Writer:&fervor
R-18、ポケ×人注意。
「ようやく手に入れた……これさえあれば……フフフ」
妖しく照らされたその葉を手に、僕は一人にやにやと物思いに耽る。前々から試してみたいとは思っていたが、表には出てこないせいでずっと実現出来ずにいたのだ。
直接口に入れてみたい気持ちもあるが、やはりここは粉末にして使うべきか。あるいは炙るのもありだろうか。
スマホロトムに聞いてみても、当然良い使い方など教えてくれない。そりゃ一般の人々には縁の無いものだから仕方ないんだけど。
それを手に入れるために集った仲間達もみな散り散りになっていく。しまった、彼らに聞けば良かったか。
いや、どうせ今回の顔合わせが最初で最後なんだ。お互いの事なんて知らない方が幸せだろう。深入りしすぎても良い事なんてないし。
……ともかく、僕の目的はただ一つ。これを彼女に使って――。
またか、とため息をつきながら、迫ってきた牡に制止の手を翳す。ピクニックセットの陰に隠れた主人をキッと睨むが、どうやらこの視線には気づかないらしい。
「ともかくお断り。私の身体はそんな安くはにゃいの」
タマゴを作ってほしい、とストレートに迫ってきた目の前のケンタロスにノーを突きつけると、彼はがっくりと肩を落として離れていった。
ちょっとだけ申し訳ない気持ちにはなったけど、それでもこの気持ちを押し殺してまで好きでもない相手とコトに及べるほど、私は安い牝じゃない。
しかも、肝心のその牡は私の気持ちをこれっぽっちも理解してくれない。それとなくアプローチしただけじゃ全く気づいてくれないし。
「私のこと、ちゃんと見て欲しいにゃ……」
視線の先には一匹の牡。私に向けられたその目線は、決して私を見てはくれないのだ。
パルデア地方、陸地の一部を抉って作られたかの様な大きな湖。中央の小島でヌシ達と闘いを繰り広げたのはいつの日だったか。
僕はおもむろにピクニックのセットを準備し始める。落ちかけた日輪に照らされて焼け焦げたかのような枯葉が、風でかさかさとこすれ合う。
オージャの湖が視界いっぱいに広がるここ、オコゲ林道。野生のポケモン達も多く、こんな時間にこの場所を訪れる人なんてそうそういない。
だからこそ、あえて僕はここに来た。やっぱり人目がない方が、今度こそ彼女も乗り気になってくれるんじゃないかというそんな期待。
「出ておいで、ミグカ、モルフ」
ぽい、と宙に放り投げたボールから、ぽん、と飛び出す僕のポケモン達。
紫のむにむにとした身体を揺らしながら、モルフは隣を見て少し不服そうな、そんな目線を僕に投げかける。
そして僕の旅立ちからのパートナー、ミグカ。ふわふわと浮かぶ花にぱっと手をかざしたかと思うと、いつの間にか反対の手にそれが握られている。
細く開けた目で僕を一瞥すると、その花をぽい、とその場に放り、踵を返して離れていく。
「ほら、サンドイッチ作ってあげるからおいで」
僕がやらせたいことを察している所為だろうけど、どうも最近は僕に冷たいんだよな。
友達に頼まれてからもう1週間以上。これまでどんな相手を宛がっても上手くいかなかったが、これ以上待たせるわけにもいかず。
最終手段として僕が今回お相手をお願いしたのが、その道のプロと勝手に僕が思っている、このモルフなのだ。
相手の望む姿に”へんしん”できるモルフなら、ミグカもきっと気に入ってくれるんじゃないか。
しかも今回は、そういうことがしたくなるように仕向けるべく、特別な食材も準備した。
タマゴパワー、かがやきパワー、どちらも両立させるため、ひたすら結晶洞窟にこもり続けたあの日々。
そうしてやっとの思いで手に入れたのがこのひでんスパイス。粉にしたそれの封を開けると、潮の匂いが飛んでくる。
