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【51】森羅万象の拳 の変更点


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#author("2025-09-28T12:57:19+00:00;2025-09-16T12:55:57+00:00","","")
''&size(30){森羅万象の拳};''
RIGHT:[[たつおか>たつおか]]





LEFT: この作品には以下の要素が含まれます。



LEFT:''【登場ポケモン】''  
CENTER:ウーラオス(♀)
LEFT:''【ジャンル】''    
CENTER:女師匠・少年弟子・仇討ち・バトル
LEFT:''【カップリング】''  
CENTER:少年主人公×ウーラオス(♀)
LEFT:''【話のノリ】''    
CENTER:ノーマル




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''&size(20){目次};''
#contents




*第1話・師の仇 [#pc1af3cf]


 この日、ひとつの戦いに決着がついた──

 長年にわたる因縁に終止符を打った瞬間、しかしウーラオスの胸中に去来したものは達成感でも無ければましてや喜びとは程遠い、虚無に似たそれであった。
 長年にわたる因縁に終止符を打った瞬間、しかし一撃型・ウーラオスの胸中に去来したものは達成感でも無ければましてや喜びとは程遠い、虚無に似たそれであった。

 いま足元に伏している連撃型のウーラオスは、自分とはダクマの頃より技を競い合ってきたポケモンである。
 拳を重ねること幾星霜……そして今日、連撃の隙をついた自身の一撃はクリーンヒットし、遂に彼を討ち果たすこととなった。

 しかしながら勝利の実感こそはあれ、彼女の胸は依然として晴れぬままである。
 闘いこそが我が人生であり、討ち果たしたウーラオスはその目標ともいうべき相手であったはずだ。
 にも拘らず勝利を達成した胸に去来するものが空しさであっては、自分は何の為に生きてきたのか分からない。

 不可解なのはそれだけではない。
 足元にうつ伏せとなった敗者の顔には、満足げな微笑みが浮かんでいた。
 生来深く考えることのないウーラオスは、そこへ尚更に困惑を覚えるのだ。
 勝利して生き延びた自分が戸惑いを胸に抱き、そして死して敗れたる者が何故に微笑むのか……。

 胸に不快さを残している理由はそれだけではない。
 先ほどから耳に届く人の子供の鳴き声もそうだ。

 死合を果たした自分達以外にもこの場には、横たわるウーラオスにしがみ付いては必死に声掛けなどして蘇生を試みている人間の子供がいた。
 この子供の存在は知っていた。
 いつ頃からかあのウーラオスが拾ってきては世話をしていた子供だ。
 いつも自分達の対決を影ながら見守っては親代わりであったウーラオスへ声援を飛ばす姿を疎ましく感じていた。

 とはいえその子の心中も理解できた。同時、一抹の申し訳なさすらも覚えてはいる。
 別段、戦っていたからと言って双方の間に憎しみの感情やこれに由来する凄惨な過去があった訳ではない。
 ウーラオスとはそのような生物(ポケモン)であるのだから、今日のような結末も仕方がないと彼女は理解していたが……その理も人には通じないようであった。
 一頻り師へと縋り、そしてその死をもはや覆しようのない事実として受け入れた少年は次の瞬間──それを果たしたウーラオスへと向き直っては憎悪の目を向けた。

 額が大きく見えるよう短く刈りこんだ髪型には目鼻立ちのあどけなさも手伝い、何とも彼が愛らしく感じられた。
 そんな子供が今、ありたけの憎しみを視線に込めては自分を睨(ね)め付けている。

 しかしながらその視線に晒された瞬間──以外にもウーラオスの中に蟠っていた不快感の一部が払しょくされた。
 今度はその事に困惑を覚える。
 他者からの恨みに愉悦を覚えるほど外道であるつもりはない。
 自分なりにこの時の、半ばときめきにも近い感情を判断するにそれは──依然睨め付けながらに立ち上がった少年が、一端にも師の構えを真似たことにあった。

 文字通りの児戯ではあるがしかし、その佇まいは堂に入っていた。
 とはいえそれは師から教授されたものではなく、少年が見様見真似で模したものであろうことは明らかだ。

 構えの足元において、少年はつま先の向きがまるで出鱈目であった。
 左足を前に置き、半身を引いて後方にて右足を踏み込ませるこの構えは、左のつま先は上半身と水平になるよう直線に相手を向いていなければならない。
 見れば少年のそれは内側にそれが向いてしまっている。
 これでは攻撃の際に標準がズレ、さらにはそれに体が引かれて体幹すらも崩しかねない。

 そのことは後方に引いた右足もまた然りであり、やはり正しい踏み位置を踏襲していないその構えでは、今度は受けに徹した際に、避けるには体移動がままならず、防御にしてもこのままでは踏みとどまれずに大きくバランスを崩すことだろう。

 そんな型ばかりを真似ただけの少年の滑稽さと、そしてそれを振りかざしては師の仇へと立ち向かってくる勇気に幾ばくかの感動すらもウーラオスは感じたのであった。

 そうして彼女は一歩、少年へ近づくや──前に踏み出されていた少年の左足を軽く蹴り払った。
 もはや攻撃と呼べるような力などは一切込めず、さながら砂山でも蹴り散らすよう外から内へと少年の左足を打ち払う。
 しかし次の瞬間──少年の体は大きく弧を描いては回転し、左側頭部をしたたかに地へと打ちすえては撃沈した。

 誤った構えの恐ろしさはここにある。
 そもそもが生物にとって、何気なく立った時の自然体こそが最も安定した姿勢であるのだ。
 構えとは、あえてそれを崩す不安定な形と言える。
 だからこそ正しい立ち居が求められ、今の少年は出鱈目にそれを取ってしまったが故に不安定となり、さらには必要以上の力みが悪く作用しては、転倒に際し己の膂力を以て地へと自身を叩きつける結果となってしまった。

 その様にウーラオスは勝負ありを確信する。
 いかに非力で体重の軽い少年とはいえ、あれだけの勢いをつけて頭部を打撲すれば失心は免れない。
 しばし地に付した彼を見遣ってはそこを去ろうとしたその時──思いも掛けぬことが目の前で起きた。
 事もあろう少年は、その身を震わせながら立ち上がってきたのだ。

 これには驚愕を覚えざるを得ない。
 しかしながらそれとても再戦の為の復帰などではなく、無意識に体を引き起こしているであろうことは、視点すらも定められずただ震えるばかりの体でバランスをとっている様子からも明らかだ。

 ならばそこまでこの少年を突き動かすものは何であろう?
 言うまでもなく師を失った事への悲哀と、そしてその仇たる自分への憎悪だ。
 それを理解した時、ウーラオスの胸中には熱く滾るものが感じられた。

 斯様な少年を前にウーラオスもまた構えを取る。
 それこそは先に少年が見せたそれの、正しき型となる構えだ。
 そして依然ふらついたままの少年目掛け──ウーラオスは正拳を一撃見舞った。
 
 腹部へのインパクトに際し少年は後方へ吹き飛ばされるどころか、その場で微動だにもしなければ、果たして拳が当たったかのかも定かではないといった体で立ち尽くした。
 しかしながら次の瞬間、激しく少年は吐血する。
 同時に鼻腔からも出血が弾け、その様たるや体内に仕掛けられた爆薬が破裂したかの如き様相であった。
 
 その後は大きき弧を描いては前のめりに倒れ込み──やがては師の隣に突っ伏すと、もはや少年は微動だにしなくなった。
 手心こそは加えたものの、それでも一介の武人(ポケモン)による一撃である。
 肉体が耐えられなければそのまま死に果てることだろう。

 しばしウーラオスは己が討ち果たした二人を見下ろす。
 それを見つめる瞳にもはや何の感情なども無い。
 ただ無感動にそれらを眺めやった後、遂にはそこへ背を向けては歩み出す。


 既に過去のものとなった二人を背に、去り行くウーラオスが振り返ることはもう無かった。




*第2話・新たなる二人 [#rbfdc895]


 縄張りに戻ってからも、日永ウーラオスは空など眺めて過ごした。

 傍から見たならば安寧に過ごしているようにも見えようがしかし、当人が感じているこの時の心境はけっして心安らかなものではなかった。
 本来ウーラオスという種が持つべき特性が、まさにこの時の彼女からは一切が失われていたといっても過言ではない。
 日々、技の研鑽に励むべく自身を鍛えていたウーオラスはそれら全てを放棄しては──今はただ失意の底にあった。

