&size(20){''ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語''}; 作者 [[火車風]] まとめページは[[こちら>ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語]] 第七十話 最後の冒険! VSディアルガ! しばらくの後、にじのいしぶねはじげんのとうへ続く道に接岸し、止まった。 みんなは船を降り、無言のまま道をひた歩く。 半分ぐらい進んだところで、突然モリゾーが声を上げた。 「見て! じげんのとうの天辺が赤くなってる・・・」 確かに、じげんのとうの上空を真っ赤な雲が渦巻いている。 何かとても不吉な予感がした。 「何かやべえな・・・。とにかく急ぐぞ!」 ソウイチの言葉でみんなは駆け出し、あっという間にじげんのとうの入り口までたどり着いた。 みんなはしばらく立ち止まり、目の前にそびえ立つ巨大な柱を眺める。 そのまま上を向いていると、突如として地面が揺れ始めた。 「おわあ! みんな伏せろ!!」 とっさにみんなはその場へかがみこみ、振動による衝撃を回避。 それから数十秒後、揺れはようやく収まった。 「なんだったんだろう・・・。今の地震は・・・」 ソウヤは立ち上がりざまにつぶやいた。 「そういえば、前に父さんが言ってたな・・・。各地の時が破壊されたのは、じげんのとうが壊れ始めたからだって・・・」 「じゃ、じゃあ今のは、じげんのとうがどんどん壊れていってるからその影響で・・・」 モリゾーの言葉に、ゴロスケは敏感に反応する。 みんなの顔から、すうっと血の気が引いていった。 そんな中、ソウイチはずっとじげんのとうを見たままだ。 「ソウイチ・・・」 みんなは不安そうな様子でソウイチを見つめる。 「お前ら・・・、オレについてくるか?」 ソウイチは唐突に質問を投げかけた。 みんなは一体何が言いたいのか分からない。 「このまま行って、確実に戻ってこれる保障はねえ。もう二度と仲間や家族に会えなくなる可能性もある。それでもついてくるか?」 ソウイチの口調はいたって真剣だった。 不安の色を浮かべているみんなを気遣ってのことだろう。 だが、それは無用だった。 「いまさら何言ってるのさ! オイラ達は時の破壊を食い止めるためにここまで来たんだよ!? いまさら後に引けるもんか!」 さっきまでの表情とは一転、モリゾーは力強く言った。 「そうだよ! こうなったら、僕達は最後までソウイチについていく!」 「だって、ソウイチはアドバンズのリーダーで、僕達はそのパートナーで、仲間じゃないか!」 ソウヤとゴロスケも言う。 みんなの気持ちは、再びまとまったようだ。 「・・・それを聞いて安心した!」 ソウイチは振り返ると、にっと笑った。 三人も、その笑顔を見て少し表情が緩む。 「絶対オレ達で、世界を救ってやろうぜ!!」 「おう!!」 みんなは気合を入れ、じげんのとうへと入り込んで行く。 しかし、その気合とは裏腹に、頂上へたどり着くのは決して甘いものではなかった。 出てくるポケモンの種類はわずかだが、今までで一番レベルが高いのだ。 特にドーミラーはふゆうとたいねつを併せ持ち、さらにはがねタイプと来ているので弱点がほとんどない。 そしてポリゴンは、ひこうタイプではないが空中戦を得意とし、攻撃がなかなか当たらないでいる。 ソルロックやルナトーンはモリゾーとゴロスケのおかげでしのげているが、この二人にはかなりの苦戦を強いられていたのだ。 だが、傷つき、息も絶え絶えになりながらも、ソウイチ達はあきらめなかった。 ソウマ、グラス、待っている仲間、そして自分達を信じている全世界のポケモンのために、ここで倒れるわけには行かない。 その思いがみんなを必死で突き動かしている。 ところが、じげんのとうの最上部にたどり着いたとたん、状況は一変した。 