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かわいい娘のロコンが進化したらえっちすぎたので僕の息子も進化しそうです(10) の変更点


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*かわいい娘のロコンが進化したらえっちすぎたので僕の息子も進化しそうです [#QHCek7N]
**(10)泥酔 [#9d1rHsU]

 ブーピッグたちが、二人を見つけ出した。豚は鼻の利く生き物だった。
 リングマとワルビアルから、惨殺死体の報を受けて、ブーピッグは念の為キュウコンの匂いの痕跡を辿ったのだった。その先が、リングマたちから聞いた森に繋がっていたので、キュウコンの捜索をすることにしたのだった。
 リングマとワルビアルは猛反対したが、普段主張の弱いブーピッグがあまりに頼み込むので、夜が明けてから捜索を始めるということで妥協した。
 夜雨が降ったせいで匂いはもう頼れなかったが、探索を始めてしばらくした後、山火事の跡を見つけ、それを辿って、キュウコンとウインディを見つけた。リングマはまだ十全には歩けないウインディを担ぎ、キュウコン共々街へもどった。
 ウインディはあれだけ傷を受けながら、たったの三日でおおよそ元の通りに動けるほど回復した。療養中は、キュウコンも彼を介抱していたため、ほとんどを屋根の下で過ごしていた。時折食べ物の調達などで市場に出るぐらいだった。
 ちょうど傷も治ったところで、街で酒を飲もうという約束を果たすべく、夜酒場に繰り出したのだが――。
 「おっ、マンコじゃねェか」
 ――と、ワルビアルに見つかって、二人と三人合わせて五人で酒盛りに繰り出した。それでブーピッグとキュウコンが飲み交わした酒場に行ったのだが――キュウコンだけでなくウインディの酒癖もひどいものだった。

 「もう、もう俺はっ、アイツが死ぬところを見たくないんだよぉ」
 自分のこぼした酒で濡れたウインディは、床をじたじたしながら泣き喚いていた。彼は泣き上戸だった。キュウコンがアブソルに殺されかけた瞬間のことを言っているのだが、当然誰も意味が分からない。
 図体のばかでかいウインディが床に寝転ぶものだから邪魔で仕方がなかった。時折通る給仕係のミミロップが脚を踏みつけたりしていたが、全くノーダメージだった。
 「オレン酒でそこまで酔ッ払うか? フツー……」
 ワルビアルですら、蠢く絨毯と化したウインディに辟易していた。一方のキュウコンもひどいものだった。
 「あっは、ウインディ超かわいい。ウケる」
 キュウコンは据わった目をウインディに向けて彼の下顎をがしがし掻き&ruby(むし){毟};った。ウインディはキュウコンに触れられてますます大きな泣き声をあげ、キュウコンにしがみつくように押し倒した。キュウコンはげらげら笑っていた。彼女は笑い上戸だった。
 「お二人とも大丈夫ですかね……」
 「ほっとこうね」
 ブーピッグが一応心配するものの、リングマに止められた。実際あの渦中に飛び込んでいったところで、めんどくさい二匹のおもちゃになるだけだろう。キュウコンはがっしり拘束するウインディから逃れようとぐねぐねしていた。げらげら笑いながら。
 「やだー、おもいー、はなしてー」
 「俺がお前を守り抜いてみせるからな!」
 二人は全く噛み合わない会話をしながら泣いたり笑ったりしている。その様子を見かねたのか、ミミロップがリングマに忠告しにきた。
 「ちょっと」
 リングマはミミロップに耳を傾ける。
 「悪いけど、アレ、おっ始めたように見えるからなんとかしてくれないかい?」
 「おう……」
 リングマが周りをふと見回してみると、騒がしい酒場の中にあって、何頭かこちらに釘付けになっている雄ポケモンがいるのが分かった。期待、野次馬根性、下心。目の前で刺激的なハプニングが起こることを望んでいるようだった。