 その理由は言わずもがな、生涯の宿敵たる連撃型ウーラオスに勝利し、結果として彼を殺めてしまったことにある。
 これにより目標を達成した彼女は同時に自分の存在意義もまた見失い、今は死人同然に日々を過ごすに至っている。
 脱け殻さながらとなった数日間中も、ウーラオスの脳内に思い出されるものはあの決着の瞬間と、そして過去の彼との対決を追憶するものばかり……。
 過去の生きるばかりとなっていたこの時のウーラオスはもはや、完全に現在(いま)と未来とが断たれた状態にあった。

 そんな折り、ふと宿敵諸共に討ち果たした少年のことを思い出す。
 同時に宿敵の死体もまた確認したくなると、ようやくにウーラオスは木の幹に預けていた体を起こした。

 焦点も定まらずに、酩酊しているかのような頼りない足つきであの現場へと向かう。
 死体とはいえ、宿敵の姿を確認できることを心密かに楽しみにしていたウーラオスはこの時、多少なりともすでに心が壊れかけていたのだろう。
 そうしてかつての決戦場に辿り着いたウーラオスではあったが──そこに在るべき宿敵の死体を発見できずに当惑した。

 他の動物やポケモン達に食い荒らされたのかとも思ったが、あの巨体がわずか二日ばかりで骨も残さずに消えてしまうのも不自然だ。
 忽然と消えてしまったその訳を探るべく周辺を見渡したウーラオスは──その理由をたちどころに理解するのだった。

 かつての死体があった場所には土饅頭が真新しくも盛り上がっていた。
 そしてその傍らには──あの人間の少年が立ち尽くしてはそれを見下ろしていた。
 観察するに、彼の両手が泥と血にまみれていることから、おそらくは素手で師の墓穴を掘りそこへと埋葬したことが窺えた。

 その事実にウーラオスは驚愕を禁じ得ない。
 体長約2メートル、体重に至っては100㎏を越える巨体の墓穴を年端も行かない子供が素手で掘り上げたのだ。
 同時に1メートルにも満たない小さな子供が、二日間を掛けては穴を掘り師を弔った心境を考えるとウーラオスは胸が苦しくなる思いがした。
 やがては無意識のうちに歩み出しては……その少年と宿敵の墓へと近づいていく。

 行動するウーラオス自身、自分が何をしたいのか分かっていない。
 供養を為した少年を労いたいのか、あるいは知人の死に対し改めて追悼を捧げたいのか──そんなウーラオスの気配に気付き、視線の先の少年もまたこちらへと振り返る。
 
 酷い顔をしていた。
 この二日間、飲まず食わずは元より眠ることすらも忘れてこの墓穴を掘ったのだろう。
 窶れて落ちくぼんだ眼窩に死の影すらも伺えている様子からは、いかに彼が疲弊しそして絶望しているかが言葉など無くともウーラオスには窺えた。
 しかしそんな生気の消えた目に、突如として光が宿る。

 迫りくるウーラオスへと焦点が結ばれ、それが師の仇の接近であることを理解するや一変して──少年の顔には憎悪の表情が満ちた。
 負の感情に由来するものではあるが、瞬時にして少年は復活を遂げる。
 そして非力にもそれを迎え撃つべくに少年が構えを取った瞬間──曖昧模糊としていたウーラオスの瞳にも瞬時にして生命の灯が灯った。

 朦朧としていた意識は晴れ渡り、肉体に血流が巡るのが感じられる。
 それは闘争を生業とするポケモンの性であると同時、目の前の少年の構えに触発されてのものであった。
 二日前には単に形を模しただけであった未熟な構えが、今は完璧に矯正されていたのである。

 いったい誰にそれを教わったものかと考えた時、その師は誰でも無い自分であったことに気付く。
 ウーラオスにしてみれば軽くあしらった先の対戦も、少年にとってはその一挙手一投足が学びの場と言えた。
 爪先を蹴られたことにより誤った踏み込みをしていたことを理解し、そして直後にウーラオスが見せた構えを網膜に焼き付けては、さらにはそこから放たれる一撃(いたみ)を忘れることなくこの二日間において反復し続けたのだ。

 才能か、あるいは執念か──この時少年は、ただ一度手合わせしたウーラオスの構えを完璧に習得していたのである。
 
 そんな少年の姿にウーラオスは血が湧き上がる感覚を覚えていた。
 たった二日間とはいえ、永らく眠っていた感覚がたちどころに目覚めては研ぎ澄まされていく。
 そして同時にウーラオスもまた、少年に応えるかのよう構えを取っていた。
 
 それを前にして、後足を瞬発させるや地を蹴りウーラオスへと迫る少年。
 上半身を捻らせ、そこから右拳(うけん)の一撃を繰り出すも──次の瞬間にはウーラオスの左拳が、少年の拳が届くよりもずっと早くにその顔面を捉えていた。
 真正面から、それこそ瞬間的には拳の中頃までが顔面の中へ埋まってしまうほどの衝撃を以て打ちすえられると、少年はあえなく撃墜されては地に沈む。

 薄目に瞼の閉じきらぬ面相はどこまでも無表情で、その視線は遠い空へと投げられていた。……死んではいないようだが、もはやここに少年の意識が無いことは明らかだ。
 そんな少年を見下ろしながら、依然としてウーラオスは荒い呼吸に両肩を隆起させていた。
 体力的な原因ではなくそれは、肉体の昂りを抑えられぬが事に由来するものだ。
 そして同時にウーラオスは新たな生きがいもまた見つけたことを確信する。
 それこそは……

──コイツを鍛えよう。いずれ我が身を脅かさんとする存在に鍛え上げるのだ!

 その思惑に駆られ、そしていつか来るであろう決着の時を夢想した時、遂には耐えきれずウーラオスは絶頂に近い恍惚感に忘我する。


 かくしてここに命を狙う者と、そして狙われる者による歪な師弟関係が結ばれたのであった。
 



*第3話・寝座にて [#d4e21483]


 ウーラオスの寝座となる洞穴で目覚めた少年は最初、寝ぼけまなこに傍らのウーラオスへと抱き着いては存分に甘えた。

 体全体でしがみ付きウーラオスの匂いを堪能するよう、あるいは自身の匂いを擦り付けるようにして、幾度となく埋めた顔を左右に振っては押し付けた。
 そんな少年の仕草を、腕の中に抱いたウーラオスもまた胸掻き毟らんばかりの母性を刺激されては同じくに抱き寄せてその背をさする。
 しばしそうして幸せな一時を過ごしていた二人ではあったが……徐々に覚醒の度合いが進むにつれ、幸福に緩んでいた少年の顔には疑惑の色が滲みだした。
 
 やがてその表情は完全に困惑のそれへと変わり、依然抱き着いたその姿勢から顔を上げ、そこに仇であるウーラオスを確認するや──発火するかのよう飛び退り、寝座の奥底へと離れるや目頭へ皺をよせては激しく威嚇した。
 首をすくめ、両肩をいからせては四つん這いになって声を呻らせる様はヤマネコそのものだ。──もっともウーラオスなどには、そんな表情の少年もまた愛らしく見えてもいたが。

 しばし緊張を孕んだにらみ合いの末、少年は忙しなく視線を周囲へ巡らせると自分の置かれている状況を知ろうと躍起になる。
 場所は言わずもがな、ウーラオスが寝起きをしている洞穴だ。
 広さ的には彼女が僅かに身を屈めて立てる程度の天井はあり、少年ならば難無く直立して行動することが可能だった。
 むしろそう考えた時、この場所は少年を有利とする地の利に富んでいる。
 それを理解し、彼女への再戦を挑もうと画策する少年ではあったが……途端体の力が抜けたかと思うと、意志とは別に少年は前のめりに倒れ込んだ。

