ポケモン小説wiki
それぞれの風。 の変更点


処女作につき文章力その他が低いことはご容赦を・・・ 





by 油菜かたぶら。


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生き物・・・もとい全ての物にはたくさんの風が宿っている。 



風は気まぐれ故に、時に追い風が吹くがごとくうまくいくことがあれば、 
時に向かい風が吹くがごとくうまくいかないことがある。 



風は時に嵐のごとく相手を傷つけ、 
時に春風のごとく相手をやさしくつつみこむ。 



これは、さまざまな風がおりなす物語・・・ 





大きくもなく小さくもない、どこにでもありそうな小さな田舎村。 
空をさえぎるものもなく、無数の星と三日月が輝いている。 
その空の下にたたずむ三つの物見櫓。 
その中に一つに、二匹のポケモンがいた。 
「・・・ひまですねぇ」 
静かな夜に、気の抜けた声がひびく。 
「暇だと・・・敵をしっかり見張っておけば、時もすぐたつはずだ」 
気の抜けた声に、力強い声が返事をする。 
「敵、ですか・・・こんな田舎村に敵なんて来るんですか?」 
「日ごろから注意を怠らないから、今の平和があるのだ」 
「ですけどね、こんな村には、加害者じたい来ませんよ」 
闇の中から返事が飛ぶ・・・イーブイ進化系の中でも、自然界の力ではなく、 
「無」より生まれる力・・・闇の力をもつもの、ブラッキーである。 
黒の体は、闇に溶け、敵の目を欺く。 
月に反射しわずかに光る模様と赤色の眼のみが、その存在をわからせる。 
「だからだな、加害者がこないのも・・・」 
 ・・対するは、「砲」の力を持つもの、カメックス。 
ブラッキーよりはるかに大きい体には、一対の砲台がかねそろえられている。 
「まったく、誰がこんな櫓なんか建てたんでしょうか」 
「お前なあ、そういうことをいってるから・・・」 
と、二匹は意味のない言葉のやり取りを交わしている。 
ブラッキーはもちろんのこと、えらそうなことを言っているカメックスもまた、 
正直のところ暇なのである。 
ブラッキーの言うように、ここ数年は、特に目立った事件も起きていないのだから 
無理もない。 
ただ地と星を交互に見つつ一夜を櫓で明かす仕事・・・ 
月に三、四度のこの仕事は、もっとも疲れにくく、またある意味で 
最も疲れやすい仕事だった。 
 ・・何もしないで飯が食えるのだから、あながち悪い仕事ではないのだが、 
ブラッキーはまだ若く、冒険や刺激、つまりはスリルを求める時だった。 
ただ見るだけ、というこの仕事は、ブラッキーには何となくパッとしない仕事なのである。 