 「僕止めます」
 ブーピッグが先に動いた。ウインディの引き寄せる力に負けてどんどんウインディの体の下に飲み込まれていくキュウコンに耳打ちする。
 「キュウコンさ――」
 「ブーピッグ!」
 キュウコンはまだ自由になっている前脚でブーピッグを引っ張り寄せた。不意をつかれたブーピッグはすっ転んでキュウコンに捕らわれてしまった。ウインディに飲み込まれるキュウコンに飲み込まれるブーピッグという構図になった。
 「なんであなたはこんなにモチモチなの!」
 「助けて!」
 ブーピッグの哀れな声を聞いて、真っ先に駆けつけたのはワルビアルだった。
 「何やッてんだお前!」
 ワルビアルがキュウコンの前脚を蹴ってブーピッグを解放した。そこそこ痛いはずだが、キュウコンは尚もげらげら笑っている。
 「てめェらいい加減にしやがれ!」
 ワルビアルはキレた。ウインディの胴体に尻尾を振り下ろす。ばしん。これには流石のウインディもダメージを感じるらしく、「うぐぅ」と声をあげた。直後、泣き腫らした鬼気迫る顔貌をワルビアルに向けた。
 「キュウコンは絶対に殺させない!」
 げらげら笑うキュウコンがウインディの胴の下にしまわれていく。
 「てめェだけ死んでろよ! もう!」
 ワルビアルは付き合いきれないとばかりにブーピッグを抱えて席に戻った。ブーピッグは、もはや前脚しか見えなくなっているキュウコンを悲しげに見つめていた。
 「ふたりとも」
 ぐるるるると獣の唸り声をあげるウインディに、リングマがいつもの調子で話しかけた。
 「こんなところで交尾し始めるなんて、大胆すぎないかい?」
 「は――」
 その言葉は、クソ真面目な性根のウインディを酔いからいくらか醒めさせた。ウインディは立ち上がってキュウコンを下敷きにするのをやめた。ウインディの下になっていたキュウコンは、ウインディの体毛が心地よかったのか、機嫌よさそうに眠っていた。彼女は寝付きが良かった。
 「うう……キュウコンがぺちゃんこに……」
 「きみの……安心して、寝てるだけだよ」
 リングマは「きみのせい」というのを言いかけて、変更した。
 「本当に?」
 ウインディは&ruby(すが){縋};るような目付をリングマに向けた。リングマは適当にこくこく頷く。
 「おい!」
 二人の様子を眺めていたゴロンダが野次を飛ばした。しばしばミミロップに猥談を持ちかけて困らせる常連のゴロンダだ。すかさずリングマが黙らせようと詰め寄るが遅かった。
 「そこまでやっといて犯さねぇのかよ! 童貞インポ野郎!」 
 「え……?」
 ウインディはぺちゃんこになったキュウコンを見た。キュウコンは今の言葉を聞いてぱちりと目を開いた。彼女はまどろんでいただけだった。彼女は前脚と後脚を体の中心に引き寄せて、甘えるようなポーズを取った。キュウコンを上から覗き込むウインディに対し、潤んだ瞳で上目遣いを向けている。彼女はげらげら笑わなくなっていた。
 リングマが、余計なことを言ったゴロンダに張り手を食らわせた。結構な音が鳴ったが、ウインディとキュウコンは二人の世界に入っていた。
 「キュウコン……」
 公衆の場での戯れ合いをたった今&ruby(いさめ){諌};められたにも関わらず、ウインディの眼にはキュウコンしか映っていなかった。キュウコンはそもそも泥酔で、時と場合を考えられていなかった。
 彼女は羞恥の笑みを浮かべながら、彼を受け入れた。
 「いいよ……」
 野次馬が黄色い声を上げた。
 「キュウコンさんやめてください!」
 ブーピッグがキュウコンを引き&ruby(は){剥};がした。たった一日とは言え恋人になった人が公共の場で雄の槍に貫かれて公開処刑など、見るに耐えないものだろう。引きずられるキュウコンは下手な&ruby(らっぱ){喇叭};のようにしわがれた声を出した。
