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【11】三擦り半のマスカーニャ の履歴(No.8)


【11】三擦り半のマスカーニャ

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たつおか



 この作品には以下の要素が含まれます。


【登場ポケモン】  
マスカーニャ(♂)
【ジャンル】    
BL・ゲイ・ショタ
【カップリング】  
少年トレーナー(♂) × マスカーニャ(♂)
【話のノリ】    
軽め・ギャグ

(※ 作中の画像はPony Diffusion V6 XLにより生成されています)






目次




第1話・ゴミあさり



 相棒だったニャローテがマスカーニャになってからというもの、こいつは困った癖をひとつ覚えてしまった。
 それこそは『ゴミあさり』であるのだが、僕を悩ませていることの本質はそこじゃない。
 ……マスカーニャはこともあろうか、僕のオナニー後のティッシュを漁るのだ。

 最初、ゴミ箱の傍らに座り込んでいるマスカーニャを見つけても、別段その時は不審に思うこともなかった。
 ニャローテ時代からこいつのイタズラ癖は知っていたことだったし、何かに夢中になって大人しくしているということ自体も珍しいことではなかったからだ。

 それでもしかし、あまりにも微動だにせずうつむいているその姿にようやく僕も嫌な予感を覚える。
 思えばこのイタズラッ子がジッとしている時は決まって何かイタズラをしている最中なのだ。

 今度はいったい何をやらかしているものか……大事になる前に、その内容だけは把握しておこうとマスカーニャの手中を覗き込み──僕は戦慄した。

 すぐには最初、マスカーニャが何をしているのか分からなかった。
 両掌の中に収めたティッシュ屑を鼻先に押し付けては恍惚としているその姿は、一見したならさして重大なイタズラをしているようにも見えなかったからだ。
 しかしそのティッシュの正体が何かを考えるうちに……僕はある事実に気付く。

 それは昨晩、就寝前にオナニーをした事実であった。
 いつも通りにその日課をこなし、さして考えも無くティッシュ屑をゴミ箱に放り込んでそのままになっていた。
 そして今、マスカーニャはゴミ箱の前でそこから取り出したであろうティッシュ屑に鼻先を埋めている。そんなコイツが今、匂いを嗅いでいるものの正体とそしてその行動の意味を知り……──



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「何やってんだ、お前は!」

 ようやくにその戦慄から脱した僕は、叫ぶと同時にマスカーニャの手からティッシュ屑を奪い取った。
 それを取り上げられたことで我に返ると同時、当然の権利を奪われたような抗議の低い唸り声を上げるマスカーニャ。
 それでもしかし、

「バカなことやってんじゃない! お前は本当にッ‼」

 僕の怒号とその激怒の勢いがこいつを圧倒した。
 嫌悪と、さらには恥ずかしさも相成って僕の声はいつも以上に感情的になる。
 その今までに中てられたこともないような怒気に、最初こそ抗議の意を示したマスカーニャも思わず怖気づいては首をすくめるばかりだった。

 しばし支離滅裂にマスカーニャを罵倒し、それでもまだ感情が収まらない僕は有無を言わさずにコイツをモンスターボールに戻してしまった。
 突如として訪れる静寂の中、高揚していた頭と感情が収まると、僕は言いようのない罪悪感に囚われてはその場に頽れる。

 いざ冷静になってもマスカーニャの行動の意味が理解できなかった。
 こんな物の匂いを数分間も夢中に嗅いでいたあいつの考えが理解できない。

 ポケモンだって生物ではあるのだから、もしかしたら最終進化後に『性や出産に興味がわいた』ということも考えられなくは無かったけど……あいにくとうちのマスカーニャは オス(♂) であるのだ。

 メスならば生殖を意識するからと無理矢理な説明はついても、オスたるうちのマスカーニャが、種族こそ違うものの同性の精液に興味を持つ理由は説明が難しい。
 結局その日はまともな思考などは続かず、とりあえず念入りに今取り上げたティッシュ屑や、そして部屋中のゴミを纏めるとふて寝する様に眠りについた。

 翌日、一抹の気まずさを覚えながらもマスカーニャをモンスターボールから出す。
 そしてコイツを外に出してからしばし……僕達は固まってしまった。

 パートナーを組んで以来、最大級といっても過言ではない説教をした翌日とあってはマスカーニャも怯えているのではないかと心配もしたが、以外にも僕と視線を結んだマスカーニャは平然としていた。

 もっとも、叱られた後に見せるどこかこちらの出方を伺うような上目遣いではあったから、自分がマズいことをしてしまったという自覚はあるらしい。
 その様子に本来であればもっと反省を促したい気分でもあったけど、むしろこのいつもと変わらない態度は僕にしても有り難かった。

「いいか、マスカーニャ? ゴミあさりなんてもうするなよ? こんな行儀悪いマネは許さないからな」

 いつものようにイタズラを窘めると、マスカーニャもまたいつものよう僕に抱き付いては反省と誤魔化しを込めた抱擁で体を擦り付けた。
 これにてこの問題は解決した──……と、その時は思い込んでいたが、今にして思えばこれこそが始まりだったのかも知れなかった。

 この時からそう遠くない未来で僕達は、ポケモンと人間の一線を越えてしまうのだから。




第2話・盗みグセ



 下着が少なくなっている……正確にはパンツが明らかに足りない。

 普段から4枚のそれでローテーションしているはずが、今では現在履いているものと合わせても2枚しか残っていなかった。
 とりあえずは洗濯して干してあった一枚を手に取ると僕は風呂に入る。

 湯船につかりながらそれとなく無くなった下着のことなど考えてみる……もしかしたら干している時に飛んでしまったり、はたまたどこかに紛れてしまっているのだろうか? ──そんなことを取り留めなくも考えていると、ふとガラス戸の向こうに何かの影が差すのを感じて僕はそれを目で追う。

 曇りガラス越しにも分かる緑のシルエットは紛う方なきマスカーニャだ。
 何をしに来たものかと観察していると、やがてアイツはその場に屈みこむ。
 それからそのシルエットのまま微動だにしなくなるマスカーニャ……おそらくは何かを物色しているのではあろうが、その時になって僕の脳裏には一連の下着紛失と、そして今のマスカーニャの行動が一致したような気がした。

