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先生と生徒とフィアンセと の履歴(No.4)


先生と生徒とフィアンセと

Written by March Hare
魔女先生シリーズ8作目。
SOSIAシリーズのメインキャラも出ますが
魔女先生シリーズだけでも読んでいただければ楽しめます。


【注】R18表現があります
カップリング:(反転ネタバレ→)ニンフィア♂×パーモット♀&ゴーゴート♀(現在更新分のみ記載)
次のようなR18要素を含みます(反転ネタバレ→)手コキ、フェラ、おもらし(小)、飲尿、放尿プレイ



◇キャラクター紹介◇

○ライズ:ニンフィア♂
 ランナベールの学園『セーラリュート』の高等部二年生。
 三ヶ月の停学を経て復学した。
 ファンクラブがあるほどの人気者だったが……

○フォール:ニャオニクス♂
 ライズのクラスメイト。
 友達以上親友未満。

○セルネーゼ:グレイシア♀
 ライズの婚約者で、又従姉。
 ライズを誰にも渡したくない。

○ヤンレン:ヒヤッキー♀
 ライズのクラスメイトで、友達以上恋人未満。
 中等部時代からの熱狂的ファンでもある。
 ライズの停学処分を機に体の関係がバレた。

○ロッコ:コジョンド♀
 ライズのクラスメイトで、最初に関係を持ってしまった相手。
 公的にはバレていないが周りにはわりとバレている。
 ある意味で恋人以上親友以上。

 etc.


更生(?)と復学


 セルネーゼがキルリアの橄欖を遣わして、ライズの意思を確認してから数日後。

 ライズは父アパルと共にミルディフレイン家を訪れ、誠心誠意謝罪した。
 やはり政略的に必要な婚姻であること、そして何よりセルネーゼ本人が望まないことから、婚約破棄は取り消されることとなった。謝罪金として金銭のやり取りもあったようで、父には迷惑をかけっぱなしだ。

「まったく。ミルディフレイン家の温情に感謝するんだな……」

 屋敷に帰宅する頃には、父は疲れきった表情をしていた。シャワーズのヒレにも目に見えてツヤがない。

「二度とこのようなことのないように気を引き締めろ。騎士としての自覚を持て」
「はい……」

 到底、自信を持って返事なんかできなかった。半ば襲われた形とはいえ、視察中にあんなことがあったばかりだ。
 もしバレたら今度こそただでは済まない。

 自分で自分を信用できないくらいだ。当然、ミルディフレイン家のひとたちにしても、父にしても、ライズを全面的に信用するなんてことはあり得ないわけで。

 婚約を破棄しない代わりに、ミルディフレイン家からは、とある()()をつけられたという。


 その条件が何なのか知らないまま、あっという間に三ヶ月が過ぎた。
 その間、父の秘書カーラの図らいもあって領主の仕事を学ぶことになり、無為に時を過ごすことはなかった。

 そして、復学の日。
 五月から三ヶ月の停学で、夏休みが終わり秋の学期が始まる前日の夕方、ライズはランナベールヘ戻ってきた。
 風紀委員ではなくなってしまったので、個室ではなく再び皆と同じ寮に入ることになる。
 ライズは割り当てられた自室のドアをノックした。部屋割の名簿でルームメイトの名を見たとき、驚き半分、安心半分といったところだったが――

「よっ、ライズ! おかえり!」
 ドアを開けて出てきたのは、ライズがよく知るニャオニクスだった。

「フォール……きみがルームメイトなんだね」
「おうよ! すげえ偶然だな!」

 おおかたの事情を知るフォールがルームメイトなら、妙に気を遣うことも遣われることもない。
 ライズは自分用のスペースに荷物を置くと、教科書や参考書を本棚に立てていく。フォールも手伝ってくれて、ひとまず明日から戻る学園生活の準備はすぐに終わった。

「ライズ、晩メシはもう食ったか?」
「まだだよ」
「よーし、じゃ、カフェテリアに行こうぜ! お前の友達も呼んでさ!」

 友達。ロッコとヤンレンの顔が思い浮かんだが、正直、どんな顔をして会えばいいのか、まだ心の整理がついていない。
 あれから二匹はどうしているのか。ライズをどう思っているのか。
 
「や、今日は二匹で……」
「えっ!? なんだライズ、オレとデートしたいのか……?」
「ちがうよ。僕が停学になったあとのみんなのこと……先にフォールに聞いておきたいと思ってさ」
「なんだ、そういうことか」
 フォールは腕組みをしてウンウンと頷いた。

「オマエ、けっこう繊細だもんな! いいぜ、オレでよけりゃなんでも聞いてやる!」

奔放な友人


 そんなこんなで、カフェテリアでフォールと二匹、テーブルを挟むことになった。

「ヤンレンさんは謹慎処分のあと、生徒会に戻って変わらずやってるぜ。副会長から格下げにはなったが、要領のいい子だからうまくやってるみたいだ」
「クラスではどんな感じ?」
「オマエの停学と同時に謹慎処分だからなあ。相手がヤンレンさんだってことは、みんなにバレてるぜ。嫌なことを言うヤツもいるけど、どっちかっつーと、あのライズを落としたってんで、一目置かれてるって風にオレは見えるね」
「あー……そっか、もう秘密の関係じゃなくなったんだよね……。でも、いじめられたりしていなくて良かった」