 その状況に困惑しては、少年も必死に体へ力を込めて立ち上がろうとするがそれも叶わない。その理由こそは極度の疲労と空腹にあった。
 二日間を掛けて師の墓穴を掘った少年は寝食を忘れて作業に没頭しており、肉体は疾うに体力の限界を迎えていた訳である。
 それでも意識だけは明瞭としている少年はどうにかしてガス欠の体を引き起こそうと、エンストした車へ幾度となくイグニッションを試みるかのよう、瞬発的に身を引き起こしては脱力するを繰り返す。

 そんな中──ふいに何かが少年へと投げつけられては、目の前にそれが転がった。
 何事かと思い、寝座の薄暗がりの中に目を凝らせば──目の前にあったのは一つの木の実であった。
 それこそは師が生きていた頃にも振舞われていた謂わば少年の主食であり、それを目にしなおかつ香りまで鼻腔に届くと途端に食欲が刺激されては唾液腺が崩壊する。

 両の口角から滂沱となって溢れ出る唾液を抑えながら、これを放ってくれたであろう前方のウーラオスを見遣れば、そこにおいて彼女もまた同じ実を頬張っては食事をしていた。
 そんな彼女を見据えたまま遂には食欲に勝てず、少年はおずおずと目の前の木の実を取ると──後は抱えたそれを無我夢中で食べた。
 瞬く間にひとつを完食するとそれを見計らったようウーラオスが次の木の実を放って寄こす。
 
 結果として計三つを食べ尽くすと次の瞬間──まるで張り詰めていた糸が切れるかのよう、少年は意識を朦朧とさせては再び前のめりに倒れ込む。
 一服盛られたかにも見えるような状況ではあるが、こと少年においては極度の疲労に由来するものだ。
 疲労困憊の肉体は食料の摂取後に更に、少年の意志などお構いなしの休養を敢行していた。


 もはや失心さながらに意識を失った少年が次に目を覚ました時には──今度は仰向けに寝転がるウーラオスの腹の上に置かれていた。
 見れば彼女もまた眠っているようで、しばし少年はその体の上からこのウーラオスを観察する。
 師であったウーラオスも同じように少年のベッド代わりになってくれていたが、いま体の下に敷いている質感は全く別物であった。

 彼女の方がはるかに毛並みがきめ細やかで肉体の柔らかさに富んでいた。
 加えてメス特有の仄かに酸味を帯びた暖かく柔らかい体臭は、半ば強制的に少年の心を鎮静化させてしまう謎の効果もあった。
 しかしながら、それでもやはり強大なその肉体を前に少年は考えあぐねてしまう。
 以降、どうやってこの肉体を攻略するかだ。

 はたして自分の細い手足でこの厚い肉体を貫けるものだろうか……現実は果てしなくも残酷だ。
 もはや無意識に彼女の体の上に手を這わせていると不意に掌に、師の体には無かった特徴を少年は覚える。
 それこそは毛並みの下に隠れた乳房の存在であった。

 それが手に触れ、さらには他の筋肉には無い弾力をそこに覚えると少年は集中的にそこへ手を這わせていく。
 掌の中に収めて力を込めると、脂肪質なそれはたちどころに指の間を埋め尽くしてはその形に溢れ出た。
 心地良いその感触を何気なく楽しんでいた少年ではあったが、次第にそこを弄ぶ行為に夢中となっていく。

 幾度となくそこをまさぐっていると、斯様な乳房の頂点には明らかに異質な硬さの乳首もまた確認できた。
 そんなウーラオスの体をよじ登るようにして身を引き起こすと、少年は今しがた発見した乳首へと鼻先を寄せ、その周囲の毛並みをかき分けては、目の間に出現したそれをまじまじと見つめる。
 モノクロな体色には似つかわしくもない鮮明な薄紅色のそれを目の前に、さらにはそこを突いたり、時に指先で摘まみ上げるなどして弄んでなどいると、それに反応するようウーラオスが夢うつつに小さなうめき声を上げた。

 それに驚いては、彼女を刺激するような行動をとってしまった不用意を自身に咎めるがしかし──もはや少年の肉体はそんな脳からの指令を受け付けなくなっていた。
 物心ついてからはポケモンしか知らない少年ではあっても、哺乳類の本能として乳房を求めてしまう強い希求心が少年の中には渦巻いていた。
 ましてやまだ幼く、精神の抑制などできない少年は次の瞬間──そんな目の前に現れた乳首を、本能の赴くままに深く口中へと咥え込んでしまうのだった。

 それを受け、今度は明らかにそれへ反応するようウーラオスの体が弓なりに直伸しては大きく跳ね上がる。
 それでもしかし少年は彼女の乳房を弄ぶ行為をやめられなかった。
 しばし吸い付けて口を離すと、周囲の毛並みが濡れそぼって倒れたことにより、唾液に濡れた乳首がより鮮明に眼前へと立ち上がった。
 そこへ荒々しく掌を被せて揉みしだくと、今度は反対の乳首へと少年は強く吸い付く。

 かくして口唇と掌に同時の愛撫を続ける中、不意に少年の行動は制止を余儀なくされる。
 突如として背に重みが生じたかと思うや、それがウーラオスの掌が置かれたものだとたちどころに察知する。
 そして乳房に向けていた視線を上げてその先を見遣れば──そこには憮然とした表情でこちらを見下ろしているウーラオスの顔が窺えた。

 それを前に少年はどう身を処したものか混乱する。
 今まで通りに強く威嚇して然るべきなのであろうが、この時の少年には不思議とそう言った気概の一切が失われていた。
 ただ相手の出方を窺うばかりの自分に困惑しながらしばし見つめ合っていたがしかし──状況は思わぬ方向へと一変することとなる。

 突如としてウーラオスは少年を抱き上げ鼻先同士を突きわせた次の瞬間、その唇を荒々しく奪っていた。
 触れ合わせる程度のものなどではなく、侵入してきた舌先が小さい少年の口中を埋め尽くしては、その中にある唾液を根こそぎ奪い取るかのような蹂躙……そんな愛撫に晒されては必死に抵抗を試みようと少年も身を捩じらせるが、もはやその非力な肉体ではこの状況を覆すことは不可能であった。


 なぜならばこの時のウーラオスは既に激しく発情を促されては、一切の力加減を制御出来なくなっていたからである。




*第4話・ウーラオスの蜜月 [#u95870ce]


 立ちどころに衣服を剥がれるや、少年はウーラオスの前に下半身を晒した。
 同時、そこに小振りなペニスを発見すると──彼女は一切の躊躇もなくそれを口先に咥え込んでしまう。

 それを受け少年もまた大きく悲鳴を上げる。
 瞬間脳裏をよぎったものは無惨に自分の下半身がウーラオスの牙によって食いちぎられるイメージだ。
 性に関する知識など皆無の彼にとって、他の生物が肉体に牙を立てる瞬間など攻撃と捕食以外には考えられなかった。

 しかしながら覚悟していた痛みは一向として訪れることなく、むしろ咥えられたペニスへ激しく口唇を吸い付かせては、大量の唾液を介して前後に往復させる動きに今度は強い戸惑いを覚えた。
 ウーラオスはいったい何をしているものだろう? ──痛みこそは発生しないものの、味わうよう舌や唇を吸い付けさせ、さらには口中にて飽和状態となった唾液を飲み下している行為そのものは食事にも酷似している。
 しかしながら、日頃排泄に使用する不浄な個所を口にし、あまつさえそこからの分泌物を摂取するウーラオスの行為は、何一つとして少年には理解が及ばなかった。

 そうしてただ為されるがまま、必死の体で少年のペニスをむしゃぶり続けるウーラオスを見下ろしていると──不意にその眼が上目を剥いて少年の顔を捉えた。
 以降まっすぐにこちらを見据えたまま、一層に激しさを増していく口唇の吸い付けに対しこの時、少年は突如として発生した場違いの排泄感に驚いては呻きを上げる。
 常日頃の自然な感覚のそれではなく、明らかに今のウーラオスの行為に導かれて引き起こされたのは明らかだ。

 その感覚にとらわれると、少年は同時に言いようのない恐怖に駆られた。
 己の体であるにもかかわらずそれの制御が利かない感覚は、さながら自身の体を得体のしれない何かに改造されているかのような恐怖があった。
 それに慄いては死に瀕した動物のようか細い声で泣きだす少年にもしかし、その声は一層にウーラオスの欲情を煽るばかりだ。
 その後も勢いを緩めることもなくペニスを吸い出し続けているとやがて──一際高い呻きを上げると同時、少年はウーラオスの口中において射精した。