「もしかして……」

 思わずつぶやくと、視線の先でマスカーニャは立ち上がりそそくさとそこを後にした。
 それを確認し、僕も急いで湯船から上がるとバスタオルだけを腰に巻いて浴室を後にする。
 リビングに出るとそこには誰の姿も無かった。……しかしながら僕は知っている。マスカーニャがプライベートな空間を過ごす場所を。

 廊下に出ると、そのまま突き当りにある収納の押し入れに視線に走らせる。案の定、ドアが半開きになっていた。
 なかば一連の事件のオチを想像しながら近づき、そして勢いよくそこのドアを開け放つと──そこにはほぼ同時と言ってもいい反射神経で振り返るマスカーニャが僕を見上げた。

 目が合ったがその一瞬、僕は目の前にいるそれが自分のマスカーニャだとは気付けなかった。
 顔が変わっている、と思ったからだ。しかしながらその理由もすぐに分かった。

 マスカーニャは僕のブリーフのクロッチが鼻先に当たるよう、覆面よろしくにそれを被っていたのであった。
 本来は両足を通すはずの開口から覗く両目が驚愕に見開かれているその様──大真面目な表情でパンツを被っているというマヌケさに一瞬僕も吹き出してしまう。
 ポケモンを躾ける場面において、トレーナーが笑うことなどあってはならないことだ。事実、目の前のマスカーニャも依然としてパンツの両穴から覗かせる両目にぎこちない笑みを浮かべる。
 
 誤魔化せるとでも思っているであろうが、しかしこれはこれ。
 次の瞬間には僕のゲンコツが真上からマスカーニャの脳天を打ち据えた。
 猫特有の声音を汚く滲ませながら痛みに耐えるマスカーニャ。

「バカかお前は!」

 言いながら僕もマスカーニャの顔から自分のパンツを剥ぎ取る。
 コイツの体温と籠る吐息とでパンツが暖かくなっているのが妙に生々しい。

「この間のティッシュといい、お前すこしおかしいぞ!?」

 そうして叱りつけながら、ふと屈みこむマスカーニャの足元に目を凝らせば……そこには無くしたと思っていた残りのパンツやら僕の靴下やらが散乱していた。
 件の無くし物……否、『窃盗事件』の犯人はこいつだったのだ。
 しかしながら同時、そこにまた別の物を見つけて僕は息を飲んだ。

 屈む猫よろしくに両ひざを折って座るマスカーニャの股間には──勃起したペニスが屹立していたからであった。

 その光景に思わず凍り付く。
 怒張した他人のペニスだなんて見る機会などはまず無い。……否、まともな人生ならおそらくは一生涯目にすることもないだろう。
 しかしながら僕はそれをいま目の当たりにし、しかもその相手はパートナーポケモンであるのだ。……加えてコイツの体にそんな変化を引き起こさせてしまっているものが、僕の下着とあっては笑い話にもならない。

 その状況にどう反応したものかただ立ち尽くすボクの足元を抜け、マスカーニャは一目散にそこからの脱出を図った。

「──あ、コラ! まだ話は終わってないぞ!」

 振り返りその跡を目で追うも既にマスカーニャは廊下を走り切り、リビングに逃げ込む瞬間の尻尾の残像を捉えるばかりだった。
 しばし僕はその場に立ち尽くす。

 先日の僕のオナニーティッシュを嗅いでいた行為といい、今の僕の下着を堪能しては股間を大きくさせていたことといい、もはやアイツの行動はその全てが常軌を逸していた。

「ポケモンってみんなこんなものなんだろうか……こういうのってポケモンセンターで相談して良いのかな……?」

 その場に立ち尽くしては腕組みに考え込んでしまう僕は……今後どうやってアイツに接したらいいのかを深く思い悩んでしまうのだった。



第3話・立つなマスカーニャ



 マスカーニャとポケモンセンターへ向かうすがら──僕達は辿る道の先に何者かポケモンの姿を見つけた。

『誰だ?』と目を凝らす僕達同様に、遠いシルエットのポケモンもまた身を屈めては彼方からこちらを注視している。
 やがて向こうが先に僕達を特定するや、そのポケモンは足取りも軽くにこちらへと駆け出した。

 凄まじいスピードで瞬く間に辿り着くと、そのポケモンはこちらが確認するのも待たずに僕を胸の中に抱き込んだ。
 青い羽毛のふくよかな胸元に顔を抱き込まれながら、僕は件のポケモンがウェーニバルであることをようやくに知る。

 親密に、そして僕に会えたことがよほど嬉しい様子で何度も抱き直しては額も押し付けてくるウェーニバルにもしかし……僕にはこのポケモンの素性が皆目見当もつかない。
 元よりテンションの高いポケモンであることは知っていたから、もしかしたら人違いをしているのではないかとも考えたその時──僕の脳裏にとあるポケモンの姿が浮かんだ。

「も、もしかして……お前、ウェルカモか?」

 息継ぎするように胸の中から顔を上げては確認する僕の声に、さらにウェーニバルの表情は喜びの輝きを増した。

 どうやら間違いはなさそうだ……このポケモンは友人のパートナーポケモンである。
 一番最後に会った時はまだ子供然としたウェルカモであったから、今の格段に大人びた姿に僕は気付けずにいたのだ。
 
 そんな久しぶりの邂逅がよほど嬉しいのか、ウェーニバルはその後も様々な角度から体をすり寄せては僕に甘えた。
 しまいには臀部の形が触感で分かるほどに、尻を僕の股間に押し付けて歓待してくる様子に一方の僕は否が応にも冷静になっていく。……そもそもコイツってこんな性格だったっけか?