 ヤンレンの無事を知って安心したが、自分自身はどうなのだろう。
 戻ったときに、周りからどう見られるのか。冷やかされるのか、あるいは白い目で見られるのか――。

「そう心配すんなって。ヤンレンさん、ライズ様は悪くないって言い続けてるから、オマエが嫌われることはなさそうだぜ」
 表情から心を読み取られたか、フォールにそう付け加えられた。

「なんか、ヤンレンさんに悪いな。……僕は何を言われても仕方ないのに」
「べつにオレはいいと思うぜ? ライズを好きな子が大勢いて、オマエは一匹だろ。できるだけたくさん相手してやった方が喜ぶじゃん? 相手が望んでんなら、誰も不幸にはなんないじゃんか」
 フォールは屈託のない笑顔を浮かべて、とんでもないことを言ってのける。
 けれど、欲に負けて関係を持った挙げ句に罪悪感を抱えるくらいなら、彼くらい開き直った方がいいのかもしれない。

「みんながきみと同じ価値観だったらいいんだけどね……」
 フォールには中等部の頃からつきまとう女子三匹組がいる。トリミアンのレミィ、エンブオーのヒルダ、ハピナスのナーシス。聞くのが怖くて、彼女たちとの関係性を聞いたことはないが、やっぱりそういう関係なのか。

「ま、でもやっぱりオマエのファンクラブはだいぶ数が減ったみたいだぜ」
「それは……そうなるよね」
 自分に憧れていたポケモンたちを裏切ってしまったことに申し訳ない気持ちはあるが、少し肩の荷が下りた気分でもあった。
 だって、みんなの憧れる『ライズ様』の姿は幻想でしかないんだから。

「ロッコさんも抜けたってよ。ま、相変わらずオマエのことは大好きみたいだけどなっ。今日のことが知られたら、なんで呼ばなかったってオレがどやされるぜ」
 ロッコのことを語るフォールはやけに楽しそうだった。
 まあ、紆余曲折あった全てを、フォールには知られているのだ。からかいたくもなるのだろう。

「ロッコさんは……うん。もう、僕のファンじゃないよね。今度こそ対等な友達として――」
「友達? フレンド? それもセッのつくやつだろー?」
「ちょっ、こ、声が大きいよ!」
 とはいえ、さすがに夕食時のカフェテリアでは度が過ぎている。
 穏便に復学しようとしているのに、これではまた余計な噂が立ちかねない。

「……停学になったばかりだし。僕には婚約者もいて……もう、そういう関係は……」
「べつに風紀委員でもなくなったんだし、固いことはいーじゃんか。この学園じゃみんなそんなもんだぜ」
「そうだとしても、だよ。僕だって停学の間に、反省したんだから」
 正直、フォールの軽口を強く否定できない。
 襲われた形とはいえ、停学中にさえ別の相手と関係を持ってしまったのだから。

 それに再会したロッコやヤンレンが、もしまたそういうことに誘ってきたら。
 ――断れる自信がない。

「反省、ねえ? やっぱりオマエ、根っこのところは優等生なんだよな」
「……それはどうかな」
 父に叩き込まれた騎士道精神が、表層の意識を塗り固めているだけで。
 その奥には心が弱くて、気持ちのいいことが好きで、簡単に欲望に負けてしまう自分がいる。
 
 しばらくの沈黙。

「ちょっと、お手洗いに行ってくるね」
 少し気まずくなったところで、トイレを口実に一度席を離れることにした。

「おー。待ってるぜ」

即死トラップ


 本当にトイレには行きたかったのではあるが。

 ところが、トイレの前まで来たところで、二匹の女学生に声を掛けられた。

「ライズ様、帰ってきてたのね!」
 声をかけてきたのは、ゴーゴートとパーモットの二匹組だった。
 面識はない気がするが、どこかの授業で一緒だったかもしれないし、確証は持てない。

「私はトーコ、でこっちが」
 ゴーゴートはライズの戸惑う様子を見て、自己紹介を切り出した。
「ポーマだよ。ふたりともライズ様ファンクラブのメンバーなの」
 次いで、パーモットの方が自分たちの素性を明かす。
 
 ファンクラブはかなり縮小したと聞いたばかりだ。
 今でもついてきてくれる数少ないファンは、大切にしなくちゃ。
 でも、中等部の頃に仲良くなったロッコたち三匹は別として、FCのメンバーに直接話しかけられることなんてこれまでなかったのに。

「あ、あの、お出迎えはすごく嬉しいんだけど……」

 しかも、話しかけられるにはすごくタイミングが悪い。

「僕、お手洗いに行くところで……」

 そこを退いてほしい、とリボンの触角で軽くジェスチャーをすると、ゴーゴートのトーコとパーモットのポーマはうんうんと頷いて顔を見合わせた。

「だからここで待ってたのよ」
 そして、トーコは妖しげに微笑み――
「えっ、待ってたって……?」

「ライズ様、ちょっと来て!」
 かと思った次の瞬間、ポーマがライズを抱え上げてトーコの背中に乗せる。

「えっ、ちょっ――どういうこと?」

 理解が追いつく前に、ライズは人気のない建物の裏側に連れて行かれた。
 そこで地面に下ろされたはいいが、二匹がずいっと顔を近づけて迫ってくる。

「トイレで男の子を待ち伏せする女の子……っていえば、決まってるじゃない?」
「あたし達が、抜いてあげる」
 二匹は顔を赤らめた笑顔で、とんでもないことを言い出した。

