注意:この作品には以下の要素があります。
「着いたぜっ! エオス島っ‼」
さんさんと陽光が降り注ぐ青空の下。十何時間も閉じ込められていた船から飛び降りるなり、俺は天を仰いで叫んだ。チルタリス一家にアギルダー、ピカチュウなどなど、船を下りようとしていた有象無象どもが一斉に俺に注目する。
「俺様が一体誰かって? よくぞ尋ねてくれました! 俺様こそがユナイト・バトルの真打ちにして、
「はいはい。バカなこと大声で叫ばないでくれる? こっちまでバカだと思われちゃう」
「──なんだよ、ここからが大事なとこだってのに!」
がるるる、いつものように冷ややかな相棒に噛みつく。
「つまんないやつだなあ。俺たちの輝かしい英雄譚の始まりなんだから、こうやって箔を付けとかないと」
「あのねえ。ユナイトバトルは大人気スポーツなの。ザシアンさんみたいな伝説級ならともかく、新しく参戦したばかりのアンタの種族だって、もうこの島には大勢いるのよ。そんな中で目立とうと思ったら、それこそマスタークラスの連中みたいに大活躍するしかないの。アンタにできる? それが」
「おうまかせろ。どんな敵がやってこようが、俺様がバッタバッタとなぎ倒してやるぜ!」
「だからアンタディフェンス型でしょっ‼ あたしを守るのが仕事! 昨日のミーティング聞いてなかったの⁉」
◇ ◇ ◇
『レディ……ゴーっ!』
『ブラッキー、エーフィ! 上ルートだっ!』
審判の号令とともに、俺様たちはフィールドに駆け出す。ご主人のチームメンバーの配慮によって、不慣れな俺と相棒のエーフィは同じルートをたどることになっていた。
「ギャインッ」
俺たちは、エオス島の不思議なエネルギーによって、昔懐かしいイーブイの姿に戻っていた。フィールドを跳ね回っているホルビーたちをスピードスターで正確に仕留め、経験値を溜めていく。
「なかなかやるな!」
「そっちもね!」
いつもは口げんかしてばかりの俺たちも、バトルとなれば話は別。長年の付き合いのおかげで以心伝心、息ぴったりだ。お互い進化前に戻っているから、能力は似たようなもの。二匹で足並みをそろえ、協力して狩りをしたのはいつぶりだろうか。
そのまま、相手とのエンゲージも完璧にこなし、最初の戦闘で相手の一人をダウンさせることに成功。作った差を縮めさせないまま、俺たちは初陣を難なく勝利で飾ったのだった。
◇ ◇ ◇
『今日はお疲れ様! 初試合だったのに、二人ともすごい活躍だったよ! さすがだね』
ご主人のとっているモーテルで、俺たちはちょっとしたパーティを開いていた。いつもは栄養が偏るからと控えめにさせられている好物のポケモンフーズを惜しみなく広げられ、俺もエーフィも目を輝かせて食らいついている。
「それでね。二人にはプレゼントがあるんだ」
ポケモンフーズだけで最高だというのに、まだあるのか。フーズから顔を上げ、目をキラキラさせて後ろ手のご主人を見つめる俺たち。果たして、ご主人が両手に一つづつ持っていたのは、何かが入った小さな水晶玉だった。
『じゃじゃーん、ホロウェアで〜す! これを付けてバトルに出るとね、ホログラムの服を着れるんだよ! ぼくも詳しくはないんだけど、エオスエネルギーっていう力がこの島にはあるみたいでね……』
丁寧に説明してくれるご主人のおかげでなんとか理解できた。人間のテクノロジーは相変わらずすさまじい。
『なんかヤミラミ連れてる怪しいおじさんに
ふむ。誰だか知らないが、見る目のある男のようだ。
「ほほう。つまり、これを付けて明日以降のバトルに臨めば、さらに磨きのかかった俺様の魅力に島中がメロメロになってしまう……というわけか」
そうやって悦に浸っていたというのに、エーフィがまた蔑んだような目でこちらを見てくる。
