大会は終了しました。このプラグインは外してくださって構いません。
ご参加ありがとうございました。
エントリー作品一覧
いらっしゃいませ。おや、お客様は初めての御来店でございますね。
当店ではお客様が各コースを選んで頂くシステムとなっております。どんな嬢と出逢えるかは一期一会。
それではどうぞ。あなたの気になる一文字をご指名下さいませ。
おっと、ひとつだけ言い忘れておりました。
今夜は特別なイベントを開催しておりましてね。
店名のEndlessに兎のマークが付いていますでしょう?
そのマークが添えられたコース名が対象となっております。
それでは改めましてどうぞ。
あなたの心を啄む一文字を。
◇ 焔
「今夜も来るんだろうなって思ってた」
ベッドの上で枕にされる蜥蜴に毛肌を擦り合わせ、常連客の弱い箇所を丸い指先がなぞる。
白い綿毛が地肌を滑空する度に身悶える蜥蜴へ、意地悪く白兎が微笑んで問うた。
「そんなにボクの事、好き?」
分かりきっているであろう答が返ってくることもお構い無く、熱舌が中腹を這いずり、返答は快楽に塗り潰されてくぐもり、腹の中で無様に地団駄を踏んで回っている。
白兎の執拗な舌技に蜥蜴の地肌はふやけていき、頃合いと見て白兎が歯を突き立てると、一瞬の苦痛に快楽が萎縮する。
「痛かった? でも君はこういうのが好きだもんね」
煽る口で剥がれかけの生皮を咥え、横に縦にと引き裂く度に蜥蜴が狂おしく呻いて戦慄く。
「どう? 自分で剥くより他獣に剥かれるの、気持ちイイ?」
全体の一割にも満たない表皮を剥かれただけで息は絶え絶えに乱れ、呼吸を整える間も置かずに続く脱皮の強制が快楽の細波を津波に変えていく。
焦れったくなったのか、白兎が途中で千切れる事も厭わない乱雑さで首を横に振り抜いた。
一際高い悲鳴が室内を駆け巡り、情けない雄の声色に耳奥が孕む。脳髄から全身へと走る電流に抗えず、白兎は軽く果てた。
陶然とした眼差しで蜥蜴を見定め、濡れそぼつ花弁を蜥蜴の眼前へと割り開く。
面長が太股に固定され、視線の先で厭らしく咲き乱れる自らの有り様を想像する。
「ほらインテレオン……ボクが見える? ボクが雄々しく猛り立っているか、ちゃんと教えて?」
視線の愛撫、荒い鼻息の振動、太股越しに伝わる体温の同化、全てが興奮の火種でしかない状況に蜥蜴は言葉すらも忘れて全身を戦慄かせていた。
間近で嗅ぐ強烈な雌臭は蜥蜴の雄を引きずり出すどころか、自らの内側で情けなく果てさせた。
矯声を圧し殺そうとするもその様は筒抜けで、白兎は弱い雄に罰を与えようと花弁を鼻腔へと押し付ける。
前傾運動、円運動、時折に腰を浮かしては蜥蜴の反応を弄ぶ。
ここまで虚仮にされても蜥蜴は歯向かいもせず、白兎のなすがままを受け入れる。
白兎もそれを解っていて、無抵抗な雄の上で自らの欲望を曝け出していた。
だが燃え盛る炎熱は流石の白兎も堪え兼ねた。過剰な焔を鎮めるには水を被るか水面に飛び込むしかない。
喘ぎ声交じりに蜥蜴を呼ぶ声色の蠱惑さよ。魂は鷲掴まれ、焦げ臭い雄の名残に白兎が呼び掛ける。
舐めてと乞われれば萌える芽を優しく長舌で絡めとり、溢れる雌汁を余すことなく飲み干し、焼き切れることも厭わぬ長舌が炉端の奥へと掻き乱す。
蜥蜴の本身は秘められたまま、然れどいつ抜きん出てもおかしくはない程に隆起した恥丘は熱気に当てられて赤黒く変色していた。
蜥蜴は命令を待っていた。命令に忠実な性質は他者なくしては成り立たない。故に歪みやすく、昏い道を逝く蜥蜴は珍しくもない。
その中でもこの蜥蜴は一層と歪みきっており、マゾヒストの気質に染まりかけていた。
白兎が望めば蜥蜴は自らの頚を差し出すだろう。だが本命の白兎にそんな気はなく、蜥蜴の命を脅かす度胸もない。
