&size(20){''ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語''}; 作者 [[火車風]] まとめページは[[こちら>ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語]] 第二十六話 届け コンの想い! さよならマスタースパーク 前編 「起きろおおおおおおお!!朝だぞおおおおおお!!!」 いつもの爆音目覚ましが当たり一面に響き渡った。 「ひえええ・・・。この起こされ方も久しぶりだぜ。」 少し頭をくらくらさせながらソウイチは言った。 「なんか帰ってきたって感じがするよね。」 モリゾーもしんみりといった。 「あ、のんびりしてられないよ!朝礼朝礼!」 ソウヤの一言で、みんなは中央部に急いだ。 朝礼が終わると、ぺラップがみんなに話があると言い出した。 「え~、このたび、遠征の助っ人に来てくれたシリウスとコンが、彼らの地元に帰ることになった。出発は明日の朝だが、みんなと仕事ができるのは今日で最後だ。」 その言葉を聞いて、ソウイチ達はびっくりした。 まさかこんなにも早く帰るなんて思ってもみなかったのだ。 「遠征に参加できて、すごく楽しかったぜ。さすがに救助活動をほっとくわけにもいかねえから、朝一で帰らなきゃならねえんだけどな。」 「でも、皆さんと友達になれてすごくよかったです。また機会があれば、ここにきたいです。」 二人はみんなに感謝の言葉を述べた。 「そこで、今日の夜はパッチールのカフェで、二人の送別会を開こうと思う。遠征が成功したのも、この二人のおかげでもある。だから、みんな今日はできるだけ早く依頼を終わらせて参加してくれ♪」 ぺラップの言葉に、みんなは興奮した。 せっかく友達になった二人がいなくなるのは悲しいが、せめても、精一杯のもてなしをして送り出してやろうと思ったのだ。 みんなが解散すると、ソウイチ達はシリウスのところへ行った。 「さびしくなるな。せっかく友達になれたのに。」 ソウマは寂しそうな顔で言った。 「心配すんなよ!もう二度と会えないわけじゃねえんだからさ。救助活動がひと段落すれば、また来れるしな。」 シリウスは胸をドンと叩いた。 「お前と会えて楽しかったぜ!向こうでも頑張れよな!」 ソウイチはシリウスの肩を叩いた。 「お前も頑張れよ!リーダー!」 「よ、よせよ!照れるだろ!?」 シリウスの言葉にソウイチが顔を赤くしたので、みんな大笑いした。 「それじゃあ、依頼を選びに行くか。今日はみんなでひとつのエリアに行こうぜ。そのほうが一緒にいられる時間も長くなるしな。」 ソウイチの提案で、みんなは前回攻略できなかったツノ山の依頼を受けることにした。 掲示板の前へみんなが行こうとすると、ライナはこっそりコンを呼び止めた。 そして、誰にも見つからない場所へコンを連れて行った。 「コン。あなた、モリゾーに気持ちは伝えた?」 ライナがあまりにも率直に聞いたので、コンは真っ赤になった。」 「ま、まだなんです・・・。伝えようとは思ってるんですけど・・・。」 コンは赤くなっていたが、どこか悲しそうだった。 「はやいうちに告白しないと、もうチャンスはないわ。大丈夫よ!あなたならきっとできるわ!自信を持って。」 ライナは不安げなコンをできる限り励ました。 自分もソウマに想いを寄せているので、コンの気持ちはよく分かるのだ。 「はい・・・!がんばります!」 ライナに励まされ、コンもだいぶ自信が出てきたようだ。 「その意気よ!さ、行きましょ!」 二人は急いでみんなの後を追った。 依頼の紙を受け取り、みんなはツノ山へ向かった。 ツノ山の入り口は、誰が片付けたのか通れるようになっていた。 「しかし、何であの時は岩が落ちてたんだろうな~・・・。」 ソウイチは首をひねった。 「どう考えても自然に落ちるとは思えないよね・・・。」 ソウヤも疑問を抱いていたようだ。 「いまさら考えてもしょうがないよ。とにかく、依頼を早く済ませて送別会に間に合わせないとね!」 モリゾーの言葉にみんなはうなずいた。 そして、なるべく早く解決するために、半分ずつに別れることにした。 