 舌上に広がる熱とゲル状のそれを口中に感じては、ようやくにウーラオスも吸い付けによる往復を止める。
 それでも頬は濯ぐかのよう窄めるを繰り返しながら、その後も打ち出される少年の精液を緩やかに吸い出し続けた。
 
 年齢的にもまだ精の練られていない少年のそれは腺液だけの多分に塩味の強いものであったが、それでも仄かに鼻腔へと漂ってくる精液特有の青臭さに中てられては、それだけでウーラスもまた絶頂へと達してしまう。
 やがては完全にペニスそれからの体液も吸い尽くし、気絶同然に少年が意識を失ってしまうと、後は彼を抱きしめたまま幾度となくその顔を舐め尽くしては愛撫をして過ごした。


 そのままいつしかウーラスも寝入ってしまい、次に目を覚ました時にはもう──少年は寝座に居なかった。
 起き上がり、しばし呆然と少年の消えた寝座を見渡していたウーラオスではあったが、脳裏に昨晩の少年とのやりとりが思い浮かぶと、その記憶の再生にウーラオスはその口元を愉悦に緩むのだった。
 少年の匂い、味、そして表情のそれらを思い起こすと、胸の内は息苦しいほどに弾んではウーラオスを恍惚とさせる。
 今日までの生において、初めて武以外のときめきを発見した瞬間であった。

 それから数日は少年の姿を見なかった。
 そして次に彼と再会した時、少年は──再び復讐者としてウーラオスの前に立った。

 その日、日課の鍛錬を終え食料など集めて寝座に戻ると……洞穴の前にはあの少年がいた。
 腕組みをし、不機嫌そのものに眉元へ深く皺を刻み込んでは待ち受けていた少年はウーラオスが戻ってきたのを見止めるや、再びに挑戦を申し込んでくる。
 
 彼にしてみれば真剣そのものであり、さらには彼女を討ち果たさんとする今この瞬間を生涯最後の時と覚悟を決めては挑んでくるのであろうが──当のウーラオスにとってのそれは、愛しい恋人が尋ねに来てくれたに他ならない。
 見下ろす顔の口角がだらしなく笑いに緩むの見つけて少年は一層に怒りを露とするが、そうしていざ始まる勝負もたいていは瞬時に決着がついてしまう。

 体格差による体力の差は元より、技術面においても少年は到底ウーラオスには及ばない。
 それでも体力が尽きるまで立ち向かってくるのは立派だと、いつしか命を狙われている筈のウーラオスが少年のことを誇らしくすら思っていた。

 また少年はただ闇雲に毎回挑んでくるわけでもない。
 その前回の戦いにおいて課題となった悪癖や、ウーラオスに隙を付け込まれた戦術などはそのこと如くが次回では改善され、及ばずながらも少年の実力は日々上がり続けていることもまたウーラオスは実感していた。

 彼女にしてみれば当然の理合を、種も違えば素人同然の少年が手探りでその術利を理解し習得していく姿は、ポケモンであるウーラオスの胸にすら感動に近い感情を抱かせる。
 そしてそれを労うご褒美のよう、決闘の後は精魂尽き果てて動けなくなった少年を寝座へと引き込んでは、その幼い体をこれでもかと慰めた。

 存分に抱きしめて愛撫してやるとまずは口移しで食料などを提供する。
 やがては長い口づけのまま完全にその動きを拘束するや、手は少年の股間へと伸び……その後はめくるめく一夜のうちに、彼のタンパク質を存分にウーラオスは堪能するのだ。


 そんな日々を共に過ごすうちに一年……そして三年と月日は移り変わっていく。
 ウーラオスにとっては永遠に続くと願ってやまない彼との日々もしかし、子供と思っていた少年もまた過ぎ行く月日の中で成長をしていく。

 そしてその果てに、いつしか今日の日の蜜月が終わることをしかし──ウーラオスも、さらには少年自身もまだ……この時は気付く由もなかった。




*第5話・導かれた先 [#u3f3b883]

 
 かくして──少年を復讐者として、そして半ば一方的な恋人として向け入れたウーラオスではあったが、だからと言って彼女が少年を手元に囲うなどということはなかった。

 数日に一度その元を訪れては手合わせすること、そしてその後には激しく愛撫してやることをルーチンとして繰り返すばかりであったが、それでも少年には十分な成果があった。
 何よりも少年は死に物狂いだった。
 その体格差と実力差の前では毎回難無く叩き伏せられてしまう訳ではあるが、都度何故にそうなったのかを少年も対戦後には幾度となく反芻した。

 そうして数日の内にはその課題を己の中で消化し、次回にはその対策をしっかりと為しては挑んだ。
 拳に生きるウーラオスにとってそうした少年からのフィードバックはもはや、何よりも親密でかつ信頼のおける対話に等しい。
 彼こそは自分を憎んでいるのやも知れないが、この時のウーラオスにとって少年はもはや、誰よりも愛しい存在へと変わり始めていた。

 一方で少年もまた斯様なウーラオスの世話焼きの真意に気付き始めてもいた。
 毎回気絶するほどに叩き伏せられる訳ではあったが、それでも深刻な負傷は負わせないよう彼女が手心を加えてくれていることは理解できたし、そうした稽古の後で施される度を越えた愛撫にもしかし少年は順応し始めていた。
 皮肉にも仇であるウーラオスに師事している事と変わらない状況に半ば少年自身も気付き、そして受け入れ始めてもいたのだ。

 そうして5年が経過し、もはや師と共に過ごした期間よりも今のウーラオスとの付き合いが長くなりだしたその頃、二人の関係は更なる発展を見せる。
 その最初の気づきは、少年の攻撃がウーラオスへ届くようになったことから始まる。

 今までは触れることも叶わなかった拳足が、ダメージこそは無いものの急所の的を捉えるようになった。
 当然これにはウーラオスも驚愕を禁じ得ない。
 一連の稽古においては威力を抑える手心は加えても、わざと攻撃を受けるなどという妥協は一切許していなかったからだ。
 謂わば防御においては常に本気であったウーラオスを、少年の攻撃は確実に捉え始めたのである。

 さらにその変化は少年側の受けにおいても発揮される。
 こちらにおいては明確にウーラオスの技を見切っては回避を、あるいは効果的に防御などして受けては、一撃の元に失心させられるという事が無くなった。
 これにより、始めた当初は一方的に叩き伏せられて終わっていた数分足らずの稽古も、後に一時間・数時間と伸びるようになり、最近に至っては半日近くを打ち合うというほどにまで二人の稽古は発展を見せた。

 拳を交える時間が増えるという事は、いわばそれを通じた二人の語らいの時間が増えることも同義である。
 元よりポケモンと人とでは言葉も通じ合わぬし、ましてや特殊な性質を持つ『ウーラオス』種とあってはなおさらに意思の疎通など難しいはずだ。
 しかしながら稽古を通じて語り合う時、彼女は実に雄弁に己のことを騙ってくれるかのようであった。

 肌艶や筋肉の隆起といった肉体の仕上がりは常日頃彼女が何を食べ、どのような鍛錬を課して日常を過ごしているのかを教えてくれたし、彼女から放たれる数々の技の理合はそれを習得するまでにどのような理解や葛藤をそこへ募らせたのかを伝えてくるかのようであった。
 そんな技々の中には幼き頃に眺めていた師の技や稽古の様子を思い起こさせてくれるものも多々あり、それに触れることは彼女の口から師への敬意や彼の人となり──そして、あの日の悲劇がけっして一方的な悪意の元に行われたことではないことを、いつしか少年に教えるのだった。

 斯様にして彼女のことを知り、そして受け入れることによって、少年の攻撃もまたウーラオスへと届くこととなったのは皮肉と言うより他無い。
 そもそもが『武』の本質とは、コミュニケーションの一形態という点に尽きる。
 そこへ過剰な敬意や人間性といった余計な精神論を追加してしまう人の武は、ともすれば偽善とも取られかねない性質を帯びて今日に至ってしまっているが、ことポケモンのそれは違う。