 そんな矢先、傍らで事の始終を見守っていたマスカーニャが、突如として短い威嚇の声を発するや、勢いよくウェーニバルの尻をひっ叩いた。
 それに驚いては両手で臀部を覆っては跳ね上がるウェーニバルは実にコミカルで、かつ能動的だ。

 ようやくにウェーニバルが僕から離れると、今度はマスカーニャが僕の膝元へと屈みこんだ。
 そうして今しがたまでウェーニバルが尻を押し付けていたそこを一嗅ぎするや……あからさまに嫌悪に苦味走った表情を浮かべるマスカーニャ。
 そして次の瞬間、マスカーニャは僕の股間へ何度か唾を吐きつけたかと思うと──あとは力の限りにそこを掌にて擦り始めるのであった。

「う……──うおあああああ!? なにすんだー!」

 そのあまりの突拍子もない行動と、そして力任せに行われる行為の激痛に思わず僕のゲンコツがマスカーニャの頭に落ちる。
 それでもしかし、今日のマスカーニャはそんな痛みにも一切動じない。
 何度も首の角度を変えては覗き込む位置を直しながら、僕の股間を磨く行為に熱中していく。

 その衝撃に立っていられなくなり、ついには仰向けに倒れる僕にもしかし、マスカーニャも猛攻の手を緩めない。
 天を突くように尻をつき上げては鼻先を突き付けると、地に寝そべる僕の股間を更なる執拗さで責め立てていくマスカーニャ。

「やめろぉー! うわああぁー‼」

 ついには声を上げてマスカーニャの頭をワシ掴むそんな僕達に……

『相変わらず仲いいな、お前達は』

 聞き慣れた声が掛けられる。
 背後からのそれに反応しては振り返るマスカーニャの後ろにいたのは──誰でもないウェーニバルのパートナこと、友人のトトであった。

『久しぶり。元気だった?』
「はぁはぁ……よくこれを見てそんな挨拶できるな……」

 歩み出ては手を差し伸べてくれるトトに引き起こされながら僕も大きくため息をつく。……まだポケモンセンターにつく途中で良かった。
 型通りに近況を報告し合うなどして挨拶を交わすと、暫しして僕は今日のアポを取った本題をトトに切り出していくのだった。

 それは今日に至るまでのマスカーニャの奇行についてだ。
 行動が行動だけに、それを聞くトトには引かれるか、あるいは僕やマスカーニャに侮蔑の視線のひとつでも送られるのではとも覚悟したが……

『別にいいんじゃない? お前のことが好きなんだろ?』

 返されたトトの応えは、拍子抜けするほどにあっさりとしていた。
 無理にこちらの心情を慮って平静さを装っているだとか、そういった気遣いは伺えない。……トトは心底からそう思っているらしかった。

『お前にとっては数あるポケモンの一匹かもしれないけど、マスカーニャにとっては世界に一人のパートナーなんだから、ちょっとはお前も譲歩してやれって』

 そう結ばれて、僕は完全に言葉を失う。柄にもなくトトの言葉に感動してしまった。
 チラリと傍らのマスカーニャを見遣れば、今はすっかりウェーニバルと意気投合してはニャゴニャゴと何か談笑をしている。時折り、縦にした拳を上下に振るなどジェスチャーを交わしながら話す二匹はとても楽しそうだった。

 昼食後にトトと別れ、俺達は並んで帰路を辿った。
 家について玄関をくぐっても、トトの言葉は頭の中を回っていた。

「世界に一人のパートナー、か……」

 そんな台詞が思わず漏れる。
 たしかにこのマスカーニャは、世界でただ一人『僕』だけが受けとめてやれる存在だ。
 この先、相当に躾けも必要とはなるだろうが、それでもコイツのことを理解し受け止めててやろうと僕は思った。

 そんな腹を決めた僕へとマスカーニャは短く声を発しては呼び掛けてくる。
 いったい今度は何を申し出てくるつもりだ? 気持ちも新たに顔を上げる僕ではあったが──斯様な決意は早くも崩れ去ろうとしていた。


 目の前には、これ以上になく勃起させたペニスを重たそうに両手で抱えるマスカーニャが……腺液の先走るその切っ先を僕の鼻先に突き付けていたからである。




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第4話・精通



 もはや『第三の脚』然とした巨大なペニスを勃起させては立ちはだかるマスカーニャ……そのあまりに絶望的な展開と迫力に気圧されて、思わず僕も尻もちに座り込んだ。

 瞬間、脳裏に浮かんだ自分の未来はこのままマスカーニャにレイプされてしまうというもの……。
 常日頃のポケモンバトルにおいても、自分以上の体躯や体重のポケンモンを相手にしているマスカーニャにとっては、こんな僕を組み敷くくらい赤子の手をひねるにも等しい容易さだろう。

 それが分かるからこそ既に身動きがとれなくなっている僕は、逃げることも能わずにただ次なる衝撃に備えるばかりではあった……が、いつまで経ってもマスカーニャが僕を襲うことは無かった。
 それどころか座り込む僕に鼻先を寄せると、短い鳴き声繰り返しては懸命に何かを訴えかけてくるのだった。

 何やら様子が変だ。
 そうして改めて観察してみれば、マスカーニャも依然として両手の中に勃起したペニスを収めたまま途方に暮れているといった様子……。
 この勃起自体がコイツにとっては不慮の出来事だったのだと、ようやく僕も気付く。
 そしてそれに気付くと脳裏には、つい先ほどウェーニバルと過ごしていたマスカーニャの姿が思い出された。

 握り拳を縦にしては上下に激しく振る動きを繰り返していた二人……もしかしてアレは、ペニスをしごく行為をウェーニバルが入れ知恵していたのではないか?
 そしてマスカーニャは興味本位にそれを実践し、ペニスに血流が巡ってしまった──と、いうのが事の顛末だ。
 同時に、

「……なんでアイツ(ウェーニバル)がそんなこと知ってるんだ?」

 そんな当然の疑問も沸いたが、それも些末なこと。今はただ、このマスカーニャをどうにかして鎮めてやらねばならない。
 そしてその対処法として僕が思いつく方法は一つしかなかった。

「マスカーニャ……僕の膝に座れ」

 尻もちをついていた姿勢を胡坐に直し、改めて僕は膝の上を叩いてはマスカーニャに座るよう促す。
 こんな状況ではあるがその一瞬、マスカーニャはさも嬉しそうに瞳を輝かせた。
 そうして弾むように体を伸ばして背を僕に向けると、よもや突き出した尻が僕の顔面を突き飛ばしてしまうのじゃないかと思う勢いで、組んだ両脚の隙間へと収まった。

