作者:[[PandraBox/C2]] ---- スマホで動画サイトを巡っていたら、昔のポケモンアニメ配信が行われていて、懐かしくなって覗いてみた。 思い入れのある主人公のポケモンたちがわいわい楽しく歌を歌ってパレードする回が好きだったなと、思い出にふけりながら再生ボタンを押す。 その回は珍しく主人公も悪の組織も出てこない。いや、正確に言えば人間がシルエット程度しか出てこない話で、画面にはポケモン達が所狭しと生き生き動いている。 お馴染みのピカチュウにレギュラーメンバーのキモリ、アチャモ、ミズゴロウ、悪の組織側のニャースと、それから道中で出会ったマネネ。 ぴかぴか、きゃもきゃも、ちゃもちゃも、ごろごろ。ポケモンの言葉がわかないのがこんなにもどかしいものかとおもうくらい、みんな楽しそうで、嬉しくなってくる。 けれど、大変なことに気がついてしまった。 パレードの曲に合わせて陽気に手拍子をするマネネを見て、画面の前で凍り付いてしまった。 いるはずがない。だってこの番組は、ルビー・サファイア時代のものなのだから。 マネネの初出はダイヤモンド・パール。「ミュウと波動の勇者ルカリオ」で一足早く映画に出演していたとはいえ、ルビサファ発売当初の番組にいるはずがない。 動画の再生を止めようとタップするが反応がない。ホームボタンも同じく。せめて音だけでも消そうと調整ボタンに指をかけるが、焦りと恐怖で滑って押せない。 ゆらゆら揺れるマネネの、何のマネなのかわからない、妖しい動きから目を逸らすことが出来ない。 パレードはどこまでも続いていく。何度となく見た話なのに、結末を知っているはずなのに思い出せない。 「おいでおいでよ ぼくらといっしょに」突然ピカチュウが、いつもの声で人の言葉を喋りはじめた。 「おいでおいでよ おれたちのせかい」キモリも 「おいでおいでよ わたしたちとあそぼう」アチャモも 「おいでおいでよ おいらもいるぜ」ミズゴロウも。 マネネだけが喋らず、先頭に立っておどけながら踊っている。ニャースはずっと笑いっぱなしだ。 いつの間にかぬいぐるみがパレードに加わっていた。こんなシーン見たことがない。 口元を縫われボタンの目がついたキバゴ、フェルト製のひげが垂れ下がるデデンネ、お腹のふっくりした縫い目から綿が少しはみ出しているアシマリ。 いるはずがない。いるはずがない。いるはずがない。どれも後の世代のポケモン達だ。 マネネの動きがピタリと止まった。ゆっくりこちら側へ振り返ったところで、後ろから頭を殴られたような痛みが走り、それっきりだ。 誰もいない部屋の、椅子の下に落ちたスマートフォン。 映される映像は、ポケモンとぬいぐるみたちが織りなす奇妙で愉快なパレード。 列の一番最後を、リオルのぬいぐるみがよたよたとおぼつかない足取りで歩いていた。 &ref(ぬいぐるみになったリオル.jpg); 絵はほかぜ様よりいただきました!感謝