#include(第一回短編小説大会情報窓,notitle) [[空蝉]] 投稿が遅れてしまい、閲覧者の皆様、作者の皆様に多大なご迷惑をおかけしまして大変申し訳ございませんでした。 BL官能を含みますのでご注意下さい。 ---- 何処の国かは定かでないが、西の方に、はなはだ色好みの強い雄が二匹、競うように&ruby(おんな){雌};あさりをしては楽しく暮らしていたそうだ。 さてこの二匹、一方はバシャーモ、他方はラグラージといった。二匹は、此処での生活にそろそろ飽きようとしていた。国中の殆どの遊び雌を知り尽くし、もう競うものが無くなってしまったのだ。 「ラグラージよ、何処ぞに目新しい良い雌は居ねぇもんかね」 「さあてな、バシャーモ。知っていてもお前なんぞに教えはせんがなあ」 「勿体ぶるなよ、ケチ臭え」 「ケチなのも臭えのも、お前にゃ負けるがなあ」 「馬鹿か、俺の何処が臭えだと」 「はっはっ、そりゃ決まってらあ」 そう言ってラグラージはバシャーモの股間を嗅ぎ、「臭え臭え」と鼻をつまむ。負けじとバシャーモもまたラグラージの股間を嗅ぎ、「おおこいつぁ大したもんだ」と鼻をつまむ。こうして暫くは楽しく暇を潰していた。 しかしすぐ退屈に耐えられなくなってくる。 「おい、ラグラージ。旅に出ようぜ」 「おお、俺も丁度同じ事を考えていたところだ」 持ち物など元から無いに等しい二匹は、早速連れ立って故郷を出た。 「ああ、何処ぞの好色男のように豪勢な船出でもやらかしたかったなあ」 ラグラージがそうブツブツぼやく旅路は当然徒歩である。 「しょうがねえだろ。先立つ物が無い」 「夢が無いねえ」 「それに俺は船なんぞ乗りたくもない。落ちたら泳げねえからな」 「根性が無いねえ」 「からからの草っ原に放り出すぞ」 「うほっ、そりゃ勘弁」 足元こそトボトボと覇気が無いが、口だけは何のかんのと言い合いながら、二匹は楽しく旅を進めていた。 「おい、雨だぜラグラージ」 「イイねえ」 「良かねぇよ。雨宿りしようぜ」 どこから水が来るのか、森の中の地面は何処もかしこもじとじととぬかるんでいて、バシャーモにとっては気持ち悪い事この上ない。その上雨まで降ってきたものだから、バシャーモは少しでも濡れた地面から離れようと爪先立ちながら、心底嫌そうにそう言った。 相方のそんな様子を流石に可哀想に思って、ラグラージもあたりをきょろきょろ見回しながら、雨宿りできる場所を探した。 降り続く雨の中、いつの間にか鬱蒼とした木々が空を覆い隠していて、辺り一面不気味な薄暗さの中に沈んでいる。いつ日が暮れたのかも判らないが、すでに夜の帳が下りていた。こうして歩けば歩くほど、意図に反して森の深みにはまっていくようだ。 「おお、嫌だ嫌だ」 「大丈夫かバシャーモ」 いつもは軽口ばかり叩いている二匹だが、だんだん声に余裕が無くなってくる。 びしゃびしゃ。ばしゃばしゃ。 ぬかるみだらけの獣道を二匹は歩く。 びしゃびしゃ。ばしゃばしゃ。 びしゃびしゃ。ばしゃばしゃ。ひたひた。 「……ん?」 自分たちの足音ではない何かを聞いたような気がして、二匹は足を止めた。 「おい、ラグラージ。お前ちょっと歩いてみろ」 バシャーモに言われて、ラグラージがびしゃびしゃと歩く。それを確かめてから、バシャーモもばしゃばしゃと足音を立てて歩いてみた。 「気のせいか」 「気のせいだな」 「…………き の せ い さ……」 「ひやあぁぁ!」 飛び上がるように驚いて二匹が振り返る。しかしそこには、ただ真っ暗な森が口を開けているだけで、何も居なかった。 