今まで出てきたポケモンの進化系が現れ、さらにはボーマンダまでいるという非常に厄介なことになっていたのだ。 ゴロスケのれいとうビームで対処と行きたいが、三人もいたのではあまりに不利である。 「はあ・・・、はあ・・・」 「こんなところで足止めを食らってる場合じゃないのに・・・!」 みんなはふらふらになりながらも踏ん張っていた。 しかし、これ以上ダメージを受ければ再起はほぼ不可能。 敵は容赦なく技を浴びせ、招かれざる客を追い出そうとする。 「こんちくしょう!!」 ソウイチは無我夢中でかえんほうしゃを放ち、空中を動き回るポリゴン2を倒そうとする。 だが、向こうのすばやさは伊達じゃない。 目で追いかけてはいるものの、技が届く寸前で回避されてしまう。 おまけに、むやみやたらに技を使ったため、とうとうPPがなくなってしまった。 「くたばれ!!」 メタグロスのサイコキネシスで、ソウイチは思いっきり投げ飛ばされ、戦っていたほかの仲間のところへ突っ込んでしまった。 そこへ追い討ちをかけるように、ボーマンダのりゅうのいぶきが全員を焼き尽くす。 地面に這いつくばるようにして堪えた直後に、ドータクンのじんつうりきがみんなの体を締め上げた。 「ぐああああああ!!」 「あ・・・、あああ・・・!」 みんなはうめき声を上げ苦しんだ。 身体中がばらばらになってしまいそうだった。 「お前達をこれ以上は行かせん! あきらめて帰れ!!」 ボーマンダ達は冷酷な目つきで四人を見下ろす。 「くっそお・・・!!」 ソウイチは憎々しげにボーマンダをにらむ。 なんとしてでも自分の手で倒したかったが、これ以上戦えば全滅の可能性があることは一番分かっていた。 「ソウイチ、ここはいったん引こう。このままじゃ頂上まで持つか分からないよ」 ソウヤはソウイチにささやきかけた。 「あきらめろってのか!? 冗談じゃねえよ!! 今ここで敵前逃亡したら、みんなに顔向けできねえだろうが!!」 ソウイチは烈火のごとく怒った。 使命を放棄して逃げることなんてできない。 「そうじゃないよ! 戦いってのは力勝負だけじゃない。頭を使うのだって立派な勝負なんだ。ここは、戦わずして勝つだよ」 ソウヤは冷静にソウイチをなだめた。 だが、ソウイチには戦わずして勝つという意味がわからない。 「こういうことさ!」 ソウヤはバッグに手を突っ込み、何かの玉を取り出す。 玉は急に光り始め、やがて光を失うと、真ん中からぱっかりと割れた。 すると、敵のほうに変化が現れ始めたのだ。 「うぐぐぐぐ・・・! か、体が動かない!?」 なんと、その場にいて全ての敵がかなしばりに遭ったかのように硬直していた。 「ど、どうなってんだ・・・?」 「いったい何が・・・」 三人は事情がまったく理解できない。 ただ呆然と敵を見つめるばかり。 「さっき拾ったてきしばりだまを使ったんだ。これでフロア内の敵はみんな金縛り状態になるんだ」 一体いつの間に手に入れていたのだろうか。 それにしても、ソウヤの道具に対する知識はとても役に立つ。 さすがは金銭と道具の管理を任されているだけのことはある。 「今は全部の敵を相手にしてる時間はないよ。僕達の目的は時の破壊を食い止めること、こんなところでもたもたしていられない」 それを聞いて、みんなはソウヤの真意が分かった。 戦わずして勝つとは、いかに頭を使って少ないダメージで頂上にたどり着くかなのだ。 これからはすべての敵を倒すだけではなく、うまく逃げる方法も考えなければならない。 「確かにな。全部まともにやってたら時間切れになる可能性もある。今は頂上に行くことが最優先だもんな」 ソウイチは深くうなずいた。 いつまでも力押しでいけるほどこの先は甘くない。 「敵が動けない今のうちだよ。早く上へ行こう」 ゴロスケに促され、みんなはその場から退散した。 