 目の前のウーラオスから放たれる拳や蹴りの全ては、純粋な言葉でありそして感情だ。
 それに対し少年もまた真摯にそれに応えようと、そして何よりも自身から彼女へ触れたいと思ったその時、自然と少年の攻撃はウーラオスへと届くに至っていた。

 そして遂にその対話を交わす数年を経て──少年の拳は完成を見る。
 
 少年は14歳となり、既に鍛え抜かれた肉体と技の理合とを理解した拳足は、芯を捉えればウーラオスの肉体へも致命的なダメージを与えられるまでに完成されていた。
 一方のウーラオスとても肉体は今が最盛期だ。
 強靭かつしなやかな体躯は、女体と言うことも相成っては艶かしくすらもある。
 もはやウーラオスにしても、数年前に宿敵と決着を果たした頃よりも心技体ともに完成された状態であった。

 そんな二人による此度の決戦はもはや、ここに至る二人の人生の集大成とも言うべき決着の時を迎えつつあった。

 一撃型の彼女に対し、師の型を継承する少年のそれは連撃型である。
 戦いも自然、少年の手数が多くなり、ウーラオスはその猛攻に対処をしながら技の間隙を狙う展開となった。

 そしてその戦いの最中、不意にウーラオスの脳裏をよぎったのは──あの日の宿敵との一戦であった。
 図らずも彼の遺した一つ種とこの時を迎え、なおかつその戦いのレベルたるや、あの時以上の緊張感をそこに漲らせている。 
 本能はその事を幸福に思うと同時、一抹の寂しさもまた彼女の胸中へと生じさせた。

 究極といっても過言ではないこの戦いにおいてはもはや、ウーラオスに一切の手加減はできない。
 そして自身から放たれる渾身の一撃が決まる時、人たる身の少年がそれに耐えうることは不可能であることもまた理解していた。

 戦いにおける彼の癖は知り尽くしている。
 連撃の、本当に僅かな間隙に少年が息継ぎの為に拳一撃分、僅かな空白をそこに挟むタイミングをウーラオスは知り尽くしていた。
 皮肉にもそれは彼の師もまた持ち得た癖であり、しいては『連撃型ウーラオス』全般における種の急所とも言うべき瞬間であった。

 少年からの斯様な猛攻に耐えつつもその瞬間をウーラオスは待つ──そして数度目の打ち込みの後、体勢を整えるべくに彼が僅かに身を引いた瞬間、

──ここだ!

 ウーラオスの肉体は発火した。
 この時に至るまで体の真に溜め込んでいた力を解放し、ウーラオスは乾坤一擲となる肘打ちを少年の胸元へと敢行した。

 スピード・タイミング、そしてそこに込められる膂力の全てが乗った完璧な一撃──この一打に至っては、誇張無しにこの世のあらゆるものを打ち砕くことの出来る最高最強の一撃がまさに放たれたのであった。

 そしてそれを前にして少年もまた息を飲む。
 斯様に絶体絶命に追い込まれた脳は瞬時にこの状況に対応すべき術を探し出そうとニューロンを活性化させる。
 その速度と集中の中において少年を取り囲む時の流れは凍りついたが如くに緩慢となった。
 そしてそんな世界の中の現状が重なるようにして思い起こされたのは──過去の、師が討ち取られる瞬間であった。
 
 あの時の師もまたこれとまったく同じ状況で仕留められたのだ。
 避けるには間に合わず、そして受け止めるには強力に過ぎるその一撃──しかしこの時、少年の胸中に満ちていたものは恐怖でもましてや憎悪でもない、これをこのタイミングで打ち放ってきたウーラオスへの敬意であった。
 
 同時に気付く──今のこの想いは師もまた同じであったことを。

 死に逝く瞬間に際しては彼もまた一切の後悔などなかった。 
 そして今の自分同様にこれを成し遂げたウーラオスを愛しくすら思ったことだろう。
 自分達にとって戦いはコミュニケーションだ……そして最高の気持ちを伝えてくれたウーラオスを前に、少年は半ば本能的にその体を動かしていた。

 避けるでも拒絶するでもなく──少年は自ら攻撃へと身を呈した。

 そしてこの行動こそが、まさにこの時においては正解の選択肢となる。
 一撃必殺の性質上、ウーラオスの標準はミクロ単位にまで及ぶ精密性が要求される。
 それはこの時においても然りで、ウーラオスはその場に留まり続ける少年に標準を定めていたのだ。
 それがしかし、こともあろうか少年は自ずからウーラオスの攻撃へと身を呈した──前のめりに前進してきたのである。

 その僅かに生じた誤差がこの時、必殺の標準を外した。
 渾身の一撃は僅かにズレ、顔面の皮膚の一部を吹き飛ばしては空振りに終わる。
 そして今、攻撃移行後の完全無防備な状態を今度はウーラオスが晒す状態となった。

 そんなウーラオスを、踏み込んできた少年は正面から強く抱き締める。
 その抱擁はもはや戦いのそれではない。
 それこそは愛し、慈しむ想いをそこに込めた強く優しげなものであった。

『……今日までありがとう。愛してるよ……ウーラオス』

 言葉か心か、その瞬間ウーラオスは確かに少年の声を聞いた。
 そして次の瞬間には最高の相棒へと返される、少年による最高の連撃が始まる。

 右のストレートを起点として、肉体のあらゆる鋭角を駆使した嵐のごとき打撃が一切の回避や防御を許すこと無くウーラオスへと打ち込まれる。
 その速力たるや、少年の師でありそしてかつての宿敵であった連撃型ウーラオスのそれと遜色見劣りしない速さと重さを誇っていた。

 しかし少年の拳はそこに留まらない──そんな連撃が更なる速度を見せ始めることにウーラオスは刮目する。
 まだ先があるのかと驚愕するその中、少年の拳は遂に音を置き去りにし、ヒット後に肉体を打ち据える衝撃が耳へ届くまでに到達する。

 息継ぐことなく繰り出される拳足はやがて残像を帯び、遂には光の線となってウーラオスの目には写っていた。
 拳を繰り出す衝撃は風の音となって耳に届き、蹴りが地を離れる際に巻き起こす地擦りは大海原のさざ波や小川のせせらぎを思わせた。
 今や少年の肉体からは接せられるそれら音が自然のものと融合してはウーオラスの視界を眩く照らした次の瞬間──……彼女は大自然の中にいた。

 先ほどまで自分が身を置いていた森よりも遥かに雄大なそこはそう……まだ幼きダクマ時代に感じていた森の姿であった。
 そしてそんな懐かしき場所において、ウーオラスは思わぬ者との遭遇を果たす。
 ふと投げた視線の先に居た者は──かつて自分が屠った宿敵であった。
 腰に両手を当て、どこか得意げな微笑みを向けているその視線についウーオラスも笑ってしまう。

 不思議な話、こんなに近くにいたのかと今さらになって気付く。
 そんなウーラオスに頷いてみせるや宿敵は、俺の息子は大したものだろ? ──と問い訊ねてきた。
 それに対してウーラオスも素直に頷く。
 あの少年は武において自分を勝ったことも然ることながら、こんな場所にまで連れて来てくれたのだから。
 
 それを思うままに伝えると、かつての宿敵は──友は、眩しいほどの笑みで破顔した。
 太陽を背負うように立つその逆光に眩さを感じ、ウーオラスは目を細める。
 光の中へと消えゆく友へと、いつかまた会えることをウーラオスは願わずにはいられない。

 そうして一陣の風が吹きつけては瞼をしかめ、再びにそれを開いた時……ウーラオスは再び現世へと戻ってきていた。
 目の前にあの少年の姿はない。
 疾風の如くに仕上げとなる一撃を見舞ってはその勢いのままに駈け抜け、今は自分の背後遠くにいた。

 振り向かずとも、そこにおいて少年がまだ残心を解いていない様子が手に取るように分かる。今や自分もまた、全てを包みこむ自然の一部で在るのだ。
 そしてそれを叶えてくれた武こそが、少年の拳であった。

 直後、少年の速力にようやく追いついたダメージが一挙にウーラオスの肉体へと押しよせる。
 それら衝撃を体内において爆発させると、ウーラオスは瞬間的に身を仰け反らせては咳き込むようにして吐血を宙へと吐き散らす。
 やがて両膝を折り頽れると──そのままうつ伏せにウーラオスは撃沈した。