けれど、何かが居た形跡はあった。 ぬかるみの地面に、自分たちの足跡にぴったりついて来たらしい、第三者の足跡。 「うっひゃああぁぁー!!」 転がるように二匹は駆け出す。 右も左も判らずただひたすら駆けた。道でないところも突っ切って走った。 滅茶苦茶に走ったが、不思議と二匹はぐれることはなく、ぴったり一緒になってどこまでも走った。 二匹が駆けたその道筋に、三匹分の足跡を残しながら。 一体どれだけ走ったのか、二匹の息も切れ、足元もよれよれになった頃、ふと前方に古めかしい建物のようなものが見えた。 「お、おい。家があるぞバシャーモ」 「おお、丁度良い。ちょっと雨宿りするか」 雨はまだしとしと降り続いていて何一つ好転しない状況の中、得体の知れない「何か」がただ恐ろしくて、二匹は今すぐにでもどこかに逃げ込みたかった。 放置されて久しいのだろう、その家のカビだらけの土壁はあちこち崩れていて、今にも朽ちそうな柱が辛うじて支える屋根の上にはもじゃもじゃと草が生い茂っている。 どこからどう見ても禍々しい雰囲気しかなく不吉な事この上ない家であったが、へとへとでもう動けないぐらいに疲れ果てていた二匹は、その気味悪さに敢えて気付かないふりをした。 「住めば都って言うしな」 「俺は住みたかねえよ。お前だけ住め」 いつもの調子で軽口を言ってみるが、すぐに重い沈黙が二匹の間にずっしりと落ちてくる。 「うーん、と。手入れすりゃそれなりに住めるかも……」 住む気などさらさら無いものの、何とか話題を繋ごうとラグラージは家の様子をきょろきょろと見回してみた。 「壁だってほら、塗り直せば何とかなるし」 「でも目がいっぱいあるぜ?」 ……目? 「ぐぎゃああぁぁ───ッ!!!」 まるで死に際のような悲鳴を上げて、二匹はひしっと抱き合った。 壁にも目。天井にも目。どこもかしこも、無数の目で覆われている。 そして壁の崩れたところからは、何かよく判らないが影のようなものが沢山、やはりこちらを見ているようだった。 「あわわわわ……」 口をぱくぱくさせて、がたがた震える。 どこを向いてもどれかと目が合ってしまう。いくつかの目は、にたりと笑ったような形に歪んでいた。 「お、お、怨念が、そこにおんねん……」 「こんな時に駄洒落かよ!」 ものすごい勢いでラグラージが突っ込む。 「画鋲でがびょ~ん」 「笑えねぇよ!!」 「てか笑ってくれ頼むから!!」 「意味わかんねえし!!」 「ふへへへ……」 笑い声は、バシャーモでもラグラージでもないところから聞こえた。 背中がぞわっとするような気味悪い声に二匹は抱き合ったまま竦み上がる。 「お、面白い話でもすれば消えてくれるかと……」 「いや、面白くねぇから」 問題はそこではないが、それを突っ込む者は此処には居ない。 「消えてくれ。消えてください。南無阿弥陀仏」 祈ったり頼んだりしてみたものの、目は消えるどころかますます増えてくる。 「あわわ……このまま俺たち、取り殺されちまうんじゃぁ……」 「うぬぅ」 半泣きのラグラージと抱き合いながら、バシャーモは考える。何とかこの化け物達を遠ざける方法は無いものかと。 考えに考えた末、バシャーモは「おお!」と手を打った。 「何だ、どうした。妙案か?」 期待混じりのラグラージに、バシャーモは自信満々に言った。 「セックスしよう!」 ばきゃっ。 とりあえずラグラージはバシャーモをぶん殴った。 「アホか貴様ァ!」 「アホ言うなぁ!」 「アホだろうが! ああ……どんな妙案かと期待した俺が馬鹿だったよ……」 がっくりとうなだれるラグラージにバシャーモは胸を張る。 