「ま、待て!! 逃げるな~!!」 怒鳴れど叫べど、動けなくては意味のない敵であった。 そしてみんなは、時に戦い、時には身を引きようやく頂上へとたどり着く。 だが、頂上の様子はかなり荒れていた。 屋根のようなものを形成していたと想われる部分は、柱が崩れ、ところどころに瓦礫が散乱している。 こんな場所にディアルガがいるのかと疑わしくなるほどだ。 「たぶんここが頂上だと思うけど・・・」 「ずいぶんひでえ有様だな・・・」 みんなはしばらく荒れ果てたその場所を眺めていたが、モリゾーがふと上を見て叫んだ。 空には、さっきよりもはっきりと赤い雲が渦巻いているのが見えた。 中心の穴からは雷が閃光とともに飛び出している。 すると、またしても地震が起こり、みんなはその場に伏せてやり過ごした。 「なんだかこのまま崩れちまいそうな感じだな・・・」 ソウイチはポツリとつぶやいた。 「縁起でもないこと言わないでよ! そうなったらもうここへ来た意味がないんだから!」 ソウヤは早速ソウイチの言葉を聞きとがめる。 「分かってるよんなことは! とにかく、先へ行ってみようぜ」 ソウイチはむっとしたが、今は言い合いをしている場合ではない。 みんなはしばらく廃墟の中を進み、そして奇妙なものを見つけた。 神秘的な感じのする、窪みのあるサークル模様だ。 「なんだろうこれ・・・。窪みからして、何かはまってたみたいだけど・・・」 ソウヤは腕を組んで考え込んだ。 他のみんなも何がはまっていたのかと思案に暮れたが、ゴロスケが何かひらめいた。 「ちょっと待って! 窪みの数は全部で五つ、ときのはぐるまも全部で五つ・・・」 「そうか! ここにはぐるまを納めりゃあ、時の破壊が収まるかもしれねえのか!」 みんなは即座にゴロスケの言葉を理解した。 いよいよ、最後の使命を果たすときが来たのだ。 「よし。じゃあ早速はめてみよう」 時間がないので、左右をソウイチとソウヤに分かれてはめることに。 突然、それを邪魔するかのようにみんなの足元へ雷が落ちた。 「わあああああ!!」 みんなは衝撃でかなり後方まで吹っ飛ばされてしまう。 再び近づこうとすると、急にあたりが真っ暗になった。 そして、どこからか声が聞こえてくる。 「グルルルルルル・・・。お前達か! このじげんのとうを破壊するものは!!」 「えええ!? ち、違うよ! オイラ達は時の破壊を防ぎに来たんだ!」 お門違いもいいところだ。 世界を救いに来たのに破壊してしまっては意味がない。 だが、時の破壊という言葉を聞き、突然相手は黙り込んだ。 しかしその直後・・・。 「トキノ・・・、ハカイ・・・。トキノ・・・!! グオオオオオオオ!!」 うなり声があたり一面にとどろいたかと思うと、みんなの目の前に巨大なポケモンが姿を現した。 それこそ、まさにディアルガ。 色はすでに普通のものではなく、未来で見たものと同じ色に変わってしまっている。 「お前達!どうしてもこの塔を破壊するというのか!!」 ディアルガは尋常ではないほど怒り狂っている。 「違うって!! 僕達はこの塔が崩れるのを防ぎに・・・」 「黙れ!! じげんのとうを壊すものは、私が許さん!! グオオオオオオ!!」 ソウヤの話を聞く気配は全くなく、ディアルガは再びうなり声を上げる。 「きっと時が壊れた影響で暴走してるんだ! このままじゃまずいよ!」 ゴロスケは言った。 「でも、未来で見たあいつより闇には染まってねえ。あいつを正気に戻すチャンスはある!」 ソウイチははっきりと言い切った。 未来ではすっかり自分の意思を失っていたディアルガだが、今はまだかろうじてその寸前で踏みとどまっている。 みんなはそれを聞いて、ようやく落ち着きを取り戻した。 「行くぜ! これが本当の最終決戦だ!!」 「おう!!」 みんなは気合を入れなおし、目の前に立ちはだかる巨神へと果敢に挑んでいった。 