「なんだよ」
「いや、多分それって……ま、いいわ。明日になればわかることでしょう」
「……はっきりしろよ、ったく」
相変わらずエスパーだ、彼女には何が見えているのかわからん。ただ、理解しようとしても無駄なことだけは長い付き合いでわかっていた。
◇ ◇ ◇
次の日。
試合前、昨日と同じように不思議な光に体が包まれる。だがそれも一瞬で、光が消えるたときには、地面が近くなり、視界に映る足が茶色くなっていた。イーブイに退化したのだ。
……ふと、違和感を覚えた。昨日は感じなかった、言語化できない、意識しようと思わなければ気づきもしないだろう、微細で不思議な感覚。後ろ足のあたりをもぞもぞさせてみるが、その正体はつかめない。
「なあ、エーフィ。何か、こう、変な感じしないか?」
「何が? そりゃ、イーブイになるのは何度体験しても不思議な感じだけれど……」
「……や、多分それじゃない。だけど、ちょっと昨日と違う感じが、する……」
「なによ、それ」
「その、うまく言えないんだけどさ……」
そうこう話しているうちに、試合開始のブザーが鳴ろうとしていた。
『レディ……ゴーっ!』
「何でもいいけどっ、足は引っ張らないでよ!」
「わ、わかってらあっ!」
彼女を追い越して、天空遺跡の道を全速力で走って行く。くそ、体調不良なんかであいつに遅れをとってたまるか。昨日と同じように、ホルビーどもにスピードスターの狙いを定め……。
「あ、ああああああああっ‼」
後ろから素っ頓狂な声が響いて、俺はずっこけそうになってしまう。必中のはずのスピードスターが狙いをそれ、天高く飛び去っていった。
「な、なんだよっ⁉」
「あ、アンタ、その尻尾……!」
「尻尾?」
体をひねって、もふもふの尻尾を見てみる。何の変哲もない、イーブイの茶色の尻尾だ。先端には白くて丸い毛の模様が……。
待て。丸い?
「アンタ、メスになってるわよ……?」
「は………………はああああああああっっ⁉⁉」
◇ ◇ ◇
俺たちはこれでもバトルのプロだ。一瞬動転してしまったが、すぐに立ち直って戦いに戻った。オスにもメスにもポケモンとしての能力に違いはない。幸いながら、今の俺も性別が変わっただけで、それ以外にからだに変化はないらしい。であるならば、この程度で数十匹のポケモンが関わる大イベントを中断するわけにはいかない。
ユナイトバトルは高度な戦略ゲームだ。常に相手に突っ込んでいればいいというものではない。ご主人の指示に従って、戦場の反対側へと移動したり、時には草むらの中に隠れて相手を待ち受けることもある。そういうスキマ時間を使って、俺たちは俺の体に起きた異変を調べようとした。
だけど、体がメスになっているということ以外は本当に何の変化もなかったのだ。さすがにバトル中にエーフィに詳しく見てもらうわけにもいかないし。
レベルが上がって進化したら、ご主人に昨日貰ったホロウェアもつつがなく起動し、俺たちの体がチェックのフリル服に包まれた。ご丁寧に柄までおそろいで、色だけが黒と紫の色違い。
「なんだよこれ〜っ、全然かっこよくねえじゃんか!」
「だからいったでしょう。これをくれたおじさん、きっとあたしたちのことを両方メスだと勘違いしたんだわ」
「あーっ! そういうことかよ!」
「ま、今のあなたなら事実だけどね」
「うっさいな!」
「ふふふ、ごめん。タイプ相性で不利なあなたをからかうの、ちょっと楽しくて。どう? この姿のあたし、素敵でしょっ?」
そう言いながら草むらから飛び出してサイコショックをぶっ放す彼女には、むしろおっかないという感想が先行する。エスパー無効で本当によかった。
