ポケモン小説wiki
そして戦士は災いを呼ぶ Ⅲ の変更点


この小説はこの私、闇魔竜の独自の世界で物語が作られています。
尚、この小説には&color(violet){[官能的表現]}; 、&color(red){[流血表現]};が含まれます。

以上の事に注意してください。








 アブソルは命令を正確にこなしていく。自分では不可能な命令、意味が分からない命令には頭をかしげるような仕草でできないことをちゃんと伝えてくる。
 まだ言葉を喋ろうとはしない……。なぜなんだろうか……。
「アブソル、何かやりたいことは無いか?」
 しかし、アブソルは何も反応を見せない。こうして街中を歩いていても、俺のやや斜め後ろを歩いてくるだけで何もしない。『何かしろ』と命令すれば本当に何かするのだろうが、出会ったときの行動を考えるとそれはあまりに危険だ。
「…………やはり何か妙だな……」
 しかし、こうしていても何もわからない。やはり帰ろう。アーリアとジルで留守番させたのが心配になってきた。
「…………」
 たいしたことではなさそうだが、何か嫌な予感がする。
 玄関のカードリーダーにカードを通してロックを解除する。すると、案の定というべきか、騒ぎ声が聞こえてきた。
「何やってるんだお前ら」
 小麦粉のぶちまけられた床。何故か千切れているカーテン。破壊されて天井からコードだけでぶら下がっている照明。そして何かが燃えた跡のあるフライパン。誤作動を繰り返して開閉しまくっているドア。配線が滅茶苦茶のパソコン。泡を無尽蔵に吐き出す洗濯機。煙を吹いて壊れている電子レンジ。
 明らかに三大生活部屋であるリビング・キッチン・洗面所に被害を受けている。アブソルは地面に撒かれた小麦粉の匂いを嗅ごうとして粉を吸ってしまい、くしゃみをした。なんだかこういう仕草が可愛い。
 いや、今は和んでいる場合ではない。
「ユウキ!ちょっと聞いてよ!アーリアったら、家事を何一つ出来ないのよ!」
「やったこともないのに、完璧にやるのは無理です!」
「そうか……分かった、二人とも部屋で休んでろ。後片付けは俺がやる」
「でも!」
「下手に手を出されると余計に邪魔だ。悪いが、部屋で待機しててくれないか?」
「………」
 ジルは何かを言いたそうな顔していたが、アーリアがおとなしく部屋に戻っていったのを見て渋々部屋に帰っていった。
「さて……この部屋をどうやって片付けるか……?」
 そして気がついた。肝心な掃除機が壊れているということに。どこをどう弄ったらこうなるのか、モーターと直結しているはずのファンが取れて転がっていた。掃除機本体も無理やり解体したのかバラバラ死体と化していた……
 ユウキを怒らせてしまった。いままでこんな事は無かったのに。そう、全部この娘の所為に決まっている。今まで私一人で家事は一通りできていたのに。このこの娘は何一つできないくせに見栄を張って出来もしないのに無理にやろうとする。
「ちょっとアーリア」
 彼女は「何ですか?」なんて他人事にように返事をした。それもまた本なんて読みながら、私の顔を見もせずに。
「貴女、もう少し身分相応の態度をとったらどうなの?」
「何をいってらっしゃるの?十分身分相応じゃなくて?」
「私に対するその態度のどこが!よくそう思えるわね!」
 そのときだった。ユウキが物凄く不機嫌そうな顔で部屋に入ってきたのは。
「五月蝿いぞ!いつまでも何やってんだ!静かにしててくれ!」
 アーリアはその対象ではないみたいで、私に向かって言ってる。なんで?私はただ……
「ジル、ちゃんと指導したんだろうな?」
「したわよ。私が普段からやってきてる家事一通り」
「じゃぁなんでこうなるんだ?」
 ユウキは後ろの惨状を指した。そこに広がっているのは大量の小麦粉。塩。料理の指導にとき、塩の配分を間違えていたから注意したら、「これぐらいがいいんですの!」なんて勝手に決めちゃって、口論になって取っ組み合いに……その騒動でアーリアや私の腕なんかが当たって容器ごとひっくり返してしまったのだ。もちろん、私にも悪い部分はある。でも、なんで私だけが言われないといけないのかが分からない。
「結局はお前の指導不足だ」
「え、何でっ?」
「事前に全体の流れを理解してもらわないと、いきなりやらせても無理に決まっているだろう?俺もジルにそんな教え方をした覚えは無い」
「…………」
「今回は他人に迷惑をかけていないようだし、このくらいで勘弁してやる。明日はうまくやってくれよ」
 そしてユウキは出て行ってしまった。ドアの向こうで掃除と片付けをする物音が聞こえる。アーリアはというと、私の机で満足そうな顔をして本を読みふけっていた。
 ユウキの馬鹿。そうやってアーリアを甘やかしてたらどんどん悪くなる一方じゃないの……
 翌日、またユウキはアブソルを連れてでかけた。でも、その効果はあるのか、アブソルの仕草や行動に感情が表れてきてる。特に食事の時。好きなものが食卓に出てくると口元をやや緩ませて美味しそうに食べるけど、苦手なものや嫌いなものが出てくると、渋々、といった感じで食べる。でもちゃんと残さず食べる。