先手必勝、まずはソウイチがばくれつパンチで飛び掛る。 「愚かな!!」 だが、ディアルガは動じることもなくソウイチを前足で蹴り返した。 「ぐはっ!!」 金属バットで打ち返されたような衝撃を受け、ソウイチは地面に激突。 だがほかのみんなは、それに気を取られて攻撃をやめるわけにはいかなかった。 「これならどうだ!!」 セオリー通り、ゴロスケはどちらのタイプにも効果のあるれいとうビームで攻撃。 目いっぱいの力を込めてれいとうビームを放つゴロスケ。 はがねタイプを持っているとわかっていても、戸惑っている暇はない。 例えわずかなダメージでも、形勢を逆転できる材料になるのだ。 「無駄なことだ!」 ディアルガはりゅうのいぶきであえなくれいとうビームを跳ね返し、次の攻撃をしようとしたソウヤにドラゴンクローをお見舞い。 ソウヤは直撃こそ免れたが、ひざの部分をやられてしまった。 これでは速効性が期待できない。 「このお!!」 あまり効果がないと分かっていても、攻撃しないわけには行かない。 モリゾーは目一杯の力をこめてタネマシンガンを連射する。 「こんなもの、痛くもかゆくもないわ!!」 ディアルガは虫を叩き落すかのように、またしてもドラゴンクローでモリゾーに攻撃。 しかも落下点が攻撃しようとしていたソウイチと重なり、二人はいやというほど地面に叩きつけられた。 「も、モリゾー・・・、大丈夫か・・・?」 ソウイチは痛みをこらえて立ち上がり、モリゾーの身を案じた。 「これぐらいまだ平気さ! こんなところで弱音を吐いてなんかいられないよ!」 「その意気だ! オレ達の本気はこんなもんじゃないってところを見せてやろうぜ!」 元気そうに振舞うモリゾーを見てソウイチは安心し、再び闘志がめらめらと燃え上がってくる。 みんなは攻撃をいったんやめて集まり作戦を練った。 「どうした!? もう終わりか!?」 今度はげんしのちからで容赦なく攻撃するディアルガ。 柱のかけらや岩を交えたものが大勢で襲い掛かってくる。 「冗談だろ? こっからが本領発揮だぜ!!」 ソウイチの言葉を合図に、みんなは四方に散った。 降ってくるものをよけたら、いよいよ作戦開始だ。 「こざかしい! 踏み潰してくれるわ!!」 ディアルガは正面に現れたモリゾーを踏み潰そうと前足を振り上げる。 だが、直後顔面に衝撃が走った。 ソウヤのアイアンテールがヒットしたのだ。 「な、何だと!? なぜキサマは空を飛べる!?」 通常では絶対ありえないことに、ディアルガは狼狽した。 これなら足を使わないので負担もかからず、スピードも上がるのでソウヤにはちょうどよかったのだ。 「正気に戻ったらいくらでも教えてあげるよ! 今だソウイチ!」 ソウヤはディアルガの右側にいるソウイチに叫んだ。 「何!?」 ディアルガが右を向いた時には、すでにソウイチのばくれつパンチは顔にのめりこんでいた。 「さっきのお返しだ! これでおあいこだぜ!」 ソウイチは口元に笑みを浮かべて言った。 「キサマあああああ!!」 ディアルガはドラゴンクローでソウイチを殴り飛ばそうとするが、背後にすさまじい冷気を感じた。 ソウイチのほうに気をとられている隙に、ゴロスケがれいとうビームを放ったのだ。 そしてディアルガが方向を変えようとした時に、モリゾーのタネマシンガンが足元をすくう。 体をねじらせ、ディアルガの巨体は音を立てて地面に倒れこんだ。 ここを守って来て以来、ここまで相手にダメージを与えさせたのは初めてだった。 「よくも・・・! よくもよくもよくもおおおおお!!」 ディアルガの怒りのボルテージはさらに高まり、りゅうのいぶきをところかまわず連射した。 みんなはそれを避けつつ、ディアルガが一人に気をとられている隙にもう一人が技を当てるという動作を繰り返す。 そうすることで相手の集中力を欠き、技が当たる確率を上げたのだ。 