風に混じったその香りに気がついたのか、頑なにこちらを向かなかったミグカがくるりと振り向いた。
「さて、やろっか」
テーブルクロスの上に皿を置き、その上にバゲットを乗せる。まずはそれをパン切り包丁でざっくり上下半分に。
その上にレタスをたっぷりとのせ、先ほどのひでんスパイスと、もう一種類のスパイスをまぶしていく。
見た目はものすごくシンプルなレタスサンド。ひでんスパイスが一体どれほどの味を引き出してくれるのだろうか。
「あまスパイス……ね」
三等分したそのうちの一つを手に取り、机の上のランプに照らす。クリームとかなら当然おいしいと思うんだけど、レタスかあ。
そう、もう一種類とはあまスパイスなのだ。こういう甘みが必要なさそうな食品とは相性が悪そうだけど、噂に聞いたレシピがこうだから仕方ない。
食べるのにそこそこ勇気がいるが、かといって僕が食べないものを渡す訳にもいかず。意を決して、大きく口を開けてがぶりと噛みつく。
バターとひでんスパイスの塩味、そしてパンの甘み。レタスのしゃっきりした食感を歯に感じながら、前歯で一口を囓り取った。
口の中で咀嚼するたびに、パンのほのかな甘みが広がる。なるほど、そのものの甘さじゃなくて、こうやって甘みを引き立てるのが効果なのか。
悪くない……というか、いつものパンなのにとんでもなくおいしい。パンがおいしければ当然サンドイッチのおいしさも底上げされるわけで。
「どう……って、聞くまでもないか」
モルフの身体の中に凄い勢いで飲み込まれていくサンドイッチ。あの身体、ほんとにどうなってるんだろうなあ。
そしてミグカは、ちょこんと椅子に腰掛けて、小さな口で一心不乱にサンドイッチを削っている。ふよふよと左右に揺れる飾り草が喜びを代弁していた。
「これで仕込みは完了、あとは僕が少し離れて寝るだけ……っと」
もはやピクニックというよりキャンプじゃないか、と自分で自分に突っ込みつつ、荷物から耐熱シートと寝袋を用意する。
いっそ今度はテントでも買っておこうか、なんて思いつつ、僕は彼らから離れた場所にそれを敷く。
ちょうど机が陰になって、彼らの動向があまり見えないような位置に。かといって全く見えないわけじゃなく、覗こうと思えばしっかり覗ける。
出歯亀になるつもりはないけれど、ちゃんと結果が伴っているかどうかはやはり気になってしまうもの。バスケットがいっぱいになる前には回収しないといけないし。
ともかく、あとは彼ら次第だ。モルフが上手くやってくれるといいんだけど。
「……って顔で見られてるけど、どうする?」
「どうするもこうするもにゃいでしょ」
「だよねえ。そのために呼ばれた自分が言うのもなんだけど、いい加減諦めたらいいのになー」
こっそり……のつもりなのか、バレバレの視線をちらちらと背に感じながら、私はモルフと暗がりの林をふらふらと歩く。
彼というか彼女というか。モルフはどちらにもなれるし、どちらの経験もあるし。恋とは無縁でも、性の心には敏感なようで。
今日も一目会うなり、私に本命がいることを見破られてしまった。その上で、無理強いせず、私の気持ちを尊重すると言ってくれた。
「ま、もう夜だし、そのうち主人も諦めて寝るでしょ。ミグカも寝たら?」
地面に積もった葉っぱの上で、ぐにゅりと身体を平らにするモルフ。ほんと、その身体どうなってるんだろう。
「そうしよっかにゃ……ふあぁ」
お腹もいっぱいになったし、いつでも寝られそうな程には眠気もきている。今日のサンドイッチ、なんだかやけに美味しかったな。
私たちのために奮発してくれたんだとしたら、申し訳ないけどその期待には応えられない。その相手が私の気持ちに気づいてくれない限りは。
いや、仮に気づいてくれたとしても、タマゴを作ることは叶わないと思うけど。それでも、もし願いが叶うなら、なんて。
