【18】親知らずのミミロップ
目次
タマゴ技を持った個体が欲しくなり、預かり屋を訪れたはいいものの──その玄関先でミミロップは動かなくなってしまった。
僕ら人間にはピンとはこないが、この預かり屋の雰囲気というか匂いにはどこかポケモンを刺激するものがあるのだろう。
僕のミミロップが感じたそれは恐怖に近い感情のようだった。
とはいえしかし、その気持ちも分からなくはない……。
例えるに、ある日突然連れて来られた見ず知らずの場所で、これまた見ず知らずの同種かあるいは正体不明のメタモンと子作りを強要されるわけなのだから、当人にしてみれば狂気の沙汰もこの上ないこと無いだろう。
とはいえしかし、そこはポケモンだ。
このシステムだって業界で永らく培われてきたものであるし、人間同士の不埒な出会いの場とは訳が違う。
「大丈夫だって、怖くなんかないよ。本当に無理だったら拒否だって出来るんだから……とりあえず試してきてよ」
最初に変な妄想をしてしまったせいか、すがるミミロップを説得する自分の台詞が何とも白々しくも感じられてしまう。
これでは借金のカタに恋人や配偶者を風俗に売り渡すダメ男の絵柄そのままだ。
とはいえしかし煩雑な手続きを終えた今とあっては、今さら『やめます』とも言いだせず、僕は半ば強引にミミロップを置いて施設を出た。
完全に室外へと出る直前──背中越しに一瞥くれたミミロップは、僕に向かって助けを乞うかのように手を伸ばしていた。その姿がなおさらに罪悪感の尾を引く。
ともあれ今日は初日ということもあり、夕方には再び迎えに行った。
施設のドアをくぐるなり、ミミロップに抱き着かれる。……その勢いたるやタックルそのままだ。
職員の人に話を聞くに、どうやら今日一日はまるで緊張が解けなかったらしい。
一日中部屋の隅で丸くなっていたことを聞かされて、なおさらに申し訳なくなってしまう。
しかしながらそんなミミロップの様子にもしかし、『数日もあれば慣れますよ』とも職員さんは言ってくれた。
彼女同様に、初日から数日はこうして緊張してしまう個体も珍しくは無いようである。
僕もまた気長に構えることにしてその日はミミロップを連れて帰った。
その日、彼女はモンスターボールに入ることを嫌がり、終日僕に引っ付いて過ごした。
食事も然ることながら風呂や就寝、挙句はトイレにおいてすら僕はミミロップを膝にして済ませる羽目になった。……なかなかに面倒臭いことになってきたぞ。
そして翌日──またも僕は彼女を預かり屋へと連れていく。
やはりというか想像通りにミミロップはぐずり、その拒否反応は初日以上の抵抗っぷりとなった。
それでも最後はやはり無理矢理に彼女を預け、昨日同様に夕方には迎えに行くという形を取った。
そんなやりとりが数日も続くと、ミミロップも諦めの境地に至ったのか、聞こえよがしにため息をついては預け屋に通うようになった。
この頃になると施設の中で友達も出来たようで、以前のような激しい拒否反応が出ることもなくなっていた。
後は恙無く交配が済めば御の字ではあるのだが、残念ながらその兆候だけはいつまで経っても見られなかった。
施設側とやり取りしている経過観察のメモにも、やはりというかミミロップ側からの激しい抵抗意識があり、異性との進展は『友人関係』以上には発展していないとのことだった。
長丁場を覚悟する反面、そうまでしてタマゴを得ることにも煩わしさを覚え始めたある日──その事件は起こった。
ここ最近は一人で施設へと通わせていたミミロップではあったが、その日帰宅した彼女はいつになく気もそぞろな様子だった。
明らかに雰囲気の違うことに気付いた僕は彼女へとその理由を問い質していく。問い質しつつもしかし……頭の片隅ではその態度の意味もまた理解していた。
両肩をワシ掴んで訊ねた彼女は、僕と視線を合わせたり外したりとどこか他人行儀なよそよそしさを見せる。