 直立姿勢においては僕よりも頭2つは背の高いマスカーニャとあってはもはや、僕の膝など完全にサイズ違いの椅子も甚だしい。
 それでもしかし両膝を揃えて腰かけた姿勢のまま、しばしマスカーニャは背後の僕に背をもたせると甘えた声のひとつも奏でた。
 同時にコイツがスカーニャになってから、こうして膝に座らせたのも初めてであることに気付く。

 今さらではあるがコミュニケーション不足であったことを反省せずにはいられない。
 思えばこうした触れ合いが無くなったことこそが今一連の事件の真相のようにすら思えてくる。
 そしてその事件解決の集大成として、これから僕は最大級のコミュニケーションでコイツに触れようとしている……。
 コイツを膝の上に置いたまましばし躊躇したものの、意を決し背後から手を伸ばすと──僕はマスカーニャのペニスを右手の中に握りしめた。

 瞬間、マスカーニャは針で刺されたかのよう背を反らせて反応すると、同時に怯えに戸惑うような高い声もあげた。
 右手に感じるマスカーニャのペニスは硬く、そして重かった……加えて皮膚の一枚下に感じる体温は焼けた鉄さながらの灼熱感である。

 そんな感触に戸惑いつつも二度三度と握り直してはポジションを確認すると──いざ僕は、マスカーニャのペニスをしごき始めた。

 動き始め、包皮越しに陰茎が刺激される感触にマスカーニャは何度も声を上げては身じろぎをする。
 今まで排尿以外ではまともに触れたこともなかった箇所への感覚がくすぐったいのか、膝の上で右に左に身をよじるその状態は、まるで巨大な魚でも抱えているかのようだ。

 しばしそうして暴れるマスカーニャを御する様にしごき続けていた僕ではあったが……ある時を境に、そんなマスカーニャの動きはぴたりと静まった。
 それとなく背後から様子を窺えば、そこには小刻みに鼻息を切らせながら時折り窄めた口先から野太い声を漏らしているマスカーニャの姿が在った。

 その顔に表情らしいものはすでに無く、前方へ遠い視線を投げかけては口角から垂れるヨダレすらも意に介していない。
 その様子からも、マスカーニャがペニスを巡る快感に全神経を集中させていることが窺えた。

 ならば『その時』は近いのだとも察知し、僕は傍らにティッシュを探す。……が、あいにくと見渡せる範囲にそれは確認できなかった。

──しまったぁ……どうしよう?

 この段に至り、こんな基本的な準備もしていなかったことに気付く。
 今さら中断して探しに行くわけにもいかない……ならば、と僕も覚悟を決めた。
 僕はそれまで手持無沙汰だった左手もまた伸ばすと、その掌をマスカーニャのペニスの先端へと被せるように宛がった。

 その瞬間、包皮から剥きだされている粘膜への刺激にマスカーニャも声を高くさせる。
 溢れ出した腺液はもはやおしっこでも緩やかに漏らしているかのよう溢れ続け、それが音を立てて僕の掌で撹拌されては、潮気を思わせる独特の香りを辺りに充満させた。

 そしてその時は、唐突に訪れた。

 ある瞬間で突然に背を丸めたかと思うと──マスカーニャは一切の前置きも無しに突如として射精をした。
 今までにこうした経験をしたことのないマスカーニャにとっては、本人自身からしてもこの瞬間は唐突で、なおかつ衝動的なものだったのだろう
 ペニスの先端に宛がわれていた僕の左手を体内取り込むよう抱きしめると、何度も尿道を収縮させては射精をした。

「熱湯みたいだな……」

 一方でそんな精の奔流を受け止める僕も、それが打ち付けられる左手に焼けるような感触を覚えていた。
 マスカーニャの精液は瞬く間に僕の小さな手の平を埋め、やがては指々の間からしみ出しては甲や爪の先までも包み込んでいく。

 電気刺激でも受けているかのよう、射精のごとに背を引くつかせては震えていたマスカーニャではあったが……やがてすべての射精を終るや、今度は一変して体を伸ばし、脱力させた背をリクライニングシートよろしくに僕へ預けてくるのだった。



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「重いよマスカーニャ。終わったんならもうどいてよ、手や床も拭かなきゃいけないんだから」

 そうしていつまでも事後のリラックスに浸り続けるマスカーニャへ声を掛ければ、一方のコイツも疲労に蕩けた流し目で僕に一瞥くれる。
 そして互いの目が合うや──まるでニャオハ時代に戻ったかのよう、体の向きを変えては正面から抱き着き、鼻や額を問わずにキスをしては存分に僕の顔を舐るのだった。

 こうなってしまってはもう、どんなに声を掛けてもマスカーニャの耳にそれらは遠い。
 もはや一切の注意も今は無駄なことを悟ると、僕もまたマスカーニャの後戯に身を委ねる。

 そうして鼻の穴や唇を問わずに愛撫され続けながら、今後もまた『こういうことはあるのだろうか?』などと考える。


 そしてその都度に僕はマスカーニャの世話をしては、事後にこうして舐られ続けるのだろうか………なんてことを考えると、マスカーニャの充実感とは裏腹に僕の気持ちはどこまでも沈んでいくのだった。




第5話・オカズ



 ようやく自分でオナニーが出来るようになってマスカーニャは僕の手を離れた。
 僕の介助が必要だった最初の数回は、二人ともコイツの精液でドロドロになることも多々あったから、そのことを思い出すと何とも感慨深くなる。

 しかしながらそうなってくると、新たな問題もまた持ち上がる……それこそは、マスカーニャの『オカズ問題』だ。

 僕たち人間はエッチな本やビデオといったアイテムが存在するが、ポケモンにはそういったものがあるのかどうか分からなかった。
 試しに僕が隠し持っていたビデオやそういった媒体の物をいくつか見せてみたが、やはりというかマスカーニャは、男優の体に興味を示すばかりで一向に性的鑑賞としての価値を見出すことは無かった。

 何か無いものかと悩んだ挙句、いたずらに『ポケモン オナニー AV』なんて検索してみると……なんとヒットした!
 しかもそのジャンルには実に多種多様な種類のポケモンが用意されていたのだ。
 その中に『マスカーニャ』もまた発見した僕はこれが解決になればと思いさっそく購入する。……が、しかし。
 後日確認するに、その中身のあまりのクソさに僕達は愕然とするのであった。