「顔に出てるな・・・若さゆえのアレだろ?」 
いきなりカメックスが問いかける。 
その声に闇に溶け切れていない赤い眼がわずかに動く。 
「昔はわしにもそんな時代があったな・・・ 
見たことのない自然や遺跡への冒険、そこにある冒険やスリル・・・ 
そういうものを求めているんだろ?」 
あまりに図星なのでブラッキーは何もいえない。 
「懐かしいな、そんな時代・・・だがな、そんな熱もいずれは冷める。 
結局は田舎で飯食っているのが一番なんだ」 
「・・・若者への説教、昔の自分をなつかしむ・・・あなたも年をとられましたね」 
「はは、それは嫌味か?自分の老いっぷりぐらい、心得ておるわ」 
「・・・・・・・」 
次々と心に響いてくる言葉を投げかけてくるので、軽い嫌味を言ったブラッキーだが、 
それもまったく効いてないようだ。 
使える言葉がなくなり、ブラッキーは黙り込んでしまう。 
その姿を、子供に対する親のような目で見るカメックス。 
 ・・いつの間にか、真上にあった月がしずみ始めていた。 
「・・・そういえばカメックスさんの過去の話ってきいたことありませんよね。 
どんな感じだったんですか?」 
ふと、ブラッキーが口を開く。 
「そうだな・・・・・今の話のこと以外は、ほとんど忘れてしまったな」 
「冗談でしょ・・・あれ?」 
ただ話題を変えたかっただけのブラッキーだったが、話の途中であることに気づく。 
今の話題・・・カメックスの過去については昔も質問したことがある、と。 
しかも、一回や二回でなく、かれこれ十数回は質問した。 
しかし、帰ってくるのは、いつもうやむやな返事のみ。 
今回も、前例にもれず。 
ここまで気づいたのなら普通はその意味が理解できるはずだが、 
若干気が動転していたブラッキーはそれに気がつかなかった。 
「カメックスさんって、過去の話になるといっつもそれですね。 
忘れた、とかそんなことより、とかすぐ話を切り替えて・・・ 
 ・・本当は覚えてるんでしょう?」 
ブラッキーが、さらに発展させた質問をする。 
カメックスは、口を開かない。 
さらにしばらく時が流れ、痺れを切らしたブラッキーがカメックスに歩み寄る。 
「・・・妙にしつこいな。今日のお前」 
ようやく口を開くカメックス。 
だが、まだ答えにはなっていない。 
「このままでは、また答えを聞けずじまいに終わりますからね」 
とブラッキーは言い、カメックスを見上げた。 
 ・・なぜか困った顔をしている。 
その理由が分からなかったブラッキーだったが、 
先ほど心を読まれ焦らされたわずかな怒りから、 
もっと困らせてやろう、という心がブラッキーに芽生えてしまった。 
「誰にも言えない過去でもあるんですか?・・・不倫とか。 
あっ、でもカメックスさんには嫁さんいないから、不倫もなにもないか・・・」 
露骨な嫌味を発するブラッキーだったが、 
「・・・まあ、正解か」 
という返事に、にやついた顔が驚愕の顔に変わる。 
「・・せ、正解って・・・大体カメックスさんは」 
「あってるのは前半だけだ・・・あと、妻はいないが恋人はいた」 
ああ、そういうことか、とブラッキーの表情が元に戻る。 
「・・別れたってことですか?」 
若干冷静さを取り戻したブラッキーが言う。しかし、 
「そこがお前の言う“誰にも言えない過去”というやつだ」 
と、あくまで詳細には触れさせない。 
「すまんな・・・こればかりは誰にも言えない・・・言いたくないんだ」 
「あ、いやカメックスさんが謝ることないですよ」 
自分の話への踏み込みすぎによって相手を困らせた上、 
その相手に謝られてしまいまた焦ってしまう。 
「はは、また焦ったな」 
「いや、べ、別にそんなことないですよ」 
またカメックスのからかいが始まる。 
気がつくと、空は少し明るくなっていた。 
 ・・夜明けが始まろうとしていた。 





「・・・ん?」 
ふと、カメックスが疑問の声を出す。 
「・・どうしたんですか?」 
それに気づき、ブラッキーがカメックスに質問する。 
だが、カメックスは答えない。 
眼を細め、村の北の森を見ている。 
「あ、あのカメックスさん」 
「ブラッキー。北の森の真ん中をみてみろ」 
「・・・へ?」 
そういわれ、わけも分からず北の森に眼をやる。 
「・・・あ、遠くで火の手が上がってますね」 
ブラッキーが答える。 
「でも、山火事なんていつもじゃ無いにしろ、たまにありますよ」 
確かに、森で自然発火が起こることは大して珍しいことではない。 
だが、 
「アレはただの山火事ではない」 
「な、なんでこんな所からそんなこと分かるんですか?」 
「火の燃え広がり方を見ろ」 
ブラッキーはそう言われ、火をよく見る。 
 ・・だが、分からない。 
「・・・一体、何がおかしいんですか?」 
その質問にカメックスが答えを出す。 
「燃え広がり方が、風向きと逆だ」 
「・・・逆?」 
「雲の動きを見てみろ」 
そう言われ、ブラッキーは空を見る。 
まだあまり明るくは無いが、雲の輪郭は何とか見て取れる。 
十秒ほど空を眺めていると、 
「雲は・・・北に流れてますね」 
ブラッキーが答えを出す。 
確かに夜明け前でもよく分かるほどに雲は早く動いている。 
「なら安心ですね。北へ吹く風なら、少なくともこの村には火はきませんよ」 
「だから逆だといってるだろう」 
「そんなことどうやって・・・」 
「森の焼け跡を、よく見てみろ」 
ブラッキーの質問が終わる前に、カメックスが答えを出す。 
「焼け・・・跡」 
火の手を見つけるのにすらカメックスが言わなければ気づかぬほどの 
遠さだというのに、薄暗い夜明けで焼け跡などなかなか見れるものではない。 
だが、暗闇でも敵を逃さぬための赤い眼が、森の中のぼやけて見える、 
黒っぽい焼け焦げた木々を映し出す。 
 ・・火の手の北に、焼け跡が広がっている。 
「風が北に吹いていたら火も北に、つまり焼け跡は南に残るはずだ」 
「でも、焼け跡は北に残っている・・・逆方向に火が進んでいる・・」 
「なだらかな森で、火が風に逆らうなんて普通ありえないはずだ」 
自然にはありえないことが起こるということは、 
「つまり、何者かが火をばら撒いている、 
または火をこちらに近づけているということだ」 
カメックスが、結論を出す。 
だが、ブラッキーはまだ納得しない。 
「まさか!何かおかしい自然現象が起こってるだけですよ」 
「・・どちらにせよ、火はこの村に向かっている。 
 ・・村長(むらおさ)に報告せねば」 
カメックスの言うとうり、火は少しずつ大きくなり、 
そしてこの村に近づいているように見える。 
「急ぎましょう!」 
ブラッキーはそう言うとすばやく櫓の階段をかけ下りる。 
それを追うように、カメックスも階段を下りていく。 
 ・・火は、確実に近づいている・・・ 