そして。ホロウェアへの驚きのせいで忘れていたが、自分の声がいつもより高く響いている。イーブイのときの子供っぽい声とも違う、大人でありながら低くない声。そうか、メスだから声変わりしてないんだ、と気づいた。
◇ ◇ ◇
試合展開は、昨日ほど甘くはなかった。中盤まで有利状況を続けられて、厳しい戦況でラスト2分、レックウザ攻防戦が始まった。試合終了30秒前、ラストヒットを奪い、会心のブザービートを決めたものの、逆転できたかどうかは未知数。
チームの五匹で、固唾をのんでスコアボードを見守る。お互いの得点バーが伸びていき……
敵チーム得点236に対し……こちらが、258。
ギリギリの勝利だった。
「いやったああっ!」
喜びを爆発させた彼女が飛びついてくる。吃驚したが、とっさに自分から地面に倒れ込んで、彼女に衝撃がいかないように受け止めた。
「え、エーフィ⁉ みんな見てるからっ……!」
実体を持たないホロウェアをすり抜け、汗で湿った彼女の熱と匂いがダイレクトに伝わってきて、顔が熱くなる。仮にも英国淑女を自称する彼女は、進化してからはこんな大胆な行動はとらなかったはずだ。
「あっ……ご、ごめんなさい」
我に返った彼女が、さっと立ち上がってもじもじと前足を絡ませた。
その姿を見て、俺も彼女の行動の意味を理解した。声が高くなっている俺のことを、彼女は本能的に同性だと認識していたのだ。試合中、エーフィが楽しそうだったのもそう。同性の友達ができたみたいで嬉しかったのだろう。
「別にいいよ。それより……試合も終わったことだし、
噂にならないよう、声を落とし、彼女にだけ伝わる言い方をした。こくり、うなずいた彼女を伴って、二匹きりになれる選手控え室へと俺たちは向かった。
◇ ◇ ◇
「しかし調べるといってもどうしたもんかしらねえ。ちょっと股開いてくれる?」
部屋で二人っきりになるなり、飛び出してきたのは爆弾発言。
「な……なんでだよっ⁉」
「だって、進化してからフリルが邪魔で全然見えないんだもの」
「だったら脱げばいいだろっ」
「考えていたんだけど」慎重そうに顎に前足を当て、彼女が述べる。「異変が起きたのはこのホロウェアを付けてから、だったよね。原因もその可能性が高い。だとすると、外したらどうなるかわからないわよ」
「わからないって、なんだよ」
「最悪ずっと元に戻らないかも」
馬鹿馬鹿しい。そういって笑い飛ばしてやりたかったが、彼女が真面目くさった顔でいるものだから、ぐっと返事に詰まってしまう。
いやだ。想像するだけで、羞恥に意識が遠くなる。誰にも見せたことがない、しかも今や自分でもどうなっているかわからない秘所を、幼なじみのこいつに見せるなんて。
だけど、ほかに選択肢もなかった。もしいま一時恥ずかしがったせいで、このまま一生メスの体になってしまったら。考えるだに恐ろしい。
「ぜ、絶対に触るなよ」
「もちろん」
「絶対にだぞ⁉」
「わかってるって。部屋貸し切れる時間は限られてるんだから、早くしなさいよ女々しいわね」
「今はメスっていったの、そっちじゃないか……」
嫌がる体に無理矢理命令して、腕をもそもそと動かしていく。
「全然上がってないんだけど。もっとちゃんと引っ張りなさいよ」
「わ……わかってる、から、ちょっとまって。……う、うううぅ……」
「ちょっと、脚閉じないでよ。見えないでしょ」
休憩室のベッドの上。俺はこれ以上なく屈辱的な姿勢を取らされていた──地面に仰向けになり、スカートを自分でたくし上げた状態で、両脚を大きく開くというもの。呼吸に混じって消え入りそうな声を上げながら、彼女の眼前に秘部をさらけだす。