メンバー構成としては、ソウマ、ソウヤ、ゴロスケ、ライナ、シリウスとソウイチ、モリゾー、カメキチ、ドンペイ、コンに別れることになった。 ソウマ組は、どの階にいるのか分からない依頼者が二人、お尋ね者の依頼が1つだった。 一方ソウイチ組は、クヌギダマの救助と、二人組のお尋ね者の依頼があった。 お尋ね者は別々の依頼だが、一緒に行動していることが多いとのことから、まとめて受けることにしたのだ。 「とりあえず、見落としがないように隅々まで探そう。敵には十分注意しろよ。」 今回は、依頼者とお尋ねものがどの辺にいるのか見当がつかないので、出会うとまずいのだ。 5人が大きなフロアに入ると、そこにはパラセクトの群れがいた。 普通の個体よりかなり成長しており、気が抜ける相手ではなかった。 ソウマの作戦は、シリウスが穴を掘るであらかじめ地面を薄くしておき、重量がかかると下に落ちるようにしておくのだ。 この方法は、霧の湖でグラードンと戦ったときにも使った方法だ。 シリウスの準備が終わるまでは、みんなはなるべく相手の体力を減らすことにした。 ソウマが言うには、『例え敵でも、必要以上に傷つけるのはよくない。』ということだそうだ。 そのため、ソウマもほのお技は使わず、スピードスターと通常攻撃で相手にダメージを与えることにした。 「こなを出される前に一気に行くぞ!」 ソウマの掛け声と同時に、シリウスは穴を掘り始めた。 掘りなれているのか、普通よりもかなり速いスピードで掘ることができた。 その間に、ソウマ達は相手の動きが鈍くなる程度にダメージを与えていった。 しかし、向こうも容赦はなく、力を抑えて戦っているこっちは明らかに不利だった。 そして、必殺技のクロスポイズンがソウヤに当たった。 威力が高く毒の追加効果もあり、かなり厄介だ。 幸いにも、ソウヤはモモンの実を持っていたためすぐに回復し、アイアンテールで応戦した。 だいぶ相手にダメージがたまり、そろそろ通常攻撃に切り替えようというときに、突然パラセクトたちがいるところの地面が崩れ落ちた。 どうやら間に合ったようだ。 パラセクトたちは落ちて頭を打ったショックで気絶し、これ以上は戦えそうになかった。 「どうだ?オレの穴掘りも捨てたもんじゃないだろ?」 シリウスは自慢げに言った。 「あそこまで早く掘れるとはな。さすがマスターランクだけのことはあるな。」 「てへへ・・・。」 ソウマにほめられ、シリウスは赤くなった。 そのころソウイチ達は、二人組のお尋ね者に手を焼いていた。 「ちい!!ちょこまか動きやがって!!」 ソウイチは技を連発していたが、なかなかあたらない。 なにしろ、相手はピジョンとスバメの鳥ポケコンビなので、かなりすばやさが高い。 おまけに、どこか漫才風なところもある。 「おらああ!!スバメがえし!!」 「つばめがえしや!お前だけの技ちゃうが!!」 「『つばめ』ってはいっとるやん!オレ特有やろ!」 「んなバカなことがあるか!」 こんな感じで攻撃中に漫才をしているので、カメキチはげらげら笑ってほとんど攻撃ができない。 もちろん向こうはわざとやっているわけではなく、完璧な天然なのだ。 「先輩!笑ってる場合じゃないですよ!」 「そないなこと言うても・・・。アハハハハハ!!」 つぼに入ったらしく、笑うのをやめようとしても笑いが止まらなくなってしまったようだ。 「お、なんか笑いよるぞ。」 「お前があんなバカみたいなこと言うけんやろ!」 「なにい!?間違ってないやろうが!」 「じゃあなんでお前以外のポケモンも覚えられるんですか?」 「そりゃあ、オレが覚える技やけん特別な力が・・・。」 「あるわけないやろうが!!」 またしても漫才勃発。 カメキチは大爆笑しすぎて立っているのがやっとだった。 どう考えても関西の生まれとしか思えない。 「いつまで笑ってんだバカ!!」 ソウイチも笑いが止まらないカメキチにとうとうしびれを切らし、特大の大文字をお見舞いした。 「あぢぢぢぢぢ!!アホ!!どこねらっとんや!!」 燃やされたことでカメキチの笑いは止まり、逆に怒りが湧き起こってきた。 「お前がいつまでもげらげら笑ってるからだろうが!!」 「なにを!?技がすかってばっかのお前が悪いんやろうが!!」 とうとう頭をつき合わせてけんかを始めてしまった。 「いまや!!」 「でんこうせっか~!!」 