今までにないその様子は、一連の預かり屋に通わせてからはもちろん、ミミロル時代にも見せたことのないような表情と仕草であった。
「黙ってたって分からないよミミロップ。……本当に何があったの?」
問い質す僕もまたドキドキしていた。……というか、『ある答え』を既に妄想してはそれに興奮すら覚えていたと思う。
やがてミミロップは静かに僕から離れると、傍らのテーブルの上へと乗り上がった。
その上にて両膝を立てて開脚をすると、股座が良く見えるように両足を左右へ展開させる。
そしてその奥底、彼女の膣に──粘液の乾いた筋跡が鈍く反射しているを見つけて息を飲んだ。
喉から鳴り出す鼓動を荒い呼吸で刻みながら、僕はそこへと手を伸ばす。
そして恥丘の左右に指先を添え、陰唇の割れ目を引き開いた瞬間──そこからは何者かの白濁した精液が溢れ出しては彼女の尻に伝った。
途端に噎せ返るような青い臭気が充満する。
それでもしかし、興奮も手伝ってか僕にはそんな他人の精液の匂いですら気にはならなくなっていた。
今この瞬間──僕の脳は、自分のミミロップが『他人に抱かれた』という事実に焼かれていた。
不浄とも思わずに僕は彼女の膣へ中指を挿入すると、存分にそこを撹拌しては膣内の精液を掻き出す。
そんな僕からの仕打ちにミミロップもまた熱っぽい声を上げた。心情とは裏腹に、行為を終えた直後の体はいまだに熱を持っては昂ったままだ。
いつしか僕は、タマゴ技を持ったポケモンを得るだとかそんな目的はどうでもよくなっていた。
依然としてミミロップの膣から精液を掻きだす行為に夢中になりながら、無情にも僕は命じていた。
「明日も……頑張ってくるんだよ。いっぱい……いっぱい注いでもらおうね」
ついには興奮から眩暈すら覚えて、僕はきつく瞼を閉じる。
脳裏の虚空には、今日以上に激しく責め立てられては膣内射精をされるミミロップの妄想が……艶めかしくもリアルに展開されるばかりだった。
あの日以来、僕の日課が一つ増えてしまった。
それは夕方にミミロップが預かり屋から帰宅すると……
「ミミロップ、今日はどうだったの? ホラ、早く見せて!」
僕は出迎えの挨拶もそこそこにミミロップをベッドへと誘う。
そうして仰向けに寝かしつけては両膝を立てさせると、晒された膣を両手で押し開き……
「わぁ……こんなに奥まで出されちゃってる……」
彼女の膣に放出されたザーメンを……彼女が他人のオスに犯されたという証拠を確認するのが、僕の新たな日課となってしまった。
当初はミミロップもそれなりに恥じらいや嫌悪に近い感情を見せたりもしていたが、今となっては僕の興奮する姿が面白いのか、近頃ではむしろ挑発よろしくにそれを見せつけてくるようにさえなった。
今だってそこ一点を凝視している僕を前に、息を止めて腹腔に力を込めるや──膣の圧にて胎内の精液を溢れ出させるなんて芸当まで披露してみせる。
「っぷわ!? もー下品過ぎだぞミミロップ! それとも……預かり屋でもそんな風に振舞ってるの?」
言葉とは裏腹に興奮しきりの僕はそんなことを聞いてはさらに自分を昂らせてしまう。
一方でそれを受けるミミロップもまた小さく鼻を鳴らせては妖艶に微笑むと……舌なめずりをしては、厚みのある上唇をさらに艶めかしく濡らしてみせるのだった。
「なんだ、その態度は! 僕をバカにして!」
そんなミミロップを前に僕もまた激しく憤っては、無慈悲に立て揃えた指々をミミロップの膣へとねじ込む。
その突然の仕打ちに、ミミロップの頭を仰け反らせては声を殺す。
自然界では絶対に発する要もないであろう汚い声を上げるミミロップはしかし、心から僕とのこの一時を楽しんでいることは明らかだった。
「ほら! ほら、気持ちいいのッ!? ご主人に見下されながらオマンコほじられるのがそんなに気持ちいいのか! この動物ッ!」
