[[イフの災難な1日午前編]]の続きです。 っていっても変なのはないです。ごめんなさい。 #hr ・・・ん? 僕が目を覚ますと足音がする。ご主人は買い物から帰ってきたばっかりみたいで床にスーパーの袋があって中に野菜がいろいろ入ってるままだ。 「あ、イフ起きたんだ。」 「うにゅ・・・」 ご主人は僕の返事が変だったのか笑った。 「午後からちょっと体動かそうか?最近運動してないでしょ?」 「うん・・・」 一抹の不安が僕の心を覆う。 「大丈夫だってそんなに過酷じゃないから。」 ご主人が言う運動はリーフィア基準のせいか結構ハードなものが多くていやだ。 リーフィアは僕より脚も長いし走るのも速く、跳ぶのもうまい。 ここのところ・・・勝てるものがない。喧嘩だって僕のが弱いしねぇ・・・ まぁ、運動する場っていっても家の近くの公園で、よく走り回ってる。 ご主人はリーフィアの使ってる部屋に入って行った。ちょっと嫌そうな感じのする声が聞こえたけど、しぶしぶ部屋から出てきた。 ちょっと不機嫌そうな顔だ。リーフィアもご主人とする運動は好きじゃないみたいだ。 「別に嫌じゃないんだけど・・・ごしゅじんがスパルタすぎて・・・」 「そうかい?スパルタって言うならもっと厳しくしてあげてもいいよ。」 「やだ。」 リーフィアはご主人の提案を一言で一刀両断した。 「じゃ、公園に行こうか。」 「やん!ごしゅじん!」 ご主人は今度はリーフィアを抱えた。リーフィアは抵抗してるけど声は甘えてる。照れてるし・・・僕はトコトコゆっくり走ってご主人のあとについく。 「リーちゃんを抱えるのも久しぶりかなあ。ねえ?うれしい?」 ご主人は照れるリーフィアをどんどん追い込んでいく。 「ま、ま、まあひ、久しぶりだけど。・・・・うれしい。」 リーフィアはデレデレしてる。顔も赤いし。なんでリーフィアはこんなにご主人にはデレデレなのか?わからない。僕はご主人の顔をじっと見る。 「どうしたの?イフ。なんか顔についてる?」 唐突にご主人が僕に聞いてきた。 「え?そんなことないです。」 びっくりした。まあでもご主人は悪い人じゃないし、優しいしね。食生活にかかわるからちょっと運動に関しては厳しいけど。 トコトコ走っていると公園の入口が見えてくる。とくに特徴のない公園だけど。グラウンドが広くていろんな遊具がそろってる。 「リーちゃん、イフ、どうしようか・・・まず、走るか。」 ご主人がそんなことを言ってるうちにグラウンドに入った。黒い大きな犬がいた。 「あれ?あのヘルガー、ひょっとして・・・お~い!」 ご主人がグラウンドにいるヘルガーを呼ぶ。するとヘルガーは大喜びでこっちに走ってくる。パルだ・・・ 「やっぱりパルかぁ・・・元気か?」 「おうっ!あんたのとこも元気そうで何よりだな。」 ご主人はリーフィアを抱えたままでヘルガーに抱きつく。はさまれたリーフィアはちょっと苦しそう。 このヘルガー、パルは近くに住んでる女性がご主人なんだけど、その主人は病気がちでいつもヘルガーを連れて出れない。だから公園限定で遊んでる。 リーフィアがちょっとおびえてる。 「ごしゅじん!このヘルガーはなんなの!怖いよ。」 「あ、ごめんリーちゃんは初めてだったね。このパルはイフのお友達だよ。僕がパルのご主人と知り合ったのもパルのおかげで。優しい子です。」 「ふ~ん。」 「よろしくお嬢ちゃん。」 「よろしね。」 「よろしくね。」 パルはあくタイプなのに気は優しいし、性格もいいし。でもヘルガー。