あくまで白兎は蜥蜴の望む仮初めの姿を演じ、自らの欲深き欲求になぞらえた落とし所を提供するだけの関係性を貫いている。
上の頚は不要だが、下の二頚は差し出せと白兎が立ち位置を移動して蜥蜴の恥丘に炉穴を宛がう。
前傾運動、円運動、先と違わぬ弄びに解を求めるとすれば、戯れは終わりであることだろう。
か細く、途切れた声で蜥蜴が白兎の名を喚ぶ。あまりの矮小さにどちらが雌なのか判ったものではない。
そんないじらしさを可愛く思うし、もっと歪ませてやりたいと僅かながらの嗜虐心を剥き出した。
「聞こえないよ」
「……ス……ン」
「もっと。大きくなくてもいいから雄々しく見せてよ。それともまた剥かれたい?」
指先が腹上を逆撫で、剥き出しの素肌をなぞり立てる。断層になった引っ掛かりを探り当てると、指腹で境目を広げるように転がしていくや、唐突に摘まんでは薄皮を引き裂いた。
絶叫と同時に背筋が反り返り、弾みで蜥蜴の本身までもが一斉に剥き出されるや、白兎の炉穴が暴れる雄を踏み押さえ、互いに恍惚の一時を擦り合わせる。
言の葉も満足に紡げぬ状態の蜥蜴へ白兎が問い詰める。
その問い掛けが最初から破綻しているとしても、形式上において必要な儀式であった。
「ほら、ボクに何して欲しいの。早くボクの好きにさせてよ……むっつりスケベトカゲさん」
「滅茶苦茶に……されたいです……」
「誰が?」
「……僕が」
「誰に?」
「エース、バーンに……」
何を、とは続かなかった。
それより先に白兎が蜥蜴に食らいつき、彼の上で腰を振り始めたからだ。
それぞれの会話は最早言葉としてではなく、欲望と肉とがぶつかり合う音でしか成立しなかった。
狂焔の営みは霞むことを知らず、約束の時間を過ぎても交わり続けるばかりであった。
◇ 艶
殿方の好みは千差万別と言われるが、取り分けでも太ましい子を好む傾向は多く見られる。
更に加えて希少価値も盛られていくと人はどうなるか。
答えは至極単純明快で、堕落の一言に尽きる。
そして堕落は更なる堕落を呼ぶ。
言うなれば彼女の身は堕落で詰まっており、数々の人に抱かれた混沌で満ちていた。
醜悪と言っても過言ではない。
それでも人は堕落を愛し、最悪が堕ちきる所まで彼女を愛し続けた。
扉のノック音が室内に響く。間髪入れず中へと侵入する客人、人間の男が一人。
周囲を見回し、ベッドらしきものを発見するまで一拍の間が置かれた。
それも無理はないだろう。
男が想定していたベッドの上に寝そべる栗色の兎は遠目から見ても兎とは思えぬ図体であり、あまりの巨躯からベッドシーツか何かと勘違いをする程だ。
飾り付けにピンクの意匠があしらわれているであろう錯覚も用意されており、男が兎の名前を恐る恐ると訊ねるその瞬間まで大栗兎は何一つも身動がなかった。
「ミミロップ……ミミー?」
名前に反応したのだろう。見た目に反して可愛らしい声音は、警戒心と猜疑心に満ちた男をたちどころに当初の目的であった下心へと誑かす。
肉布団として待ち構える大栗兎は堕落の肉に埋もれた短い手足で、男に包容の促進を実に愛らしくこまねいた。
誘惑に誘われるまま、男は大栗兎の肉に埋もれた。
掌で揉み込むだけのつもりが手首から肘の先まで呑み込まれ、慌てて引き抜こうとするも腕全体を包む肉厚感と、ほんのりと湿り気を帯びた高密度のモフモフが男の心の中にある最後の砦を呑み込んだ。
どれだけ慎重に扱おうが彼女の前では意味を成さない。
いつ脱いだのかも分からぬ全裸の男は、自分で脱いだという意識すらも置き去りにされていた。
大の字になって肉布団に包まれるだけで、男は自分が人間であったことさえ忘れ果てた。