一方でそんなミミロップの態度に僕もまたヒートアップしては、彼女の膣(なか)を突きえぐる激しさを増していく。
関節を曲げ、ヘソの裏側を膣壁ごしに搔いてやるようにこそぐと──呻きとも過呼吸ともつかない音を喉から発しながら、ミミロップはいともあっけなく絶頂を果たす。
首だけでブリッチをするようにして、ヘソを天高くに突き上げては絶頂直後の余韻に耐えるミミロップ……そうして一通り彼女を責め立てると、ようやく僕も落ち着きを取り戻す。
いつもながら、この我に返った瞬間ほど脱力感と後悔に苛まれる瞬間も無い……僕は彼女を置いてベッドから降りると、ミミロップを清拭してやる為の水タオルを作りに風呂場へと向かう。
タオルの前に手を洗い、ついでに大きくしぶきを上げて顔もまた洗うと僕は大きくため息をついた。
いつものことながら不思議に思うことは、これだけ興に乗って彼女を責め立てているというのに、どういう訳かミミロップとの交尾だけは──彼女の膣に自分のペニスを入れてみたいという衝動にだけは駆られないことだった。
それどころか彼女を責めている時は勃起すら起こらない。
やはり頭のどこかではポケモンとの一線を越えることに対し、本能的なブレーキをかけているのかもしれない。
そのことに安堵する反面、それでもしかしパートナーポケモンとこんな関係になってしまっている自分を蔑まずにはいられなかった。
タオルを絞って寝室へと戻ると──ベッド上のミミロップは、依然として仰向けのまま頭の後ろで手を組み、肉付きの隆起に富んだ肢体を晒しながらに僕を待っていた。
もはや絶頂の余韻からは脱したのか、呼吸に合わせて上下する胸元はもう穏やかなものだ。
それでもしかし、そこから向けてくる嘲笑すら思わせるどこか挑発的な笑みの瞳は、まだ彼女の中に強い欲情が滾っていることを如実に僕へと伝えていた。
そんなミミロップの元へとたどり着き、その体にタオルを這わせる。
4つに畳んだそれがみぞおちの上に置かれるや、彼女の肢体がピクリと反応する。以降は丁寧に彼女の体を僕は拭いていくのだった。
元より筋肉質だったことに加え、昨今では胸元に脂肪も集まってきた彼女の体は実に肉感的だ。
短い体毛も滑らかならば、その手触りは褐色の『人の肌』を撫でているのと変わらない錯覚すら覚える。
斯様にして『女』の体へと変貌を遂げつつある彼女に触れていると、雄(おとこ)の存在ひとつでこうまで変わってしまうことが不思議だった。
そして毎度この瞬間にそれを思う時、僕は日中に彼女を抱いたオスへの激しい嫉妬に駆られる。
それはもう『ポケモンのトレーナー』としての立場というよりは、僕自身が一匹の雄として他者に抱く感情に他ならなかった。
「……辛いなら、もう行かなくてもいいんだぞ」
依然として彼女を拭いてやりながら、ふとそんなことを告げる。
その僕の言葉に顔を上げては、さも意外そうにミミロップはこちらを見たのだろうけど……一方の僕はありとあらゆる感情から起因する『羞恥』に耐えかねてはそんな彼女を見ることが出来ない。
うつむいたままミミロップの胸元一点に視軸を固定していると、やがてその視界の中に左右に展開する彼女の両腕が現れ──そしてそれは僕を深く抱きしめては胸の中に掻きこんでしまうのだった。
乳房の膨らみが感じられるミミロップの胸の中で、その突然の出来事に困惑するばかりの僕を、ミミロップは正面から見つめてくる。
この至近距離からではもう視線は外せない。……否、僕はまるで捕食の瞬間に遭遇した鼠のように、見据えられては視線を外すことが出来なかった。
そうしてミミロップは、僕の唇を奪う──……思えば、これがファーストキスだった。
そんな感慨にすら更けさせないよう、ミミロップの舌先は無遠慮に僕の口中に侵入しては存分に舌同士を絡め合い、互いの唾液を交換した。
──お前は……外でもこんな風に他人の男(ポケモン)とキスをしているのか……?
