ポケモン小説wiki
いずれ朽ちる青空へ の変更点


*いずれ朽ちる青空へ [#ab7780be]

   writer 墨州

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-1 雨

今日は曇り。昨日も曇り。一昨日も曇り。五年以上曇り空が続いている。

私は”ビル”と言う遺跡の上から滅びた都会を眺めた。人間の作った高層建造物から見えるものはビルではなく、もはや死んだ人間たちの墓に見えた。
蔦が絡まったコンクリートの塊たちは、かつて光輝いていた時を忘れて突っ立ったり、倒れたり、壊れたり。数年前のネオンの輝きなどは欠片もありはしない。
地面は大きく割れ、崖の下には大破した車の部品とかがたまっている。その大きい地割れは、横倒しになったビルでわたることができた。
ビルから降りて地面を歩く。ガラスの破片に気をつけながら、誰も居ない”元町”を眺める。正直見れたものではない。
紙くずやゴミが散らばる道。どす黒くなった車やベンチ。店の中はテーブルや椅子が荒れに荒れ、入れた物ではない。信号やカーブミラーは倒れ、歩く私を邪魔する。都会に少しでも潤いを、と植えられた木は例外も無く枯れていた。
生き残ったポケモンたちは彷徨った。少しでも食料を得る為や、居もしないご主人を探す為。人間無しで生きれなくなった者たちの末路は死しかなかった。

私が生まれた時はすでにこうなっていたらしい。人間が好き勝手に荒らした世界で私は生れ落ちてきた。
私が生まれた所は、この都会に近い森。都会の近くに森があるのは珍しいらしく、人間によって保護された場所。
そこでずっと野生で暮らしていた私の先祖、アブソルはこうなる事を察知していたらしい。私は人間に知らせれば良かったのにと言った。
しかし、人間は聞く耳を持たなかったらしい。野生のポケモンが人間が滅びるとか言っても説得力に欠ける。
アブソルは災害を察知すると言う噂を信じる人間たちもいたそうだが、ごく少数だったらしい。

「ヴィオラ!」
私を呼びながら曇り空から降りてくるピジョン。名をシロフォンと言う。
「どうした?」
「もうすぐ雨が降るってよ・・・どこか建物へ入れ」
「・・・・・・分かった・・・」

森で育った私がここに居る理由。それは、森が死んでいたから。
定期的に降る雨。それは私達生物や植物に害を与える毒の雨だった。人間たちが残した、唯一ずっと活動するもの。それは、史上最強にして最悪の殺人兵器となった毒ガス。水に溶けて生きる者を襲っていった。
ちなみに私の家族は全員、雨に濡れて死んだ。シロフォンの家族もだ。

私はシロフォンと共に適当に建物に入った。
割れたガラスから入った所。デパートの洋服売り場だろうか?服や鉄パイプが地面に散乱している。
「とりあえず、ここでやり過ごそう」
私達はそこで雨が止むまで待機することにした。ビルなら雨漏りの心配もないし、安心して待機できる。


-2 廃

雨が地面を叩く音と、流れる水が水溜りに注ぐ音がデパートの中に響く。不思議と雨独特の土のにおいはしない。
今日の雨は何時もより強い。この調子だと大きい水溜りがあちらこちらに出来てしまい、2,3日外を歩くのは危険になるだろう。
雨水を触れる程度なら毒に犯されることは無い。吐き気や頭痛だけで済むだろう。しかし、水溜りに足を踏み込んでしまうとどうなるやら・・・。

私とシロフォンは手分けしてこのデパートの中を探索した。前に大量に入手した非常食の足しが欲しい。
食品売り場に行ってはみたが・・・腐った食べ物の臭いが立ち込める所など歩きたくは無かった。ここは後回しにして、他を当たることにした。