ちらりと彼の方を見ると、どうやら寝袋に収まろうとしているらしかった。私たちの様子を見て、多分諦め始めている頃合いだろう。
私もさっさと寝てしまおう、そう思って近場の草の上に寝そべると、外気に冷やされた枯葉が私の身体にチクチクと刺さる。
寝ていればそのうちこの寒さも気にならなくなるはず、そう思って目を閉じるが、どうにも身体がむずむずして寝られない。
大きく息を吸って、吐いて。閉じた瞼の先にいる彼の匂いが微かに漂う。本当は、もっと近くにいたいのに。
進化の喜びを分かち合って、世界を賭けて共に戦って、宝物と呼べる絆を手に入れたつもりだった。でも、それだけじゃ足りなくなった。
私は牝として、彼を求めるようになっていた。彼の存在が、私の中で日に日に膨らんでいった。でも、私はどうしてもポケモンなのだ。
そして、彼はどうしても人間で、私の主人なのだ。だから、きっと彼にとって私は、そういう対象じゃないんだと思う。
分かっていても、私の中で渦巻くこの気持ちに嘘はつけない。どんなマジシャンでも、自分自身は騙せないのだ。
その手を握って見つめ合ったこともある。挨拶代わりのキスもしたし、その身体に抱きついたことだってある。
でも、彼は私の気持ちには気づいてくれなかった。ませてるね、なんて言葉で片付けられて、むしろ距離が遠くなってしまった気さえする。
それからは、彼に近づくことが怖くなってしまって。近づけば近づくほど、離れていることに気付かされる気がして。
「……さみしいにゃあ」
ポツリとこぼした言葉も、当然彼には届かない。声は聞こえても、その意味は彼には通じない。彼は私とは違うから。
薄目を開けると、ひらひらと揺れるテーブルクロスの奥で寝袋を上下させる彼の姿が。どうやらもう寝始めた様だ。
ああ、あの身体に触れていたい。いつものスキンシップじゃなくて、もっと熱く、欲求のままに彼の肌を、体温を感じたい。
悶々と火照る身体をもぞもぞとこすり合わせながら、寝袋の奥に思いを馳せる。あの肌に手を触れて、優しくなぞって、それで。
「身体……あつい……にゃんで……」
頭がぼーっとする。周りの木々が、地面が、湖が、星が、空が溶けて消えていく。その場に残るのは彼の匂いだけ。
いてもたってもいられず、私はふらふらとその匂いのする方へと歩き出す。叶わないと分かっていても……いや、いるからこそ、欲しい。
言葉でも仕草でも伝わらないのなら、身体で伝えるしかない。私の思いを、ありったけ、彼にぶつけるんだ。
どん、と何かが私の行く手を阻む。かたん、と何かが倒れる音を横目に、私はその先にいる彼に向かって飛びかかる。
もう、我慢なんて――。
何かがぶつかる音で目を覚ますと、目の前には寝ていたはずのミグカが。ふぅはぁと荒い息を吐きながら、なぜだか僕の寝袋を器用に開けている。
「ちょ、ちょっとミグカ、どうしっ……んんぅっ!」
慌てて起き上がろうとした僕の身体を押さえ込んで、ミグカは顔を限界まで僕に近づけて、そのまま唇と唇を重ね合わせてきた。
なんてことない、いつもの彼女のスキンシップ……のはずが、チロチロと舌で僕の唇を開けようと必死になっている。
や、こういうのは僕じゃなくて。それこそモルフとか、番になる相手とやることであって、僕とやることじゃない。
待って、と口にしようとするが、一瞬緩んだ隙を逃さず、彼女は僕の口内へと入り込んできた。ざらざらした舌が、僕の中をかき回す。
必死で彼女を引き離そうとするが、僕の力では彼女に敵うはずもなく、両腕を押さえつけられ、されるがまま。
やがて満足したのか、彼女はそっと僕の唇から離れていった。とろり、と彼女の口から垂れた雫が、僕の頬を一筋伝う。