その時においても、僕はそんな考えに囚われては気持ちを重くさせてしまう。
そんな僕に気づいてか否か、彼女から施されるキスはその後なおも情熱さを増していった。
熱い舌先と粘度の高い唾液からは不思議と、珈琲のほのかな香りが感じられた……。
ミミロップが預かり屋へと通うようになってから、僕の日常は緩やかに狂い始めて行った。
寝ても覚めてもあの施設におけるミミロップのことが気に掛かるあまり、僕は日々の生活の中で何も手につかないことが多くなった。
大抵の場合、彼女を送り出してからそして帰ってくるまでの記憶があいまいなことが多い。
おぼろげに何らかの活動をしている記憶はあるのだけれど、やはりその最中は気もそぞろになっているのか、ほとんど印象には残っていない。
かくして夕方に帰宅するミミロップを迎え、そしてその体に施された情交の痕を確認してようやくに僕の短い一日が始まるといった具合であった。
そして今日もまた、ミミロップが玄関のドアを閉じるその音に覚醒しては僕も我に返る。
出向えに赴くまでもなく、ミミロップは自らの足でリビングまでやってきた。
「お、おかえり……今日はどうだったんだい?」
語り掛けながら存外の空腹に見舞われて僕は脱力感を覚える。……どうやら今日は朝から何も食べてないらしい。
一方で尋ねられたミミロップはといえば、いつになく浮かない顔をしていた。
預かり屋から戻る時にはどこかよそよそしい態度を取っていることはよくあることだったが、それにしても今日の様子はおかしい。
もしかして何か膣に重大なケガや不具合を生じさせてしまったのかと思うと、それを想像する僕からも血の気が引く。
「み、見せて! はやく、ホラッ‼」
今日に限ってはいつものあの歪んだ情欲などではない、真にミミロップの身を案じては声が大きくなった。
そんな僕に対しミミロップは、つと背中を向ける。
普段なら僕の部屋のベッドの上で確認作業をするはずが、今日はこのリビングでの行為を望んでいるようにも思えた。
そうしていつにない行動に戸惑う僕をよそに彼女は屈みこみ、うなじから腰元にある骨盤の窪みまでの背中全体が見えるように垂れていた耳を胸の前に抱き寄せる。
背後から望むその姿たるや、まるで全裸の女性の眺めそのものだ。こんな状況であっても、僕は目の前のミミロップを純粋に綺麗だと思った。
しかしながら、そんな印象すらも一変させてしまう行動を彼女は取る。
小さく息を吸い込んだのちに呼吸を止めると、ミミロップは強く息張んで腹腔に力を込める。
膣内から精液を押し出させる為にするいつもの行動ではあるのだがしかし、それでも今日のそれからはそんないつもとは違った気配が感じられた。
両膝を抱くように屈みこんでは尻を突き出させるなんて、それこそ野外で排泄する時の姿勢そのものだ。
そしてその印象の通りに──ミミロップの尻元からは激しく空気の破裂する音が響き渡った。
膣から体液が逆流する時にも水音を含んだ空気の撹拌音は漏れるものだが、今ミミロップから奏でられているもの、そんな音とは明らかに力強さが違う。
そしてその音の正体こそは、肛門から押し出される放屁それに他ならなかった。
「ま、まって! お前、なにを──……ッ」
瞬時に最悪の事態を連想しては制止しようとする僕をよそに──彼女は直腸内に留めていたものをフローリング上へと排泄してみせた。
暗褐色の排せつ物を想像していた僕ではあったが、目の前に広げられたものは白濁した大量の液体……紛うかたなき『精液』であった。
それを目の前に突き付けられ僕の頭は白くなる。
一方でそんな僕をミミロップもまた背中越しに望んでは、どんな仕打ちを僕からされるものか待ち望んでいるようでもあった。