「はぁっ……!? ほ、本気で言ってる?」
 予想外の展開に驚きつつも、安心しきっていた地元でキルリアの橄欖に襲われたときほどの衝撃ではない。
 ここは自由奔放なランナベールの学園。こんなことがあってもおかしくはない。
 けれど、復学早々にまた、こんな話に乗るわけには。

「いいよー? 遠慮しなくても」
 ポーマはパーモット特有の真ん丸な目を輝かせて、ペロリと舌なめずりをしながらライズを見つめる。
「ライズ様も好きなんでしょ? 他のファンの子たちと、こういうコトしてたんだよね!」
「……停学になるくらいだもの。ヤンレンさんだけじゃないわよね」 
 トーコの方は少し落ち着いている、というか緊張しているのか。ポーマよりも一歩後ろで、目を泳がせていた。

 どちらにしても彼女たちは、ライズが不純異性交遊で停学になったことに対し、嫉妬でも幻滅でもなく、それなら自分もやれる、と考えたのだ。
 今もファンとして残っているのは、何があってもライズを信じ続ける『信者』――そんな人物像(ポケモン)を想像していたが、それだけではなかった。

「ね、停学の間で溜まってるんじゃない~?」
 ポーマは物怖じすることなく近寄ってきて、ライズの背中を撫でた。

「や、それは……んぁっ……」
 体を触られて、ぞくりとした。欲望に抗えない自分がいる。
 三ヶ月の反省の日々は、一体なんだったのか。
 
「ぁっ、ふぁああっ……そ、それより、おしっこ……」
 しかし、頭で考える余裕もなく、尿意の方が先に限界を迎えそうだ。
 震えるライズの様子を見て、ポーマは今気がついたとばかりに、ぽかんと口を開けた。
「そ、そっか……先におしっこしたいよね……」

 そしてポーマとトーコは顔を見合わせて、何やら相談を始めた。
「こういうシチュって……えっと、おしっこもさせたげるんだっけ……」
「私が読んだ漫画ではそうだったわよ……」
「ど、どうしよう。どっちが先にする……?」
「私は後で……ライズ様におしっこさせるより、イかせてあげたいし」
「あんたそのヒヅメじゃ口しかできないじゃん。あたしは手も使えるから、あたしの方が気持ちいいよきっと」
「決めつけないでよ。私だってすごく練習したのよ」

 相談しているかと思えば、次第に順番を決める争いに発展してきた。

「あ、あのっ……もう我慢できないよぉ……」
 早く決めてほしい。そう思って、つい声をかけてしまった。
 言ってから、自覚してしまった。
 この隙に逃げようと思えば逃げることもできたのに。
 これから彼女たちにされることに、期待してしまっているんだってこと。

 二匹ははっとしてライズに向き直るが、先に口を開いたのはポーマだった。
 
「ご、ごめん、ライズ様……。じゃ、いいよ、あたしが先で」
 ポーマは四つん這いになって、ライズの後ろから股の間に顔を近づけてきた。

 橄欖とのあの一夜の光景が思い出される。

 あれ以来、真面目に心を入れ替えようと、一人ですることもなかった。
 禁欲のつもりでそうしてきたのに、結果としては、ポーマの言う通りだ。誘われれば断れないくらいに、欲望を蓄積しただけ。

「ライズ様の……わぁ、こんなに綺麗なピンク色なんだぁ……」
 ポーマに前足でモノの根本を軽く握られたとき、ぞわっとした快感が全身に走って、もう、真面目には戻れないと悟った。

「それじゃ……いただきますっ……」
 自分の体が邪魔でよく見えないが、ライズのものを咥えようとポーマが口を開けたそのとき。生暖かい息が当たって、全身にまた震えが走る。
 その瞬間、必死の力で締めていた栓が、ふっと緩んでしまった。

「にゃぁっ……」 
 迸る熱い水流が、水鉄砲のような勢いで放出される。

「ひゃぁぁっ!?」
 間近で顔におしっこを浴びたポーマの驚いた声が聞こえた。

 咥えられるまで我慢しようとも思ったけれど、できなかった。
 お腹の奥から熱い感覚が勢いよく走って、性器の中を突き抜ける。同時に、パンパンに張って重くて苦しかった下腹部が、その苦しさから解き放たれていく。

「はぁぁぁ……」
 ようやく尿意から解放された安堵と、性感帯のすぐ近くを、そしてその中を走り抜ける熱い奔流の快感で、多幸感に溢れたため息が漏れた。

「あわわ、ちょっと……! んっ、ぷはぁっ……ライズ様、一回止めて……!」
 ポーマはライズのものを咥えようと頑張っているが、あまりの勢いで噴き出すおしっこに手を焼いて、うまくいっていない。口を近づけるたびに顔に水鉄砲を食らい、避けようと顔をそらしてを繰り返している。

「む、無理だよ、止まんないよぉ……」
 自分が出したおしっこでポーマが濡れていく様子を見て、これまでの身体的な快感とは違う、感情的な快楽がこみ上げてきた。
 その快楽さえなければ、頑張れば止められたかもしれない。
 ジルベールで、橄欖に頼まれるがまま、おしっこをかけたときに感じた不思議な気持ち。今は、それがはっきり快楽だと感じられてしまう。

「で、でもこれじゃ……ひゃあぁっ……!」
「もう、見ていられないわ。下手くそじゃない」
 うまくライズのものを咥えることができないポーマを後ろで見ていたトーコが割って入ってきて、ポーマを押しのけた。