たまに同時攻撃を受けそうになることもあるが、その都度ソウヤが空からアイアンテールで攻めるのでディアルガは技を出せない。 ようやく体力が半分を下回った頃だろうか、ディアルガもいい加減作戦のパターンに慣れてきた。 「それえええええ!!」 「もうお前の動きは見切った!!」 ディアルガは迫るソウヤを首の動きだけでよけ、振り返りざまにソウヤの背中へドラゴンクローをお見舞いする。 足の爪はマント粉々に切り裂き、ソウヤはそのまま地面に叩きつけられた。 マントがなくなった以上、もう飛ぶことはできない。 「ソウヤ!!」 三人はあわててソウヤの元へ駆け寄り、ソウヤを抱き起こす。 「これ以上ダメージは与えさせんぞ!!」 その隙に、ディアルガはげんしのちからで岩や柱の塊を降り注がせる。 塊は容赦なく三人に降り注ぎ、あっという間にその場へひれ伏させてしまった。 「く・・・、くそお・・・!!」 みんなは何とか立ち上がったものの、その場に立っているのが精一杯だった。 「まだ立ち上がるか! ならば、神の裁きを受けよ!!」 ディアルガは急に改まった体制になると、今までの比ではないうなり声を上げた。 いや、うなり声というよりも、もはや振動波に近いもの。 これがディアルガだけ使うことのできる最大の技、ときのほうこうである。 「ぐあああああ!!!」 「うわああああ!!!」 みんなはあまりの苦痛に絶叫した。 じんつうりきなどはもはや論外、体がばらばらになる感覚を伴う前に、頭の中が粉々に砕けてしまいそうだった。 その副作用か、目の前がぐにゃぐにゃとゆがんで見える。 「はあ・・・、はあ・・・」 ソウイチ達はもはや立ち上がることもできず、うつ伏せになってディアルガをにらみつけるぐらいの力しか残されていない。 時間を歪めるほどのエネルギーを持った技、その威力は絶大だった。 「これで終わりだ! ここへ足を踏み入れたことを後悔するがよい!」 ディアルガは再びげんしのちからで岩や柱を持ち上げ始め、止めを刺す体勢に入った。 もう、逃げ場はない。 (負けるのか・・・? オレ達・・・、ここまで来て負けるのかよ・・・!?) ソウイチの心に、初めて恐怖が芽生えた。 使命を果たせず朽ち果てるという恐怖、勝負に負けるという恐怖が心の中を渦巻いている。 表情を見れば、ソウヤ達も同じような恐怖を抱いていることは目に見えていた。 全員が、すっかり戦意を喪失していたのだ。 「これで終わりだああああああ!!!」 ディアルガの声と共に、無数の岩や柱の塊が猛スピードで迫ってきた。 恐怖のあまり、みんなはぎゅっと目をつぶる。 ところが、その塊が四人に直撃することはなかった。 なんと、四人の周りを見えない壁が覆って塊から衝撃を守ってくれていたのだ。 「な、何だと!?」 ディアルガは今までにない驚愕の表情を浮かべた。 突如として現れた壁にだけでなく、その壁から神聖な何かを感じ取ったからだ。 「な、何がどうなってんだ・・・!?」 「この壁・・・、いったいどこから・・・」 みんなは呆然と岩がはじけ飛んでいく様子を眺めていた。 ふと、どこからか声が聞こえてくる。 それは、落ち着いた響きのある、どこか威厳を感じさせる声だった。 [四人の最も得意とすべき技を合わせよ。さすれば、勝利への道開かれん] 「技をあわせろって・・・。今まで四人の合体技なんかやったことねえぞ!?」 「そうだよ!! そんなの無理だよ!!」 みんなはすでに諦める方向へ動き始めていた。 だが、そんな四人を諭すかのように、謎の声は続けた。 [志を捨ててはならぬ。お前達なら、闇の力にきっと打ち勝てるであろう。己の力を、最後まで信じるのだ] 声が聞こえなくなったと同時に、壁は跡形もなく消え去った。 さっきまでの諦めとおびえが嘘のように、四人の心は自信に満ち溢れていた。 「もう二度と奇跡は起きんぞ! 次で最後だ!!」 