ホロウェアはバトルの邪魔にならないよう、本人の体以外に干渉しないようにできている。つまり、この忌々しいフリルをどかせられるのは俺の前足だけだということだった。たっぷり運動した後で汗臭いであろう、恥ずかしい場所を、わざわざ自分の手で女に見せつけるという倒錯。しかも今の自分は彼女と同じ女になっているわけで、もう何が何だかわからない。気を抜けば閉じてしまいそうになる脚に、開け、閉じるな、と何度も何度も念じる。
「うーん、特に外見的に異常があるようには見えないわねえ。他の子の見ることないからなんともいえないけど」
そして何より恥ずかしいのが……エーフィのほうはこの状況に何ら恥ずかしさを覚えていないということ。当然だろう、同性のそこなんて見ても何も感じないはずだ。
まるで、イーブイのころ受けた健康診断のときみたいだ、と思い出す。女医タブンネのお姉さんに全身を聴き取られた俺は、緊張と興奮で心臓がバクバクいっていた。なのに、それに気づいているはずの彼女は知らん顔。俺みたいなマセガキは、数をさばく向こうからしたら慣れっこだったのだろう。
「ま、まだ終わんないのかよっ……」
「まだもなにも。今やめたら何も解決しないわよ」
「っじゃあ、どうしたらいいんだよっ」
「そうねえ。ちょっと触らせてもらえる?」
「はっ⁉ だめに決まって、いひゃあっ⁉」
叫び返そうとしたその時だった。するり、柔らかな感触が敏感な股ぐらをなぞって、俺は素っ頓狂な声を上げる。
「ちょーっと、失礼して……」
「な、なにやって、ひゃ、っんううっ……」
エスパーの彼女には相性では圧倒的有利。彼女を蹴っ飛ばして、そうでなくても足を閉じて逃げ出すことはできたはずだ。だけどさっきまで、脚を開いたまま動くな、と何度も何度も自己暗示を重ねていたせいで、自分の無意識に自分で縛り付けられていた。
くに、くに、と、割れ目のあたりを彼女の二股尻尾がなぞっていく。そのざわざわとした心地よさに混じって、端っこのあたりにあるらしい敏感な肉芽に触れられるたびに電撃みたいな快感が迸る。そのどちらも、オスだったときに感じた直接的な快感とは違ってて、未知の感覚に思考がぐらぐら揺さぶられる。
しかも、肝心のそこの様子が、どんなに首をもたげようとも自分には見えないのだ。フリルスカートは押さえつけていてもなおふわふわと広がって、俺の下半身の視界を完全に遮っていた。何をされるのか予想もつかないまま与えられる甘美な触覚刺激に、否が応でも意識が集中してしまう。
「は、んんっ、や、めえっ……!」
くち、くちゅ、にち、にぢッ……。少しずつ、押し広げるようにして尻尾が入り込んでくる。密やかに部屋に反響して俺たちの大きな耳に届く水音は、もはや汗という言い訳を許さなかった。
「ふうん……こうしてると、ほんとに女の子と変わんないのね。……なんだか、変な気分になっちゃいそう」
「や、だ、っひいっ……⁉ お、おねがい、えーふぃ、も、やめてえっ……」
「……ほんとにいやなら、逃げればいいじゃない。あんた、以外とこういうのが好きだったりするわけ?」
「ち、がっ……ひゃうううっ⁉」
かぷり。太ももの内側に噛みつかれて、鋭い切歯が動脈に触れる恐怖に背筋がびくりと震える。そのまま、はああ、熱い吐息をゆっくりと吐きかけられ、緊張しきった躯がぶるぶるとこわばった。身をよじって快感を少しでも逃がそうとする。その力が抜けたタイミングを見計らったかのように、にぢっ、尻尾がひときわ奥まで入り込んできて、容赦なく律動し始めた。
「あ、な、にこれえッ……⁉ そんな、おく、おくっ、ぐりぐりって、っひ、だめ、おなか動いてっ、変に、へんになるゔうううぅ……っ!」
「大丈夫、力抜いてごらんなさい。すぅごく、気持ちよくなれるから……」
なにこれ、何だコレ。俺も年頃のオスだ、オナニーくらい毎日のようにしている。だけどそれとは何もかもが段違いだった。柔らかな草地にこすりつけて出すものを出すだけの性処理と、奇天烈極まりない状況とはいえ幼なじみに介抱されて迎える絶頂は比べものにならなかった。