「ちょっとぉ! 約束が違うよ、トーコ!」
「ライズ様、私に任せてね」
 ポーマが不満を口にするが、トーコはそれを無視してライズの後足の間へ顔を差し入れてくる。
 トーコはおしっこが顔にかかることにも一切物怖じすることなく、ライズのものを舌で包み込むようにぱくりと咥えた。

「ふぁあっ……!?」
 ゴーゴートの、長くて分厚くて、ねっとりとした舌の感触に、ライズは思わず声を上げた。

「こく、ん……べろっ……ちゅぅ……んっ……」
 トーコはライズのおしっこを飲みながら、器用に舌で肉棒を舐めてくる。
 その刺激にまた別の快感を覚えて、自分のものがムクムクと大きくなっていくのがわかった。

「こく、こく……んっ……はぁ……」
 トーコが口を離したときには、肉棒はすっかりと固く大きくなり、おしっこも止まっていた。
 まだ残尿感はあるが、下腹部を圧迫していた重みはもうほとんどない。そうなると、おしっこよりも、もう一つの体液を出したい気持ちに駆られる。

「ライズ様……気持ちよかったかしら……?」
「う、うん……」
「でも、ここからが本番よ。私の舌、すごくいいでしょ?」
 トーコは自信ありげに舌をペロペロと突き出して、ライズを挑発する。

「ちょっとトーコ! おしっこは横取りしたんだから、そっちはあたしがやるの!」
 と思いきや、今度はポーマがトーコを押しのけた。
「ちぇっ……しょうがないわね……」

 トーコが残念そうに引き下がるのを尻目に、ポーマはライズの体をそっと持ち上げる。

「わわっ!?」
 そのままひっくり返され、ライズは仰向けで後足を開く格好になった。

「この方がやりやすいし、いいよね? ライズ様」
「えっ、と……この体勢はちょっと……」
「だいじょーぶ、今度は失敗しないから! ライズ様が汚れないようにうまくしてあげるよ!」
「や、そうじゃなくて……」
 恥ずかしい、と言いかけて、やめた。
 もはや快楽の奴隷になってしまった自分に、恥なんて主張する資格はないんだ。
 
「……ううん。す、好きにしてもらえれば……」
 もうここまできたら、快楽に身を任せてしまいたい。
 フォールの言う通り、彼女たちがそれを望んでいるのなら、悪く思う必要もない。

「えへへっ、じゃあ……」
 ポーマはライズのモノを軽く握って、ゆっくりと手を上下させ始めた。
「ぁっ……、ふぁっ……!」
 肉球と毛皮で擦られるその感触に、ライズは足を開いたままピクピクと痙攣しながら喘いだ。

「んっ……はぷ……」
 ポーマは手コキを続けながら、さらにライズのモノの先端を咥えた。
「はわぅっ……」
 温かく湿った口内の空気に、思わず声が漏れる。

 さらには、ポーマは尿道口をチロチロと舌先でいじり始めた。
「れろ……ちゅぅ……んっ……」
「あっ、ぁ、そ、そんな……だめっ……! ぁああ!」

 一番敏感なところを刺激される強い快感と、おしっこがしたくなるムズムズする感覚が同時に襲ってくる。

「ん、ふぅ……ライズ様……かわいい……んっ……ちゅぅ……」
 ポーマはライズの反応にご満悦といった様子で、頬を紅潮させていた。

「あぅっ、ぁ、ぁ、ぁ……ひあぁっ……!」
 尿道口へと与え続けられる舌先の刺激は強烈で、到底耐えられるものではなかった。刺激に呼応するように、ぴゅっ、ぴゅっ、と熱い液体が飛び出した。

「んんっ……ん……! ぷはぁ、ライズ様……何か、出てる……」
 手と口の刺激と快感がごちゃまぜになって、おしっこなのか、先走り液なのか、自分でも何が出ているのかわからない。
 ただ、そんなことはどうでもよくなるくらい気持ちが良かった。

「はぁ、ふぅ……ぼ、僕も……わかんないよ……」
「まだ……せーえきは出てない……よね……?」
 ライズはこくこくと頷いた。
 下半身のモノはまだ張り詰めるほどに大きく、今にも爆発しそうな感覚が残っている。
 
「じゃ、続けるよ……はむっ……」
 そこから、ポーマの手と舌の動きが一段と激しくなった。

「ちゅっ、れろれろ……ぢゅぅぅぅっ……!」
「あぁっ、ふぁあっ……! ぁ、ぁっ……!」
 放尿と射精の混じったような感覚が性器に走って、ライズは強い快感を覚えながら、ぷしゅぅぅぅ、とポーマの口の中へ熱いものを吐き出した。

「んんっ……! こく、んっ……ぷはぁ……」
 ポーマはそれを飲み込むと、息つぎのために口を離した。
 唾液が透明の糸を引いて、ひどく淫靡な光景だった。
 
「今のは……おしっこ……だよね……? さらさらしてるし……」
「はぁ、はぁ……そ、そう、かも……」
「うふふ……最後まで、してあげるからね……んっ……」
 ポーマもいよいよ興奮が高まっているようで、そこからはもう、容赦がなかった。

「ちゅっ、れろ……ぢゅ……っ、ちゅぅぅぅぅっ……!」
「待っ、そ、そんな、強く……ふぁあっ、ぁ、あああああ~っ……!!」
 根本から舐め上げられた挙げ句、鈴口を思いきり吸われて、いよいよそこに溜まっていたものが爆発した。
 下半身に熱い感覚が広がって、まるで自分のモノが噴火したみたいに、ライズは精を吐き出した。 