全身が性器そのものをしごかれるような未知の快楽に支配され、数秒と経たずに射精を許してしまっても、それ以上の倦怠感が男を堕落の果てへと導くのだ。
あまつには自分が人間であったことさえも忘れてしまいかねなかった。
大栗兎の包容が男の背筋を呑み込み終えた時、男は自分が大栗兎の赤子であると信じて疑わぬ癒しの暴力に晒されていた。
やがて呼吸さえも忘れ、生存意識すらも手離そうとしかけたその時。
我が子を抱き上げる様に大栗兎が男を肉の海から掬い上げた。
外気の冷たさに多少の冷静さを取り戻すと同時に強烈な虚脱感と疲労感が男を殴り抜いた。
あの一瞬で男は何度粗相を漏らしたのか、想像するに恐ろしい。
股間を濡らす大量の残滓は強烈な雄臭を周囲に解き放ち、それに当てられた大栗兎の眼差しが突然豹変する。
双眸の縁が赤黒く輝き、たじろいだ男が手をかざして左右に視線を誘導すると赤光の尾が後を着いて回る。
心なしか男の両脇に添えられた大栗兎の握力も強くなった感じがするが、虚脱感に支配された矮躯では微細な感覚まで判らない。
やがて男は恐ろしいことに気づいた。
誘導していた双眸の矛先が既に別のものへと移り、赤光が一所に止まって強く輝いている。
そして男は何故忘れていたのかを思い出した。
自分の前に居るのは自分の望むままの便利な生き物ではなく、元々は狂暴な野生動物のそれであることを。
喰われる恐怖心が芽生えだし、思わず「助けて」と口に出すも、大栗兎の獲物を捕える動きの方が早かった。
肉布団とはまた違った肉厚感と滑る粘膜の熱が男の股間に絡み付く。
舐められているだけで喰われているわけではないものの、大栗兎が男を食べないという保証もない。
復活した猜疑心がもう少し辛抱強ければ、我武者羅に肉の拘束を抜け出して部屋を後にするチャンスすらあったのやもしれぬ。
だが男にそんな活路を開く力はなかった。
大栗兎の大舌は肉布団に劣らぬ快楽を植え付けた。
一度でも溺れてしまえば後は堕落するだけの降り道。
この堕落を与える兎の正体は誰でもない。
男自身の欲望であり、数多の男達が褥としてきた堕落こそが兎をそのものへと貶めたのだ。
一頻りに舐め取られた下半身は残滓のみならず垢さえも拭われ、唾液で妖しく輝く光芒は赤子の如くまっさらな穢れのない、産まれたままの姿の様であった。
大栗兎の双眸が男の視線と交わるが、男の眼に光は無く、濁った闇の色のみを放ち続けていた。
母の唾液は男の過去すらも溶かし尽くしたのだ。
我が子を慈しむグルーミングが男の上半身を捉え、全てが浄化された後、大栗兎は男を再び肉の海へと還していった。
艶やかな声音も無く、室内は寝息だけがこだましていた。
◇ 怨
ほんの出来心であった。
男がこの店を利用したのは一度や二度ではない。
人でありながら好奇心で獣を抱き、そして人よりも遥かに多幸感に満たされる自分に気づいてからは、週末の休日全てを生活費の許す限りこの店に費やした。
そして今夜は特別なイベントで、兎という存在に男は欲望の高鳴りを抑えられずにいた。
だがイベントとは人気も呼び込むもの。
男が訪れる頃には既にメニュー表の文字欄は大量の棒線で引かれ、残った文字は何と読むのかも分からない難読な漢字が並んでいた。
比較的読めそうで意味の分かる単語を見つけたものの、その文字が放つ恐ろしさにはやや尻込みを覚える威圧感を放っている。
だがここまで来て手ぶらで帰るのもそれはそれで虚しいものがあり、欲望に負けた男はその文字を選択した。
そして目的の部屋へと入り、男が今夜の慰みとする相手を探すもののその姿は見当たらない。
ベッドの上も、浴室の中も、トイレも、クローゼットにも、何処にも見当たらないのだ。