潮汐のようにやってきては引いていく快感の波が、そのたびに高く、大きく、強くなっていって。ついに、ちっぽけな俺をあっさりと飲み込んだ。
「お゙……あヒっ、だめ、いく、おまんこいく、や゙め、いぐがらっ、いくいくイくい゙っ…………っぐううぅ……っ‼」
びくん、びくんっっ! 背筋が反り返って、脚の先までぴんと伸ばして、どこまでも高まっていく快感に感じ入る。
「っい゙、ヒっ、お゙おおっん、……っひっ」
絶頂が収まってからも、ぐしょぐしょにされた秘所を性懲りもなくエーフィが愛撫し続けていて、そのたびにチカチカと視界がショートする。
「……ひっん……んやっ、やめ、んい゙いい……」
全身から力が抜けて、ベッドにぐったりと身を投げる。押さえていたフリルスカートが、静かな布ずれの音とともにずり落ちていった。だけど彼女はもう怒ったりしなくて、むしろうれしそうにこちらに顔を向けてきた。キスするんじゃないかというくらい近づいてきたから思わず目を閉じたけど、そうじゃなかった。顔を通り過ぎて、耳元で彼女がささやく。
「すごいじゃん。あたしがしてあげたとはいえ、初めてでGスポ絶頂できちゃうなんて。そっちの才能あるんじゃない?」
「だ、まれっ……」
「説得力ないなあ。下の口みたいに素直になっちゃえばいいのに。ほうら、もうこんなに……」
「は、にゃあああっ……」
ぐちゅ、ぐち、にぢっ、ぐぽぐぽぐぽっ。尻尾だけが伸びていき、あえて水音を立てて、俺の淫らさをあげつらうかのようにいじくり回していく。彼女の尻尾は俺のホロウェアを貫通していた。よく考えればそうだ、中に何があるかを覚えた今、物理的に干渉されないのなら、ホログラムが上に被さっていようと何の問題もない。
「えへへ、ブラッキーかわいい……」
「だ、だまれだまれだまれっ……っひ、クふうっ……⁉」
俺はオスだ。かわいくなんかない、かっこいいんだ。この島でマスターランクになって、ザシアンさんみたいにアタック型もかくやの大活躍をするんだ。そして、キュワワーもピクシーもワタシラガも、みんなが俺のことをサポートしてくれるような、最強の戦士ポケモンになるんだ……!
「無理だよ。あたしみたいなか弱い女の子にいいようにされてるブラッキーには、ぜえったい無理」
「な、んで、そんなっこと、い゙うんだよおっ……」
エーフィは俺の言葉を無視し、両足で俺の顔を捉えると、唇の端にキスをした。ちゅううううっ、と、長く、長く、濃厚なキスを。
「だから、ね。そんな高望みなんてしないで。……アンタには、あたしが……」
「ふ、ううううンっ……! あ、だめ、そんなっと、こっ……いっひいいイいいっ……⁉」
尻尾の動きは打って変わって緩慢になって、再び高められた俺に簡単には絶頂を許してくれない。彼女の細やかで柔らかな体毛と優しい香りに包まれて、体全体がじんわりと熱い幸福感に包まれていた。けれどそれが故に、同時に与えられる快感がスパイスのようにピリリと俺の脳裏を
永遠にも思えた、熱いハグとキスと愛撫が終わって。彼女の体が離れていく。熱中症になりそうなほど火照っていた体を、外気が心地よく冷やしていく。俺は脱力しきったまま、ベッドの上にそのまま転がされていた。
「よいしょっと」
ぱちん、と俺の首元で小気味のよい音がしたと思うと、そこから何かがふよふよと漂っていく。小さなビー玉のような何かを、エーフィが念力で動かしている。
俺はぼんやりとそれを見つめていた……が、それが何か気づいた瞬間、陶酔していた精神が一気に覚醒。がばりと起き上がる。
「それ……ホロウェアの水晶! え、ちょ、外して大丈夫なのかよっ⁉」