 始まって最初の数分はリアルな♀マスカーニャがビデオの中で天真爛漫に踊ったり、はたまたバトルする姿が描かれていた。
 こうした女優……もとい『モデル』に選ばれるくらいだから、そのマスカーニャもなかなかに綺麗な個体に感じられた。

 そうしてビデオ中盤において、ようやく♀マスカーニャのエッチなシーンが展開されるかと思いきや──突如としてそのモデルは無味乾燥な『人形』へと置き換えられた。
 何かの比喩や例えなんかじゃない。
 文字通りの人形、布製のマネキンに挿げ替えられたのである。

 あとはそのマネキンが黒子役の人間の手によって操られ、交尾の真似事を延々と繰り返し、半ば唐突に『END』が画面に表示されて終わるというのがそのビデオの内容だった。
 あっけにとられるマスカーニャと怒り心頭の僕。4000円もしたんだぞコレ!

 苦情のひとつも入れてやろうと制作会社について調べ始めた僕だったが、直後に意外な事実もまた知ることとなる。

 というのもこのポケモンAVというもの自体、表に流通する正規品は皆一様に『ぬいぐるみによる代替交尾』がセオリーであるらしかった。
 本物にそれを強いてしまうと、それは『虐待』として法に触れるとのことだ。
 ポケモンといえども一個の人格を持った『個人』であり、そんな『人権』を認めているからこその対応であるらしい。

 でもそれを言ったらこんなビデオを製作販売する時点でもう、その理念や法とやらは破綻しているのではないだろうか?
 ともあれ少しお高い勉強代であったと諦めるしかない。

 そうして問題は振出しに戻る──うちのマスカーニャのオカズをどうしてやるかだ。

 この問題は中々に切実で、何かの拍子に勃起したはいいものの、結局は抜くこと能わずに失敗というシーンがうちのマスカーニャには幾度もあったからだ。
 その時には強い欲求不満と疲労とが蓄積されるようで、そうなると半日は寝たまま動けない。
 
 性欲をある程度コントロールできる僕たち人間と違い、動物に近いポケモンの性的衝動はそれの発散が叶わなかった時に想像を絶するストレスとなって心身へと負荷をかけるようだ。
 事実オナニーの失敗が続くマスカーニャなどは、明らかに毛艶がくすみ、バトルにおいても集中力の低下などの精細を欠くといった有り様である。

 どうにか出来ないだろうかと僕なりに考える。
 そうしてマスカーニャの好きな物を考えるうちに、僕は『ある物』の存在に気付くのだった。

 はたして『コレ』はオカズとして成立する物であろうか?
 本来はそうした用途には使われないはずのアイテムではあるが、この際試せるものは何でも試してみようと僕はそれの使用に踏み切った。

 数日後、再度マスカーニャがオナニーに挑戦するのを見止め、僕もまたそのアイテムを渡す。

「……使い終わったら洗濯機の中に入れておけよ」

 渡している物の特異性は自分でも理解していたから、僕自身も後ろめたさというか得も言えぬ恥ずかしさがある。
 そんな僕からマスカーニャに渡した物とは──今しがたまで僕が履いていた下着(ブリーフ)を丸めたものであった。
 以前に僕の衣類を盗んでいたことを思い出しての試みではあったが……──その効果はバツグンだった。

 手渡され、それが僕のパンツであることを確認するやマスカーニャは激しくそこに鼻先を埋めた。
 くぐもったうなり声をあげては、まるで貪るように性器の当たる前面ポケットやクロッチといった匂いの強そうな箇所へと鼻先を押し付ける。……というか事実、口に含んでは唾液を介して味わったりもしていた。

 そうして見守ること1分もしないうちに、マスカーニャは最初の射精を果たす。


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 夢中になるあまりティッシュの準備すらしていなかったそれは、派手に吹き上がっては再び傍らの僕や寝室へ飛散する。

「っぷわ! 落ちつけマスカーニャ! ちゃんとティッシュ使え!」

 言いながら傍らから僕がティッシュを差し出すも、すっかり、夢中のマスカーニャは既に二回戦目へと突入している。
 結局は再びコイツのオナニーを介助してやることとなり……この日は抜かず4発とばかり、立て続けに4回の射精を経てフィニッシュとなった。

 すっかりマスカーニャの精液まみれとなった寝室を見渡しては僕も途方に暮れる。……これからこの部屋の掃除を始めるのか。
 そうして再び視線をベッドのマスカーニャへと戻せば、そこには一切のストレスから解放されたコイツが毛並みの色艶も良く、気持ち良さそうに眠りについている姿が目に入った。

「なに、寝てんだ! お前も掃除するんだよ!」

 その妙にすっきりした様子が腹立たしくなって、僕はマスカーニャの尻を思いっきり引っ叩いてやる。
 そうして深夜まで掃除に明け暮れながら、二度とコイツに僕のパンツは触れさせないと心に誓うのであった。



第6話・ゴックン



 先日のポケモンAVで失敗した経緯を友人にメッセージした。
 近況の報告と笑い話のネタにでもなればと思い送ったそれであったが、暫しして友人からはとある動画ファイルが一つだけ送られてきた。

「なんだこれ?」

 でたらめに半角ローマ字が並んだだけのファイル名からその内容を想像するのは難しい。
 とりあえず再生してみようとファイルを開くと、その読み込み中にマスカーニャが寄ってきては僕の膝に座る。

 先日オナニーを教えた時に膝へ座らせて以来、すっかり僕の膝はこいつの特等席になってしまった。今では食事の時ですらこいつは僕の膝の上でそれを摂る。 
 重くはないが僕よりも背丈の高いマスカーニャとあっては、膝に座られると完全に画面が見えなくなる。
 マスカーニャを避けるよう右に体をずらしてテーブル上のPCを見つめると、ちょうど動画が再生され始めたところだった。

 動画は簡素な一室のベッドに腰かけるサーナイトを正面から映したものだ。やや引き気味に撮ることで画面の中には膝を揃えて座るサーナイトの、やや緊張した全貌が収まっている。