「大丈夫だ。セックスしてればおばけは寄ってこないと誰かが言ってた」 「誰だそのアホは」 「忘れた」 「…………」 ラグラージはもう何を言う気力も無くしていた。こっそりと溜息をつき、ああ俺は此処でこのアホと一緒に死ぬのだと、胸の中で無念の涙を流した。 「ものは試しだ。なぁラグラージ」 心なしかバシャーモの声に元気が戻っているようだ。 ラグラージはまた別の溜息をつき、もうどうでも良さそうな投げやりな返事をして、バシャーモの方へぐったり体重をかけた。 「どうせ死ぬときゃ死ぬんだしな……試してみるか」 「そうそう。もしこれで本当に化け物が寄ってこなければ儲け物」 「もしそれがただの出まかせだったら、生涯最後のセックスの相手がお前なんだな……」 「まあいいじゃねぇか。今はこんなだけど、ちっこい頃のお前は可愛かったしなぁ」 「お前の方こそ今はこんなだけど、ちっこい頃はありえねぇぐらい可愛かったじゃねぇか」 何となく互いの体を撫で回しながら、ふと幼い頃の記憶に思いを馳せた。 ミズゴロウとアチャモ。何がどうしてこうなってしまったのか───進化とは無情なものだと二匹で乾いた笑いを漏らす。 「んじゃ、まあ俺からいかせてもらうぜ」 完全にやる気モードになったらしいバシャーモがラグラージにのしかかる。 女に対するときのような探りは不要とばかりに、そのまま真っ先に本命に掴みかかった。 「ちょ……っ」 ムードも何もあったもんじゃない、と文句を言おうとしたが、バシャーモの手によって引きずり出されたそれが早速快感を伝えてきて、ラグラージの口を噤ませる。 バシャーモの硬い手が幹を撫でさするのが、なんとも痛くて気持ちいい。初っぱなから甘い声を上げてしまいそうになったが、ラグラージはまさかそんな失態は見せられないと歯を噛み締めて頑張った。 「可愛いねぇ。ラグラージ、可愛いよ」 先端をぺろぺろ舐めながらバシャーモが囁く。 「俺相手に何言って……っあ!」 油断して口を開いたところで、いきなり口の中に含まれた。硬い嘴のようにすら感じる口の中で、熱く柔らかな舌に責められる。唾液をたっぷり含んだ口がラグラージのものを上下する。それがだんだん早くなってきて、ラグラージはたまらず身悶えた。 「ひあ、うっ」 「イイ声だな、可愛いぜ」 「アホか、ああっ」 バシャーモの鉤爪がラグラージの尻穴にずぶりと埋め込まれた。 「痛ぇ、痛ぇって!」 「何だお前初めてか」 「当たり前だ! 誰が男なんか……ぬああぁ!」 抗議しようとしたところで、鉤爪が二本に増えた。 「待て、バシャー……わあぁ!」 「んじゃ、ちゃんと慣らしとかねぇとなあ」 そう言いながらバシャーモがラグラージの尻穴周りを舐め回す。 「ああ臭くて可愛くてイイ尻だ。早くこの臭ぇ尻穴に入れてえ」 べろべろに舐める舌先が、二本の鉤爪で開かれた穴の中に潜り込む。 「あああッ! やめろこの変態! もう勘弁してくれ!」 中にまで入り込んできた舌が卑猥に動き回る。ラグラージは半分本気で泣きながらじたばた抵抗した。 「燃えるじゃねぇかこの野郎」 「変態! 馬鹿! 色キチ!」 「お前もな」 完全に欲情しきった顔でバシャーモが見下ろす。そして硬い手で自分のものを扱き臨戦態勢の仕上げをした。 「ああ、燃える。燃えるぜぇ」 「やめ、やっぱやめよう!」 「やめられるかぁ!」 そう言うなりのしかかり、ぶっすとモノを突き込む。 「うわああぁ! いきなり入れるなぁ! この下手くそが!」 「何だと!」 「痛い! 