 もはや指一本として動かせなくなった肉体には苦しみも、そして痛みすらも無かった。
 ただ心には少年彼に出会えたことと、そして友との再会を喜ぶ暖かさとで満ちている……それを思った時、このまま力尽きんとしている最中であっても恐怖はまるで感じなかった。

 そうして気付く。
 この境地こそ、あの日死に逝く友が浮かべた微笑みの理由であったことを知ると──


 ウーラオスもまた失われつつある意識と命の狭間に込み上がる喜びを、そして微笑みを抑えることが出来なかった。
 
 


*第6話・勝者の特権 [#g9d64ed6]


 我に返った時、背後ではウーラオスが倒れていた。

 紛う方なくこれこそは自身の勝利であり、少年が成し遂げた結果だ。
 しかしながらその復讐を果たした瞬間、少年の胸に去来したものは──大変なことを犯してしまったという焦りと困惑であった。

 積年の恨みを晴らしたことに対する達成感など微塵として感じることも無く、ただ少年はウーラオスへ駆け寄ると彼女を担ぎ上げる。
 日々の鍛錬により腕力も上がっているとはいえ、それでも100㎏超の巨体を抱えるのには骨を折った。
 折り好くも彼女の寝座が近いのは幸いであり、少年はウーラオスをその洞穴内へ引きずっていくと、後は看病に努める。

 幸いなことに呼吸は落ち着いている。
 とりあえず濡れ布巾など絞って彼女の体を清拭してやると、毛並みの下にうっすらと伺える肉体のあちこちには痛々しい内出血の跡が見て取れた。
 それが自分の拳足と同じ大きさから、彼女を打ち倒したのが自分であることを改めて実感すると、ようやくに少年はその達成へ感慨を巡らせるに至った。

 しかしながら今この胸に満ちているものは喜びなどとは程遠い。既にだいぶ前にはもう、少年は彼女のことを許していた。
 あの日の師を殺めたウーラオスの行為がけっして悪意に満ちたものなどではなく、種特有のコミュニケーション中に起きた不慮の事故であることは、今日に至るまでの彼女との交流で既に理解していたことだった。

 以降は、純粋に彼女を越えたいと願い今日まで鍛錬を積んできたのだ。
 そしてそれが達成された今、少年の胸は虚無に近い感情に捕らわれては途方に暮れている。
 そんな喪失感を抱いたままウーラオスの体を拭いていた少年は、不意に手が乳房の隆起に乗り上がるのを感じて我に返る。

 その筋肉とは違う感触に驚いて一瞬手を離すも……しばしの逡巡の後、再び少年はそこに手を置いた。
 掌を椀にして、覆うように再び乳房の上に被せる。
 そこから力を込め、手の中へ彼女の体温と柔らかさが広がるのを感じると、いつしか少年はそこを揉みしだく行為に夢中となっていった。

 いつも対戦の後には、決まって少年はペニスを弄ばれていた。
 敗北という精神的な負い目の中で受けていたものとは違い、本日勝者となった自分から彼女へと施すそれは、同じ性的な愛撫ではあってもその感覚がまったく違う。
 これこそは勝者の特権であるのだ。

 いつしか両手で以てウーラオスの乳房を揉みしだくと共に、その刺激によって浮き上がって来た乳首に対しても少年は口唇を吸い付けさせる。
 それどころか大きく口を開いては、食むように乳房全体を咥え込んで荒々しくもそこへ歯を立てたりもした。
 柔肉に少年の前歯が食い込むと、そのこそばゆさに反応しウーラオスも無意識に呻きなどを漏らす。

 そんな彼女の声に少年の欲情はなおさらに煽られる。
 いつしか痛いくらいに勃起を果たし、少年は覆い被さるようにして正面からウーラオスの体へと乗り上がった。
 2メートル近い体長の彼女に対し、その胸元ほどの少年とでは文字通り大人と子供だ。
 それでも彼女の柔らかい前面に体全体を押し当てては、少年も夢中になって彼女の肉や毛並みの質感、そして体温や香りといった女(メス)の体を本能の赴くままに堪能する。

 斯様にしてウーラオスを組み敷いては体を擦り付けていると、勃起したペニスの先端が時折り、毛並みのそれとはまた違う感触をそこへ覚えさせるのに気付く。
 ふと体を起こし、重なり合う自分達を見下ろせば──ウーラオスの股間が粘液に煌めいてはその周辺の毛並みを細らせていることに気付いた。

 途端にそこへ興味を引かれ、少年はウーラオスの股座へと鼻先を寄せる。 
 両膝を立たせて開脚させたその奥底には、毛並みを切り裂いたかのようなスリットが縦に走っていては、その下端からうっすらと体液を滲ませていた。
 その濡れそぼる様に、好奇心に任せてそのスリットを左右へ押し開いた瞬間──そこから立ち上がる膣の湿度と芳香に中てられ、少年は強い眩暈を覚えた。

 排泄器官も近く、ましてや人のような洗体の慣習も無い野生のポケモンの膣からは咽かえるような臭気が放たれてもいたが、その香りはけっして不快だけに留まるものではなかった。
 僅かに酸味も思わせるその芳香において少年の本能は刺激され、この時初めて彼は自身の中に『性欲』が湧き上がるのを感じた。

 それに捕らわれるや、もはや局部という個所の不浄も意に介さず、少年はウーラオスの膣そこへと鼻先を埋める。
 強い塩味と共に来る、仄かに酸い彼女の膣壁を夢中になってむしゃぶった。
 閉じ合わさった膣壁同士を挿入する舌先でかき分け、膣口と尿道の区別もなく口唇を吸い付けさせてはそこから溢れてくる体液をすすり上げる。
 同時、性的な興味が赴くままに膣口へ立てた指先もまた挿入しては、無遠慮に往復させながら指越しに感じる膣壁の締め付けと体温も堪能した。

 一定のリズムを以て出し入れされる指の感触を粘膜に感じてはウーラオスもリズミカルな呻きを繰り返すと、その反応とさらには指先を締め付けてくる粘膜の感触が面白くなり、少年の指先はその往復の速度を増した。
 いつしか手元は残像を帯るほどの速度ですくい上げるよう往復を繰り返すと──ウーラオスは一変して吼え猛るや、激しく身を仰け反らせて天に突き上げたへそを激しく痙攣させる。

 しばしその体勢のまま、身を硬直させては打ち震えていたが……まるで糸が切れたよう一気に脱力するや、その体は再び沈みこんだ。
 以降は荒々しい呼吸に全身を大きく隆起させるウーラオスを前に、いよいよもって少年は自身のペニスが抑えきれないほど痛痒く血液が充血している感覚を亀頭へ意識しては朦朧とする。

 もはやまともな思考など働こうはずもなく、少年はただ目の前の状況に対して反射するばかりの原生生物になった気がした。
 そして思考は今しがたまで指先に感じていた締め付けと滑りを帯びた熱の感触を、屹立したペニスへ生じさせたいと強く願う。
 

 そうした本能に誘われるまま着衣を脱ぎ捨てると、少年は依然両膝を立てたまま開脚されるウーラオスの股座へと立ち膝でにじり寄る。
 そして濡れそぼってはうっすらと開けたその膣口へと──少年は一思いにペニス全体を挿入してしまうのだった。




*第7話・獣の流儀 [#h842da15]


 ウーラオスの膣へ挿入を果たした瞬間──茎全体を包み込んでくる熱と、そして内部から固形物が尿道をせり上がってくる感触に、少年は己のペニスが破裂した感触を錯覚しては悲鳴を上げた。

 しばし正常位に乗り上げたウーラオスの体に身を預けては肉体の昂りが収まるのを待つと、同時に股間にて起きている現象はペニスから未知の経験となる何かが噴出していることが原因と分かる。
 言わずもがなそれこそは射精であり、少年にしては初の送精となる行為であった。

 今までにもウーラオスにはさんざんにペニスを弄ばれ絶頂の感覚は味わっていたが、実際に精の放出を兼ねたそれは初めてであり、そしてそれに伴う快感たるや今までの表面上だけの絶頂とは比べようもないほどに強いものであった。
 さらに今の少年を快感に忘我させている理由は、これが本能に追随する行為であるからにも他ならない。
 幼くとも射精という行為が、対象の雌を妊娠させるという事──己が遺伝子を残す行為であることを肉体は理解し、それを実行することの喜びもまたこの快感には強く含まれているのだった。