息を整える間もなく、今度は寝袋が開かれる。服を上へ上へと引っ張る彼女をひとまず落ち着かせようと、僕は一旦足を寝袋の外へ出し、その場に座る。
にゃぁ、と小さく甘える彼女の姿は、どう見てもただ事じゃない……というか、僕が求めていた彼女の姿そのものだ。ただ一つ、相手が違うということを除いては。
「ミグカ、ほら、相手ならあっちにいるでしょ?」
そう言ってモルフの方を指差すが、彼女はふーっ、と怒って僕の手をはたき落とす。そのまま僕にすり寄ってくる彼女の手は、明らかに僕を誘っている。
「……もしかして、僕がいいの?」
そんなこと思いもしなかったが、そう問いかけた僕に抱きついてきた彼女の様子からして、どうやら本当にそうらしい。
彼女の事をそんな目で見たことがなかったから、今まで全然気がつかなかった。でも、そう思えば思い当たる節はいくつでもある。
そりゃ、僕に別の牡を宛がわれたって受け付けないはずだよな。だって、他でもない僕を求めてたんだもの。
「そっか……ごめんよ、ミグカ。僕、全然気づいてあげられなくて」
にゃあ、と返事をする彼女の手を取って、僕は改めて彼女と見つめ合う。彼女の期待に満ちた目に、僕はどう応えれば良いだろうか。
僕にとって彼女は大切な旅のパートナーで、かけがえのない仲間。それ以上の関係を求められても、今の僕にはまだ、気持ちの整理は付きそうにない。
ただ、僕の身体はどうやら、彼女の身体には応えてあげたいと望んでいるらしい。彼女の火照った身体を、僕で満たしてあげたい。
「……返事は、もっと先にさせて欲しい。でも、ミグカの身体が望むなら……僕の身体は、それに応えてあげたいと思ってる」
ごそごそと上半身の服を脱ぎ捨て、寝袋と共に横へどける。今度は下半身を、と思い立ち上がると、彼女の手が僕のズボンへ伸びてきた。
するり、と下ろされるパンツとズボン。僕の身体を包むものがなくなり、ひんやりと冷たい空気が僕の身体を包み込む。
そして既に自己主張を始めていた僕の雄を、彼女の手がそっと包む。くにくにと肉球にもまれながら、あっという間に屹立したそれを見て、彼女はごくり、と唾を飲む。
ぎこちなくソレを前後に揺さぶる彼女の手つきは、お世辞にも上手いとは言えず。僕も自分以外の誰かに触らせた事なんて無いけれど、それでもこれじゃイけそうにない。
「ほら、こうやって……こう」
彼女の手を上から包み、もう少し強く挟んで擦るように導いてやる。こうして肉球で扱かれると、まるでそういう大人のおもちゃのような触感だ。
じっと僕の鈴口を眺めながら、ひたすら雄を扱く彼女。ぺたんと座る彼女の横には、いつもなら浮いているはずの飾り草が落ちている。
それすら忘れるほどに、僕の雄に夢中になってくれているのだと思うと、牡としてはちょっと誇らしげな気持ちになる。
「……いいよ、僕はもう十分。次はミグカの事、気持ちよくしてあげるから。ほら、横になってみて」
じんわりと涎を浮かべる僕の雄。いつでも挿れる準備は整っているが、ミグカの方はそうではないはず。今度は僕が、彼女を気持ちよくさせる番だ。
耐熱シートに彼女を寝かせ、僕はその隣にそっと寝そべる。裸で抱き合うと、彼女の毛の感触が全身に伝わってくる。
どくどくと脈打つ彼女の鼓動が、小さな胸の膨らみの奥にあるのを確認しながら。僕は彼女の唇を、今度はこちらから奪うことにした。
「んっ、むぅ」
主人の顔が、ずいっと私に寄ってきたかと思うと。次の瞬間には、私の口の中は彼で満たされていた。
息を吸うたびに彼がそこにいて、舌を動かすたびに彼がそこにいて、身体を捩るたびに彼がそこにいて。全身で彼を感じて、私はぴくりと悦びに震える。
彼の手が私の胸を弄って、小さな突起をくにくにと玩ぶだけで、私は軽く絶頂を迎える。じわり、と股ぐらの毛が濡れていくのが分かる。