「んんんっ……んんっ……!!」
 ポーマは歓喜の表情で、口内に注がれる熱くて粘性のある液を受け止めた。

「んっ、こく……んっ……」
 そうして、ドクドクと断続的に吐き出される白濁の液を飲み込んでいく。

「んっ……はぁ……今度こそ……出たね……いっぱい……」
 ポーマは一滴残らずライズの精を飲み干すと、満足そうに微笑んだ。

「あぁ……やっぱり私、そっちが良かったわ……」
 横で見ていたトーコも興奮した様子で、はぁ、と熱いため息をつく。

 ライズはそんな二匹を見ながら絶頂の余韻に浸っていた。

「でも、ライズ様が受け入れてくれるなら……今度は一匹で……」
「そだねー。二匹で拉致しなくてもいいかもー」
 二匹は早くも次回の話を進めているが、こんなことをまたするつもりなのか。

 ――べつに、何度でも構わない。

 一瞬、そう思ってしまった自分の思考が、信じられなかった。

 ああそうだ。まだ消えない余韻が、そんな思考に繋がったんだ。
 体は焼けるように熱くて、上も下もわからないふわふわした感覚が残っている。
 
「ていうか今回、あんたの方が楽しみすぎじゃない?」
「そ、そーかなー?」
「絶対そうよ! 割り込んだ私も悪かったけど……これじゃ、物足りない……」
 トーコはそう言って、物欲しそうにこちらを一瞥した。

 ライズは絶頂の余韻で震える後足が少し落ち着くのを待って、よろよろと立ち上がった。

 そして、トーコとポーマにふらふらと近づいていく。
 
「あ、いや……べ、べつに、ライズ様は無理しなくていいのよ……? 私たちが勝手にしたことだし……」
「うん……でも、これで、よかったら……」
 ライズはトーコとポーマにお尻を向けて、尻尾を立てた。
 
「ライズ様……?」
 そして、あのとき橄欖にしたように、下半身にぐっと力を入れて、残った膀胱の中身を勢いよく放出した。
 
「きゃあぁっ!?」
「はわわっ……!?」
 
 ぷしゃぁぁあ、と勢いよくおしっこを浴びせかけられた二匹は、驚いて声を上げる。
 ライズはぶるぶると体を震わせながら、膀胱が空になるまで、二匹に向かって放尿を続けた。

「ら、ライズ様っ、こんな……!」

 二匹の反応が驚きなのか悦びなのかわからなかったが、おしっこを出し切ると、これでようやく、体に残っていたものが全部空っぽになった開放感に満たされた。

「ん……ふぅ……はぁ…………」

 そうして真っさらな心地で深く息を吐くと、少しずつ、ライズの頭に理性が戻ってきた。

「……も、物足りない、とは言ったけど……」
「ら、ライズ様なりのプレゼント……だよね……!」

 二匹はライズが最後にした行為に、明らかに戸惑っていた。

 それはそうだ。
 自ら要求してきた橄欖が特殊なだけで、普通はこんなことをされても嬉しくないはずだ。
 まあ、トイレで待ち伏せをするような二匹だから、すでに普通ではないのだが。
  
「……あ、えっと……ご、ごめん。嫌だった……?」
「ぜ、全然嫌じゃないよ! ライズ様にされるなら……! いい匂いもするし……」
「でも、そう……ちょっとびっくりはしたわね……」

 なんだか、気まずい雰囲気になってきた。
 どうしてそんなことをしてしまったのか、自分でもわからない。きっとあの夜、橄欖におかしなことばかりさせられたせいだ。
 今度会ったら、ちょっとくらい抗議してもいいのではないか。
 恥ずかしくて話題にすらできない気もするけど。

「……そ、それじゃ私達はこれで……!」
「あ、もちろん誰にも言わないよね? あたし達も秘密にするけど……」
「……言えるわけないよ。停学が明けたばかりなのに……」
「だよねー」
 
 彼女達もライズの事情をわかりきって、こんなイタズラを仕掛けてきたのだ。

「……うん、それじゃ、またね!」
 ポーマは明るく手を振り、トーコは俯いて何かを考え込む様子で、その場を去っていった。


「……ごめんなさい、セルネーゼさん……父上……。僕……もう、真人間(ポケモン)には戻れそうにありません……」
 
 なんの罪滅ぼしにもならないとわかっていながら、ライズは懺悔の言葉をつぶやいて、フォールの待つカフェテリアへ戻るのだった。

新任の先生


「遅かったじゃん。なんかあったのか?」
「ごめん、ファンの子に声をかけられて、話し込んじゃってさ」

 フォールのところに戻り、まさか本当のことを言うわけにもいかず、嘘半分、本当半分で事情を説明した。

「ふーん……ま、いいや。そろそろ遅いし、寮に戻ろうぜ」
 フォールが答えるのに、間があった。一瞬、訝しむ表情をしたのもライズは見逃さなかった。
 けれど、敢えて聞かないことにしたらしい。
 付き合いも長いから、ライズが話したくない何かを隠していると察したのだろう。

 寮に戻る道すがら、フォールは気まずい沈黙を破るべく、話題を切り替えた。

「そーいや、ライズんとこの二年四組、担任変わるんだってよ」
「えっ、秋学期から急に? ベルティ先生、何かあったのかな」
 もともと二年四組の担任は、マルヤクデのベルティ先生だった。
 政治学を教えるベテラン女性教師で、学園の流儀に従い、ほとんど生徒に干渉してこない。