不審に思いつつ男はその部屋に居るであろう対象へと呼び掛けた。
「にゃおん」
背後から、それも耳元から囁く猫撫で声に思わず男が身震いし、振り向こうとするやベッドの上へと押し倒された。
先の声音からして既に怪しかったが、声の主を見てそれは確信に変わった。
「マ、マスカーニャ……? え、何で……?」
彼女のことはよく覚えている。というよりも男が最初に抱いた相手が目の前の猫であった。
否。兎猫であった。
「え、その格好は……兎さん? バニーガール?」
バニーガールと言えば兎の耳を模したヘアバンドに、黒のハイレグ姿と網タイツが特徴的だ。
対するマスカーニャもまじまじと観察してみればその要素を残している。
ある一点のみを覗いて。
「逆バニーガール……実在していたのか……」
もともと被毛で隠されている上に全裸にも等しい兎猫だが、網タイツと網アームカバーの着衣が心なしか、とてつもなく厭らしい雰囲気を醸している。
着衣エロというものの真髄を垣間見た一瞬でもあった。
極めつけは隠す必要があるのか分からない乳房、乳首の位置に兎のニップレスがあしらわれていた。
「……すけべすぎんだろ……ドスケベすぎんだろ……!」
自前の肩から胸元を隠すように垂れ下がる草の羽織をご丁寧にもチラリと覗かせて見せつけてくる辺り、この兎猫は客の悦ばし方を判っている。
最初は面食らったが、こういう兎も悪くないと一人御満悦に浸りつつ、兎猫の手を引こうと手を伸ばす。
だがその手は突然に裏切られ、上から思い切りに叩かれた。
「……え?」
一瞬何が起こったのか分からず、男は自らの手と兎猫の顔を交互に見比べた。
手の甲が爪痕で滲んでいる。出血はしていないものの内出血を起こしているのか、次第に赤黒い線が幾筋にも浮かび上がった。
無事な方の手で傷を押さえ、動揺も隠す様に一拍の呼吸を置いて兎猫に問い掛けた。
だが肝心の兎猫は知らん振りで、そっぽを向いて自分は悪くないとでも言わんばかりの悪態をついている。
もう一度手を伸ばそうとすると再び叩き落とそうとする仕草を見せたので已む無く引っ込めた。
一体全体兎猫は何に怒っているのだろうと、男は彼女の御立腹の原因探しに思考を巡らせる。
真っ先に思い当たったのはコース名の『怨』であったが、男は兎猫に恨まれる程の無礼を働いたのだろうかと初回の記憶を可能な限り思い出す。
確かに初めての体験もあり、おぼつかない手つきでもあったが、当時の兎猫はそんな男を見限りもせず最後まで付き合ってくれていた。
あの体験が原因だとは到底思えないものだが、果たしてどうなのかとその事について問い掛ける。
答えは沈黙。というより無反応だった。
待つことに飽きたのか、客の目の前で欠伸をして後ろ足で頭を掻いている。
人の姿に近くなっても根本的な猫の部分は変わらないその姿に安心感を覚える一方で、男の視線は流れるように兎猫の股間へと吸われていく。
ほんのりと薄い毛並みのそこが開脚によってちらりちらりと見えてしまうので否が応でも雄の部分が反応してしまう。
だが男がどれだけ欲情を訴えようが、正解に辿り着かない限り兎猫はその身に触れることを許してくれないだろう。
必死に考え、情けないギブアップを宣言して正直に分からないと兎猫に告げると、仮面の奥で怒りに満ちていた眼差しに影が落ちた。
何処と無く悲しそうな、哀愁を宿した佇まいを感じて男は何度も謝った。
しまいには頭を下げ、土下座の姿勢を見せること数分。
嘆息混じりに兎猫はお得意のマジシャンポーズを男の前で披露すると、先程までは何も持っていなかった手の中に見覚えのある紙束が握られていた。
「それは……前回抱いたあの娘の名刺!」
ご丁寧に本獣の足跡の印付きだ。