「そんな……そんな、無理矢理お尻でされたのか?」
斯様なミミロップの視線を受けつつも、僕はどう反応したらいいものやら途方に暮れてしまう。
一概にこの事態に対して『怒る』にしても、この場合は誰にその矛先を向得たらいいのかが分からない。
こんな場所での交尾を強行してしまった相手ポケモンか、それとも適切な管理と監視をしてくれなかった施設に対してか……しかし困ったことに、この事実が浸透するにつけて沸き上がる未知の興奮は、そんな通り一遍の怒りなど全て僕の頭から押し出してしまうのだった。
そしてさらにタチが悪いことには、そんな僕の感情の機微をパートナーであるミミロップは小憎たらしいほどに理解しては、さらに僕を悦ばせる行動を取ることだった。
両膝を床に突き、腕の支えも失くして床に横顔も着けると、今しがた粗相をしたアナルが僕の眼前にさらけ出される様に小高く尻を突き上げる姿勢を取った。
目の前でぽっかりと洞を穿ってはその淵に精液の残滓をこびり付かせた肛門と、一連の行為に興奮してか白く泡立たせた愛液の筋を垂らす膣の陰唇──それを目の当たりにし興奮の極み達した僕は、
「お前……妊娠する為の大切な精液が、なんでお尻の中にあるんだ!」
つい僕は、いつもの芝居掛かった口調で彼女を責め立ててしまう。
しかしながら一方、それを受けるミミロップもまた上目に瞼を向くと細く口唇を開いては押し殺した声を上げた。
突き上げられた尻は小刻みに痙攣を繰り返し、膣から垂れていた愛液はさらに粘度を増してはしとどに溢れ始める。……こともあろうかこいつは、言葉責めを受けることに無上の興奮と快感とを覚える輩であるらしかった。
しかしながら一方の僕も止まらない。
「精液は赤ちゃんの元になる大切な物なんだぞ! それをこんなウンチまみれにしちゃって許されると思ってるの!?」
言いながら、僕は立て揃えた人差し指と中指の二本を彼女のアナルへと突き立てる。
そうして激しく撹拌をしながらも、続けて彼女を罵倒し続けた。
淫売・変態・クソポケモン……思いつく限りの下品な言葉で罵りつくし、そうして最後に『死ね』とまで吐きつけてはえぐり込んだ指で腸壁を掻きこそいだ瞬間──ミミロップは失禁よろしくに愛液の飛沫をまき散らせては絶頂した。
そのまま姿勢を崩し、絶頂の余韻から脱力しては手足を投げ出してうつ伏せになると、今度は本当に失禁もして果てる。
そんなミミロップを仁王立ちに見下ろしたまま、僕はいつまでも荒ぶる呼吸を押さえられずにいた。
胸中に満ちていたものはしかし、単純な興奮だけではなかった。
僕は──この光景を知っていた。その事実に気付いては、不安とも疑問ともつかない不整脈が止むことなく胸の内を打ち続けている。
鮮明ではなかったが、その一瞬僕の脳裏をかすめた記憶はいま彼女が絶頂の際に上げた嬌声と、そして場に籠る独特のほのかな香り──その記憶は勘違いなどでは決してない確信を以て、今のこの光景と合致していたのだった。
──これは、僕の記憶なのか? 僕は……僕は、何を知ってるんだ?
考えるほどに、胸の内にこもる湿った鼓動はその脈動を強くさせた。
そして終ぞ僕はこの答えを出すことも叶わずに──今日もまた、曖昧なままに一日を終えようとしていた……。
夢の中だということは覚醒してすぐに分かった。
全体的に五感がぼやけていて鈍い。そのくせ体の末端だけは妙に感覚が冴えている。
そんな感覚のものだから仰向けに寝ていることは知覚できても、僕は自ら体を動かすことは叶わなかった。
退屈な夢だと思いながらぼやける視界を見上げ続けていると、それを遮るように影が差した。