 照明も薄暗く画質も安定しないことから、プロが撮影した物というよりはホームビデオといった印象が強い。
 はたしてこれは何を伝えたいものなのかと見守り続けていると、やがて画面には僕と変わらない年頃の男の子が登場し、そしてサーナイトの隣に座った。
 隣に男の子が座ることでベッドがきしみ、大柄なサーナイトの体が僅かに上下する。やがて二人は互いに見つめ合ったかと思うと──示し合わせたようにキスをした。

「んな……ッ!?」

 そんな展開に僕は思わず声を漏らす。同時に膝の上のマスカーニャもまた、大きく鼻を鳴らせては前のめりになった。
 その後ブラウン管の向こうで繰り広げられたもの──それは紛れもないポケモンと人間によるセックスの一部始終を記録したものであった。

 キス後は互いの性器を舐め合うペッティングへと移行し、やがては男の子が正常位にサーナイトの上へのしかかってはペニスの挿入をする。
 しばしサーナイトの甲高い嬌声が響き渡った後、男の子は感電したように痙攣してはサーナイトの上に力尽きて覆いかぶさる。

 その後は二人の結合が解かれ、サーナイトは正面のカメラに今しがた中出しされた膣が見えるよう膝を立てては足を開き、その姿勢のまま男の子のペニスをフェラチオして終わる──……といった内容であった。

 再生が終わると動画ブラウザのシークバーはまた0:00に戻り、画面は最初のサーナイトがベッドで座っている画面で止まったままになる。
 とんでもないものを見てしまったという後ろめたさと興奮とで、僕の心臓は喉から音が漏れているのではないかと思うくらいに高鳴っていた。
 しかしながらそんな自分のものだけだと思っていた心音がひとつではないことにも気付く。もうひとつの、確かに力強い鼓動は……僕の膝に座るマスカーニャからも伝わってきていた。

 そんなことに気付いた矢先、まるで僕の心中を察したかのよう突然にマスカーニャは背後の僕へと振り返った。
 流し目で僕を見遣ってくるその横顔は平素日頃の眠たげな表情と変わらなかったが、目元の毛並みの地肌は傍からにも分かるほどに紅潮していた。

 そうしてそんな視線に気まずさを覚えた僕が声を掛けるよりも先に……マスカーニャは座り続けた姿勢のまま、鈴のように尻を振った。
 同時に僕の股間には、痛みにも似たしこりが揺れ動くのが感じられる。何かと思い自分の股座を見下ろせば……僕のペニスは痛いほどに勃起しては、マスカーニャのお尻を圧迫してたのだった。

 先の動画に刺激させられてこうなったのには間違いない──それでも僕は今の自分が信じられなかった。
 人間とポケモンがエッチをする動画で興奮している事実は、仮にもトレーナーとしてポケモンを導く資格が、僕自身には無いことを自ら証明してしまったかのように思えたからだ。

 しかしこの日の衝撃はこれだけで終わらない。

 愕然とする僕をよそにマスカーニャは膝から降りたかと思うと、そのまま椅子の下で僕を見上げるように座り込み……勃起を内包した短パンに鼻先を寄せた。
 起用に前歯でジッパーのフックを噛み挟むと、そのまま顎を引いて短パンのフロントを開いてしまう。さらにはその中へ指先を侵入させると、慣れた手つきでブリーフの前ポケットをも開いて、そこから僕のペニスを取り出してしまうのだった。

 そのあまりの展開に混乱する僕は、ただ唸るような声をその都度で短く発するばかりでいつものような注意をマスカーニャにすることが出来ない。

 そうしてブリーフから解放されて天を突いた僕のペニスを前に、明らかな喜びの表情を宿したマスカーニャの口元からは、吊り上げられた口角の端より大量の唾液がしとどに垂れ落ちる。
 そこからキスをするかのよう裏筋へ鼻先を付け、深く息を吸い込んでは僕の香りを鼻腔に充満させると次の瞬間──一切の迷いもなく、マスカーニャは僕のペニスを咥えてしまうのだった。

「うあッ!? ば、バカ……やめろぉ……!」

 刹那、亀頭全体が燃えるような灼熱感とそして粘性に富んだ口中の粘膜に刺激されながら僕も上ずった声で制止を訴える。
 それでもしかし、その程度でコイツがこのイタズラを止めるはずもない。
 そこからはさも味わうかのよう舌先で何度も亀頭を舐りながら、僕の腺液を吸い上げる動きをマスカーニャは敢行していく。

 制止させるべくにマスカーニャの両耳をワシ掴むも、そのあまりの快感に脱力した僕の両手はマッサージのような抵抗しか出来ない。
 むしろそれはコイツを労わるような愛撫にしかならず、まるで今のフェラチオを褒められたかのよう、マスカーニャの奉仕は発奮していった。

 大量の唾液と腺液とが空気を含んで撹拌されると、周囲には放屁にも似た粘着質の水音がリズム良く奏でられ始める。
 その中で僕もまた、限界に近づいていった。

「あ、ああ……はなして……口の中に、もれちゃう………」

 マスカーニャの頭に添えられた両手に力を込めて最後の抵抗を試みるも……それらもすべて無駄に終わる。
 次の瞬間には……──

「あぁ……んうぅぅ……ッ!」

 僕は、マスカーニャの口の中へ思いの限りに射精を果たしてしまっていた。

 僕自身しばらく処理をしていなかったことと、さらには未知の快感に晒されたことにより、僕のペニスはこれ以上もなく尿道を太くさせては胎内の精液を残らずマスカーニャの口中へと放出していった。

 それを受け止めるマスカーニャもまた、依然としてペニスを咥えたままの姿勢で僕を見上げる。
 僅かに下瞼を上げて見つめてくるその視線は僕を蔑んでいるとも、はたまた浅ましく微笑んでいるかのようにも見えた。
 しかしそんな視線が一変し、ぐるりと上目を剥いては苦しみに悶えだすマスカーニャ。

 何が起きたものかとさらに見守っていると、マスカーニャのペニスから打ち出された精液が僕たち二人の間に熱い飛沫を迸らせた。
 ……どうやら僕のペニスをしゃぶりながらにオナニーをしていたマスカーニャもまた絶頂を迎えたようである。
 
