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それぞれの風。 第2話 の変更点



 ・・ひっそりと、第2話始動。 



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しばらく走っていた黒い風が、動きを止める。 
その目の前には、二匹の番兵。 
「やっと着いた・・・田舎村のくせして広いんだから」 
ブラッキーが呼吸を整えつつ独り言を言う。 
ふと、彼が後ろを向く。 
「カメックスさんは、・・・やっぱりこないかな」 
自分が置いてきぼりにしたものの、いざ入るとなるとやはり不安が付きまとう。 
だが自分でまいた種、自分の決断による状況。彼は意を決し、番兵に話しかける。 
「・・ん?ブラッキー、何のようだ」 
「あの、長に話したいことがあるんですが」 
「長に?」 
番兵・・・ニドキングがブラッキーを見つめる。そして口を開く。 
「何か用なら、俺が長に報告しよう」 
「え、いや、私が直接話をしたいのです」 
「・・なぜ俺ではいけないんだ?」 
再びニドキングが、ブラッキーを睨む。・・カメックスのような思いやりのある 
眼でなく、相手を威圧するような目で。 
その眼に、思わずブラッキーが一歩退く。 
だが彼も負けてはいない。再び一歩歩み寄り、長に会うため説得を試みる。 
「・・事件が起こっているんです。私はその事件の目撃者です」 
「一体どういう事件だ」 
「山に火の手が上がっているんです。その炎が、こちらに向かっているんです」 
「・・ただの山火事なら、長に言わずとも、我々だけで消化できるだろう」 
「私たちが見張っていたのは北の森です。北に向かって風が吹いているのに、 
なぜ炎が村に近づいてくるか、分かりますか?」 
「北風?・・・どこがだ」 
ニドキングがいった予想外の言葉に、ブラッキーが顔を空に向ける。 
そして彼は、驚きの表情を見せる。 
「か、風向きが変わっている・・・」 
走っているときは確かに風は北に吹いていた。 
まさかこんなタイミングで風向きがかわるなんて・・・ 
さらに彼は気づく。逆風でも近づいてくる炎が、順風に変わればどうなるか・・ 
「は、早く長に合わせてください!」 
「だから、山火事なら長なしでも十分消火できる。 
 ・・長は最近忙しく、疲れているのだ。これ以上、疲労をためれば、体を壊す」 
「ただの山火事じゃないんです!逆風でも近づいてくるんですよ」 
「・・今のように慌てて、風向きを間違えたのではないか?」 
「そ、そんな・・・」 
ニドキングは、どうやっても折れそうに無い。 
ブラッキーは効果的な言葉を模索するが、大して効果のなさそうな言葉のみが思い浮かぶ。 
彼は、自分が出しゃばったことを後悔した。 
 ・・だが、今からカメックスを呼びに行くのは時間がかかりすぎる。 
「やはり俺がお前の言ったことをまとめて長に報告しよう」 
「・・・会うだけでも、だめなんですか?」 
「普段顔をあまり合わせない者と会えば、長は必ず気を使う。・・やさしすぎるのだ」 
心の折れかけた彼は、それで妥協しようかどうか迷う。 
そのとき。 
「よぉ、ニドキング。お、ブラッキーも一緒か」 
「・・・ゴローニャさん」 
長の家の中から、少し気の抜けた声が聞こえる。その声に、ニドキングが短い返事をする。 
「何をしとるんだお前らは?ニドキングは分かるが、特にブラッキー」 
「あ、ええっとですね・・」 
ブラッキーはさらに話がややこしくなる前に、さっさと妥協しようかと思ったが、 
「もしや・・長に会いたいとでも?」 
ゴローニャに一瞬で見抜かれ、彼は思わず驚く。 
「・・そしてこの堅物に足止めされとる、違うか?」 
「は、はぁ・・・」 
まさに図星だが、ニドキングを堅物呼ばわりするわけにはいけないので、 
どうしようもない返事をする。 
「のぅ、堅物」 
ゴローニャは、いきなり話の相手をニドキングに変える。 
「ゴローニャさん、あなたはこの話に関係ないでしょう」 
「おぅ?いつも村の皆々は一心同体と思っていたのに、悲しいことを言うのぅ・・・」 
「・・・」 
相手の調子を崩すような言葉使いに、ニドキングが黙り込む。 
「ブラッキー。会いたい理由は何だ?」 
またいきなり話し相手を変える。 
「え、あっ事件が起こっていて・・・」 
「その事件の目撃者は、お前のみか?」 
「い、いえ・・・カメックスさんも一緒でした途中まで一緒だったんですが・・」 
「・・ほぉ・・・あいつも体力が落ちたな」 
その後しばらく何かを考えていたゴローニャだが、彼はやがてニドキングに話しかける。 
「堅物。・・・お前は、カメックスを尊敬していたなぁ」 
「・・・はい」 
彼の言葉に、ニドキングがうなずく。 
「ブラッキーのいう事件は、カメックスも一緒に目撃したそうだ。 
 ・・一緒に来ればいいものを、その報告をブラッキーに任せた。 
つまり、カメックスはブラッキーを信頼している、ということだ」 
「・・・・」 
「そのブラッキーを否定することは、ひいてはお前の尊敬するカメックスも 
否定する、ということにはならんかのぅ?」 
「そ、そのような言い方・・・」 
ニドキングが反論する。 
だが彼は、それを否定し切れなかった、確かにこじつけのような気もするが、 
話の筋が通っているようにも聞こえる・・・ 
「あのな堅物、会わせてやるぐらいいいではないか。ブラッキーは長を 
疲れさせるような輩ではない・・・ブラッキー入れ。 
堅物の言うことなぞ聞くな。責任はこっちが取る」 
「・・・・はぁ」 
ブラッキーはチラッとニドキングを見るが、 
やがて長の家の中に入っていった。 
ブラッキーは、まだ何が何なのか分からなかった。 