 一方でその快感を享受したのはウーラオスもまた然りである。
 激しく声を上げて咆哮すると、交差させた両足を少年の尻の後ろで組んではより深い接合と、そして膣奥底へ精液が届く様に身を密着させては膣壁をうねらせる。
 粘膜が幾重にも皺をよせては膣内のペニスを絞り上げ、精巣に残された精液を一滴として残さずに絞り上げようとする膣の動きに晒されては、少年もウーラオスの腹部に顔を埋めたままくぐもった声を上げるばかりだった。

 ウーラオスにしてもオスとの性交はこれが初体験であり、そしてその胎内へと精を打ち込まれるのも初めてであった。
 しかしながらそんな未知のものであっても肉体はこの瞬間を待ち望んでいたかのよう膣壁をうねらせては、少年の射精を促進させる。
 射精後も斯様にしてペニスを揉みほぐされていると、自然少年のそれはウーラオスの内部において硬度を取り戻し、再びその角度を上げては彼女のGスポットを突き上げ始める。

 その再動に反応するや、遂にウーラオスも動いた。
 ゆっくりと身を起こし座位に少年を向き合うようになると、さらに覆い被さるようにして今度はウーラオスが少年を組み敷くように上となった。
 依然として繋がったまま騎乗位に展開すると、ウーラオスは少年を跨ぐように両足を踏み締め直し、蹲踞の姿勢を取る。
 そして両膝頭に掌を被せ、両肩をいからせては肘を張ると──そこからガニ股に暴力的ともいえる勢いのピストンを開始する。

 激しい体移動につられ、乗りかかれる少年の目の前ではウーラオスのたわわな巨乳が釣鐘のように垂れては、そして無重力さながらに浮き上がってとその形を万化させていた。
 それに触れたい一心で両腕を伸ばし、少年は暴れまわる乳房を両手において握りしめると──その乳房への感触に反応してはウーラオスもまた呻きを上げる。
 身を手折らせては少年を抱き込むと自身の乳首が彼の口元へと行くように誘導し、存分にしゃぶらせては更なる愛撫を求めた。

 少年もまたウーラオスの乳房には執着があったようで、そこにむしゃぶりつく愛撫はもはや一切の遠慮も無く含んだ乳首を奥歯で噛みしめる痛々しいものであすらあった。
 しかしながら痛みに強い種族柄も手伝っては、その痛みを最大級の快感としてウーラオスも享受する。
 依然として少年を抱きしめたまま、腰元においては巨尻を鞭の如くにしならせては更なる快感を貪った。

 口中において噛みしめる乳腺からはいつしか母乳が滲み、さらにそこに乳首の表皮が破けては血による鉄の味もまた含まれた瞬間、それらを感じ取った少年は本日二度目となる射精を果たした。

 それを受け、一際強く深く腰を打ち付けた状態でウーラスも停止し、さらには絶頂へも至っては身を痙攣させる。
 上目を剥き、突き出した口唇を細長く伸ばしては息を殺して快感に打ち震えるウーラオスの目尻からは涙すら溢れていた。
 射精のごとに跳ね上がるペニスの躍動に合わせ、捏ねるように打ち付けたままの尻を擦り付けるとより多くの精液を搾り取ろうつーラオスもまた躍起となっていた。

 やがては二度目の射精もまた一滴残らずに受け止めると、ウーラオスは再び脱力しては少年の上に覆いかぶさるように身を伏せた。
 少年に圧し掛かってくる、きめ細やかな毛並み越しの柔らかい重み……窒息しそうなほどの感触にもしかし、少年はその荷重とウーラオスの躍動を心地良いものとして感じていた。

 疲労も手伝っては互いの脱力し切った肉体同士が液状となって交じり合ってしまったかのような感覚に陥る。
 そんな一心同体と化した中においても一点、ただ一つ明確に互いの肉体の境界を感じさせる箇所があった。
 それこそはウーラオスの膣の中に収められたペニスに他ならない。
 互いを愛しいと思うほどに、二人の局部は互いを愛撫し合い、果てには再び少年のペニスを固く屹立させつつあった。

 斯様にして胎内で再び起き上がってくるペニスに覚醒を促されては、ウーラオスもまた覚醒を果たし、重く疲弊した肉体を置く上がらせる。
 そこから見せつけるようにして片足を持ち上げ、依然繋がったままの局部を組み敷いた少年に晒すと、ウーラオスは完全に身を起こしては都合していたペニスを膣から抜いてしまった。
 そしてその傍らにおいて四つん這いに新たに体位を取り直すと──今度はその巨尻を少年へと向けては誘う様にそれを小刻みに振った。

 周囲の毛並みが濡れそぼった局部はさんざんに中出しをされて精液の溢れかえて膣口は元より、その上に鎮座する薄紅色の肛門の蕾に至るまで霰もない姿をそこに晒していた。
 それがキレ良く振られることと、さらには新たな挿入を迎え入れるべく内部から膣壁の粘膜を開きだしてきては、放屁さながらの空気を含んだ水音を奏でて精液をまき散らす眺めを目の当たりに──少年の欲情は一気に最高潮へと熱し上げられる。

 横たえていた身を跳ね上がらせると、そんな巨岩の如きウーラオスの尻の前に陣取る。
 そして荒々しく尻の房に両掌をおいて無遠慮にそれを握りしめるや、少年は彼女の膣へと今度は後背位からの挿入を果たすのだった。
 四つん這いからそれを受けた瞬間、ウーラオスは快感のあまり目の前に星が散るのを感じる。

 ポケモン以前に一動物であるところのウーラオスにとってはこの姿勢こそが『交尾』であり、そして子を生す為の行為であるのだ。
 そんな本能に立ち返った肉体と脳は今まで以上にその感度を高めては全身全霊で体内を暴れまわるペニスの躍動に集中する。
 そしてそれを打ち付ける少年もまた死に物狂いで持てる力の全てを振り絞っては、文字通り体当たりのピストンを敢行していた。

 今まで試した体位の中でも今のこれが最も力を込めて打ち込める姿勢であった。
 体格差のあるウーラオスの尻はまさに巨岩の如くに立ちふさがり、少年は熱を帯びたそれを持ち上げんばかりに広げた両腕で抱き込んでは体を打ち付けた。
 この段に至ってはもはや交尾を超越した決闘に他ならない様相を呈している。
 少年の鍛えた肉体から繰り出されるピストンと、小さいながらも体躯の全体がぶつかってくるそれはその一打ちごとにウーラオスの意識を朦朧とさせた。

 一方でウーラオスとても、腹腔に力を込めては膣壁を収縮させて絞り上げ、さらにが打ち付けるピストンに合わせ自身からも尻を突き出させては、そこにて少年を打ち弾かんばかりの反撃を試みる。 
 打ち返されるウーラオスの臀部に横面を打ちすえられながらも少年は必死の体でくらいついてはペニスによる打ち込みを繰り返す。
 やがてはその一線の中において、二人はほぼ同時に絶頂を予感してはその動きを怯ませた。

 しかしながらここが勝負どころであることは二人とも心得ている。
 そのラストスパートとばかりに、持てる力を以て二人の弾けあうピストンは速度を増した。
 膣から溢れる愛液は一層に粘度を増しては白く泡立っては打ち付けられる腰同志に弾かれて飛散し、一方でペニスから漏れだした腺液は膣の奥底へと浸透しては子宮口を刺激する。

 肉同士のぶつかり合う鈍い地響きを生じさせながら打ち合っていた二人の腰元が一際強く、そして深く合わさったその瞬間──期せずして少年とウーラオスは、同時の絶頂を迎えた。

 先の二回に負けぬエクスタシーに打ち震えては、ウーラオスも地へ横顔を押し付けては失心寸前の体で身を震わせ、そして少年に至っては本日最大の量の……もはや排尿に近い勢いで三度目となる射精を彼女の膣の奥底へと果たしてしまうのだった。