普通のガーディとでも体躯差は2倍くらいあるのにさらに小さい僕と比べたら・・・ 僕は2年前にご主人の所に来たけどご主人とはそれより長い付き合いみたい。 パルは僕の生きていくうえでの技を僕にいろいろ教えてくれた。あんまり役に立ってないけど。 とくにご主人とどう接したらいいかわからないときとかいろいろアドバイスをくれた。恩義、という言葉では片づけられない。それが僕とパルだ。 「あ、そうだパル。僕はリーちゃんのこと見ないといけないから、イフと遊んでくれる?」 え?ちょっと待って・・・パルは本当にスパルタだから・・・ 「いいよ。じゃあイフ、こっち来い。」 無理無理、死んじゃう!ちょっとご主人! 「まあまあ、死にゃしないから・・・」 かぷっ ひゃっ、冷たいっ パルは僕の首を大きな口で噛む。僕の首がすっぽり入る大きさで、このまま本気の力で噛まれたら首折られて死んじゃう。 ふわりと僕の体は浮いた。そしてパルは僕を噛んだまま移動していく。 グラウンドのご主人たちと少し離れたところに連れていく・・・拉致だ。 ぼてっ 「痛っ。」 パルはいきなり僕を放した。 「そら、最初は基本のダッシュな。あっちの端からこっちの端まで2往復、ついてこれるか?」 僕はあっちの端をみた。グラウンドの端だ。こっちの端ってのはもちろんそこから一番距離のある端っこ。 「ついてこい!」 パルは走り始める。僕はあわてて追いかける。パルは本気を出してるようには見えないけど本気で走ってる僕とどんどん差をつけていく。 体格差を考えてよ・・・息も絶え絶えに頑張って走るけど・・・走れど走れどパルとの差がつくばっかり・・・ パルが片端に到達しても僕はまだその半分くらいしか走ってない。脚を動かしても動かしても・・・ ついにパルが僕の前に来る。折り返してこっちに来たんだ。 「はあ、イフ、遅いぞ。」 「ハァッ、体格のハァッ差をハァッ考・・・えて・・・」 「じゃあ先に行ってるから必ず走るんだ。」 パルはそう言い残すとさっさと走って行ってしまった。僕は脚が棒になるまでとにかく走り続けた。で、でもでもね、物事には限度というものが・・・ も、もう駄目だ、1往復半したけど後まだある・・・頭もふらふらだし、い、息も追いついてない。僕は懸命に脚を動かす。 パルが待ってる。・・・や、やっと終わった。身体が重い・・・僕は脚を曲げて地面に倒れこんだ。 僕はちらっとご主人たちのほうを見た。ご主人は楽しそうにリーフィアと走ってる。 「はい、次いくよ。」 「まだあるの?」 「当たり前だろ、はいこれつけて。」 パルは縄を僕に差し出した。よく見るとその縄はパルにまで繋がってる。僕は縄ををくぐりとおす。 引っ張ってもちょうど前足とわきの間で止まるようになってる。 「で、次は引っ張りあいな。どっちが強いかは・・・見りゃわかるけど、まあメニューだから。」 「何の?」 「イフんとこのご主人さんが前俺とあったときに決めたメニュー。ダッシュ、任意の量、体力テスト、任意の科目。ばてるまで。」 「それほとんど決めたことになってないって・・・」 「結んだかー?じゃあいくぞー。」 ぐいっ 力を入れると同時に体が浮いたと思ったら視界からあらゆるものが消えた。 どしん・・・ずささ・・・ 「痛っ・・・」 そして見えたら地面にたたきつけられていた。身体が吹っ飛ばされたっていうことにやっと気付いた。しかも結構引きずられてる。 「痛たた・・・」 「ほら、もう一回。」 「殺す気ですか?」 