「さーな。政治学の担当は変わってねーから辞めるわけじゃねーみたいだけど。でも、オマエにとっちゃいいんじゃないか? 心機一転っつーかさ」
「……それは、そうかもね」
 元・優等生として扱われるよりも、停学から帰ってきた不良として見られる方が気楽だ。
 ついさっきあんなことがあったばかりだが、こうして理性的でいられるときは、まだ心を入れ替えることを諦めていない自分がいる。環境が変われば、まだチャンスはあるかもしれない。


 ――そんなチャンスが、予想の斜め上からやってくるとは、まだこのときは知る由もなかった。


         ◇


 翌朝。フォールと共に寮を出て、学園セーラリュートの円形の廊下を歩く。
 高等部の校舎の前まで来たところで、また待ち伏せにあった。

「……やっと来た」
 無愛想なコジョンドの女の子と、
「やっほー! おかえりっ、ライズ様!」
 元気なヒヤッキーの女の子。

 なんだか昨夜の組み合わせと似ているような、似ていないような。
 ――なんて考えるのは彼女たちに失礼だと、ライズはぶんぶんと首を振って昨日の記憶をかき消した。

「あ、えと……」
 どう声をかけたらいいものか戸惑っていると、コジョンドのロッコが俊敏な動きで急接近してきた。反応もできない間に、ふぁさ、と長い体毛に体を包みこまれた。

「ライズ……!」
 ふさふさで暖かい感覚が、とても懐かしくて、じわりと涙がこみ上げてくる。

「あー! ロッコずるい!」
「ヒューヒュー。ロッコさん、熱いねー」
 ヤンレンの怒りと、フォールが冷やかす声が聞こえる。
 そんなやり取りを聞いて、ようやく、学園に帰ってきたんだと、実感が湧いてきた。

「……ロッコさん、ただいま」
「おかえり」
 言葉が少ないところも、彼女らしい。
 自分はもうだめだと思ったけど、こうして抱きしめられても、もう変な気持ちにはならなかった。
 昨日はどうかしていたんだ。
 大丈夫。また彼女とは『友達』として、やっていける。

 感傷に浸っていたら、急に後ろから脇の下に手を入れられ、抱き上げられた。

「わぁっ!?」
「もー、ロッコばっかり! ライズ様、私ともおかえりのキスしよ!」
「へ?」
 有無を言わせず振り向かされ、ちゅ、と軽いキスをされた。
 つややかな唇の感触と、水タイプらしい清潔感のある香りがふわりと鼻をくすぐった。

 しかし、公衆の面前である。

「にへへ……久しぶりだなぁ、この味……」
「あ、あの、ヤンレンさん……みんなの前ではちょっと……」
「だいじょぶだよ? 私とライズ様のこと、もうみーんな知ってるし」
 キスくらいで今さら騒ぐつもりはないのだが、バレたからといって開き直りが過ぎるのも問題だ。

「ヤンレン、何やってる! だいたい、『私と()』って何? わたしはキスなんてしてないし……」
 ロッコが怒って、ヤンレンの腕からライズをひったくる。

「え? してないの? ロッコの前足の毛でライズ様の顔見えなかったからさ、てっきり……」
「あなたと一緒にしないでくれる?」
 こんなヤンレンとロッコの争いも、また懐かしい。
 停学になる前には大喧嘩もしたけど、そもそもライズが一線を超えなければ、このくらいで済んでいたんだ。

「ライズもライズで何? みんなの前じゃなかったらするの?」
「いや、それは、ええと……ごめん」
 素直に謝るよりほかになかった。
 この関係を壊さないためにも、本当に、これ以上はやめておこう。

 今度こそ、そう肝に命じていたら、見覚えのあるパーモットとゴーゴートが通りかかった。

「あ、おはよー、ライズ様ー。また会ったねー」
「お、おはよう……」
 ポーマが手を振ってきたのでライズは挨拶を返したが、トーコの方は気まずそうに目をそらして通り過ぎた。
 
「……また?」
 ロッコが怪訝な顔で首を傾げた。

「昨日、カフェテリアで話しかけられて、ちょっとね」
「私知ってるよ? 三年生のポーマ先輩とトーコ先輩だよね。こないだFCの集会でお話したよ」
 どうやら、ヤンレンとは面識があったらしい。
 集会で何の話をしたのかわからないが、彼女たちの昨夜の行動を考えるとろくなことではないだろう。

「ライズ、気をつけたほうがいい。今もFCに残ってるやつなんて、まともじゃない」
 ロッコの忠告は的を射ているが、いかんせん、聞くのが遅かった。
 もし昨日の夕食にロッコも呼んでいれば、あんなことにはならなかったかもしれない。

「ロッコ、それどーゆー意味? 私も残ってるんだけど」
 しかし、ヤンレンからするとロッコの言葉は聞き捨てならなかったらしい。

「あなたは自分がまともだと思ってるの?」
「FCを抜けたくせにライズ様につきまとってるロッコよりはね?」
「わたしはそういう輩からライズを守るためにいる」
「出たー。そんなこと言って、私より先にライズ様とイイコトしてたんじゃん」
「……いや、それは、昔の話で……」
 傍で聞いていると、色んなことを思い出して、恥ずかしくなってくる。

