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どたばた夏休み の変更点


作[[呂蒙]]
 後半でアレな個所がございます。よって、そういった表現が苦手な方はお引き取りを(作者)




 大学が夏休みには入ったことに加え、連日の猛暑で外に出るのが億劫になり、結城は家にいる時間が長くなった。その間、エアコンはつけっぱなしで、それでも足りず、扇風機まで動員している。文明の利器の懸命な労働によって、家の中は快適な温度に保たれている。電気代がかかるだろうが、体調を崩しては元も子もない。
「ねえ、寒いよ」
 フライゴンのナイルが文句を言うが、暑がりの結城はこれくらいでちょうどいいと言う。本人が言うには、寒いのは上着を着れば済む話だが、暑いのはどうしようもない。全裸になれ、とでも言うのか、とのこと。
 そんな話をしていると、家に荷物が届けられた。論文を書く際に必要な参考文献だという。やはり、学術書というものは一般の書店では手に入りにくく、大学の図書館で借りるか、でなければ、インターネットの書店に頼ることになる。
 今はどのようなものでも、少々の時間とインターネットさえあれば手に入ってしまう。結城は荷物を受け取ると
「おい、見ろよ」
 という。どうせまた変なことを、と思い、ナイルがパソコンを見てみると、画面は通販サイトで、ファッションとある。結城はそこまで、外見にこだわりがないので、意外な気がしたが、よく見ると「ポケモン用」とある。可愛い衣類や装飾品の写真が並べられている。衣類に至っては「小型」「中型」「大型」と区分があり、さらには「小型特殊」「大型特殊」なるものまであり、細分化がされていた。加えて「オーダーメイド承ります」とまである。
「すごいね、こんなのがあるんだ」
「まるで車の免許だな。何だよ『大型特殊』って」
「そっちか……」
「オーダーメイドになると、いい値段がするんだな……。お前は翼があるから、オーダーメイドじゃないとダメかもな」
「だろうね」
 と、本や衣類に限らず、様々なものが家にいながらにして注文できるようになった。が、中には胡散臭いものもある。パソコンを弄っていたナイルが結城を呼ぶ。
「ねー、ご主人」
「ん?」
「『木下ナントカさん』が使っていたと言われている筆と硯が10万円だってさ」
「何だよ、その『木下ナントカさん』ってのは」
「字が難しくて読めないだもん」
「どれどれ、ああ、オークションサイトか。なんか、トラブルが多いって聞くけどなぁ」
 トラブルに巻き込まれるのが面倒なので、結城はオークションサイトなるものを使ったことがない。危ないものには近づかないに限るのだ。
「ああ、これは『木下長嘯子(きのしたちょうしょうし)』だな」
「チョウショウシ? 変わった名前だね」
「本名は勝俊(かつとし)なんだけど、いろいろとポカをやらかした末に剃髪して、それで長嘯子と名乗ったわけだな」
 結城が言うには、この人物は、文化人としては超一流であり、和歌という分野で、歴史にその名を残している。しかし、不運なことに、長嘯子が生まれたのは、永禄12年(1569)のこと。この時代はちょうど戦乱が絶えない時代であった。父親の家定が、天下人・豊臣秀吉の正室・ねねの兄ということもあり、縁者の七光りで一つの国を任される大名になった……まではよかった。が、天下人の死後に起きた関ケ原の戦いでとんでもない失態を犯してしまう。
 長嘯子は徳川家康に与する側、つまり東軍の武将であり、その東軍の拠点の一つ、伏見城の守備という重大な任務を与えられていた。が、何を思ったのか、合戦が始まる前に伏見城を退去して、安全な場所に避難してしまった。当然のことながら、戦後、この行動は問題視され「守備の責任者・鳥居元忠(とりいもとただ)が出てけっていったから出ていった」などと釈明したが、認めてもらえるはずもなく、任務放棄の罪で領地没収となってしまった。さらに、この敵前逃亡に愛想をつかした妻からも離婚を言い渡されてしまう。ついでに言うと、関ケ原の戦いにおける裏切り行為で知られる、小早川秀秋の兄でもある。やはり兄弟だからやることが似ているのだろうか?
 それから、数年後、父親が亡くなり、父親の遺産(つまり領地)は、弟の利房と半分ずつ分けるようにと、幕府から命令が出ていた。が、何を思ったのか、長嘯子は遺産を独り占めしてしまう。結局、訴訟となり、大名に返り咲いたのもつかの間、幕府の命令に背いたという罪で、再び領地没収になってしまう。以後、気力が萎えたのか、それとも、元々武将の器ではないと自分で分かっていたのかは分からないが、大名に返り咲くこともなく、歌の世界で活躍する文化人として生きた。武将としては、情けない経歴だが、文化人としては超一流で、同時代の学者や大名とも交流があったといわれており、また多くの弟子がいたという。
「……ちょっと長くなったけど、そういうわけだ」
「で、何でそんな人の遺品がここにあるわけ?」
 ナイルがそう言うので、結城はこう言った。
「多分だけど、ニセモノじゃないのかな?」
「えっ、ニセモノ?」
「だってさ、そんな超一流の文化人が使っていた品なら、文化的、歴史的にも非常に価値が高いものだぞ? それが、10万ポッキリってことはありえないだろ?」
「……言われてみれば、そうかも」
「木下長嘯子なんて知らない人は知らないからな。誰もが知っている縁者の豊臣秀吉なら『ウソだ』なんて思われるだろうけど……。買う側にも知識が求められるってことだな。個人情報を入力して、クリックすれば、それで商取引が成立しちまうんだからな」
 ただ、歴史の知識がなくても「~と言われている」という曖昧な表現を使っている時点で、ちょっとおかしいと思う人もいるだろう。何にせよ、簡単に商取引が成立してしまうからこそ、逆に注意が必要なのである。そういったことは、結城が通う大学からも通達が出されていた。実際に、結城も友達がひどい目に遭ったという話を聞いている。