腰をなぞりながらその手が徐々に下へと降りてくる。私も彼の顔から手を下へなぞると、ぴくん、と彼の雄が跳ねて私の身体を叩いた。
「……すごいね、これならもう、何もしなくても良いかも」
くちゅ、と私の雌に触れた彼は、そう言いながらも私の中に指を挿れてきた。中をぐるんと一周かき回されるだけで、私の身体ががくがくと跳ねる。
横に居たはずの彼はいつの間にか私の上に覆い被さっていて、私の粘液で濡れた手で自らの雄をくちゅくちゅと扱きながら、私に甘い吐息を吹きかける。
「いいん、だよね?」
月明かりを遮る彼の顔は、いつの間にかすっかり一匹の牡になっていて。はぁ、と荒い息で私の身体を求めている。
その事実が私にとってはとても嬉しくて。私が求めていた繋がりの一欠片がここにある、それだけで今は十分だった。
「きて、ほしいにゃ……」
言葉は通じなくても、声は聞こえるし、心も通じ合う。私たちは旅の中でずっとそうだったし、これからもそうでありたい。
主人がどう思っているかは分からないけど、私はこれからもずっと、主人にとっての特別であり続けたい。
じゅぶ、と大きな質量が私の雌を抉ってくる。熱い、気持ちいい、もっと、もっと欲しい。私は、目の前の牡の、全部が欲しい。
思っていたほどの抵抗もなく、彼の雄がすっぽりと私の中へ収まった。彼の毛と私の毛で、繋がっている場所は全く見えないけれど、多分血とかは出てなさそうだ。
「大丈夫……そうだね。じゃ、動くよっ……」
ずるる、と雄が引き抜かれると同時に、私は情けない声をあげてイってしまった。ひくひくと何かをほしがる私の雌に、再びゆっくりと雄が入ってくる。
甘い声で何度もそれを求めながら、私は空に向かって手を伸ばす。彼の身体を抱き寄せたいのに、彼が肘を伸ばして腰を振るせいで届かない。
「ミグカ、顔、えっちだね……かわいい」
彼の声が耳を犯す。甘い言葉が私をふわふわと絶頂へ導く。伸ばしていた腕で顔を隠しながら、けれどもにやつくのを抑えきれず、私は盛大に潮を噴いた。
「ご主人、ずるいっ……こんにゃのっ……こんにゃの、ぉっ!」
訳も分からず、唯々快感に溺れながら、私は彼を求め続ける。と、急に彼が私の身体を引き剥がした。
どうして、と切なく声を漏らすと、今度は私の身体がくるりとうつ伏せにされた。後ろから抱かれるようにして、私はその場に四つん這いになる。
「んにゃぁぁっ、これっ、これ、だ、めぇっ!」
さっきよりも乱暴に突き出された雄を、けれども貪欲に飲み込んだ私の雌が悲鳴を上げる。じゅぷじゅぷと響く水音が湖畔へ消えていく。
意図もなく伸ばした手が、近くにあった寝袋を掴む。そこに顔をうずめると、彼の匂いが鼻から頭の中を突き刺してくる。
「しゅき、ごしゅじ、ん、しゅきぃ……」
気持ちいいが一杯で、好きが一杯で、彼が一杯で、それでもまだ足りなくて。ぽたぽたと水溜まりを作りながら、雄をぎゅうと締め付ける。
「んっ、ぁ、イ、イきそっ……!」
びくびくと急に震え出す彼の身体。無我夢中で身体を振る私の腰を押さえつけて、彼はどん、と私に身体を打ちつけて、その中で熱く何かが爆ぜる。
どくどくと中に注がれているこれが、彼の子種なのだろう。はーっ、と長く息を吐き、彼はどうやら絶頂の余韻に浸っている様子。
やがてずるりと彼の雄が私から離れていき、私の雌はぽっかりと穴を空け、どろりと白濁の残りを零す。
そのまま彼は私を抱き寄せて寝転がると、もう一度私にキスを求めてきた。それに応えて、私も彼を抱きしめ返す。
彼の体温が離れるのが嫌で、何度も唇を重ねている内に、彼の雄が私のお腹をなぞりながら、ムクムクと起き上がり始める。
彼の手が私のお尻を撫でるので、私も彼の背中からお尻に手をやってみる。今じんわりと雌の中から垂れてきているのは、彼の精液だけじゃなさそうだ。