 それに、一度ジルベールに帰って戻ってきたからわかる。
 まるでよくある日常みたいだけれど、それはこの国の、この学園の自由すぎる風土が生み出した、普通ではありえない関係性なのだと。

「まーまー二匹とも、その辺にしとけって。ライズ本人の前で争うことないだろ?」
 フォールが二匹を(いさ)めてくれて、その場は収まった。

 時間も時間なので、クラスに分かれて、教室へと向かうことにした。
 三匹のうち、ライズと同じクラスなのはヤンレンだけだ。

「そういえばヤンレンさん、担任の先生が変わるって本当? フォールから聞いたんだけど」
「そーらしいよ! 新任の先生が来るんだって」
「新任? じゃあ、ほんとに知らないひとなんだ……」
「優しい先生だといいね!」

 ヤンレンと二匹、会話をしながら教室に入ると、クラスメイト達が一瞬、どよめいた。

「やっぱり、マジでライズと付き合ってたんだ」
「早速一緒に登校なんて、仲がいいねえ」
 クラスメイトの冷やかしに、ヤンレンはふぅ、とため息をついた。

「だから、ずっと言ってんじゃん? 付き合ってるわけじゃなくて、私がお願いしただけで……」
「もう、いいじゃない。ライズ君はもう、普通の男の子なんだし」
 話しかけてきたのは、ムーランドのアイナだ。
 彼女は中等部の頃に同じクラスだったことがあり、ライズのファンの一匹だった、はずだ。
 キャスのいじめに加担していたことは忘れもしないが、それはさておき。
 普通の男の子、という響きは、悪くないなと思った。

「色々あったんでしょうけど、普通はそれを付き合ってるっていうのよ」
「ライズ様もそんなつもりないと思うけどなあ。ね、ライズ様?」
「それは……ええと……」

 そんなやり取りの途中で、チャイムが鳴り響いた。 
 仕方なく会話を切り上げて、自分の席につく。

 担任の先生が変更になるとは聞いていたが、まず教室に入ってきたのは、元の担任、マルヤクデのベルティ先生だった。

「えー、皆さん、おはようございます。知っている方も多いと思いますが、秋学期からこの四組の担任が変わります。新任の先生なので皆さん、優しくしてあげてくださいね」

 ベテランの先生らしく、新しい先生を気遣う素振りを見せたあと、入口に向かって無数の手足で手(?)招きをする。

「では、どうぞお入りください」

 このときの光景を、ライズはおそらく一生忘れることはないだろう。

 前のドアから、教室に入ってきたその姿を目にした瞬間、ライズは椅子から転げ落ちた。


「わたくし、この学園に新しく赴任いたしました――」

 気の強さを宿した瞳、気高さが滲み出る凛とした声。
 リボンで目を擦って、見間違いではないかと、教壇に立つその姿をもう一度確認する。

「――セルネーゼ・ミルディフレインと申します。皆さん、よろしくお願いいたしますわ」

 透き通った氷のような美しい毛並みを持つそのグレイシアは、ライズの婚約者その人だった。

絶対監視計画


 時は遡る。
 橄欖に依頼してライズの意思を受け取ったセルネーゼは、婚約破棄を取り消すよう直談判するため、実家のミルディフレイン家へと帰省していた。

「ならん! ネール、お前は我がミルディフレイン家の大切な一人娘なのだぞ。クレスターニ家が厳格な騎士の家系だからこそ、信用していたというのに……」
 父、ルーセルは、黄昏の姿という少しめずらしい、美しい毛並みを持つルガルガンだ。
 セルネーゼが婚約破棄の取り消しを要求すると、ルーセルはその美しい毛並みが燃えているかと思うくらい、烈火のごとく怒った。

「お言葉ですがお父様。わたくしはお父様の所有物ではございませんことよ」
 しかしその怒りに臆することなく、セルネーゼは毅然と反論した。

「貴方の娘である前に、わたくしは一匹の大人です。わたくしの意思を尊重せずして、『大切な一人娘』などとおっしゃいますか?」
 こちらは最後の手段として、駆け落ちまで考えているのだ。
 一歩も引くつもりはない。

「私はお前のためを思って言っているんだ! ミルディフレイン家の利得だけを考えれば、破棄する理由はないのだ、そうだろう?」
「わたくしのためを思うなら、尚更です。他でもないわたくしが、あの子を……ライズを手放したくはないと言っているのですよ。ならば、誰も望まぬ選択ではありませんか」
「……くっ。娘にそう言われてはな……」
 最初は頭に血が上っていたルーセルだが、決して話のわからない父ではない。
 セルネーゼの主張に、少しずつ耳を傾け始めた。

「だがなぜ、お前というものがありながら、軽率に他の相手と関係を持つような……あのクレスターニ家の嫡子を、許せるというのだ……?」
「……それは誤解ですわ、お父様。わたくしは、許すとは一言も言っておりませんわよ」
 そう、ライズを失いたくない気持ちに嘘はない。
 他の全てを失ってでも優先したいほどの激情が、この胸に渦巻いている。
 けれど――

「今後は、徹底的にわたくしの監視下に置きます。わたくし直々に、この手で更生させてやりますわ」


 それから、ライズの停学が明ける三ヶ月の間に、準備を進めることとなった。
 こんなこともあろうかと、セーラリュートでランナベールの教員免許を取得しておいて良かった。
 法のない国ではあるが、一応教員には資格が必要らしい。
 リカルディの護衛業務を下りることにはなったが、ハイアットがすでに後進の育成を進めていたこともあって、引き継ぎも無事に済ませることができた。