スバメとピジョンはぴったり併走して攻撃してきた。 けんかに夢中の二人は気がついていないようだ。 「ソウイチ!危ない!!」 「先輩!よけてください!」 モリゾーとドンペイが叫んだが、もう二匹は二人の直前まで迫っていた。 技が決まろうとしたそのとき・・・。 ゴゴゴゴゴゴゴ!!!! いきなり地面が大きく揺らいだ。 ソウイチとカメキチはバランスをくずしひっくり返ってしまった。 「わわわわわわああああああ!!!」 お尋ね者二匹はスピードが乗りすぎていたため、そのまま壁に激突し、はまって出られなくなってしまった。 ソウイチはひっくり返ったときに、天井に大きな亀裂が入るのを見逃さなかった。 「やべえ!!天井が降ってくるぞ!!みんな、逃げろおおお!!」 ソウイチはみんなに向かって叫んだ。 みんなは別のフロアを目指して全力で走った。 コンとモリゾーは、振ってくる岩を避けていたため、他のメンバーよりかなり遅れてしまった。 モリゾーはかろうじて避難できたが、コンはまだ遅れていた。 「バカ!何やってんだ!早くしろ!!」 「コンさん!急いで!!」 二人が声をかけたそのとき、大きな岩の塊が降ってきた。 とてもよけきれるものではなかった。 「きゃあああああああ!!」 「危ない!!」 二つの声が交錯し、ものすごい音とともに岩が落下した。 岩は通路をふさぎ、フロア同士を寸断してしまった。 「う・・・、ううう・・・。」 コンが目を開けると、そこには、コンを守るために覆いかぶさったモリゾーの姿があった。 「も、モリゾーさん!!」 「うう・・・。だ、大丈夫・・・?けがはない?」 「は、はい・・・。私は大丈夫です。それよりモリゾーさんのほうが・・・。」 「オイラのことは心配いらないよ。ほら、大丈夫だから。」 モリゾーはいろいろ体を動かして見せた。 本当は痛かったが、コンに余計な心配をかけたくなかったのだ。 「よかった・・・。ありがとうございます。」 コンは赤くなってお礼を言った。 想いを寄せている相手に助けられたら誰だってこうなるだろう。 「そっちも無事でよかったよ。」 モリゾーは笑顔になった。 その笑顔に、コンはますます顔が赤くなった。 例えて言うなら完熟トマトといったところか。 「お~い!モリゾー!コーン!大丈夫か~!?」 岩の向こう側からソウイチの声が聞こえた。 どうやらソウイチ達も無事のようだ。 「大丈夫だよ~!心配しないで~!」 モリゾーも返事を返す。 「やけどどないするねん?このまんま別々に行くんか?」 カメキチが聞いた。 「とりあえず仕方ねえよ。この岩をどかそうたってそう簡単にどかせそうもないしな。お尋ね者はこっちにいたから縛り上げたし、あとはクヌギダマを助けるだけだから、別々でも問題はないと思うぜ?」 「う~ん・・・。それもそうやな。とりあえず、合流できる場所が見つかるまでは別行動で行こか。」 カメキチもソウイチの提案に賛成した。 「お~い!モリゾー!この岩はどかせそうにないから、合流できるまで別行動だ!その間にクヌギダマを探してくれ!俺達の方でも探すから!」 ソウイチは向こう側に聞こえるように大声で言った。 「うん!わかった~!!」 モリゾーも大声で返す。 「よし!それじゃあ早いとこクヌギダマ探そうぜ。」 「そうですね。行きましょうか。」 「よっしゃ!」 ソウイチ達三人は、お尋ね者を転送した後でクヌギダマを探し始めた。 「じゃあ、オイラ達も行こうか。」 「は、はい。」 二人も、ソウイチ達とは反対側からクヌギダマを探し始めた。 「(どうしよう・・・。モリゾーさんと二人っきりになっちゃった・・・。今のうちに告白しないと、もう、言えないかもしれない・・・。)」 モリゾーと並んで歩きながら、コンはそんなことを考えていた。 しかし気持ちばかりが焦り、なかなか言葉が出てこなかった。 「う~ん、クヌギダマはどこにいるのかな~・・・。」 モリゾーは辺りをきょろきょろ見回してクヌギダマを探した。 「どこにいるんでしょうね~・・・。怖いから隠れているんでしょうか?」 「もしかしたらそうかも。とにかく、探し残しのないように隅々まで探そう。」 「そうしましょう。」 そんな会話をしているうちに、コンの決心は固まった。 「(がんばれ・・・。頑張るんだ私・・・!