続く二枚目も前々回に抱いた別の娘と、男が遊んだ記録の紙束が捲られていく。
それらを宙にばらまくや、慟哭の滾りに任せて全てを微塵に引き裂いた。
「ああっ! 何をするんだ!」
「フシャーッ!」
それはこちらの台詞だとでも言わんばかりの、兎猫の般若を被った表情に男はたじろぎ、両手をあげて何もしないことの意を訴えた。
鼻筋に皺が寄り集まり、鋭牙を剥き出すその様は本気で怒っているものであることはどんな鈍感でも伝わる仕草であっただろう。
鼻息荒く呼吸を繰り返す内に兎猫は剥き出しの牙と爪を引っ込め、何事も無かったとでも言わんばかりの意思表明で毛繕いをし始めた。
裂帛の態度をまた向けられやしないかとおどろおどろとしつつも、残骸と成り果てた紙屑を掻き寄せる。
その中に一枚だけ無事な名刺が残っており、捲ってみるとそれは兎猫の、本来の猫の姿が足跡とともに刻印されていた。
そして名刺の下側に「彼女はヤキモチ焼きなので浮気厳禁!」と小さく注意書があった。
無知は罪とはよく言ったものである。
「マスカーニャ」
事態を理解した男の声へ兎猫は相も変わらずそっぽを向いている。というより完全に男の側を向いていない。
頭頂部だけが見え、丸まった猫背に沿って浮き立つ背骨のラインが酷く扇情的で、また引っ掛かれるのも厭わず男は兎猫の腰に手を回した。
鼻腔を擽る柔毛と甘い香りは初めて抱いた頃と変わらず、変わってしまったのは男自身であることを猛省する。
「ごめんな。お前はずっと待ってたんだな……本当にごめん」
もう他所の娘は抱くまいと、今この胸の中にある温もりを男は忘れない様に抱き締める。
長く、できるだけ長く。兎猫がその場を離れない限り、男は包容の限りを尽くした。
その想いが伝わったのか、兎猫の全身からご機嫌の音が広がり、香りも強まっていく。
やがて大音量になって聞こえてくるものの、不思議と喧しさは感じない。そればかりかずっとこうして聞いていたい程の心地好さがそこにはあった。
あまりの心地好さに寝入ってしまいそうになったが、手の甲を舐め取られる感覚に引き摺られて意識が覚醒する。
猫の舌はヤスリのようにざらついており、手の甲ならまだやや痛い程度で済むが、顔を舐められると流石にややではすまない痛みがある。
普段の男であれば痛いからそこは止めてほしいと口に出して抵抗したが、今回だけは兎猫のなすがままにさせてあげようと痛みに堪えて受け入れた。
もっともそれが罪滅ぼしになるのか、兎猫に伝わるのかは議論の分かれる所ではあったし、ただの自己満足でしか無いことも十分に分かっている。
人間の価値観、猫の価値観。それぞれの違いを擦り合わせようと望むならば、多少の壁は我慢すべきだった。
男に抱かれるままに兎猫はグルーミングを男の頬から首へと舐め整えるが、鎖骨に差し当たった辺りで急に牙を突き立てられ、あまりの激痛に男の全身の筋肉が硬直しては弛緩を繰り返した。
その事について咎めはしないものの、流石に堪えた模様で目尻からうっすらと涙が零れ落ちた。
見入る兎猫に視線が絡み合い、今の痛みが私の受けた心の痛みだとでも言いたげな声を鳴らして嗤った。
邪悪で、小悪魔で、けれど全てが愛おしい存在の戯れに、男は溺れるように兎猫の身体を求める。
被毛を吸い、隠された乳房を指先で探り、複数ある内の一つ二つの乳頭を転がし、何から何まで人とは違う魅惑の塊に。
あらゆる全てにどうしようもなく堪らなく男は欲情した。劣情の迸りを、昂りを、受け入れてくれた初めての相手を。
今一度抱き潰し、終わらない契りを結び合う。
どろどろに絡み、縺れて解けない、甘ったるくて重苦しい、面倒そのものでしかないしがらみに。
限り無く、惜しみ無い愛を。
貪り、喰らって。
喰らわれて。