 あとは、セーラリュートに採用されてライズのクラスの担任につくだけ。
 セーラリュートは、金が物を言うランナベールというお国柄の、国立の学園だ。

 婚約を維持する条件として、主にクレスターニ家の出費で根回しのための資金を用意。セルネーゼが王の側近であったこともあり、セーラリュートにはこちらの出した条件をほぼ全て呑んでもらった。


         ◇


 そして現在。

 全ては、計画通り。
 秋学期の始まる九月一日、朝のホームルームの時間。
 セルネーゼは、ライズの所属する高等部二年四組の教壇に立っていた。


「担当科目はバトルの実戦……特に、要人の護衛術が専門ですわ」

 自己紹介もそこそこに、腰を抜かして椅子から転げ落ちたライズを一瞥する。

「おや? そこのニンフィアさん……」
 セルネーゼはライズと面識がないフリをして、名簿に目をやった。

「お名前は……ライズさん、ですわね。どうかされまして?」
 そうして、にっこりと微笑みかけた。

「えっ、い、いや、あの……ええっ!? ど、どうして……」
 ひっくり返ったままで目を丸くするライズに、つかつかと歩み寄っていく。
 前足を差し伸べて、体を起こすフリをしながら、耳元に顔を近づけた。

「……久しぶりですわね、ライズ。今後一切、貴方に自由はないものと思いなさい」
 他の生徒に聞こえないように、囁く。

 そうして、ライズの体を起こして、四足歩行ポケモン用の低い椅子に座らせた。 

「ライズさん、お怪我はなくて?」
「……は、はい……」
 ライズは引きつった顔で、まるで機械みたいにこくこくと頷いた。

「先生、やさしー」
「怖いひとかと思ったけど、そうでもないみたい?」
 教室がざわついたが、気にとめる必要もない。
 セルネーゼは教員をやりたくてここに来たわけではないのだ。
 波風立てず、ライズとの関係は隠して、優しい先生を演じておくほうが都合がいい。

 セルネーゼは教壇に戻って、ふたたびクラスのポケモンたちを見回す。
「新任ゆえ、授業は至らぬところがあるかとは思いますが、ご容赦くださると嬉しいですわ。その代わりと言ってはなんですが……わたくしも皆さんと同じこの学園の出身ですから、先生であると同時に、先輩でもあります。先輩として頼っていただいても構いませんわ」

「セルネーゼ……先輩……あれ?」
 先輩、という言葉に、ヒヤッキーの女子が首を傾げた。
 
「あー! 思い出した! シオン様の隣にいたグレイシア!」
 うっかりしていた。この学園は高等部二年生だから、セルネーゼが卒業した四年前、一年だけ在学期間が重複している。
 卒業してからの日々が濃すぎて、ずいぶんと長い時間が流れたように思い込んでいた。
 セーラリュートは中等部が三年、高等部が三年、その上に他国の短期大学相当の『錬成部』が二年間あるが、単位制で飛び級が可能だ。
 セルネーゼも成績優秀な方ではあったが、飛び級には至らなかった。

「……おや。わたくしはシオンさんの影に隠れて目立たないはずでしたが……」
 その飛び級制度で、学園史上で最も早く、高等部二年のうちに卒業したのが、当時風紀委員長だったエーフィのシオンだ。
 ライズもそれに近い優等生だったが、此度の停学で一学期の単位取得がほとんどできず、三年生まで残ることが確定したらしい。

 ともあれ、あの頃は色々と尖っていたので、当時を知る者がいるのは少し気恥ずかしい。

「……中等部の一年間だけで、よくわたくしのことを覚えていましたわね」
「まー私は入学してすぐにシオン様のファンクラブに入ったからねっ」

 ヒヤッキーの馴れ馴れしさに正直、辟易したが、思い返せば、セーラリュートの生徒なんてこんなものだ。先生にきちんと敬語を使う生徒のほうが珍しいくらいだった。

「シオンさんのついでということでしたら、納得ですわ。えー、貴女のお名前は……」

 名前を確認した瞬間、体温が一度ほど急上昇するのを感じた。

 ヒヤッキーの名は、ヤンレン。
 事前の根回しで、ライズと一緒に停学、謹慎処分になった生徒のリストは手に入れていた。
 ということは、このヒヤッキーが問題のライズの相手に違いない。

「ヤンレンさん……ですか」
 感情を表に出すまいとしたが、声が震えてしまった。

「そだよ! よろしくね、先生!」
 ヤンレンにはまったく気づかれなかったようだが、ライズの方をちらと見ると、青い顔をしていた。
 セルネーゼを良く知るライズには伝わってしまったか。

 さすがに笑顔で返事をすることはできず、どうしたものかと時計を見ると、ちょうどチャイムが鳴る直前だった。
「……朝のホームルームはここまでですわ。また授業で会いましょう」
 セルネーゼはそこで話を打ち切り、一礼をしてスタスタと教室を後にした。

「まずは一匹(ひとり)……重要監視対象ですわ……」
 ライズが関係を持った相手は一匹だけではないらしいが、担任の立場なら、いつでもライズを呼び出して話を聞くことができる。焦る必要はない。

「ふふ……ライズ……もう逃がしませんわよ……」


To be continued...



作者コメント

たぶん、まあまあつづきます。
R18成分多めになります。

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