よくよく見るにそれは、僕の顔を覗き込んできたミミロップなのだと判断出来た。
夢の中にまでお前が出てくるのか──なんて思うと場違いにおかしくなって僕は笑ってしまう。
その感情は表情にも出たようで、見下ろすミミロップもまたそんな僕を確認するとおかしそうに微笑むのだった。
やがてそんなミミロップが視界から消える。
すぐそばにいることは確かだが、あいにくと視界の届く範囲からは出てしまっているようだった。
そんな矢先、股間の一点が生暖かく窄まるのを感じて僕は息を飲む。
具体的にはペニスの亀頭そこを何かで温められている感触だ。
滑りを帯びた感触に、それが粘膜に包まれている物だろうことが察せられる。
強く顎を引き、どうにか視線を股間へと導くと──その先で股間の上に頭を被せては僕のペニスをしゃぶっているミミロップが見て取れた。
投げだす僕の足の上に乗り上げては、鼻先をこちらに向けて丁寧にフェラチオをするミミロップ……やがては僕の視線にも気づき、彼女は依然としてペニスを咥えたままに微笑む。
口唇を吸いつけるがゆえに鼻の下が伸ばされた表情からの笑みは、ひどく浅はかで滑稽であると同時に得も言えぬ妖艶さもまた醸し出していた。
そうして僕を見つめたまま、まるで捕食者が得物を見据えるかのよう視線を合わせたままにしゃぶり続けるミミロップ。
その視線に曝されているのが辛くなって瞼をしかめるも、そこから視界を閉ざしてしまうことが僕にはできない。
見つめられながらのフェラチオには言いようのない罪悪感が伴う反面、それが刺激となっては更なるペニスの怒張とそして快感とが増しているかのようだった。
口中では舌全体を陰茎に巻きつけ、そして頬を窄めては唾液の潤滑と共に音を立ててペニスを吸いつけるミミロップのフェラチオに──当然の如くに僕は絶頂させられては、無様に呻き声を漏らしながら果てた。
射精の奔流を口中で受けた瞬間、ミミロップは非難めいた視線をこちらに向けては僕の射精を受け続ける。
口の中に出されることは不本意だったのだろうか? もしその通りで射精を止めてもらいたいという意思表示の視線なのだとしたら、それはまったくの逆効果だ……そんなミミロップの視線は一層に僕を刺激しては、送り出す精液の量をさら増してしまうのだった。
しばし射精を続け、やがてはそれを送り出す動きが止まると、ミミロップは一際大きくすすり上げては尿道の奥底に在る残滓を強く吸引する。
そのあまりの勢いに尿道の奥底が真空状態になって窄まっては肛門に痒みすら覚えるほどだ。
そうしてようやくに口中からペニスを解放すると、ミミロップは合わせた両掌の杯の上に、今しがた受け取った僕の精液をすべて吐き出して見せた。
我ながらすごい量が出たものだ……加えてその粘度もまた堅そうで、僕の精液とミミロップとの唾液とが分離しているほどである。
そんな精液をどうするのか見守っていると、ミミロップは手の平を閉じ合わせ、それを手の中でこね始めた。
肉球の淵から溢れた精液が白く泡立っては、さながら石鹸のようですらある。そうしてすり合わせる動作を続けながらミミロップも身を起こすと、立ち膝になっては両足の間に僕を跨いだ。
そして件の両掌を──自分の股座へと塗り込んでしまうのだった。
僕の精液によるものか、はたまたミミロップの膣自体も潤滑していたのか、場にはそれら体液が陰唇の溝で撹拌される粘着質な水音が響いていた。
そんなミミロップの奇行を見守りながら、僕は強い不安にも駆られてしまう。
──あぁ……そんなに僕の精液を塗り込んで……ローション代わりにするにしたって、それで妊娠したらどうするんだ?