「まだ、って顔、してるね……ミグカ」
「ご主人だって、こんにゃにしてるくせに」
次は私が、ご主人の上に覆い被さる。ご主人の全部が、欲しい――。
目が覚めると、湖に昇った太陽が、水面を揺らしながら輝いていた。僕の周りはなんだかよく分からない液体でテカテカと濡れている。
そうして何より、僕の身体の上にはミグカが覆い被さっている。慌ててそれを引き剥がすと、ようやくミグカが目を覚ました。
こんな所を他人に見られるわけには行かず、急いでウェットティッシュで身体を拭いて服を着る。ミグカはくあぁ、とあくびをしながら立ち上がった。
そんな彼女の身体も酷い有様。僕はとりあえずスポンジを泡立て、彼女をこちらに招き寄せる。普段は濡れることを嫌う彼女も今回ばかりは観念した様子。
彼女の身体をスポンジでなぞるたび、昨晩の情事を思い出して顔が熱くなる。この身体を抱き寄せた事も、ベトベトに汚したことも、全部覚えている。
「ミグカ、その、えっと……それで、昨日の返事、なんだけど」
彼女に求められるがまま、僕は身体を重ねてしまった。彼女が欲しがったから、僕はそれを与えただけ。そのつもりだった、けれど。
きっと僕は、今まで彼女の事を見ないようにしていただけだったんだと思う。自分の気持ちに蓋をして、人間だからと壁を作って、彼女を突き放していただけなんだ。
肌と肌が触れあうたび、雄と雌が繋がるたび、僕は彼女を求めるようになっていた。本当は、僕も彼女と、そういう関係になりたかったんだと気づいた。
旅をした仲間、なんてよそよそしい関係じゃなくて、心も身体も繋がった、真の意味でのパートナーになりたかったんだ。
「……僕と、付き合ってください」
暫く考えるような素振りを見せた彼女は、ふわりと浮かべた花に手を翳し、一瞬で消してみせる。そして僕の掌に手を翳すと、そこには先ほど消えた一輪が。
笑顔でにゃっ、と鳴く彼女を抱きしめて、僕は少しだけ、頬に口づけをしてやった。小さく身体をビクッと震わせた彼女は、すぐに僕の身体を抱き返してきた。
「これからもよろしくね、ミグカ」
その顔をじっと眺めながら、もう一度顔と顔とを近づけて、熱いキスを……しようとしたところで、奥でぶよぶよと跳ねる物体に気がついた。
「……あ」
どうぞご自由に、とでもいうような冷たい視線を感じる。そういえば、昨日から外に出しっぱなしだったけど。まさか、全部見られてたりしたのかな。
それと同時に、とんでもない事実に気がつく。約束してたタマゴ、どうしよう……!
「ミ、ミグカ……いやダメだダメだ、それは僕が許さない。でもニャオハなんて他に……」
慌てふためく僕をよそに、ミグカは静かにバスケットを指差している。急いで中を確認すると、なぜだかタマゴがそこには入っている。
「え……これ、どうなってるの?」
そう問いただしても、さあね、とでも言わんばかりに首を傾げるミグカ。夜の間に僕以外の牡と子作りした、なんてあり得ないし。まさか僕の……?
笑顔で僕を見つめる彼女。タマゴはあと何個必要なんだっけか。もしかして、いやでもそんなまさか。
僕の身体を押さえつけるミグカ。静かに離れていくモルフ。もしかしなくても、本当に僕とミグカでタマゴが出来たって言うんだろうか。
「ちょ、ちょっと待って、ミグカ、そもそも僕たちのタマゴだとしたら、渡すつもりなんてないし……ね、ねぇ、ねぇってばぁ!」
湖を虚しく走り抜ける僕の声。折角きれいにした僕たちの身体が再び汚れるのには、それほど時間はかからなかった。
・返信
>良かったです
こちらこそ貴重な一票ありがとうございました。マスカーニャかわいいよマスカーニャ。
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