数階上の百円ショップの中を探索した。ここも品物が床に散乱し、歩きにくい。
ハンガーや石鹸など役立ちそうも無い物を横目に、私は品物倉庫へ真っ直ぐ進んだ。
たてつけの悪くなった扉をけり破り、窓一つ無い暗い部屋に入る。先程拾ったペンライトを咥え、ダンボールの中をあさっていった。

運が良いことに、かんぱんをごっそりと手に入れることが出来た。ダンボール五つ分のかんぱんが品物倉庫の奥にあった。これで食べ物の心配は要らなくなるだろう。
それともう一つ。かんぱんの他に役立ちそうなものを発見した。携帯ラジオだ。


-3 雑音

私とシロフォンは、初めに入った洋服売り場の洋服を積み上げて布団を作り、その上に体を投げた。
シロフォンは欠伸をしながら首を傾けている。私はかんぱんを食べながら、先程拾った携帯ラジオのレバーやアンテナをいじくっていた。
しかし、先程から雑音しか流れない。
私は”人類は滅んだ”と思っていたが、”もしかしたら一人くらい生き残っているかもしれない”と言う望みを少しながら抱いていた。メディア関係の職を持つ人が生きているならば、ラジオを利用して人々に今の状況を伝えるのではないか?
そんな期待をしていたのだが、どうやら無駄骨だったらしい。小一時間触ってはみたが、依然として雑音しか聞こえず、人の声や音楽が聞こえてこない。

いい加減あきらめようと思い、最後の想いを乗せて周波設定のレバーを一回転させた。
『========================================う======』
シロフォンがピクリと羽を動かした。私も息を飲む。
確かに、僅かだが人の声がした。
私はレバーを少しずつ動かし、人間の声を探る。声を見つけ出し、良く聞こえるようにアンテナを動かした。
『らくお待ちください』
ラジオの向こうの人間はそう一個と言うと、何も聞こえなくなった。
「それだけか・・・?」
シロフォンは気が抜けたような声で言った。恐らく、ラジオを流す人間に期待を寄せていたのだろう。
「クソッ!!」
シロフォンは背中にかけていたカーテンを床に叩きつけた。

「シッ・・・・・・」
私はラジオから人間の気配を感じ、うるさいシロフォンを黙らせた。
『放送までしばらくお待ちください』
この一言が終わると何も聞こえなくなり、数分後にまたこの一言が流れる。ラジオ放送の準備をしているのか、それとも放送を遅らせて視聴者を集めようとしているのか。
とにかく、私はラジオをつけっぱなしにしてその時を待った。


-4 Where

「・  ・  ・  ♪~」
「七時になりました。こちら、セントラルシティ西部ラジオ局です。今日もお伝えします、耳寄りの情報提供ラジオ! 滅んだ世界でも力強く生きていきましょう! ではまずは天気予報から。」
「現在振っている雨は今夜中降り続くでしょう。明日の朝頃には止みますが、この大雨で出来た水溜りが多くあるかと思います。なるべく外出は避けたほうが良いでしょう。
週間天気予報は、明日火曜日から週末まで雨は降らないでしょう。この雨を乗り切れば安心で来ますね」
明らかに場違いな声がラジオから流れていた。
外は土砂降り。一歩も外に出ることが出来ない私とシロフォンは、ずっとラジオをチェックしていたのだが、非常事態にこんな能天気な声が流れてくるとは思ってもいなかった。
シロフォンは苛立ちを見せ、脚で床をこつこつと叩いている。今は雨の音と貧乏ゆすりの音とラジオの音しか聞こえない。

思えば、私は馬鹿だったのかもしれない。
人間が居なくなってから何年経つか・・・。いまさら人間の生き残が居るわけが無い。逆に、居たって何にもならない。非力な人間を見つけたって、こんな世界になった事を責める他、話す事もすることもない。
ラジオから聞こえてくる声は人間ではない。ポケモン・・・種は分からないが、人間では無いとは分かった。

「以上、天気予報でした。」
天気予報の次は何を話すか・・・。こんな所で主婦の耳寄り情報や渋滞情報を伝えるわけも無い。今は食料と水と天気と雨宿りをする場所さえあれば生き残れる。それ以外のことに興味は無い。