このときのブラッキーには、焦りや不安の奥に、 
僅かな期待感を持っていた。 
 ・・若さゆえに求めるスリル、刺激。 
カメックスの言う“若さゆえのアレ”がブラッキーの心の中で 
かすかにうずく。 
 ・・だがカメックスはおろか、ブラッキー自身すらそれには気づいていなかった。 



そして西と北を見張る櫓・・・ 
二匹ずつ櫓には見張りが配置されていたが、カメックスのように 
真剣には見張ってはいなかった。 
 ・・その油断が、命取りになるとも知らずに・・・ 
 ・・火は、確実に近づいている・・・ 




夜明け。 
何の気配も無い道を、二匹のポケモンが疾走する。 
村にいるポケモンたちは、その足音に何事かと目を覚ますものもいれば、 
それに気づかず目を覚まさないものもいる。 
「何事ですかい」 
とまだ何も知らないポケモンが、挨拶代わりに質問をしても、 
二匹はそれに答えない。 
「あ、あの大丈夫ですか?」 
ブラッキーが振り向いて言う。 
後ろには、かなり息の上がっているカメックスがいる。 
「だ、大丈夫だ」 
とは言うものの、見る限りにはあまり大丈夫そうではない。 
確かに、甲羅を背負う巨体で全力疾走はきついが、 
さらに歳月が、その体のスタミナを減らしていく。 
 ・・誰も老いには逆らえないよな、と思ったブラッキーが、 
「・・私だけで長に報告してきましょうか?」 
と提案する。 
しかしカメックスは、 
「だ、大丈夫といっているだろう。早く行くぞ」 
と、あくまで自分が報告することを譲らない。 
だが、膝は地につき、顔は下がっている。 
「・・・全力でいきますよ」 
「ぜ・・全力だと、どういう・・」 
言葉に疑問を感じたカメックスが、疲労によって下がっていた顔を上げたとき、 
そこにブラッキーの姿は無く、見えるのは、遠くに見える黒い点。 
「ああ・・・そういうことか」 
俺の体を気遣ったのか、単に焦っただけか・・ 
いろいろな予想がカメックスの頭をよぎる。 
だが、やがて地についていた足を持ち上げると、長のいる家に続く道とは違う、 
別の道を歩み始める。 
 ・・こうなれば、あいつに任せるほか無いだろう・・ 
 ・・別の櫓の見張り役に聞けば何か分かるかもしれない。 
結論を出したカメックスは、呼吸を整えながら、別の櫓に向かう。 



 ・・だがカメックスには不安が一つ残る。 
 ・・ブラッキーが長の前で、冷静でいられるか。 
 ・・冷静に報告ができるのか。 
一匹で報告に向かわせなかった理由がそれである。 



 ・・・だが今となっては、あいつの力に賭けるほかあるまい・・ 
時間との戦いなのだ。・・信じなくては。 
カメックスはそう自分に言い聞かせ、呼吸の整った体で再び走り出す。 




 ・・火は近づく。 
確実に近づく、村を飲み込まんとする津波の如くに・・・ 



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キリがよさそうなので、一話終了。 
 ・・・非エロに終わったorz

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IP:133.242.139.165 TIME:"2013-01-30 (水) 15:05:05" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%9E%E3%82%8C%E3%81%AE%E9%A2%A8%E3%80%82" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0; YTB730)"

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