 しばし互いに硬直したまま、送精とそしてそれを受け入れる膣壁のうねりを互いに堪能する。
 やがてはそれら動きも緩やかとなり、ペニスの怒張も自然に解けると──少年は僅かに腰を引いては抱き着いていた尻から体を離した。
 途端、空気の逆流と、さらには脱力の為されたウーラオスの膣からは水道の放水さながらに少年の精液が逆流した。

 足元に大量の液だまりを作るその膣へと、何を思ったのか少年は指先など挿入しては小刻みに撹拌などしてみせる。
 やがては水飴よろしくに指先や拳の周りに彼女の愛液と撹拌された精液を存分にこびり付かせると──少年はそれを地に横顔を着けたウーラオスの口元へと運んだ。

 依然として絶頂の余韻から抜け出せずに、鼻孔から垂れる洟すらも意に介さず脱力し切ったウーラオスの鼻先へとその手を運ぶと……彼女はそれをひと嗅ぎするや、餓えた獣のよう少年の拳を咥え込んでは口中にてそれを存分にしゃぶり尽くす。

 やがてはその様に興味をそそられてはペニスも差し出せば、案の定に彼女は一切の抵抗もなくそれを咥え込んでは赤ん坊のように舐めだす。
 それにて勃起を促されると、以降はここまで行われてきた行為の繰り返しであった。


 二匹の獣はいつ果てるともなく、興味の赴くままに互いの肉体を貪り合うのだった。
 



*エピローグ [#jabf0a65]


 次に目覚めた時、ウーラオスは視界に入るその光景に安堵と温もりを覚えた。

 見上げるそこは変わらぬ寝座の洞穴内であり、そしてそんなウーラオスを緊張した面持ちで見下ろしていたのは誰でもないあの少年であった。
 何処か不安げにも見えるその気遣わしげな表情には、昨日まで自分を仇と定めては挑んできていた鬼気迫る気配など微塵もない。
 この表情こそが誰でもないこの少年の本来の姿なのかと思うと、ウーラオスは無意識に右手を掲げてはその頬に触れてしまった。

 一方の少年とてもそれを否定するような真似はしない。
 頬に被せられるウーラオスの大きな掌を包みこむよう自身の手も重ねると、後は穏やかに瞳を閉じてはその手の平に身を委ねるのだった。

 斯様な少年の仕草を愛らしく感じていると途端──肉体には電流さながらの鋭い痛みが走ってはウーラオスに無意識の呻きを上げさせる。
 言わずもがなそれは、先の少年との対決において負った負傷であり、この一事からもいかに少年の連撃が凄まじかったが窺い知れるようであった。

 そんなウーラオスを再び労わってはその負傷のひとつ撫ぜながら、少年は独り言つるよう己のことを騙ってくれた。
 人の言葉など皆目見当もつかないはずのウーラオスであっても不思議と少年の声は胸に染み込んで、言葉だけでは名状しがたい心情や過去の情景をまるで映像に映すかのよう理解するのだった。

 それは短いながらも今日までを生きてきた少年の半生を綴るものだ。
 親代わりであった師をウーラオスによって殺されたことの衝撃と、平和であった日常が崩壊することの恐怖……その多大な喪失感で壊れそうになる幼い精神を支える術は、その仇たる彼女を憎むことでしか補えなかった。

 されど非力な自分に歯噛みしながら敗戦を重ね、その都度に肉体を弄ばれることを居た堪れなく思う反面──一方でウーラオスからの施しに心を絆されている自分にも気付いては強い困惑を覚えた。
 そしていつしか少年は彼女のことしか考えられなくなる。
 それは彼女との対戦の反復であり、それを繰り返し脳内で反芻することにより少年は自身の欠点を克服していく訳ではあるが……その実、ウーラオスとの触れ合いは少年にとっても大切な時間へと変わり始めていたのである。

 彼女の声、仕草、戦いでの立ち居振る舞い……そして勝負後に施されるペニスや全身への愛撫の様を思い起こした時、幼い体は身の置き場も無いほどにウーラオスを愛しく思い、少年の胸を苦しくさせた。
 仇であるはずのウーラオスに対し、事もあろう少年は恋心を抱いてしまったのである。

 当所はその事を恥じた。
 復讐を忘れ、敵に絆されるとはなんたる侮辱かと……。
 しかしながら、後に『ウーラオス』という種の有り様を理解するにつれ、そんな凝り固まった少年の考えもまたほぐされていく。
 そうしていつしか少年の中から──歪んだ復讐心は消えていた。

 日々の鍛練の中でこれ程までに肉体を磨きあげ、そして立ち会いの術理を極めたウーラオスへと半ば尊敬に近い念を抱くようになる。
 その頃には彼女はもはや『討ち果たすべき対象』などではない、『越えるべき存在』として少年の中では確立されていった。

 そして今日──その本懐は果たされたのである。

 それらを打ち明けられ、ウーラオスもまたこれが別れの言葉であることを理解する。
 友もそうであったが、去り逝くものを繋ぎ止めておくことが出来ぬことはポケモンである自分とて理解はしている。

 出会いとは、何らかしらの役割をもって遣わされること……そして別れとは、その使命を終えたことを意味する。
 今この瞬間、二人は互いの使命を終えたのだ。

 思えば長いようでなんとも短い数年であったように思う。
 立つこともままならなかった子供が今、自分を越えてここより旅立とうとしているのだから。
 ならば最後の瞬間は笑って送り出してやろうと、今一度ウーラオスは少年と視線を合わせた。
 しかしながら運命は、思わぬ方向へと彼女を導くこととなる。
 少年はまっすぐにウーラオスを見つめたまま、

『ウーラオス、一緒にこの森を出て俺達よりも強い奴らを見つけに行こう』

 少年の出発点とは謂わば、自分よりも強いウーラオスへと挑むことから始まった。
 そしてそれを目標に日々の鍛錬を重ねる生き様はやがて、少年の人生における基本的な信念へと昇華するに至る。
 この人生の始まりが闘い挑むことによって始まったのならば、これを歩むうちは常に挑戦し続けていたい──それこそが今の少年の生きる道であり、そしてそのパートナーにウーラオスは選ばれたのだ。

 それこそは思いもよらぬ提案であった。
 ウーラオスにしてみれば今日までの生において微塵も考えたことも無かった発想である。
 今日までの彼女にとって、戦うことはただ自分の存在意義を維持するだけの手段でしかなくそれ以上も以下もなけれなば、それこそは過去も未来も無くただ現状にしがみ付くばかりの行為であった。

 しかしながら目の前の小さな勇者はそこへ『明日』を見出していた。
 戦うことによって進むというこの発想は、今日までウーラオスに挑戦し続けてきた少年だからこそのものであるのだろう。
 それをウーラオスにも持ち掛ける少年に対し、最初は何を馬鹿なことをと思ったウーラオスではあったが……徐々に彼と共にまだ見ぬ強豪達へと挑戦する自分を思い描いた時、様々な感情が彼女の中に渦巻いた。

 それは恐怖や不安であり、途方に暮れるような漠然とした逡巡ではあったがしかし──同時にそこへ飛び込んでいくことへの期待と希望もまた沸々とウーラオスの胸中には湧き上がってきていた。
 そんな心境の変化の理由には、元より試練に身を晒しては強さを獲得していくポケモンであることの性質も大きく影響していたが、何よりもそれを誘ってくれたのがこの少年であることも大きかった。

 彼とならどこにでも行ける──どこまでも強くなれる──そんな確信がウーラオスの中にはある。
 事実二人は、今日のこの瞬間を分かち合えるまでに成長したではないか。

 既に答えは決まっていた。それどころかまだ傷の痛み体であってももう、ウーラオスはいてもたってもいられなくなっている。

 やがて跳ね上がるようにして体を起き上がらせるや、ウーラオスは傍らの少年を抱きかかえた。
 そしてそのまま寝座を飛び出るやそのまま走り出す。
 駆けだしながら少年を肩車に担ぎ上げると、少年もまた頬を薙ぐ風に向かって雄叫びを上げた。


 これよりは二人の新しい物語の始まりである。
 まさに今ここに、二人の格闘家による伝説が幕を開けたことをしかし──……


 伝説の当人達はまだ、微塵も知る由は無かった。
 









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