「以前からお伝えしておりました、セントラルシティ中央部の様子について。実際見に行ったので、お伝えします。」
シロフォンは爪を鳴らすのをやめた。
「中央部は変わらずの荒れ模様。いえ、以前より酷くなっているようでした。
”雨に濡れても平気な生物”べトベター、ベトベトンの動きが活発になってきた様です。中心部に近づく度に悪臭が酷くなり、前回お伝えした019エリアまでも行けない程になっていました。017エリア辺りから腐った道や建物が目立ち始め・・・」
ラジオの向こうの者は明らかに私達が知らない情報を持っていた。
「中央部には近づかないように・・・以上、放送を終了します。

今回のお便りはゼロ!お便りを募集してい」
途中で電源を切った。

「・・・どう思う?」
「まず、俺はここの町の名前から知らなかった。セントラルタウンと言うのか・・・」
「・・・いや、町の名前なんてどうでも良い。べトベターやベトベトンの事だ。」
私はベトベターやベトベトンという者は知らない。恐らくポケモンの種の名前だろう。
ラジオの放送者からは危険視されているようだ。雨に濡れても死ななく、人間の居なくなった建造物を腐らせている。なるべく近づかない方がいい気がする。

セントラルタウン中央部・・・今私達が居る所はセントラルタウンの中なのか? もしかして、私達が居るここがセントラルタウン中央部なのではないか?
私が考え込んでいると、シロフォンが口を開いた。
「多分、ここはセントラルタウンだろう。町で飛んでいて、何回かその文字を見たことがある・・・気がする。だとすると、ここは中央部ではない。ベトベターやベトベトンなんて奴は知らないが、誰にも会わなかったじゃないか。」
「そうか・・・」

私はもう一度ラジオをつけた。
今は何も放送されておらず、砂嵐の音がするだけだった。

「コルネットが心配だ・・・」

-5 合流

雨は夜中降り続き、私が目覚める頃には止んでいた。
町の中は薄い霧で包まれ、デパートの中からはあまり外を見渡せなかった。
外に出ようとしたが、ラジオの言った通り、大きな水溜りがあちらこちらに出来ていた為、私達はもう一日このデパートで過ごすことに決めた。

次の日、幾分かは水溜りは引き、歩きやすくなった様だ。
私は百円ショップのおもちゃコーナーで拾った笛を持ち、デパートの屋上へよじ登った。
屋上は壊れた遊具や誰も着ない着ぐるみが散乱していた。その遊具たちを避けて歩き、私は手すりの無くなった屋上の端へと立った。霧は晴れた物の、元々悪い空気のせいで遠くが見渡せない。白い靄の中からビルが突き出している様に見える。
私は大きく息を吸い、思いっきり笛を吹いた。耳を劈くような音は街中に響く。
それを三回行い、屋上から笛を投げ捨てた。

一階の洋服売り場に戻ったとき、シロフォンが一匹のエーフィと話しているのが見えた。私は思わず大声で呼んでしまった。
「コルネット! 速かったな!」
彼女の名前はコルネット。私達と同じ"この世界に生まれた哀れな者"だ。コルネットも家族はいない。と言うより、亡くなった。
今までは別々に行動して、私達みたいに生き残っているポケモンを探していた。
「ヴィオラ・・・元気で何より。」
「ああ、一昨日は"天気"ありがとうな。」
「うん。」
”天気”とは、コルネットが行った天気予報の事だ。エーフィであるコルネットは天気を察知する事が出来る。一昨日のシロフォンが私に伝えた天気予報もコルネットがした物だ。