つい僕は、自分の精液が彼女を妊娠させてしまう心配をしては嘆息したわけだが……そんな妄想は同時に、僕を再びに発奮させもまたしていた。
自分がミミロップを妊娠させることの妄想は、たちどころに腹の上で萎えていたペニスを勃起させては、先ほど以上の硬度と角度とを以て彼女の股座の下に屹立させた。
そしてそれを待ち望んでいたかのよう、ミミロップのまた僕の陰茎に手を添えるとそれを膣口へと誘う。
そうして一切の感慨も無く、彼女は僕のペニスを根元まで挿入させてしまうのだった。
精液による潤滑も手伝い、亀頭の先が一息に深部まで達し子宮口を小突くと、ミミロップもまた悲鳴に似た声を上げる。
痛みか快感か、それともその両方か……問い質す間もなく、ミミロップは騎乗位にピストンを開始した。
まるでそこだけが別個の生物のように、腰はしなやかに上下しては僕の陰茎をしごき上げていく。
ポケモン特有のものかは分からないが、多種多様の瘤に富んだ膣壁はその熱と締め付けで、瞬く間に僕に射精を予感させる。
それを感じ取り、情けなく口先を細めては快感に耐えていると、それをキスの催促と勘違いしたのかミミロップが唇でふさいだ。
そこから長く、そして熱を帯びた舌が僕の舌にも絡みつくと、呼吸口を通じて鼻腔には自分の精液とそして彼女の唾液による独特の香りとが広がった。
具体的には説明も出来ないけれど、僕にはそれがひどく淫乱な味に感じられて、なおさらに理性が白濁させられるような気がした。
そうして激しく吸いつけられるがあまり酸欠に陥る僕の頭に一点、鋭い感覚が走る。
それこそは射精の快感それであった。
それを感じ、彼女にそのことを伝えようと意識するも次の瞬間には──そんな僕の意志とは裏腹に、肉体は想いの限りの射精をミミロップの胎内へと果たしてしまっていた。
思わぬ精の奔流を子宮口に感じ、それが不意であったのだろうミミロップもまた、依然僕とのディープキスを維持したままに絶頂した。
もはや洟が垂れ落ちるのすら意に介さずに鼻息を荒げては絶頂に耐えるミミロップ──同種の中でも美人で知られた端整な顔が台無しで、僕にはそれは少しおかしかった。
先のフェラチオ以上の量が彼女の中へと注がれていく。
この事実が示すものは、先にも感じた通りミミロップと子作りをしていることへの興奮に他ならなかった。
その後も、最初の勢いはなくなっても僕のペニスは緩やかに精を送り続け、そしてそれを受けるミミロップは深く僕の首を抱きしめてはそれを受ける一時の幸福に身を委ねていた。
そんな折ふと、僕は彼女へと語り掛ける。
それを受け、どこか疲れた表情で顔を上げる彼女へと……
「僕の赤ちゃん、産んでねミミロップ……お前との赤ちゃんをさ……」
そう語り掛ける僕に最初はキョトンとした表情を見せた彼女ではあったが、その意味が頭に浸透するや、その顔を喜びでいっぱいに破顔させては再び激しいキスをしてくるのだった。
唇を問わず、顔のあちこちへと強く吸いつけられるキスの猛襲に見舞われながら、僕は意識が薄れていくのを感じた。
まるで眠りに落ちるかのよう曖昧模糊となりながら──今の全てが夢であることを再び思い出し、僕はたまらなくに寂しくもなってしまうのだった。
ほどなくミミロップは懐妊し、そして無事出産も果たした。
ベッド脇のナイトテーブルにおいた麻籠の中、彼女の卵は赤ん坊さながらに安置されている。
まるで真珠のように表面の艶やかなそれをミミロップと一緒に見遣りながら、ようやくに全てが終わったのだと僕もため息をしきり。
当初は能力や個体値といったものを考えてある程度の選別などもしようかと考えていたけど、いま改めて卵を見るにそんな気などは無くなってしまった。
産まれてくる子はそのままでいいように思う。新しい家族が増えるのだという実感の方が、僕には素直に嬉しかった。
飽くことなくベッドに腰かけてその卵を見ていると、傍らのミミロップが慈しむよう僕の頭に頬をすり寄せてくる。
妊娠してからというもの、ミミロップのこうしたスキンシップは増えた。
前々から甘えん坊な個体ではあったけど、最近ではその親愛の度合いがさらに増していることから、卵を身に宿すと愛情もまた増すものなのだと感心もしてしまう。
もっともこうしたミミロップの触れ合いは思いのほか強く、最近では就寝においてもベッドを同じにしているほどだ。
妊娠直後には彼女の心身を慮っては僕もそれを受け入れていたけど、それは出産を果たしてからも習慣として根付いてしまった。
こうなるともう、僕達の関係は単なるポケモンパートナーというより『恋人』や『夫婦』といった様相を呈している。
