ポケモン小説wiki
妖しい鳥にご用心 の履歴(No.2)


注意事項




 ガブリアスは早速、新たな生活の場へと案内される。そろそろ日も暮れる頃合い、既に用意されていた寝床に丸まって眠った。
 一方そこから少し離れた所では……。
「ギース、おめさんまーた若ーけショことたらかした(誑かして引っ掛けた)んかね」
 鳥の姿を見るなり溜息を零す、黒と青の目立つ目つきの悪い猿。
「いいろがね。スケベな事したっていい歳だってがんに(のに)、何も知らねかったみてぇだすけ、ちーとばか体で教えたったんて」
 鳥の発する声は低く、喋りに強い訛りが目立つ。ガブリアスに向けたそれとは似ても似つかない。
「そしたら『姐御~』ちゅーて尾っぽ振って付いて来たっちゅー事かや。オメェが雄とも知らねでやー! そのニオイででれすけ(メロメロ)にするとこ、ほんねオメェらしいてば」
 黒と緑が特徴的で言葉使いが荒い、大柄な二足歩行の犬が豪快に笑った。
「マ、尾っぽ振って付いて来たったらいとしげで(かわいくて)いいねっかね。それはいいろも、あのガブリアスなじょする(どうする)つもりなんかね?」
「そんげ長ーげこと面倒見らんねて。俺も奴のちんちんでっこうて(大きくて)難儀(辛い)すけ、長ーご置くつもりもねんさね」
 青猿のマシマシラと緑犬のイイネイヌに訊かれ、ギースと呼ばれた美鳥、キチキギスは渋い顔を浮かべて苦し紛れに答えた。
「うーん……ヤりてーてせつねがる(苦悶する)ろーし、交尾の事やら何やら教えてあんべよう(いい感じに)なったら、早よ竿役にして事務所に高ーこ売るこてさ」
「ばーかいい筋肉してるし顔も悪くねすけ、いいんでねんか? 銭がふっとつ(たくさん)入ったったらうんめガン(うまいモン)いっぺこと食えるし、いいげなとこに棲めてオレったも得だしな」
 金になりそうだと分かった途端に彼らの目の色が変わった。
「交渉だったらおらがやるすけ、ギースはあのアンニャにみっちり教えれや。若ーけすけすぐ覚えるろ」
「体鍛えるガンはオレに任せれて! もっとみばよう(いい見た目に)するすけやー」
 テレパシーを使いこなせて頭の回るマシマシラなら交渉はお手の物だし、ボディメイクは体を鍛えるイイネイヌの得意分野。苦し紛れに言った事が幼馴染にお膳立てされ、キチキギスは退路を断たれたも当然。
「やいーや……やるかね。もちっとばかちんちんちんこてかったら(小さかったら)楽だろも……」
 熟睡するガブリアスの方を見つつ、キチキギスは待ち受ける茨の道を前に、苦々しい表情を浮かべた。



 ――将来有望だった若きファイターは、忽然と表舞台から姿を消した。これから実績を重ねていったであろう手前、その存在は瞬く間に世間から忘れ去られた。
 一方風俗界隈に流星の如く現れた新顔。雄々しく官能的な外見と磨かれたテクニックで次々と相手を夢中にし、裏社会ながらその新星は一挙時の存在となった。
 周囲から持て囃され、稼ぎ頭となっても、彼は時折虚空を見つめていた。


 出会うのがもう少し遅かったら、多感で無鉄砲なうら若き年頃でなければ、彼は真っ当な道を突き進めていたのかもしれない――



あとがき


 wikiに通う面々には恐らくお察しの通り、こちらのキチキギス側の前日譚の一幕でした。時系列的には現代に復活してキタカミを去ってからトレーナーに捕まるまでの間ですね。
 生きた時代と何もかも違う中で、必死に適応して悪いことをしながら強かに生き延びる3匹を少しでも感じていただければ幸いです。気力があれば、もう少し踏み込んだ部分も追記したいですね。
 相変わらず方言丸出しですが、某連ドラでもタイムリーにこの方言が出てきたばかりなので、タイミング的にはよかったでしょうか?
 しかしキチキギス、後に(つがい)となる存在ができて本当に卵を産んでしまうことになるなんて、当時は微塵も思っていなかったよね(




【原稿用紙(20x20行)】 39.1枚
【文字数】 12479文字
【行数】 295行
【台詞:地の文 台詞率】 153:124行 55% / 3869:8766文字 31%
【かな: カナ: 漢字: 他: ASCII】 6860: 749: 3472: 1504: 50文字
【文字種%】 ひら54: カタ6: 漢字27: 他12: A0%







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