ディアルガは再び塊を集結させ始めた。 だが、四人はいたって冷静である。 「これが最後のチャンスだ。さっきの言葉の通り、オレ達の力を一つにするんだ!」 ソウイチの言うことにみんなは無言でうなずき、互いに手を重ね合わせ目を閉じる。 不思議と、どこからともなく無限に力が湧き上がってくるようだった。 「よし! 行くぜ!!」 「おう!!」 四人はディアルガに向き直り、お互いの技という力を合わせた。 まずはモリゾーがリーフストームを発動させ、上空に投げ上げる。 そこへ、十万ボルト、かえんほうしゃが合わさったハイドロポンプが混ざり合い、やがてそれは巨大な球体へと姿を変えていった。 「終わりだああああ!!!」 ディアルガは一斉に塊を四人のほうへ飛ばした。 「これが、オレ達の本当の力だ!! いっけええええええ!!」 ソウイチはソウヤのアイアンテールを使って空高くジャンプし、球体へ、持てる力の全てを込めてばくれつパンチを打ち込んだ。 球体は一気に急加速し、まっしぐらにディアルガを目指す。 塊は球体の中に次々と吸い込まれ、跡形もなく消え去っていった。 「ば、バカな!? グオオオオオオオオオ!!!」 球体はディアルガを飲み込み、中からは世にも恐ろしい絶叫が聞こえてくる。 四人は固唾を呑んでその様子を見守っていた。 やがて球体は消滅し、その場にはディアルガだけが残されている。 目をかっと見開いたまま立ち尽くしていた。 「どうだ・・・?」 みんなはディアルガに注目し、すぐ次の行動に移れるようにした。 すると、ディアルガのまぶたがゆっくりと閉じ、眠るようにその場へ倒れこんだ。 しばらく様子を見たが、もう起き上がってくる気配はなかった。 「やった・・・。ディアルガを・・・、ディアルガを倒したんだ・・・!」 みんなは達成感と喜びが沸きあがってくるのを感じた。 だが、そんな気持ちに浸っている時間は一秒たりともない。 「そうだ! こうしちゃいられない! 今のうちにときのはぐるまを納めないと!」 モリゾーの言葉で我に返り、みんなはさっきの場所へ行こうとした。 すると、またしても地震が発生。 今度のは今までの中で最大級、みんなは前後左右に揺さぶられまともに歩けない。 「やべえぞ! まさか崩れる前兆じゃ!?」 「そうだとしたらまずいよ!! 世界は、一気にほしのていしに向かって加速してることになる!!」 ソウイチとソウヤは顔を見合わせた。 直後、突き上げるような振動がみんなを襲う。 もう歩くことすら間々ならない状態だった。 「ううっ・・・。早くしないと・・・!」 みんなは激しい揺れの中、一歩ずつ転ばないように歩き、ようやくサークル模様の場所にたどり着いた。 手が震える中、みんなで一つずつはめていき、ようやく全てのときのはぐるまが窪みにはまる。 そして、サークルは光を放ち、一つの歯車の形となった。 「よっしゃ! これでオッケーのはずだ!」 だが、ソウイチの言葉とは裏腹に、揺れはますます激しさを増し、みんなは台座から転げ落ちた。 「ど、どうなってんだよ!? 歯車は全部納めたろ!? なのになんで地震が収まらねえんだ!?」 ソウイチは驚愕した。 もう何がどうなっているのかさっぱり。 「まさか・・・! 間に合わなかったんじゃ・・・!!」 ゴロスケの顔に絶望の色が広がっていく。 それはみんなにも波及していった。 「そんな・・・。このまま、じげんのとうも崩壊して、ほしのていしを迎えるの!?」 モリゾーの問いに答えるものは誰もいない。 代わりに、あたり一面に雷が降り注ぎ、柱や岩を砕き壊していく。 みんなの視界も白に包まれ、やがて、何も見えなくなった。 ---- [[アドバンズ物語第七十一話]] ---- ここまで読んでくださってありがとうございました。 誤字脱字の報告、感想、アドバイスなどもお待ちしてます。 #pcomment(above)