「いや、死なないだろ。もう一回。」 「やめて・・・」 もういいや。どうにでもなっちゃえ。僕はもう一回最初の姿勢に戻ると出来るだけダメージが少なくなるように防御する。 ぐいっ わーぉ どしん・・・ 逆らわないのが一番だと思ったけどもう駄目だこりゃ。 「痛い・・・」 「起きてそしてさっさとはずして、次行くよ。」 まだ次あんのか・・・ほんとに死んじゃうよ・・・ 「次は簡単、ちょっと待ってろ。」 パルは僕の前と後ろに円を1個づつ描いてかごの小さなついた首輪を持ってきた。 「ここに石が2つある。この2つの石のいずれか1つを俺を避けてこの円に入れたらイフの勝ち。イフのほうが身体が小さいから条件はいいはずだぞ。」 ・・・別に良くないし・・・吹っ飛ばされたら結局一緒だよ・・・ 「別に一度に2つ運んでもいいけど、石をかごから落としたり俺に身体を抑えつけられたらおしまい。これが最後だ。思いっきりこい!」 パルはゴールの円と僕との間に立ちふさがる。僕は早速石を取ってくる。 パルは大柄だけど俊敏・・・接近も遠距離も強い。かく乱するしかない。1つ石を取って首のかごに入れる。 「ならっ!」 僕はとにかくジグザグに動いてパルのに動きを読ませないように動く。パルはまだ動かない。 ジグザグの動きのパターンを変えるけど・・・パルは目だけで僕を追う。パルが動いた。 僕を威嚇して近づけないようにするが僕はジグザグの動きを止めてパルに構わず突っ込む。 ばしっ! 「ぎゃっ!」 パルの前足のストレートが僕の腹を直撃する。 「ううっ・・・」 自信あったのに・・・ぁぁ・・・お腹痛い・・・僕は意識を失いながら倒れこむ。 「パル!そこまで!」 ご主人?パルは急に動きを止めた。 「イフ、よく耐えたね。」 「へ?」 ご主人がこっちに来る。僕は首輪をはずす。 「まさか耐えるとは・・・イフくらいなら最初でもう駄目かなって思ったけど、意外にしぶといな。」 僕はもう頭が混乱して何が何だか分からなくなっていた。 「よっと。」 ドロドロになった僕をご主人は抱き上げる。 「お疲れ、実はね一回どこまで付いてこれるか試したかったんだ。僕は優しくイフに接してるけど、イフは弱くなってないかなって。」 「ごじゅじん・・・そんにゃ・・・ひどいぃ・・・うっ・・・うっ・・・」 目がうるんで涙が止まらなくなった。 「ありゃ、泣いちゃった。ごめんね。でも前のイフはこれについてこれなかったんだよ?」 もうきょうは厄日だ・・・海に落とされ・・・もうわけわかんない・・・ 「パル、ありがとう。」 「いえいえ。・・・おいイフ、俺と遊ぶ気ない?」 「ぇっ? いいよぉ・・・もうやだぁ・・・」 ここからはよく覚えてない。 気がついたら家で寝てた。 「おはよっ!」 「ごしゅじん~。」 おはよっていってもまだ夕方の6時だし・・・身体は相変わらずドロドロだし・・・ 「イフ、シャワー浴びよっか?イフも気持ち悪いでしょ?」 リーフィアが部屋からのそのそと出てきた。僕を少し見てためいきをついた。 「いつまでそんな格好してんのよ?きつい汚い危険!とっととシャワー浴びれ!」 ひどい罵声だ・・・ご主人に僕はコクリとうなずいた。 「ふあっ・・・」 ご主人が僕を抱き上げると、僕は風呂場に連れてかれる。お風呂はそこまで嫌いじゃないけどね。ご主人といろいろお話できるし。 いつもリーフィアとご主人と僕とでお風呂に入ってるけど、なんで一緒かはわからない。 リーフィアは風呂の時はいつもデレデレしてご主人と喋ってるし、ご主人はどうせ入れるんだ、みんなで入っちゃえっていうし。 