 そうして依然として僕のペニスを咥えたまま、頬を窄めてはその快感に打ち震えていたマスカーニャの喉が大きく隆起した。
 やがてはようやくに僕のペニスを解放し、そして空の口中を僕の前に大きく開け放っては真っ赤な舌もまた吐き出すと……

「はぁはぁ……バカ……そんなの飲んだら汚いだろ……」


 見た目の麗しさからは想像もつかない下品で粘着質なゲップもひとつ──
 そうして僕から放出された精液の全てを飲み込んだことを見せつけてきては、どこか得意げに哂ってみせるのだった。




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第7話・一線を越えて



 二人でポケモンのセックス動画を見た翌日──ベッドに座って雑誌を読む僕の傍らにマスカーニャは静かに腰を掛けた。

 チラリとそこから見上げれば、僕を見つめているマスカーニャは微笑んでいるようにも見えた。
 そして声を掛けるよりも早く、マスカーニャは僕の腰元に手を伸ばしては股間をさする。

 それに対して僕も何か言うこともなければ、また邪険に拒絶することもなかった。
 マスカーニャに任せたままにしていると、そのマッサージで血行の促進された僕の股間は緩やかに勃起を始める。
 最初はペニスの中に小さな芯が現れ始め、やがてそれが硬度と大きさを増すにつれて、いつしかペニス全体が一つの神経のように敏感になる。
 その頃になるとあからさまな快感が伴うようになり、いつしか僕の呼吸は荒くなっていった。

 そうしてもう一度マスカーニャを見遣れば……コイツもまた、大きく勃起させたペニスを屹立させていた。
 眠たげな瞳が熱に浮かされて腫れぼったくなっている。

 思えば少し前にマスカーニャがゴミ箱から僕のオナニー後のティッシュを漁っていたことから端を発し、いつしか僕達は単純なパートナーを越えた深い関係になっていた。
 友人でも主従でも無い今の関係は、強いて例えるなら恋愛のそれに似ている。
 そしてそれを心身ともに確定させる最後の瞬間を迎える時を……僕もまた、いつしか覚悟していた。

 僕からもコイツのペニスに触れると、途端にマスカーニャは目を剥いて驚きを露にした表情を見せた。
 このイタズラっ子は僕がずっとされるがままなのだと思いこんでいたのだろう。
 いい気味だ。

 その驚かせついでに更にビビらせてやろうと、僕は身を起こして背筋を伸ばすと──そのままマスカーニャにキスをした。
 鼻先同士を突き合わせて、上唇を咥え込むようなキスをしてやる。
 最初の頃こそ毛並みを逆立てては体を固くしていたマスカーニャも……次第に互いの舌先が絡み合って唾液を交換する頃には、すっかりリラックスしてキスの虜になっていた。

 それを中断してベッドの上に組み伏せると、もっとキスをしたかったのかマスカーニャはあからさまに不機嫌な表情を見せる。
 それでもおかまいなしに、僕はマスカーニャの体を弄んだ。

 体中のいたる所をキスでついばみ、さらに下降しては──ついにマスカーニャのペニスすら咥えた。
 ほのかな塩気と独特の匂いを含んだペニス特有の味わいよりも、むしろ他人の体温が口の中に存在している感覚の方がドキドキした。

 そうしてしばしそれを味わいながら愛撫していると、僕の指先は次なる段階の準備を施そうとマスカーニャの体をなぞり始める。
 開いた手の平の指々で太ももの上をなぞりながら、やがては僕の右手はマスカーニャの尻の下へとスライドしていった。
 そうして中指一本を突き立てると、僕はマスカーニャのアナルの入り口をまさぐり始める。

 その今までのどの感覚よりも違う感触にマスカーニャも驚きとも恐怖とも知れない声を上げた。
 それでも僕はやめない。
 アナルの淵を、円を描くようになぞっては解していた中指を……次の瞬間にはその根元までマスカーニャの体内へと収めてしまうのだった。

 瞬間、マスカーニャが大きく声を上げる。
 痛みか苦しみか違和感か……あるいはその全てか? それでも僕はおかまいなしに一定のリズムを以てマスカーニャの直腸内を往復する動きを開始する。
 ピストンが始まった時には半ベソでこの愛撫に耐えていたマスカーニャも、直腸内が潤んで摩擦の往復がぬめりを帯びたものに変わり始めると、次第にコイツは熱のこもった声を漏らし始めるようになった。

 そんな肉体と心境の変化を確認すると、僕もさらに責めの手を激しくしていく。
 より深くまさぐり、直腸内で指を曲げては内壁をこそぎ、さらには幾度となく手の平を回してはさながらペニスの裏側を刺激するように中指を突き上げると、もはやマスカーニャは屠殺場の家畜よろしくな声を上げては快感に身悶えた。

 そうして一際強く中指を突き入れ、その衝撃に一時マスカーニャが脱力するのを見届けるや、僕もまた最後の瞬間への準備を始める。
 服を脱ぎ、一糸まとわぬ姿になると改めてマスカーニャの上に体を乗り上げさせた。

 正常位による挿入を果たすための今の体位は、図らずも昨日見たビデオの中であの二人がとっていたものと同じ構図であった。
 先の愛撫ですっかり濡れそぼっては、充血した肉の淵を盛り上がらせるマスカーニャのアナルへと僕は亀頭の先を宛がう。
 そして挿入の直前、

「……これやったら、もう僕達は元に戻れないからな」

 そんな言葉を僕はマスカーニャに掛けた。
 それを受けてもマスカーニャは依然として熱に浮かされた視線で僕を見つめるばかりだった。
 しかし無反応と思われたマスカーニャは次の瞬間、僕を抱きしめた。
 その抱擁に引き寄せられて僕のペニスはマスカーニャの中へと挿入を果たし、そしてマスカーニャのペニスは僕達の胸板の間できつく挟まれては押しつぶされた。

「うわあぁ……!」

 その不意打ちな挿入に僕も、そして抱き寄せたマスカーニャもまたそろって声を上げた。
 互いこれ一つだけで絶頂しそうになるのを、息を殺しては必死になって耐える。震える体にこれでもかというくらいに力を込めて静止して、その衝撃の波が体内から過ぎ去るのをじっと待つ。