モリゾーさんに、この想いを伝えるんだ・・・!!)あ、あの・・・、モリゾーさん。」 コンは勇気を出してモリゾーに声をかけた。 「ん?なあに?」 「あの・・・、私・・・、モリゾーさんに言っておきたいことが・・・。」 「え?言いたいことって?」 「私・・・、モリゾーさんのことが・・・。」 コンの言葉が途中で途切れたかと思うと、すごい勢いでコンが吹っ飛んでいった。 「こ、コン!!」 モリゾーはあわててコンに駆け寄った。 「コン!!しっかりして!!」 「ううう・・・。」 どうやら強く頭を打ったようだ。 軽い脳震盪を起こしていた。 「チッ、まだ生きてやがるか。まあいい。もう一発食らわせればおしまいだ。」 モリゾーが声のするほうを見ると、そこには、通常の1.5倍ぐらいのプテラがいた。 さっき放ったのはつばさでうつだった。 「なにするんだ!!不意打ちなんて卑怯だぞ!!」 モリゾーは怒った。 「フン。勝負っていうのは勝つか負けるかだ。強いものが勝ち、弱いものが負ける。それに、どうあがいたところで草タイプのお前に勝ち目などない。オレの餌食になって終わりだ。」 プテラはモリゾーをこばかにしたように笑った。 「勝負は相性だけで決まるもんじゃないぞ!!お前みたいな卑怯なやつに、やられたままひいてたまるもんか!!」 モリゾーの目は怒りに満ちていた。 仲間であるコンを傷つけられ、あまりにも傲慢なことをいわれたからだ。 「いいだろう。すぐにけりをつけてやる。こおりのキバ!!」 プテラはすぐにモリゾーにとびかかった。 すばやさでは飛行タイプのプテラのほうがうえだ。 「ぐあああああ!!!!」 モリゾーは体に思いっきり噛み付かれた。 痛い上に技は氷、ダメージはかなりのものだ。 そのうえ、プテラは容赦なくつばさで打つを繰り出した。 「ガフッ・・・。」 あまりの連続攻撃に、モリゾーの意識は飛びそうになった。 体力もどんどん減り、すでに瀕死の状態だった。 「ほらほら、さっさと降参したらどうだ?相性面で簡単に勝負はつけられるんだよ!!」 プテラはそんなモリゾーをあざ笑うかのように攻撃を続ける。 「(オイラは・・・、こんなやつに負けるのか・・・?こんな、卑怯で最低なやつに・・・。そんなの・・・、そんなの嫌だ!!!)」 その瞬間、モリゾーの体から緑色の光があふれた。 「な!?何が起こったんだ!?」 プテラは驚きのあまり攻撃をやめた。 その瞬間をモリゾーは見逃さず、口の中にタネマシンガンを叩き込んだ。 「モガガガガガ!!」 口の中に連射されてはたまらないので、プテラはいったんモリゾーと距離をとった。 「相性だけで勝負は決まらない・・・。たとえそっちが有利な技を持っていても、こっちの根性とやる気しだいでひっくり返すことだってできるんだ!!」 瀕死の状態で、モリゾーが発動したのはとくせいのしんりょく。 このとくせいは、草タイプの技で与えるダメージが2倍になるのだ。 さっきのタネマシンガンも威力は二倍、プテラが距離をとったのもそのせいだ。 「例えそうだとしても、お前の体力は残りわずか。そんな状態でオレに勝てるのか?みたところ、強そうな技はタネマシンガンのみ。そんなんで勝てるほど甘くはないぜ?」 プテラはまだ余裕だった。 しかし、次の瞬間には、その余裕ははるか遠くに消し飛んだ。 「例えそうでも、勝てる可能性がわずかでもある限り、オイラは勝負を捨てたりしない!!仲間を傷つけたお前になんか負けるもんか!!コンは、オイラが守る!!」 モリゾーの目が据わった。 そして、周りを緑の葉が舞い始めた。 「あれは・・・、まさか・・・!!」 葉はぐるぐると舞い、やがて嵐のように激しく回りはじめた。 「これが、オイラの本気だ!!食らえええええ!!」 葉の嵐、リーフストームはプテラによける暇を与えず直撃した。 しんりょくの効果でダメージは2倍、とても耐えられるはずはなかった。 「くそお!!オレが、オレが草タイプなんかに・・・。があああああああああ!!!!」 ドスン!! プテラは力尽き、その場に倒れた。 ---- [[アドバンズ物語第二十七話]] ---- ここまで読んでくださってありがとうございました。 誤字脱字の報告、感想、アドバイスなどもお待ちしてます。 #pcomment(above)