ご主人は僕を抱きかかえたまま風呂場に入る。ご主人は服を着たままだ。 「ごしゅじん、服着たままなの?」 「まあ後で入るし。どうせ汚れるし。」 ご主人は手を出してシャワーの温度調節をしている。 「もういいかな。いくよ?」 しゃーっ 「わぁっ!」 シャワーはぬるくもなく熱くもなくちょうど良かった。僕はシャワーを全身に浴びて土の汚れを落とす。でも、シャワーのお湯が当たったところが痛くなった。 「うぅぅ・・・」 「どしたの?」 「しみる・・・痛い・・・」 「ちょっと待って。」 ご主人は僕のわき腹の毛を手で動かしながら怪我がないか探している。 「痛い痛い。」 「あ、あった。ちょっと血出てる。シャワー浴びたら手当するからちょっと待ってね。」 ご主人はシャワーを手短に済ませて僕を抱えて再びリビングに連れてくる。 「リーちゃん救急箱どこだっけ?」 自分の部屋にいやリーフィアは救急箱をくわえて出てくる。救急箱を開けたご主人は消毒液を取り出す。 「ちょっとしみるね・・・」 ちゅーっ 「うっ・・・」 しみた・・・痛い。いつ怪我したかはもうどうでもいいや。 「リーちゃんありがと。ご飯作るからちょっとおとなしくしててね。」 ご主人はキッチンに向かって行った。 僕は今日一日のことを回想していた。海のこと、公園のこと・・・災難な1日だ。 どすっ 何かが僕の上に乗ったぞ。ゆっくりと目をあけると・・・ 「リーフィア・・・」 もうね・・・勘弁してくださいよ・・・ 「うふふ・・・今日はお疲れ。」 あれ?いつもみたいにたたいたり引っ張ったりしてこないぞ・・・ 「見てたんだけどね・・・ダサかったし、弱そうだったけどねー。」 うぅ、ストレートだ・・・ 「でも、私はかっこよかったと思うよ。」 「え?」 「私は、ね。じゃ。」 リーフィアは実にあっさりと僕の上からどいた。僕は目を閉じた。 ん?なんか柔らかいものが頬に・・・これは・・・もしかして・・・と思うとすぐに感覚は無くなった。 目をあけるとリーフィアはすでに自分の部屋に入ろうとしていた。 晩御飯を食べた後、僕たちはお風呂に入った。 「ちょっと体洗うから、二匹ともおとなしくしててね。」 湯船の中で僕たちは向かい合う。 「むむむ・・・」 リーフィアが唸る。 「キシャー!!」 リーフィアが僕を襲ってきた。よけれるはずもなくすぐに後ろを取られる。 「尻尾ふにふにしちゃおうっと。」 ふにふに 「ひゃぅ、やめ・・ひゃっ。」 尻尾は敏感だってことをリーフィアは忘れてなかった。 「敏感だから尻尾がちっちゃいんでしょ!」 「しょ・・・そんなことないよ。」 ふに 「ひゃ・・・めて・・・」 「こらリーちゃん!イフにいたずらするんじゃないの!」 「えーっせっかく弱点見つけたのに。」 ふに 「ひぁ・・・」 僕はなぜか尻尾に身体が反応してしまって恥ずかしい・・・ 「まだイフは子供なんだから。大きさ的に。」 「大きさ的には・・・余計じゃないですか。」 ご主人はあわてて僕を湯船から上げてリーフィアの手の届かないところに置いた。 ベッドで寝てるご主人のそばで僕は寝る。 今日は、厄日だと思ったけどそうでもなかったかな・・・ まあ最悪は避けれたからいっか。 「イフ、お休み。」 「ごしゅじん、おやすみなさい。」 僕は眠りに落ちた。 こうして災難な1日は終わりを告げた。 #hr ・誤字、脱字、メッセージ等あれば以下によろしくお願いします #comment