慌てて自分の体を
あった。
オスとして大事なあれ。息子。マイリトルブラザー。
でも、リトルというにはやや難がある──さっきまでの興奮がまだそのまま残っているようで、痛いほどに勃起したそこは真っ赤に腫れ上がっていたのだ。だけど、そんなこと些細な問題だ。
「も、戻った……よかったぁ……」
そういえば、自分の声も低くなっていることに今更ながら気がついた。まるでホロウェアを付けていたときのことが夢だったかのように、体はきれいさっぱり元の状態に戻っているみたいだった。
原因を確かめるだけのはずだったのが、まさかここまで完璧に治療してくれるとは。感謝してもしきれない。
「エーフィ……ありがとう……ありがとうっ……!」
俺は感極まって泣いてしまいそうになりながら、エーフィにひたすら平身低頭した。
だが。顔を上げてみると、当のエーフィは、ばつの悪そうな、だけどいたずらが成功したかのようなうれしそうな顔をしている。
「……あー、えっと、ね。実を言うと、それ、何もせずに外したって、後遺症は残ったりなんかしないの」
「え?…………はあああああ⁉」
「これでもあたしはエスパータイプなのよ。近い未来がどうなるかくらいわかる」
「じゃ、じゃあ……なんで最初にそのこと教えてくれなかったんだよ!」
問い詰める俺に、彼女は頬を赤らめ、目を伏せると、消え入りそうな声で言った。
「……言わせないでちょうだい」
「な……なんでだよっ」
「なんでもよ」
この期に及んで頑なな彼女に、ふつふつと怒りが湧き上がってくる。こっちはあれだけ恥ずかしい思いをしたってのに、言いたくない、だと?
彼女は相も変わらずエスパーだった。何が見えているのか、何を考えているのかわからない。だが、それを盾に何でもしていいと思ったら大間違いだ。
「ふざけるのも……いい加減にしろっ!」
怒りのままに彼女に飛びかかると、その肩を掴んでベッドに押し倒した。力では俺に敵わない彼女は、無抵抗にそれを受け入れ、俺をじっと見つめている。まるで、出来の悪い生徒を見るかのように。
「……いつもいっつもそうやって、ひとのことをコケにして、お高く止まりやがって。どうせ、物分りの悪い俺を、頭の中でバカにしてるんだろ……!」
どこまでも深い紫紺の彼女の瞳を、射殺さんばかりににらみつける。だけど、そうしているとまるで、無効のはずの彼女の
ごくり。無意識に下方に視線をやるが、ホロウェアにすっぽりと包まれた彼女の
俺のをあれだけ好き勝手しておいて、自分は見せるのすら嫌だってか? ああ、この服を剥ぎ取りたい。隠された柔肌を暴いて、噛み付いて、舐め回して、全部ぜんぶ俺のものにしてやりたい……。
ぐう、ぐるる、と。俺がそんなふうに、かすかに残った理性で食いしばった歯の隙間から唸り声を漏らしているというのに、彼女は怖がる様子も見せやしない。
「……ねえ。まだ、貸し切りの時間、残ってるんだけど」
不思議なほど落ち着き払ったまま、押さえつけられた身をよじらせる。きしりと軽い音を立て、ベッドにしわが広がる。彼女が俺の耳元に口を寄せてささやく。前足を、するり、フリルのスカートに伸ばしながら。
「言わせないで、頂戴」
ああ、と。
その瞬間、馬鹿な俺にも、やっと実感として理解できた。彼女がずっと望んでいたことを。エスパーの彼女の、エスパーたる所以を。
タイプ相性なんて関係ない。
張り裂けそうなほどに勃起した俺の逸物が、ぴくりと震える。絶頂こそしたが射精はできていないということを思い出したかのように、下半身から
「……泣こうが喚こうが止めてやらんぞ」
そうやって口では強がりながらも、フリルをたくし上げていく彼女の前足から目が離せない。スカートの下に掩蔽されていた珠の肌が、健康的に引き締まった