そんな折、ポケットの中のスマホが振動した。
どうやら通話を着信したらしく、発信元を確認するとそれはポケモン預かり屋からだった。
そういえばミミロップが妊娠をしてからはすっかり忙殺されて連絡を取っていなかったことも思い出す。
きっと今回のことに関する請求や祝辞の類なのだろう。僕はミミロップに断りを入れて立ち上がると、リビングに向かって歩きながら通話のボタンを押した。
通話口に出たのは初日に僕の対応をしてくれた女性の職員だった。同時に彼女は僕らの担当もまたになってくれていたのだ。
挨拶とそして不義理にしてしまったことを口頭で詫びると、改めて僕は今回の出産について礼を言った。
それに対し先方からも通り一片の祝辞が送られるかと思いきや……返ってきたものは、困惑を孕んだ職員の返答だった。
さては聞き間違えたのかと思いもう一度ミミロップの妊娠と出産とを伝える僕に対しても、やはりその声の不信感は消えない。
この段になって僕も自分達の不穏なやりとりに初めて疑問を感じた。どうにもちぐはぐで話がかみ合わない。
そんなキャッチボールの成立しない会話をいったん整理しようとでも考えたのか、職員は唐突にある事実を僕へと告げた。
『お客様のミミロップは、初週の数日以降は施設に訪れていません』
告げられるその事実に──僕は瞬間、唖然とする。
次いで激しい困惑を覚えた僕は、「それでも」とミミロップが妊娠した事実を繰り返す。
彼女は施設において種付けをされたのだ。そうでなければ、生理的にも妊娠するなどということはあり得ない、と──。
しかしながら職員から告げられる施設内での彼女の行動を聞かされて、僕は血の気が引いた。
結局ミミロップは、あの施設において異性との交流らしい交流などを持つことは無かった。終日、友達になったフレフワンと共に過ごし、その友達も性別はメスだった。
むしろあの施設における彼女の拒否反応は過剰で、どんな種族であろうともオスは一切近づけさせることは無かったのだという。
その際に一度だけトラブルがあった。
彼女に惚れこんだ同種のオスが居たそうで、それが仕掛けてきた激しいアプローチに彼女が反撃をしたことがあった。
それについては僕も連絡ノートにて報告は受けて知っていた。
しかしこのトラブルにはノートに書かれていない事実もまた存在した。
その際に僕のミミロップは、新たな特性にも目覚めていた。
それは『メロメロボディ』であり、既に『ぶきよう』の特性を確立していた彼女にはありえない変節といえた。
しかもそのメロメロボディは従来の効果である、『相手に攻撃をさせなくする』だけに留まらず、さらには意のままに操りさえしたのだという。
そしてその日以降、ミミロップは施設を訪れなくなった。
そうしたトラブルもまた抱えていたからこそ、職員はその後が心配になり僕へと連絡を取って来た──というのが、今回の電話の理由であった。
もっとも当初の予定通り妊娠が為されたというのであればそれに越したことはない──と、職員との電話は半ば消化不良気味に終了する。
とはいえ電話が終わってもなお、僕はスマホを握りしめたまま動き出すことが出来なかった。
頭の中には様々な疑問が渦巻いている。
しかし一番の疑問こそは──
「……じゃあ、あの卵は何なんだ? 誰との間にできた子供なんだ……?」
そして同時に、ほぼ直感と言ってもいい閃きで僕の脳裏には彼女が施設に通っていたと思われていた数日間の記憶が蘇る。
一日の大半を記憶喪失で過ごした日々……身に覚えのない疲労感……彼女と共にする就寝……尿道炎……ミミロップの口中から感じられた摂取するはずの無いコーヒーの香り………そして彼女の顕(あらわ)れたあの夢……──
その瞬間、寝室から僕を呼ぶミミロップの声が聞こえた。
依然として頭の整理がつかないまま、それでも僕は操られるかのごとくに彼女の元へと向かう。
寝室に入るなりミミロップが僕に身を寄せた。
彼女の視線はベッド脇のナイトテーブル──あの卵が安置された麻籠へと注がれている。
そしてそれに誘われるよう僕もそこへ視線を移すと、その先では麻籠の中で小さくその身を震わせている卵の姿が見えていた。
一振りごとに殻の表面に亀裂が走るその様から、すでに孵化が始まっていることが窺える。
それを目の当たりにし、僕は混乱の極みに達する。
いったい何が生まれるというのだろう──
これは本当にミミロップが身籠ったものなのだろうか──
そうなのだとしたら……──
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