「あなたの言葉使いには、どうも反論しにくい」 
ニドキングが、ゴローニャにつぶやく。 
彼はしばらく家の中に消えていくブラッキーを見ていたが、 
やがて見張りの任に戻る。 
「それはお互い様なんじゃないか?お前の威圧的な話し方の前では、 
こっちの口も滑りが悪い。 
 ・・案外、長はお前のせいで疲れているんじゃないか?」 
ゴローニャは嫌味を言ったが、彼は反論しない。 
「・・なぜお前はそこまで長に気を使う?」 
ゴローニャの質問に、彼が答える。 
「あなたも知っているでしょう。今の長の祖父・祖母は、いわば私にとっての 
育ての親。・・・その孫にあたる長を守るのが、私のせめてもの恩返し。 
 ・・命に代えても、守るのが筋と考えています」 
「命に代えて、か・・・さすが堅物だな。そろそろわしに見張りの交代だぞ。 
 ・・お前も少しは休め。疲れすぎては、守るべきものも守れんぞ」 
「・・・分かりました。では」 
そういい残し、彼は自らの家に戻っていく。 




「・・お、おい見ろあれ!!」 
「ん・・・な!!すぐに報告だぁ!」 
西の見張りの兵が、近づいてくる炎にようやく気づく。 
 ・・時を同じくして、東の見張りの兵もまた。 




 ・・この報告の遅れが、村の危険を拡大してしまうことに、気づいた者はまだいない。 





「ええっと・・ここを右に曲がって・・・」 
ブラッキーは、長の家に入ったが、予想以上の広さに悪戦苦闘をしていた。 
もともと方向音痴な彼が、数十の部屋から、一つの長の部屋を探し出すことは 
容易なことではなかった。 
「・・・行き止まり?」 
誰もいない部屋を抜けた先は・・確かに行き止まりであった。 
「・・なんでこんなに広いんだよぅ・・」 
さながら巨大迷路に迷い込んだような状態に陥っている彼が、 
若干むなしい声で独り言を言う。 
だがどうすることもできず、彼は結局後戻りを始める。 
「・・長の部屋に行きたいのなら、左に曲がってすぐですよ」 
そんな彼に、声を掛ける一匹のポケモン。 
「へ?・・はあ、そりゃどうもです・・って」 
「もっとも今は、誰もいませんけどね」 
そんな言葉を掛ける、一匹のポケモン。・・その者が、長。 
紺と水色の体の、ブラッキーより大きいポケモン、レントラー。 
「・・!!お、長・・何でこんなところに」 
「あなたまで、長というのはやめて下さい。それに私は、いま部屋をでたばかりですよ」 
そう言い、レントラーは自分の出てきた道の方向に視線を移す。 
それにつられるように、ブラッキーも視線を移す。 
見ると、パニックに陥っていて気付かなかった通路であった。 
「落ち着けば問題なく見つけられた、と思いますよ」 
「は、いえその・・・」 
少しあきれつつも笑顔を浮かべるレントラーに、ブラッキーは返す言葉がなくなってしまう。 
ただ情けない顔を浮かべ、おどおどするしかできなくなっていた。 
「・・・クスッ」 
その姿ががレントラーにはたいそう面白いものに見えたようで、 
長の顔に笑った顔が浮かぶ。 
「・・・そ、そうだ!山が火事で、それが何かおかしくて、その、大変なんです!」 
ふと、ブラッキーは何かを思い出したように顔を上げ、 
伝えなければならない事を懸命に喋ろうとするが、まるで説明になっていない。 
しかしレントラーは、 
「分かりました、ついてきて下さい」 
と、短い返事とブラッキーへの指示を出し、動き始めた。 
「??い、今ので分かったのですか?」 
自分でもひどい説明だとは気付いているブラッキーは、長へ質問を投げかける。 
するとレントラーは振り返り、 
「・・・カメックスさんから文が届いたんです。直接会って伝えることができれば 
それに越したことは無いけど、やっぱり心配だから念のため、と」 
「・・・なるほど」 
つまり、俺を信頼しきってなかったから、動きのすばやい誰かに届けさせたってことか・・ 
とブラッキーは思った。 
「・・・分かってたのならもっと早く行動すればよかったのでは?」 
「私が先頭に立たなくても、みんなは考えて行動できます。私は状況を見つつ、 
ここに待機しておきます」 
「・・・なるほど」 
確かに自分で考えて行動できないような輩が長直属の兵になれるとは思えない。 
「すると私は全くの役立たず、ってことになりますね・・・」 
「え・・・で、ですけど手紙が偽物で無いって事は確認できましたし」 
「・・・無理に慰めないでください・・・」 
カメックスに信頼されておらず、言いたいことも伝えられず、果ては長に慰めの言葉をかけられ、 
自分が情けないと思うブラッキーだった。

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IP:133.242.139.165 TIME:"2013-01-30 (水) 15:04:57" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%9E%E3%82%8C%E3%81%AE%E9%A2%A8%E3%80%82%E3%80%80%E7%AC%AC%EF%BC%92%E8%A9%B1" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0; YTB730)"

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