抜け! この馬鹿摩羅!」 「ああ、イイ! イイぜぇ、この締まり!」 ラグラージの喚きを完全に無視して、バシャーモは腰を振る。 「このド下手! お前に任せるんじゃなかっ……あ、ああッ!」 「お、感じた?」 「死ね色ボケ!」 「罵られながら犯るのも……イイ、ねぇ」 そう言いながらバシャーモは狙いを定める。見つけてしまえばこっちのものだ。 「なぁ、お前も……っ、感じろ!」 「ああ!?」 ラグラージの両脚を抱え上げて密着する。際どい角度になったところを何度も突き上げる。 「ちょ、いや……だっ、ああッ!」 じゅぶじゅぶと濡れた音が絶え間なく響く。 そしてその合間に、泣き声のような、悲鳴のような、喘ぎ声が混じり始める。 「感じまくれ! ほらッ!」 「ああ! あああッ!」 「ケツ掘られて泣いてるお前、最高可愛いぜ!」 「くぅ、やあぁ、あ……ん」 完全に泣かされて、それでも更にガンガン責められる。 ラグラージはもう快楽の嬌声を上げるしかなかった。 二匹は夢中になってセックスに没頭した。 互いに果ててもまたすぐに火がついた。 立場を入れ替え、上になり下になり、互いの尻を掘りまくった。 そんな二匹の交わりを、壁中の目が興味津々で見物していた。 興奮したような不気味な呻き声が壁から響いてきたが、セックスに熱中している二匹の耳には届かなかった。 壁から伸びてきた無数の手が、交尾していない方の尻と逸物を撫でさすろうとも、二匹はそれすら快楽と捉えた。 もう何度果てたのかも、どれだけの時が経ったのかも判らないほど、ぐちゃぐちゃに交わり合った。 こうして長い長い夜が明けたが、二匹が迎えたのは、朝とは思えない薄闇の夜明けだった。 「やれやれ……散々な目に遭ったぜ」 「まったくだ」 「だが、何だろう……体が軽い」 「うむ、軽すぎるような気もするが」 もぞもぞと起き出して、互いの顔を見る。 「ん? なんだバシャーモ。お前目が4つもついてるぞ。俺の目がおかしくなったのか」 「なんだと? お前は目が顔からはみ出るぐらいいっぱいついてるぞ。俺も目がおかしくなったのか」 そして互いに目をごしごしこする。 たくさん目があるから、こするのも大変だ。 そして改めて対面する。 「ぎゃああぁぁ! 化け物!」 「うひゃあぁぁ! 妖怪!」 あの壁の目がそのまま乗り移ったように、体中に目がついている。 「ひいぃ!」 逃げだそうとしたとき、足元の何かに躓いた。 カラン、カラン。 軽い音を立てたそれは、死語数年経ったバシャーモとラグラージの白骨だった。 「ぎゃああぁぁぁ───!!!」 おばけの森に迷い込んで、あれから一体どれだけ経っていたのだろう。 セックスしてればおばけは寄って来ない───それは確かにそうだったのかもしれない。 寄っては来ないが、自分がおばけの仲間になる、結局そういうことだったようだ。 「へへ……うへへ」 「ひひ……うひひ」 目だらけのバシャーモとラグラージが互いを見て笑う。 「元からキモイ顔がますますキモイぜ」 「イケメン台無しだな」 「へへ……ざまぁみろ」 「ひひ……お前もな」 そして楽しそうに笑いながら、二匹森の奥へと消えていった。 ---- 誰得ww ラグラージ可愛いよラグラージ。 [[空蝉]] ---- コメントなどありましたらお願いします #pcomment(コメント/おばけの森の迷子たち,15,above); ---- today&counter(today);,yesterday&counter(yesterday);,total&counter(total);