 「キュウコンを返せ!」
 ウインディはブーピッグに飛びかかった。彼は自分の体の大きさとブーピッグとの力関係を忘れてしまったようだった。ブーピッグが悲鳴をあげた。巻き添えを食らったワルビアルもあわせて悲鳴をあげた。減五度の和音になった。
 「おっと」
 リングマだった。リングマは飛びかかるウインディを後ろから抱き止めた。自分の体の大きさにも関わらずあっさり止められたウインディは驚愕の表情をリングマに向けた。
 「帰ろうね」
 リングマが諭すとウインディは多少周りが見えるようになったようだった。
 「はい……」
 などとうなだれて、リングマに抱き上げられたままにしていた。
 ゴロンダが野次る。
 「止めるなよリングマ!」
 「ワルビアル」
 リングマがワルビアルを呼んだ。
 「あいつぶちのめしていいからね」
 「おッ」
 ワルビアルは待ってましたと言わんばかりに立ち上がって、ゴロンダの方に向かっていった。喧嘩は男の華だ。ワルビアルが多少力のあることを知っているゴロンダは慌てていたが、ワルビアルに「表出ろやァ!」と発破をかけられると、他の野次馬に&ruby(はや){囃};し立てられて、彼の相手をせざるを得なくなった。
 「ブーピッグ、キュウコンの方、たのめるかな」
 リングマはブーピッグに依頼した。
 「引きずっちゃうかもしれないです」
 「やだーまだ飲むー」
 ブーピッグに前脚を掴まれているキュウコンは体をぐねぐねさせていた。これを安定して持ち上げ続けるのは、なるほど骨が折れそうだった。
 「このさいなんでもいいよ」
 リングマは妥協した。とにかく二人を帰すのが先決だった。リングマたちは席を立って、酒場の出入り口へ向かった。
 「ミミさん」
 去り際、リングマがミミロップに言った。
 「ごめん、今回もツケで……」
 「今回分二割増。次ツケたら出禁」
 こうしたドタバタに慣れているのだろうか、ミミロップはこともなげにそう言った。腹立たしそうにするにはしていたが。
 リングマは申し訳なさそうに会釈して、ウインディを抱えたままブーピッグとともに店を出た。表ではワルビアルがゴロンダを投げ飛ばして、観客たちが歓声を上げていた。キュウコンは、ブーピッグに持ち上げられて眠っていた。
 「ウインディ。宿は?」
 「あっちです……」
 自分の粗相をようやく自覚できたのであろうウインディはしおしおしていた。夜とは思えないほど明かりに照らされている酒場前で勃発した喧嘩に盛り上がる一同を尻目に、ウインディの指した方に行く。少し離れただけで途端に閑散とする。ブーピッグはキュウコンを背負いながら、頼りなさそうなウインディに目線を向けていた。
 リングマが苦言を呈した。
 「君たち親子ってきいたよ。さすがに娘に手を出すのはまずいんじゃないかな」
 「はい……」
 リングマの&ruby(もっと){尤};もな諫言でウインディは小さくなった。ウインディとキュウコンは最早「親子」ではなかったが、そのことは秘密のことである。誰もが彼らの過去や想いを理解しているわけではないのだ。
 ブーピッグは、それの数少ない例外だった。彼は不安そうに言った。
 「ウインディさん。キュウコンさんのこと、幸せにしてあげてくださいね」
 ブーピッグとて、今背負っているキュウコンに魅せられた雄の一人だ。諸々の事情を知っているので、実際自分とキュウコンが結ばれないとは理解しているが、キュウコンの幸福を願う気持ちはあった。
 その幸福を担保するはずのウインディがこの調子なので、不安がるのも仕方がないことだった。
 「……もちろん」
 ウインディは多少しっかりした声で答えた。ブーピッグは苦笑いなのか何なのか分からない微妙な表情を返した。

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