・・・いよいよだね・・・」
ライチが眠そうな目を擦ってから小さく伸びをした後、真剣な顔つきになりレモンに呟くように喋りかける。
「・・・うん・・・僕達・・・この村から出て行って遥か久遠の彼方に行くんだね・・・」
少々詩っぽい言葉だったがレモンのいっていることは大体あっていた。
そう・・・自分達はこの村から出て行き・・・いろいろな世界を回り・・・そして魔王と呼ばれたポケモンアスラを倒すと言う使命がある・・・
「多分・・・もうこの村に戻ってくることはないんじゃないかな・・・」
ライチが静かに言葉を吐き出す。レモンもそれは考えていた。一度自分達で出て行くと決めたことだ、目的を果たせないままいけしゃあしゃあと村に戻るのは死ぬよりも恥ずかしいことだろう。
「・・・ライチ・・・名残惜しい?」
「まさか・・・でも・・・ちょっとだけ心残りがあるかな・・・」
「心・・・残り・・・?」
レモンの瞳が不思議な光を宿してライチの顔をじいっと見つめた。ライチはレモンの顔を見てその言葉の真意を話し出した。
「・・・僕達・・・先生に迷惑ばっかりかけちゃってて・・・恩返しみたいなこと・・・できなかったなっ・・・て」
ライチの顔に深い影が落ちた。どうやら本当に申し訳ない気持ちでいっぱいのようだ。レモンはライチの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「ライチ・・・僕達が世界を救って先生達に恩返ししよう。きっと喜んでくれると思うよ・・・ねっ♪」
レモンの笑顔にほだされて、ライチの顔が緩やかに笑顔に変わる。ゆっくりと、そして力強く頷くライチにつられてレモンもにぱっと笑って返した。
「ミントとシロップを起こそうよ。そろそろ出発のときだよ・・・」
「うんっ♪」
二匹は顔をあわせて笑いあった後、抱き合って幸せそうな顔をして眠っていた二匹を揺り起こした。
----










村の入り口にはキンウ先生とシリュウ先生、学校の生徒達、村の農夫達が集まっていた・・・
「ああ・・・皆さん・・・ライチ達が来ましたよ」
シリュウ先生の言葉で全員がライチ達の方を向く。ライチ達が近づくとシリュウ先生が小さな麻の皮袋を渡して口を開いた。
「この中には村の皆さんが集めてくれた硬貨が入っています。道中の役に立てなさい。・・・貴方達にはほとほと手を焼かされていましたが・・・いないと寂しくなりますね。ですがこれは貴方達が決めたことです。自分達の目で世界を見て、自分達の足で世界を感じなさい。・・・貴方達に勇者の加護があらんことを」
シリュウ先生が尻尾でライチたちの頭の前で十字を切った後に軽く頭を叩く。これは旅の安寧と無事を祈るこの村の一種の儀式のようなものだ。ライチは静かに頭を下げて村の入り口の門まで歩く。
全員が見ている中でライチ達は永遠の別れを告げるように
「・・・さよ」
さよなら。と、言おうとしたがキンウ先生が口に手を当ててきて言葉を遮る。
「さよなら・・・と言うのは永遠の別れのときに言うものだ。出発するときはいってきます。帰ってきたときにはただいま・・・だ」
「えっ?」
ライチ達は怪訝顔をした。シリュウ先生がキンウ先生のほうを一度見つめてから口を開き、ゆっくりとした口調で話し出した。
「帰ってくるんでしょう?・・・私達はずっと待ち続けていますよ。貴方達がただいまと言うときを・・・」
ライチは泣いていた。レモンも泣いていたしシロップとミントも涙を流していた。こんなに暖かい気持ちが・・・この村には溢れている。
ああ・・・ここが自分達のいつか帰るべき場所なのだ・・・・
「「「「いってきます!!!」」」」
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遠い遠い昔・・・魔王アスラがおりました・・・アスラの身体と心は現世に黄泉がえり・・・世界を滅ぼそうともくろみました・・・世界は滅亡の一途をたどりました。
しかし忘れてはなりません・・・世界に闇がはびこる限り・・・その分光も輝き続けということを・・・小さな小さな名も知らぬ村から小さく小さく瞬いた・・・希望と言う名の淡い四つの光は・・・大地を踏みしめ・・・海を渡り・・・やがて大きな心の輝きとなって・・・闇を打ち払うでしょう・・・



これは・・・そんな心の命を持ち続けた・・・優しいポケモン達の・・・物語・・・



一章・終幕
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コメントがあったらどうぞ
- 九十九さんの作品、楽しみにしております。それにしても誰も着いていかないとは、戦力として力不足だとしても薄情者だらけ……&br;不安に満ちた道のりですが、この後どうなるのでしょうかね(板の方は見にくいので見ていないのです)。楽しみにしております。 -- [[リング]] &new{2008-08-21 (木) 23:00:31};
- どうなるのかは続きを見てのお楽しみということで。誰も着いていかないのはみんな平和主義者だからですw -- [[九十九]] &new{2008-08-22 (金) 08:48:10};
- うぅ眠いZzz&br;とても濃厚な内容に、これからの展開に大いに期待しつつ、続きを読みたいと思いつつ、いつ寝落ちしてしまうか分からないというwwz&br;でも、読みたい!そこまでしてでも読みたい!とても面白い内容です&br;三月兎氏とのコラボのシーンも期待して読み進めたいと思いますwww   -- [[眞]] &new{2008-10-19 (日) 02:30:44};

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