 やがて、どうにかそれをやり過ごすと僕たちは揃ってため息をついた。
 そんな行動のシンクロに思わず目を合わせては……場違いにも僕とマスカーニャは笑ってしまう。
 それから示し合わせたようにキスをひとつすると、改めて僕は動き出す。

 こんな行為は人同士であってさえも経験したことの無いの僕は、なんとも頼りない腰付きでマスカーニャのアナルを突き崩していく。
 それでも、マスカーニャ自身もこれが初めてとあってはむしろ、そんな僕のビギナーな動きが体には合っていたのかもしれない。
 僕がその名を呼んでは突きあげるたびに、マスカーニャもまたそれに応えるよう歓喜の嬌声を上げては応えてくれた。

 そうしてしばし身を擦りつけ合っていると、僕の中に最後の瞬間を予期させる肉体の変化が感じられた。
 肛門が幾度となく収縮し、ペニスの芯がむず痒くなる……もはや射精も時間の問題だ。

「も、もう……ダメ、かも……先にイッちゃったら、ゴメン……」

 そのラストスパートとばかり、今まで以上に忙しなく腰を突き動かしながら僕はうわごとのようにマスカーニャへと語りかける。
 それを受けてマスカーニャもまた僕を抱きしめた。
 今まで受けたどんな誰よりも強いその抱擁に、僕とマスカーニャの間で挟まれていたペニスもまた強く締めあげられる。
 そしてついに、

「あ、あああ! マスカーニャッッ‼」

 僕が射精を果たした瞬間──互いの間で抱き挟まれていたマスカーニャのペニスもまた射精しては、胸元を突き付け合わせる僕達の間に、灼熱の飛沫を行き渡らせるのだった。

 マスカーニャのアナルの中において、僕も思いの限りの射精を果たし──焼けるような互いの精液を肉体の内外で感じながら、僕達は互いを抱きしめ合う両腕に更なる力をこめる。

 やがては抱き合ったまま僕達はいつしか眠りに落ちていった。
 その最中において僕はふと考える。

 思えばニャオハに初めて出会った時から、この運命は動き出していたのだろうか?
 それとも何者かに依って引き寄せられたものなのか……。

 明確なことは何一つ分からなかったが、ただ一つ僕はコイツに出会えてよかったと思った。
 願わくばマスカーニャもそうであってほしいと願いながら……夢現に、僕の意識は融けていくのだった。



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エピローグ



『──そんなの、マスカーニャは最初っからお前にベタ惚れだったじゃん。本当に気付いてなかったの?』
「そ、そう……なのか?」


 後日、友人のトトとの話である。

 マスカーニャと一線を越えてしまった翌日、色々なことを誰かと話したくなって僕はトトの元を訪れていた。
 そのなかでマスカーニャとセックスをしてしまったことを打ち明ける傍ら、もしかしたら一方的に性欲のはけ口にしてしまったのではないかと危惧する僕に対し返されたのが冒頭の言葉である。

 聞くだにそんなマスカーニャの兆候はニャローテ時代から見えていたそうな。
 傍から見れば丸分かりのニャローテからのアプローチを、僕だけが鈍感にも気付かずにスルーし続けてたのだという。
 ……そう言えば確かに、ポケモンウォッシュのたびにやたらと股間を洗うように要求されていたこともまた思い出す。

 ともあれ今の子供然とした容姿のニャローテでは振り向いてもらえないと、マスカーニャは血の滲むような努力の末に、同期の中でも一番乗りで最終進化にまで到達したのであった。
 今さらながらそうまでして慕われていたにも拘らず、ずいぶんと邪険に扱ってしまったものだと後悔もしきり……。

 かくしてマスカーニャに進化したはいいものの、当の想い人はというとそんな乙女心(……♂であるが)に気付かぬ朴念仁ぶり。
 想いは募るに募り、そしてある時それが発露した事件こそがあの『ゴミあさり』であった。

 その後も下着盗難などが続き、その話がトトの耳に入るやトトは一計を案じる。それこそが、あのポケモンセックスの動画送信であった。

「あんなもの、どこで手に入れたんだ?」
『ウェインこそ知らないのか? 一時期すごい注目されてたんだぞ、あのサーナイト』

 セックスの手際についてはマスカーニャが本番の際に困らぬ様、ウェーニバルが指導をしてサポしたらしい。
 ふと部屋の隅に目を走らせれば、その視線の先にはマスカーニャと談笑しているウェーニバルの姿が見えた。
 ……今度は指先を繋げて作った輪の中に、もう片手の指を何度も出し入れするジェスチャーを見せている様も確認し、またロクでもないことを教えようとしてるのではないかと気が気で無い。

 こうして何だ彼んだはあったものの、あとは知っての通り僕達は一線を越えて今に至るというわけであった。


 トトの家を辞去し、マスカーニャと歩きながら僕はチラリと隣を見遣る。
 いつかと同じようにマスカーニャは僕を見下ろしていて、互いの視線が合うと思わず僕達は笑ってしまうのだった。

「お前、いつも僕を見てるな」

 そんな軽口を叩くと、さらにマスカーニャは嬉しそうに笑う。
 この一時を幸せに思うと同時、まるで白昼夢のように今後の僕達にはどんな未来が待っているのかにも思いが及んだ。

 ポケモンと人間、さらには同性であることの弊害──思い付く限り、僕達の未来には明るい要素などは無いように思えた。
 それでもしかし、そんな未来などはどこまでも他人事のように感じられては、一向に僕を不安にさせることはなかった。

 なぜならば、これからはどんな時でも隣にマスカーニャがいてくれるという事実が、どこまでも僕を気楽にしてくれるからだった。

「これから一緒に何したい?」

 ふとそんなことをマスカーニャにも尋ねてみる。
 それを受けてマスカーニャはその一瞬目を見張っては鼻を鳴らし、次いで僕の体に身を寄せた。


 そうして僕の股間をまさぐってくるそのデリカシーの無さに──……
 僕はコイツのド頭へとゲンコツをひとつ見舞ってやるのだった。









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【 三擦り半のマスカーニャ・完 】

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