 翌日、結城の家に荷物が届けられたが……
「ん? いいえ、田中は隣です」
 どうやら、部屋の番号を一つ間違えたらしい。ここまではよくあることだ。配達員は、大きな箱を台車に乗せて、隣の部屋へ向かった。ちなみに、隣の田中というのは、学部は違うが、同じ大学に通っていて、面識もあった。
 しばらくすると、田中の部屋から悲鳴が聞こえてきた。このマンションはそこまで壁が薄い物件ではないのだが、それでも悲鳴が聞こえるのだ。相当な悲鳴であることは間違いない。
「行ってみるか」
「そうだね」
 隣の様子を見に行くことにした。インターホンを押すと、応答があって、鍵はかかっていないから勝手に入っていいとのこと。部屋に入っていくと、田中がいるのは、家主なのだから、当たり前であるが……。
「誰なんだ、そいつは?」
 田中はポケモンを持っていないはずである。しかし、ポケモンがいた。しかもどういうわけか、メイド服を着ている。話を聞くと、メイド服を着ているバクフーンにマッサージをしてもらおうと思ったのだが、力が強すぎて、危うく体が折れそうになったとのこと。
(さっきの荷物はそれだったのかな。しかし、田中はこんなのが好きなのか……)
 人は見かけによらないな、などと思いながらも、さすがに近所迷惑であると一言文句を言った。
「あんまり騒がないでくれよ。こっちは大学の課題をやってるんだから」
 色々できるって書いてあるから、金を払って、色々家のことをやってもらおうと思ったのに、何も出来ない、とんだ大外れだったと、ブツブツ文句を言う田中に対し「そんな本当かどうかも分からんことを真に受けて、金を払ったお前がバカなんだよ……」と結城は呆れていた。
 時間が時間なので、腹が減ってきて田中は「とんかつが食べたい」と言い出した。とりあえず、そのメイド服のバクフーン、コードネームはマリアというらしいのに、買い物に行ってくるように言った。ついでに言うと♀であるとのこと。
 肉を買ってくるだけだから……などと思っていたが、甘かった。買い物から帰ってきたものの、一向に料理ができない。見かねた結城が様子を見に行くと、とんでもない事実が発覚した。
「おい、これ牛肉だぞ……」
 あまりに田中が可哀想なので、結城が、豚肉を買い直し、とんかつを作ってやった。ナイルも「なんか、正直ご主人って、大した技能を持ってないと思ったけど、意外と優秀なんだな……」とまで言いだす始末であった。
「いやぁ~、悪いなぁ。今度何か食べたくなったら、お前んちに行くから」
「オレはお前の料理人じゃねぇぞ。料理の一つくらい覚えろよ。後、さっき買ってきた豚肉の代金はきちんと払ってもらうからな」
 とんかつを食べながら、そんなやり取りがされる。一方でこちら……。
「ねぇねぇ」
「ん、何、メイドさん?」
「よかったら、割のいい仕事があるんだけど、やらない?」
「割のいい仕事だって? どうせまともな仕事じゃないでしょ、だったら断るよ」
「そんなぁ、立派な人助けなんだけどなぁ……」