「・・・・・」
「・・・・・」
話が途切れた。
生存者を探す為に別行動をして探したのだが、この様子だと見付からなかったのだろう。何時もの事だ。

「そう言えば。ラジオを拾ったんだが、放送を流している者が居るみたいだ。」
「本当!? なんて?」
コルネットは顔を輝かせた。今までに無い収穫を得たからだ。
「ああ、どうやら定期的に放送を流している者がいるみたいだ。セントラルシティ西部のラジオ局からだと言っていたが・・・。ここがどこだか・・・。」
「セントラルシティね・・・確かこの町のはずよ。昨日交番を見つけたんだけど、間違いない。確か”セントラルシティ東部”って。」
シロフォンとコルネットの証言でここはセントラルタウンだと断定できた。西部の逆側の東部らしい。

「・・・・・・コルネット。これから一週間、雨は降るか?」
シロフォンがコルネットに聞く。恐らく、ラジオの天気予報を疑っているのだろう。信頼できるコルネットで確認をとるつもりか。
「・・・ううん。降らなそうね。」
「そうか・・・」

-6 移動

コルネットと会った後、私達は先程見つけたかんぱんで軽く食事を済ませた。
その後、私達は長居したデパートから離れ、コルネットが言っていた交番へと向うことにした。コルネットが言うには、その交番にセントラルシティ全体の地図があるらしい。
私達は食事の間に軽く話し合った結果、ラジオ局がある西部へと移動することにした。今、闇雲に生存者を探すよりも、その方が良いだろう。

交番はそう遠く無かった。
そびえるビル郡から少し離れた場所にある、小さな交番。その中はやはり荒れていた。
コルネットはそこに入り、地図とコンパスを持って出てきた。
路上で広げて私達に見せる。
「見て。このセントラルシティは中央、東部、西部、南部、北部の五つに分かれているの。私達が居るのは多分、東部のこの辺。」
コルネットは地図の右端辺りを指した。
「ここから西部に一直線に行くと、さっき言ってた中央を通らなくちゃいけないんだけど・・・」
確かに、東部と西部の間には円形に広がる中央部が広がる。ラジオで危険視されていた中央部。避けるべきだろう。

「この円は?」
シロフォンが地図の中央部辺りを指す。中央部の真ん中から中心が同じ赤い円が幾つも引かれ、中央から外側の円に向って数字が書かれていた。
「この地図はそもそもハザードマップの見本用みたいね。
中心からエリア025、024、023と、区別されているの。ラジオで言っていたエリア019がこの辺。」
コルネットはエリア019と書かれた円を指した。
「西部から見て、エリア019番目の所から危険って事になるわね。とりあえず、エリア017くらいからは入らない方がいいわね。」
コルネットは黒いマジックペンでエリア017の円を上からなぞった。
「でも、中央はなるべく避けましょう?」
「いや、一刻でも早くラジオ局に行くべきだ。少なくとも、一週間以内でなるべく近づきたい。」
「・・・せめて、南部と中央部の境目辺りか、北部と中央部の境目辺りを通りましょう? 私の予感だけど、中央部は絶対に近づかないほうがいい。」
コルネットは念を押すように言う。
私は一刻でも速く西部に行きたかったのだが・・・・・・。シロフォンも首を縦に振る。
「分かった。じゃあ、中央部には入らないようにして、南部を回って行こう。」

コルネットは頷いた後、地図を丸めた。

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第一章終了~。ご苦労さまでした~。
コメントを沢山頂いて嬉しいです。恐らく、今までに無い設定の物語だったからでしょう。
それだけに文章力が残念。元々下手な癖に、夜中にしか書けないから・・・夜中のテンションで書き上げてしまいまして。
朝見るとナンじゃこりゃあ?みたいな感じになってしまいます。残念

話は二章へと続きます。雨の危険は当分ありませんが、他に・・・。

二章も読んでいただけると嬉しいです。
投稿は少し後になると思いますが、ご勘弁を。



PS.名前決めました
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IP:61.22.93.158 TIME:"2013-01-14 (月) 18:18:54" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E3%81%84%E3%81%9A%E3%82%8C%E6%9C%BD%E3%81%A1%E3%82%8B%E9%9D%92%E7%A9%BA%E3%81%B8" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0)"

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