「…………」
 今日はアーリアをサポートという形で働かせてる。この時代になっても雑巾での拭き掃除はする。バケツの水が汚くなったら取り替える。私が磨いたところを乾拭きするとか、簡単な事をやらせた。今回は難しいことはさせていない。だから、ミスは人間の片手に収まる程度で済んだ。それも、私一人でカバーできることだったし、今日は怒られずに済むかな。
 でも、相変わらずアーリアは仕事がなくなると直ぐ本を読み始めて動かなくなる。こんなことで体力なんかつくはずがない。今度、ゴミ出しとかさせてみようかな。あと買い物にもつき合わせたり。ユウキがいないから車も使えないし、彼女のあの執事にもユウキから話はしてあるから、本当に命に危険が迫った時しかでてこないはず。
「ジルさん?」
 なんだろう?珍しくアーリアが私を呼んだ。何?と彼女の近くまで行くと……
「お茶はないんですの?」
「はぁ?」
 正直これには腹が立った。まるで自分の家に居るかのように、当たり前のようにお茶を要求した。
「ちょっと、私は貴女のメイドじゃないわよ!それに、ここを自宅と勘違いしてるんじゃないの?」
「あら、普段午後に紅茶を飲みませんの?」
「私やユウキがそんなセレブっぽい生活しているように見えるわけ?」
 この家には、装飾品のようなものは私の部屋以外全く無い。リビングの壁に唯一、ユウキの新米時代の写真があるだけ。紅茶なんて洒落たものなんて何も無い。冷蔵庫にあるのもユウキのビールと一般家庭にあるような食材。飲み物は大抵、水かウーロン茶。あとはコーヒー。押入れには非常食とサバイバルレーション。こんな家に二日も住んでてよく空気読めないわね。
「ごめんなさい。私つい自宅と同じように考えてしまいましたわ」
「ふざけんじゃないわよッ!!!!!!」
「ッ!?」
 私はついつい、怒りに任せて横にあった棚を殴ってしまった。でも、そんな事よりも彼女に言いたいことだらけだった私はそのまま続けた。
「貴女、ギルドの仕事について甘く考えすぎじゃない!?悪い言い方をすれば人殺しなのよ!?場合によっては命を狙われる立場にだってなるし、大怪我だってするかもしれないのよ!!こうして家事ばかりやらせてるのが、ユウキの親切心からだってわからないのッ!?」
 急に怒鳴られた彼女は目を丸くしてこちらを見たまま固まっている。それでも私はやめない。
「貴女、試験はボロボロだったそうじゃない!武器はロクに扱えない、パンチひとつもまともに出せない、体力も無い…………そんなアンタがギルドに入ったクセにそうやってえらそうにふんぞり返ってるのが許せないのよッ!」
「…………」
「いい?アンタの場合、家事も楽に出来ないような体力じゃ、いざ仕事ってときに……死ぬわよ……。戦いになったら、もしかしたらユウキも私もアンタを護ってられないかもしれないんだからね。自分で自分が護れなきゃ……見捨てるよ」
「…………」
 彼女は視線を落とした。でも、その目は本を見ていない…………
「あと二時間もしたらユウキが帰ってくると思うから、それまで待機してていいわよ。それでいいんだもん。って思うならそれでいいわ。私はこれからも働いてるから」
「…………」
そして、私は部屋を出た。

        そして戦士は災いを呼ぶ Ⅲ   END

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 はいどうも、なんだか今回は更新が遅かった&ちょっと他と比べて短いなど、色々ツッコミ所の多かったりしますが、気にしないでくださいね。
 今回はジルとアーリアを喧嘩させました。アブソルの一件とは何も関係が無さそうですが……実は……
 



――――――最愛のユウキに初めて叱られてしまったジル。それをあざ笑うかのように反抗するアーリア。そんな二人を放置してアブソルと出かけてばかりのユウキ。そして、やっと心を開いてきた謎の多いアブソル。ユウキとジル。うまくかみ合っていた筈の二つの歯車は、いつしか音を立ててお互いを傷つけ始めた……――――――


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IP:133.242.146.153 TIME:"2013-01-30 (水) 13:57:49" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E6%88%A6%E5%A3%AB%E3%81%AF%E7%81%BD%E3%81%84%E3%82%92%E5%91%BC%E3%81%B6%20%E2%85%A2" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0; YTB730)"

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