 その翌々日、例のメイドさんはやってきた。ナイルは理由を説明して、何とか結城を納得させたものの「うちが損害を被るのは絶対になしだからな」と厳命されてしまった。
 連日の暑さで、結城はビールを飲みながら、夕食をとるのが半ば習慣となっていた。普段、そこまで酒を飲むというわけではないのだが、暑いせいかどうしても飲みたくなってしまうのだという。現に、ビールの製造メーカーは売れ行きがよすぎるせいでせ、生産が追いついていないらしい。
 連日の暑さで、結城はビールを飲みながら、夕食をとるのが半ば習慣となっていた。普段、そこまで酒を飲むというわけではないのだが、暑いせいかどうしても飲みたくなってしまうのだという。現に、ビールの製造メーカーは売れ行きがよすぎるせいで、生産が追いついていないらしい。
 夕飯をとった後、少しばかり飲みすぎたのか、後片付けをすると、そのまま寝てしまった。このことは、ナイルたちにとっては、好都合だった。
「じゃあ、始める?」
「いや、話は聞くって言っただけで、やるとは言ってないでしょ」
「あ、そう、折角準備してきたのに……」
(ぼくがどう答えても、やるつもりだったな……)
 結局、ナイルはうまく言いくるめられてしまった。
(ハッキリ断ればよかったな……)
 メイドさんは服を脱ぎ捨て、早速の性的アピール。
「で?」
「『で?』ってなに? 魅力が伝わらない?」
「別になぁ、服を脱ぎ捨てただけじゃん……」
「やっぱり密着した方がいっか?」
 寝床に座っているナイルを押し倒し、体を密着させる。
(暑い……。相手が相手だからかな……。いや、それよりも……)
 やはり、異性だからだろうか? 雌の匂いとでもいうのだろうか。体が熱くなり、頭がぼーっとする。
「んっ……」
「ん、んんっ……」
 暑い口づけが交わされる。メイドさんの方がおそらく、これが初体験というわけではないのだろう。妙に手慣れている。
(うぁ……。ダメだ、体が動かない……)
 口と口が離れ、お互いの唾液が下にいる、ナイルの体に落ちる。体と体は依然として密着したままである。ナイルの胸元にメイドさんバクフーンの顔があり、その視線がナイルの顔へ向けられる。
「ねぇ、あそこが濡れてきちゃった……。立っているようだし、お互い準備が整ったね? ああ、安心して。避妊具はつけるからね。そもそも私の中に出されちゃ意味がないから」
「もう、勝手にしてよ……」
 ナイルとしては、妙に気怠いせいで、抵抗するのが難しい状態だった。メイドさんはナイルの立ってしまったモノに避妊具をつける。やはり無駄に手慣れている。
(絶対、他のところでもいろいろとやっているでしょ……。これのどこが仕事なんだろ? まさかエロ動画をとるためじゃないだろうな……)
 そんなことに付き合わされたのではたまったものではない。そもそもエロ動画の撮影のどこが、人助けだというのだ。カメラらしきものは見当たらないが……。いやもしかすると、隠しカメラかもしれない。だが、何も動画をとるのにカメラが必要というわけではないだろう。他の機械でも事足りるではないか……。
 そんなことを考えていると、本戦が始まってしまった。
「んっ、やっぱり、噂には聞いていたけど、ドラゴンのおちんちんっておっきい……。ああ……」
「えっ? ちょっとまっ、うっ、うあっ、ああ……」
 性器と性器が接合される。メイドさんは接合させただけで、腰を振っているというわけではない。だが、雌の本能だろうか、中に入れられたナイルの性器を締め付けて、射精を促している。
「もうイキたい?」
「うん……」
「ダメダメ、濃いのが必要なんだから、もうちょっと耐えてもらわないと」
「……嫌だと言ったら……」
「え? きゃっ、ちょ、ちょっと、やめっ……!」
 こんなじらしプレーを続けられたのではたまったものではない。向こうが動かないのであれば、こちらが動くしかない。多少、乱暴な方法かもしれないが、致し方ない。雌の本能があるのであれば、雄の本能というのもある。
 ナイルは残っている力を振り絞って、腰を持ちあげて、中に入っているモノを動かした。上下運動と元からの締め付けが合わさって、ナイルはすぐに絶頂に達した。モノから精が放たれ、避妊具の中になみなみと注がれる。
「ああ、やっぱり、ドラゴンの射精ってすごいっ……! 中で出されているのが、伝わってくる……!」
 モノが引き抜かれ、装着された避妊具には多量の精が溜まっている。
「あはは、協力ありがとう。じゃあ、これはおまけ。まだ残っているかもしれないから」
 避妊具の中に溜まった精がこぼれないように口を縛り、さらに持参した保存容器に入れた。メイドさんはナイルにおまけを施した。
「いや、やめてよ、いいって!」
 ナイルはそういったが、性を放ってもそれなりの大きさを保っているモノに手を使い刺激を加えた。手でしこしこと刺激を加えられ、ナイルはそれに耐えられず、再び精を放った。白い粘液が放物線を描いて寝床に落ちた。
「気持ちよかったでしょ?」
「はぁはぁ……。それより、一つ教えてよ。これのどこが人助け?」
「ああ、実はね、人工授精って聞いたことあるでしょ? 中には子供が欲しいんだけど、いい相手がいなかったり、相手がいても、子供ができにくい体質だったりで、卵を産むことが叶わないポケモンもいるから、そういうポケモンたちに精を提供しているのよ。まあ、それなりのお金は取るけどね。特にドラゴンタイプはそうそういるもんじゃないから、本当に助かったわ」
「な……んだ。そうならそう最初から言ってくれれば……」

 後日、結城の口座にかなりの額が振りこまれていた。一度海外旅行に行ったとしても、十分におつりがくるほどの金額だ。だが、結城はその金に手をつけようとはしなかった。
「お前の稼いだ金だろう? お前の好きにすればいいさ」
 そう言われても、特に使い道がなかった。というのも、特にほしいものなどなかったからである。一度ステーキが食べたくなり、その為に少しだけ使ったが、後は、手をつけていない。
 とにかく、堅実であることに越したことはないのだから。

 おわり

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