&size(25){''お題:温泉 で一筆''}; 日々の疲れを癒しに地方内外から足を運ぶフエンタウンの温泉街。ここに現れたのはニドキングとサイドン。トレーナーの手持ちでない彼らのようなポケモンも温泉目当てに足を運ぶのは、ここでは日常的な光景である。 「お、誰もいないぜ」 「まあ朝だもんな」 早朝の静寂の中、湧き出して流れるお湯の音ばかりが響く共同浴場。誰もいないとなれば、施設を壊したりとかしない限りどんな事をしようが咎められはしない。 「イヤッホォォォォゥ!」 早速湯船に飛び込む二匹。巨体故に発した大きな波が、湯船を越えて石畳を広く濡らす。ニドキングは座って、サイドンは湯船の縁を枕に寝そべって肩まで浸かる。外気に熱を奪われた温めの湯加減が心地よい。 「極楽だぁ……」 冷えた体に熱が程よく回ってきた頃合い、寝そべっていたサイドンが突如立ち上がる。 「勝負しようぜ」 「勝負?」 「おう、俺とお前、どっちが泳ぐのが速いか勝負だ!」 「おもしれえ! やってやるぜ!」 彼らは大きな湯船の端で横に並ぶ。そして一斉に泳ぎ出す。飛沫を上げつつ向こうの端目掛け、決して上手くない泳ぎで進んでいく。先に縁に手が触れたのはサイドンだった。 「やりぃ!」 「クッソー! もっかい勝負だ!」 今度は元いた場所へと競って泳ぐ。湯気がもくもく立ち上る中での、雄の勝負。 「っしゃあ!」 今度はニドキングが勝利を収めた。イーブンでは面白くないサイドン。またも勝負を挑み、ニドキングもつい闘争心を燃やした。こうして湯船を何往復と泳ぎ続ける彼ら。 「さーて一っ風呂浴びるかぁ……ん?」 入浴に訪れた湯治客が湯船に目を凝らす。近づいた途端に飛び上がった。 「うわーーーーーーっ大変だーーーーーー!!!」 すっかり逆上せて仰向けのまま浮いている二匹の怪獣ポケモンを目にして、驚かない者はいない。数人の湯治客で力を合わせて引っ張り上げる。厳つい二匹の雄は目を回しながら醜態を晒す羽目になってしまった上に、出禁になった。 #hr 【作品名】 お題:温泉 で一筆 【原稿用紙(20×20行)】 2.6(枚) 【総文字数】 808(字) 【行数】 24(行) 【台詞:地の文】 20:79(%)|163:645(字) 【漢字:かな:カナ:他】 37:48:8:5(%)|303:388:72:45(字) #hr -[[戻る>P-tan]] #pcomment()